JP3565301B2 - 組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酒精含有液、油脂及び増粘多糖類を含有する、特に食品分野で有用な新規な組成物及びその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より食品等の異臭、悪臭を低減、除去しようとする試みは、加工、調理あるいは生活環境の様々な場面で数多くなされている。食品等の異臭、悪臭を低減、除去しようとするいわゆる消臭方法をその原理面から整理すると、臭い成分を中和や付加・重合反応等の化学反応で異なる構造の化合物に変換する方法(化学的消臭)、臭い成分を活性炭等の吸着剤に吸着させたり溶剤に吸収させたりする方法(物理的消臭)、微生物の持つ様々な機能を利用して臭い成分の構造変換を行う方法(生物的消臭)、及び他の臭いの強い物質を共存させることによって悪臭を分かり難くしようとする方法(感覚的消臭=マスキング)に大別される。このうち、感覚的消臭は臭い成分を本質的に低減、除去するものではないので、感覚的方法で食品等の消臭を試みる場合も、許される範囲で他の化学、物理、あるいは生物的方法を併用することが望ましい。また、液状の組成物を例えば食品に添加して、調味効果、消臭効果を期待する場合、保存性の面から防腐効果も合せ持つことが望ましい。
ところで、調味料は文字通り食品の風味を調える目的で使用されるものであるが、新たな風味を付与するだけでなく組成物中に酒精含有液を用いることにより防腐効果を付与することができる。更に、該組成物は食品等の消臭目的でも用いられ、具体的には、塩基性の魚臭成分を酢で中和したり(マリネ、南蛮漬け)、煮魚調理時に清酒を使用して清酒中の酒精と共に悪臭成分を揮散させる、等の使用例が見られる。しかしながら、これら従来の調味料によって主に低減、除去される悪臭成分は、アミン類等の化学反応性の高い化合物であり、反応性の低いカルボニル化合物や閾値の小さな含硫化合物を、食品の加工、調理の場面で調味料を用いて低減、除去することは困難であった。
一方、油脂を含有する液状組成物の形態は、油脂部分と水溶液部分が分離したいわゆるセパレート型と、両者が外観上均質に分散した乳化型とに分けられる。このうち、セパレート型の場合は使用時に組成物を均質化するための振とう、かくはん等の操作が必要であり、特に容器が大きな場合は作業に困難を来す。よって、取り扱い易さでは乳化型の方が優っているが、油脂及び共存する水溶性成分の種類や量によっては、容易には安定的な乳化ができない場合がある。特に、ある程度量の油脂と酒精を含有する系での乳化は非常に困難であり、従来は食品用乳化剤や副原料を種々組合せて酒精含有乳化物を得ていた(特開昭59−113845号公報、特開平2−245172号公報等)。
しかし、乳化剤の共存しない系で酒精含有水溶液と油脂を乳化させることは困難であり、例えば、酒精含有調味料である、みりんと食用油脂を共存させてドレッシングとする場合も、形態はセパレート型に限られていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
酒精含有液と油脂を含有する系を乳化状態にした組成物は調味料として用いた場合セパレートタイプのものより作業性がよい。また、該組成物は、消臭効果や防腐効果も期待できる。しかし、乳化剤の共存しない系で酒精含有液と油脂を乳化させることは従来困難であった。
乳化剤は従来より多用されているが、本発明の目的は、従来常用されている乳化剤を用いない組成物、特に乳化型の組成物、及びそれらの用途を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すると、本発明は、酒精含有発酵液、油脂及び増粘多糖類を含有し、酒精濃度が5〜30v/v%、油脂濃度が5〜25w/v%、増粘多糖類の含有量が0.1〜1.5w/v%であり、かつ、乳化剤を含有せず、乳化された状態であることを特徴とする、不快臭低減及び/又は防腐用の乳化型組成物、及び該組成物を有効成分とする調味料、消臭剤、及び防腐剤に関する。
【0005】
本発明者らは酒精含有液及び油脂を含有する系の乳化状態を長期間保ち得る方法について鋭意検討した。その結果、酒精、油脂の系へ増粘多糖類を使用することにより乳化剤を含有させなくとも、乳化された状態を長く保ち得ることを見出し本発明を完成するに至った。
また該組成物は増粘多糖類を使用したことにより、対象物への付着性が高くなり調味料としての効果が向上し、乳化状態を維持することにより油脂の表面積が増加し化学的な手法で消臭が困難なカルボニル化合物や含硫化合物に起因する食品や生活環境中の悪臭を、油脂による吸収作用と酒精による揮散作用及び酒精含有液の芳香によるマスキング作用により相乗的に極めて効率的に低減、除去する効果を有し、更に、酒精による防腐効果を有していた。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明で使用する酒精含有液には、デンプン質や糖類を含有する天然原料から酵母の酒精発酵作用で生成したもの、又はこれらの成分を含むものがあり、清酒、焼酎、合成酒、老酒、赤酒、ワイン、ウイスキー、ブランデー等の酒類あるいは発酵調味料等及びこれらに類する、みりん等が代表的なものであるが、これらの単独又は組合せで使用することができ、また、これらの種類は特に限定されるものではない。更に、本発明で使用する酒精含有液には、通常の原料用アルコール、変性アルコール等のように、エチルアルコールを含有する液が含まれる。
本発明で酒精含有液を使用する目的は、酒精の持つ調味効果や消臭作用(酒精への悪臭成分の溶解、揮散、及び本発明の組成物を使用した食品を製造工程中又は摂食前に加熱した際に酒精と共に悪臭成分を揮散させること)及び防腐効果を持たせることにある。更に、酒精含有液の芳香成分による感覚的な消臭作用とを相乗的に作用させることが可能である。また、酒精の存在量は、酒精への悪臭成分の溶解及び防腐効果という点からは多い方がよいが、あまり多すぎると酒精の臭いが問題となる。よって、本発明の組成物中の酒精濃度として3〜50v/v%程度が適量である。
【0007】
次に、本発明で使用する油脂は、一般に使用される油脂であれば植物性、動物性のいずれでもよく特に限定はされない。本発明の組成物を使う場面での使い易さを考慮すると、例えば常温で流動性を有する大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、魚油等の液状油脂が望ましくこれらの単独又は組合せで使用することができ、また、これらの種類は特に限定されるものではない。本発明で油脂を使用する目的は、油脂への脂溶性臭気成分の溶解という物理的消臭効果を期待するものであり、更に、乳化分散させ油脂の表面積を増加させることにより対象物との接触面積が増大し結果として消臭効果の増大が期待できる。油脂への脂溶性臭気成分の溶解という意味からは、油脂の配合量は多い方が望ましいが、多すぎると使用時に油脂部分が分離する等の作業性等の問題が出るため、製品中濃度として3〜50w/v%程度が望ましい。
【0008】
更に、増粘多糖類の作用で酒精、水、油脂の乳化物を調製する場合、酒精及び油脂濃度が高すぎると安定な乳化物が得難くなるため、上記乳化物中の酒精濃度は5〜30v/v%、油脂濃度は5〜25w/v%とするのがより好ましい。
以上の酒精含有液及び油脂が持つ感覚的消臭作用と物理的消臭作用が相乗的に働くことにより、本発明の組成物を使用した食品等の悪臭が極めて効率的に低減される。
【0009】
また、酒精含有液や油脂を乳化物の形で使用すると、使用時の作業性が向上するのみならず消臭効果も一段と高まる。この場合、実験例1に例示するように、従来常用の乳化剤単独で酒精、水、及び油脂を40℃、3日間という条件で安定的に乳化状態を維持するのは困難であった。乳化状態を安定に維持できたのは増粘多糖類の単独使用の場合のみであることが判明した。
【0010】
本発明で使用する増粘多糖類としては、食品の製造に一般に使用されている食品添加物及び食品素材が使用でき、例えばカラギーナン、寒天、ゼラチン、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、デキストラン、アラビアガム、大豆食物繊維、海草抽出物類等が挙げられ、その他乳化効果を有する増粘多糖類も含めることができるがこれらの単独又は組合せで使用することができ、また、これらの種類は特に限定されるものではない。増粘多糖類の使用濃度は種類により異なるが一般的に0.1〜1.5w/v%の範囲で使用することができる。更に、増粘多糖類の中でもキサンタンガムが最も乳化安定効果に優れており0.1〜1.5w/v%の濃度で使用することが好ましい。酒精、水及び油脂の乳化安定にキサンタンガムを用いる場合は上記乳化物中の酒精濃度は3〜50v/v%、好ましくは5〜30v/v%、特に10〜20v/v%、油脂濃度は3〜50w/v%、好ましくは5〜25w/v%、特に10〜20w/v%とキサンタンガム濃度は0.1〜1.5w/v%、特に0.3〜1.0w/v%で使用することが好ましい。
【0011】
なお、本発明でいう乳化剤とは、一般にいう界面活性効果を有する物質のことを示し本発明で使用する増粘多糖類は含めない。
本発明でいう乳化された状態とは、本発明による構成要素が外観上ほぼ均質に分散した状態のことをいう。
本発明でいう調味料とは、食品の味を調整するもののことをいい、料理や加工食品の風味を消費者の嗜好に合せたり、食欲を増進させる働きをするものである。
本発明でいう消臭剤とは食品や生活環境中の悪臭、異臭、不快臭を低減、除去するものをいう。
本発明でいう防腐剤とは、微生物の増殖を抑える、若しくは微生物を死滅させる効果を有するものをいう。
また、本発明でいう酒精含有発酵液とは酒精含有液のうち、デンプン質や糖類を含有する天然原料から酵母の酒精発酵作用で生成したもの、又はこれらの成分を含むもので、発酵作用による有機酸や独特の芳香成分、エキス類を含有するものであり、清酒、焼酎、合成酒、老酒、赤酒、ワイン、ウイスキー、ブランデーや発酵調味料やこれらに類するみりんのことをいう。
【0012】
(実験例1)
老酒30ml、酒精10ml、水45ml、及び菜種サラダ油15gを200ml容ビーカーに入れ、表1の添加物を徐々に加えながら、高速回転かくはん機で10,000rpm、5分間かくはんした。該処理物の分析値は共に、アルコール含量14.9v/v%、油脂含量15.2%、pH4.5であった。処理物は40℃の恒温器中に保存した。3日後の状態を表1に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
使用する増粘多糖類については、特に限定はされないが、常温、あるいは低温時にゲル化するものは好ましくない。低温での溶解性等を考慮すると、キサンタンガム単独、あるいはキサンタンガムと他の増粘多糖類との併用が特に好適である。その使用量は、使用する増粘多糖類の種類、酒精及び油脂の量、及び他の共存成分の種類、量等により変動するため一概にはいえないが、キサンタンガムの場合、でき上り製品当り通常0.1〜1.5w/v%程度使用すればよい。
【0015】
酒精含有液及び油脂の増粘多糖類存在下での乳化は通常の方法で行えばよく、例えば、酒精含有液にあらかじめ増粘多糖類を分散、溶解して後油脂を添加してもよく、酒精含有液、油脂、及び増粘多糖類を同時に添加、混合してもよい。乳化に使用する機械についても特に限定はなく、一般用かくはん機、高速回転かくはん分散機、コロイドミル、加圧ノズル乳化機、超音波乳化機、機械的振動かくはん機、乳化用膜等、飲食品の乳化に通常使用される機械類が使用できる。また、酒精含有液、水、及び油脂以外の食品成分(食塩、アミノ酸、タンパク質、有機酸、糖質、香料等)が共存することも、乳化を阻害しない範囲においては許容される。なお、本発明でいう乳化とは、乳化操作後、油脂、酒精、水等の本発明の組成物の構成成分が外観上ほぼ均質化された状態をいい、なおかつ乳化状態が持続することをいう。
【0016】
以上記した原材料及び手法を用いて調製された本発明の組成物は、酒精含有液の香りをもった粘性のある、中でも好適なものは乳化状態の液であり、対象品に必要量添加混合することにより該対象品の調味、悪臭の低減、除去、防腐をすることができる。また、例えば食品等に直接添加する方法以外にも、特に原材料の悪臭を低減、除去する目的では、本発明の組成物を適当濃度に水で希釈し、それに食品原材料を浸漬する、という使用方法も可能である。
【0017】
本発明の組成物の使用対象品には特に制限はないが、化学的手法での消臭が困難なカルボニル化合物や含硫化合物の含量が多い畜肉類、動物臓器、魚介類、野菜類、及びそれらの加工食品等のみならず生活環境中の異臭、悪臭を発生するものや微生物の発生により不都合の生じるものに対して好適な対象である。
本発明の組成物の使用量は特に制限はないが、対象品により適宜選択することができ、例えば対象品に噴霧することにより少量の使用でよい場合もあり、また、対象品を該組成物中に漬け込む等の方法で大量に使用することも可能である。
【0018】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
実施例1
清酒85リットルを高速回転かくはん機でかくはんしながら、キサンタンガム〔大日本製薬(株)製「モナートガムGS」〕0.7kgを徐々に加え均一に溶解した。これに菜種サラダ油〔日清製油(株)製「キャノーラサラダ油」〕15リットルを添加し、12,000rpmで5分間かくはんして均質な乳化状態の組成物(以下「組成物A」と称す)100リットルを得た。
組成物Aの消臭効果を調べるために、表2の配合で鶏団子を作り、パネラー10名による官能検査を行った。その結果、表3に示すように、組成物A、1%添加品は無添加品に比べ鶏肉独特の不快臭が低減し、味的にも合せて好ましい風味であるとの評価を得た。
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
実施例2
白ワイン5リットル、95%アルコール1リットル、水2リットル、食塩0.2kg、キサンタンガム〔大日本製薬(株)製「モナートガムGS」〕0.04kg、グアーガム〔大日本製薬(株)製「グアパックPF−20」〕0.01kg及び大豆白絞油2kgを高速回転かくはん機を用いて8,000rpmで3分間かくはんして予備乳化した後、加圧ノズル乳化機(150kg/cm2 )で処理して均質な乳化状態の組成物(以下「組成物B」と称す)を得た。
「組成物B」1リットルを水で3倍に薄めたものに鶏レバー3kgを1.5時間浸漬して引き上げ、表面の組成物Bを布巾で拭った後、水3リットル、濃い口醤油0.6リットル、砂糖0.4kgを加えて煮た。これをパネラー8名で官能検査した結果、全員が対照(「組成物B」の代りに水に1.5時間浸漬した鶏レバーを使用したもの)に比べて不快臭が大幅に低減し味的にも合せて好ましい風味になっていると評価した。
【0023】
実施例3
アルコール度数35度の甲類焼酎〔宝酒造(株)製〕85リットル、大豆白絞油5kgに水を加え容量を100リットルに調整した。これを高速回転かくはん機を用いて10,000rpmでかくはんしながら、キサンタンガム〔大日本製薬(株)製「モナートガムGS」〕0.3kgを徐々に加えて溶解し、均質な乳化状態の組成物(以下「組成物C」と称す)を得た。この組成物Cを使用して表4の配合でかまぼこを調製した。
【0024】
【表4】
【0025】
得られたかまぼこを約1cmの厚さに切って皿に並べ、ラップで覆って室温で保存したところ、表5に示すように、組成物C添加品は無添加品に比べて「ねと」の発生が1〜2日遅れた。
【0026】
【表5】
【0027】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の組成物は、それを使用した食品等における、アミン類の臭いの低減、除去のみならず特に化学的手法での消臭が困難なカルボニル化合物や含硫化合物の含量が多い畜肉類、動物臓器、魚介類、野菜類、及びそれらの加工食品等や廃棄物等の悪臭を極めて効率的に低減、除去することができ調味効果、防腐効果も合せ持つ、優れた効果を有する組成物である。
Claims (5)
- 酒精含有発酵液、油脂及び増粘多糖類を含有し、酒精濃度が5〜30v/v%、油脂濃度が5〜25w/v%、増粘多糖類の含有量が0.1〜1.5w/v%であり、かつ、乳化剤を含有せず、乳化された状態であることを特徴とする、不快臭低減及び/又は防腐用の乳化型組成物。
- 請求項1記載の乳化型組成物を有効成分とすることを特徴とする調味料。
- 請求項1記載の乳化型組成物を有効成分とすることを特徴とする消臭剤。
- 請求項1記載の乳化型組成物を有効成分とすることを特徴とする防腐剤。
- 増粘多糖類がキサンタンガムであることを特徴とする請求項1記載の乳化型組成物。
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