JP4343605B2 - エナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物及びその製造中間体 - Google Patents
エナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物及びその製造中間体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真方式の感光体等に用いられる有機光導電性材料として、また二個のヒドロキシ基から誘導される種々の機能性材料の製造中間体としても有用な、新規のエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで電子写真方式の感光体に用いられる光導電性材料としては、無機系の化合物、例えばセレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、シリコンなどが知られており、かつ実用化されている。この「電子写真方式」とは、光導電性の感光体を、暗所でコロナ放電、或いは接触帯電等で帯電せしめ、次いで画像露光し、露光部の電荷を選択的に散逸させて静電潜像を形成させ、この潜像部分をトナー(着色粒子)で現像し、これを紙などに転写して画像を形成する方式の、画像形成法である。
【0003】
このような電子写真方式で使用される感光体は、一般的に基本的な性質として次のような事が要求される。即ち、(1) 暗所におけるコロナ放電に対して帯電性が高いこと、(2) 得られた帯電電荷の暗所での漏洩(暗減衰)が少ないこと、(3) 光の照射によって帯電電荷の散逸(光減衰)が速やかであること、(4) 光照射後の残留電荷が少ないことなどである。
【0004】
これまで光導電性材料として使われてきた、先に述べたような無機系の化合物は、多くの長所を持っているのと同時に、種々の欠点をも有している。例えばセレンには製造条件が難しく、熱や機械的衝撃で結晶化しやすいという欠点があり、硫化カドミウムや酸化亜鉛は耐湿性、耐久性に難がある。シリコンについては帯電性の不足や製造上の困難さが指摘されている。更に、セレンや硫化カドミウムには毒性の問題もある。
【0005】
これに対し、有機系の低分子光導電性物質は成膜性がよく、可撓性も優れていて、軽量であり、透明性もよく、適当な増感方法により広範囲の波長域に対する感光体の設計が容易であるなどの利点を有していることから、近年においては、無機系の化合物に取って代わって、電子写真方式の光導電性材料として主流をなすに至っている。
【0006】
更に最近になって、感光体の物理的ないし化学的耐久性の向上と、電気特性の更なる改良を目的とした有機高分子光導電性材料及びその製造中間体としての有機低分子光導電性材料が提案されている。しかしながら、これまでに開発された、これら低分子ないし高分子の光導電性材料を以てしても、昨今における電子写真方式での感光体の更なる高感度、高耐久性の要求を満足させるまでには至っていない(例えば、特許文献1〜10参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−221522号公報
【特許文献2】
特開平4−11627号公報
【特許文献3】
特開平6−295077号公報
【特許文献4】
特開平7−228557号公報
【特許文献5】
特開平7−258399号公報
【特許文献6】
特開平8−62864号公報
【特許文献7】
特開平8−176293号公報
【特許文献8】
特開平9−194442号公報
【特許文献9】
特開2000−136169号公報
【特許文献10】
特開2002−249472号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電子写真感光体の材料として用いた場合、先に述べた従来の材料の欠点が全て解消され、帯電電位が高く高感度で、繰返し使用しても諸特性が変化せず、安定した性能を発揮できる他、センサー材料、EL素子、静電記録素子などに用いても優れた性能を発揮する、新規の有機高分子光導電性材料の製造中間体として有用な上に、ヒドロキシ基から誘導される種々の機能性材料の製造中間体としても有用な、新規のエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく有機光導電性化合物の研究を行なった結果、特定の構造を有するエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物が優れた有機高分子光導電性化合物の製造中間体として極めて有効であることを見出し、本発明に至った。上記で特定の構造を有するエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物としては、下記一般式(1)〜(5)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物が挙げられる。
【0010】
〔1〕下記一般式(1)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物。
【0011】
【化11】
【0012】
一般式(1)において、Ar1、Ar2、及びAr3は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を示し、Ar4は置換基を有してもよいアリール基を示し、Ar5及びAr6は置換基を有してもよいアリーレン基を示し、nは0〜2の整数を示す。
【0013】
〔2〕下記一般式(2)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物。
【0014】
【化12】
【0015】
一般式(2)において、Ar1、Ar2、及びAr3は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を示し、Ar6は置換基を有してもよいアリーレン基を示し、R1は水素原子、C1〜C4の低級アルキル基、またはハロゲン原子を示し、nは0〜2の整数を示す。
【0016】
〔3〕下記一般式(3)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物。
【0017】
【化13】
【0018】
一般式(3)において、Ar1、Ar2、及びAr3は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を示し、R1及びR2は水素原子、C1〜C4の低級アルキル基、またはハロゲン原子を示し、nは0〜2の整数を示す。
【0019】
〔4〕下記一般式(4)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物。
【0020】
【化14】
【0021】
一般式(4)において、Ar1及びAr2は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を示し、nは0〜2の整数を示す。
【0022】
〔5〕下記一般式(5)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物。
【0023】
【化15】
【0024】
一般式(5)において、Ar1及びAr2は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を示す。
【0040】
ここで、Ar1、Ar2、及びAr3の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−オクタデシル基、2−メトキシエチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、3−フロロベンジル基、2−(4−クロロフェニル)エチル基などのアラルキル基、またはフェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、4−フロロフェニル基、3−ジエチルアミノフェニル基、1−ナフチル基、1−ピレニル基などのアリール基を挙げることができる。
【0041】
また、Ar4の具体例としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、4−フロロフェニル基、3−ジエチルアミノフェニル基、1−ナフチル基、1−ピレニル基などのアリール基を挙げることができる。
【0042】
また、Ar5及びAr6の具体例としては、1,4−フェニレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、3−エチル−1,2−フェニレン基、2−クロロ−1,4−フェニレン基、4−メチル−1,3−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基、9,10−アントリレン基、2,7−フェナントリレン基、4,4′−ビフェニレン基、3,4′−ビフェニレン基、などのアリーレン基を挙げることができる。
【0043】
また、R1及びR2の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などのC1〜C4の低級アルキル基、またはフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。
【0045】
また、nは0〜2の整数を表す。
【0046】
【発明の実施の形態】
本発明の一般式(1)〜(5)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物の具体例としては、以下に示すEA−1〜55の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0052】
本発明における、一般式(1)〜(5)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物の製造中間体、エナミン〜ビス(アルコキシアリーレン置換)ポリエン化合物は、下記の合成経路により容易に合成される。
【0053】
すなわち、下記一般式(11)で示されるN−置換ベンズアルデヒドと、(11)に対し1.0モル当量の、下記一般式(12)で示されるホスホネート化合物を、N,N−ジメチルホルムアミドやN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、ジオキサンやジオキソラン等の環状エーテル系溶媒、あるいはエタノールやプロパノール等のアルコール系溶媒等を用い、(11)に対し1.0モル当量〜1.5モル当量のカリウムt−ブトキシドやナトリウムメトキシド等の塩基を加え、反応の進みやすさに応じて、氷冷下、室温下、あるいは50〜100℃加温下、0.5〜8時間程度反応させることにより、容易に合成出来る。
【0054】
【化21】
【0055】
【化22】
【0056】
上記一般式(11)における、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、及びAr5は、一般式(1)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物と同じであり、また、上記一般式(12)のAr6及びnは、一般式(1)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物と同じであり、R3は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などのC1〜C4の低級アルキル基を示し、R4は、メチル基、エチル基等の低級アルキル基を示している。
【0057】
上記反応の合成原料となる一般式(11)のN−置換ベンズアルデヒドは、下記一般式(13)で示されるN置換ジアリールアミンのアリール基を、ヴィルスマイヤー反応等を用いてフォルミル化することにより、容易に得られる。なお、一般式(13)のN置換ジアリールアミンについては、Ar3が水素の場合は、対応するジ置換アセトアルデヒドをジアリールアミンと脱水縮合することにより、またAr3が水素以外の場合は、対応する置換アルケニルハライドへの、ジアリールアミンの置換反応により得ることが出来る。
【0058】
また、一方の合成原料である一般式(12)のホスホネート化合物については、相当する下記一般式(14)のアルコキシアリーレン置換ハライドと、下記一般式(15)の亜リン酸トリアルキルとともに加熱して反応させ、蒸留精製または再結晶する事により容易に得られる。
【0059】
【化23】
【0060】
【化24】
【0061】
【化25】
【0062】
上記一般式(13)における、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、及びAr5、並びに、上記一般式(14)におけるAr6及びnは、一般式(1)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物と同じであり、R3は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などのC1〜C4の低級アルキル基を示し、上記一般式(14)におけるXは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示し、また上記一般式(15)におけるR4は、一般式(12)で示されるホスホネート化合物と同じである。
【0063】
また、別の合成法としては、一般式(1)においてAr1及びAr2の一方が水素原子でもう一方がアルキル基の場合、或いは双方ともアルキル基の場合においては、対応するアルケニルアミン〜ビス(アルコキシアリーレン置換)ポリエン化合物を合成しておき、N,N−ジメチルホルムアミドやN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、或いはジオキサンやジオキソラン等の環状エーテル系溶媒下において、0.2〜3当量程度のカリウムt−ブトキシドやナトリウムメトキシド等の塩基を触媒として加え、冷却下ないし室温下で数分ないし数時間反応させることにより、このものの二重結合をエナミン形に異性化させることにより、一般式(1)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物の製造中間体に相当するエナミン〜ビス(アルコキシアリーレン置換)ポリエン化合物を得ることが出来る。
【0064】
また、本発明における一般式(1)〜(5)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物は、上記の方法で得られた、エナミン〜ビス(アルコキシアリーレン置換)ポリエン化合物を、適当な溶剤中で、臭化水素、ヨウ化水素、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、三臭化ホウ素、或いはエタンチオールナトリウム塩等の脱アルキル化剤により、アルコキシ基に付いているアルキル基を脱離させる事により、容易に合成される。
【0065】
脱アルキル化の溶剤としては、臭化水素やヨウ化水素の場合には無水酢酸が、塩化アルミニウムや臭化アルミニウムの場合には、ベンゼン、クロルベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系溶剤が、三臭化ホウ素の場合には塩化メチレンが、またエタンチオールナトリウム塩の場合にはN,N−ジメチルホルムアミドが、それぞれよく用いられ、反応温度は、反応の進みやすさに応じて、冷却下或いは室温〜溶剤環流下にて、0.5〜24時間程度反応させることにより、容易に合成出来る。
【0066】
以上のようにして得られる、本発明における一般式(1)〜(5)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物は、いずれも文献に未記載の化合物であり、それ自身が有機光導電性材料として有用である他、一般式(1)〜(5)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物は、分子内の二個のヒドロキシ基から誘導される種々の高分子材料、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の製造中間体としても有用であり、特に本発明における一般式(1)〜(5)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物を原料として製造されるポリカーボネート樹脂等の高分子化合物は、有機光導電性材料として有用である。
【0067】
特に、本発明の一般式(1)〜(5)で示されるエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物は、それ自身電子写真感光体における光導電性材料として非常に有用であり、これらを含有する感光層を含む電子写真感光体の形態は、いずれのものでも用いることができる。例えば、導電性支持体上に電荷発生物質、電荷輸送物質、及びフィルム形成性結着剤樹脂からなる感光層を設けた、単層型の感光体や、導電性支持体上に、電荷発生物質と結着剤樹脂からなる電荷発生層と、電荷輸送物質と結着剤樹脂からなる電荷輸送層をこの順に設けた、機能分離型と呼ばれる積層型の感光体が知られているが、本発明の化合物はいずれの構成においても、これらの電荷輸送物質として極めて有用である。
【0068】
本発明の化合物を用いて感光体を作製する支持体としては、金属製ドラム、金属板、導電性加工を施した紙やプラスチックフィルムのシート状、ドラム状あるいはベルト状の支持体などが使用される。
【0069】
また、上記構成における電荷発生物質には無機系電荷発生物質と有機系電荷発生物質があり、前者の例としては例えばセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコンなどが挙げられる。後者の例としては、例えばメチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレットなどのトリフェニルメタン系染料、メチレンブルーなどのチアジン染料、キニザリンなどのキノン染料、シアニン染料、アクリジン染料、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクエアリウム色素、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ペリノン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、等があるが、特に良く用いられるのは、金属含有あるいは無金属のフタロシアニン系顔料、またはビスアゾ顔料やトリスアゾ顔料等の、アゾ系顔料である。
【0070】
フタロシアニン系顔料の例としては、無金属フタロシアニンは、特公昭49−4338号公報、特開昭58−182639号公報、或いはJ.Phys.Chem.72,3230(1968)に記載されているものを、チタニルオキシフタロシアニンは、特開昭61−217050号公報、特開昭62−67094号公報、特開昭63−365号公報、特開昭63−198067号公報、特開昭64−17066号公報、或いは特開平1−189200号公報に記載されているものを、銅フタロシアニンは、特公昭52−1667号公報、或いは特開昭51−108847号公報に記載されているものを、クロロアルミニウムフタロシアニンは、特開昭58−158649号公報に記載されているものを、クロロインジウムフタロシアニンは特開平7−13375号公報に記載されているものを、バナジルオキシフタロシアニンは、特開昭63−18361号公報、特開平1−204968号公報、特開平3−269063号公報、或いは特開平7−247442号公報に記載されているものを、ジフェノキシゲルマニウムフタロシアニンは、特開平4−360150号公報に記載されているものを、クロロガリウムフタロシアニンは、特開平5−194523号公報、或いは特開平7−102183号公報に記載されているものを、ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、特開平5−263007号公報、或いは特開平7−53892号公報に記載されているものを、それぞれ挙げることができる。
【0071】
アゾ系顔料の例としては、特開昭47−37543号公報に記載のベンジジン型ビスアゾ顔料、特開昭56−116039号公報に記載のベンゾオキサゾール型ビスアゾ顔料、特開昭57−176055号公報に記載のオキサジアゾール型ビスアゾ顔料、特公昭60−45664号公報に記載のフルオレノン型ビスアゾ顔料、或いは特開平1−200267号公報や特開平1−202757号公報に記載のピラゾール型ビスアゾ顔料、などのようなビスアゾ顔料、または特開昭57−195767号公報に記載のトリフェニルアミン型トリスアゾ顔料のようなトリスアゾ顔料を挙げることができる。
【0072】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0073】
【化26】
【0074】
【化27】
【0075】
実施例1 例示化合物(EA−14)の合成
1a)ジフェニルエナミンベンズアルデヒド(上記(16))の合成
N,N−ジメチルホルムアミド36mlを氷冷下撹拌している中にオキシ塩化リン23.5mlを40分かけて滴下し、更に氷冷下30分撹拌してヴィルスマイヤー試薬を調製した。上記のヴィルスマイヤー試薬を氷冷下撹拌している中に、上記(17)のジフェニルエナミン〔ジフェニルアセトアルデヒドとジフェニルアミンを、トルエン中で脱水縮合することにより合成〕16.0gをN,N−ジメチルホルムアミド380mlに溶かした溶液を25分かけて滴下し、室温で30分撹拌した後、攪拌しながら80℃で1.5時間加熱した。反応液を700mlの水にあけ、2規定水酸化ナトリウムで中和した後、析出結晶を濾取し、水洗し、更にメタノールで分散洗浄して、得られた粗結晶を、アセトニトリル350mlで再結晶して(16)13.24gを得た。収率は76.7%であった。
【0076】
1b)ホスホネート化合物(下記(18))の合成
4,4′−ジメトキシベンズヒドリルクロリド24.52g、及び亜リン酸トリエチル48.45gを撹拌しながら140℃に加熱し、7時間反応させたのち、減圧下で過剰の亜リン酸トリエチルを除去した後、シリカゲルでクロマト処理して(18)30.96gを得た。収率は91.0%であった。
【0077】
【化28】
【0078】
1c)例示化合物(EA−14)のジメチルエーテル体の合成
(16)1.99g及び(18)1.93gを溶かしたN,N−ジメチルホルムアミド50ml溶液に、水浴で冷却下撹拌しながら、カリウムt−ブトキシド0.89gをゆっくりと加えた。室温で一晩撹拌を続けた後、反応液を氷水250mlに注ぎ込んで反応を停止し、2規定塩酸を加えて中和し、トルエン150mlで抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を留去して得られた粗結晶を、トルエンを溶剤としてシリカゲルでクロマト処理して、目的とする化合物(EA−14のジメチルエーテル体)1.85gを得た。収率は59.5%、融点は98〜102℃であった。
【0079】
このものは、1H−NMR(δ,ppm,CDCl3)において、7.3〜7.2(m,6H)、7.1〜6.7(m,21H)、6.67(d,2H)、3.83(s,3H)、3.81(s,3H)のピークを示している事から、その構造が確認された。
【0080】
1d)例示化合物(EA−14)の合成
(EA−14のジメチルエーテル体)3.0g及びエタンチオールナトリウム塩3.0gをN,N−ジメチルホルムアミド70mlに懸濁させ、窒素ガス気流下、撹拌しながら徐々に加熱すると、150℃で発泡が始まった。発泡がおさまった後、さらに温度を上げて、3時間加熱環流した。室温まで放冷した後、反応物を氷水250ml中に注入し、撹拌しながら濃塩酸1.5mlで中和した。これを酢酸エチル200mlで抽出し、抽出液を水洗、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過でこれを除去した後、溶媒を留去して粗結晶3.08gを得た。これを、トルエン〜酢酸エチル4:1混合物を展開溶媒としてシリカゲルでクロマト処理して、目的とする化合物(EA−14)2.67gを得た。収率は93.5%、融点は160〜162℃であった。
【0081】
このものは、1H−NMR(δ,ppm,CDCl3)において、7.3〜7.2(m,6H)、7.17(d,4H)、7.1〜6.7(m,17H)、6.66(d,2H)、4.91(s,1H)、4.89(s,1H)のピークを示している事から、その構造が確認された。
【0082】
応用例1 電子写真感光体用材料としての応用例
1a)ビスアゾ顔料を用いた応用例
電荷発生物質として、下記構造式のビスアゾ顔料(19)1重量部及びポリエステル樹脂(東洋紡績製バイロン200)1重量部をテトラヒドロフラン100重量部と混合し、ペイントコンディショナー装置でガラスビーズと共に2時間分散した。こうして得た分散液を、アプリケーターにてアルミ蒸着ポリエステル上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送物質として、本発明の例示化合物(EA−14)を、ポリアリレート樹脂(ユニチカ製U−ポリマー)と1:1の重量比で混合し、ジクロロエタンを溶媒として10重量%の溶液を作り、上記の電荷発生層の上にアプリケーターで塗布して膜厚約20μmの電荷輸送層を形成した。
【0083】
【化29】
【0084】
この様にして作製した積層型感光体について、静電記録試験装置(川口電機製EPA−8200)を用いて電子写真特性の評価を行なった。
測定条件:印加電圧−6kV、スタティックNo. 3(ターンテーブルの回転スピードモード:10m/min )。その結果、帯電電位(V0)が−720V、半減露光量(E1/2)が0.90ルックス・秒と高感度の値を示した。
【0085】
更に同装置を用いて、帯電−除電(除電光:白色光で400ルックス×1秒照射)を1サイクルとする繰返し使用に対する特性評価を行った。5000回での繰返しによる帯電電位の変化を求めたところ、1回目の帯電電位(V0)−720Vに対し、5000回目の帯電電位(V0)は−710Vであり、繰返しによる電位の低下がほとんどなく安定した特性を示した。また、1回目の半減露光量(E1/2)0.90ルックス・秒に対して5000回目の半減露光量(E1/2)は0.90ルックス・秒と変化がなく優れた特性を示した。
【0086】
1b)フタロシアニン顔料を用いた応用例
電荷発生物質として、アゾ顔料(19)の代わりにCuKα1.541ÅのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が、9.5°、9.7°、11.7°、15.0°、23.5°、24.1°、27.3°に主要なピークを示すX線回折スペクトルを有するチタニルオキシフタロシアニン(Y型チタニルオキシフタロシアニン)を、電荷輸送物質として例示化合物(EA−14)の代わりに例示化合物(EB−14)を用いた他は、応用例1a)と同様にして感光体を作製し、その特性を応用例1a)と同様に評価した。結果は、帯電電位(V0)が−700V、半減露光量(E1/2)が0.50ルックス・秒と高感度の値を示した。また、繰返し使用に対する特性評価でも、1回目の帯電電位(V0)−700Vに対し、5000回目の帯電電位(V0)は−695Vであり、繰返しによる電位の低下がほとんどなく安定した特性を示した。また、1回目の半減露光量(E1/2)0.50ルックス・秒に対して5000回目の半減露光量(E1/2)は0.50ルックス・秒と変化がなく優れた特性を示した。
【0087】
【発明の効果】
本発明のエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物は、前述のように、それ自身が光導電性材料として有用であり、特に電子写真感光体の電荷輸送物質として優れた働きを示す。また、本発明のエナミン〜ビス(ヒドロキシアリーレン置換)ポリエン化合物は、分子内の二個のヒドロキシ基から誘導される種々の高分子材料、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の製造中間体としても有用である。
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