JP3600639B2 - ハロゲン化銀感光材料およびそれを用いる画像形成方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はハロゲン化銀感光材料、特に熱現像感光材料を用いる画像形成方法に関するものである。また本発明は高感度でディスクリミネーションが改良された画像を短時間で形成する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱現像感光材料はこの分野では公知であり熱現像感光材料とそのプロセスについては、たとえば「写真工学の基礎」非銀塩写真編(1982年コロナ社発行)の242頁〜255頁、米国特許第4500626号等に記載されている。
【0003】
また、最近、熱現像により画像状に拡散性の色素を放出または形成させ、この拡散性の色素を色素固定要素に転写する方法が提案されている。この方法では使用する色素供与性化合物の種類または使用するハロゲン化銀の種類を変えることにより、ネガの色素画像もポジの色素画像も得ることができる。更に詳しくは米国特許第4500626号、同4483914号、同4503137号、同4559290号、特開昭58−149046号、特開昭60−133449号、同59−218443号、同61−238056号、欧州特許公開220746A2号、公開技報87−6199、欧州特許公開210660A2等に記載されている。
【0004】
これらの熱現像感光材料は、感光性ハロゲン化銀が現像時かぶりやすく、画像のディスクリミネーションが悪化しやすい。熱現像時のかぶりを抑制する化合物として含窒素ヘテロ環化合物、メルカプト化合物及びその前駆体が検討されており、特開昭59−111636号、同63−250645号、特開平4−3054号、同4−73649号等に記載されている。
これらのかぶり防止剤の中でメルカプト化合物及びその前駆体はかぶり抑制効果が高く好ましいが、かぶり防止に十分な量を用いると感度や最高濃度の低下や生保存性の悪化などの弊害をもたらすため、さらなる改良が要望されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の第一の目的は、ディスクリミネーションの優れた画像形成方法を提供することである。
本発明の第二の目的は、感度や最高濃度が高く、かつかぶりが少ない画像形成方法を提供することである。
本発明の第三の目的は、画像が短時間で得られ、かつ生保存性の優れた感光材料ならびに画像形成方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、水に難溶な亜鉛メルカプチドを含有するハロゲン化銀感光材料、および該ハロゲン化銀感光材料を像様露光後または像様露光と同時に、還元剤、水および該亜鉛メルカプチドを構成する亜鉛イオンに対する錯形成化合物(以下錯化剤と言う)の存在下で現像処理することを特徴とする画像形成方法により達成された。
【0007】
本発明に使用する水に難溶な亜鉛メルカプチドは、20℃の水に対する溶解度が0.01以下であり、対応するメルカプト化合物の溶解度より小さいものである。本発明に使用される亜鉛メルカプチドは次の一般式(I)で表わされる化合物の亜鉛塩である。一般式(I)
【0008】
【化2】
【0009】
ここでαは5員または6員の複素環を形成するのに必要な原子群を表わす。上記一般式(I)のαによって完成される環としては最低1個の窒素原子を含む5員または6員の複素環が好ましく、特に窒素原子を2個以上含むか、または窒素原子1個以上と硫黄原子もしくは酸素原子を含む5員または6員の複素環が好ましい。なおここで複素環とは、ベンゼン核またはナフタレン核と縮合したものも包含する。これらのαによって完成された環として好ましい例はイミダゾリン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール核などである。これらの環は適当な置換基を有してもよく、その例としてハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシル基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、カルバモイル基、N−置換カルバモイル基、スルファモイル基、N−置換スルファモイル基、スルホニル基、スルホン酸基などが挙げられる。なお、本発明の目的からみて、カルボキシ基またはカルボキシ基が置換した基を有しない化合物の金属メルカプチドが好ましい。以下に本発明に用いられる亜鉛メルカプチドの特に好ましい具体例を示すが、これらの化合物に限定されるものではない。また、亜鉛メルカプチドの構造は必ずしも明確でなく、具体例に記載されたものに限定されるものではない。
【0010】
【化3】
【0011】
【化4】
【0012】
【化5】
【0013】
本発明で用いられる亜鉛メルカプチド化合物(以下本発明の化合物と称す)は(オーガニック・シンセシス)Organic Synthesis,IV, 569(1963);(ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ)Journal of theAmerican Chemical Society,45、2390(1923);(ケミシエ・ベリヒテ)Chemische Berichte, 9、465(1876)、“アドバンシズ・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Advances in Heterocyclic Chemistry)"、第9巻、第165頁〜209頁(1968年)、“ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・ソサイアティ・ジャパン(Journal of Pharmaceutical SocietyJapan)" 、第71巻、第1481頁〜1484頁(1951年)、ベリヒテ・デア・ドイツチエン・ヘミッシエン・ゲゼルシャフト(Berichte der DeutschenChemicthen Gesellschaft)28、77(1895)、特開昭50−37436号、同51−3231号、同61−99121号、同61−156646号、米国特許3,295,976号、同3,376,310号、同2,585,388号、同2,541,924号、同2,823,208号、Chemical Abstract 58、7921頁(1963); I.I.Kovtunovskaya-Leveshina著 Tr.Ukr.Inst.Eksperim.Endokrinol. 18、345頁(1961);M.Chamben et al., Bull.Soc. 79、4922頁(1957);A.Wohl, W.Marckwald 著 ドイツ化学会誌(Ber.) 、22、568頁(1889)等に記載の方法により合成したメルカプト化合物を水、メタノール等の適当な溶媒に溶解し、これに亜鉛塩水溶液を添加し、生成した沈殿物を水洗等により脱塩して得ることができる。
【0014】
本発明の化合物は特開昭59−174830号等に記載のように、親水性バインダー中に微粒子分散させて使用することが好ましい。微粒子の平均粒径は0.001〜5μm であり、好ましくは0.01〜2μm である。
【0015】
本発明の化合物は、中間層、保護層、ハレーション防止層等の非感光性層中が望ましい。本発明の化合物は、感光材料に使用されるハロゲン化銀乳剤、還元剤の種類、含有量ならびに現像処理の条件などにより種々の範囲において使用可能であるが、概ね使用するハロゲン化銀1モル当り10-5〜10モルが好ましく、特に10-3〜1モルが好ましい。この使用量は公知のメルカプト化合物の使用量の10〜100倍である。公知のメルカプト化合物を本発明の化合物と同モル量使用すると著しい感度低下や現像抑制が起きるが、本発明の化合物は水に難溶であるため感光材料製造中には添加層に固定され、現像処理開始後、誘導期を伴って高感度で対応するメルカプト化合物を放出し、これが拡散しハロゲン化銀に吸着もしくは反応するために感度や現像速度への影響が少なく、かつ画像のディスクリミネーションが大巾に向上する。なお、本発明の化合物は公知のかぶり防止剤と併用してもよい。
【0016】
本発明に用いる錯化剤は分析化学におけるキレート剤、写真化学における硬水軟化剤として公知のものである。その詳細はA.リングボム著、田中信行、杉晴子訳「錯形成反応」(産業図書)、特開昭62−129848号、欧州特許210,660A2号等に記載されている。亜鉛メルカプチドを構成する亜鉛イオンに対する錯化剤と後述の水に難溶な塩基性金属化合物を構成する金属イオンに対する錯化剤は同一でも異なっていてもよい。本発明に用いる好ましい錯化剤は水溶性の化合物であり、例えばエチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸等のアミノポリカルボン酸(塩も含む)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸等のアミノホスホン酸(塩)、2−ピコリン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、5−エチル−2−ピコリン酸等のピリジンカルボン酸(塩)が挙げられる。
【0017】
本発明において錯化剤は塩基で中和した塩として用いるのが好ましい。特に、後述の色素固定材料中に、錯化剤を含有させる場合はグアニジン類、アミジン類、水酸化テトラアルキルアンモニウムなどの有機塩基との塩が好ましい。好ましい錯化剤の具体例は前記特開昭62−129848号、欧州特許210,660A2号等に記載されている。
錯化剤を色素固定材料中に添加する場合の含有量は0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.05〜5g/m2である。また錯化剤を使用する水や現像液等の処理液中に溶解して使用する場合は、0.1〜500g/リットル、好ましくは0.5〜100g/リットルの濃度である。
【0018】
本発明の一実施態様において、塩基プレカーサーとして用いる「水に難溶な塩基性金属化合物」と「この塩基性金属化合物を構成する金属イオンに対して水を媒体として錯形成反応しうる化合物(錯化剤)」との組合せについては、特開昭62−129848号、欧州特許210,660A2号等に開示されているものが使用できる。
好ましい塩基性金属化合物としては、亜鉛またはアルミニウムの酸化物、水酸化物、塩基性炭酸塩で、特に好ましくは酸化亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛である。
水に難溶な塩基性金属化合物は、特開昭59−174830号等に記載のように親水性バインダー中に微粒子分散させてしようすることが好ましい。微粒子の平均粒径は0.001〜5μm であり、好ましくは0.01〜2μm である。また感光材料中の含有量は0.01〜5g/m2であり、好ましくは0.05〜2g/m2である。
上記水に難溶な塩基性金属化合物と組合せる錯化剤は前述の化合物を使用することができる。
【0019】
本発明に使用し得るハロゲン化銀乳剤は、塩化銀、臭化銀、沃臭化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、塩沃臭化銀のいずれでもよい。
本発明で使用するハロゲン化銀乳剤は、表面潜像型乳剤であっても、内部潜像型乳剤であってもよい。内部潜像型乳剤は造核剤や光カブラセとを組合わせて直接反転乳剤として使用される。また、粒子内部と粒子表層が異なる相を持ったいわゆるコアシェル乳剤であってもよく、またエピタキシャル接合によって組成の異なるハロゲン化銀が接合されていても良い。ハロゲン化銀乳剤は単分散でも多分散でもよく、特開平1−167,743号、同4−223,463号記載のように単分散乳剤を混合し、階調を調節する方法が好ましく用いられる。粒子サイズは0.1〜2μm、特に0.2〜1.5μmが好ましい。ハロゲン化銀粒子の晶癖は立方体、8面体、14面体のような規則的な結晶を有するもの、球状、高アスペクト比の平板状のような変則的な結晶系を有するもの、双晶面のような結晶欠陥を有するもの、あるいはそれらの複合系その他のいずれでもよい。
具体的には、米国特許第4,500,626号第50欄、同4,628,021号、リサーチ・ディスクロージャー誌(以下RDと略記する)No. 17,029(1978年)、同No. 17,643(1978年12月)22〜23頁、同No. 18,716(1979年11月)、648頁、同No. 307,105(1989年11月)863〜865頁、特開昭62−253,159号、同64−13,546号、特開平2−236,546号、同3−110,555号、およびグラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテ社刊(P.Glafkides, Chemie et Phisique Photographique, Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F. Duffin,Photographic Emulsion Chemistry,Focal Press,1966) 、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V. L. Zelikman et al., Making and Coating PhotographicEmulsion, Focal Press,1964)等に記載されている方法を用いて調製したハロゲン化銀乳剤のいずれもが使用できる。
【0020】
本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤を調製する過程で、過剰の塩を除去するいわゆる脱塩を行うことが好ましい。このための手段として、ゼラチンをゲル化させて行うヌーデル水洗法を用いても良く、また多価アニオンより成る無機塩類(例えば硫酸ナトリウム)、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー(例えばポリスチレンスルホン酸ナトリウム)、あるいはゼラチン誘導体(例えば脂肪族アシル化ゼラチン、芳香族アシル化ゼラチン、芳香族カルバモイル化ゼラチンなど)を利用した沈降法を用いても良い。沈降法が好ましく用いられる。
【0021】
本発明で使用する感光性ハロゲン化銀乳剤は、種々の目的でイリジウム、ロジウム、白金、カドミウム、亜鉛、タリウム、鉛、鉄、オスミウムなどの重金属を含有させてもよい。これらの化合物は、単独で用いても良いしまた2種以上組み合わせて用いてもよい。添加量は、使用する目的によるが一般的には、ハロゲン化銀1モルあたり10−9〜10−3モル程度である。また含有させる時には、粒子に均一に入れてもよいし、また粒子の内部や表面に局在させてもよい。具体的には、特開平2−236,542号、同1−116,637号、特願平4−126,629号等に記載の乳剤が好ましく用いられる。
【0022】
本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子形成段階において、ハロゲン化銀溶剤としてロダン塩、アンモニア、4置換チオエーテル化合物や特公昭47−11,386号記載の有機チオエーテル誘導体または特開昭53−144,319号に記載されている含硫黄化合物等を用いることができる。
【0023】
その他の条件については、前記のグラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテ社刊(P.Glafkides, Chemie et Phisique Photographique, Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F. Duffin,Photographic Emulsion Chemistry,Focal Press,1966) 、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V. L. Zelikman et al., Making and Coating Photographic Emulsion, Focal Press, 1964)等の記載を参照すれば良い。すなわち酸性法、中性法、アンモニア法のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては片側混合法、同時混合法、それらの組み合わせのいずれを用いてもよい。単分散乳剤を得るためには、同時混合法が好ましく用いられる。
粒子を銀イオン過剰の下において形成させる逆混合法も用いることができる。同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ、いわゆるコントロールドダブルジェット法も用いることができる。
【0024】
また、粒子成長を早めるために、添加する銀塩およびハロゲン塩の添加濃度、添加量、添加速度を上昇させてもよい(特開昭55−142,329号、同55−158,124号、米国特許第3650757号等)。
さらに反応液の攪拌方法は、公知のいずれの攪拌方法でもよい。またハロゲン化銀粒子形成中の反応液の温度、pHは、目的に応じてどのように設定してもよい。好ましいpH範囲は2.2〜8.5、よりこのましくは2.5〜7.5である。
【0025】
感光性ハロゲン化銀乳剤は通常は化学増感されたハロゲン化銀乳剤である。本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤の化学増感には、通常型感光材料用乳剤で公知の硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法などのカルコゲン増感法、金、白金、パラジウムなどを用いる貴金属増感法および還元増感法などを単独または組合わせて用いることができる(例えば特開平3−110,555号、特願平4−75,798号など)。これらの化学増感を含窒素複素環化合物の存在下で行うこともできる(特開昭62−253,159号)。また後掲するかぶり防止剤を化学増感終了後に添加することができる。具体的には、特開平5−45,833号、特開昭62−40,446号記載の方法を用いることができる。
化学増感時のpHは好ましくは5.3〜10.5、より好ましくは5.5〜8.5であり、pAgは好ましくは6.0〜10.5、より好ましくは6.8〜9.0である。
本発明において使用される感光性ハロゲン化銀乳剤の塗設量は、銀換算1mgないし10g/m2の範囲である。
【0026】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀に緑感性、赤感性、赤外感性の感色性を持たせるためには、感光性ハロゲン化銀乳剤をメチン色素類その他によって分光増感する。また、必要に応じて青感性乳剤に青色領域の分光増感を施してもよい。
用いられる色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。
具体的には、米国特許第4,617,257号、特開昭59−180,550号、同64−13,546号、特開平5−45,828号、同5−45,834号などに記載の増感色素が挙げられる。
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合わせを用いてもよく、増感色素の組合わせは特に、強色増感や分光感度の波長調節の目的でしばしば用いられる。
増感色素とともに、それ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない化合物であって、強色増感を示す化合物を乳剤中に含んでもよい(例えば米国特許第3,615,641号、特開昭63−23,145号等に記載のもの)。
これらの増感色素を乳剤中に添加する時期は化学熟成時もしくはその前後でもよいし、米国特許第4,183,756号、同4,225,666号に従ってハロゲン化銀粒子の核形成前後でもよい。またこれらの増感色素や強色増感剤は、メタノールなどの有機溶媒の溶液、ゼラチンなどの分散物あるいは界面活性剤の溶液で添加すればよい。添加量は一般にハロゲン化銀1モル当り10−8ないし10−2モル程度である。
【0027】
このような工程で使用される添加剤および本発明の熱現像感光材料や色素固定材料に使用できる公知の写真用添加剤は、前記のRDNo. 17,643、同No. 18,716および同No. 307,105に記載されており、その該当箇所を下記の表にまとめる。
【0028】
感光材料や色素固定材料の構成層のバインダーには親水性のものが好ましく用いられる。その例としては前記のリサーチ・ディスクロージャーおよび特開昭64−13,546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたものが挙げられる。具体的には、透明か半透明の親水性バインダーが好ましく、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン等の多糖類のような天然化合物と、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体等の合成高分子化合物が挙げられる。また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245,260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3 M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマーどうし、もしくは他のビニルモノマーとの共重合体(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、住友化学(株)製のスミカゲルL−5H)も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。特にゼラチンと上記バインダーの組み合わせが好ましい、またゼラチンは、種々の目的に応じて石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、カルシウムなどの含有量を減らしたいわゆる脱灰ゼラチンから選択すれば良く、組み合わせて用いることも好ましい。
【0029】
微量の水を供給して熱現像を行うシステムを採用する場合、上記の高吸水性ポリマーを用いることにより、水の吸収を迅速に行うことが可能となる。また高吸水性ポリマーを色素固定層やその保護層に使用すると、転写後に色素が色素固定要素から他のものに再転写するのを防止することができる。
本発明において、バインダーの塗布量は1m2当たり20g以下が好ましく、特に10g以下、更には7g〜0.5gにするのが適当である。
【0030】
本発明においては、感光性ハロゲン化銀乳剤と共に、有機金属塩を酸化剤として併用することもできる。このような有機金属塩の中で、有機銀塩は、特に好ましく用いられる。
上記の有機銀塩酸化剤を形成するのに使用し得る有機化合物としては、米国特許第4,500,626号第52〜53欄等に記載のベンゾトリアゾール類、脂肪酸その他の化合物がある。また米国特許第4,775,613号記載のアセチレン銀も有用である。有機銀塩は、2種以上を併用してもよい。
以上の有機銀塩は、感光性ハロゲン化銀1モルあたり、0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モルを併用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤と有機銀塩の塗布量合計は銀換算で0.05〜10g/m2、好ましくは0.1〜4g/m2が適当である。
【0031】
本発明において還元剤は写真分野で公知のものを用いることができる。また、それ自身は還元性を持たないが現像過程で求核試薬や熱の作用により還元性を発現する還元剤プレカーサーも用いることができる。
本発明に用いられる還元剤の例としては、米国特許第4,500,626号の第49〜50欄、同4,839,272号、同4,330,617号、同4,590,152号、同5,017,454号、同5,139,919号、特開昭60−140,335号の第(17)〜(18)頁、同57−40,245号、同56−138,736号、同59−178,458号、同59−53,831号、同59−182,449号、同59−182,450号、同60−119,555号、同60−128,436号、同60−128,439号、同60−198,540号、同60−181,742号、同61−259,253号、同62−201,434号、同62−244,044号、同62−131,253号、同62−131,256号、同63−10,151号、同64−13,546号の第(40)〜(57)頁、特開平1−120,553号、同2−32,338号、同2−35,451号、同2−234,158号、同3−160,443号、欧州特許第220,746号の第78〜96頁等に記載の還元剤や還元剤プレカーサーがある。
米国特許第3,039,869号に開示されているもののような種々の還元剤の組合せも用いることができる。
【0032】
耐拡散性の還元剤を使用する場合には、耐拡散性還元剤と現像可能なハロゲン化銀との間の電子移動を促進するために、必要に応じて電子伝達剤および/または電子伝達剤プレカーサーを組合せて用いることができる。特に好ましくは、前記米国特許第5,139,919号、欧州特許公開第418,743号、特開平1−138,556号、同3−102,345号記載のものが用いられる。また特開平2−230,143号、同2−235,044号記載のように安定に層中に導入する方法が好ましく用いられる。
電子伝達剤またはそのプレカーサーは、前記した還元剤またはそのプレカーサーの中から選ぶことができる。電子伝達剤またはそのプレカーサーはその移動性が耐拡散性の還元剤(電子供与体)より大きいことが望ましい。特に有用な電子伝達剤は1−フェニル−3−ピラゾリドン類又はアミノフェノール類である。
耐拡散性の還元剤(電子供与体)としては、前記した還元剤の中で感光材料の層中で実質的に移動しないものであればよく、好ましくはハイドロキノン類、スルホンアミドフェノール類、スルホンアミドナフトール類、特開昭53−110827号、米国特許第5,032,487号、同5,026,634号、同4,839,272号に電子供与体として記載されている化合物等が挙げられる。
また特開平3−160,443号記載のような電子供与体プレカーサーも好ましく用いられる。
さらに中間層や保護層に混色防止、色再現改善、白地改善、色素固定材料への銀移り防止など種々の目的で上記還元剤を用いることができる。具体的には、欧州特許公開第524,649号、同357,040号、特開平4−249,245号、同2−64,633号、同2−46,450号、特開昭63−186,240号記載の還元剤が好ましく用いられる。また特公平3−63,733号、特開平1−150,135号、同2−110,557号、同2−64,634号、同3−43,735号、欧州特許公開第451,833号記載のような現像抑制剤放出還元性化合物も用いられる。
本発明に於いては還元剤の総添加量は銀1モルに対して0.01〜20モル、特に好ましくは0.1〜10モルである。
【0033】
本発明において使用する色素供与性化合物の例としては、まず、酸化カップリング反応によって色素を形成する化合物(カプラー)を挙げることができる。このカプラーは4等量カプラーであっても2等量カプラーであってもよいが、耐拡散性基を脱離基に持ち、酸化カップリング反応により拡散性色素を形成する2等量カプラーが好ましい。この耐拡散性基はポリマー鎖をなしていてもよい。カラー現像薬およびカプラーの具体例は、セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(4th.Ed.T.H.James編集 Macmillan,1977)291頁〜334頁、および354頁〜361頁、特開昭58−12353号、同58−149046号、同58−149047号、同59−11114号、同59−124399号、同59−174835号、同59−231539号、同59−231540号、同60−2951号、同60−14242号、同60−23474号、同60−66249号などに詳しく記載されている。
【0034】
また、別の色素供与性化合物の例として、画像状に拡散性色素を放出ないし拡散する機能を持つ化合物を挙げることができる。この型の化合物は、次の一般式〔LI〕で表すことができる。
【0035】
(Dye−Y)n −Z 〔LI〕
【0036】
Dyeは色素基、一時的に短波化された色素基または色素前駆体を表し、Yは単なる結合または連結基を表し、Zは画像状に潜像を有する感光性銀塩に対応もしくは逆対応して(Dye−Y)n −Zで表される化合物の拡散性に差を生じさせるか、または、Dyeを放出し、放出されたDyeと(Dye−Y)n −Zとの間に拡散性において差を生じさせるような性質を有する基を表し、n は1または2を表し、n が2の時、2つのDyeは同一でも異なっていてもよい。
【0037】
一般式〔LI〕で表される色素供与性化合物の具体例としては、下記の(1) 〜(5) の化合物を挙げることができる。なお、下記の(1) 〜(3) はハロゲン化銀の現像に逆対応して拡散性の色素像(ポジ色素像)を形成するものであり、(4) と(5) はハロゲン化銀の現像に対応して拡散性の色素像(ネガ色素像)を形成するものである。
【0038】
(1) 米国特許3,134,764号、同3,362,819号、同3,597,200号同3,544,545号同3,482,972号等に記載されている、ハイドロキノン系現像薬と色素成分を連結した色素現像薬。この色素現像薬はアルカリ性の環境下で拡散性であるが、ハロゲン化銀と反応すると非拡散性になるものである。
【0039】
(2) 米国特許4,503,137号等に記載されている通り、アルカリ性の環境下で拡散性色素を放出するがハロゲン化銀と反応するとその能力を失う非拡散性の化合物も使用できる。その例としては、米国特許3,980,479号等に記載された分子内求核置換反応により拡散性色素を放出する化合物、米国特許4,199,354号等に記載されたイソオキサゾロン環の分子内巻き換え反応により拡散性色素を放出する化合物が挙げられる。
【0040】
(3) 米国特許4,559,290号、欧州特許220,746A2号、米国特許4,783,396号、公開技報87−6199等に記載されている通り、現像によって酸化されずに残った還元剤と反応して拡散性色素を放出する非拡散性の化合物も使用できる。
【0041】
その例としては、米国特許4,139,389号、同4,139,379号、特開昭59−185333、同57−84453号等に記載されている還元された後に分子内の求核置換反応により拡散性の色素を放出する化合物、米国特許4,232,107号、特開昭59−101649号、同61−88257号、RD24025(1984年)などに記載された還元された後に分子内の電子移動反応により拡散性の色素を放出する化合物、西独特許3,008,588A号、特開昭56−142530号、米国特許4,343,893号、同4,619,884号等に記載されている還元後に一重結合が開裂して拡散性の色素を放出する化合物、米国特許4,450,223号等に記載されている電子受容後に拡散性色素を放出するニトロ化合物、米国特許4,609,610号等に記載されている電子受容後に拡散性色素を放出する化合物等が挙げられる。
【0042】
また、より好ましいものとして、米国特許第4,783,396号、欧州特許220,746A2号、公開技報87−6199、米国特許4,783,396号、特開昭63−201653号、特開昭63−201654号等に記載された一分子内にN−X結合(Xは酸素、硫黄または窒素原子を表す)と電子吸引性基を有する化合物、特願昭62−106885号に記載された一分子内にSO2 −X結合(Xは上記と同義)と電子吸引性基を有する化合物、特開昭63−271344号に記載された一分子内にPO−X結合(Xは上記と同義)と電子吸引性基を有する化合物、特開昭63−271341号に記載された一分子内にC−X’結合(X’はXと同義かまたは−SO2 −を表す)と電子吸引性基を有する化合物が挙げられる。
また、特開昭62−271341号に記載されている電子受容性基と共役するπ結合により還元後に一重結合が開裂し拡散性色素を放出する化合物も利用できる。
【0043】
この中でも特に一分子内にN−X結合と電子吸引性基を有する化合物が好ましい。その具体例は欧州特許220,746A2号または米国特許4,783,396号に記載された化合物(1) 〜(3),(7) 〜(10),(12),(13),(15),(23)〜(26),(31),(32),(35),(36),(40),(41),(53) 〜(59),(64),(70)、公開技報87−6199の化合物(11)〜(23)等である。
【0044】
(4) 拡散性色素を脱離基にもつカプラーであって還元剤の酸化体との反応により拡散性色素を放出する化合物(DDRカプラー)。具体的には、英国特許1,330,524号、特公昭48−39165号、米国特許3,443,940号、同4,474,867号、同4,483,914号等に記載されたものがある。
【0045】
(5) ハロゲン化銀または有機銀塩に対して還元性であり、相手を還元すると拡散性の色素を放出する化合物(DRR化合物)。この化合物は他の還元剤を用いなくてもよいので、還元剤の酸化分解による画像の汚染がなく好ましい。その代表例は、米国特許3,928,312号、同4,053,312号、同4,055,428号、同4,336,322号、特開昭59−65839号、同59−69839号、同53−3819号、同51−104343号、RD17465号、米国特許3,725,062号、同3,728,113号,同3,443,939号、特開昭58−116537号、同57−179840号、米国特許4,500,626号等に記載されている。DRR化合物の具体例としては前述の米国特許4,500,626号の第22欄〜第44欄に記載の化合物を挙げることができるが、中でも前記米国特許に記載の化合物(1) 〜(3),(10)〜(13),(16) 〜(19),(28) 〜(30),(33) 〜(35),(38) 〜(40),(42) 〜(64)が好ましい。また米国特許4,639,408号、第37〜39欄に記載の化合物も有用である。
【0046】
その他、上記に述べたカプラーや一般式〔LI〕以外の色素供与性化合物として、有機銀塩と色素を結合した色素銀化合物(リサーチディスクロージャー誌1978年5月号、54〜58頁等)、熱現像銀色素漂白法に用いられるアゾ色素(米国特許4,235,957号、リサーチディスクロージャー誌1976年4月号、30〜32頁等)、ロイコ色素(米国特許3,985,565号、同4,022,617号等)等も使用できる。
【0047】
本発明のカラー感光材料は、基本的には支持体上に感光性ハロゲン化銀、色素供与性化合物、バインダーを有するものである。これらの成分は同一の層に添加することが多いが、反応可能な状態であれば別層に分割して添加することができる。たとえば着色している色素供与性化合物はハロゲン化銀乳剤の下層に存在させると感度の低下を防げる
【0048】
色素供与性化合物、耐拡散性還元剤などの疎水性添加剤は米国特許第2,322,027号記載の方法などの公知の方法により感光材料の層中に導入することができる。この場合には、米国特許第4,555,470号、同4,536,466号、同4,536,467号、同4,587,206号、同4,555,476号、同4,599,296号、特公平3−62,256号などに記載のような高沸点溶媒を、必要に応じて沸点50℃〜160℃の低沸点有機溶媒と併用して、用いることができる。またこれら色素供与性化合物、耐拡散性還元剤、高沸点有機溶媒などは2種以上併用することができる。
高沸点溶媒の量は用いられる色素供与性化合物1gに対して2g以下、好ましくは1g以下、より好ましくは0.8〜0.1gである。また、バインダー1gに対して1g以下、更には0.7g以下、特に0.5g以下が適当である。
また特公昭51−39,853号、特開昭51−59,943号に記載されている重合物による分散法や特開昭62−30,242号等に記載されている微粒子分散物にして添加する方法も使用できる。
水に実質的に不溶な化合物の場合には、前記方法以外にバインダー中に微粒子にして分散含有させることができる。
疎水性化合物を親水性コロイドに分散する際には、種々の界面活性剤を用いることができる。例えば特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、前記のリサーチ・ディスクロージャー記載の界面活性剤として挙げたものを使うことができる。また、特願平5−204325号、同6−19247号、西独公開特許第1,932,299A号記載のリン酸エステル型界面活性剤も使用できる。
本発明の感光材料には、現像の活性化と同時に画像の安定化を図る化合物を用いることができる。好ましく用いられる具体的化合物については米国特許第4,500,626号の第51〜52欄に記載されている。
【0049】
色素の拡散転写により画像を形成するシステムにおいて、本発明の感光材料の構成層には不要な色素や着色物を固定化または無色化し、得られる画像の白地を改良する目的で種々の化合物を添加することができる。
具体的には、欧州公開特許第353,741号、同461,416号、特開昭63−163,345号、同62−203,158号記載の化合物を用いることができる。
【0050】
本発明の感光材料の構成層には色分離性改良や高感化などの目的で、種々の顔料や染料を用いることができる。
具体的には前記リサーチ・ディスクロージャー記載の化合物や、欧州公開特許第479,167号、第502,508号、特開平1−167,838号、同4−343,355号、同2−168,252号、特開昭61−20,943号、欧州公開特許第479,167号、同502,508号等に記載の化合物や層構成を用いることができる。
【0051】
色素の拡散転写により画像を形成するシステムにおいては感光材料と共に色素固定材料が用いられる。色素固定材料は感光材料とは別々の支持体上に別個に塗設される形態であっても、感光材料と同一の支持体上に塗設される形態であってもよい。感光材料と色素固定材料相互の関係、支持体との関係、白色反射層との関係は米国特許第4,500,626号の第57欄に記載の関係が本発明にも適用できる。
本発明に好ましく用いられる色素固定材料は媒染剤とバインダーを含む層を少なくとも1層有する。媒染剤は写真分野で公知のものを用いることができ、その具体例としては米国特許第4,500,626号第58〜59欄、特開昭61−88,256号第(32)〜(41)頁や特開平1−161,236号第(4)〜(7)頁に記載の媒染剤、米国特許第4,774,162号、同4,619,883号、同4,594,308号等に記載のものを挙げることができる。また、米国特許第4,463,079号に記載されているような色素受容性の高分子化合物を用いてもよい。
本発明の色素固定材料に用いられるバインダーは、前記の親水性バインダーが好ましい。さらに欧州公開特許第443,529号記載のようなカラギナン類の併用や、特公平3−74,820号記載のようなガラス転移温度40℃以下のラテックス類を併用することが好ましく用いられる。
色素固定材料には必要に応じて保護層、剥離層、下塗り層、中間層、バック層、カール防止層などの補助層を設けることができる。特に保護層を設けるのは有用である。
【0052】
感光材料および色素固定材料の構成層には、可塑剤、スベリ剤あるいは感光材料と色素固定材料との剥離性改良剤として高沸点有機溶媒を用いることができる。具体的には、前記リサーチ・ディスクロージャーや特開昭62−245,253号などに記載されたものがある。
更に、上記の目的のために、各種のシリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイルからジメチルシロキサンに各種の有機基を導入した変性シリコーンオイルまでの総てのシリコーンオイル)を使用できる。その例としては、信越シリコーン(株)発行の「変性シリコーンオイル」技術資料P6〜18Bに記載の各種変性シリコーンオイル、特にカルボキシ変性シリコーン(商品名X−22−3710)などが有効である。
また特開昭62−215,953号、同63−46,449号に記載のシリコーンオイルも有効である。
【0053】
感光材料や色素固定材料には退色防止剤を用いてもよい。退色防止剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、あるいはある種の金属錯体があり、前記リサーチ・ディスクロージャー記載の色素画像安定剤や紫外線吸収剤なども、有用である。
酸化防止剤としては、例えばクロマン系化合物、クマラン系化合物、フェノール系化合物(例えばヒンダードフェノール類)、ハイドロキノン誘導体、ヒンダードアミン誘導体、スピロインダン系化合物がある。また、特開昭61−159644号記載の化合物も有効である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物(米国特許第3,533,794号など)、4−チアゾリドン系化合物(米国特許第3,352,681号など)、ベンゾフェノン系化合物(特開昭46−2,784号など)、その他特開昭54−48,535号、同62−136,641号、同61−88,256号等に記載の化合物がある。また、特開昭62−260,152号記載の紫外線吸収性ポリマーも有効である。
金属錯体としては、米国特許第4,241,155号、同4,245,018号第3〜36欄、同第4,254,195号第3〜8欄、特開昭62−174,741号、同61−88,256号(27)〜(29)頁、同63−199,248号、特開平1−75,568号、同1−74,272号等に記載されている化合物がある。
【0054】
色素固定材料に転写された色素の退色を防止するための退色防止剤は予め色素固定材料に含有させておいてもよいし、感光材料や後述する転写溶剤などの外部から色素固定材料に供給するようにしてもよい。
上記の酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属錯体はこれらどうしを組み合わせて使用してもよい。
感光材料や色素固定材料には蛍光増白剤を用いてもよい。特に色素固定材料に蛍光増白剤を内蔵させるか、感光材料や転写溶剤などの外部から供給させるのが好ましい。その例としては、K.Veenkataraman 編「The Chemistry of Synthetic Dyes 」第V巻第8章、特開昭61−143752号などに記載されている化合物を挙げることができる。より具体的には、スチルベン系化合物、クマリン系化合物、ビフェニル系化合物、ベンゾオキサゾリル系化合物、ナフタルイミド系化合物、ピラゾリン系化合物、カルボスチリル系化合物などが挙げられる。
蛍光増白剤は退色防止剤や紫外線吸収剤と組み合わせて用いることができる。
これらの褪色防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤の具体例は、特開昭62−215,272号(125)〜(137)頁、特開平1−161,236号(17)〜(43)頁に記載されている。
【0055】
感光材料や色素固定材料の構成層に用いる硬膜剤としては、前記リサーチ・ディスクロージャー、米国特許第4,678,739号第41欄、同4,791,042号、特開昭59−116,655号、同62−245,261号、同61−18,942号、特開平4−218,044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒドなど)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタンなど)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素など)、あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234,157号などに記載の化合物)が挙げられる。
これらの硬膜剤は、塗布されたゼラチン1gあたり0.001〜1g好ましくは、0.005〜0.5gが用いられる。また添加する層は、感光材料や色素固定材料の構成層のいずれの層でも良いし、2層以上に分割して添加しても良い。
【0056】
感光材料や色素固定材料の構成層には、種々のカブリ防止剤または写真安定剤およびそれらのプレカーサーを使用することができる。その具体例としては、前記リサーチ・ディスクロージャー、米国特許第5,089,378号、同4,500,627号、同4,614,702号、特開昭62−13,546号(7)〜(9)頁、(57)〜(71)頁および(81)〜(97)頁、米国特許第4,775,610号、同4,626,500号、同4,983,494号、特開昭62−174,747号、同62−239,148号、同63−264,747号、特開平1−150,135号、同2−110,557号、同2−178,650号、RD17,643(1978年)(24)〜(25)頁等記載の化合物が挙げられる。
これらの化合物は、銀1モルあたり5×10−6〜1×10−1モルが好ましく、さらに1×10−5〜1×10−2モルが好ましく用いられる。
【0057】
感光材料や色素固定材料の構成層には、塗布助剤、剥離性改良、スベリ性改良、帯電防止、現像促進等の目的で種々の界面活性剤を使用することができる。界面活性剤の具体例は前記リサーチ・ディスクロージャー、特開昭62−173,463号、同62−183,457号等に記載されている。
感光材料や色素固定材料の構成層には、スベリ性改良、帯電防止、剥離性改良等の目的で有機フルオロ化合物を含ませてもよい。有機フルオロ化合物の代表例としては、特公昭57−9053号第8〜17欄、特開昭61−20944号、同62−135826号等に記載されているフッ素系界面活性剤、またはフッ素油などのオイル状フッ素系化合物もしくは四フッ化エチレン樹脂などの固体状フッ素化合物樹脂などの疎水性フッ素化合物が挙げられる。
【0058】
感光材料や色素固定材料には、接着防止、スベリ性改良、非光沢面化などの目的でマット剤を用いることができる。マット剤としては二酸化ケイ素、ポリオレフィンまたはポリメタクリレートなどの特開昭61−88256号(29)頁記載の化合物の他に、ベンゾグアナミン樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ、AS樹脂ビーズなどの特開昭63−274944号、同63−274952号記載の化合物がある。その他前記リサーチ・ディスクロージャー記載の化合物が使用できる。これらのマット剤は、最上層(保護層)のみならず必要に応じて下層に添加することもできる。
その他、感光材料および色素固定材料の構成層には、熱溶剤、消泡剤、防菌防バイ剤、コロイダルシリカ等を含ませてもよい。これらの添加剤の具体例は特開昭61−88256号第(26)〜(32)頁、特開平3−11,338号、特公平2−51,496号等に記載されている。
【0059】
本発明において感光材料及び/又は色素固定材料には画像形成促進剤を用いることができる。画像形成促進剤には銀塩酸化剤と還元剤との酸化還元反応の促進、色素供与性物質からの拡散性色素の放出等の反応の促進および、熱現像感光材料層から色素固定層への色素の移動の促進等の機能があり、物理化学的な機能からは塩基または塩基プレカーサー、求核性化合物、高沸点有機溶媒(オイル)、熱溶剤、界面活性剤、銀または銀イオンと相互作用を持つ化合物等に分類される。ただし、これらの物質群は一般に複合機能を有しており、上記の促進効果のいくつかを合せ持つのが常である。これらの詳細については米国特許4,678,739号第38〜40欄に記載されている。
【0060】
本発明において感光材料及び/又は色素固定材料には、現像時の処理温度および処理時間の変動に対し、常に一定の画像を得る目的で種々の現像停止剤を用いることができる。
ここでいう現像停止剤とは、適正現像後、速やかに塩基を中和または塩基と反応して膜中の塩基濃度を下げ現像を停止する化合物または銀および銀塩と相互作用して現像を抑制する化合物である。具体的には、加熱により酸を放出する酸プレカーサー、加熱により共存する塩基と置換反応を起す親電子化合物、または含窒素ヘテロ環化合物、メルカプト化合物及びその前駆体等が挙げられる。更に詳しくは特開昭62−253,159号(31)〜(32)頁に記載されている。
【0061】
本発明において感光材料や色素固定材料の支持体としては、処理温度に耐えることのできるものが用いられる。一般的には、日本写真学会編「写真工学の基礎−銀塩写真編−」、(株)コロナ社刊(昭和54年)(223)〜(240)頁記載の紙、合成高分子(フィルム)等の写真用支持体が挙げられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアリレート、セルロース類(例えばトリアセチルセルロース)またはこれらのフィルム中へ酸化チタンなどの顔料を含有させたもの、更にポリプロピレンなどから作られるフィルム法合成紙、ポリエチレン等の合成樹脂パルプと天然パルプとから作られる混抄紙、ヤンキー紙、バライタ紙、コーティッドペーパー(特にキャストコート紙)、金属、布類、ガラス類等が用いられる。
これらは、単独で用いることもできるし、ポリエチレン等の合成高分子で片面または両面をラミネートされた支持体として用いることもできる。このラミネート層には、酸化チタン、群青、カーボンブラックなどの顔料や染料を必要に応じて含有させておくことができる。
この他に、特開昭62−253,159号(29)〜(31)頁、特開平1−161,236号(14)〜(17)頁、特開昭63−316,848号、特開平2−22,651号、同3−56,955号、米国特許第5,001,033号等に記載の支持体を用いることができる。
これらの支持体の裏面は、親水性バインダーとアルミナゾルや酸化スズのような半導性金属酸化物、カーボンブラックその他の帯電防止剤を塗布してもよい。具体的には、特開昭63−220,246号などに記載の支持体を使用できる。
また支持体の表面は親水性バインダーとの密着性を改良する目的で種々の表面処理や下塗りを施すことが好ましく用いられる。
【0062】
感光材料に画像を露光し記録する方法としては、例えばカメラなどを用いて風景や人物などを直接撮影する方法、プリンターや引伸機などを用いてリバーサルフィルムやネガフィルムを通して露光する方法、複写機の露光装置などを用いて、原画をスリットなどを通して走査露光する方法、画像情報を電気信号を経由して発光ダイオード、各種レーザー(レーザーダイオード、ガスレーザーなど)などを発光させ走査露光する方法(特開平2−129,625号、特願平3−338,182号、同4−9,388号、同4−281,442号等に記載の方法)、画像情報をCRT、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイなどの画像表示装置に出力し、直接または光学系を介して露光する方法などがある。
【0063】
感光材料へ画像を記録する光源としては、上記のように、自然光、タングステンランプ、発光ダイオード、レーザー光源、CRT光源などの米国特許第4,500,626号第56欄、特開平2−53,378号、同2−54,672号記載の光源や露光方法を用いることがてきる。
また、非線形光学材料とレーザー光等のコヒーレントな光源を組み合わせた波長変換素子を用いて画像露光することもできる。ここで非線形光学材料とは、レーザー光のような強い光電界をあたえたときに現れる分極と電界との間の非線形性を発現可能な材料であり、ニオブ酸リチウム、リン酸二水素カリウム(KDP)、沃素酸リウチム、BaB2 O4 などに代表される無機化合物や、尿素誘導体、ニトロアニリン誘導体、例えば3−メチル−4−ニトロピリジン−N−オキシド(POM)のようなニトロピリジン−N−オキシド誘導体、特開昭61−53462号、同62−210432号に記載の化合物が好ましく用いられる。波長変換素子の形態としては、単結晶光導波路型、ファイバー型等が知られておりそのいずれもが有用である。
また、前記の画像情報は、ビデオカメラ、電子スチルカメラ等から得られる画像信号、日本テレビジョン信号規格(NTSC)に代表されるテレビ信号、原画をスキャナーなど多数の画素に分割して得た画像信号、CG、CADで代表されるコンピューターを用いて作成された画像信号を利用できる。
【0064】
本発明において熱現像感光材料および/または色素固定材料は、加熱現像および色素の拡散転写のための加熱手段として導電性の発熱体層を有する形態であっても良い。この場合の発熱要素には、特開昭61−145,544号等に記載のものを利用できる。
熱現像工程での加熱温度は、約50℃〜250℃であるが、特に約60℃〜180℃が有用である。色素の拡散転写工程は熱現像と同時に行っても良いし、熱現像工程終了後に行ってもよい。後者の場合、転写工程での加熱温度は熱現像工程における温度から室温の範囲で転写可能であるが、特に50℃以上で、熱現像工程の温度より約10℃低い温度までが好ましい。
【0065】
色素の移動は熱のみによっても生じるが、色素移動を促進するために溶媒を用いてもよい。また、米国特許第4,704,345号、同4,740,445号、特開昭61−238,056号等に記載されている、少量の溶媒(特に水)の存在下で加熱し現像と転写を同時または連続して行う方法も有用である。この方式においては、加熱温度は50℃以上で溶媒の沸点以下が好ましく、例えば溶媒が水の場合は50℃〜100℃が好ましい。
現像の促進および/または色素の拡散転写のために用いる溶媒の例としては、水、無機のアルカリ金属塩や有機の塩基を含む塩基性の水溶液(これらの塩基としては画像形成促進剤の項で記載したものが用いられる)、低沸点溶媒または低沸点溶媒と水もしくは前記塩基性水溶液との混合溶液が挙げられる。また界面活性剤、かぶり防止剤、難溶性金属塩との錯形成化合物、防黴剤、防菌剤を溶媒中に含ませてもよい。
これらの熱現像、拡散転写の工程で用いられる溶媒としては水が好ましく用いられるが、水としては一般に用いられる水であれば何を用いても良い。具体的には蒸留水、水道水、井戸水、ミネラルウォーター等を用いることができる。また本発明において熱現像感光材料および色素固定材料を用いる熱現像装置においては水を使い切りで使用しても良いし、循環し繰り返し使用してもよい。後者の場合材料から溶出した成分を含む水を使用することになる。また特開昭63−144,354号、同63−144,355号、同62−38,460号、特開平3−210,555号等に記載の装置や水を用いても良い。
【0066】
これらの溶媒は熱現像感光材料、色素固定材料またはその両者に付与する方法を用いることができる。その使用量は全塗布膜の最大膨潤体積に相当する溶媒の重量以下でよい。
この水を付与する方法としては、例えば特開昭62−253,159号(5)頁、特開昭63−85,544号等に記載の方法が好ましく用いられる。また、溶媒をマイクロカプセルに閉じ込めたり、水和物の形で予め熱現像感光材料もしくは色素固定要素またはその両者に内蔵させて用いることもできる。
付与する水の温度は前記特開昭63−85,544号等に記載のように30℃〜60℃であれば良い。特に水中での雑菌類の繁殖を防ぐ目的で45℃以上にすることは有用である。
【0067】
また色素移動を促進するために、常温で固体であり高温では溶解する親水性熱溶剤を熱現像感光材料および/または色素固定材料に内蔵させる方式も採用できる。内蔵させる層は感光性ハロゲン化銀乳剤層、中間層、保護層、色素固定層いずれでも良いが、色素固定層および/またはその隣接層が好ましい。
親水性熱溶剤の例としては、尿素類、ピリジン類、アミド類、スルホンアミド類、イミド類、アルコール類、オキシム類その他の複素環類がある。
【0068】
現像および/または転写工程における加熱方法としては、加熱されたブロックやプレートに接触させたり、熱板、ホットプレッサー、熱ローラー、熱ドラム、ハロゲンランプヒーター、赤外および遠赤外ランプヒーターなどに接触させたり、高温の雰囲気中を通過させる方法などがある。
熱現像感光材料と色素固定材料を重ね合わせる方法は特開昭62−253,159号、特開昭61−147,244号(27)頁記載の方法が適用できる。
【0069】
本発明の写真要素の処理には種々の熱現像装置のいずれもが使用できる。例えば、特開昭59−75,247号、同59−177,547号、同59−181,353号、同60−18,951号、実開昭62−25,944号、特願平4−277,517号、同4−243,072号、同4−244,693号等に記載されている装置などが好ましく用いられる。また市販の装置としては富士写真フイルム(株)製ピクトロスタット100、同ピクトロスタット200、同ピクトログラフィー3000、同ピクトログラフィー2000などが使用できる。
【0070】
本発明の感光材料は前述のように、錯化剤を含有する色素固定材料とを膜面を重ね合わせて水の存在下で熱現像することにより画像を形成する方法の他に、錯化剤を含有する通常の写真用現像液を用いて現像することにより画像を形成することもできる。また、熱現像により画像を形成させた後、定着液を用いて未現像のハロゲン化銀を除去することももちろん可能である。
【0071】
本発明で感光材料を現像処理する際の現像液には、錯化剤の他通常用いられる添加剤(例えば、現像主薬、アルカリ剤、pH緩衝剤、保恒剤)を含有することができる。本発明の現像処理には、公知の方法のいずれを用いることもできるし、現像処理液には公知のものを用いることができる。
【0072】
本発明の感光材料の別の処理方法として、現像液の代わりに錯化剤を含有し現像主薬を含まないアクチベーター処理液を用いることができる。アクチベーター処理の詳細は、特願平5−205554号に記載されている。また錯化剤を0.1〜500g/リットル、好ましくは1〜100g/リットル含有する処理液(この処理液には前記の現像主薬等をさらに含有してもよい。)を用いて約20℃〜50℃で10秒〜3分処理することにより現像することもできる。この場合、処理液のpHがほぼ中性でよく、安全性の面からも好ましい。
これらの処理液を用いて現像した後は必要に応じて、前述の定着、水洗、乾燥処理を行なうことができる。
【0073】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
感光性ハロゲン化銀乳剤の作り方について述べる。
【0074】
感光性ハロゲン化銀乳剤(1)〔赤感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水600ml中にゼラチン20g、臭化カリウム0.3g、塩化ナトリウム2gおよび化合物(a)30mgを加えて45℃に保温したもの)に、表1の(I)液と(II)液を同時に20分間等流量で添加した。5分後さらに表1の(III)液と(IV)液を同時に25分間等流量で添加した。
【0075】
常法により水洗、脱塩した後石灰処理オセインゼラチン22gと化合物(b)90mgを加えて、pHを6.2、pAgを7.7に調整しリボ核酸分解物500mg、トリメチルチオ尿素2mg、を加え60℃で約50分最適に化学増感した後、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン225mg、色素(a)64mg、KBrを500mgを順次加えた後、冷却した。このようにして平均粒子サイズ0.30μmの単分散立方体塩臭化銀乳剤635gを得た。
【0076】
【表1】
【0077】
【化6】
【0078】
【化7】
【0079】
感光性ハロゲン化銀乳剤(2)〔緑感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水600ml中にゼラチン20g、臭化カリウム0.3g、塩化ナトリウム2gおよび化合物(a)30mgを加えて55℃に保温したもの)に、表2の(I)液と(II)液を同時に10分間等流量で添加した。5分後さらに表2の(III)液と(IV)液を同時に30分間等流量で添加した。また(III) 、(IV)液の添加終了1分後に色素のメタノール溶液60ml(色素(b)360mgを含む)を一括して添加した。
【0080】
常法により水洗、脱塩した後石灰処理オセインゼラチン22gを加えて、pHを6.0、pAgを7.6に調整しチオ硫酸ナトリウム2.4mgと4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン180mgを加えて60℃で最適に化学増感し、次いでカブリ防止剤(1)165mgを添加した後、冷却した。このようにして平均粒子サイズ0.45μmの単分散立方体塩臭化銀乳剤635gを得た。
【0081】
【表2】
【0082】
【化8】
【0083】
【化9】
【0084】
感光性ハロゲン化銀乳剤(3)〔青感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水880ml中にゼラチン20g、KBr4g、化合物(a)10mgを加えて75℃に保ったもの)に表3に示す組成のI液とII液を、II液を添加し、30秒後にI液を、各々30分間かけて添加し、また、II液添加終了後5分後にIII 液を添加し、その30秒後にIV液を各々30分間かけて添加した。
【0085】
その後、常法により水洗、脱塩(沈降剤(a)1gを用いてpH3.9で行った)した後、石灰処理オセインゼラチン6gと化合物(b)70mgを加えてpHを6.0、pAgを8.3にあわせた。その後、チオ硫酸ナトリウムを1.2mg加え、65℃で約60分最適に化学増感した後、色素(c)450mg、カブリ防止剤(2)72mgを順次加えた後、冷却した。得られた乳剤のハロゲン化銀粒子は八面体であり、粒子サイズは、0.5μmであった。
【0086】
【表3】
【0087】
【化10】
【0088】
【化11】
【0089】
【化12】
【0090】
水酸化亜鉛の分散物の調製法について述べる。
平均粒子サイズが0.07μmの水酸化亜鉛12.5g、分散剤としてカルボキシメチルセルロース1g、ポリアクリル酸ソーダ0.1gを4%ゼラチン水溶液100mlに加え、ミルで平均粒径0.75mmのガラスビーズを用いて30分間粉砕した。ガラスビーズを分離し、水酸化亜鉛の分散物を得た。
【0091】
次に色素供与性化合物のゼラチン分散物の作り方について述べる。
シアンの色素供与性化合物(A1)を7.3g、シアンの色素供与性化合物(A2)を11.0g、界面活性剤(1)を0.8g、化合物(c)を1g、化合物(d)を1.3g、高沸点有機溶剤(1)を7g、高沸点有機溶剤(2)を3g秤量し、酢酸エチル52ml加え、約60℃で加熱溶解し、均一な溶液とした。この溶液と石灰処理ゼラチンの16%溶液65gと水105ccを攪拌混合した後、ホモジナイザーで10分間10000rpm で分散した。分散後、希釈用の水を180cc加えた。この分散液をシアンの色素供与性化合物の分散物と言う。
【0092】
【化13】
【0093】
【化14】
【0094】
【化15】
【0095】
【化16】
【0096】
マゼンタの色素供与性化合物(B)を14.93g、化合物(c)を0.17g、界面活性剤(1)を0.315g、高沸点有機溶剤(2)を7.4g秤量し、酢酸エチル40mlを加え、約60℃で加熱溶解し、均一な溶液とした。この溶液と石灰処理ゼラチンの16%溶液50gと水72ccを攪拌混合した後、ホモジナイザーで10分間、10000rpm で分散した。その後希釈用水を136cc加えた。この分散液をマゼンタの色素供与性化合物の分散物と言う。
【0097】
【化17】
【0098】
イエローの色素供与性化合物(C)を15g、化合物(e)を4.7g、化合物(c)を1.88g、界面活性剤(1)を1.74g、高沸点有機溶剤(1)を18.8g、化合物(f)を3.9g秤量し、酢酸エチル50mlを加え、約60℃で加熱溶解し、均一な溶液とした。この溶液と石灰処理ゼラチンの16%溶液67gと水107ccを攪拌混合した後、ホモジナイザーで10分間、10000rpm で分散した。その後希釈用水を90cc加えた。この分散液をイエローの色素供与性化合物の分散物と言う。
【0099】
【化18】
【0100】
【化19】
【0101】
次に中間層用還元剤のゼラチン分散物の作り方について述べる。
還元剤(A)を15.45g、高沸点溶媒(3) を5.9g、界面活性剤(1) を0.45g秤量し、酢酸エチル28mlを加え、約60℃で加熱溶解し、均一な溶液とした。この溶液と石灰処理ゼラチンの16%溶液62.5g、水37cc、亜硫酸ナトリウム0.15gおよびクエン酸0.06gを攪拌混合した後、ホモジナイザーで10分間、10000rpm で分散した。その後希釈用水を加えて160gの分散物を得た。
【0102】
【化20】
【0103】
【化21】
【0104】
次に電子伝達剤のゼラチン分散物の調製法について述べる。
電子伝達剤(1) を10g、分散剤として界面活性剤(2) 0.5g、界面活性剤(3) 0.5gを5%石灰処理ゼラチン水溶液90ccに加えて、平均粒径0.75mmのガラスビーズを用いてミルで30分間分散した。ガラスビーズを分離し、平均粒径0.25μm の電子伝達剤の分散物を得た。
【0105】
【化22】
【0106】
【化23】
【0107】
これらにより、表4、表5および表6のような熱現像感光材料101を作成した。
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
【化24】
【0112】
【化25】
【0113】
【化26】
【0114】
【化27】
【0115】
感光材料101の第2層および第4層に表7に示すように本発明の化合物または比較化合物を含有させた以外は同様の構成を有する感光材料102〜108を作成した。
【0116】
【表7】
【0117】
【化28】
【0118】
次に上記の感光材料101〜108を用いて以下の露光と処理を行った。タングステン電球を用い、B・G・Rの3色分解フィルター(R:600〜700nm、G:500〜590nm、B:400〜490nmのバンドパスフィルターを用い構成した。)を通して2500ルックスで1/10秒で露光した。露光済の感光材料の乳剤表面に湿し水をワイヤーバーで供給し、その後富士写真フイルム(株)製のピクトロスタット200用ペーパーPS−SG(錯化剤としてピコリン酸グアニジンを2.8g/m2含有)を用い、膜面が接するように重ね合わせた。熱現像温度80℃で20秒間加熱した後、感光材料からペーパーPS−SGを引き剥がし、ペーパーPS−SG上に画像を得た。その画像を反射濃度測定器X−Rite 310を用い、フィルターStatus Aで反射濃度を測定した。各感光材料の最低温度(Dmin)および最高温度(Dmax)は表8に示す通りであった。なお、感光材料103および106は著しい感度低下を示した。
【0119】
【表8】
【0120】
この結果より、本発明の化合物を含有する感光材料は、高い濃度と低カブリの画像が得られ、かつ感度低下も少ないことがわかった。また、感光材料101〜108を40℃相対湿度80%に1週間保存したのち同様の操作で露光および処理を行なったところ感光材料103、104および106は感度の変動が他の感光材料に比べ大きかった。本発明の化合物は感光材料の生保存性も良好であることがわかった。
【0121】
参考例
参考例で使用する素材については、特記せぬ限り実施例1と同じ化合物とする。感光性ハロゲン化銀乳剤の作り方について述べる。
感光性ハロゲン化銀乳剤(4)〔赤感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水783cc中にゼラチン20g、臭化カリウム0.5g、塩化ナトリウム6gおよび化合物(a)30mgを加えて45℃に保温したもの)に、表9の(I)液と(II)液を同時に30分間等流量で添加した。5分後さらに表9の(III)液と(IV)液を同時に25分間等流量で添加した。また(III)、(IV)液の添加開始10分後から色素のゼラチン分散物の水溶液(水95m1中にゼラチン1g、色素(d)67mg、色素(e)133mg、色素(f)4mgを含み45℃に保温したもの)を20分間かけて添加した。
【0122】
定法により水洗、脱塩した後石灰処理オセインゼラチン22gを加えて、pHを6.2、pAgを7.7に調整し、チオ硫酸ナトリウムと4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン、塩化金酸を加えて60℃で最適に化学増感した。このようにして平均粒子サイズ0.30μmの単分散立方体塩臭化銀乳剤635gを得た。
【0123】
【表9】
【0124】
【化29】
【0125】
感光性ハロゲン化銀乳剤(5)〔赤感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水783cc中にゼラチン20g、臭化カリウム0.5g、塩化ナトリウム6gおよび化合物(a)30mgを加えて65℃に保温したもの)に、表10の(I)液と(II)液を同時に30分間等流量で添加した。5分後さらに表10の(III)液と(IV)液を同時に15分間等流量で添加した。また(III)、(IV)液の添加開始2分後から色素のゼラチン分散物の水溶液(水95m1中にゼラチン0.9g、色素(d)61mg、色素(e)121mg、色素(f)4mgを含み50℃に保温したもの)を18分間かけて添加した。
【0126】
定法により水洗、脱塩した後石灰処理オセインゼラチン22gを加えて、pHを6.2、pAgを7.7に調整し、チオ硫酸ナトリウムと4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン、塩化金酸を加えて60℃で最適に化学増感した。このようにして平均粒子サイズ0.50μmの単分散立方体塩臭化銀乳剤635gを得た。
【0127】
【表10】
【0128】
感光性ハロゲン化銀乳剤(6)〔緑感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水675cc中にゼラチン20g、臭化カリウム0.5g、塩化ナトリウム4gおよび化合物(a)15mgを加えて48℃に保温したもの)に、表11の(I)液と(II)液を同時に10分間等流量で添加した。10分後さらに表11の(III)液と(IV)液を同時に20分間等流量で添加した。また(III)、(IV)液の添加終了1分後に色素のゼラチン分散物の水溶液(水120m1中にゼラチン3.0g、色素(g)300mgを含み45℃に保温したもの)を一括して添加した。
【0129】
定法により水洗、脱塩した後石灰処理オセインゼラチン20gを加えて、pHを6.0、pAgを7.6に調整し、チオ硫酸ナトリウムと4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン、塩化金酸を加えて68℃で最適に化学増感した。このようにして平均粒子サイズ0.27μmの単分散立方体塩臭化銀乳剤635gを得た。
【0130】
【表11】
【0131】
【化30】
【0132】
感光性ハロゲン化銀乳剤(7)〔緑感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水675cc中にゼラチン20g、臭化カリウム0.3g、塩化ナトリウム6gおよび化合物(a)15mgを加えて55℃に保温したもの)に、表12の(I)液と(II)液を同時に20分間等流量で添加した。10分後さらに表12の(III)液と(IV)液を同時に20分間等流量で添加した。また(III)、(IV) 液の添加終了1分後に色素のゼラチン分散物の水溶液(水95m1中にゼラチン2.5g、色素(g)250mgを含み45℃に保温したもの)を一括して添加した。
【0133】
定法により水洗、脱塩した後石灰処理オセインゼラチン20gを加えて、pHを6.0、pAgを7.6に調整し、チオ硫酸ナトリウムと4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン、塩化金酸を加えて68℃で最適に化学増感した。このようにして平均粒子サイズ0.42μmの単分散立方体塩臭化銀乳剤635gを得た。
【0134】
【表12】
【0135】
感光性ハロゲン化銀乳剤(8) 〔青感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水675cc中にゼラチン20g、臭化カリウム0.5g、塩化ナトリウム4gおよび化合物(a)15mgを加えて50℃に保温したもの)に、表13の(I)液と(II)液を同時に8分間等流量で添加した。10分後さらに表13の(III)液と(IV)液を同時に32分間等流量で添加した。また(III)、(IV)液の添加終了1分後に色素の水溶液(水95m1とメタノール5m1中に、色素(h)220mg、色素(i)110mgを含み45℃に保温したもの)を一括して添加した。
【0136】
定法により水洗、脱塩した後石灰処理オセインゼラチン22gを加えて、pHを6.0、pAgを7.8に調整し、チオ硫酸ナトリウムと4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを加えて68℃で最適に化学増感した。このようにして平均粒子サイズ0.30μmの単分散立方体塩臭化銀乳剤635gを得た。
【0137】
【表13】
【0138】
【化31】
【0139】
感光性ハロゲン化銀乳剤(9)〔青感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水675cc中にゼラチン20g、臭化カリウム0.3g、塩化ナトリウム9gおよび化合物(a)15mgを加えて65℃に保温したもの)に、表14の(I)液と(II)液を同時に10分間等流量で添加した。10分後さらに表14の(III)液と(IV)液を同時に30分間等流量で添加した。また(III)、(IV)液の添加終了1分後に色素の水溶液(水66m1とメタノール4m1中に、色素(h)150mg、色素(i)75mgを含み60℃に保温したもの)を一括して添加した。
【0140】
定法により水洗、脱塩した後石灰処理オセインゼラチン22gを加えて、pHを6.0、pAgを7.8に調整し、チオ硫酸ナトリウムと4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン、塩化金酸を加えて68℃で最適に化学増感した。このようにして平均粒子サイズ0.55μmの単分散立方体塩臭化銀乳剤635gを得た。
【0141】
【表14】
【0142】
色素トラップ剤の分散物の調製法について述べる。
ポリマーラテックス(固形分13.3%)108cc、界面活性剤(7)20g、水1232ccの混合液を攪拌しながら、界面活性剤(3)の5%水溶液600ccを10分間かけて添加した。このようにしてできた懸濁液を限外濾過モジュール(分画分子量10000)を用いて500ccまで濃縮、脱塩の後、1500ccの水を加えて、さらにもう一度同様の操作を繰り返した。このようにして、色素トラップ剤の分散物を得た。
【0143】
【化32】
【0144】
【化33】
【0145】
次に色素供与化合物のゼラチン分散物の作り方について述べる。
表15の油相成分を溶解し、60℃の均一な溶液とした。これに60℃に加温した水相成分を加え、ディスパーサーの直径8cmのディゾルバーで30分間、5000rpm にて分散した。これに後加水を加え攪拌して均一な分散物とした。
【0146】
【表15】
【0147】
中間層用還元剤のゼラチン分散物、電子伝達剤のゼラチン分散物、水酸化亜鉛の分散物は実施例1と同じものを使用した。
これらを用いて表16〜表19に示す多層構成の熱現像感光材料201を作成した。なお支持体の組成は感光材料101と同じである。
【0148】
【表16】
【0149】
【表17】
【0150】
【表18】
【0151】
【表19】
【0152】
【化34】
【0153】
【化35】
【0154】
【化36】
【0155】
【化37】
【0156】
【化38】
【0157】
【化39】
【0158】
次に、感光材料201に対して、表20に示す内容のとおりにカブリ防止剤量または本発明の化合物を変更した以外は、201と全く同じ組成の感光材料202〜203を作製した。
【0159】
【表20】
【0160】
上記多層構成のカラー感光材料201〜203を、連続的に濃度が変化しているB、G、R、グレーのテストパターンをオリジナル反射原稿とし、富士写真フイルム(株)製「FUJIX PICTROSTAT200」を用いて処理したところ受像材料(ピクトロスタット用ペーパーPS−SG)上に鮮明なポジのカラー画像を得た。
【0161】
反射濃度測定器X−Rite310を用い、フィルターStatusAでDminおよびDmaxを測定した結果を表21に示した。表21より本発明の化合物は高濃度で低カブリの画像を与えることがわかった。また本発明の化合物を用いた感光材料203は感光材料202に比べて感度低下も小さいことがわかった。
【0162】
【表21】
【0163】
【発明の効果】
本発明の水に難溶な金属メルカプチドを含有するハロゲン化銀感光材料を還元剤、水および錯化剤の存在下で処理することによりディスクリミネーションが優れ、かつ高感度の画像を得ることができる。
Claims (3)
- 請求項1記載のハロゲン化銀感光材料を、像様露光後または像様露光と同時に、還元剤、水および前記亜鉛メルカプチドを構成する亜鉛イオンに対する錯形成化合物の存在下で現像処理することを特徴とする画像形成方法。
- 感光性ハロゲン化銀、還元剤、ハロゲン化銀の現像に対応または逆対応して拡散性色素を形成もしくは放出し得る色素供与性化合物、水に難溶な亜鉛メルカプチドおよび水に難溶な塩基性金属化合物を含有し、かつ、支持体の同一面上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層と少なくとも1層の非感光性親水性コロイド層を有し、該亜鉛メルカプチドを少なくとも1層の非感光性親水性コロイド層中に有するハロゲン化銀感光材料を、像様露光後または像様露光と同時に、錯形成化合物および媒染剤を含有する色素固定材料と膜面を重ね合わせて、水の存在下で加熱することにより像様に生成した拡散性色素を色素固定材料に転写することを特徴とするカラー画像形成方法。
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