JP6213417B2 - 2,2−ジフルオロアセトアルデヒドの保存安定性の向上方法 - Google Patents

2,2−ジフルオロアセトアルデヒドの保存安定性の向上方法 Download PDF

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Description

本発明は、2,2−ジフルオロアセトアルデヒド(以下、DFALとも呼ぶ)の保存安定性の向上方法に関する。
式(1)で表される2,2−ジフルオロアセトアルデヒド
Figure 0006213417
は、先端材料分野の材料もしくは医農薬用の中間体として有用な化合物である。特にそのジフルオロメチル基(−CHF)は、高い電気陰性度を持つフッ素原子2つおよび水素原子1つが、同一の炭素原子に結合している。この特異な構造が、それを用いて合成した各種材料の撥水性、透明性、低誘電性、特異な生理活性、ミミック効果、などの特徴に深く関係すると考えられている。このため、2,2−ジフルオロアセトアルデヒドをビルディングブロックとして用いた物質は、先端材料分野及び医農薬中間体などの分野で、活発な研究開発の対象となっている。
例えば、特許文献1では、医農薬中間体として有用なハロゲン化ヒドロキシカルボニル類を製造するための原料の1つとして、2,2−ジフルオロアセトアルデヒドの使用が提案されている。また、特許文献2では、新規な殺虫剤と製造するための1原料として、2,2−ジフルオロアセトアルデヒドが用いられている。
従来、2,2−ジフルオロアセトアルデヒドの合成手段としては、α、α−ジフルオロ酢酸エステル類を、水素化リチウムアルミニウム等のヒドリド還元剤によって部分還元する方法が知られていた(非特許文献1)。これに対し、本出願人は、α、α−ジフルオロ酢酸エステル類を、特定のルテニウム錯体を触媒として水素(H)ガスと接触させることにより、2,2−ジフルオロアセトアルデヒドを触媒的に製造できるという知見を得、既に出願を行った(国際出願:PCT/JP2014/051365)。
一方、アルデヒドという物質は不安定で、次第に他のアルデヒド分子と重合し、アルデヒドとしての活性が失われることが知られている(非特許文献2)。このため、アルデヒドを水溶液(水和体)とし、これに特定の界面活性剤、pH調整剤、および緩衝剤を混合することにより、アルデヒドの重合を防ぐ方法が提唱されている(特許文献3)。これとは別に、アルデヒドを大過剰のアルコールと接触させることにより、安定性の高いアセタールに変換させる方法も知られている(非特許文献3)。
特開平06−263684号公報 特開2010−209073号公報 特表2010−523600号公報
J. Org. Chem. 第58巻(1993年)、2302〜2312頁 有機合成化学第19巻第3号(1961年)、254〜260頁 Org. Synth. 第5巻(1973年)303頁
アルデヒドを水溶液(水和体)にするという特許文献3記載の方法は、アルデヒドを安定に貯蔵するための有力な方法の1つといえる。しかし、この方法では、界面活性剤など複数の物質を共存させる必要があり、また溶液のpHを厳密に管理しないと、前記「重合」を防ぐことは難しいという問題がある。またアルデヒドを試薬として用いる直前に強力な脱水を行う必要があり(例えば特開昭50−12405号を参照)、総合的に見れば、操作は煩雑になる場合が多い。
一方、アルデヒドをアルコールと接触させてアセタール(アルデヒド1分子に対して2分子のアルコールが反応した化学種)
Figure 0006213417
に変換する方法も、アルデヒドを安定化する方法として優れた手段である。しかしこの方法では、アルデヒドに対して大過剰量のアルコールを共存させる必要がある。すなわち系内に大過剰量のアルコールを共存させないと、必ずしもアセタールにまでは変換できない。また生成したアセタールを保存するためには、系内から強力に水を除去する必要もあり、貯蔵中に吸湿するとアセタールが容易に水和物やヘミアセタールに変換し、液組成が変化してしまう。さらには、アセタールそれ自身は安定化学種であるため、対応するアルデヒドやヘミアセタール(アルデヒドに対して1分子のアルコールのみが反応した化学種)と比較すると、中央の炭素原子の活性がかなり低く、そのままではアルデヒド本来の活性を示さないことが多い。すなわち、試薬としての使用に供する前に、何らかの手段でアセタールを「反応活性な化学種(例えば遊離のアルデヒド)」に戻す操作が必要となることが多く、その場合、却って操作が煩雑になる。
このように、本発明が対象とする2,2−ジフルオロアセトアルデヒドを安定に保存する方法として、上記の方法に代わる新規方法が求められていた。
このような事情に鑑み、本発明者らは、アセタールを生成させることなく、アルデヒド1分子に対して1分子のアルコールが反応した「ヘミアセタール」の状態で2,2−ジフルオロアセトアルデヒドを安定化する方法がないか、種々探索を行った。その結果、2,2−ジフルオロアセトアルデヒド1分子に対して、一般式(2)で示されるアルコール
Figure 0006213417
(式中、Rは炭素数1〜6の環状または鎖状または分岐鎖の炭化水素を表し、水素原子はフッ素原子に一部または全て置換されていてもよい。)
が1分子結合した、式(3)で表されるヘミアセタール
Figure 0006213417
も安定性は相当に高く、この化合物に変換することによって、非特許文献2に記述されるような「重合」(C−C結合が連鎖的に生成し、分子量が大きくなってしまう現象)を、十分抑制できることが判明した。
ところが、この物質固有の問題として、さらに長期間(数ヶ月或いはそれ以上)にわたる貯蔵に際して、次の式(4)で表される化合物(これを本願明細書において「二量体」と呼ぶことがある)が、系内で徐々に生成し、液組成が次第に変化してしまう、という新たな問題が見出された。
Figure 0006213417
なお、この「二量体」のRとしては、系内に最も多量に存在しているアルコールのRになることが多い。後述の実施例のように「エタノール」が主たるアルコールである場合、「二量体」のRの主たるものはエチルとなる。この「二量体」は、非特許文献2に記述されている「アルデヒドの重合体(C−C結合が連続していく化合物)」とは全く別種の物質である。すなわち、「2,2−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(ヘミアセタール)」の一種であり、酸を加えて強く加熱するなどの操作によって、元のアルデヒドに戻すことは可能である。
しかし、この「二量体」は、式(3)で表されるヘミアセタールに比較すると、はるかに安定な化学種であり、この化学種のままでは、アルデヒド試薬として、所望の反応を起こさせることは容易でない。また、長期間の貯蔵に際して、このような二量化の進行によって液組成が変化していくこと自体、試薬の管理上好ましいこととは言えない。さらに、たとえこの「二量体」を元のアルデヒドに戻すことは可能であるとしても、酸を加えて加熱することは、作業上は必ずしも容易なことではない。本来「ヘミアセタール」は反応活性も十分にある化合物であるので、できれば特段の前処理を行わずに、そのまま反応試薬として使えることが望ましい。
このように、2,2−ジフルオロアセトアルデヒドをヘミアセタールの形で保存するに際し、その保存安定性を向上させる効果的な方法が求められていた。
なお、このような「二量体」にあたる化合物の経時的な生成は、本発明の対象とする2,2−ジフルオロアセトアルデヒドと構造の類似した2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒド
Figure 0006213417
のヘミアセタール
Figure 0006213417
(式中、Rは炭素数1〜6の環状または鎖状または分岐鎖の炭化水素を表し、水素原子はフッ素原子に一部または全て置換されていてもよい。)
の場合には、有意には観測されない。すなわち、このような「二量体」の生成は2,2−ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタールに特有の現象(固有の課題)である。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、2,2−ジフルオロアセトアルデヒドと、一般式(2)で示されるアルコール
Figure 0006213417
(式中、Rは炭素数1〜6の環状または鎖状または分岐鎖の炭化水素を表し、水素原子はフッ素原子に一部または全て置換されていてもよい。)
の間のヘミアセタール
Figure 0006213417
に対して、上記式(2)で表されるアルコールを余剰に共存させ、「2,2−ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」とした上で、当該「2,2−ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」の液性を実質的に中性とし、かつ水の含量を1000ppm以下とした上で、上記式(2)で表されるアルコールの総モル量(遊離のアルコール」と「2,2−ジフルオロアセトアルデヒドヘミアセタール」の合計モル量をいう。以下同じ。)が、2,2−ジフルオロアセトアルデヒドの総モル量(「遊離の2,2−ジフルオロアセトアルデヒド」と「2,2−ジフルオロアセトアルデヒドヘミアセタール」の合計モル量をいう。以下同じ。)に対して1.15倍以上かつ4.00倍以下とすることによって、前記課題が解決することを見出した。
具体的には、「2,2−ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」の液性を実質的に中性とし、かつ水の含量を1000ppm以下とし、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドに対して、式(2)で表されるアルコールの総モル量を1.15倍以上、4.00倍以下(つまり、アルコールが15%過剰〜300%過剰)になるように調整すると、系内では、式(3)で表されるヘミアセタール
Figure 0006213417
(式中、Rの意味は式(2)と同じ。)
が主生成物となる。すなわち、この条件では、フリーの2,2-ジフルオロアセトアルデヒドはほぼ検出されず、アルコールが2分子反応した「アセタール」もほぼ検出されない。つまり系内では、該ヘミアセタールと、余剰の遊離アルコールが、主成分として共存する。
ここで意外なことに、系内のアルコールの総モル量が1.15倍未満では、前述した「二量体」の経時的な生成を抑えられないのに対し、アルコールの総モル量が1.15倍以上になると、「二量体」が格段に生成しにくくなる、という特異的な現象が見出された。具体的には、当該条件では、式(3)で表されるヘミアセタールが安定に存在しやすくなることを、発明者らは見出した。
ここで、後述の合成例に示す通り、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドを合成するための原料化合物であるα、α−ジフルオロ酢酸エステル
Figure 0006213417
(上式中、Aは炭素数1〜6の環状または鎖状または分岐鎖の炭化水素を表し、水素原子はフッ素原子に一部または全て置換されていてもよい。)
を部分還元に付すと、上の式のエステル部位の「−O−A」が、ほぼそのまま持ち越されて、生成物の2,2-ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタールの「−O−R」になる。(還元反応をアルコール溶媒中で行う場合には、エステル交換が一部生じるが、その場合も系中のアルコールの総量は変わらない。)ひとたびヘミアセタールに変換された後は、ヘミアセタールの「−O−R」は「アルコール総量」にカウントされる(分解反応によって、アルコールを生じる能力があるため)。「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタール」という化学種だけに着目すれば、その由来如何によらず、その化合物における「アルデヒド:アルコール」の比率は正確に1:1であり、「アルコールのアルデヒド1モルに対する量」は、正確に「1モル(1倍モル)」である。
つまりα、α−ジフルオロ酢酸エステルを出発原料として「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタール」を合成した場合には、反応液中に、既に原料由来の「アルコール成分」が1倍モル存在している。結局、本発明にいう「系内のアルコールの総モル量が、アルデヒド1モルに対して、1.15モル以上、4.00モル以下」とは、「ヘミアセタール結合を形成しているアルコール成分」を除いた「遊離のアルコール」が、アルデヒドに対して「15%以上、300%以下」存在することを意味する。この系内に共存している少量の「遊離アルコール」が、「二量体」の生成を何らかの理由により阻止していると推察される。その詳細なメカニズムは不明であるものの、当該知見によって、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドを「式(3)で表されるヘミアセタール」の形で、長期間渡って安定に保存することが可能となった。
本発明において、「式(3)で表されるヘミアセタール」における「R」と、「式(2)で表されるアルコール」における「R」とは、同一定義となっているが、この定義の枠内であれば、「式(3)で表されるヘミアセタール」の「R」と「式(2)で表されるアルコール」の「R」は、同一の基であっても、異なる基であっても良い。また、「式(3)で表されるヘミアセタール」「式(2)で表されるアルコール」ともに、複数種類の「R」の化学種の混合物であっても何ら差し支えない(後述の実施例を参照)。
なお、本発明においては、「式(3)で表されるヘミアセタール」を安定に保存できる状態にすることを以って、「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの保存安定性の向上」と表現する。
すなわち、本発明は、
第1工程:式(3)で表される、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタール
Figure 0006213417
(式中、Rは炭素数1〜6の環状または鎖状または分岐鎖の炭化水素を表し、水素原子はフッ素原子に一部または全て置換されていてもよい。)と、
式(2)で表される遊離のアルコール
Figure 0006213417
(式中、Rの意味は式()と同じ。)と、
を含む「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を調製する工程と、
第2工程:該「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を保存用容器内で保存する工程とを含み、かつ、
該保存用容器で保存を開始する時点における該「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」が実質的に中性で、かつ水の含量が1000ppm以下であり、
該保存用容器で保存を開始する時点における該「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」における該アルコールの総モル量(「遊離のアルコール」と「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの各種ヘミアセタール」の合計モル量をいう。以下同じ。)が、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの総モル量(「遊離の2,2-ジフルオロアセトアルデヒド」と「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの各種ヘミアセタール」の合計モル量をいう。以下同じ。)に対して1.15倍以上、4.00倍以下である、
2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの保存安定性の向上方法である。
本発明によれば、医農薬中間体として有用な2,2-ジフルオロアセトアルデヒドを対応するヘミアセタールの形で、長期間にわたって安定に保存することができる。すなわち、前記「二量体」の生成による液組成の経時的な変化を、簡便な方法で抑止することができる。
以下、本発明を構成する各要素について説明する。本発明は以下の実施の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良が加えられたものも本発明の範囲に入ることはいうまでもない。
本発明は、前記の通り、
第1工程:2,2-ジフルオロアセトアルデヒドを、式(2)で表されるアルコールを共存させ、式(3)で表されるヘミアセタールを含有する「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を調製する工程と、
第2工程:該「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を保存用容器内で保存する工程と、
の2つの工程を含んでいる。それぞれについて、以下に説明する。
[1]第1工程について
第1工程は「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を作製する工程である。
[アルコールの量について]
本発明にいう「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」とは、式(3)で表される2,2-ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタールと、これとは別に式(2)で表されるアルコールが余剰に存在した複合体(組成物)をいう。そして「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの総量」に対して式(2)で表されるアルコール総量が「1.15倍モル以上、4.00倍モル以下」存在している。
式(2)で表されるアルコールは、1種類でも良いが、式(2)に包含される複数種類のアルコールの混合物であっても良い。後者の場合、それら複数種類のアルコールのモル数の合計値が、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドに対して1.15倍モル以上、4.00倍モル以下になるようにする。
この条件では2,2-ジフルオロアセトアルデヒドは式(3)で表されるヘミアセタールに変換しており、かつ「アセタール」は事実上生成しない。すなわち、系内には、ヘミアセタールと、過剰の遊離アルコールが主成分として共存することとなる。反応後の後処理の条件によって、一部は式(4)で表される「二量体」になることもあるが、保存開始の時点ではこの「二量体」の量はごく少ない。
なお、アルコールの総量が2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの総量に対して2.00倍モルを超えて存在しても、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの安定性のさらなる向上にはつながりにくい。2.00倍モル超の条件でも「アセタール」の生成は殆どなく、「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドを、アルデヒド本来の反応性を維持しつつ、その保存安定性を向上させる」という目的は達することができる。しかしあまり多量のアルコールを用いると、無駄になる。従って、アルコールの総量は1.15〜2.00倍モルであることがより好ましく、さらには1.15〜1.60倍モル、あるいはさらに好ましくは1.15〜1.30倍モルという、ごく小過剰な状態(つまり遊離のアルコールが15%〜30%存在する状態)が最も経済的には有利であり、しかも保存安定性も確保される。
本発明の第1工程において、「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を作製する方法は、式(3)で表される2,2-ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタールと、式(2)で表される余剰のアルコールが共存するようにすればよく、特に限定されない。
「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの単体をアルコールの単体と混合する」という方法も可能であるし、「アルコール以外の溶媒中で2,2-ジフルオロアセトアルデヒドを合成した後、反応液に式(2)のアルコールを添加して、溶媒置換する」という方法も可能である。「予めアルコールを含ませた溶媒中で、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドを合成し、余剰のアルコールを残す」という方法も可能である。
また、上述の通り、α、α−ジフルオロ酢酸エステルを出発原料として「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタール」を合成した場合には、反応液中に、既に原料由来の「アルコール部位(−OR)」が1倍モル(つまり等モル)存在している。それに対して、余剰のアルコールを添加するなどの方法を採ってもよい。
[液性について]
本発明において、該保存用容器に供給される時点における該「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」は、実質的に中性である必要がある。この「実質的に中性」とは、液を採取してpH試験紙に浸したときにpHが5〜10であるような液性(当業者常識で「中性近傍」と認識される液性)をいい、さらに好ましくは6〜9である。これらのpHの範囲を外れて酸性側になると、ヘミアセタール部位が酸によって分解することがあるため、好ましくない。また逆に、これらのpHの範囲を外れてアルカリ性側になると、カニッツァロ反応等の副反応が起こりやすく、本発明の主旨である2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの安定化が図りにくくなるから、好ましくない。
[含水量について]
本発明においては、水の含量が1000ppm(「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」の液全体における質量基準の値)以下であることも必要である。これ以上、多くの水が存在すると、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドが水と反応して次の「水和体」
Figure 0006213417
が生成する。当該「水和体」は、それ自身もさほど安定な化学種ではない上、当該水和体の水溶液については、例えばカルボニル基への求核反応条件を限定してしまう。また反応性についても「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」より低下してしまい好ましくない。さらに水和体からヘミアセタールに変換することは可能であるが、過剰のアルコール存在下から水を留去しなければならず操作が煩雑である。この観点から含水量は500ppm以下であることが一層好ましく、200ppm以下がなお好ましい。脱水(含水量の低減)は、脱水剤(塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどの無水金属塩、ゼオライトなど)によって行うことができる他、エバポレーションを用いた濃縮−溶媒置換によっても達せられる。これら複数の手段を組み合わせて脱水を行うとさらに効果的である。
[2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの合成法その1]
2,2-ジフルオロアセトアルデヒドは、非特許文献1の方法によって、次の式で表されるα、α−ジフルオロ酢酸エステル
Figure 0006213417
(上式中、Aは炭素数1〜6の環状または鎖状または分岐鎖の炭化水素を表し、水素原子はフッ素原子に一部または全て置換されていてもよく、特に好ましくは、エチル基やメチル基を好適に採用できる。)
を水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム等の「ヒドリド還元剤」で部分還元して、式(3)のヘミアセタール{(−O−A)の部位が(−O−R)に相当する。}として得るのが、一般に知られた合成法である。
この還元反応は、後述の「合成例1」の通り、無水エーテル系溶媒中で、好ましくは、−70℃〜−100℃で行うことができる。このような極低温で反応を行うことで、過剰還元化合物である2,2-ジフルオロエタノールの生成を抑制できる。
なお、過剰還元化合物である2,2-ジフルオロエタノールも式(2)で表されるアルコールに属し、目的物2,2-ジフルオロアセトアルデヒドとの間にヘミアセタール(これを「DFAL−DFOL」ともいう)を形成する。この場合、(−O−CH−C)が(−O−R)に相当する。すなわち、該2,2-ジフルオロエタノールも2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの安定化に寄与する物質と言える。そして、上述の後処理において、例えば過剰量のエタノールが系内に加えられ、エバポレーションで溶媒置換されるとしても、系内には「DFAL−DFOL」がなお残存することがしばしばある(後述の実施例を参照)。このように系中には複数種類のヘミアセタールが共存することが多い。
しかしながら、還元反応によって「2,2-ジフルオロエタノールが生成する」ということは、「ヒドリド還元における2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの収率が低下する」ことを意味する。そして2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの保存安定性の向上は、より安価な非置換アルコールであっても十分達せられる。よって、該還元反応において、非常に高価な2,2-ジフルオロエタノールを敢えて副生させ、それによって2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの安定化を図る必然性は低い。すなわち、α、α−ジフルオロ酢酸エステルを水素化アルミニウムリチウムによって還元する場合は、反応温度を低くし(例えば、−70〜−100℃)、試薬の混合を徐々に(温度を制御しながら)行うなど、過還元ができるだけ起こらないように反応させることが好ましい。
反応溶液は強い塩基性を呈するため、反応終了後直ちに、氷水と接触させ、酸によって中和し、実質的に中性(前記)にすることが好ましい。具体的には、前述の通り、pHが5〜10(好ましくは6〜9)になるまで、酸を加えて中和を行い、実質的に中性の状態にする。この際、中和点を超えて液が酸性側に変化するのを防ぐため、例えば酢酸、炭酸、ホウ酸など弱酸で中和をするのは好ましい(酢酸が特に好ましい)。この「実質的に中性」であるか否かの判定は、例えば反応液を採取し、市販のpH試験紙に浸漬させることよって、行うことができる。
そして、この実質的に中性になった反応液に、式(2)のアルコール(例えばエタノール)を添加すると、ヘミアセタール部位の交換が起こって、最後に添加したアルコールのヘミアセタールを主成分にすることができる。但しこの操作は必須ではない(複数種類のヘミアセタールが存在する複合液であっても、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの安定化の向上は達成できるため)。
当該「ヘミアセタール」は、非水溶性の有機溶媒(例えばジエチルエーテル)によって抽出でき、水素化反応の反応液に多量に含まれる水溶性物質を水相中に分離除去できる。
この有機層を乾燥剤で乾燥処理(水を除去)した上で、エバポレーションによって溶媒留去を行うことにより、反応液の含水量は1000ppm以下に低減でき、式(3)で表されるヘミアセタール(1−アルコキシ−2,2−ジフルオロエタノール)を得ることができる。
但し、以上の後処理を経て得られる物質は、式(3)で表されるヘミアセタールであるが、溶媒抽出を経ているため、余剰のアルコールはほとんど存在しない。つまり、このままでは、本発明が課題とする長期間の保存安定性の向上は図れない。このため、これを本発明所定の「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」に変換する必要がある。そのためには、式(2)で表されるアルコールをあらためて添加し、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの総量に対し、式(2)で表されるアルコールの総量が1.15倍モル以上、4.00倍モルになるように調整することができる。アルコールの添加後、脱水を兼ねてエバポレーションを行い、例えば1.15倍モル〜1.60倍モルといった小過剰のアルコール(しかし保存安定性の向上にきわめて有効な量)だけを系内に残し、その他のアルコールを回収することもできる。
なお、非水溶性有機溶媒にアセタールを抽出し、脱水剤で脱水処理した直後に、式(2)で表されるアルコールを過剰に添加し、ついでエバポレーションを実施し、非水溶性溶媒の留去と、該アルコールの留去を同時に行っても良い。
また、仮に高沸点成分を除去したい場合には、アルコールの留去を行うプロセスとは別に、減圧度を上げて、このヘミアセタール自身を留分として回収することもできる。この際、あまり段数を上げずに、余剰のアルコールも留分としてヘミアセタールと同時に回収できる(つまり「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を一時に留分として回収できる)ようにしておくと便利である。
式(2)で表されるアルコールとしては、炭素数1〜6の非置換のアルコールが、安価である上、本発明の安定化効果を十分に有することから特に好ましい。中でも、メタノールとエタノールは、無水試薬を大量規模で容易に入手でき、しかも安定性向上の効果も大きいから、とりわけ好ましい。
[2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの合成法その2]
一方、α、α−ジフルオロ酢酸エステル類(上記合成法1と同じ原料)を、特定のルテニウム錯体を触媒として水素(H)ガスと接触させることによっても、2,2−ジフルオロアセトアルデヒドを製造できる(国際出願:PCT/JP2014/051365)(合成例2)。このルテニウム触媒を触媒とする水素との直接反応は、ルテニウムという触媒を必要とするものの、大量の取り扱いの難しいヒドリド還元剤を扱わなくて済むため、大量規模での合成を行う上で特に有利である。
本反応に用いることのできるルテニウム触媒は、下記の錯体である。
Figure 0006213417
[式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、Arはそれぞれ独立に芳香環基または置換芳香環基を表し、Xはそれぞれ独立に形式電荷が−1または0の配位子(但し、3つのXの形式電荷の合計は−2)を表し、nはそれぞれ独立に1または2の整数を表す。]
上記、置換アルキル基、置換芳香環基にいう「置換基」とは、前記のアルキル基又は芳香環基の、任意の炭素原子上に、任意の数および任意の組み合わせで、存在するものを指す。係る置換基は、フッ素、塩素および臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基およびプロピル基等の低級アルキル基、フルオロメチル基、クロロメチル基およびブロモメチル基等の低級ハロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基等の低級アルコキシ基、フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基およびブロモメトキシ基等の低級ハロアルコキシ基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基およびプロポキシルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピロリル基(窒素保護体も含む)、ピリジル基、フリル基、チエニル基、インドリル基(窒素保護体も含む)、キノリル基、ベンゾフリル基およびベンゾチエニル基等の芳香環基、カルボキシル基、カルボキシル基の保護体、アミノ基、アミノ基の保護体、ヒドロキシル基、ならびにヒドロキシル基の保護体等である。さらに、該置換アルキル基は、前記のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合が、任意の数および任意の組み合わせで、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合に置き換わることもできる(当然、これらの不飽和結合に置き換わったアルキル基は、前記の置換基を同様に有することもできる)。置換基の種類に依っては置換基自体が副反応に関与する場合もあるが、好適な反応条件を採用することにより最小限に抑えることができる。なお、本明細書において、"低級"とは、炭素数1〜6の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)であるものを意味する。また、前記の“係る置換基は”の“芳香環基”には、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、シアノ基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルボキシル基の保護体、アミノ基、アミノ基の保護体、ヒドロキシル基およびヒドロキシル基の保護体等が置換することもできる。さらに、ピロリル基、インドリル基、カルボキシル基、アミノ基およびヒドロキシル基の保護基は、Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.等に記載された保護基である。
中でも、
Figure 0006213417
[式中、Phはフェニル基を表す。]
で表されるルテニウム触媒(Ru−MACHOTMとして知られている)は活性が特に高く、特に好ましい。
その他の該ルテニウム錯体は、Ru−MACHOTMの製造方法等を参考にして同様に製造することができる。また、水やトルエン等の有機溶媒等が含まれるものも同等に用いることができ、純度は70%以上であれば良く、80%以上が好ましく、90%以上が特に好ましい。
該ルテニウム錯体の使用量は、原料α,α−ジフルオロ酢酸エステル類1molに対して0.000001mol以上を用いれば良く、0.00001〜0.005molが好ましく、0.00002〜0.002molが特に好ましい。
この触媒還元反応は、塩基の存在下、行うことが必要であるが、該ルテニウム錯体の3つのX配位子の内、少なくとも1つがBHを採る場合は、塩基の非存在下に反応を行うこともできる。
塩基は、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn−プロピルアンモニウムおよび水酸化テトラn−ブチルアンモニウム等の水酸化テトラアルキルアンモニウム、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシドおよびカリウムtert−ブト
キシド等のアルカリ金属のアルコキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等の有機塩基、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドおよびカリウムビス(トリメチルシリル)アミド等のアルカリ金属のビス(トリアルキルシリル)アミド、ならびに水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素カリウム等のアルカリ金属の水素化ホウ素等である。その中でもアルカリ金属のアルコキシド(アルコキシドの炭素数は1〜6)が好ましく、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシドおよびカリウムメトキシドが特に好ましい。なお、後述の合成例の通り、ナトリウムメトキシドは通常メタノール溶液として入手できる。このため、反応系中には、メタノールが残存することになる(すなわち、メタノールが、式(2)のアルコールとしての役割を少なくとも一部は果たす。)
塩基を用いる場合の該使用量は、原料のα,α−ジフルオロ酢酸エステル類1molに対して0.001mol以上を用いれば良く、0.005〜5molが好ましく、0.01〜3molが特に好ましい。
水素ガスの使用量は、α,α−ジフルオロ酢酸エステル類1molに対して1mol以上を用いれば良く、大過剰が好ましく、加圧下での大過剰が特に好ましい。
水素圧は、特に制限はないが、2〜0.001MPaが好ましく、1〜0.01MPaがより好ましい。
反応溶媒は、n−ヘキサン、シクロヘキサンおよびn−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、トルエン、キシレンおよびメシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンおよびα,α,α−トリフルオロトルエン等のハロゲン系、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびアニソール等のエーテル系、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールおよびシクロヘキサノール等のアルコール系、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系、アセトニトリル、プロピオニトリルおよびベンゾニトリル等のニトリル系、ジメチルスルホキシド、ならびに水等である。その中でも脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系、エーテル系およびアルコール系が好ましく、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系およびアルコール系が特に好ましい。これらの反応溶媒は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
この中でアルコール系の反応溶媒(以下、A)は、反応速度の加速効果を有し、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系およびエーテル系の反応溶媒(以下、B)は、β,β−ジフルオロエタノールへの過剰還元の抑制効果を有する。本発明の有用性を最大限に発揮させるには、AとBの混合溶媒を用いる態様が好ましく(態様1)、該容量比(A:B、AとBの和を100とする)は、60以上:40以下を用いれば良く、70以上:30以下が好ましく、80以上:20以下が特に好ましい。
反応溶媒の使用量は、原料のα,α−ジフルオロ酢酸エステル類1molに対して0.03L(リットル)以上を用いれば良く、0.05〜10Lが好ましく、0.07〜7Lが特に好ましい。
反応温度は、アルコール系の反応溶媒を用いる場合、+30℃以下で行えば良く、+25〜−50℃が好ましく、+20〜−40℃が特に好ましく、+15〜−30℃が極めて好ましく、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系またはエーテル系の反応溶媒を用いる場合、+50℃以下で行えば良く、+45〜−30℃が好ましく、+40〜−20℃が特に好ましく、+35〜−10℃が極めて好ましい。なお、混合溶媒の場合は、最も含有量の多い溶媒について、上記温度範囲で反応を実施すればよい。
本発明の有用性を最大限に発揮させるには、アルコール系の反応溶媒を用いて、反応温度を20℃以下で行うことが好適であり、又は、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系またはエーテル系の反応溶媒を用いて、40℃以下で行うことが好適である。
上記の温度を超えた温度で反応を行うと、過還元が進みやすくなり、2,2-ジフルオロエタノールの選択率が上がり、目的物の収率が低下するから、好ましくない。
いずれにせよ、このルテニウム触媒を用いた還元反応によれば、ヒドリド還元剤を用いた還元(上記)に比べ、格段に高い温度(室温近傍の穏和な条件)で、良好な収率で目的物2,2-ジフルオロアセトアルデヒドを得ることができる。
反応時間は、72時間以内で行えば良く、原料基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、原料基質の減少が殆ど認められなくなった時点を終点とすれば良い。
この触媒的還元反応の後処理は、原則としては「ヒドリド還元」の後処理と同様である。すなわち、塩基性を呈する反応液を、酸(好ましくは弱酸)で中和した後、式(2)のアルコール(例えばエタノール)を添加し、生成物2,2-ジフルオロアセトアルデヒドを、対応するヘミアセタールに変換する。このヘミアセタールを、非水溶性の有機溶媒に抽出し、この有機層を乾燥剤で乾燥(水を除去)しつつ、エバポレーションによって溶媒留去を行うことにより、反応液の含水量は1000ppm以下に低減され、式(3)で表されるヘミアセタール(1−アルコキシ−2,2−ジフルオロエタノール)が得られる。かかる後に、余剰のアルコールを添加すれば、本発明の「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を得ることができる。
或いは、ヘミアセタールを非水溶性の有機溶媒に抽出し、これを乾燥剤で乾燥処理した後に、余剰のアルコールを添加して、エバポレーションによって、非水溶性有機溶媒を留去することもできる。
これに対し、「金属アルコラートを塩基として還元反応を行った場合」には、上記よりも簡便な後処理を行うことができる。まずは、反応液に対して、氷酢酸、無水酢酸等の「水を含まない酸」を添加し、液性を実質的に中性にする。ここで「金属アルコラート」を塩基とした場合、酸との中和によって副生するのは、専ら「式(2)で表されるアルコール」である(水は副生しない)。このため、副生した塩物質の分離さえ行えば、別段、「溶媒抽出」といったプロセスを行う必要はない。すなわち、「金属アルコキシドを溶かしていた溶媒(通常、アルコール)と共に、式(2)で表されるアルコールが既に系内に存在している状態になる。よって、通常の蒸留が行える状態になる。そのまま低沸点物質であるフリーのアルコールを留去してもよいが、高沸点物質を除去する目的で、本発明所定の「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を留分として得ることもできる。こうして取り出した留分に対し、必要に応じて、式(2)で表されるアルコールを追添加し、濃縮を繰り返してもよい。そうすることで、低沸点物質、高沸点物質が共に除去された高品質の「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を得ることができる。なお、このような後処理方法を採る場合でも、適宜、乾燥剤と接触させて、含水量をさらに低減させることは、何ら妨げられない。
式(2)で表されるアルコールとしては、炭素数1〜6の非置換のアルコールが、安価である上、本発明の安定化効果を十分に有することから特に好ましい。中でも、メタノールとエタノールは、無水試薬を大量規模で容易に入手でき、しかも安定性向上の効果も大きいから、とりわけ好ましい。
[液組成の決定法]
上述のどちらの合成法で2,2-ジフルオロアセトアルデヒドを得る場合においても、反応後の後処理を行う課程において、或いは後処理を一通り終え、保存用容器内に供給する時点で、反応液の組成を求めることは、好ましい。反応液の組成を求める方法に限定はないが、H−NMRは特に有利な方法である。化学種によっては19F−NMRを用いて定量した方が、正確な場合がある(後述の実施例の通り、DFAL−DFOLの定量がその例)。したがって、H−NMRを基本としつつ19F−NMRを組み合わせて定量を行うのは、効果的な方法である。
具体的には、プロトン又はフッ素の化学シフトから各化合物(フリーのアルコール、ヘミアセタール、二量体)のピークを同定でき、さらに各々の化合物の持つプロトン数を考慮して、内部標準物質との比較から、各化学種のモル数を、短時間で割り出すことができる。組成が求められれば、前記「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの総モル数とアルコールの総モル数の比」を計算できる。
この分析を行うことによって、アルコールをさらにどれだけ追加すべきかが判断しやすくなる。アルコールの総量が本発明の所定の範囲に達していない場合には、直ちにアルコールの追加を行うことが好ましい。逆に、アルコールが多すぎる場合、エバポレーションによるアルコールの除去を行えばよい。
[2]第2工程について
第2工程は、前記第1工程で調製した「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を保存用容器内で保存する工程である。
既に説明した通り、保存を開始する時点における該「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」は、(a)実質的に中性で、(b)水の含量が1000ppm以下であり、かつ(c)該アルコールの総モル量(「遊離のアルコール」と「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの各種ヘミアセタール」の合計モル量をいう。以下同じ。)が、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの総モル量(「遊離の2,2-ジフルオロアセトアルデヒド」と「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの各種ヘミアセタール」の合計モル量をいう。以下同じ。)に対して1.15倍以上、4.00倍以下、という条件を満たす必要がある。これらの条件を満たす「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を、保存容器内にて保存する。
この第2工程としては、前述の通り調製した「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を保存容器内に導入するのが、最も通常の手段である。しかし、例えば「2,2−ジフルオロアセトアルデヒド−ヘミアセタール」の単体を保存容器内に入れ、そこに所定量のフリーのアルコールを追加して、保存容器内にて「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を形成する、という方法、或いは逆に、まず保存容器内にフリーのアルコールを導入した後に「2,2−ジフルオロアセトアルデヒド−ヘミアセタール」の単体を加える、という方法も、排除されるものではない(この場合は、第1工程と第2工程が、一部同時に行われる形になる)。
既に述べたように、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドは水と反応して「水和体」を形成する。当該「水和体」は既に述べた通り、あまり安定ではない上、反応性が「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」よりも有意に低下するため、水溶液での取り扱いは反応条件を限定してしまう。このため、「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」は空気中の水分を吸収することがない様、密閉した容器内で保存することが好ましい。
脱水剤を共存させたり、例えば窒素、アルゴンなどの不活性ガスを添加したりすることもできる。但し、本発明の「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」は十分に安定性が高いため、通常そこまで厳密な管理を行わなくてもよい。
当該「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」は、ガラス製容器(グラスライニングも含む)、ステンレス鋼製の容器の何れにおいても好適に保存することができる。
保存温度に特段の制限はなく、−40〜+70℃という幅広い温度での保存が可能である。このうち例えば−30〜+50℃で保存することは好ましく、常温付近(10〜45℃、とりわけ20〜35℃)が特に好ましい。二量化体の生成に関して言えば、温度が高い方がむしろ抑制されることもある。しかし、その他、物質の総合的な安定性を考慮すれば、常温付近で、光の当たりにくい環境で保存することが最も好ましい。尤も、保存容器に貯蔵した状態で輸送することは全く妨げられない。ごく一時的にここに挙げた温度から逸脱された条件に曝されたとしても、それを以って直ちに問題になるわけではない。
長期間に渡る保存を行った場合には、試薬として使用をする直前に再度サンプリングを行い、液の組成を測定することが好ましい。しかし、既に述べたように、この方法で保存した「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」の液組成は、保存開始時の液組成に比べて大きく変化しにくく、かつアルデヒド試薬としての活性も高いまま保たれやすいので、すぐにそのまま反応用に使うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[合成例1]DFAL−EtOHの合成
ジエチルエーテル30mLにα、α−ジフルオロ酢酸エチル2.5g(20ミリモル)を溶解させ、−78℃に冷却した水素化リチウムアルミニウム1.9g(50ミリモル)とテトラヒドロフラン溶液50mLに滴下した。3時間攪拌した後、エタノール5mLを加え室温まで昇温した。反応溶液を氷水に注ぎ濃硫酸15mLを加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ジエチルエーテルを留去し蒸留精製により、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH)を60%の収率で得た。
[合成例2]DFAL−EtOHの合成
ステンレス鋼製オートクレーブに下記式
CHFCOOC
で示されるα、α−ジフルオロ酢酸エチル450g(3.6モル)、下記式
Figure 0006213417
で示されるルテニム錯体470mg(730マイクロモル)、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液170g(ナトリウムメトキシドとして910ミリモル)、メタノール1.2Lを加え、反応器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を1.0MPaに設定し、15℃で8時間攪拌し反応した。反応終了後に19F−NMR分析より、α、α−ジフルオロ酢酸メチルの変換率49%、DFAL−ヘミアセタール(メチルヘミアセタール体およびエチルヘミアセタール体の合計)の選択率は95%であった。19F−NMRは内部標準物質α、α、α−トリフルオロトルエンで定量した。
反応終了液に酢酸51.9g(860ミリモル)を加えたところ、pHは8となったので、実質的に中性になったと判断し、添加を中止した。この液体を直接、蒸留(ボトム温度〜66℃、減圧度〜2.1kPa)に付すことにより、DFAL−ヘミアセタールを含むメタノール溶液を得た。この溶液を精密蒸留(理論段数35段、留出温度92℃、減圧度〜35kPa)することにより大部分のメタノールを分離した。蒸留釜(ボトム)にエタノール850g(19モル)を加えて蒸留を継続し、ジフルオロアセトアルデヒドのエチルヘミアセタール(DFAL−EtOH)を留分として450g得た。
留分には、メタノール、エタノール、β、β−ジフルオロエタノール、メチルヘミアセタール体(DFAL−MeOH)、エチルヘミアセタール体(DFAL−EtOH)、下記式
Figure 0006213417
で示される、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール体および下記式
Figure 0006213417
で示されるエチルヘミアセタール由来の「二量体」が含まれていることが分かり、それぞれの純度(モル%)は「0.1%未満、5.6%、3.3%、1.8%、87.3%、0.6%、1.5%」であった。純度を考慮した収率は約30%であった。
[測定方法]
DFAL−EtOHの経時変化をより正確に見極めるため、H−NMRおよび19F−NMRを用いた定量方法を以下の通りとした。
試料0.15mL、内標としてパラトリフルオロメチルトリフルオロメチルベンゼン(PTF−TFM)50μLをそれぞれ正確に秤量し、重クロロホルム1.0mLを添加・溶解した後0.55mLをNMR試料管に移液する。NMR(JNM−ECA400:日本電子製)により、H、19Fを測定した。それぞれの化学シフトを以下に示す。
PTF−TFM:7.53−7.93ppm(4H)、
DFAL−EtOH:4.50−4.71ppm(1H)、
DFAL−MeOH:3.51−3.53ppm(3H)、
DFAL−DFOL:CFHCH(OH)OCH H −125〜−126ppm(2F)
二量体:4.92−5.11ppm(1H)、
エタノール:3.65−3.73ppm(2H)
メタノール:3.41−3.45ppm(3H)
遊離のDFOL:−128〜−127ppm(2F)
(なお、DFAL−EtOH、DFAL−MeOHならびに、DFAL−DFOLにおいて、Hの測定対象としたのは、1位のHである。また、遊離のメタノール、アセタールは検出されなかった。)
以下の実施例に用いたサンプルは上記「合成例2」と同様の方法によって作製した。但し「合成例2」のサンプルとは異なり、初期の「二量体」の存在量が、「合成例」に比べ、やや多くなっている。しかし、これは後処理のタイミング等、わずかな相違によって生じたものである。そして一旦「二量体」が生成すると、その「二量体」は、元のヘミアセタールに戻ったり、さらに別の化学種に変換したりすることは、通常ない。このため、本発明においては、初期(保存開始時点)の「二量体の存在量」の多寡は問題にせず、保存期間(1年間)に、DFAL−ヘミアセタールがどれだけ減って、二量体が新たに生成したか、という点に着目する。
なお、以下の実施例および比較例に使用した「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」の、保存開始時点におけるpHは、pH試験紙に浸漬させる方法で測定した結果、いずれも8であった。また保存開始時点における水分量をカールフィッシャー水分計によって測定したところ、180〜200ppmであった。
[実施例1]DFAL−ヘミアセタールの保存安定性試験
本実施例における「総アルコール量/総アルデヒド」(モル比)=1.50
総アルコール量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)、ジフルオロエタノール、エチルアルコールの合計モル数である。
総アルデヒド量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)の合計モル数である。
1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 62.1モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール1.4%モル、ジフルオロエタノール1.4モル%、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール体(DFAL−DFOL)0.5モル%、二量体4.0モル%、エチルアルコール30.6モル%を含む溶液を室温で保管したところ、一年後に1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 60.8モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール1.3モル、ジフルオロエタノール1.4モル%、DFAL−DFOL0.4モル%、二量体4.3モル%、エチルアルコール31.8モル%であった。以下に、経時変化の表を載せる。
Figure 0006213417
このように「余剰のアルコール」が、アルデヒドに対して50モル%存在する「実施例1」の場合、1年経過後にも、二量体は微増しているに留まり、ヘミアセタールであるDFAL−EtOH、DFAL−MeOH、DFAL−DFOLは、ほとんど不変である。後述の「比較例」に比べ、保存安定性が著しく向上していることがわかる。
[実施例2]DFAL−ヘミアセタールの保存安定性試験
総アルコール量/総アルデヒド=1.23
総アルコール量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)、ジフルオロエタノール、エチルアルコールの合計モル数である。
総アルデヒド量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)の合計モル数である。
1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 75.8モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール1.5%モル、ジフルオロエタノール1.4モル%、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール体(DFAL−DFOL)0.6モル%、二量体4.0モル%、エチルアルコール16.7モル%を含む溶液を室温で保管したところ、一年後に1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 71.9モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール1.3モル、ジフルオロエタノール1.3モル%、DFAL−DFOL0.4モル%、二量体4.8モル%、エチルアルコール19.7モル%であった。以下に、経時変化の表を載せる。
Figure 0006213417
このように「余剰のアルコール」が、アルデヒドに対して23モル%存在する「実施例2」の場合も、実施例1に次いで保存安定性は優れていることが分かる。
[実施例3]DFAL−ヘミアセタールの保存安定性試験
総アルコール量/総アルデヒド=1.19
総アルコール量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)、ジフルオロエタノール、エチルアルコールの合計モル数である。
総アルデヒド量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)の合計モル数である。
1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 78.1モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール1.6%モル、ジフルオロエタノール1.4モル%、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール体(DFAL−DFOL)0.6モル%、二量体4.1モル%、エチルアルコール14.2モル%を含む溶液を室温で保管したところ、一年後に1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 74.4モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール1.3モル、ジフルオロエタノール1.3モル%、DFAL−DFOL0.4モル%、二量体5.4モル%、エチルアルコール17.1モル%であった。以下に、経時変化の表を載せる。
Figure 0006213417
このように「余剰のアルコール」が、アルデヒドに対して19モル%存在する「実施例3」の場合も、実施例1、2に次いで保存安定性は優れていることが分かる。
[実施例4]DFAL−ヘミアセタールの保存安定性試験
総アルコール量/総アルデヒド=1.17
総アルコール量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)、ジフルオロエタノール、エチルアルコールの合計モル数である。
総アルデヒド量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)の合計モル数である。
1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 79.5モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール1.9%モル、ジフルオロエタノール0.9モル%、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール体(DFAL−DFOL)1.1モル%、二量体3.7モル%、エチルアルコール13.0モル%を含む溶液を室温で保管したところ、一年後に1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 74.6モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール1.6モル、ジフルオロエタノール1.1モル%、DFAL−DFOL0.8モル%、二量体5.8モル%、エチルアルコール16.1モル%であった。以下に、経時変化の表を載せる。
Figure 0006213417
このように「余剰のアルコール」が、アルデヒドに対して17モル%存在する「実施例4」の場合も、1年間に渡って、大きな組成変動はなく、優れた保存安定性が認められる。
[比較例1]DFAL−ヘミアセタールの保存安定性試験
総アルコール量/総アルデヒド=1.11
総アルコール量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)、ジフルオロエタノール、エチルアルコールの合計モル数である。
総アルデヒド量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)の合計モル数である。
1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH)83.5モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール1.6%モル、ジフルオロエタノール0.6モル%、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール体(DFAL−DFOL)1.0モル%、二量体4.3モル%、エチルアルコール9.0モル%を含む溶液を室温で保管したところ、一年後に1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 74.7モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール1.4モル、ジフルオロエタノール0.8モル%、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール体(DFAL−DFOL)0.7モル%、二量体9.7モル%、エチルアルコール12.8モル%であった。以下に、経時変化の表を載せる。
Figure 0006213417
このように「余剰のアルコール」が、アルデヒドに対して11モル%存在する「比較例1」の場合も、1年経過後の、二量体の増加は5%以上であった。遊離のエタノールの量もはっきり増えている。これは二分子のDFAL−EtOHが反応して「二量体」を形成し、余った一分子のエタノールを放出した現象に対応するものと考えられる。
[比較例2]DFAL−ヘミアセタールの保存安定性試験
総アルコール量/総アルデヒド=1.07
総アルコール量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)、ジフルオロエタノール、エチルアルコールの合計モル数である。
総アルデヒド量とは、1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール(DFAL−DFOL)の合計モル数である。
1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH)86.7モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール0.9%モル、ジフルオロエタノール1.5モル%、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール体(DFAL−DFOL)0.7モル%、二量体4.7モル%、エチルアルコール5.7モル%を含む溶液を室温で保管したところ、一年後に1−エトキシ−2,2−ジフルオロエタノール(DFAL−EtOH) 71.2モル%、2,2−ジフルオロ−1−メトキシエタノール0.7モル、ジフルオロエタノール1.3モル%、β、β−ジフルオロエチルヘミアセタール体(DFAL−DFOL)0.8モル%、二量体12.5モル%、エチルアルコール13.4モル%であった。以下に、経時変化の表を載せる。
Figure 0006213417
このように「余剰のアルコール」が、アルデヒドに対して7モル%存在する「比較例2」の場合も、1年経過後の、二量体の増加、遊離のエタノールの増加が、共に顕著であった。このような組成では、(短期間の安定性は確保されるものの)、数ヶ月〜1年の貯蔵には必ずしも向かない。翻って、本発明の、敢えて余剰のアルコールを15%以上存在させる構成の優れた効果が、裏付けられた。
本発明の2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの安定化方法は、医農薬中間体の保管・流通方法として期待されるものである。

Claims (4)

  1. 第1工程:式(3)で表される、少なくとも1種の2,2-ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタール
    Figure 0006213417

    (式中、Rは炭素数1〜6の環状または鎖状または分岐鎖の炭化水素を表し、水素原子はフッ素原子に一部または全て置換されていてもよい。)と、
    式(2)で表される、少なくとも1種の遊離のアルコール
    Figure 0006213417

    (式中、Rの意味は式()と同じ。)と、
    を含む、少なくとも1種の「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を調製する工程と、
    第2工程:該「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」を保存用容器内で保存する工程と、
    を含み、かつ、
    該保存用容器で保存を開始する時点における該「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」が実質的に中性で、かつ水の含量が1000ppm以下であり、
    該保存用容器で保存を開始する時点における該「2,2-ジフルオロアセトアルデヒド・アルコール複合体」における該アルコールの総モル量(少なくとも1種の「遊離のアルコール」と、少なくとも1種の「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの各種ヘミアセタール」の合計モル量をいう。以下同じ。)が、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの総モル量(少なくとも1種の「遊離の2,2-ジフルオロアセトアルデヒド」と、少なくとも1種の「2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの各種ヘミアセタール」の合計モル量をいう。以下同じ。)に対して1.15倍以上、4.00倍以下である、
    2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの保存安定性の向上方法。
  2. 該アルコールの総モル量が、2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの総モル量に対して1.15倍以上、1.60倍以下である、請求項1に記載の2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの保存安定性の向上方法。
  3. 式(2)で表されるアルコールが、少なくともメタノール又はエタノールである、請求項1または請求項2に記載の2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの保存安定性の向上方法。
  4. 第2工程における保存温度が−30〜+50℃である事を特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の2,2-ジフルオロアセトアルデヒドの保存安定性の向上方法。
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