JP4997423B2 - エナミン誘導体およびそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents

エナミン誘導体およびそれを用いた電子写真感光体 Download PDF

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Description

本発明は、有機溶剤に対する溶解性や感光層の形成に用いるバインダ樹脂との相溶性に優れたエナミン誘導体と当該エナミン誘導体を用いた電子写真感光体に関する。
従来より、電子写真感光体の光導電材料として、セレン、硫化カドミウムおよびアモルファスシリコンなどの無機物質が用いられている。これらの無機感光体は多くの長所を有するが、一方で有害であることやコスト高であることなどの欠点を有している。
そのため、近年、これらの欠点を解消した有機物質を用いた有機感光体が数多く提案され、実用化されている。前記有機感光体は、従来の無機感光体に比べて製造が容易であり、また電荷輸送剤、電荷発生剤、結着樹脂等の感光体の構成材料の選択肢が多様なため、設計の自由度が高いという利点がある。
この有機感光体には、電荷発生剤が電荷輸送剤を含有する感光層中に分散した単層型感光体と、電荷発生剤を含有する電荷発生層と電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とが分離して積層した積層型感光体とがある。前記いずれの感光体においても、その感度特性を向上させるためには、電荷輸送性の高い電荷輸送剤を用いることが要求される。そこで、従来、種々の電荷輸送剤が提案されており、特許文献1には、下記一般式HT−Aに示すエナミン誘導体が開示されている。
Figure 0004997423
しかしながら、上記公報に開示されているエナミン誘導体は、一般に電荷輸送性に優れ、有機溶剤に対する溶解性や、感光層の形成に用いるバインダ樹脂との相溶性が良いものもあるが、長期の使用においては感光体の残留電位が高くなり、光感度が不十分になるという問題がある。
特開平1−033556号公報
本発明の課題は、有機溶剤に対する溶解性や感光層の形成に用いるバインダ樹脂との相溶性に優れた新規なエナミン誘導体、および感度特性に優れた電子写真感光体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表わされるエナミン誘導体によれば、有機溶剤に対する溶解性やバインダ樹脂との相溶性を著しく向上させることができ、感光層中での結晶の析出を防止して高感度の電子写真感光体を得ることができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るエナミン誘導体およびこれを用いた電子写真感光体は、以下の特徴を有する。
(1)下記一般式(1)で表わされるエナミン誘導体。
Figure 0004997423
…(1)
(式中、R1およびR2は、同一または異なる基であって、水素原子、炭素数1〜のアルキル基を示す。Rは、下記一般式(2)で表わされる基であり、mは1の整数を示す。)
Figure 0004997423
…(2)
(式中、R 3 は、水素原子であり 4 およびR 5 は、一方が水素原子であり、他方がフェニル基である。nは0または1の整数を示す。)
(2)少なくとも電荷発生剤および電荷輸送剤を含有する感光層を備えた電子写真感光体であって、前記電荷輸送剤は上記一般式(1)で表されるエナミン誘導体からなることを特徴とする電子写真感光体。
本発明の前記一般式(1)で表わされるエナミン誘導体からなる電荷輸送剤によれば、有機溶剤に対する溶解性やバインダ樹脂との相溶性が著しく向上し、感光層中での結晶の析出が防止されて、高感度な電子写真感光体を得ることができる
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明に係るエナミン誘導体は、前述のように、上記一般式(1)で表されるものである。本発明に係るエナミン誘導体(1)の置換基R1およびR2は、同一または異なる基であって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜20のアラルキル基、または炭素数6〜20のアリール基を示し、アルキル基、アラルキル基、またはアリール基は置換基を有してもよい。Rは、上記一般式(2)で表わされる基である。mは1または2の整数を示す。式(2)中R3〜R5は、同一または異なる基であって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜20のアラルキル基、または炭素数6〜20のアリール基を示し、アルキル基、アラルキル基、またはアリール基は置換基を有してもよい。nは0または1の整数を示す。Rは、同一または異なる基であって、1つまたは2つが置換していればよい。Rが1つの場合、窒素原子に対してオルト位またはメタ位に置換しているのが好ましい。Rが2つの場合、同一または異なる基であって、窒素原子に対してオルト位およびメタ位、オルト位およびパラ位、メタ位およびメタ位、またはメタ位およびパラ位の組み合わせが好ましい。より好ましくはオルト位およびメタ位である。
1〜R5におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基などの炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。また、アルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどの炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基などが挙げられる。
また、R1〜R5におけるアラルキル基としては、例えばベンジル、α−メチルベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル基などが挙げられる。
また、R1〜R5におけるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、アントリル基、フェナントリル基等など炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。前記アリール基は置換基を有していてもよく、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。
また、R1〜R2のうち少なくとも一つが窒素原子に対してオルト位に置換した炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。特定の置換位置に炭素数1〜6のアルキル基を有することにより、電荷輸送剤の分子内にネジレ構造を効果的に有することができるとともに、化合物バインダ樹脂に対する溶解性が向上し、電荷輸送剤の移動度を高めることができる。また、R4およびR5は、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。これにより、π電子共役系が広がるため電荷輸送能をより高めることができる。
前記式(1)で表わされるエナミン誘導体は、前記したように、Rのうち少なくとも1つは窒素原子に対してオルト位またはメタ位に置換しているのが好ましい。Rのうち少なくとも1つがオルト位またはメタ位に位置することにより、対称性が崩れ、有機溶剤に対する溶解性やバインダ樹脂との相溶性が優れると考えられる。
本発明にかかる上記式(1)で表わされるエナミン誘導体としては、例えば、次に示すHT−1〜4が挙げられる。ただし、本発明において、電荷輸送剤として用いることができる式(1)のエナミン誘導体はこれらに限定されるものではない。
Figure 0004997423

(合成方法)
本発明における式(1)に含まれるエナミン誘導体は、いずれも公知の製造方法によって合成することができる。例えば、HT−1は、Wittig反応およびエナミン化反応などを利用して、次に示す方法により得ることができる。即ち、まず、式(6)で表わされる化合物を、下記の反応式によりWittig反応させる。すなわち、亜リン酸エステル誘導体である化合物(6)を温度0〜10℃のもとで置換反応を行い、乾燥THF(テトラヒドロフラン)とナトリウムメトキシドとを加えて、20〜50分混合攪拌する。次に、得られた反応液に、乾燥THFに溶解させたベンズアルデヒドを加え、室温で10〜15時間攪拌する。得られた反応液をトルエンなどで抽出して式(3)で表わされる化合物を得ることができる。
Figure 0004997423

…(R−1)

次に、得られた化合物(3)をアニリンと反応させて得られる式(4)で表わされる化合物を、下記反応式によりエナミン化反応させる。すなわち、化合物(4)をジフェニルアセトアルデヒドおよび少量のP−トルエンスルホン酸とともにトルエンに溶解させ、80〜120℃で1〜3時間攪拌する。その後室温まで冷却し、得られた反応液に無水硫酸ナトリウムおよび活性白土を加え、ろ過処理をしてトルエンを減圧留去し、本発明にかかる化合物HT−1を得ることができる。
Figure 0004997423

…(R−2)

本発明における式(1)に含まれる他のエナミン誘導体も、前記化合物(4)を、所望の基を有する化合物に代えることにより、前記と同様にして合成することができる。
本発明の電子写真感光体は、前述のように、感光層に上記式(1)に含まれるエナミン誘導体からなる電荷輸送剤を含有するものである。
上記感光層の構成は、同一の層中に電荷発生剤と電荷輸送剤とを混在させる、いわゆる単層型感光体の場合と、電荷発生剤を含有する層と電荷輸送剤を含有する層とを分離してなる、いわゆる積層型感光体の場合とで異なるが、いずれの感光層も、電荷発生剤、電荷輸送剤等の各成分をバインダ樹脂等とともに溶媒中に溶解・分散させ、こうして得られた塗布液を導電基体上に塗布、乾燥することによって形成されるものである。
本発明の電子写真感光体は、前述のように、溶剤への溶解性がよく、電荷輸送性の高い前記式(1)に含まれる化合物を含有することから、従来の電子写真感光体に比べて高感度である。しかも、本発明の電子写真感光体によれば、前記式(1)に含まれる化合物とバインダ樹脂との相溶性が良好であることから、感光層の長期的な安定性が向上する。
(電荷発生剤)
次に、本発明にかかる電荷発生剤としては、例えば無金属フタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、α−チタニルフタロシアニン、Y−チタニルフタロシアニン、V−ヒドロキシガリウムフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料といった有機光導電体、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミニウム、アモルファスシリコンといった無機光導電材料などが挙げられる。これらの電荷発生剤は単独でまたは2種以上をブレンドして用いてもよい。
本発明では、特にフタロシアニン系顔料、とりわけ無金属フタロシアニン(例えばX型無金属フタロシアニン)、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンおよびクロロガリウムフタロシアニンから選ばれる少なくとも1種を電荷発生剤として用いるのが、LEDやレーザー等、650nm以上の赤色もしくは赤外光を露光光源としたときの、感光体の電気特性のうえで好ましい。
(正孔輸送剤)
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷輸送剤は、正孔輸送剤であり、前記式(1)に含まれる化合物からなる。
本発明の電子写真感光体においては、上記化合物(1)と併せて、従来公知の種々の正孔輸送剤を感光層中に含有させてもよい。かかる他の正孔輸送剤としては、例えばビススチルベンジアミン誘導体、ビストリフェニルアミン誘導体、トリフェニルアミノスチリル誘導体およびスチルベンアミン−ヒドラゾン誘導体等が挙げられる。
(電子輸送剤)
電子輸送剤としては、例えばジフェノキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、チオキサントン誘導体(2,4,8−トリニトロチオキサントン等)、フルオレノン誘導体(3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体等)、アントラセン誘導体、アクリジン誘導体、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸誘導体、無水マレイン酸誘導体、ジブロモ無水マレイン酸誘導体などの、電子受容性を有する化合物が挙げられる。
(バインダ樹脂)
本発明の電子写真感光体において、電荷発生剤、電荷輸送剤等の各成分を含有する層を形成するためのバインダ樹脂には、従来公知の種々の樹脂を採用することができる。なかでも、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂をバインダ樹脂として使用するのが、本発明にかかる上記式(1)で表わされる化合物との相溶性や、感光層の強度や耐磨耗性等の特性をより一層良好なものにするという観点から好ましい。また、上記例示のバインダ樹脂は、電荷発生剤や電荷輸送剤との相溶性に優れており、しかも電荷輸送剤の電荷輸送性を妨害するような部位をその分子内に有しないものである。従って、かかるバインダ樹脂を用いることによって、より一層高感度な電子写真感光体を得ることができる。
(分散媒)
上記例示の電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、バインダ樹脂等を分散・溶解させて感光層形成用の塗布液を調製するのに用いる分散媒としては、感光層形成用塗布液に従来用いられている種々の有機溶剤が使用可能である。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
なお、これに限定されるものではないが、電荷発生剤、電荷輸送剤、バインダ樹脂等の各成分を安定して分散させる上で、各種の有機溶剤の中でも特に、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、ジクロロエタンおよびクロロベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を用いるのが好ましい。
(添加剤)
感光層形成用の塗布液には、電子写真特性に悪影響を与えない範囲であれば、上記各成分のほかにも従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
(導電性基体)
導電性基体としては、導電性を有する各種の材料が使用可能であり、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮などの金属単体、上記金属が蒸着もしくはラミネートされたプラスチック材料、さらにヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどで被覆されたガラスなどが挙げられる。導電性基体は、使用する画像形成装置の構造に合わせてドラム状、シート状などの形態で使用される。この導電性基体は充分な機械的強度を有しているのが好ましい。
本発明に用いられる導電性基体は、これに限定されるものではないが、その表面に酸化被膜処理または樹脂被膜処理を施したものであってもよい。
(単層型電子写真感光体の製造)
単層型の電子写真感光体は、電荷発生剤と、本発明の化合物(1)(正孔輸送剤)と、バインダ樹脂と、さらに必要に応じて電子輸送剤や上記添加剤とを、適当な分散媒に分散または溶解させて、こうして得られた感光層形成用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させて感光層を形成することによって得られる。
上記感光層形成用塗布液において、電荷発生剤は、バインダ樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すればよい。正孔輸送剤は、バインダ樹脂100重量部に対して5〜200重量部、好ましくは50〜150重量部の割合で配合すればよい。電子輸送剤は、バインダ樹脂100重量部に対して5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部の割合で配合すればよい。電子輸送剤と正孔輸送剤とを併用する場合において、電子輸送剤と正孔輸送剤との総量は、バインダ樹脂100重量部に対して20〜500重量部、好ましくは30〜200重量部とするのが適当である。
感光層形成用塗布液の塗布によって得られる感光層の厚さは5〜100μm、特に10〜50μmとなるように設定するのが好ましい。
感光層形成用塗布液を調製する際には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、不溶性アゾ顔料、バインダ樹脂等を、適当な溶剤とともに、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等の公知の手段を用いて分散混合すればよい。
(積層型電子写真感光体の製造)
積層型感光体とする場合は、電荷発生剤および正孔輸送剤をそれぞれ適当なバインダ樹脂および溶剤と共に、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機などを用いて混合して分散液を調製し、この分散液を導電性基体上にこれを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。乾燥後の各層の厚さは、電荷発生層で0.01〜5μm、好ましくは0.1〜3μmであり、電荷輸送層で2〜100μm、好ましくは5〜50μmであるのがよい。
積層型感光体のうち電荷発生層においては、バインダ樹脂100重量部に対して電荷発生剤を5〜1000重量部、特に30〜500重量部の割合で含有させるのがよい。また、電荷輸送層においては、バインダ樹脂100重量部に対して正孔輸送剤を10〜100重量部、特に30〜80重量部の割合で含有させるのがよい。また、正孔輸送剤と電子輸送剤を併用する場合は、その総量がバインダ樹脂100重量部に対して10〜500重量部、特に30〜200重量部の割合で含有させるのがよい。
単層型感光層または積層型感光層と、導電性基体との間や、積層型感光層を構成する電荷発生層と電荷輸送層との間には、感光体の特性を阻害しない範囲で中間層、バリア層などを形成してもよい。また、感光層の表面には保護層が形成されていてもよい。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明のエナミン誘導体およびこれを用いた電子写真感光体をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1〜12および比較例1〜4]
(正孔輸送剤の合成)
(1)化合物(6)の合成
まず、式(6)で表される化合物の合成を、下記の反応式に従って実施した。すなわち、500mLフラスコで式(5)で表わされる化合物25g(0.155mol)と亜リン酸トリエチル30g(0.18mol)とを添加して、180℃で加熱し、8時間撹拌した。その後、室温まで冷却した後、過剰な亜リン酸トリエチルエステルを減圧留去して、化合物(6)36.6gを得た(収率90%)。
Figure 0004997423

…(R−3)
(2)化合物(3)の合成
次いで、上記式(3)で表される化合物を、上記反応式(R−1)に従って合成した。すなわち、200mLの2口フラスコ内に、前記で得た化合物(6)10g(0.038mol)を加えた後、アルゴンガス置換を行い、乾燥させたテトラヒドロフラン(THF)50mLと、28%ナトリウムメトシキド7.7g(0.04mol)とを投入して、0℃で30分間攪拌した。次いで、この反応液に、ベンズアルデヒド4g(0.038mol)を、乾燥THF200mLに溶解させて投入し、室温で12時間攪拌した。その後、反応液をイオン交換水に注いでトルエンにて抽出し、有機層をイオン交換水で5回洗浄した。次いで、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。その後、残渣をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム)にて精製をして、化合物(3)6.9gを得た(収率85%)。
(3)化合物(4)の合成
化合物(4)を、下記反応式に沿って合成した。すなわち、1Lフラスコ内に、酢酸パラジウム1.1g(0.005mol)とP(t−C4932g(0.01mol)とを減圧下で2時間、加熱攪拌を行った。次いで、前記得られた化合物(3)21g(0.1mol)とアニリン9.3g(0.1mol)を加えた後、キシレン400mLを加えて140℃で加熱し、8時間攪拌した。その後、室温まで冷却した後、500mLのトルエンを加え、反応液をろ過した。次いで、得られたろ液からトルエンを減圧留去した。その後、残渣をクロロホルムに溶解し、さらに活性白土で処理して、キシレンを減圧留去した。最後に、残渣をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム)にて精製をして、化合物(4)21gを得た(収率80%)。
Figure 0004997423
…(R−4)
(4)HT−1の合成
最後に、HT−1を、上記反応式(R−2)に沿って合成した。すなわち、500mLのフラスコ内に、前記で得た化合物(4)10g(0.037mol)を、ジフェニルアセトアルデヒド7.2g(0.037mol)および少量のP−トルエンスルホン酸とともに200mLのトルエンに溶解させ、100℃で2時間、加熱攪拌した。その後室温まで冷却し、得られた反応液に無水硫酸ナトリウムおよび活性白土を加え、ろ過処理をしてトルエンを減圧留去した。最後に、残渣をエタノールを加え、加温して溶解させ、その後冷却して結晶を析出させ、本発明にかかるエナミン誘導体HT−1を得た。
エナミン誘導体HT−1は、一般式(1)で表されるエナミン誘導体のR1およびR2が水素原子、Rが窒素原子に対してオルト位に置換されたスチリル基、すなわち一般式(2)で表わされる基のR4(またはR5)が水素原子、R5(またはR4)がフェニル基で、mが1、nが0の化合物である。エナミン誘導体HT−1の1H−NMRスペクトルを図1に示す。
(5)HT−2の合成
本発明におけるHT−2は、前記HT−1の合成において、前記した化合物(5)を下記式(9)で表わされる化合物に、前記したアニリンを下記式(7)で表わされる化合物に代えることにより、HT−1と同様にして合成した。
得られたHT−2は、一般式(1)で表されるエナミン誘導体のR1(またはR2)が窒素原子に対してオルト位に置換したメチル基、R2(またはR1)が窒素原子に対してオルト位に置換したエチル基、Rが窒素原子に対してメタ位に置換されたスチリル基、すなわち一般式(2)で表わされる基のR4(またはR5)が水素原子、R5(またはR4)がフェニル基で、mが1、nが0の化合物である。
Figure 0004997423
(6)HT−3の合成
本発明におけるHT−3は、前記HT−1の合成において、前記した化合物(5)を化合物(9)に、前記したアニリンを化合物(7)に、前記したベンズアルデヒドを下記式(10)で表わされる化合物に代えることにより、HT−1と同様にして合成した。
得られたHT−3は、一般式(1)で表されるエナミン誘導体のR1(またはR2)が窒素原子に対してオルト位に置換したメチル基、R2(またはR1)が窒素原子に対してオルト位に置換したエチル基、Rが窒素原子に対してメタ位に置換されたスチリルビニレン基、すなわち一般式(2)で表わされる基のR3が水素原子、R4(またはR5)が水素原子、R5(またはR4)がフェニル基で、mが1、nが1の化合物である。
Figure 0004997423
(7)HT−4の合成
本発明におけるHT−4は、前記HT−1の合成において、前記した化合物(5)を化合物(9)に代えることにより、HT−1と同様にして合成した。
得られたエナミン誘導体HT−4は、一般式(1)で表されるエナミン誘導体のR1およびR2が水素原子、Rが窒素原子に対してメタ位に置換されたスチリル基、すなわち一般式(2)で表わされる基のR4(またはR5)が水素原子、R5(またはR4)がフェニル基で、mが1、nが0の化合物である。エナミン誘導体HT−4の1H−NMRスペクトルを図2に示す。
〔電子写真感光体の製造〕
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、前記したHT−1〜3、並びに下記に示す正孔輸送剤HT−Aを用いた。
Figure 0004997423
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、下記に示す2種類の電子輸送剤(ET−1、2)を用いた。
Figure 0004997423
(実施例1)
電荷発生剤としてX型無金属フタロシアニン5重量部と、正孔輸送剤として前記HT−1を60重量部と、電子輸送剤として前記ET−1を50重量部および結着樹脂としてポリカーボネート100重量部とを、溶剤としてのテトラヒドロフラン800重量部とともにボールミルにて50時間混合分散させて、単層型感光層用の塗布液を作製した。次いで、この塗布液をアルミニウム素管からなる導電性基体上にディップコート法によって塗布し、100℃で30分間熱風乾燥することにより、膜厚25μmの感光層の単層型感光体を作製した。
(実施例2〜12、比較例1〜4)
実施例1で作製した単層型感光層用塗布液中に、正孔輸送剤としてHT−1〜3およびA、電子輸送剤としてET−1、2とを、表1に示す組み合わせに代えて用い、実施例1と同様にして単層感光体を作製した。
(評価試験および評価方法)
GENTEC社製ドラム感度試験機に、前記作製した実施例1〜12および比較例1〜4の電子写真感光体のいずれかを設置して、電気特性試験およびドラム表面の結晶化有無について評価を行った。電気特性試験では、まず、初期表面電位V0が+700Vとなるように帯電させた。次いで、ハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルタを用いて取り出した波長780nm(半値幅20nm)の単色光(光強度1.5μJ/cm2)を感光体の表面に1.5秒間照射し、露光開始から0.5秒経過した時点での表面電位を測定して、これを残留電位VL(V)とした。これらの結果を表1に示す。
Figure 0004997423
表1より明らかなように、HT−Aを用いた比較例1〜4の電子写真感光体では、いずれも残留電位VLが高くなり、感度が十分得られなかった。
これに対し、本発明のHT−1〜3を用いた実施例1〜12の電子写真感光体では、いずれも残留電位VLは低く、高感度の電子写真感光体を得ることができた。
HT−1の合成で得られたエナミン誘導体HT−1の1H−NMRスペクトルを示すグラフである。 HT−4の合成で得られたエナミン誘導体HT−4の1H−NMRスペクトルを示すグラフである。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)で表されるエナミン誘導体。
    Figure 0004997423
    …(1)
    (式中、R1およびR2は、同一または異なる基であって、水素原子、炭素数1〜のアルキル基を示す。Rは、下記一般式(2)で表わされる基であり、mは1の整数を示す。)
    Figure 0004997423
    …(2)
    (式中、R 3 は、水素原子であり 4 およびR 5 は、一方が水素原子であり、他方がフェニル基である。nは0または1の整数を示す。)
  2. 少なくとも電荷発生剤および電荷輸送剤を含有する感光層を備えた電子写真感光体であって、前記電荷輸送剤は請求項1に記載の一般式(1)で表されるエナミン誘導体からなることを特徴とする電子写真感光体。
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