JP3243284B2 - 化学的方法 - Google Patents

化学的方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は新規な化学的方法に関し、さらに
詳しくはトリフルオロアセトアルデヒド、又はその水和
物もしくはヘミアセタールの製造方法に関する。
【0002】トリフルオロアセトアルデヒドは周囲温度
において気体である。しかし、トリフルオロアセトアル
デヒドはヒドロキシル溶剤とアダクツ(adduct
s)を形成しやすく、水との水和物又は例えばメタノー
ルもしくはエタノールのようなアルコールとのヘミアセ
タールを形成しやすく、通常はフルオラール水和物とし
て公知の水溶液として貯蔵され、販売されている。トリ
フルオロアセトアルデヒドは例えば多くの薬剤学的に活
性な化合物の製造に有用であり、例えばヨーロッパ特許
出願公開第189305号に述べられているヒト白血球
エラスターゼ阻害剤の製造に用いられている。
【0003】トリフルオロアセトアルデヒド又はヒドロ
キシル溶剤によるそのアダクツの多くの製造方法が公知
である。しかし、このような方法は一般に、例えば蒸気
相中、有害な試薬の存在下、又は無水条件下の非常に低
い温度において実施しなければならない反応のような、
極端な温度及び/又は特別な温度を必要とする反応を含
む。
【0004】1方法は例えばヨーロッパ特許出願公開第
156470号に述べられているような、フッ化水素を
用いたクロラールの蒸気相フッ素化を含む。この方法は
生産規模で用いられるが、反応生成物と一緒に得られる
部分フッ素化アルデヒド不純物は医薬品の製造への使用
を意図された物質中で好ましくない。
【0005】もう一つの方法は、例えばケミカルアブス
トラクト、抄録番号CA9415631j(チェコスロ
バキヤ特許出願公開第CS183467号の抄録)に述
べられているような、濃硫酸と酸化第二水銀の存在下で
3CCHBrClの加水分解を含む。この方法は、使
用試薬が環境に有害であるので、商業規模での使用には
好ましくない。
【0006】トリフルオロアセトアルデヒドの多くの他
の製造方法が文献に述べられている。例えば、ピース
(Pierce)とカネ(Kane)[ジャーナル
アメリカンケミカルソサイエティーAm
erChemSoc.)1954、76、300]
は、無水条件下−70℃における水素化アルミニウムリ
チウムによるトリフルオロ酢酸エステルの還元を含む製
造法を述べている。さらに最近では、セナッパン(Th
enappan)とバートン(Burton)[ジャー
ナルオブオーガニックケミストリーOr
Chem.)、1990、55、4639]は、無
水条件下−78℃における水素化ジイソブチルアルミニ
ウム(DIBAL)によるエチルトリフルオロアセテー
トの還元を含む上記方法の変形を述べている。しかし、
残念ながら、必要な極端な反応条件と還元剤の可能な有
害性とがこれらの製造法を生産規模での使用に好ましく
ないものにしている。
【0007】意外にも、エチルトリフルオロアセテート
を水の存在下でホウ水素化ナトリウムと反応させること
によってフルオラール水和物(fluoral hyd
rate)が容易に得られることが今回判明した。
【0008】本発明によると、ヒドロキシル溶剤中でホ
ウ水素化物還元剤(borohydride redu
cing agent)によりトリフルオロ酢酸のエス
テルを還元して、トリフルオロアセトアルデヒド水和物
もしくはヘミアセタールを形成し、その後に遊離アルデ
ヒドが必要である場合には、水又はアルコールをそれぞ
れ水和物又はヘミアセタールから通常の方法を用いて除
去することを含む、トリフルオロアセトアルデヒド又は
その水和物もしくはヘミアセタールの製造方法を提供す
る。
【0009】本発明による方法は多くの利点を有する。
本発明による方法は容易に入手可能な出発物質を使用
し、大規模に容易に実施することができ、他のハロアセ
トアルデヒドを含まない生成物を与えることができ、こ
のことは薬剤製品の製造への使用を予定された物質にと
って特に重要である。
【0010】特定のトリフルオロ酢酸エステルは、例え
ば、アルキルエステル、特にC1〜C6アルキルエステ
ル、例えばメチル、エチル又はプロピルエステルのよう
なC1〜C4アルキルエステルである。エチルエステルが
特に好ましい。
【0011】特定のホウ水素化物還元剤は、例えば、例
えばホウ水素化ナトリウム、ホウ水素化カリウム又はホ
ウ水素化リチウムのようなアルカリ金属ホウ水素化物で
あり、特にホウ水素化ナトリウムが好ましい。
【0012】特定のヒドロキシル溶剤は、例えば、任意
に不活性有機溶剤もしくは希釈剤、例えばエーテル[例
えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルt−ブ
チルエーテル、2−メトキシエチルエーテル(ジグリム
(diglyme)及びジエチレングリコールジメチル
エーテルとも呼ばれる)又はジメトキシエタン]と組み
合わせた、例えば水、低級アルコール(例えばメタノー
ル又はエタノール)又はこれらの混合物である。水、又
は水と不活性有機溶剤との混合物を溶剤として用いる場
合には、得られる生成物がトリフルオロアセトアルデヒ
ドの水和物であることは理解されよう。同様に、アルコ
ール(又はアルコールと不活性有機溶剤との組合せ)を
溶剤として用いる場合には、生成物が主としてトリフル
オロアセトアルデヒドのヘミアセタールの形状である。
水とアルコールとの混合物を溶剤(不活性有機溶剤を含
む又は含まない)として用いる場合には、生成物は水和
物とヘミアセタールの両方として存在しうる。特に好ま
しいヒドロキシル溶剤は例えば水とエーテル、特にテト
ラヒドロフラン又は2−メトキシエチルエーテルとの混
合物である。反応は一般に例えば−10〜50℃の範囲
内、好ましくはー10〜40℃の範囲内(例えば0〜4
0℃)、より好ましくは−10〜30℃の範囲内(例え
ば10〜30℃)、特に−10〜20℃(例えば−10
〜10℃)の温度において実施される。形成されるトリ
フルオロアセトアルデヒドの水和物又はヘミアセタール
は標準処理(standard work−up)方法
を用いて便利に単離され、例えば分留によるような技術
上周知の方法によって精製される。
【0013】反応に用いられる溶剤(単数または複数)
に依存して、分留による精製が溶剤の一部の反応生成物
との同時留出(co−distilling)を生ずる
ことは理解されよう。従って、溶剤を含まない純粋な生
成物が必要である場合には、分留方法を繰り返す必要が
ある、又は代替え精製方法を用いる必要がある。例え
ば、純粋なトリフルオロアセトアルデヒドの水和物が必
要である場合には、フステッド(Husted)とオー
ルブレヒト(Ahlbrecht)が述べている精製方
法[ジャーナルオブアメリカンケミカルソサイ
エティー、1952、74、5422−5426]を実
施することができる。
【0014】例えば約2もしくは3当量の過剰なホウ水
素化物還元剤を本発明の方法に用いることができるが、
約1当量のホウ水素化物還元剤、例えば約1当量のホウ
水素化ナトリウムを用いることが一般に好ましい。従っ
て、1〜3当量のホウ水素化物還元剤を用いることが好
ましい。ホウ水素化ナトリウムの1当量の使用はエステ
ル1モルにつきホウ水素化ナトリウム1/4モルの使用
に相当することは理解されよう。
【0015】ホウ水素化物還元剤はトリフルオロ酢酸エ
ステルに段階的に加えることが好ましい。これはヒドロ
キシル溶剤の1種以上の成分中の溶液として加えること
が便利である。例えば、アルカリ金属ホウ水素化物(例
えばホウ水素化ナトリウム)を、トリフルオロアセトア
ルデヒドが必要である場合に、水溶液としてエステルに
加えるのが好ましい。
【0016】トリフルオロ酢酸エステルは商業的に入手
可能であるかもしくは公知である、又はトリフルオロ酢
酸エステルは通常の有機化学方法を用いて、これと同様
に、製造することができる。
【0017】本発明の方法はトリフルオロアセトアルデ
ヒド水和物の製造に特に適する。
【0018】エステルをアルデヒドへ還元するためのホ
ウ水素化物の使用は意外である。例えば、ボーゲル(V
ogel)による編集のプラクティカル・オーガニック
・ケミストリー(Practical Organic
Chemistry)、341頁の有機化学の標準テ
キストブックに述べられているように、カルボキシアル
キル基は一般にホウ水素化ナトリウム又はカリウムによ
って還元されないことが、技術上周知である。これとは
対照的に、アルデヒドとそれらの水和物はアルカリ金属
ホウ水素化物によって対応アルコールに還元される。特
に、トリクロロアセトアルデヒド(クロラール)はその
水和物として、例えば水中の20〜30℃のような緩和
な条件下でさえ、ホウ水素化カリウムによって2,2,
2−トリクロロエタノールに還元されることが公知であ
る。
【0019】次に、本発明を下記実施例によって説明す
る。
【0020】実施例1 水(100ml)に溶解したホウ水素化ナトリウム(1
1.5g)の溶液を1時間にわたってテトラヒドロフラ
ン(THF)(500ml)に溶解したエチルトリフル
オロアセテート(142g)の溶液に加え、反応混合物
の温度を15〜18℃の温度に維持した。添加の終了時
に、水(10ml)を加え、混合物をさらに30分間撹
拌した。次に、濃塩酸(10ml)を撹拌しながら滴加
して、混合物をpH2−3に調節し、次に固体塩化ナト
リウム(15g)を加えた。有機相を分離し、大気圧下
で分留し、トリフルオロアセトアルデヒド水和物(36
g)を60%w/w水溶液として得た。
【0021】次に、ジャーナルオブアメリカン
ミカルソサイエティー、1952、74、5422−
5426に述べられている方法と同様な方法を用いて、
純粋なトリフルオロアセトアルデヒド又はその水和物が
得られる。
【0022】実施例2 水(37.5ml)に溶解したホウ水素化ナトリウム
(15.05g)の溶液を2−メトキシエチルエーテル
(500ml)に溶解したエチルトリフルオロアセテー
ト(250g)の溶液に撹拌しながら徐々に加え、温度
を0℃未満に維持した。ホウ水素化ナトリウム溶液の全
てを添加した後に、反応混合物をさらに30分間撹拌
し、次に混合物を気−液クロマトグラフィーによって分
析した。これは反応が不完全であることを明らかにし
た。次に、さらに水(4ml)に溶解したホウ水素化ナ
トリウム(1.51g)の溶液を撹拌しながら、温度を
−5〜0℃に維持し、撹拌をさらに1/2時間続けた。
反応混合物を再び気−液クロマトグラフィーによって分
析し、その後にさらにホウ水素化ナトリウム(1.51
g)の添加も繰り返した。次に、反応混合物をさらに1
時間撹拌し、水(12ml)中濃硫酸(2.4ml)の
溶液を加え、固体残渣を濾別した。残留溶液を次に大気
圧において分留した。沸点範囲100〜105℃にわた
って回収された留分は水中にフルオラール155.6g
を含有した。この留分のNMR分析はエチルトリフルオ
ロアセテートを基準にして58%の収率を示した。
フロントページの続き (56)参考文献 米国特許2852569(US,A) 米国特許2568500(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 47/00 C07C 41/00 C07C 43/00 C07C 45/00 CA(STN)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒドロキシル溶剤中、温度30℃以下
    で、3等量以下のアルカリ金属ホウ水素化物によりトリ
    フルオロ酢酸(C1−C6)アルキルエステルを還元する
    ことを含む、トリフルオロアセトアルデヒド水和物、ト
    リフルオロアセトアルデヒドヘミアセタールまたはそれ
    らの混合物の製造方法。
  2. 【請求項2】 アルカリ金属ホウ水素化物がホウ水素化
    ナトリウムである、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 (C1−C6)アルキルエステルがメチ
    ル、エチルまたはプロピルエステルである、請求項1ま
    たは2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 ヒドロキシル溶剤が水、メタノール、エ
    タノールまたはそれらの混合物を含む、請求項1〜3の
    何れか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 ヒドロキシル溶剤が水を含む、請求項4
    に記載の方法。
  6. 【請求項6】 ヒドロキシル溶剤が水及びエーテルの混
    合物を含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 エーテルがテトラヒドロフランまたは2
    −メトキシエチルエーテルである、請求項6に記載の方
    法。
  8. 【請求項8】 反応温度が−10〜10℃の範囲にあ
    る、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 アルカリ金属ホウ水素化物を、水溶液と
    してのトリフルオロ酢酸エステルにゆっくりと加える、
    請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
  10. 【請求項10】 1〜2等量のホウ水素化物を用いる、
    請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
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