JP3540008B2 - ピレニル基を有するジアミン化合物及びその製造法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真用の有機光導電性素材及び蛍光増白剤、特に電子写真用の有機光導電性材料として有用である、新規なピレニル基を有するジアミン化合物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式において使用される感光体の有機光導電性素材としてポリ−N−ビニルカルバゾールをはじめ数多くの材料が提案されている。
ここにいう「電子写真方式」とは一般に光導電性の感光体を、まず暗所で例えばコロナ放電などにより帯電せしめ、ついで露光部のみの電荷を選択的に放電させることにより静電潜像を得て、この潜像部をトナーなどを用いた現像手段で可視化して画像を形成するようにした画像形成法を一つである。このような電子写真方式における感光体に要求される基本的な特性としては、1)暗所において適当な電位に帯電されること、2)暗所における電荷の放電が少ないこと、3)光照射により速やかに電荷を放電すること、などが挙げられる。しかし従来の光導電性有機材料はこれらの要求をかならずしも十分に満足していないのが実状である。
【0003】
一方、セレンや酸化亜鉛は光導電性無機材料として知られており、中でもセレンは広く実用に供されていることは事実である。しかし最近電子写真のプロセスの点から、感光体に対する種々の要求、すなわち一例として前述の基本的特性に加えて、例えばその形状についても可撓性のあるベルト状の感光体などが要求されるようになってきている。しかしセレンの場合は一般にこのような形状のものに作成することは困難である。
【0004】
近年、これらの無機物質の欠点を排除するためにいろいろな有機物質を用いた電子写真用感光体を提案され、実用に供されているものもある。例えば、スチルベン誘導体(特開昭58−198425号、特開昭58−189145号)やトリアリールアミン誘導体(特開昭58−65440号)などが挙げられるが、未だ充分に満足するものが得られていないのが実状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の感光体に於ける光導電性素材のもつ欠点を除去した、殊に電子写真用の光導電性素材として有用な新規なピレニル基を有するジアミン化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記一般式(化1)で表されるピレニル基を有するジアミン化合物が提供され、
【化1】
(式中、R1 はアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、またはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基のいずれかで置換されたフェニル基を表し、R2 はアルキル基(但し、メチル基を除く)、炭素環式芳香族基、またはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基のいずれかで置換された炭素環式芳香族基を表し、nは0〜5の整数を表す。)
また、本発明によれば、下記一般式(II)(化2)で表されるジアミン化合物と
【化2】
(式中、R1 はアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、またはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基のいずれかで置換されたフェニル基を表し、nは0〜5の整数を表す。)
下記一般式(III)(化3)で表されるハロゲン化合物
【化3】
R2X (III)
(R2 はアルキル基(但し、メチル基を除く)、炭素環式芳香族基、またはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基のいずれかで置換された炭素環式芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
とを反応させることを特徴とする上記一般式(I)(化1)で表されるピレニル基を有するジアミン化合物の製造法が提供される。
【0007】
本発明の前記一般式(I)(化1)で表されるピレニル基を有するジアミン化合物は新規物質であり、R2 がアルキル基の場合は、前記一般式(II)(化2)で表されるジアミン化合物と前記一般式(III)(化3)で表されるハロゲン化アルキルとをアルカリ性物質の存在下、無溶媒または溶媒中で反応させて製造される。また、R2が置換もしくは無置換の炭素環式芳香族基の場合は、前記一般式(II)(化2)で表されるジアミン化合物と前記一般式(III)(化3)で表されるハロゲン化合物とを、銅粉、酸化銅あるいはハロゲン化銅等と、縮合反応中に生ずるハロゲン化水素を中和するのに充分な量のアルカリ性物質を加え、溶媒の存在下または無溶媒下で、窒素雰囲気下、150〜250℃程度の温度において反応させることによって製造される。
これらの場合、アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム等を挙げることができる。また、反応溶媒としてはニトロベンゼン、ジクロルベンゼン、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラヒドロフラン、二硫化炭素等を挙げることができる。
本発明のピレニル基を有するジアミン化合物並びにその製造方法について更に詳しく説明する。
一般式(I)〜(III)(化1〜3)において、R1、R2及びXの具体例として、もしくはそれらの置換基として以下のものを挙げることができる。
(1)ハロゲン原子
塩素、臭素、ヨウ素など
(2)アルキル基
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ベンジル基など
(3)アルコキシ基
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ベンジルオキシ基など
(4)下記のフェニル基
【化4】
(R3は水素原子もしくは(1)〜(3)で定義した置換基を表す。例えば、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ベンジルフェニル基など)
(5)炭素環式芳香族基
ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基など
また、これらは(1)〜(3)で定義した置換基を有してもよい。
【0008】
本発明にかかわる新規なピレニル基を有するジアミン化合物は、電子写真用感光体に於ける光導電性素材としてきわめて有用であり、染料やルイス酸などの増感剤によって光学的あるいは化学的に増感される。また有機顔料あるいは無機顔料を電荷発生物質とするいわゆる機能力離型感光体に於ける電荷移動物質としてとりわけ有用である。
【0009】
前記増感剤として例えばメチルバイオレット、クリスタルバイオレット等のトリアリルメタン染料、ローズベンガル、エリスロシン、ローダミンB等のキサンテン染料、メチレンブルー等のチアジン染料、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4−ジニトロ−9−フルオレノンが挙げられる。
また有機顔料としては、シーアイピグメントブルー25(C.l.No.21180)、シーアイピグメントレッド41(C.l.No.21200)、シーアイベージックレッド3(C.1.No.45210)等のアゾ系顔料、シーアイピグメントブルー16(C.l.No.74100)等のフタロシアニン系顔料、シーアイバットブラウン5(C.l.No.73410)、シーアイバットダイ(C.l.No.73030)等のインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB、インダンスレンスカーレットR等のペリレン系顔料が挙げられる。また、セレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、α−シリコン等の無機顔料も使用できる。
【0010】
【実施例】
実施例1
N−(4−メチルフェニル)−N−〔4−(4−アミノスチリル)フェニル〕−1−アミノピレン3.00g(6.0mmol)と炭酸カリウム3.32g(24.0mmol)、銅粉0.76g(12.0mmol)をヨードベンゼン30mlに加え、窒素雰囲気下184℃、14時間撹拌した。この反応液をセライトで濾過、クロロホルムを加え、分液ロート中にて水洗した後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマト処理(溶離液;トルエン/シクロヘキサン:1/3vol)した精製物3.23g(収率82.4%)を得た。これをシクロヘキサンで再結晶して黄色針状晶のN−(4−メチルフェニル)−N−〔4−(4−ジフェニルアミノスチリル)フェニル〕−1−アミノピレン2.39g(収率61.0%)を得た。融点は203.5−204.5℃、元素分析値はC49H36N2として下記のとおりであった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図1に示したが970cm-1にトランスオレフィンのC−H面外変角振動に基づく吸収が認められた。
【0011】
実施例2〜7
実施例1と同様の操作をし、本発明のピレニル基を有するジアミン化合物を得た。結果を表1に示す。
【表1−(1)】
【表1−(2)】
【0012】
【発明の効果】
本発明の前記一般式(I)(化1)で表わされるピレニル基を有するジアミン化合物は、新規であって、電子写真用の有機光導電性素材、蛍光増白剤として有用であり、特に電子写真用の有機光導電性材料として用いた場合、感光体に必要な基本的特定を十分満足しており、また可撓性の感光体等を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られるジアミン化合物の赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図2】実施例2で得られるジアミン化合物の赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図3】実施例3で得られるジアミン化合物の赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図4】実施例4で得られるジアミン化合物の赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図5】実施例5で得られるジアミン化合物の赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図6】実施例6で得られるジアミン化合物の赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図7】実施例7で得られるジアミン化合物の赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
Claims (2)
- 下記一般式(II)(化2)で表されるジアミン化合物と
下記一般式(III)(化3)で表されるハロゲン化合物
【化3】
R2X (III)
(R2 はアルキル基(但し、メチル基を除く)、炭素環式芳香族基、またはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基のいずれかで置換された炭素環式芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)とを反応させることを特徴とする下記一般式(I)(化1)で表されるピレニル基を有するジアミン化合物の製造法。
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