JP4119349B2 - ジスチルベン誘導体およびそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents
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Description
上記一般式(91)で表されるジスチルベン誘導体は、ベンゼン環にスチリル(styryl)基を2つ備える、いわゆるジスチルベン(distilbene)をその中心骨格としており、さらに、ジスチルベンの両端に窒素原子と、その窒素原子に置換したフェニル基(N置換フェニル基)、および窒素原子に置換したβ−フェニルスチリル基とを備えている。かかるジスチルベン誘導体はπ電子共役平面が広く、それゆえ、極めて優れた電荷輸送能を発揮することができる。
で表されることを特徴とする。
上記本発明のジスチルベン誘導体(1)において、N置換フェニルのオルト位に置換する基R1およびR2は、双方ともアルキル基であるのが好ましい。また、基R1およびR2に導入されるアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはイソプロピル基の、炭素数が1〜3のアルキル基が好ましく、とりわけメチル基またはエチル基の、炭素数が1または2のアルキル基が好ましい。
本発明の電子写真感光体は、前述のように、電荷輸送能の高い上記一般式(1)で表されるジスチルベン誘導体を含有することから、従来の電子写真感光体に比べて高感度である。しかも、本発明の電子写真感光体によれば、ジスチルベン誘導体(1)とバインダ樹脂との相溶性が良好であることから、感光層の経時的な安定性が向上する。
(I)感光層が単一の層であって、上記一般式(1)で表されるジスチルベン誘導体とともに電荷発生剤を含有する、いわゆる単層型の感光体であってもよく、
(II)感光層が、電荷発生剤を含有する電荷発生層と、上記一般式(1)で表されるジスチルベン誘導体を含有する電荷輸送層とを備えており、当該電荷発生層と電荷輸送層とが、導電性基体上からこの順でまたは逆の順で設けられてなる、いわゆる積層型の感光体であってもよい。
〔ジスチルベン誘導体〕
本発明に係るジスチルベン誘導体は、前述のように、上記一般式(1)で表されるものである。本発明に係るジスチルベン誘導体(1)の置換基R1およびR2は、前述のように、同一もしくは異なるアルキル基を示すか、あるいはいずれか一方が水素原子で他方がアルキル基を示す。R1およびR2に相当するアルキル基の好適例については前述のとおりである。
ジスチルベン誘導体(1)の置換基R3、R4、R5およびR5は同一または異なって、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキル基またはアリール基である。R3〜R6の炭素数は、一般に、ジスチルベン誘導体(1)の有機溶剤に対する溶解性をより一層良好なものとする上で多いのが好ましいが、当該誘導体(1)の電子輸送能(電荷移動度)をより一層良好なものとするには少ないのが好ましいことから、両者のバランスをとって設定すればよい。通常、R3〜R6の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは2〜4である。
(合成方法)
本発明に係るジスチルベン誘導体(1)は、例えば以下に示す工程1〜7を経ることによって合成することができる。
本発明に係るジスチルベン誘導体(1)のN置換フェニル基やN置換β−フェニルスチリル基は、左右非対称であってもよいが、合成効率の観点から、対称形のものであるのが好ましい。左右非対称のジスチルベン誘導体(1)を得るには、上記工程6においてα,α’−ジクロロキシレンに代えてα−クロロキシレンを使用し、これを等モル量の化合物(56)と反応させた上で、その生成物を、工程6に準じてホスホン酸トリエチルと反応させ、次いで等モル量の化合物(56)と反応させればよい。
次に、本発明の電子写真感光体について詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体は、前述のように、導電性基体上に感光層を設けてなるものであって、当該感光層が上記一般式(1)で表されるジスチルベン誘導体を含有するものである。
本発明の電子写真感光体に使用可能な電荷発生剤としては、例えば下記式(CGM1)で表される無金属フタロシアニン、下記式(CGM2)で表されるチタニルフタロシアニン(TiOPc)、下記式(CGM3)で表されるヒドロキシガリウムフタロシアニン、下記式(CGM4)で表されるクロロガリウムフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;ジスアゾ顔料;ジスアゾ縮合顔料、モノアゾ顔料、ペリレン系顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等の、従来公知の種々の電荷発生剤が挙げられる。
半導体レーザを使用したレーザビームプリンタやファクシミリといったデジタル光学系の画像形成装置には、上記例示の電荷発生剤のうち、600nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば無金属フタロシアニン(CGM1)やチタニルフタロシアニン(CGM2)等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。
電荷発生剤のバインダ樹脂中での分散性といった特性を向上させるためには、ジスアゾイエロー、ジアニシジンオレンジ、ピラゾロンオレンジ、ピラゾロンレッド等のアゾ系顔料を配合してもよい。
本発明の電子写真感光体に用いられる正孔輸送剤は、上記一般式(1)で表されるジスチルベン誘導体である。
本発明の電子写真感光体においては、上記ジスチルベン誘導体(1)と併せて、従来公知の種々の正孔輸送剤を感光層中に含有させてもよい。かかる他の正孔輸送剤としては、例えば一般式(HTM1)で表されるビススチルベンジアミン誘導体、一般式(HTM2)で表されるビストリフェニルアミン誘導体、一般式(HTM3)で表されるトリフェニルアミノスチリル誘導体および一般式(HTM4)で表されるスチルベンアミン−ヒドラゾン誘導体等が挙げられる。
上記例示の正孔輸送剤を本発明のジスチルベン誘導体(1)と併用することで、電荷輸送能をより一層向上させ、バインダ樹脂との相溶性をより一層向上させることができる。
本発明の電子写真感光体に使用可能な電子輸送剤は、正孔輸送剤との間に電荷移動錯体が生じないものであるほかは特に限定されるものではなく、従来公知の種々の電子輸送剤の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、下記一般式(ETM1)および(ETM2)で表されるジフェノキノン誘導体、下記一般式(ETM3)で表されるスチルベンキノン誘導体、下記一般式(ETM4)、(ETM5)、(ETM6)および(ETM7)で表されるナフトキノン誘導体、下記一般式(ETM8)および(ETM9)で表されるジナフトキノン誘導体、下記一般式(ETM10)、(ETM11)、(ETM12)および(ETM13)で表されるアゾキノン誘導体、下記一般式(ETM14)で表されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体等が挙げられる。
なお、上記一般式(ETM12)で表されるアゾキノン誘導体は、アニリン誘導体〔置換基(Re31)aを備えるもの〕と亜硝酸ナトリウムに濃塩酸を加えてジアゾニウム化合物を生成させて、このジアゾニウム化合物と9−ヒドロキシ−10−メチルアントラセンの誘導体〔置換基(Re30)bを備えるもの〕とをジアゾカップリングさせた後、こうして得られた生成物のヒドロキシ基を酸化することによって得られる。
(バインダ樹脂)
本発明の電子写真感光体において、電荷発生剤、電荷輸送剤等の各成分を含有する層を形成するためのバインダ樹脂には、従来公知の種々の樹脂を採用することができる。なかでも、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂をバインダ樹脂として使用するのが、本発明に係るジスチルベン誘導体(1)との相溶性や、感光層の強度や耐磨耗性等の特性をより一層良好なものにするという観点から好ましい。また、上記例示のバインダ樹脂は、電荷発生剤や電荷輸送剤との相溶性に優れており、しかも電荷輸送剤の電荷輸送能を妨害するような部位をその分子内に有しないものである。従って、かかるバインダ樹脂を用いることによって、より一層高感度な電子写真感光体を得ることができる。
で表される繰り返し単位と、一般式(II):
で表される繰り返し単位と、を有する共重合ポリカーボネート樹脂をバインダ樹脂として用いるのが、湿式現像剤による感光層の膨潤、劣化を防止する上で好ましい。
上記一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(II)で表される繰り返し単位と、を有する共重合ポリカーボネート樹脂において、両繰り返し単位の含有割合については特に限定されるものではないが、一般式(I)で表される繰り返し単位の重合度mと、一般式(II)で表される繰り返し単位の重合度nとは、式:
0.05<m/(m+n)<0.4
を満たすように設定するのが好ましい。
上記例示の電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、バインダ樹脂等を分散・溶解させて感光層形成用の塗布液を調製するのに用いる分散媒としては、感光層形成用塗布液に従来用いられている種々の有機溶剤が使用可能である。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
感光層形成用の塗布液には、電子写真特性に悪影響を与えない範囲であれば、上記各成分のほかにも従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
本発明の電子写真感光体において、感光層が形成される導電性基体には、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属単体;上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス;カーボンブラック等の導電性微粒子を分散させた樹脂基体等が挙げられる。
本発明に用いられる導電性基体は、これに限定されるものではないが、その表面に酸化被膜処理または樹脂被膜処理を施したものであってもよい。
単層型の電子写真感光体は、電荷発生剤と、本発明のジスチルベン誘導体(正孔輸送剤)と、バインダ樹脂と、さらに必要に応じて電子輸送剤や上記他の成分とを、適当な分散媒に分散または溶解させて、こうして得られた感光層形成用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させて感光層を形成することによって得られる。
感光層形成用塗布液を調製する際には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、不溶性アゾ顔料、バインダ樹脂等を、適当な溶剤とともに、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等の公知の手段を用いて分散混合すればよい。
積層型の電子写真感光体の製造では、まず、電荷発生剤とバインダ樹脂と、さらに必要に応じて上記他の成分を、適当な分散媒に分散または溶解させ、こうして得られた電荷発生層形成用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させて電荷発生層を形成する。次いで、本発明のジスチルベン誘導体(正孔輸送剤)とバインダ樹脂と、さらに必要に応じて電子輸送剤や上記他の成分とを、適当な分散媒に分散または溶解させ、こうして得られた電荷輸送層形成用塗布液を上記の電荷発生層上に塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成する。こうして、導電性基体上に電荷発生層と電荷輸送層とをこの順序で積層してなる電子写真感光体が得られる。
本発明において特に限定されるものではないが、導電性基体と感光層との間には、感光体の特性を阻害しない範囲で下引き層(バリア層)を形成してもよい。また、感光体の表面には保護層を形成してもよい。
(合成例1)
工程1:式(51−1)で表される2−エチル−5−メチルアニリン25g(0.185モル)と、無水酢酸150mLとを室温で混合し、さらに触媒量の濃硫酸を加えて、70℃で1.5時間攪拌して反応させた。次いで、反応液にイオン交換水600mLと氷100gとを投入して10分間攪拌した後、析出した反応生成物(固体)を濾別した。こうして得られた反応生成物をイオン交換水で洗浄して、クロロホルム150mLに溶解し、さらに中性になるまでイオン交換水で洗浄した。洗浄後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥してからクロロホルムを留去した。こうして得られた残渣をクロロホルム100mLに溶解して加熱攪拌し、溶液の分量が50〜70mL程度になるまで濃縮した後、n−ヘキサンを加えて冷却することによって反応生成物を再結晶させた。析出した反応生成物(固体)を濾別し、乾燥させて、式(52−1)で表される2’−エチル−5’−メチルアセトアニリドを得た。収量30.2g(収率92.0%)。
(合成例2)
出発原料である2−エチル−5−メチルアニリン(51−1)に代えて、2,5−ジメチルアニリン22.4g(0.185モル)を用いたほかは、合成例1の工程1〜7と同様にして反応させることにより、下記式(1−2)で表される目的化合物(ジスチルベン誘導体)を得た。収量14.0g(収率17.2%)。融点250℃以上。
〔電子写真感光体の製造〕
(実施例1)
X型無金属フタロシアニン(電荷発生剤)5重量部と、上記式(1−1)で表されるジスチルベン誘導体(正孔輸送剤)40重量部と、ポリカーボネート(結着樹脂)100重量部とを、テトラヒドロフラン(溶剤)800重量部とともにボールミルにて50時間混合分散させて、単層型感光層用の塗布液を作製した。次いで、この塗布液をアルミニウム素管(導電性基体)上にディップコート法によって塗布し、100℃で30分間熱風乾燥することにより、膜厚25μmの感光層を備える単層型感光体を得た。
実施例1で作製した単層型感光層用塗布液中に、さらに電子輸送剤50重量部を配合した。電子輸送剤には、実施例2で下記式(ETM1−1)で表されるキノン誘導体を、実施例3で下記式(ETM4−1)で表されるキノン誘導体を、実施例4で下記式(ETM4−2)で表されるキノン誘導体を、それぞれ使用した。次いで、こうして得られた塗布液を用いたほかは実施例1と同様にして、膜厚25μmの感光層を備える単層型感光体を得た。
ジスチルベン誘導体(1−1)に代えて、上記式(1−2)で表されるジスチルベン誘導体(正孔輸送剤)40重量部を用いたほかは実施例1と同様にして、単層型感光層用の塗布液を作製した。次いで、この塗布液を用いたほかは実施例1と同様にして、膜厚25μmの感光層を備える単層型感光体を得た。
実施例5で作製した単層型感光層用塗布液中に、さらに電子輸送剤50重量部を配合した。電子輸送剤には、実施例6で上記式(ETM−1)で表されるキノン誘導体を、実施例7で上記式(ETM4−1)で表されるキノン誘導体を、実施例8で上記式(ETM4−2)で表されるキノン誘導体を、それぞれ使用した。次いで、こうして得られた塗布液を用いたほかは実施例1と同様にして、膜厚25μmの感光層を備える単層型感光体を得た。
ジスチルベン誘導体(1−1)に代えて、下記式(91−1)で表されるジスチルベン誘導体(正孔輸送剤)40重量部を用いたほかは実施例1と同様にして、単層型感光層用の塗布液を作製した。次いで、この塗布液を用いたほかは実施例1と同様にして、膜厚25μmの感光層を備える単層型感光体を得た。
比較例1で作製した単層型感光層用塗布液中に、さらに電子輸送剤50重量部を配合した。電子輸送剤には、上記式(ETM1−1)で表されるキノン誘導体を使用した。次いで、こうして得られた塗布液を用いたほかは比較例1と同様にして、膜厚25μmの感光層を備える単層型感光体を得た。
上記実施例および比較例で得られた電子写真感光体について、下記の電気特性試験を行った。
上記電子写真感光体をドラム感度試験機〔ジェンテック(GENTEC)社製〕に設置して、初期表面電位V0が+700Vとなるように帯電させた。次いで、ハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルタを用いて取り出した波長780nm(半値幅20nm)の単色光(光強度8μJ/cm2)を感光体の表面に1.5秒間照射し、表面電位が1/2になるのに要した時間を測定して、半減露光量E1/2を求めた。また、露光開始から0.5秒経過した時点での表面電位を測定して、これを残留電位Vr(V)とした。
表2より明らかなように、N置換フェニル基のオルト位に置換基を有しない、式(91−1)で表されるジスチルベン誘導体を用いた比較例1および2の電子写真感光体では、いずれも感光層中にジスチルベン誘導体の結晶が析出したため、実用に供することができなかった。
本発明は、以上の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
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