JP4997423B2 - エナミン誘導体およびそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents
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そのため、近年、これらの欠点を解消した有機物質を用いた有機感光体が数多く提案され、実用化されている。前記有機感光体は、従来の無機感光体に比べて製造が容易であり、また電荷輸送剤、電荷発生剤、結着樹脂等の感光体の構成材料の選択肢が多様なため、設計の自由度が高いという利点がある。
(1)下記一般式(1)で表わされるエナミン誘導体。
(式中、R1およびR2は、同一または異なる基であって、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基を示す。Rは、下記一般式(2)で表わされる基であり、mは1の整数を示す。)
(式中、R 3 は、水素原子であり、R 4 およびR 5 は、一方が水素原子であり、他方がフェニル基である。nは0または1の整数を示す。)
(2)少なくとも電荷発生剤および電荷輸送剤を含有する感光層を備えた電子写真感光体であって、前記電荷輸送剤は上記一般式(1)で表されるエナミン誘導体からなることを特徴とする電子写真感光体。
また、R1〜R5におけるアラルキル基としては、例えばベンジル、α−メチルベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル基などが挙げられる。
また、R1〜R5におけるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、アントリル基、フェナントリル基等など炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。前記アリール基は置換基を有していてもよく、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。
また、R1〜R2のうち、少なくとも一つが窒素原子に対してオルト位に置換した炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。特定の置換位置に炭素数1〜6のアルキル基を有することにより、電荷輸送剤の分子内にネジレ構造を効果的に有することができるとともに、化合物バインダ樹脂に対する溶解性が向上し、電荷輸送剤の移動度を高めることができる。また、R4およびR5は、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。これにより、π電子共役系が広がるため電荷輸送能をより高めることができる。
本発明における式(1)に含まれるエナミン誘導体は、いずれも公知の製造方法によって合成することができる。例えば、HT−1は、Wittig反応およびエナミン化反応などを利用して、次に示す方法により得ることができる。即ち、まず、式(6)で表わされる化合物を、下記の反応式によりWittig反応させる。すなわち、亜リン酸エステル誘導体である化合物(6)を温度0〜10℃のもとで置換反応を行い、乾燥THF(テトラヒドロフラン)とナトリウムメトキシドとを加えて、20〜50分混合攪拌する。次に、得られた反応液に、乾燥THFに溶解させたベンズアルデヒドを加え、室温で10〜15時間攪拌する。得られた反応液をトルエンなどで抽出して式(3)で表わされる化合物を得ることができる。
…(R−1)
次に、得られた化合物(3)をアニリンと反応させて得られる式(4)で表わされる化合物を、下記反応式によりエナミン化反応させる。すなわち、化合物(4)をジフェニルアセトアルデヒドおよび少量のP−トルエンスルホン酸とともにトルエンに溶解させ、80〜120℃で1〜3時間攪拌する。その後室温まで冷却し、得られた反応液に無水硫酸ナトリウムおよび活性白土を加え、ろ過処理をしてトルエンを減圧留去し、本発明にかかる化合物HT−1を得ることができる。
本発明の電子写真感光体は、前述のように、溶剤への溶解性がよく、電荷輸送性の高い前記式(1)に含まれる化合物を含有することから、従来の電子写真感光体に比べて高感度である。しかも、本発明の電子写真感光体によれば、前記式(1)に含まれる化合物とバインダ樹脂との相溶性が良好であることから、感光層の長期的な安定性が向上する。
次に、本発明にかかる電荷発生剤としては、例えば無金属フタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、α−チタニルフタロシアニン、Y−チタニルフタロシアニン、V−ヒドロキシガリウムフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料といった有機光導電体、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミニウム、アモルファスシリコンといった無機光導電材料などが挙げられる。これらの電荷発生剤は単独でまたは2種以上をブレンドして用いてもよい。
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷輸送剤は、正孔輸送剤であり、前記式(1)に含まれる化合物からなる。
本発明の電子写真感光体においては、上記化合物(1)と併せて、従来公知の種々の正孔輸送剤を感光層中に含有させてもよい。かかる他の正孔輸送剤としては、例えばビススチルベンジアミン誘導体、ビストリフェニルアミン誘導体、トリフェニルアミノスチリル誘導体およびスチルベンアミン−ヒドラゾン誘導体等が挙げられる。
電子輸送剤としては、例えばジフェノキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、チオキサントン誘導体(2,4,8−トリニトロチオキサントン等)、フルオレノン誘導体(3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体等)、アントラセン誘導体、アクリジン誘導体、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸誘導体、無水マレイン酸誘導体、ジブロモ無水マレイン酸誘導体などの、電子受容性を有する化合物が挙げられる。
本発明の電子写真感光体において、電荷発生剤、電荷輸送剤等の各成分を含有する層を形成するためのバインダ樹脂には、従来公知の種々の樹脂を採用することができる。なかでも、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂をバインダ樹脂として使用するのが、本発明にかかる上記式(1)で表わされる化合物との相溶性や、感光層の強度や耐磨耗性等の特性をより一層良好なものにするという観点から好ましい。また、上記例示のバインダ樹脂は、電荷発生剤や電荷輸送剤との相溶性に優れており、しかも電荷輸送剤の電荷輸送性を妨害するような部位をその分子内に有しないものである。従って、かかるバインダ樹脂を用いることによって、より一層高感度な電子写真感光体を得ることができる。
上記例示の電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、バインダ樹脂等を分散・溶解させて感光層形成用の塗布液を調製するのに用いる分散媒としては、感光層形成用塗布液に従来用いられている種々の有機溶剤が使用可能である。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
感光層形成用の塗布液には、電子写真特性に悪影響を与えない範囲であれば、上記各成分のほかにも従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
導電性基体としては、導電性を有する各種の材料が使用可能であり、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮などの金属単体、上記金属が蒸着もしくはラミネートされたプラスチック材料、さらにヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどで被覆されたガラスなどが挙げられる。導電性基体は、使用する画像形成装置の構造に合わせてドラム状、シート状などの形態で使用される。この導電性基体は充分な機械的強度を有しているのが好ましい。
本発明に用いられる導電性基体は、これに限定されるものではないが、その表面に酸化被膜処理または樹脂被膜処理を施したものであってもよい。
単層型の電子写真感光体は、電荷発生剤と、本発明の化合物(1)(正孔輸送剤)と、バインダ樹脂と、さらに必要に応じて電子輸送剤や上記添加剤とを、適当な分散媒に分散または溶解させて、こうして得られた感光層形成用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させて感光層を形成することによって得られる。
感光層形成用塗布液を調製する際には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、不溶性アゾ顔料、バインダ樹脂等を、適当な溶剤とともに、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等の公知の手段を用いて分散混合すればよい。
積層型感光体とする場合は、電荷発生剤および正孔輸送剤をそれぞれ適当なバインダ樹脂および溶剤と共に、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機などを用いて混合して分散液を調製し、この分散液を導電性基体上にこれを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。乾燥後の各層の厚さは、電荷発生層で0.01〜5μm、好ましくは0.1〜3μmであり、電荷輸送層で2〜100μm、好ましくは5〜50μmであるのがよい。
(正孔輸送剤の合成)
(1)化合物(6)の合成
まず、式(6)で表される化合物の合成を、下記の反応式に従って実施した。すなわち、500mLフラスコで式(5)で表わされる化合物25g(0.155mol)と亜リン酸トリエチル30g(0.18mol)とを添加して、180℃で加熱し、8時間撹拌した。その後、室温まで冷却した後、過剰な亜リン酸トリエチルエステルを減圧留去して、化合物(6)36.6gを得た(収率90%)。
次いで、上記式(3)で表される化合物を、上記反応式(R−1)に従って合成した。すなわち、200mLの2口フラスコ内に、前記で得た化合物(6)10g(0.038mol)を加えた後、アルゴンガス置換を行い、乾燥させたテトラヒドロフラン(THF)50mLと、28%ナトリウムメトシキド7.7g(0.04mol)とを投入して、0℃で30分間攪拌した。次いで、この反応液に、ベンズアルデヒド4g(0.038mol)を、乾燥THF200mLに溶解させて投入し、室温で12時間攪拌した。その後、反応液をイオン交換水に注いでトルエンにて抽出し、有機層をイオン交換水で5回洗浄した。次いで、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。その後、残渣をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム)にて精製をして、化合物(3)6.9gを得た(収率85%)。
化合物(4)を、下記反応式に沿って合成した。すなわち、1Lフラスコ内に、酢酸パラジウム1.1g(0.005mol)とP(t−C4H9)32g(0.01mol)とを減圧下で2時間、加熱攪拌を行った。次いで、前記得られた化合物(3)21g(0.1mol)とアニリン9.3g(0.1mol)を加えた後、キシレン400mLを加えて140℃で加熱し、8時間攪拌した。その後、室温まで冷却した後、500mLのトルエンを加え、反応液をろ過した。次いで、得られたろ液からトルエンを減圧留去した。その後、残渣をクロロホルムに溶解し、さらに活性白土で処理して、キシレンを減圧留去した。最後に、残渣をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム)にて精製をして、化合物(4)21gを得た(収率80%)。
最後に、HT−1を、上記反応式(R−2)に沿って合成した。すなわち、500mLのフラスコ内に、前記で得た化合物(4)10g(0.037mol)を、ジフェニルアセトアルデヒド7.2g(0.037mol)および少量のP−トルエンスルホン酸とともに200mLのトルエンに溶解させ、100℃で2時間、加熱攪拌した。その後室温まで冷却し、得られた反応液に無水硫酸ナトリウムおよび活性白土を加え、ろ過処理をしてトルエンを減圧留去した。最後に、残渣をエタノールを加え、加温して溶解させ、その後冷却して結晶を析出させ、本発明にかかるエナミン誘導体HT−1を得た。
エナミン誘導体HT−1は、一般式(1)で表されるエナミン誘導体のR1およびR2が水素原子、Rが窒素原子に対してオルト位に置換されたスチリル基、すなわち一般式(2)で表わされる基のR4(またはR5)が水素原子、R5(またはR4)がフェニル基で、mが1、nが0の化合物である。エナミン誘導体HT−1の1H−NMRスペクトルを図1に示す。
本発明におけるHT−2は、前記HT−1の合成において、前記した化合物(5)を下記式(9)で表わされる化合物に、前記したアニリンを下記式(7)で表わされる化合物に代えることにより、HT−1と同様にして合成した。
得られたHT−2は、一般式(1)で表されるエナミン誘導体のR1(またはR2)が窒素原子に対してオルト位に置換したメチル基、R2(またはR1)が窒素原子に対してオルト位に置換したエチル基、Rが窒素原子に対してメタ位に置換されたスチリル基、すなわち一般式(2)で表わされる基のR4(またはR5)が水素原子、R5(またはR4)がフェニル基で、mが1、nが0の化合物である。
本発明におけるHT−3は、前記HT−1の合成において、前記した化合物(5)を化合物(9)に、前記したアニリンを化合物(7)に、前記したベンズアルデヒドを下記式(10)で表わされる化合物に代えることにより、HT−1と同様にして合成した。
得られたHT−3は、一般式(1)で表されるエナミン誘導体のR1(またはR2)が窒素原子に対してオルト位に置換したメチル基、R2(またはR1)が窒素原子に対してオルト位に置換したエチル基、Rが窒素原子に対してメタ位に置換されたスチリルビニレン基、すなわち一般式(2)で表わされる基のR3が水素原子、R4(またはR5)が水素原子、R5(またはR4)がフェニル基で、mが1、nが1の化合物である。
本発明におけるHT−4は、前記HT−1の合成において、前記した化合物(5)を化合物(9)に代えることにより、HT−1と同様にして合成した。
得られたエナミン誘導体HT−4は、一般式(1)で表されるエナミン誘導体のR1およびR2が水素原子、Rが窒素原子に対してメタ位に置換されたスチリル基、すなわち一般式(2)で表わされる基のR4(またはR5)が水素原子、R5(またはR4)がフェニル基で、mが1、nが0の化合物である。エナミン誘導体HT−4の1H−NMRスペクトルを図2に示す。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、前記したHT−1〜3、並びに下記に示す正孔輸送剤HT−Aを用いた。
電子輸送剤として、下記に示す2種類の電子輸送剤(ET−1、2)を用いた。
電荷発生剤としてX型無金属フタロシアニン5重量部と、正孔輸送剤として前記HT−1を60重量部と、電子輸送剤として前記ET−1を50重量部および結着樹脂としてポリカーボネート100重量部とを、溶剤としてのテトラヒドロフラン800重量部とともにボールミルにて50時間混合分散させて、単層型感光層用の塗布液を作製した。次いで、この塗布液をアルミニウム素管からなる導電性基体上にディップコート法によって塗布し、100℃で30分間熱風乾燥することにより、膜厚25μmの感光層の単層型感光体を作製した。
(実施例2〜12、比較例1〜4)
実施例1で作製した単層型感光層用塗布液中に、正孔輸送剤としてHT−1〜3およびA、電子輸送剤としてET−1、2とを、表1に示す組み合わせに代えて用い、実施例1と同様にして単層感光体を作製した。
GENTEC社製ドラム感度試験機に、前記作製した実施例1〜12および比較例1〜4の電子写真感光体のいずれかを設置して、電気特性試験およびドラム表面の結晶化有無について評価を行った。電気特性試験では、まず、初期表面電位V0が+700Vとなるように帯電させた。次いで、ハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルタを用いて取り出した波長780nm(半値幅20nm)の単色光(光強度1.5μJ/cm2)を感光体の表面に1.5秒間照射し、露光開始から0.5秒経過した時点での表面電位を測定して、これを残留電位VL(V)とした。これらの結果を表1に示す。
これに対し、本発明のHT−1〜3を用いた実施例1〜12の電子写真感光体では、いずれも残留電位VLは低く、高感度の電子写真感光体を得ることができた。
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