JP3621788B2 - 共重合ポリエステル及びそれからなる繊維 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は共重合ポリエステル及びそれからなる繊維に関し、さらに詳しくは、共重合ポリエチレンナフタレートから主としてなる共重合ポリエステル及びそれからなる繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエステル繊維、特にポリエチレンテレフタレート繊維は種々の優れた特性より、タイヤコードやベルト材、キャンバス、スクリーン紗といった産業資材用途に多く用いられてきた。しかしながら、近年このような産業資材用途として、更なる高強力化、耐久性などに対する要求が高まっている。特に、キャンバス、スクリーン紗といった湿熱条件下での用途に対しては、ポリエチレンテレフタレートは、その耐加水分解性の低さより、これまでのポリエチレンテレフタレート繊維では十分なものであるとはいえなかった。一方、ポリエチレンナフタレート繊維はポリエチレンテレフタレート繊維に比べて高強度、高弾性率であり、且つ高い耐加水分解性能を有しており、近年産業資材用途として注目されている。
しかしながら、このポリエチレンナフタレート繊維は高強度、高弾性率といった優れた性能を有している反面、糸の伸度、タフネスが低いことから耐疲労性、特に屈曲疲労や摩擦疲労に対しての物性が著しく低く、長期的な使用には適していないということがこれまで大きな問題点であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、本来ポリエチレンナフタレート繊維が有している高強度、高弾性率、及び高い耐加水分解性能を保持したまま、耐疲労性、特に屈曲疲労や摩擦疲労を改良した共重合ポリエステル繊維、及びその繊維を製造するための共重合ポリエステルを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは高強度、前記課題を解決するため鋭意検討の結果、ある特定のグリコール成分を共重合したポリエチレンナフタレートから主としてなる共重合ポリエステル、及びそれからなる繊維が本発明の目的を達成することを見いだした。
【0005】
すなわち、本発明は、2,6−ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするエチレンナフタレート単位から主としてなる共重合ポリエステルにおいて、下記式(1)
【0006】
【化2】
Figure 0003621788
【0007】
(式中、Arはp−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、4,4´−ビフェニレン基、4,4´−イソプロピリデンジフェニレン基、4,4´−スルホニルジフェニレン基を表す。m,nはそれぞれ独立した1〜5の整数を表す。)で表されるグリコールを1〜20モル%含み、固有粘度が0.5以上であり、融点が245〜256℃、且つ末端カルボキシ基濃度が40当量/t以下である共重合ポリエチレンナフタレートからなる共重合ポリエステルである。本発明はまた、この共重合ポリエステルから主としてなる組成物を溶融紡糸することによって得られる繊維である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の共重合ポリエステルは、2,6−ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするエチレンナフタレート単位から主としてなる共重合ポリエステルである。
【0009】
ここで酸成分は2,6−ナフタレンジカルボン酸を主成分とする必要があるが、他に20モル%以下の範囲で他のジカルボン酸成分を含有しても良い。他のジカルボン酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、1,5−、1,6−、1,7−、あるいは2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、5−スルホキシイソフタル酸金属塩、5−スルホキシイソフタル酸ホスホニウム塩等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられ、これらの1種または2種以上を含有しても良い。
【0010】
またグリコール成分はエチレングリコールを主たるグリコール成分とする必要があるが、エチレングリコールと本発明に使用する上記式(1)で表される化合物以外に、20モル%以下の範囲で他のグリコール成分及び/またはジフェノール成分を含有しても良い。他のグリコール成分としてはプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族グリコール、o,m,p−キシリレングリコール等の芳香族グリコール、ヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、カテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルスルホン等のジフェノール類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を含有しても良い。
【0011】
次に本発明の共重合ポリエステルは下記式(1)で表されるグリコールを20モル%以下含む必要がある。
【0012】
【化3】
Figure 0003621788
【0013】
(式中Arはp−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、4,4′−ビフェニレン基、4,4′−イソプロピリデンジフェニレン基、4,4′−スルホニルジフェニレン基を表す。m,nはそれぞれ独立した1〜5の整数を表す。)
【0014】
ここで、上記式(1)中のm,nはそれぞれ1〜5の独立した整数である。mまたはnが5を超えるととそれを用いて得られる共重合ポリエステルの融点、ガラス転移点、結晶性が低下し、繊維化した場合の物性が低下するため好ましくない。m,nの値は1〜3が特に好ましい。
【0015】
上記式(1)中、Arはp−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、4,4′−ビフェニレン基、4,4′−イソプロピリデンジフェニレン基、4,4′−スルホニルジフェニレン基を表し、このArは芳香族基である必要がある。ここでArが脂肪族基であれば共重合ポリエステルの融点、ガラス転移点、耐加水分解性が低下し好ましくない。
【0016】
上記式(1)の化合物の具体例としては、例えば1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ビフェニル、2,2−ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)フェニル〕プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン、4,4′−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ) ジフェニルスルホン等が挙げられる。これらのうち1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが最も好ましい。
【0017】
これら化合物の共重合量が、1モル%未満では、得られる繊維の伸度が高くならず、タフネスの改善につながらないし、他方20モル%を越えるとナフタレート自体の特性が損なわれるようになる。
【0018】
次に本発明において、共重合ポリエステルは固有粘度が0.5以上である必要がある。ここでいう固有粘度とは、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒(重量比60/40)に溶解し、35℃で測定した粘度から求めた値である。ここで固有粘度が0.5未満では繊維化した際に高強度、高弾性率を有する繊維が得られない。固有粘度は好ましくは0.6〜1.2、更に好ましくは0.7〜1.0である。
【0019】
次に共重合ポリエステルは末端カルボキシル基濃度が40当量/t以下である必要がある。末端カルボキシル基濃度が40当量/tを超えると、紡糸時の溶融安定性や繊維の耐加水分解性能の低下が起こり好ましくない。末端カルボキシル基濃度は好ましくは30当量/t以下、更に好ましくは20当量/t以下である。
【0020】
本発明の共重合ポリエステルの製造方法については特に制限はなく、直接重合法、エステル交換法等、一般に行われるポリエステルの重合方法でよい。
【0021】
本発明における共重合ポリエステルには必要に応じて種々の添加剤、例えば着色剤、艶消剤、易滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤等を配合して組成物とすることができる。
【0022】
本発明の共重合ポリエステル繊維を製造するには特に制限はなく、ポリエステル繊維を製造する従来公知の方法で製造することができる。例えば紡糸後、未延伸糸を巻き取り別途延伸する方法、未延伸糸をいったん巻き取ることなく連続して延伸を行う方法、5000m以上の高速で溶融紡糸し延伸過程を省略する方法、溶融紡糸後、凝固浴中で未延伸糸を冷却固化せしめた後、加熱媒体中または加熱ローラー等の接触加熱下で延伸する方法などが採用される。また、溶融紡糸の際にカルボジイミド等の加水分解抑制剤を添加しても良い。
【0023】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。また、実施例中「部」は重量部を表す。
尚ポリマー及び繊維の評価方法は下記に従った。
固有粘度:フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比6:4)混合溶媒中35℃で測定した粘度から求めた。
末端カルボキシル基濃度:Makromolecular Chemie 26,226(1958)に記載の方法で実施した。
強伸度、結節強度:JIS L1070に準じて測定した。
【0024】
〔実施例1〕
蒸留装置を備えた反応装置に2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル244部、エチレングリコール118部、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン19.8部、酢酸マンガン4水和物0.0613部を仕込み、昇温しメタノールを留去しながらエステル交換反応を行なった。2時間後、ほぼ理論量のメタノールが留去され、エステル交換反応を終了した。このとき反応系内の温度は240℃に到達した。このエステル交換反応物を撹袢装置、窒素導入口、減圧口、蒸留装置を備えた反応装置に移し、リン酸0.027部、三酸化アンチモン0.079部を添加し窒素置換した後、290℃まで昇温し、常圧で約30分、15〜20mmHgで約30分、更に0.05〜0.5mmHgで約40分重縮合反応を行なった。得られたポリマーの固有粘度、融点、ガラス転移点(Tg)、末端[COOH]量を表1に示した。融点の値より共重合化されていることがわかる。
【0025】
得られた共重合ポリエステルは粉砕、乾燥後、孔径0.27mm、孔数6ホールの口金を用いて310℃で溶融紡糸を行い、400m/分で引き取った。この未延伸糸を150℃に加熱された供給ローラー上で6倍延伸し、引続いて240℃に加熱された熱板上で定長熱処理し、70d/6fil の延伸熱処理糸を得た。得られた延伸糸の強伸度、結節強度、135℃、40時間湿熱処理後の強度保持率を測定した。結果を表2に示す。
【0026】
〔実施例2〕
エチレングリコールを121部、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンを9.9部使用した以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1、2に示す。
【0027】
〔実施例3〕
1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン9.9部の代わりに、2,2−ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパンを14.6部用いた以外は実施例2と同様に行なった。結果を表1、2に示す。
【0028】
〔比較例1〕
1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンは添加せずに、エチレングリコールを124部を用いて、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを製造したこと以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1、2に示す。
【0029】
〔比較例2〕
1,4−ビス(2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンの代わりに2,2−(2,2−ジメチル−1,3−プロピレンジオキシ)ジエタノールを用いた以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1、2に示す。
【0030】
【表1】
Figure 0003621788
【0031】
共重合成分欄の(a)(b)(c)はそれぞれ下記を示す。
(a):1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン
(b):2,2−ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン
(c):2,2−(2,2−ジメチル−1,3−プロピレンジオキシ)ジエタノール
【0032】
【表2】
Figure 0003621788
【0033】
表2より本発明の共重合ポリエステル繊維は強度、伸度、結節強度、湿熱処理後の強度保持率いずれにおいても高い値を示すことがわかる。
【0034】
【発明の効果】
本発明の共重合ポリエステルは、強度、伸度、結節強度を保持し、湿熱処理後の強度保持率に優れ、耐加水分解性に優れた繊維を提供することができ、タイヤコードやベルト材、キャンバス、スクリーン紗といったさまざまな産業資材用途に広く使用することができる。

Claims (2)

  1. 2,6−ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするエチレンナフタレート単位から主としてなる共重合ポリエステルにおいて、下記式(1)
    Figure 0003621788
    (式中、Arはp−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、4,4´−ビフェニレン基、4,4´−イソプロピリデンジフェニレン基、4,4´−スルホニルジフェニレン基を表す。m,nはそれぞれ独立した1〜5の整数を表す。)
    で表されるグリコールを1〜20モル%含み、固有粘度が0.5以上であり、融点が245〜256℃、且つ末端カルボキシ基濃度が40当量/t以下である共重合ポリエチレンナフタレートからなる共重合ポリエステル。
  2. 請求項1に記載の共重合ポリエステルから主としてなる組成物を溶融紡糸することによって得られる繊維。
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