JP3164168B2 - ポリエーテルエステルブロック共重合体 - Google Patents

ポリエーテルエステルブロック共重合体

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JP3164168B2 JP07621592A JP7621592A JP3164168B2 JP 3164168 B2 JP3164168 B2 JP 3164168B2 JP 07621592 A JP07621592 A JP 07621592A JP 7621592 A JP7621592 A JP 7621592A JP 3164168 B2 JP3164168 B2 JP 3164168B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なポリエーテルエ
ステルブロック共重合体に関し、更に詳しくは弾性的性
能が優れ、永久歪が少なく、特にその性能が70℃程度
の温度下でも著しく低下しないことを特徴とする熱可塑
性ポリエーテルエステルブロック共重合体に関する。ま
た本発明ポリエーテルエステルブロック共重合体は、優
れた弾性回復性を有しており、その性能の温度による低
下が少なく、且つ熱可塑性であるために、繊維は基より
フイルム、シート、コーティング剤、その他成形体或る
いは、接着剤などに用いることが出来る。特に弾性性質
を必要とする部位の接着剤としては有用であり、詰物内
の繊維間接着剤に適している。この様に利用分野は広
く、衣料用途のみならず産業資材用途及び自動車、電気
用途等、各分野で利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】従来から弾性体素材としては、ゴムやポ
リウレタン等が使用されているが、これらは弾性回復と
いう点では優れた特性を有しているものの、難燃性やリ
サイクル性、或るいは燃焼時の有毒ガス発生等の問題が
ある。他方、近年になってポリエーテルエステルブロッ
ク共重合体が弾性体として使用され、このポリマーは比
較的良好な弾性的性能を示し、熱可塑性であるために溶
融紡糸や成形が可能であるというメリットがある。特に
資源再利用の観点からリサイクル性が益々重視され、よ
り注目される素材である。
【0003】しかしながら前記ポリエーテルエステルブ
ロック共重合体は、ポリウレタンやゴムと異なり、ハー
ドセグメントの結晶によって分子鎖を拘束しているた
め、変形後の永久歪が大きかったり、弾性的性質が劣る
等の問題がある。特に、結晶相による分子鎖拘束故に、
弾性回復性の温度依存性が大きく、現在知られているポ
リエーテルエステルブロック共重合体では70℃程度で
も長時間変形後の回復性は著しく低下してしまうという
欠点がある。なお70℃の弾性回復性は、弾性体の用途
を考える上で耐熱性の一つの尺度であり、この温度での
良好な弾性回復性は非常に重要である。従って、ポリエ
ーテルエステルブロック共重合体のかかる欠点は、産業
上の利用分野を著しく制限しており、この欠点の改善さ
れたポリエーテルエステルブロック共重合体が得られれ
ば、産業上の利用分野は飛躍的広がるはずである。
【0004】上記欠点を改善するために、例えば成形後
或るいは成形時に分子鎖を架橋する方法が提案されてい
る(例えば特開昭54−131688号公報、55−1
51029号公報、56−2320号公報及び56−1
4525号公報等)が、これらの方法でも、あらゆる点
について満足する値は得られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者らは、
弾性回復性の温度依存性の小さい、即ち70℃の加熱下
長時間変形後も弾性回復性に大きな低下のないポリエー
テルエステルブロック共重合体の開発が重要であるとの
認識に立ち、上記欠点を解決することを本発明の課題と
した。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
本発明者らは鋭意研究、検討した結果、驚くべきことに
ハードセグメントとソフトセグメントの選択、組み合わ
せにより、前記課題が著しく改善されることを見い出
し、更に詳細な検討を重ねた結果、遂に本発明を完成す
るに到った。即ち本発明は、テレフタル酸及び/又は
2,6−ナフタレンジカルボン酸を主とするジカルボン
酸又はそのエステル形成性誘導体(A成分)と、脂肪族
グリコールを主とする分子量400以下の低分子量グリ
コール又はそのエステル形成性誘導体(B成分)及び平
均分子量が400〜6000のポリオキシアルキレング
リコール(C成分)を構成成分とし、下記数3および数
4を満足し、かつ還元比粘度が1.2以上であることを
特徴とするポリエーテルエステルブロック共重合体であ
る。
【0007】
【数3】
【0008】
【数4】 (なお、数3におけるTβは、粘弾性挙動におけるβ分
散の正接損失極大温度を示し、数4におけるδ1 及びδ
2 はそれぞれ30℃及び70℃での正接損失の値を示
す。)
【0009】本発明においてポリエーテルエステルブロ
ック共重合体を構成するA成分としては、ジカルボン酸
の60モル%以上好ましくは70モル%以上がテレフタ
ル及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸又はそれ
らのエステル形成性誘導体であり、エステル形成性誘導
体としては、炭素数1〜4の低級アルキルエステル、フ
ェニルエステル等を挙げることが出来る。なおテレフタ
ル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に用いら
れるジカルボン酸類としては、フタル酸、イソフタル
酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ベン
ゾフェノンジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニ
ル)メタン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホ
ン、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、
ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、ア
ジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカル
ボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類、1,4
−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4′−ビス(4−
カルボキシシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジカルボ
ン酸類、又はそれらの炭素数1〜4の低級アルキルエス
テル、フェニルエステル、シクロアルキルエステル、ヒ
ドロキシアルキルエステル等を挙げることが出来る。こ
れらは2種以上の混合物として用いても良い。
【0010】本発明において、B成分である脂肪族グリ
コールを主とする分子量が400以下の低分子量グリコ
ール又はそのエステル形成性誘導体に用いられる低分子
量グリコールとしては、全体の70モル%以上がエチレ
ングリコール、1,4−ブタンジオール、又はシクロヘ
キサンジメタノール等の低分子量アルキレングリコール
が好ましく、特に1,4−ブタンジオールが望ましい。
他に用いることのできるグリコールとしては、トリメチ
レングリコール、ヘキサメチレングリコール、2,2−
ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]プロパン、ビ
ス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホ
ン等分子量が原則として400以下のものが用いられ
る。なお難燃性等種々の機能が要求される場合には、
2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,
5−ジブロモフェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒ
ドロキシエトキシ)3,5−ジブロモフェニル]スルホ
ン等の含ハロゲン化合物、あるいは各種のリン化合物
等、比較的分子量の大きいグリコール類も用いられる。
これらは混合物として用いてもよい。
【0011】本発明においてC成分である平均分子量が
400〜6000のポリオキシアルキレングリコールと
しては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリ
コール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらの共
重合体等が挙げられ、特にポリテトラメチレングリコー
ル及びテトラメチレンオキシド単位を主成分とするポリ
オキシアルキレングリコール共重合体が好ましい。ポリ
オキシアルキレングリコールの平均分子量は400〜6
000であり、特に800〜5000が好ましい。平均
分子量が400未満では、得られるポリエーテルエステ
ルブロック共重合体のブロック性が低下するため弾性的
性能が著しく劣るため好ましくない。一方、ポリオキシ
アルキレングリコールの平均分子量が6000を越える
と、生成ポリマーが相分離してブロック共重合体となり
難く、同様に弾性的性能が劣ってしまい好ましくない。
【0012】次に本発明の目的を達成するためには、ポ
リエーテルエステルブロック共重合体が、下記数5及び
数6をともに満足することが必要である。
【0013】
【数5】
【0014】
【数6】 (式中Tβ は粘弾性挙動におけるβ分散の正接損失極
大温度を示し、またδ1 及びδ2 はそれぞれ30℃及び
70℃での正接損失の値を示す。)
【0015】本発明ポリエーテルエステルブロック共重
合体において、前記Tβが−42℃より高温になると、
ソフトセグメントが緊張され、弾性回復性が低下してし
まうので好ましくなく、また、δ2 /δ1 が1.15を
越えると、70℃での弾性回復性が著しく低下してしま
い目的を達成することができないので好ましくない。
【0016】更に、本発明において目的とする弾性的性
能を達成するためには、該重合体のフェノールと1,
1,2,2−テトラクロロエタンを60/40の重量比
で混合した溶液中0.2g/100m の濃度、30℃
で測定した還元比粘度(ηsp/c)が1.2dL/g
以上とすることが必要であり、好ましくは1.4〜4.
0、特に1.7〜3.0が望ましい。還元比粘度が1.
2dL/g未満では、弾性的性質を含む諸性質が低下し
てしまい、目的とする共重合体が得られない。還元比粘
度は1.2dL/g以上であれば良いが、余り高すぎる
と溶融粘度が増大してしまい、成形加工に困難が生じる
とともに、経済的にも不利である。
【0017】本発明ブロック共重合体を製造する方法と
しては、従来の共重合ポリエステルの製造法を採用する
ことができる。具体的には、例えば芳香族ジカルボン酸
及び/又はそのアルキルエステル(A成分)と脂肪族グ
リコール(B成分)及びポリオキシアルキレングリコー
ル(C成分)とを反応器に入れ、触媒の存在下又は不存
在下で直接エステル化或るいはエステル交換反応し、更
に高真空で重縮合反応を行なって所望の重合度まで上げ
る方法である。
【0018】該ポリエステルブロック共重合体には、通
常のポリエステルと同じく、艶消剤、顔料、例えばカー
ボンブラック等、ヒンダードアミン化合物、リン系化合
物、紫外線吸収剤、例えばベンゾフェノン化合物、ベン
ゾトリアゾール化合物、サクシレート化合物等、また場
合によっては架橋性基を持つ化合物などを本発明ブロッ
ク共重合体の性質を損わない限り、含んでいても何ら差
し支えない。
【0019】
【作用】通常ポリエーテルエステルブロック共重合体
は、粘弾性挙動として特徴的に0℃以上にハードセグメ
ントの運動に起因するα分散と、0℃以下にソフトセグ
メントの運動に起因するβ分散が見られる。本発明者ら
は、それぞれの分散のピーク温度と正接損失(tan
δ)の値が弾性的性質と大きな相関があることを見い出
したが、本発明のように前記数5、数6を満足するもの
のみが弾性回復性の温度依存性が小さい、即ち70℃下
で長時間変形後も良好な弾性回復性を示す理由は明らか
ではない。
【0020】
【実施例】以下に実施例をもって本発明を具体的に示す
が、これらでもって本発明が限定されるものではない。
なお実施例における「部」は全て重量部を示す。また実
施例、比較例で得られるポリエーテルエステルブロック
共重合体の特性は、下記方法によって測定した。
【0021】1.還元比粘度:下記条件下で測定した。 溶媒 フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエ
タン 60/40重量比 濃度 50mg/25ml 温度 30℃ 2.粘弾性挙動の評価:トーヨーボールドウィン社製
レオ−2000 DDV−II−EA型バイブロンにより、周波数110H
z、昇温速度1℃/分で測定した。ハードセグメントの
運動に起因する高温側の分散をα分散、ソフトセグメン
トの運動に起因する低温側の分散をβ分散とし、β分散
での正接損失tanδのピーク温度をTβとし、30℃
及び70℃での正接損失tanδの値をそれぞれδ1 及
びδ2 とした。 3.弾性回復性評価:ヒートプレス法により厚さ0.4
〜0.6mm、幅10mmの短冊状試験片を作製し、こ
の試験片を熱風乾燥機内で130℃、3分熱処理を行な
った後、トーヨーボールドウィン社製テンシロンII型に
チャッ間距離60mmとなる様セットした。初期荷重3
gをかけ、20分かけて雰囲気温度を70℃にし、引張
速度100mm/分で引張歪長6mmになる迄引っ張
り、この状態で22時間放置した。歪を0に戻し、5分
間放置後、上記条件にて再伸長し、応力−ひずみ曲線か
ら得た値より、弾性回復率(%)として算出した。 4.結晶融点の評価:島津製作所製TA−50、DSC
−50型示差走査型熱量計により、試料量10mg、ア
ルゴン気流下、20℃/分の昇温速度で測定し、吸熱ピ
ークの極大温度を結晶融点Tmとした。
【0022】実施例1 2リットルの撹拌機、温度計、メタノール流出管付反応
器に、テレフタル酸ジメチル(A成分)485部、1,
4−ブタンジオール(B成分)337部及びテトラブチ
ルチタネート3部を供給し、徐々に昇温して、エステル
交換反応を行なった。エステル交換反応終了後230℃
に加温し、平均分子量3000のポリテトラメチレング
リコール1497部を入れたオートクレーブに1,3,
5−トリス(4−ヒドロキシ−3,5−ジーtert−
ブチルベンジル)−2,4,6−トリメチネベンゼン4
部とともに反応混合物を移した。徐々に昇温し、60分
間で250℃まで昇温すると同時に圧力を0.1mmH
gまで減圧にした。そのままで所定の溶融粘度に到達す
るまで重縮合をつづけた後、チッ素ガスにより常圧にも
どし、オートクレーブ下部に設置した細孔からチッ素ガ
ス圧によりポリマーを水中に押し出しカッターを用いて
チップ状に成形した。得られたポリマーの還元比粘度は
2.51dL/gであり、Tmは187℃、Tβは−5
1.2℃、δ2 /δ1 は0.98であった。また、弾性
回復率は75%であり、非常に良好な弾性回復性を示し
た。
【0023】実施例2〜7、比較例1〜6 実施例1において、A〜C成分および仕込み量を表1に
示す化合物および量にした以外は、全て実施例1と同様
にして共重合体を得た。その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】 (表1においてDMT及びDMNは、テレフタル酸ジメ
チル及び2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルをそ
れぞれ示し、B成分において、1,4−BDは1,4−
ブタンジオールを表わす。またC成分としてはポリテト
ラメチレングリコールを用いた。)
【0025】
【発明の効果】表1より明らかなように、本発明ブロッ
ク共重合体は弾性回復率が72%以上もあり、温度によ
る影響をほとんど受けていないことが判る。またこの様
に本発明ブロック共重合体は弾性回復率が優れているの
で、その利用範囲は大巾に広がり、産業界に寄与するこ
と大である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/00 - 63/91

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 テレフタル酸及び/又は2,6−ナフタ
    レンジカルボン酸を主とするジカルボン酸又はそのエス
    テル形成性誘導体(A成分)と、脂肪族グリコールを主
    とする分子量400以下の低分子量グリコール又はその
    エステル形成性誘導体(B成分)及び平均分子量が40
    0〜6000のポリオキシアルキレングリコール(C成
    分)を構成成分とし、下記数1および数2を満足し、か
    つ還元比粘度が1.2以上であることを特徴とするポリ
    エーテルエステルブロック共重合体。 【数1】 【数2】 (なお、数1におけるTβは、粘弾性挙動におけるβ分
    散の正接損失極大温度を示し、数2におけるδ1 及びδ
    2 はそれぞれ30℃及び70℃での正接損失の値を示
    す。)
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