JP2006257027A - トリフルオロアセトアルデヒドの水和物および/又はヘミアセタールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 特殊な設備を必要とせず、工業的に容易に実施できるトリフルオロアセトアルデヒドの水和物またはヘミアセタールの製造方法を提供する。
【解決手段】 一般式(1)
CF3COOR1 (1)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
で表されるトリフルオロ酢酸エステルを、非プロトン性有機溶媒中、非水下にテトラヒドロホウ酸塩と反応させた後、ブレンステッド酸を加えて反応溶液を酸性溶液とすることを特徴とするトリフルオロアセトアルデヒドの水和物又はヘミアセタールの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 一般式(1)
CF3COOR1 (1)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
で表されるトリフルオロ酢酸エステルを、非プロトン性有機溶媒中、非水下にテトラヒドロホウ酸塩と反応させた後、ブレンステッド酸を加えて反応溶液を酸性溶液とすることを特徴とするトリフルオロアセトアルデヒドの水和物又はヘミアセタールの製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、医農薬及び機能性材料などの原料として有用なトリフルオロアセトアルデヒドの水和物もしくはヘミアセタールの製造方法に関する。
トリフルオロアセトアルデヒドの製造方法としては、フッ化水素でクロラールの塩素原子をフッ素置換する方法とトリフルオロメチル基を有する原料物質を還元反応あるいは酸化反応などによりトリフルオロアセトアルデヒドに変換する方法がある。前者の製造方法としては、特許文献1に、クロラールをクロム系触媒の存在下においてフッ化水素により気相でフッ素置換する方法が開示されている。しかし、この方法は目的生成物であるトリフルオロアセトアルデヒドの他に、原料のクロラールが完全にフッ素化されていない部分フッ素化アルデヒドが副生する問題がある。
後者の方法としては、特許文献2において、トリフルオロ酢酸をルテニウム/スズ触媒の存在下において水素還元する方法、非特許文献1において無水条件下、−78℃で水素化ジイソブチルアルミニウムによるトリフルオロ酢酸エチルを還元する方法が開示されている。しかし、特許文献2の方法は気相の高温を必要とする反応であり、又、非特許文献1の方法は、無水条件下の非常に低い温度おいて反応実施されるものである。いずれも特殊な設備を必要とするため、工業的に容易に実施できる技術とは言い難い。
一方、特許文献3には、工業的に容易に実施できる方法として、トリフルオロ酢酸エチルを水の存在下、−10〜50℃で水素化ホウ素ナトリウムと反応させる方法が開示されている。
そこで本発明者らは、開示された実施例に従い、水の存在下、トリフルオロ酢酸エステルを水素化ホウ素ナトリウムにより還元して、トリフルオロアセトアルデヒドの水和物又はヘミアセタールの合成を試みた。ところが、この方法では、水の存在のため水素化ホウ素ナトリウムの分解による水素が激しく発生して危険である上、水素化ホウ素ナトリウムの活性を保つよう短時間で反応させると、温度が急激に上昇して副生成物が増加する等の問題があり、容易に工業的に実施できる方法とは言い難いことが判明した。
欧州156470号
特開平5-294882号公報
特開平5-170693号公報
J.Org.Chem,55,4639(1990)
本発明者らが解決しようとする課題は、特殊な設備を必要とせず、工業的に容易に実施できるトリフルオロアセトアルデヒドの水和物および/またはヘミアセタールの製造方法を提供することである。
本発明者らは、このような現状に鑑み鋭意検討を行った。その結果、トリフルオロ酢酸エステルを、非プロトン性有機溶媒中にてテトラヒドロホウ酸塩と反応させ、その後ブレンステッド酸を加えて酸性溶液にするという安全かつ容易な操作にて、トリフルオロアセトアルデヒドの水和物および/又はヘミアセタールを高収率で得られることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、一般式(1)
CF3COOR1 (1)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
で表されるトリフルオロ酢酸エステルを、非プロトン性有機溶媒中、非水下にテトラヒドロホウ酸塩と反応させた後、ブレンステッド酸を加えて反応溶液を酸性溶液とすることを特徴とするトリフルオロアセトアルデヒドの水和物又はヘミアセタールの製造方法に関するものである。
CF3COOR1 (1)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
で表されるトリフルオロ酢酸エステルを、非プロトン性有機溶媒中、非水下にテトラヒドロホウ酸塩と反応させた後、ブレンステッド酸を加えて反応溶液を酸性溶液とすることを特徴とするトリフルオロアセトアルデヒドの水和物又はヘミアセタールの製造方法に関するものである。
本発明によれば、特殊な設備を必要とせず、工業的に容易に実施できるトリフルオロアセトアルデヒドの水和物および/またはヘミアセタールの製造方法が提供される。
本発明において、原料として使用するトリフルオロ酢酸エステルは前記一般式(1)で表される化合物である。ここで、R1としては炭素数1〜6のアルキル基を示す。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。
本発明において、使用する非プロトン性有機溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン等の脂肪族または芳香族の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類およびエーテル類等を挙げることができる。これらのうち、特に下記一般式(2)
R2−O−R3 (2)
(式中R2、R3は置換または未置換のアルキル基、またはアリール基であり、ヘテロ原子の介在、または非介在下に環状構造を形成していても良い。)
で表されるエーテル類が収率の点で好ましい。このようなエーテル化合物として、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、ベラトロール等の非環状エーテル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類が挙げられる。これらのうち、特にジエチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラヒドロフランが収率の点で好ましい。なお、これら非プロトン性溶媒は単独または混合して用いてもよい。また、非プロトン性溶媒の使用量は、通常、トリフルオロ酢酸エステルに対し、重量比で1〜10倍である。
R2−O−R3 (2)
(式中R2、R3は置換または未置換のアルキル基、またはアリール基であり、ヘテロ原子の介在、または非介在下に環状構造を形成していても良い。)
で表されるエーテル類が収率の点で好ましい。このようなエーテル化合物として、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、ベラトロール等の非環状エーテル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類が挙げられる。これらのうち、特にジエチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラヒドロフランが収率の点で好ましい。なお、これら非プロトン性溶媒は単独または混合して用いてもよい。また、非プロトン性溶媒の使用量は、通常、トリフルオロ酢酸エステルに対し、重量比で1〜10倍である。
本発明において、用いられるテトラヒドロホウ酸塩としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素亜鉛等が挙げられる。これらのうち、水素化ホウ素ナトリウムが入手の容易さ等の点で好ましい。テトラヒドロホウ酸塩の使用量は、トリフルオロ酢酸エステルに対して0.8〜1.6当量、好ましくは、1.0〜1.2当量である。アルカリ金属ホウ水素化物の使用量が0.8当量未満の場合、反応転化率が十分でなく、1.6当量を超えると副反応が増大する問題がある。
本発明において、テトラヒドロホウ酸塩と反応させた後に加えるブレンステッド酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸、酢酸等の有機酸、メタノール、エタノール等のアルコール、および水等が挙げられる。なお、これらのブレンステッド酸は単独または混合して用いることができる。これらブレンステッド酸の使用量は、通常、トリフルオロ酢酸エステルに対し通常0.5〜10倍モルである。
本発明の反応温度は特に限定されず、0〜50℃の範囲で適宜選択することができる。反応温度が0℃未満の場合は、反応速度が十分でなく、反応温度が50℃を超えると、副反応が増大する等の不具合を生じる。
また、反応方法としては特に限定されるものではないが、(1)テトラヒドロホウ酸塩の非プロトン性溶媒の溶液にトリフルオロ酢酸エステルを加える方法、(2)トリフルオロ酢酸エステルの非プロトン性溶媒の溶液にテトラヒドロホウ酸塩を加える方法、(3)非プロトン性溶媒にテトラヒドロホウ酸塩とトリフルオロ酢酸エステルを同時に加える方法のいずれの方法を用いても良い。これらのうち、操作の容易さ、収率の点で(1)の方法が好適である。
反応後、テトラヒドロホウ酸塩の残渣をろ過等により除去した後、蒸留精製等により、トリフルオロアセトアルデヒド水和物および/またはヘミアセタールを取り出すことができる。蒸留精製は大気圧でも減圧でも良いが、通常大気圧下で行われる。また、蒸留はpHを0〜6の酸性条件にて行なうことが好ましい。pH7以上の中性または塩基性条件で蒸留を行なうとトリフルオロアセトアルデヒド水和物および/またはヘミアセタールの分解を生じる場合があり好ましくない。
実施例
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
300ml三つ口フラスコにジエチレングリコールジメチルエーテル125ml及び水素化ホウ素ナトリウム3.3gを仕込み、攪拌下、反応温度を20℃以下に保ちながら、トリフルオロ酢酸エチル50gを1時間で滴下した。反応中に水素の発生は認められなかった。滴下終了後1時間攪拌を行い、10wt%硫酸水溶液を8.8g加え30分間攪拌を行い、固体残渣を濾別した。ろ液を19F−NMR分析したところ、トリフルオロ酢酸エチルを基準にしてトリフルオロアセトアルデヒドの水和物とエチルヘミアセタールの合計で65.5mol%、副生成物のトリフルオロエチルアルコールが11.3mol%の収率を示した。
溶媒をテトラヒドロフランとした以外は実施例1と同様にして反応を行なった。反応液を19F−NMR分析したところ、トリフルオロ酢酸エチルを基準にしてトリフルオロアセトアルデヒドの水和物とエチルヘミアセタールの合計で67.8mol%、副生成物のトリフルオロエチルアルコールが7.0mol%の収率を示した。
2L三口フラスコにジエチレングリコールジメチルエーテル1L及び水素化ホウ素ナトリウム26.8gを仕込み、攪拌下、反応温度を40℃に保ちながら、トリフルオロ酢酸エチル400gを3時間で滴下した。滴下終了後1時間攪拌を行い、15wt%硫酸水溶液を加えてpHを2にし30分間攪拌を行い、固体残渣を濾別した。粗生成物を大気圧において蒸留し、トリフルオロアセトアルデヒドの水和物98.2gとエチルヘミアセタール121.9gを得た。トリフルオロ酢酸エチルを基準にして59.4mol%の収率を示した。
水素化ホウ素ナトリウム6.6gを使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。粗生成物を19F−NMR分析し、トリフルオロ酢酸エチルを基準にしてトリフルオロアセトアルデヒドの水和物とエチルヘミアセタールの合計で21.1mol%、副生成物のトリフルオロエチルアルコールが78.9mol%の収率を示した。
200mlフラスコにジエチレングリコールジメチルエーテル100ml及びトリフルオロ酢酸エチル50gを仕込み、攪拌下、反応温度を40℃に保ちながら、水9.6mlに溶解した水素化ホウ素ナトリウム3.6gを1.5時間で滴下した。滴下中に水素の多量な発生が認められた。滴下終了後3時間攪拌を行い、10wt%硫酸8.8gを加え30分間攪拌を行い、固体残渣を濾別した。粗生成物を19F−NMR分析し、トリフルオロ酢酸エチルを基準にしてトリフルオロアセトアルデヒドの水和物とエチルヘミアセタールの合計で14.3mol%、副生成物のトリフルオロエチルアルコール36.2mol%、トリフルオロ酢酸34.4mol%の収率を示した。
200mlフラスコにジエチレングリコールジメチルエーテル30ml及びホウ水素化ナトリウム3.6gを仕込み、攪拌下、反応温度を15℃に保ちながらトリフルオロ酢酸エチル50g、水9.6g及び2−メトキシエチルエーテル70mlを混合した溶液を1.5時間で滴下した。滴下終了後3時間攪拌を行い、10wt%硫酸8.8gを加え30分間攪拌を行い、固体残渣を濾別した。粗生成物を19F−NMR分析し、トリフルオロ酢酸エチルを基準にしてトリフルオロアセトアルデヒドの水和物とエチルヘミアセタールの合計で9.0mol%、副生成物のトリフルオロエチルアルコール51.8mol%、トリフルオロ酢酸13.8mol%の収率を示した。
実施例1と同様な条件で反応を行い、ブレンステッド酸を加えずに粗生成物を大気圧において蒸留を試みたが、昇温中に反応液が粘性物質となり蒸留はできなかった。
本発明方法により得られるトリフルオロアセトアルデヒドの水和物またはヘミアセタールは、医農薬及び機能性材料などの原料として有用である。
Claims (9)
- 一般式(1)
CF3COOR1 (1)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
で表されるトリフルオロ酢酸エステルを、非プロトン性有機溶媒中、非水下にテトラヒドロホウ酸塩と反応させた後、ブレンステッド酸を加えて反応溶液を酸性溶液とすることを特徴とするトリフルオロアセトアルデヒドの水和物および/又はヘミアセタールの製造方法。 - 非プロトン性有機溶媒が、一般式(2)
R2−O―R3 (2)
(式中R2、R3は置換または未置換のアルキル基、またはアリール基であり、ヘテロ原子の介在、または非介在下に環状構造を形成していても良い。)
で表されるエーテル類、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。 - ブレンステッド酸が、水、アルコール、塩酸、硫酸、硝酸、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
- 反応温度が0〜50℃の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製造方法。
- テトラヒドロホウ酸塩と非プロトン性有機溶媒の混合物中に、トリフルオロ酢酸エステルを滴下することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 0.8〜1.6当量のテトラヒドロホウ酸塩を用いることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の製造方法。
- テトラヒドロホウ酸塩が、水素化ホウ素
ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の製造方法。 - 非プロトン性有機溶媒が、ジエチレングリコールジメチルエーテルまたはテトラヒドロフランであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の製造方法。
- 反応終了後、酸性条件化で蒸留精製を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の製造方法。
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-
2005
- 2005-03-17 JP JP2005077169A patent/JP2006257027A/ja active Pending
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