JP3540061B2 - ジヒドロキシル基含有ジアミン化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用の有機光導電性材料として、またヒドロキシル基から誘導される種々の材料の製造中間体として有用なジヒドロキシル基含有ジアミン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式において使用される感光体の有機光導電性材料としては、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、トリフェニルアミン化合物(米国特許第3,180,730号)、ベンジジン化合物(米国特許第3,265,496号、特公昭39−11546号公報、特開昭53−27033号公報)等のような数多くの提案がなされている。
ここに言う「電子写真方式」とは、一般に光導電性の感光体を、先ず暗所で、例えばコロナ放電などにより帯電せしめ、次いで画像状露光を行って露光部の電荷を選択的に放電させることにより静電潜像を得、更にこの潜像部をトナーなどを用いた現像手段で可視化して画像を形成するようにした画像形成法の一つである。このような電子写真方式における感光体に要求される基本的な特性としては、1)暗所において適当な電位に帯電されること、2)暗所において電荷の放電が少ないこと、3)光照射により速やかに電荷を放電すること、などがあげられる。
【0003】
また、近年において、感光体の更なる機械的強度の向上を目的として高分子光導電性材料(米国特許第4,801,517号、米国特許第4,806,443号、米国特許第4,806,444号、特開平3−221522号、特開平4−11627号)が提案されている。
しかしながら、従来の低分子あるいは高分子光導電性材料は、前記の要求を必ずしも満足していないのが実状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、それ自体で基本的な電子写真特性を全て満足する光導電性材料として有用であり、また、ヒドロキシル基から誘導される種々の材料、例えば、電子写真用ポリカーボネート系樹脂光導電性材料等の製造中間体としても有用である新規ジヒドロキシル基含有ジアミン化合物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記一般式(1)で表されるジヒドロキシル基含有ジアミン化合物が提供される。
【化1】
〔式中、R1、R2、R3、R4は各々独立に、下記(a)〜(f)のいずれかを表す。
(a)ハロゲン原子
(b)アルキル基
(c)フッ素原子、シアノ基、フェニル基、又はハロゲン原子若しくはC1〜C5のアルキル基で置換されたフェニル基によって置換されたアルキル基
(d)アリール基
(e)低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されたアリール基
(f)下記一般式(2)で表される基
【化2】
{式中、Yは−O−、−S−、−SO−、−SO 2 −、−CO−及び以下の2価基を表す。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(ここで、R 5 、R 6 、R 7 は水素原子、アルキル基、前記(c)で定義された置換基を有 するアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、前記(e)で定義された置換基を有するアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表し、p、q、r、sは1〜12の整数を表す)}
Xはエチレン基を表す。kは0〜5の整数、l、m、nは0〜4の整数を表す。〕
【0006】
以下、本発明のジヒドロキシル基含有ジアミン化合物について更に詳細に説明する。
前記一般式(1)で表されるジヒドロキシル基含有ジアミン化合物において、R1〜R4が置換もしくは無置換のアルキル基である場合の具体例としては以下のものを挙げることができる。
C1〜C5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子若しくはC1〜C5のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
【0007】
また、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシル基含有ジアミン化合物において、R1〜R4が置換もしくは無置換のアリール基である場合、アリール基部分の具体例としては以下のものを挙げることができる。
フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基等が挙げられ、これらは低級アルキル基、低級アルコキシ基及びハロゲン原子を置換基として有していてもよい。または、下記一般式(2)で表される基である。
【化2】
〔式中、Yは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−及び以下の2価基を表す。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(ここで、R5、R6、R7は水素原子、アルキル基、前記(c)で定義された置換基を有するアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、前記(e)で定義された置換基を有するアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表し、p、q、r、sは1〜12の整数を表す。)〕
【0008】
前記一般式(2)中のR5、及び該式中の2価の基Yの具体例におけるR6、R7が置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基の具体例は前記R1〜R4の定義と同様である。また、アミノ基の具体例としては、下記一般式で表される基が挙げられる。
【化7】
(R8、R9は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
【0009】
ここで、R8、R9において、置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基の具体例は前記R1〜R4の定義と同様である。また、R8、R9は共同で環を形成しても良い。また、アリール基上の炭素原子と共同で環を形成しても良い。このような具体的にはピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。
【0010】
また、R1〜R7がハロゲン原子の場合及び、R1〜R7がハロゲン原子を有する基である場合のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。
【0011】
本発明の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシル基含有ジアミン化合物は、新規化合物である。
本発明のジヒドロキシル基含有ジアミン化合物の合成スキームを表1及び表2に示す。
表1及び表2に示すように、該ジヒドロキシル基含有ジアミン化合物は、それに対応する下記一般式(3)で表されるアルコキシ基を有するアルデヒド化合物と、同じく対応する下記一般式(4)で表されるビス(ホスホン酸エステル)とから、修飾Wittig反応等により得られる下記一般式(5)で表されるジスチリルベンゼン化合物を得、更にアルコキシ基のエーテル結合開製反応を行なうことにより、本発明の下記一般式(1−a)で表されるジヒドロキシ基含有ジアミン化合物(参考の化合物)を、或いは該ジスチリルベンゼン化合物を還元して得られる下記一般式(6)で表されるジフェネチルベンゼン化合物を、更にアルコキシ基のエーテル結合開製反応を行なうことにより本発明の下記一般式(1−b)で表されるジヒドロキシル基含有ジアミン化合物を合成することができる。
【0012】
【表1】
〔式中、R1〜R4、k、l、m、nは前記と同じ定義、R10、R11はいずれも低級アルキル基を表す。〕
【0013】
【表2】
〔式中、R1〜R4、R10、R11、k、l、m、nは前記と同じ定義。〕
【0014】
前記一般式(3)で表されるアルデヒド化合物と、前記一般式(4)で表されるビス(ホスホン酸エステル)との縮合反応は、修飾Wittig反応として知られる反応であり、好ましくは、塩基性触媒の存在下で反応させる。
この場合、塩基性触媒としては、苛性カリ、ナトリウムアミド及びナトリウムメチラート、カリウムメチラート、カリウム−t−ブトキシサイドなどのアルコラートを挙げることができる。
また、反応溶媒には、メタノール、エタノール、プロパノール、トルエン、キシレン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。
反応温度は、(1)使用する溶媒の塩基性触媒に対する安定性、(2)縮合成分の反応性、(3)前記塩基性触媒の溶媒中における縮合剤としての反応性によって広範囲に選択することができる。例えば、極性溶媒を用いる時は、実際には室温から100℃、好ましくは室温から80℃である。しかし反応時間の短縮又は活性の低い縮合剤を使用する時は更に高い温度でもよい。
【0015】
又、前記一般式(5)又は(6)で表されるジスチリルベンゼン化合物又はジフェネチルベンゼン化合物のアルコキシ基のエーテル結合開製反応は、ナトリウムチオエトキシドあるいはトリメチルシリルイオダイド等を用いて行なうことができる。ナトリウムチオエトキシドを用いる場合、溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドやヘキサメチルリン酸トリアミドが好適に用いられる。反応温度は室温から180℃、好ましくは10℃から150℃である。反応時間はアルコキシ基の反応性により20分程度で反応が完結する場合から10時間以上要する場合まである。尚、ナトリウムチオエトキシドの代りにナトリウムチオメトキシドを用いても同様にエーテル結合開製反応を行うことができる。
一方、トリメチルシリルイオダイドを用いる場合、溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、スルホラン、アセトニトリル等を挙げることができる。反応温度は室温から100℃である。尚、トリメチルシリルイオダイドの代りにトリメチルシリルクロライドとヨウ化ナトリウムを用いても同様にエーテル結合開製反応を行うことができる。
更にまた、エーテル結合開製反応はヨウ化水素酸のような他の試剤を用いても行うことができる。
【0016】
また、前記一般式(5)で表されるジスチリルベンゼン化合物の還元反応としては、接触水素添加法が好ましく使用される。この接触水素添加法には均一系触媒を使用する方法と不均一系触媒を使用する方法がある。この場合、均一系触媒としてはロジウム、ルテニウム、イリジウム、コバルトなどのVIII属金属元素の錯化合物が、不均一系触媒として白金化合物、ラネ−ニッケル、あるいは活性炭、アルミナ、硫酸バリウムなどに担持された白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどが使用される。
本発明においては好ましくは後処理が簡便な不均一系触媒が採用される。
不均一系触媒を用いる系では、反応系を密閉系として気相部を1気圧の水素ガスで置換して激しく撹拌することにより反応させる。吸収された量に応じて水素ガスが供給される減圧弁を介して水素ガスを供給する。理論量の水素ガスを吸収した時点で吸収が停止するので反応終了とする。この場合、反応温度は室温で良いが、水素ガスの吸収が遅い場合は加温しても良い。また反応溶媒には、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸などを使用することができる。
【0017】
更に、前記一般式(4)で表されるビス(ホスホン酸エステル)は、対応するジハロゲン化合物と亜リン酸トリアルキルとを、直接あるいはトルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒中で加熱反応させることにより容易に製造することができる。
【0018】
本発明のジヒドロキシル基含有ジアミン化合物は、電子写真感光体に於ける光導電性素材として極めて有用であり、染料やルイス酸などの増感剤によって光学的あるいは化学的に増感される。更にこのものは、有機顔料あるいは無機顔料を電荷発生物質とする、いわゆる機能分離型に於ける電荷輸送物質としてとりわけ有用である。
【0019】
上記増感剤としては、例えば、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット等のトリアリールメタン染料、ローズベンガル、エリスロシン、ローダミン等のキサンチン染料、メチレンブルー等のチアジン染料、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4−ジニトロ−9−フルオレノン等が挙げられる。
【0020】
また、有機顔料としてはシーアイピグメントブルー25(CI No.21180)、シーアイピグメントレッド41(CI No.21200)、シーアイピグメントレッド3(CI No.45210)等のアゾ顔料、シーアイピグメントブルー16(CI No.74100)等のフタロシアニン系顔料、シーアイバットブラウン5(CI No.73410)、シーアイバットダイ(CI No.73030)等のインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB、インダンスレンスカーレッドR等のペリレン系顔料が挙げられる。また、セレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、α−シリコン等の無機顔料も使用できる。
【0021】
また、本発明のジヒドロキシル基含有ジアミン化合物は、ヒドロキシル基から誘導される種々の材料の製造、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の製造中間体としても有用であり、本発明のジヒドロキシル基含有ジアミン化合物を原料として製造されるポリカーボネート樹脂等の有機高分子化合物は、該ジヒドロキシル基含有ジアミン化合物と同様有機光導電性材料として有用である。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら本実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中、部は重量基準である。
【0023】
実施例1(参考例)
下記構造式(7)で表される4−ホルミル−4′−メトキシトリフェニルアミン159.08g(0.525mol)、下記構造式(8)で表される1,4−ビス(ジエチルホスホノメチル)ベンゼン94.61g(0.25mol)をDMF1600mlに溶解し、15℃まで冷却した。この溶液に、t−BuOK66.73g(0.6mol)を15〜25℃を保ちながら40分かけて添加した。1.5時間の後撹拌により原料は消失し、反応混合物をメタノール3000ml中に注加した。析出晶を濾取、メタノール500mlによる洗浄後、減圧下にて乾燥し、目的物として下記構造式(9)で表される1,4−ビス{4−〔N−フェニル−N−(4−メトキシフェニル)アミノ〕スチリル}ベンゼンを161.3gを得た。収率95.4%であった。
【化8】
【化9】
【化10】
【0024】
次いで、乾燥DMF2000mlに、得られた1,4−ビス{4−〔N−フェニル−N−(4−メトキシフェニル)アミノ〕スチリル}ベンゼン155.48g(0.23mol)、ナトリウムチオエトキシド116.06g(1.38mol)を加え、加熱、撹拌をした。60℃で内容物は完溶し、さらに2時間リフラックスさせることにより反応を完結させた。冷却後、反応混合物に酢酸エチル2000mlを加え、さらに酢酸を120g加えた。得られた溶液を水洗し、無水硫酸マグネシウム乾燥後、溶媒留去した。粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、目的物として下記構造式(10)で表される1,4−ビス{4−〔N−フェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ〕スチリル}ベンゼン131.95gを得た。なお収率は88.5%であった。
【化11】
該目的物1,4−ビス{4−〔N−フェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ〕スチリル}ベンゼンの融点は、融解開始温度が125℃であった。
元素分析 C(%) H(%) N(%)
実測値* 84.5 5.9 4.3
計算値 85.2 5.6 4.3
*溶媒付加体
また、赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を図1に示す。
【0025】
実施例2
THF1200mlに、実施例1で合成した1,4−ビス{4−〔N−フェニル−N−(4−メトキシフェニル)アミノ〕スチリル}ベンゼン135.2g(0.2mol)、5%Pd−カーボン粉末(50%含水品)13.52gを加え、室温下、水素を吸収させた。水素の吸収は、約101で停止し、この時点で反応終了とした。反応混合物から触媒を濾別し、溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、目的物として下記構造式(11)で表される1,4−ビス{4−〔N−フェニル−N−(4−メトキシフェニル)アミノ〕フェネチル}ベンゼンを128.9g得た。収率は94.8%であった。
【化12】
【0026】
次いで、乾燥DMF1500mlに、得られた1,4−ビス{4−〔N−フェニル−N−(4−メトキシフェニル)アミノ〕フェネチル}ベンゼン122.4g(0.18mol)、ナトリウムチオエトキシド90.83g(1.08mol)を加え、加熱、撹拌をした。50℃で内容物は完溶し、さらに2時間リフラックスさせることにより反応を完結させた。冷却後、反応混合物に酢酸エチル1500mlを加え、さらに酢酸を96g加えた。得られた溶液を水洗し、無水硫酸マグネシウム乾燥後、溶媒留去した。粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、目的物として下記構造式(12)で表される1,4−ビス{4−〔N−フェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ〕フェネチル}ベンゼン99.3gを得た。なお収率は84.6%であった。
【化13】
該目的物1,4−ビス{4−〔N−フェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ〕フェネチル}ベンゼンの融点は、融解開始温度が99℃であった。
元素分析 C(%) H(%) N(%)
実測値* 83.3 6.3 4.5
計算値 84.7 6.2 4.3
*溶媒付加体
また、赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を図2に示す。
【0027】
実施例3(参考例)
下記構造式(13)で表される4−ホルミル−4′−メチル−4″−メトキシトリフェニルアミン165.90g(0.525mol)、1,4−ビス(ジエチルホスホノメチル)ベンゼン94.61g(0.25mol)をDMF1600mlに溶解し、15℃まで冷却した。この溶液に、t−BuOK66.7g(0.6mol)を15〜25℃を保ちながら40分かけて添加した。1.5時間の後撹拌により原料は消失し、反応混合物をメタノール3000ml中に注加した。析出晶を濾取、メタノール500mlによる洗浄後、減圧下にて乾燥した。目的物として、下記構造式(14)で表される1,4−ビス{4−〔N−(4−メチルフェニル)−N−(4−メトキシフェニル)アミノ〕スチリル}ベンゼン165.09gを得た。収率は93.8%であった。
【化14】
【化15】
【0028】
次いで、乾燥DMF2000mlに、得られた1,4−ビス{4−〔N−(4−メチルフェニル)−N−(4−メトキシフェニル)アミノ〕スチリル}ベンゼン161.92g(0.23mol)、ナトリウムチオエトキシド116.06g(1.38mol)を加え、加熱、撹拌した。60℃で内容物は完溶し、さらに2時間リフラックスさせることにより反応を完結させた。冷却後、反応混合物に酢酸エチル2000mlを加え、さらに酢酸を120g加えた。得られた溶液を水洗し、無水硫酸マグネシウム乾燥後、溶媒留去した。粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、目的物として下記構造式(15)で表される1,4−ビス{4−〔N−(4−メチルフェニル)−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ〕スチリル}ベンゼン134.02gを得た。なお収率は86.2%であった。
【化16】
該目的物1,4−ビス{4−〔N−(4−メチルフェニル)−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ〕スチリル}ベンゼンの融点は、147℃〜151℃であった。
元素分析 C(%) H(%) N(%)
実測値 85.1 6.3 3.6
計算値 85.2 6.0 4.1
また、赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を図3に示す。
【0029】
【発明の効果】
本発明に係わるジヒドロキシル基含有ジアミン化合物は、前記したように光導電性素材として有効に機能し、また染料やルイス酸などの増感剤によって光学的あるいは化学的に増感されることから、電子写真感光体の感光層の電荷輸送物質等として好適に使用され、特に電荷発生層と電荷輸送層を2層に区分した、いわゆる機能分離型感光層における電荷輸送物質として有用なものである。
また、ヒドロキシル基から誘導される種々の材料の製造、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の製造中間体としても有用であり、本発明のジヒドロキシル基含有ジアミン化合物を原料モノマーとして得られたポリカーボネート樹脂等の重合体は、それ自体も光導電性素材として有効に機能する。
【図面の簡単な説明】
【図1】1,4−ビス{4−〔N−フェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ〕スチリル}ベンゼンの赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図2】1,4−ビス{4−〔N−フェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ〕フェネチル}ベンゼンの赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
【図3】1,4−ビス{4−〔N−4−メチルフェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ〕スチリル}ベンゼンの赤外線吸収スペクトル図(KBr錠剤法)。
Claims (1)
- 下記一般式(1)で表されるジヒドロキシル基含有ジアミン化合物。
(a)ハロゲン原子
(b)アルキル基
(c)フッ素原子、シアノ基、フェニル基、又はハロゲン原子若しくはC1〜C5のアルキル基で置換されたフェニル基によって置換されたアルキル基
(d)アリール基
(e)低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されたアリール基
(f)下記一般式(2)で表される基
Xはエチレン基を表す。kは0〜5の整数、l、m、nは0〜4の整数を表す。〕
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