JP3539994B2 - フルオロアルキル基を有するジアミン化合物 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真用の有機光導電性材料として有用な新規なフルオロアルキル基を有するジアミン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式において使用される感光体の有機光導電性材料としては、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、トリフェニルアミン化合物(米国特許第3,180,730号)、ベンジジン化合物(米国特許第3,265,496号、特公昭39−11546号公報、特開昭53−27033号公報)等のような数多くの提案がなされている。
ここにいう「電子写真方式」とは、一般に光導電性の感光体を、先ず暗所で例えばコロナ放電などにより帯電せしめ、次いで画像状露光を行なって露光部の電荷を選択的に放電させることにより静電潜像を得、更にこの潜像部をトナーなどを用いた現像手段で可視化して画像を形成するようにした画像形成法の一つである。このような電子写真方式における感光体に要求される基本的な特性としては、1)暗所において適当な電位に帯電されること、2)暗所において電荷の放電が少ないこと、3)光照射により速やかに電荷を放電すること、などがあげられる。
しかしながら、従来の光導電性有機材料は、これらの要求を必ずしも満足していないのが実状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、基本的な電子写真特性を全て満足し、光導電性材料として有用な、新規なフルオロアルキル基を有するジアミン化合物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、
下記一般式(I)で表わされるフルオロアルキル基を有するジアミン化合物が提供される。
【化1】
(式中、R1〜R4は、アルキル基、もしくはフェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニルオキシ基から選ばれる一つで置換されているアルキル基、又はアリール基、もしくは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、置換アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる一つで置換されているアリール基を表す。)
【0005】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の、前記一般式(I)で表わされるフルオロアルキル基を有するジアミン誘導体におけるR1〜R4としては、次のものが挙げられる。
R1〜R4がアルキル基の場合、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級アルキル基もしくはフェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニルオキシ基から選ばれる一つで置換されているアルキル基である。
R1〜R4がアリール基の場合、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、アセナフテニル基、ピレニル基、フェナントリル基、クリセニル基、フルオランテニル基などが挙げられ、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、置換アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる一つで置換されているアリール基を表す。)
【0006】
本発明に係る一般式(I)(化1)で示されるフルオロアルキル基を有するジアミン誘導体は新規物質であり、フルオロアルキル基を含有することを特徴としているが、以下その製造方法を詳細に説明する。
ヘキサフルオロプロペンオリゴマーにフッ化物イオンを付加させて得られるパーフルオロアルキルアニオン(II)と3,5−ジニトロベンジルハライド(III)との反応によりフルオロアルキル化ジニトロ化合物(IV)を得、これを還元してジアミノ化合物(VI)に誘導して後述の方法に従って本発明のフルオロアルキル基を有するジアミン化合物を得ることができる。
前記のヘキサフルオロプロペンオリゴマーとしては2量体および3量体が良く知られているが、本発明では2量体の使用が特に好ましい。
【0007】
前記一般式(I)においてR1〜R4 がアルキル基、もしくはフェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニルオキシ基から選ばれる一つで置換されているアルキル基、又は、アリール基、もしくは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、置換アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる一つで置換されているアリール基を表す化合物の製造に当たっては、前記(VI)のジアミン化合物と目的物に対応する、置換もしくは無置換のハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸、スルホン酸エステル等とを酸捕捉剤(アルカリ性物質)の存在下に反応させることによって製造することができる。
【0008】
また前記一般式(I)においてR1〜R4がアリール基、もしくは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、置換アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる一つで置換されているアリール基を表す化合物の製造に当たっては、前記(VI)のジアミノ化合物と、ハロゲン化アリールとを、銅粉、酸化銅あるいはハロゲン化銅等及びアルカリ性物質の共存下に、無溶媒あるいは溶媒中で、窒素気流下、150〜250℃の温度において反応させることによって製造することができる。
【0009】
この場合、アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを挙げることができる。また、反応溶媒としては、ニトロベンゼン、ジクロルベンゼン、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどを挙げることができる。
また、R1〜R4は異なるが、アリール基、もしくは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、置換アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる一つで置換されているアリール基を表す化合物の場合は、前記(VI)のジアミノ化合物のアミノ基の一方の水素をアシル基等で保護した後、ハロゲン化アリールを反応させ、ついで加水分解し、その後、再びハロゲン化アリールと反応させることによって製造することができる。ハロゲン化アリールとの反応条件は上記と同様である。
更に、R1〜R4 の少なくとも1つがアルキル基、もしくはフェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニルオキシ基から選ばれる一つで置換されているアルキル基、又は、アリール基、もしくは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、置換アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる一つで置換されているアリール基を表す化合物であり、R1〜R4の少なくとも1つが、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、置換アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる一つで置換されているアリール基を表す化合物の場合の製造方法は、例えば前述のN−アシル化合物を出発原料としてハロゲン化アルールとの反応を行ない、加水分解したのち窒素のアルキル化剤を反応させることにより得られる。
【0010】
本発明の前記一般式(I)で表わされる新規なフルオロアルキル基を有するジアミン誘導体は、電子写真感光体に於ける光導電性素材として極めて有用であり、染料やルイス酸などの増感剤によって光学的あるいは化学的に増感される。更にこのものは、有機顔料あるいは無機顔料を電荷発生物質とする、所謂機能分離型に於ける電荷輸送物質としてとりわけ有用である。
【0011】
上記増感剤としては、例えば、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット等のトリアリールメタン染料、ローズベンガル、エリスロシン、ローダミン等のキサンチン染料、メチレンブルー等のチアジン染料、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4−ジニトロ−9−フルオレノン等が挙げられる。
【0012】
また、有機顔料としてはシーアイピグメントブルー25(CI No.21180)、シーアイピグメントレッド41(CI No.21200)、シーアイピグメントレッド3(CINo.45210)等のアゾ顔料、シーアイピグメントブルー16(CI No.74100)等のフタロシアニン系顔料、シーアイバットブラウン5(CI No.73410)、シーアイバットダイ(CI No.73030)等のインジゴ系顔料、アルゴスカーレッドB、インダンスレンスカーレッドR等のペリレン系顔料が挙げられる。また、セレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、α−シリコン等の無機顔料も使用できる。
【0013】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0014】
実施例1
5−(1H,1H,2,2−ジメチルパーフルオロペンチル)−1,3−フェニレンジアミン2.20g、炭酸カリウム5.52g、銅粉0.20gおよびヨードベンゼン20mlを窒素気流下、共沸脱水しながら還流下8時間攪拌した。室温まで放冷したのち不溶部をろ過除去し、過剰のヨードベンゼンを減圧下留去したのち、残査をトルエン抽出、水洗、乾燥後、トルエンを留去し褐色油状物を得た。これをカラムクロマト処理〔担体;シリカゲル溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/4(vol)〕した後メタノールから再結晶して無色葉状晶の5−(1H,1H−2,2−ジメチルパーフルオロペンチル)−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミン2.20gを得た。
融点138.0〜139.0℃
元素分析値(%)
C H N F
実測値 59.77 3.40 3.79 33.02
C37H25N2F13 59.68 3.39 3.76 33.17
としての計算値
この化合物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図1に示した。
【0015】
実施例2〜4
実施例1で用いたヨードベンゼンの代りに表1に示すアリールハライドを用い反応溶媒としてニトロベンゼンを使用する以外は実施例1と同様に操作してフルオロアルキル基を有するジアミン化合物を得た。
結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
実施例5
5−(1H,1H−2,2−ジメチルパーフルオロペンチル)−1,3−フェニレンジアミン2.20gと臭化ベンジル6.41gをエタノール90mlに採り、これに撹拌下、炭酸水素ナトリウム3.15gと水1.5mlを加え、5時間加熱還流した。室温まで放冷後溶媒を減圧下後、残渣をトルエン抽出、水洗、乾燥しトルエンを留去した。これをカラムクロマト処理〔担体;シリカゲル溶離液;酢酸エチル/n−ヘキサン=1/20(vol)〕し無色油状物の5−(1H,1H−2,2−ジメチルパ−フルオロペンチル)−N,N,N′,N′−テトラベンジル−1,3−フェニレンジアミン3.20gを得た。
元素分析値(%)
C H N F
実測値 61.20 4.17 3.29 30.59
C41H33N2F13 61.49 4.16 3.50 30.85
としての計算値
【0018】
【発明の効果】
本発明に係る前記一般式(I)で表わされる新規なフルオロアルキル基を有するジアミン誘導体は、前記したように光導電性素材として有効に機能し、また染料やルイス酸などの増感剤によって光学的あるいは化学的に増感されることから、電子写真用感光体の感光層の電荷輸送物質等として好適に使用され、特に電荷発生層と電荷輸送層を二層に区分した、所謂機能分離型感光層における電荷輸送物質として有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1により得られた、本発明フルオロアルキル基を有するジアミン化合物の赤外線吸収スペクトル図。
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