JP3540099B2 - ヒドロキシル基含有アミン化合物及びその製造中間体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用の有機光導電性材料として、またヒドロキシル基から誘導される種々の材料の製造中間体としても有用なヒドロキシル基含有アミン化合物及びその製造中間体としても有用なアミン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式において使用される感光体の有機光導電性材料としては、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、トリフェニルアミン化合物(米国特許第3,180,730号)、ベンジジン化合物(米国特許第3,265,496号、特公昭39−11546号公報、特開昭53−27033号公報)等のような数多くの提案がなされている。
ここに言う「電子写真方式」とは、一般に光導電性の感光体を、先ず暗所で、例えばコロナ放電などにより帯電せしめ、次いで画像状露光を行って露光部の電荷を選択的に放電させることにより静電潜像を得、更にこの潜像部をトナーなどを用いた現像手段で可視化して画像を形成するようにした画像形成法の一つである。このような電子写真方式における感光体に要求される基本的な特性としては、1)暗所において適当な電位に帯電されること、2)暗所において電荷の放電が少ないこと、3)光照射により速やかに電荷を放電すること、などがあげられる。
【0003】
また、近年において、感光体の更なる機械的強度の向上を目的として高分子光導電性材料(米国特許第4,801,517号、米国特許第4,806,443号、米国特許第4,806,444号、特開平3−221522号、特開平4−11627号)が提案されている。
しかしながら、従来の低分子あるいは高分子光導電性材料は、前記の要求を必ずしも満足していないのが実状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、基本的な電子写真特性を全て満足する光導電性材料として有用であり、また、ヒドロキシル基から誘導される種々の材料の製造中間体としても有用である新規ヒドロキシル基含有アミン化合物及びその製造中間体としても有用である新規アミン化合物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記一般式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)及び(7)で表されるヒドロキシル基含有アミン化合物(エーテル基又はエステル基含有アミン化合物も含む)が提供される。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
〔式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)及び(7)中、R1は水素原子、無置換のアルキル基、フッ素原子、シアノ基、フェニル基、ハロゲン原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェニル基が置換したアルキル基、無置換のアリール基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子が置換したアリール基を表す。R2、R3は水素原子、アシル基、無置換のアルキル基、フッ素原子、シアノ基、フェニル基、ハロゲン原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェニル基が置換したアルキル基、無置換のアリール基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子が置換したアリール基、無置換の複素環基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子が置換した複素環基を表す。R4、R5は水素原子、無置換のアルキル基、フッ素原子、シアノ基、フェニル基、ハロゲン原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェニル基が置換したアルキル基、無置換のアルコキシ基、フッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子若しくはC1〜C5のアルキル基で置換されたフェニル基が置換したアルコキシ基、ハロゲン原子を表す。R6、R7は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ベンジル基、アセチル基を表す。Ar1は少なくとも1個のアミノ基を有するアリール基、少なくとも1個のアミノ基を有する複素環基、アミノ部位を有する無置換の複素環基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子が置換した、アミノ部位を有する複素環基を表す。Ar2 及びAr 3 はアリレン基を表す。但し、R2とR3、R4とR5、R6とR7、Ar2とAr 3 は、それぞれ相互に同一でも異なっていてもよい。〕
【0006】
以下、本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物及びその製造中間体のエーテル基又はエステル基含有アミン化合物について更に詳細に説明する。
前記一般式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)及び(7)で表されるアミン化合物において、R1〜R7が置換もしくは無置換のアルキル基である場合、及びR 5がアルコキシ基の場合のアルコキシ基を構成するアルキル基部分の具体例としては以下のものを挙げることができる。
C1〜C5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子若しくはC1〜C5のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
【0007】
また、前記一般式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)及び(7)で表されるアミン化合物において、R1〜R3が置換もしくは無置換のアリール基である場合の具体例としては以下のものを挙げることができる。
フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基等が挙げられ、これらは低級アルキル基、低級アルコキシ基及びハロゲン原子を置換基として有していてもよい。また、下記一般式(9)で表される基を挙げることができる。
【化9】
〔式中、Xは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−及び以下の2価基を表す。
【化10】
【化11】
(ここで、R8、R9は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表し、nは1〜12の整数、lは1〜3の整数を表す。)〕
【0008】
前記一般式(9)中の2価の基Xの具体例において、R8、R9が置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基及び置換もしくは無置換のアリール基の具体例は前記R1〜R7の定義と同様である。また、アミノ基の具体例としては、下記一般式で表される基が挙げられる。
【化12】
(R10、R11は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
ここで、R10、R11において、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基の具体例は前記R1〜R7の定義と同様である。また、R10、R11は共同で環を形成しても良い。また、アリール基上の炭素原子と共同で環を形成しても良い。このような具体例としてはピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。
【0009】
また、R4、R5、R8及びR9がハロゲン原子の場合及び、R1〜R11がハロゲン原子を有する基である場合のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。
更にまた、前記一般式(2)、(4)、(5)及び(7)で表されるアミン化合物において、R2、R3、R6、R7のアシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0010】
また、前記一般式(2)、(4)、(5)で表されるアミン化合物において、R2、R3の置換もしくは無置換の複素環基の具体例としては、フラン、チオフェン、オキサゾール、ピリジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等から誘導される1価基が挙げられ、これらは低級アルキル基、低級アルコキシ基及びハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
【0010】
また、前記一般式(2)、(4)、(5)及び(8)で表されるアミン化合物において、R2、R3の置換もしくは無置換の複素環基の具体例としては、フラン、チオフェン、オキサゾール、ピリジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等から誘導される1価基が挙げられ、これらは低級アルキル基、低級アルコキシ基及びハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
【0011】
また、前記一般式(1)、(3)及び(7)で表されるアミン化合物において、Ar1が少なくとも1個のアミノ基を有するアリール基は、下記一般式(10)で表される基である。
【化13】
(式中、R2、R3は前記定義と同じ。Ar4はアリレン基を表す。mは1〜3の整数を表す。)
ここでAr4の具体例としては、前記アリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0012】
更にAr1が少なくとも1個のアミノ基を有する複素環基は、下記一般式(11)で表される基である。
【化14】
(式中、R2、R3は前記定義と同じ。Ar5は2価の複素環基を表す。mは1〜3の整数を表す。)
ここでAr5の具体例としては、前記1価の複素環基から誘導される2価基が挙げられる。
【0013】
更にまた、Ar1がアミノ部位を有する無置換の複素環基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子が置換した、アミノ部位を有する複素環基である場合の該複素環の具体例としては、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等が挙げられ、これらの複素環は、前記R1〜R3で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基を置換基として有していても良い。
【0014】
また、前記一般式(1)、(2)及び(7)で表されるアミン化合物において、Ar2、Ar 3 のアリレン基の具体例としては、前記アリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0015】
本発明に係わるヒドロキシル基含有アミン化合物は新規物質であり、以下にその製造方法を示す。即ち、前記一般式(1)〜(6)で表される化合物は、以下に示す一般式(7)、(8)で表される化合物のエーテルの開裂反応あるいはエステルの開裂反応により合成される。
【化7】
【化8】
(式中、R 2、R3、R6、R7 、Ar2 及びAr 3 は、前記した定義のものと同一のものを表す。Ar 4 はアリレン基を表し、アリレン基の具体例としては、前記アリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
但し、Ar 2 とAr 3 とAr 4 は、それぞれ相互に同一でも異なっていてもよい。)
【0016】
該エーテルの開裂反応は、具体的には酸性試薬による方法と塩基性試薬による方法が挙げられる。
酸性試薬としては、臭化水素、ヨウ化水素、トリフルオロ酢酸、ピリジンの塩酸塩、濃塩酸、ヨウ化マグネシウムエチラート、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、三ヨウ化ホウ素等が、塩基性試薬としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウム、リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム、リチウムジフェニルホスフィド、ナトリウムチオエチラート等を挙げることができる。
溶媒としては無水酢酸、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、ブタノール等を挙げることができ、反応温度は用いる試薬の反応性によるが、一般的には、室温から200℃の間で行われる。
【0017】
前記一般式(7)で表される化合物は、以下の表1に示す合成スキーム、即ち一般式(12)で表される化合物と一般式(13)で表される化合物とのWittig反応又は変法Wittig反応により合成される。
【表1】
ここで、R12の具体例としては、C1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。
【0018】
上記反応において、好ましくは、以下の表2に示す合成スキームに示される変法Wittig反応により、一般式(14)で表される化合物と一般式(15)で表される化合物とから前記一般式(8)で表される化合物を高収率で合成することができる。
【表2】
このときの反応は従来公知の方法でよく、例えば、DMFのような極性溶媒中にホスホネート化合物とホルミル化合物とを溶解させ、水冷下でカリウム−t−ブチラートあるいはナトリウムメチラートのような強塩基化合物を少しずつ加えることにより容易に合成できる。また、一般式(14)及び一般式(15)で表される化合物は、それぞれ従来公知の方法で合成される。例えば、ホスホネート化合物の合成ではEur.J.Med.Chem.(1993)28,943−948に記載の方法によっても合成される。
【0019】
また、一般式(8)で表されるヒドロキシル基含有アミン化合物において、R2、R3がアルキル基である場合は、下記一般式(16)で表される第一級アミン化合物とハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸、スルホン酸エステル等とを、酸捕捉剤の存在下に反応させることによっても製造できる。
【化15】
(式中、R6、R7、Ar2、Ar3及びAr4は前記した定義のものと同一のものを表す。)
【0020】
また、一般式(8)で表されるヒドロキシル基含有アミン化合物において、R2、R3が置換もしくは無置換のアリール基である場合は、前記一般式(16)で表される第一級アミン化合物とハロゲン化アリールとを、銅粉、酸化銅あるいはハロゲン化銅等及びアルカリ性物質の共存下に、無溶剤あるいは溶媒中で、窒素気流下、150〜250℃の温度において反応させることによっても製造することができる。この場合、アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを挙げることができる。また、反応溶媒としては、ニトロベンゼン、ジクロロベンゼン、キノリン、DMF、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどを挙げることができる。
【0021】
また、R2、R3が異なる置換もしくは無置換のアリール基である化合物は、前記一般式(16)で表される第一級アミン化合物のアミノ基の一方の水素をアシル基等で保護した後、ハロゲン化アリールを反応させ、次いで加水分解し、その後、再びハロゲン化アリールと反応させることによって製造することができる。ハロゲン化アリールとの反応条件は上記と同様である。
【0022】
更にR2が置換又は無置換のアルキル基でR3が置換又は無置換のアリール基である化合物は、例えば前記のN−アシル化合物を出発原料としてハロゲン化アリールとの反応を行い、加水分解した後、窒素のアルキル化剤を反応させることにより得られる。
【0023】
本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物は、電子写真感光体に於ける光導電性素材として極めて有用であり、染料やルイス酸などの増感剤によって光学的あるいは化学的に増感される。更にこのものは、有機顔料あるいは無機材料を電荷発生物質とする、いわゆる機能分離型に於ける電荷輸送物質としてとりわけ有用である。
【0024】
上記増感剤としては、例えば、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット等のトリアリールメタン染料、ローズベンガル、エリスロシン、ローダミン等のキサンテン染料、メチレンブルー等のチアジン染料、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4−ジニトロ−9−フルオレノン等が挙げられる。
【0025】
また、有機顔料としてはシーアイピグメントブルー25(CI No.21180)、シーアイピグメントレッド41(CI No.21200)、シーアイピグメントレッド3(CI No.45210)等のアゾ顔料、シーアイピグメントブルー16(CI No.74100)等のフタロシアニン系顔料、シーアイバットブラウン5(CI No.73410)、シーアイバットダイ(CI No.73030)等のインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB、インダンスレンスカーレッドR等のペリレン系顔料が挙げられる。また、セレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、α−シリコン等の無機材料も使用できる。
【0026】
また、ヒドロキシル基から誘導される種々の材料の製造、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の製造中間体としても有用である。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例1
ジエチル〔ビス(4−メトキシフェニル)メチル〕ホスホネート40.95g(0.11mol)と4,4′−ジメチル−4″−ホルミルトリフェニルアミン33.87g(0.11mol)を脱水処理したDMF500mlに溶解させ水浴で22〜25℃にした後、カリウム−t−ブチラート19g(0.16mol)を撹拌しながら少しずつ加えて反応させた。添加終了後室温で更に7時間撹拌した後、水400mlで希釈し、生成物を濾過して得た。その後、シリカゲルによるカラムクロマト処理をトルエン溶媒を用いて行い、更にエタノールとトルエンの混合溶媒によって再結晶精製し、下記構造式(17)で表される4,4′−ジメチル−4″−〔2,2−ビス(4−メトキシフェニル)ビニル〕トリフェニルアミン(化合物No.1)50.59g(収率88%)を得た。この物は、淡黄色の針状結晶で融点は170.8〜171.4℃であった。赤外吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、元素分析の結果を以下に示す。
【化16】
赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図1に示した。
プロトン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3溶液)を図2に示した。
元素分析値(%)
C H N
実測値 84.52 6.54 2.82
C36H33NO2としての計算値 84.51 6.50 2.74
【0029】
実施例2〜12
下記に示す構造のホスホネート化合物と下記表1に示すホルミル化合物を原料として使用し、実施例1と同様にして本発明のアミン化合物を得た。
それらの物性等を測定し、結果を下記表2に示す。
【0030】
ホスホネート化合物
P−1 ジエチル〔ビス(4−メトキシフェニル)メチル〕ホスホネート
P−2 ジエチル〔ビス(3−メトキシフェニル)メチル〕ホスホネート
【0031】
【表1−(1)】
【0032】
【表1−(2)】
【0033】
【表1−(3)】
【0034】
【表2−(1)】
【0035】
【表2−(2)】
【0036】
【表2−(3)】
【0037】
【表2−(4)】
【0038】
実施例13
実施例11で得られたジメトキシ化合物45.5g(81mmol)とナトリウムチオエチラート40.0g(452mmol)を乾燥処理したDMF300mlに加え、窒素気流下で8時間加熱還流した。室温まで放冷した後、内容物を600mlの氷水に注ぎ、濃塩酸にて酸性とした。酢酸エチルで抽出した後、有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去し、淡褐色油状物を得た。この油状物を無水酢酸100mlに溶解しピリジン10mlを加えた。10分後内容物を水にあけ、沈殿物を水洗乾燥し淡黄粉末49.0g(収率97.8%)を得た。これをシリカゲルでカラムクロマト処理〔溶離液:トルエン〕し、その後、酢酸エチルとトルエンの混合溶媒から再結晶して表に示す淡黄色針状結晶のジアセトキシ化合物45.0g(収率89.8%)を得た。得られた化合物の融点、赤外吸収スペクトル、元素分析の結果を表3に併わせて示す。
【0039】
実施例14
実施例12で得られたジメトキシ化合物を使用する以外は実施例13と同様にして表3に示すジアセトキシ化合物を得た。結果を表3に示す。
【0040】
実施例15
実施例7で得られたジメトキシ化合物を使用する以外は実施例13と同様にして表3に示すジアセトキシ化合物を得た。結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
実施例16
実施例1で得られた4,4′−ジメチル−4″−〔2,2−ビス(4−メトキシフェニル)ビニル〕トリフェニルアミン(化合物No.1)11.0g(21.5mmol)とナトリウムチオエチラート10.0g(107mmol)を乾燥処理したDMF110mlに採り、窒素気流下で3時間加熱還流した。室温まで放冷した後、内容物を氷水にあけ、濃塩酸により中和した。これを酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗、乾燥後溶媒を留去した後、シリカゲルでカラムクロマト処理〔溶離液:トルエン/酢酸エチル(7/1vol.)〕し、黄色粉末10.87gを得た。これをシクロヘキサンとトルエンの混合溶媒から再結晶した後減圧加熱乾燥して黄色粉末状の下記構造式(18)で表される4,4’−ジメチル−4”−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕トリフェニルアミン(化合物No.16)9.59g(収率92.3%)を得た。この物はほとんどが非晶質状で明瞭な融点を示さなかったが一部結晶化した部分の融点は172.5℃であった。
【化17】
得られた化合物の赤外吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、元素分析の結果を以下に示す。
赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図20に示した。
プロトン核磁気共鳴スペクトル(d6−DMSO溶液)を図21に示した。
元素分析値(%)
C H N
実測値 84.58 6.21 2.92
C34H29NO2としての計算値 84.44 6.04 2.90
【0043】
実施例17〜27
実施例2〜12で得られた前駆体アミン化合物を原料として使用し、実施例16と同様にして本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物を得た。
それら物性等を測定し、結果を下記表4に示す。
【0044】
【表4−(1)】
【0045】
【表4−(2)】
【0046】
【表4−(3)】
【0047】
【表4−(4)】
【0048】
応用例1
電荷発生物質として下記構造式(19)で表されるトリスアゾ化合物7.5部
【化18】
及びポリエステル樹脂〔(株)東洋紡績製バイロン200〕の0.5%テトラヒドロフラン溶液500部をボールミル中で粉砕混合し、得られた分散液をアルミニウム蒸着ポリエステルフィルム上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥して約1μm厚の電荷発生層を形成した。次に、ポリカーボネート樹脂〔(株)帝人製パンライトK−1300〕1部とテトラヒドロフラン8部の樹脂溶液に、電荷輸送物質として実施例1で得られたアミン化合物(化合物No.1)1部を溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、80℃で2分間、次いで120℃で5分間乾燥して厚さ約20μmの電荷輸送層を形成して感光体を作製した。
次に、こうして得られた積層型電子写真感光体の可視域での感度を強べるため、この感光体に静電複写紙試験装置〔(株)川口電機製作所製SP428型〕を用いて暗所で−6KVのコロナ放電を20秒間行って帯電させた後、感光体の表面電位Vm(V)を測定し、更に20秒間暗所に放置した後、表面電位Vo(V)を測定した。次いで、タングステンランプ光を感光体表面での照度が4.5luxになるように照射して、Voが1/2になるまでの露光量E1/2(lux・sec)を測定した。
Vm=−1310V
Vo=−740V
E1/2=0.51 lux・sec
【0049】
応用例2
電荷発生物質として下記構造式(20)で表されるビスアゾ化合物7.5部
【化19】
及びポリエステル樹脂[(株)東洋紡績製バイロン200]の0.5%テトラヒドロフラン溶液500部をボールミル中で粉砕混合し、得られた分散液をアルミニウム蒸着ポリエステルフィルム上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥して約1μm厚の電荷発生層を形成した。次に、ポリカーボネート樹脂[(株)帝人製パンライトK−1300]1部とテトラヒドロフラン8部の樹脂溶液に、電荷輸送物質として実施例10で得られたヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.16)1部を溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、80℃で2分間、次いで120℃で5分間乾燥して厚さ約20μmの電荷輸送層を形成して感光体を作製した。
次に、こうして得られた積層型電子写真感光体の可視域での感度を調べるため、この感光体に静電複写紙試験装置[(株)川口電機製作所製SP428型]を用いて暗所で−6KVのコロナ放電を20秒間行って帯電させた後、感光体の表面電位Vm(V)を測定し、更に20秒間暗所に放置した後、表面電位Vo(V)を測定した。次いで、タングステンランプ光を感光体表面での照度が4.5 luxになるように照射して、Voが1/2になるまでの露光量E1/2(lux・sec)を測定した。
Vm=−1014V
Vo=−323V
E1/2=0.80 lux・sec
【0050】
応用例3〜8
電荷輸送物質として実施例で得られた下記構造式を使用する以外は、応用例2と同様にして感光体を作製し、評価した結果を以下の表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
応用例9
〈ポリマー原料として応用例〉
実施例16で得られたヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.16)4.84部を脱水処理したテトラヒドロフラン(THF)40部に溶解させ窒素ガス気流下で撹拌しながらトリエチルアミンを3.06部加えた後にジエチレングリコールのビスクロロホーメート2.32部をTHF8部に溶解させた液を水浴で20℃に冷却しながら30分かけて滴下した。その後、室温でさらに1時間撹拌反応させ、4重量%のフェノールのTHF溶液を1部加え、反応を終了させた。その後、析出した塩を濾過によって除き、得られた反応液をメタノール1500部の中へ滴下してポリカーボネート樹脂を得た。この物を濾過乾燥して取り出し、再びTHF70部に溶解させてメタノール1500部中へ滴下する再沈殿操作を2回繰り返して下記構造式(21)で表わされるポリカーボネート樹脂を得た。
【化20】
得られたポリカーボネート樹脂の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は以下のようであった。
数平均分子量 17000
重量平均分子量 32300
【0053】
【発明の効果】
本発明に係わるヒドロキシル基含有アミン化合物は、前記したように光導電性素材として有効に機能し、また染料やルイス酸などの増感剤によって光学的あるいは化学的に増感されることから、電子写真感光体の感光層の電荷輸送物質等として好適に使用され、特に電荷発生層と電荷輸送層を2層に区分した、いわゆる機能分離型感光層における電荷輸送物質として有用なものである。
また、ヒドロキシル基から誘導される種々の材料の製造、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の製造中間体としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアミン化合物(化合物No.1)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図2】本発明のアミン化合物(化合物No.1)の核磁気共鳴スペクトル図(CDCl3溶液)。
【図3】本発明のアミン化合物(化合物No.2)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図4】本発明のアミン化合物(化合物No.2)の核磁気共鳴スペクトル図(CDCl3溶液)。
【図5】本発明のアミン化合物(化合物No.3)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図6】本発明のアミン化合物(化合物No.3)の核磁気共鳴スペクトル図(CDCl3溶液)。
【図7】本発明のアミン化合物(化合物No.4)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図8】本発明のアミン化合物(化合物No.5)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図9】本発明のアミン化合物(化合物No.6)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図10】本発明のアミン化合物(化合物No.7)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図11】本発明のアミン化合物(化合物No.7)の核磁気共鳴スペクトル図(CDCl3溶液)。
【図12】本発明のアミン化合物(化合物No.8)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図13】本発明のアミン化合物(化合物No.9)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図14】本発明のアミン化合物(化合物No.10)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図15】本発明のアミン化合物(化合物No.11)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図16】本発明のアミン化合物(化合物No.12)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図17】本発明のアミン化合物(化合物No.13)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図18】本発明のアミン化合物(化合物No.14)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図19】本発明のアミン化合物(化合物No.15)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図20】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.16)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図21】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.16)の核磁気共鳴スペクトル図(d6−DMSO溶液)。
【図22】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.17)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図23】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.17)の核磁気共鳴スペクトル図(d6−DMSO溶液)。
【図24】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.18)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図25】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.18)の核磁気共鳴スペクトル図(d6−DMSO溶液)。
【図26】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.19)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図27】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.20)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図28】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.21)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図29】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.22)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図30】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.22)の核磁気共鳴スペクトル図(d6−DMSO溶液)。
【図31】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.23)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図32】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.24)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図33】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.25)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図34】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.26)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図35】本発明のヒドロキシル基含有アミン化合物(化合物No.27)の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
Claims (7)
- 下記一般式(1)で表されるヒドロキシル基含有アミン化合物。
- 下記一般式(7)で表されるアミン化合物。
3−カルバゾイル基、4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル基、4−(N−フェニル−N−α−フェニルスチルベン−4’イルアミノ)フェニル基、4−(N−フェニル−N−スチルベン−4イルアミノ)フェニル基、4−(N−フェニル−N−2−フルオレニルアミノ)フェニル基、4−(N−フェニル−N−1−ピレニルアミノ)フェニル基、4−{N−フェニル−N−4−(4−N’,N’−ジフェニルアミノフェニルオキシ)フェニルアミノ}フェニル基、4−{N−フェニル−N−4−(4−N,N−ジフェニルアミノフェネチル)フェニルアミノ}フェニル基、4’−N,N−ジフェニルアミノビフェニル−4−イル基〕
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