JP3125050B2 - 植物プロトプラストの形質転換改良法 - Google Patents

植物プロトプラストの形質転換改良法

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JP3125050B2 JP62307376A JP30737687A JP3125050B2 JP 3125050 B2 JP3125050 B2 JP 3125050B2 JP 62307376 A JP62307376 A JP 62307376A JP 30737687 A JP30737687 A JP 30737687A JP 3125050 B2 JP3125050 B2 JP 3125050B2
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は簡単で純粋に化学的な工程を使って植物プロ
トプラストを形質転換するための改良法およびその方法
によって得られた植物材料に関する。 新しい遺伝情報を植物材料に導入して新規および/ま
たは改良された性質を持つ植物をつくることが可能であ
る。世界の人口の急速な増加とそれに伴う食物および原
材料の増大なる要求という観点から有用植物の生産量を
増加させ、また植物成分からの抽出を増加させること、
特に食物および医薬分野において進歩させることが生物
学的研究において最も急を要する仕事である。したがっ
て、例えば次のような事を本質的な方向として挙げるべ
きである。すなわち、有用植物について、好ましくない
土壌条件または気候条件に対する耐性、病気および害虫
に対する耐性を高め、殺虫剤、除草剤、殺菌剤のような
植物保護剤に対する耐性を高めて、また植物の栄養成分
または収率を有利なように変えることである。このよう
な望ましい効果は一般に保護物質、有用タンパク質また
は毒素を導入またはその生成を増加させることによって
実現できる。植物の遺伝型に目的に応じて影響を与える
ことは、例えば、従来の植物育種技術を使わずに、外部
の遺伝子を制御された条件下において植物細胞中に導入
することによって行うことができる。 本発明においては、以下のような定義を適用する。 植物材料:生きた植物それ自体または培養したものの部
分、中でも、プロトプラスト、細胞、カルス、組織、
胚、植物器官、芽、種子のような部分、および全植物体 遺伝子:発現信号を側方に持つ構造遺伝子 構造遺伝子:タンパク質をコードしたDNA配列 発現信号:プロモーター信号およびターミネーター信号 植物−活性発現信号:植物において機能可能な発現信号 プロモーター信号:転写を開始する信号 ターミネーター信号:転写を終了する信号 エンハンサー信号:転写を活発にする信号 複製信号:DNA複製を可能にする信号 インテグレーション信号:遺伝子をゲノムDNAに組込む
ことを行うDNA配列 雑種DNA:異種のDNAから構築された遺伝子、すなわち、
異った起原のDNA配列からのもので、それは天然DNA配
列、c−DNA配列または合成DNA配列のDNA配列であって
よい。 支持DNA:遺伝子の側方にある中性DNA、すなわち、遺伝
子の機能に関与しないDNA配列 キャリアーDNA:形質転換遺伝子以外の中性DNAで、ヌク
レアーゼから形質転換遺伝子を保護するために形質転換
遺伝子とまじっている。 分離遺伝子:元来のDNAから分離されたDNA配列で単一タ
ンパク質をコードしている。 NPT−II遺伝子:ネオマイシン−3′−ホスホトランス
フェラーゼ遺伝子、トランスポソンTn5のII型〔1)
ススタイン、エス.ジェイ.及びダグリュー.エス.レ
ズニコフ、セル 23巻、191−199頁、1981年 Rothstei
n.S.J.and W.S.Reznikoff,Cell23,191−199.(1981)〕 ゲノムDNA:植物ゲノム(すべてまたはそのタンパク質
の)のDNA c−DNA:リバーストランスクリプターゼによってつくら
れたm−RNAのコピー 遺伝学的に操作した植物細菌を使って植物細胞中にDN
A配列を入れることは、この分野の文献における刊行物
から公知である。例えば、2)ネイチャー303巻、209−
213頁、1983年Nature vol.303,209−213(1983);3)
ネイチャー304巻、184−187頁、1983年Nature vol.304,
184−187(1983);4)サイエンティフィック アメリ
カン 248巻6号50−59頁、1983年Scientific American
248(6),50−59(1983);5)イーエムビーオー ジ
ャーナル2巻6号、987−995頁、1983年EMBO Tournal2
(6),987−995(1983);6)サイエンス 222巻、47
6−482頁1983年Science222,476−482(1983);7)
イエンス223巻496−498頁1984年Science223,496−498
(1984);または8)プロシーデングス オブザ ナシ
ョナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ
ユナイデッド ステイツオブ アメリカ 80巻、4803−
4807頁、1983年Proc.Natl.Acad.Sci.USA80,4803−4807
(1983)である。ここに記載されている方法において
は、これらの細菌の天然の植物感染性を利用して新しい
遺伝材料を植物細胞に挿入している。これまで例えばア
グロバクテリウム テュメファシエンス Agrobacteriu
m tumefaciensまたはそのTi−プラスミドまたはカリフ
ラワー モザイク ウイルスのような植物病原体が特に
この目的のベクターとして使用されてきた。 最近開発された方法により、今や生物学的ベクターを
使用せずに遺伝子を植物細胞に直接挿入することが可能
となった〔9)ポトリカス、アイ.等プラント モレキ
ュラー バイオロジー レポート 3巻117−128頁、19
85年Potrykus,I.et al,Plant Molec.Biol.Rep.,117−
128(1985);10)シリト、アール.ディー.等バイオ
/テクノロジー3巻 1099−1103頁、1985年Shillito,
R.O.et al.,Bio/Technology,1099−1103(1985)〕。
これらの方法は「直接遺伝子転移」というキャッチフレ
ーズで知られ、例えば植物病原細菌、ウイルス、昆虫ま
たはカビのような植物感染系を使用せずに植物細胞のベ
クターなしの形質転換を行うことができる。 したがって、病原体の宿主特異性によるすべての制限
はもはやない。形質転換細胞からの植物の発育は新しい
植物細胞形質転換法の使用により障害を受けない。 遺伝子形質転換を行う際の主な問題のひとつは形質転
換した細胞または組織を同定する時の困難さである。 遺伝子形質転換工程における形質転換頻度が低ければ
低いほど、莫大な数の形質転換されていないクローンの
中から形質転換された細胞に由来する数少い細胞クロー
ンを見い出すことは一層困難で複雑になる。そのため、
もし遺伝子が選択的マーカー機能(例えば特別な物質へ
の耐性)を持ったものでなければ、形質転換頻度が低い
と一般のスクリーニング法を使うことはほとんど、また
は全く不可能である。したがって、選択できるマーカー
機能を持たない遺伝子の場合に低形質転換頻度であると
多大の費用を要する。 マーカー機能を持たない遺伝子の形質転換では、それ
故に、形質転換細胞クローンを選択する従来のスクリー
ニング法は形質転換頻度が10-3乃至10-2オーダーの場合
にかぎって効果的に利用できて成功する。現在の所、こ
のように高い形質転換率はエレクトロポレーション、お
そらくは微生物研究で使用される遺伝子転換の他の方法
と組合せてのみ実現できる。例えばポリ−L−オルニチ
ンまたはポリ−L−リジン処理、リポリーム融合、DNA
−タンパク複合体化、プロトプラスト膜上の電荷修飾、
微生物プロトプラストとの融合またはリン酸カルシウム
共沈殿、および特にポリエチレングリコール処理および
熱処理法との組合せである〔10)シリト等バイオ/テク
ノロジー3巻1099−1103頁、1985年Shillito ot al,Bio
/Technology,1099−1103(1985)〕。比較してみる
と、純粋に化学的方法を使用した場合、現在までの所10
-5オーダーまでの形質転換率を再現性よく実現できるの
みである。 エレクトロポレーションにおいては(ノイマン、イ
ー.等 ザ イーエムビーオー ジャーナル 7巻841
−845頁,1982年Neuman,E.at al.The EMBO Journal,84
1−845(1982),10)シリト等 バイオテクノロジー3
巻、1985年Shillito et al.,Bio/Technology,(198
5)〕.マンニトール/カルシウムまたはマンニトール
/マグネシウム溶液中のプロトプラストを、懸濁液を挾
んで蓄電気を放電させることにより高強度の電圧パルス
に短時間作用させる。これによりプロトプラスト膜の分
極が起り、膜に可逆的開孔を生じ、DNAの細胞への移入
を可能にする。しかしながら、この方法には多くの不利
な点があり、使用に制限がある。 第一に、エレクトロポレーションにより形質転換を行
うには、比較的複雑な装置が必要で、これにはそれ相応
のコストと相応の手間がかかる。第二に、植物プロトプ
ラストの高度の感受性のために、この方法は非常に狭い
限られた範囲でのみ可能である。形質転換細胞の生存率
を確保するためにも、いくつかのパラメーター、例えば
電圧、容量および場の強度価は狭い範囲内でのみ調節可
能である(例えば1400乃至1700Vの電圧範囲)〔10)
リト、アール.ディー.等バイオ/テクノロジー3巻、
1985年 Shillito,R.D.et al.,Bio/Technology,(19
85)〕。 これらの不利な点は驚くべきことに本発明の方法に含
まれる簡単で純粋に化学的方法の工程により克服でき
る。 DNAを取り植物細胞中に組み込むことの原理について
の本発明の範囲内で行われた研究により、形質転換過程
はたがいに影響し合う多くのパラメーターに依存してい
ることが明らかになった。これらの研究に基づいて、形
質転換に関係のあるパラメーターを変化させ、最適に調
整することにより、公知の方法に比較して形質転換頻度
を有意に高め、最初に述べた10-3乃至10-2以上の望まし
い形質転換率を容易に実現できるようになった。 純粋に化学的手段に基づく本発明の方法により、形質
転換頻度のみならず、驚くべきことに再現性および処理
プロトプラストの生存率を有意に高めることが可能とな
った。 現在までの所、純粋に化学的方法によって得られる最
高の形質転換頻度は10-5の近辺にあったが、本発明の方
法を用い、エレクトロポレーションの場合に比較して数
パーセントまでのオーダーの再現性ある形質転換頻度を
実現できるようになった。 エレクトロポレーションに対し、本発明の改良法は装
置に特別の支出がなく実施できる方法であり、より有利
な価格となり、より少い労働集約性となる。エレクトロ
ポレーションを要求する方法と比較して更に有利な点
は、同時に大量の植物プロトプラストを形質転換し得る
新たな可能性があることである。 本発明の方法を使用すれば、処理細胞の生存率に関し
てエレクトロポレーション法でこれまで述べてきた制約
に比較して何等の制約もされない。 本発明の形質転換におけるパラメーターを決定する際
には広い範囲で変化させることができ、形質転換効率
や、この範囲内における処理プロトプラストの生存率に
悪影響を与えることはない。 その上、本発明の方法を使った形質転換後では、形質
転換をエレクトロポレーションで行った場合より、処理
プロトプラストの生存率および分裂性に関してはるかに
異質性が低いことが証明されている。本発明の方法を使
用した場合、例えば処理プロトプラストの生存率80%以
上を容易に実現でき、同時にその分裂能、したがって新
しいコロニーを形成する能力も保持されている。エレク
トロポレーションを使った場合には、これに対して生存
率に関する値は約10%にすぎない。 期待に反して、プロトプラストへの直接遺伝子組込み
における形質転換頻度は多くのパラメーターにより、個
々にまたは組合さって影響を受けることがわかり、これ
らのパラメーターまたは手段の2,3のもののみを正しく
選択するか、組合せることにより技術的にも時間的にも
労力少くして最適の形質転換率を実現できることがわか
った。下記のパラメーターが本質的であることが証明さ
れている。 1)DNA − 試 料:形状、大きさ、濃度、適用時間 2)キャリアーDNA :形状、濃度、大きさ 3)Mg2+ :濃度、適用時間 4)原形質膜変性剤:濃度、適用時間 本発明の方法に不可欠の因子について、形質転換効率
を高めるのに決定的であるMg2+濃度と原形質膜変性剤濃
度が特に重要である。これらの2因子間に相乗的相互作
用がみられ、その結果、形質転換効率の顕著な上昇とな
る。 更にMg2+イオン、変性剤および形質転換DNA適用の時
間および順序も重要である。 植物プロトプラストへの直接遺伝子組込み法、究局的
に遺伝学的に変性された植物をつくり出す方法で決定的
な改良と簡略化は本発明に不可欠な下記の工程により実
現できる: − 植物材料からのプロトプラストの分離および、必要
に応じて分離したプロトプラストの好適な栄養培地にお
ける培養 − 分離プロトプラストの標準塩溶液への再懸濁 − 塩溶液からMg2+イオンを含む形質転換に最適化した
培養培地への分離プロトプラストの移し換え − 挿入されるべきDNAと原形質膜変性剤の添加 − 原形質膜変性剤存在下にDNAがプロトプラスト中に
侵入するに十分な時間、DNAとプロトプラストを保持 − 培地からの処理プロトプラストの分離および、必要
に応じてこれのCaCl2水溶液への再懸濁 − CaCl2溶液からのプロトプラストからの分離 − プロトプラストを成長させるに適した培地中での培
養 − 望むならば完全な形質転換植物の再生 したがって、本発明は本質的に植物プロトプラストを
形質転換するための改良法に関し、望むならば、その形
質転換プロトプラストからの再生による遺伝的に変性さ
れた全植物の構造に関し、その方法は下記の特徴を持つ − 植物プロトプラストはいかなる植物組織からでも分
離し、望みに応じて植物プロトプラストを培養するのに
一般に使用される栄養培地のひとつで培養する; − 実際の形質転換前に、アルカリ土類および/または
アルカリ金属陽イオン、望ましくはCa2+,K+および/ま
たはNa+イオンおよび好適な炭素源を含む前培養培地で
4゜乃至10℃の温度、20分間乃至6時間、前培養する; − 次いでプロトプラストを前培養培地から分離し、Ca
2+イオンの存在下、または非存在下に0.1乃至60mM、望
ましくは10乃至30mMの必須成分Mg2+イオンを含む実際の
形質転換培地に再懸濁する; − 次に、植物において発現信号を活性に調節されたひ
とつ以上の遺伝子と支持DNAをも含むDNA試料を形質転換
溶液に直接加える; − 数秒乃至20分間、望ましくは0.1乃至10分間後に、
原形質膜変性剤を加える; − プロトプラストとDNA試料をこの形質転換溶液中でD
NAがプロトプラスト中にたしかに取り込まれる時間保持
する; − 望むならば、形質転換プロトプラストから全植物体
を再生させる。 本発明の植物細胞への新しい遺伝子の移入は、植物細
胞、植物ウイルスのような天然の植物感染系または昆虫
または植物病原かびによる移入を使用しない直接法によ
って実施していることは明らかである。これを行うため
に、形質転換されるべき植物プロトプラストを組込まれ
るべき遺伝子で以下のように直接処理する:先づ最初
に、プロトプラストを適当な溶液中に入れ、そこで一定
時間前培養し、次に外来遺伝子とプロトプラストをいっ
しょに実際の形質転換培地に移して、その中でプロトプ
ラストに外来遺伝子が取り込まれるに十分な時間放置す
る。 使用する植物プロトプラストは単一種の植物のものま
たは種に準ずる分類学的単位のものが望ましい。 分離細胞および組織の出発物質として好適な分離され
た植物プロトプラストは、例えば葉、苗、茎、花、根、
花粉または胚のような植物のいかなる部分から得てもよ
い。望ましくは葉のプロトプラストを使用する。分離プ
ロトプラストは細胞培養から得てもよい。プロトプラス
トを分離する方法は、例えば12)ポトリカス、アイ.ア
ンド シリト、アール.ディー.,メソーズ イン エン
ザイモロジー 118巻、449−578頁、1986年 Potrykus,
I.and Shillito,R.D.,Methods in Engymology118,449−
578(1986)で知ることができる。 プロトプラストを培養するに好適な培地はプロトプラ
スト培養に通常使用されるもののように浸透圧的に安定
化された培地が望ましい。 個々の成分や成分群の異る数多くの培地が既に入手可
能である。しかし、すべての培地は一般に下記の原理に
基いて調合されている:約10mg/乃至数百mg/の範囲
の濃度の無機イオン(例えば硝酸、リン酸、硫酸、カリ
ウム、マグネシウム、鉄のようないわゆるマクロ要
素)、最大数mg/の無機イオンの群(コバルト、亜
鉛、銅、マンガンのようないわゆるミクロ要素)、およ
び一連のビタミン(例えばイノシトール、葉酸、チアミ
ン)、例えば庶糖またはグルコースのような炭素源、お
よび更に0.01乃至10ml/の濃度範囲のオーキシンおよ
びサイトキシン類の天然または合成植物ホルモンの形の
生長調節剤を含む。更に、培地は糖アルコール(例えば
マンニトール)または糖(例えばグルコース)または塩
イオン(例えばCaCl2)を添加して浸透圧的に安定化さ
れ、pH価を0.6乃至6.5に調整されている。 最近の培地のより詳細な記載は例えば13)コブリッ
ツ、エイチ.,メトーディシェ アスペクテ デァ ツェ
ル−ウント ゲベ−ベツュヒトゥング バイ グラミネ
ーエン ウンター ベゾンデレル ベリュックジヒティ
グング デアゲトライデ、(アスペクツ オブ メソー
ズ オブ セル アンド ティッシュー グロクスイン
グラミネェウイズ スペシャル レファレンス トゥ
ー シーリアルス)クルチュール プフランツェ XXII
巻、1974年、93−157頁 Koblitz,H.,Methodische Aspo
kte der Zell−und Gewebe zchturg bei Gramineen u
nter besorderer Bercksichtigung der Getreide,(A
spects of methods of cell and tissue growth in Gra
mineae with special reference to cereals)Kulturpf
lanze XXII,1974,93−157に見られる。 プロトプラストを実際の形質転換培地に移す前に、次
の形質転換に最適なように準備する培地でまず前培養す
る;こうすることの利点は実現する形質転換および処理
プロトプラストの生存率の明らかな増加により明白とな
る。 いくつかの前提条件付で、この前培養培地中で直接形
質転換を行うことも可能である。 上記の培地は、例えばグルコースまたはマンニトール
のような糖または糖アルコールのような好適な炭素源に
加えて、例えばNaCl,CaCl2,KClのような種々の塩を1mM
乃至200mMの濃度で含む標準塩溶液である。この塩溶液
は5乃至8のpH値を持つことが有利である。 目的とする形質転換の短時間以前に、プロトプラスト
を前培養溶液から実際の形質転換培地に移す。この溶液
はMg2+イオンを0.1mM、望ましくは10mM乃至30mMの濃度
で含むマンニトール溶液である。処理溶液のpH値はpH5.
6乃至pH12、特にpH7乃至pH10である。 処理培地に分離したプロトプラストを入れた直後、DN
A試料を2μg/ml乃至20μg/ml、望ましくは5μg/ml乃
至10μg/mlの濃度で加える。 構造遺伝子と植物−活性発現信号からなるDNAは植物
細胞のゲノムDNAに遺伝子の組込みを可能にする中性DNA
配列(支持DNA)が側方にあることが有利である。直線
状の遺伝子を使うことが有利である。実験を実施する間
に、支持DNA濃度は50μg/ml乃至70μg/ml、平均の大き
さは4kb乃至40kbが特に好適であると証明された。 更に、例えば動物または植物DNA,ラムダDNA、プラス
ミッドDNAまたは本発明の方法を実施するに好適な他の
いかなるDNAのような中性DNAを、遺伝子のタクレアーゼ
による分解から保護するために、キャリアーDNAとして
過剰に使用することが有利である。 DNAを処理溶液に加えた後、数秒乃至20分、望ましく
は0.1分乃至10分後に、ポリエチレングリコール終濃度1
0%乃至30%になるまで加える。PEG濃度20%乃至28%で
高形質転換率が実現する。 しかし、ポリエチレングリコール以外に、本発明の方
法において、プロトプラスト膜を変性するような、例え
ば細胞融合の分野で使用される他の高級アルコールまた
はアルコール型物質を使用することもできる。これらの
例はポリプロピレングリコール(425乃至4000g/mol)、
ポリビニルアルコールのような長鎖の多価アルコール、
またはヒドロキシル基のいくつかまたはすべてのエーテ
ル化された多価アルコールや例えば下記の報告に記載さ
れているような農業分野で一般的な植物適合界面活性剤
である:14) 「マッカチャンズ デタージェンツ アンド エマ
ルシファイアーズ アニュアル」エムシー パプリッシ
ング コーポレーション、リッジウッド ニュージャー
ジー 1981年“Mc Cutcheon's Detergents and Emalsif
iers Annual"Mc Publishing Corp.,Ridgewood New Jers
ey,1981;スタッヘ、ハー.「テンシド−タッシェンブー
ク”、カール ハンザー フェアラーグ、ミュニッヒ/
ヴィエンナ 1981Stache,H.,“Tensid−Taschenbuch",C
arl Hanser Verlag,Munich/Vienna,1981 もしポリエチレングリコールそのものを使用する場合
(実施例1および2におけるように)、1000g/mol乃至1
0000g/mol特に3000g/mol乃至8000g/molの分子量を持つ
ポリエチレングリコールが望ましい。 上記の薬剤の内、ポリエチレングリコールそのもの、
特にCa2+イオンを比較的高比率で持つCMS型のポリエチ
レングリコール溶液が望ましい。〔15)ネグルチュー、
アイ.等セオリチカルアンド アプライド ジェネティ
ックス72巻、279−86頁 1986年a Negrutiu,I.et al.,T
heor.Appl.Genet.72,279−86(1986a)〕 ポリエチレングリコールによる処理時間は20分乃至6
時間が形質転換実施に特に有利であることがわかった。 上記のように行った処理の後、有利には細胞濃度を2
×104乃至8×104プロトプラスト/培地mlとして、新鮮
な培地にプロトプラストを再懸濁する。 PEGを20%以上の濃度で使用する場合には、形質転換
終了後に、Ca2+イオンを含む溶液2乃至10倍量でゆるや
かに希釈して沈降法により存在する残存PEGを洗い落
し、新鮮培地に再懸濁することが都合がよい。 0.1M乃至1.0M濃度のCa2+イオンを持つCaCl2水溶液が
形質転換に特に有利であることが証明された。 本発明の方法は実際上適用する際に制限がない。 本発明は、特に、新規で有用な望ましい性質をコード
し、植物細胞内で機能する発現信号と作用できるように
連動するひとつ以上の構造遺伝子を中心成分として持つ
キメラ性遺伝的構築に関する。 本発明の方法で使用するに好適な遺伝子は、植物細胞
内で発現され、例えば病原体(例えば植物病原性昆虫、
かび、細菌、ウイルス等)、除草剤、殺虫剤または他の
生物を殺す薬剤、気候的影響および地方的特異性(例え
ば高温、低温、風、乾燥、高湿度、特別に極端な土壌条
件、浸透圧ストレス等)への抵抗性または耐性の上昇、
または葉、種、塊茎、根、茎等における保存および貯蔵
物質生成の増加のような有用および/または望ましい性
質を植物に与えるいかなる遺伝子でもよい。 本発明は、例えばアルカロイド、ステロイド、ホルモ
ン、免疫調節剤および他の生理学的に活性な物質のよう
な薬剤学的に受け入れられる活性物質をコードした遺伝
子をも含む。 したがって、植物起原、例えばゼイン遺伝子〔16)
ィーナンド、ユー.,等モレキュラー アンド ゼネラル
ゼネティックス 182巻、440−444,1981年Wienand,
U.,et al.,Mol.Ger.Genet.182,440−444(1981)、動物
起原、例えばTPA遺伝子(組織型 プラスミノーゲン活
性化遺伝子);〔17)ペンニカ、ディー等ネイチャー30
1巻、214−221頁、1983年Pennica,D.,et al.,Nature30
1,214−221,(1983)〕、微生物起原、例えばNPT−II遺
伝子または合成起原、例えばインスリン遺伝子〔18)
テピーン、ピー.等ジーン24巻、289−297頁1983年Step
ien,P.,et al.,Gene24,289−297(1983)〕のようない
かなる構造遺伝子をも、もしその構造遺伝子が植物中で
活性である発現信号を側方に持つならば、植物の遺伝型
に組込むことができ、その際、発現信号は植物、動物、
微生物または合成起原であってよい。 本発明において、特にプロモーターおよび終止配列が
「発現信号」と理解すべきであるが、更に構造遺伝子配
列の上流または下流に位置する5′−および3′−非翻
訳部分における他の調節配列も含まれる。 プロモーター配列には特にPNAポリメラーゼの認識部
位が含まれ、ここにこの酵素が特異的に結合して転写が
開始する。 原核生物のプロモーターに多く存在するいくつかのDN
A配列は結合親和性に関与している。これらのいわゆる
「コンセンサス」配列は一般に構造遺伝子のATG開始コ
ードンに対して−10乃至−30の配列部位にみられる。こ
れらは「プリブノブ−シャラー−ボックスPribnov−Sch
aller−Box」と呼ばれるふたつのヘキサヌクレオチド配
列であり、これらの配列内のヌクレオチド配列はおたが
いの離れ方と共にプロモーターへのDNAポリメラーゼの
親和性に決定的な影響を持つ。 真核細胞においては、転写開始部位から20乃至30タク
レオチド上流に位置するアデニンおよびチミンの多い配
列、いわゆる「TATA」ボックスがこの関係で特に重要で
ある。 本発明の範囲内で使用できる好適な遺伝子は同質性お
よび異質性の遺伝子またはDNA、更に本発明の範囲内で
与えられた定義に合った合成遺伝子またはDNAである。 コードするDNA配列はゲノムDNA,cDNAまたは合成DNAの
みから構築される。もうひとつの可能性はcDNAおよびゲ
ノムDNAおよび/または合成DNAいずれもからなる雑種DN
Aの構築である。 この場合には、cDNAはゲノムDNAと同じ遺伝子由来の
ものでもよいし、または別法としてcDNAとゲノムDNA両
方が異った遺伝子から由来してもよい。しかし、いかな
る場合にも、ゲノムDNAおよび/またはcDNAはそれぞれ
同一または異った遺伝子から個々に調製できる。 DNA配列がひとつ以上の遺伝子の部分を含んでいる場
合には、これらの遺伝子はひとつの同じ遺伝子から、ま
たは同じ族のひとつ以上の株、ひとつ以上の変種または
ひとつ以上の種に属するいくつかの生物から、または同
じまたはもうひとつの分類学的単位(界)のひとつ以上
の族に属する生物から由来してよい。 植物細胞における上記構造遺伝子の発現を確実にする
ために、コードした遺伝子配列は、植物細胞で機能可能
な発現配列と作用できるように連結させなければならな
い。構造遺伝子および側方にある発現信号からなる移入
される遺伝子は天然の遺伝子でも雑種遺伝子でもよい。
本発明の方法に使用される望ましいい遺伝子は、発現信
号が動物または、特に植物または合成起源のものであ
る。このような遺伝子の例は: a) 構造遺伝子とその天然の発現信号からなる植物由
来の完全な遺伝子; b) 合成起源の発現信号を側方にもつ合成起源の構造
遺伝子からなる完全に合成の遺伝子; c) 植物−活性発現信号を側方に持ち、植物の異った
種由来の構造遺伝子と発現信号からなる植物由来の構造
遺伝子; d) 合成起源の発現信号を側方に持つ植物由来の構造
遺伝子; e) 植物起源の発現信号を側方に持つ動物、微生物ま
たは合成起源の構造遺伝子;または f) 合成起源の発現信号を側方に持つ動物または微生
物起源の構造遺伝子 である。 したがって本発明の範囲内における雑種遺伝子構築
は、構造遺伝子に加えて、プロモーターおよびターミネ
ーター配列両者と共に3′−および5′−非翻訳部分の
他の調節配列を含む。 より一層望ましいものは植物起源の発現信号、特に植
物ウイルス由来のものを側方に持つ細菌起源の構造遺伝
子である。 コードしたDNA配列(構造遺伝子)の発現を誘導可能
ないかなるプロモーターおよびいかなるターミネーター
も雑種遺伝子配列の成分として使用できる。好適なプロ
モーターおよびターミネーターの例はノパリン−シンタ
ーゼ遺伝子(nos)、オクトパイン−シンターゼ遺伝子
(ocs)およびカリフラワー モザイク ウイルス遺伝
子(CaMV)のものである。 CaMVゲノムから分離したCaMVゲノムの35Sおよび19S発
現信号で、例えば19)マンアチス等1982年Maniatis et
al.,1982に記載されているような分子生物学的方法によ
りコードされたDNA配列に連結できるものが本発明の範
囲内で望ましい。 本発明にしたがい、35S転写調節配列に使用される出
発物質は、例えば遺伝子地図のタクレオチド6808−7632
20)フランク ジー等1980年Frank G et al.,1980)
を含むCaMV“S"株のSca Iフラグメントである。 19Sプロモーターおよび5′−非翻訳部分はCaMV遺伝
子地図のPat I部位(5386位)とHind III部位(5850
位)の間のゲノム フラグメントに存在する(21)ホー
ン等1982年Hohn et al.,1982)。相当するターミネータ
ーと3′−非翻訳部分はCaMVゲノムの7342位と7643位の
間のEcoR V/Bgl11フラグメントに存在している。 19Sプロモーター部分は、CaMV遺伝子VIのコード部分
の前に位置して遺伝子VI生産物(ウイルス コート タ
ンパク質)の発現を司どる典型的な真核生物のプロモー
ターである。 植物細胞内で機能し、使用可能なプロモーターのもう
ひとつの効果的な代表例は過剰生産植物プロモーターで
ある。この型のプロモーターは、目的とする遺伝子産物
をコードした遺伝子配列と作用可能な状態で連結した場
合、上記の遺伝子配列の発現を可能にすべきである。 本発明の範囲内で使用できる過剰生産植物プロモータ
ーには、ダイズのリブロース−1,5−ビス−ホスフェー
ト−カルボキシラーゼ小サブユニット(ss)のプロモー
ター〔22)ベリーロー等 ジャーナル オブ モレキュ
ラー アンド アプライド ゼネティックス 1巻483
−498頁1982年Berry−Lowe et al.,J.Mol.and Appl.Gen
et.,:483−498(1982)〕およびクロロフィル−a/b−
結合タンパク質のプロモーターが含まれる。これらふた
つのプロモーターは真核植物細胞において光によって誘
導されるという性質で知られている〔例えば、23)〕ゼ
ネティック エンジニアリング オブ プランツ、アン
アグリカルチュラル パースベクティブ、エイ.カシ
ュモア、プレナム、ニューヨーク1983年、29−38頁Gene
tic Engineering of Plants,an Agricultural Perspect
ive,A.Cashmove,Plenum,New York1983;24)コルジー
ジー等 ザ ジャーナル オブ バイオロジカル ケミ
ストリー258巻 1399頁、1983年Coruzzi G.et al.,The
Journal of Biological Chemistry,258:1399(1983)お
よび25)ダンスミュア ピー等 ジャーナル オブ モ
レキュラー アンドアプライド ゼネティックス、2巻
285頁1983年 Dunsmuir,P.et al.,Journal of Molecu
lav and Appied Genetics,:2:285(1983)〕。 カリフラワー モザイク ウイルスの遺伝子VIの発現
信号を本発明に使用するのに特に有利であることがわか
った。 本発明の範囲内で特に望ましいものはCaMV CM1841株
の発現信号で、その完全なDNA配列は26)ガードナー等1
981年Gardner et al.,1981に記載されている。 雑種遺伝子はそれ自体は公知の微生物学的方法により
製造し、植物細胞によって生産されるべきタンパク質の
コードのリーディングフレームは保持しておく。このよ
うな方法は公知で、例えば下記の刊行物に記載されてい
る:27)「モレキュラー クローニング」、マニアティ
ス、ティー.,フリッチュ、イー.エフ.およびジェイ.
サングルック、コールド スプリングハーバー ラボラ
トロリー、1982年“Molecular Cloning",Maniatis,T.,F
ritsch.E.F.and J.Sambrook,Cold Spring Harbor Labor
atory,1982,および20)「リコンビナント DNA テクニ
ックス」、ロドリゲス、アール.エル.アンド アー
ル.シー.テイト,アジソン−ウェズリー パブリッシ
ング アンパニー,ロンドン,アムステルダム,ドン
ミルズ.オンタリオ,シドニー,トウキョウ,1983年“R
ecombinant DNA Technignes",Rodrignez,R.L.and R.C.T
ait,Addison−Wesley Publishing Comp.,London,Amster
dam,Don Mills,Ontario,Sydney,Tokyo,1983。 植物細胞のゲノムDNAに外来遺伝子を組込むには、構
造遺伝子と植物−活性発現信号からなる遺伝子の側方に
中性DNA(支持DNA)があれば有利である。この場合、支
持DNAは二本の直線状DNA鎖からなっていてよく、そのた
め植物細胞へ挿入されるべき構築は直線状DNA分子であ
る。しかし、遺伝子移入のためにつくるDNA配列は環状
構造(プラスミド構造)であってもよい。このようなプ
ラスミドは発現信号を持つ外来遺伝子が組込まれた一本
のDNA鎖からなっている。支持DNAは合成起源でもよい
し、天然のDNA配列から適当な制限酵素で処理して得て
もよい。したがって、好適な支持DNAは例えば選択的制
限酵素で開環した天然のプラスミドである。 このようなプラスミドの例は自由に入手できるプラス
ミドpUC8(28)メッシング、ジェイ.アンド ジェイ.
ビエイラ、ジーン19巻、269−276頁1982年Messing,J.an
d J.Vieira,Gene19,269−276,1982に記載されている)
である。天然のプラスミドのフラグメントも支持DNAと
して使用することもできる。例えばカリフラワー モザ
イク ウィルスの遺伝子VIの欠損変異株を支持DNAとし
て使用できる。 植物細胞の遺伝子形質転換の確率は種々の因子によっ
て上昇させ得る。酵母の試験で知られているように、成
功して安定な遺伝子形質転換の数は、 1)細胞当りの新しい遺伝子のコピー数が増加すると共
に、 2)複製信号と新遺伝子の組合せにより、また 3)組込む配列と新遺伝子の組合せにより 増加する。 したがって、本発明の方法は、移入される遺伝子が植
物細胞内で活性な複製および/または組込み配列と組合
わさった場合に特に有利に使用され得る。 植物細胞内遺伝子の発現は遺伝子がメッセンジャーRN
A配列に転写される頻度に依存する。したがって、新し
い遺伝子がこの転写を高めるエンハンサー信号と組合さ
った時に同様に有利になる。植物細胞で活性な複製、組
込みおよびエンハンサー信号と組合さった遺伝子を移入
する本方法は特に注意を惹く。 また、もし移入される遺伝子が選択的マーカー機能を
持つ場合、プロセッシング手法の点から大いに有利であ
る。すなわち、形質転換した植物細胞を非形質転換細胞
から選択を調節することによって分離できる。植物細胞
の遺伝子型に発現してマーカー特異的選択法を使用でき
るような遺伝子が存在する時にのみ、通常微生物学的方
法によってカルスまたは完全な植物に再生させられるの
で、このようなマーカー機能が効率的操作法を可能にす
る。 プロトプラスト、細胞培養の細胞、植物組織の細胞、
花粉、花粉管、胚珠、胚のうまたは接合子、および発育
の種々の段階の胚が形質転換の出発物質として使用でき
る好適な植物細胞の例として挙げられるが、それ以上の
前処理なしで直接使用できるのでプロトプラストが望ま
しい。 本発明は本発明の方法によって得られた形質転換され
たプロトプラストにも関し、また、それから得られた植
物細胞、細胞凝集物、胚、植物および種にも関し、更に
また、形質転換の結果として得られた新しい遺伝子を持
ち、それからの有利な性質を持つその子孫にも関する。 また、本発明にしたがって形質転換され、形質転換の
結果として得られた新しい遺伝子を持ち、それから得ら
れる有利な性質を持つ植物材料のすべての雑種および融
合生産物も含まれる。要するに、本発明は、 形質転換の結果として得られた新しい遺伝子を持ち、
それから得られる有利な性質を持つ、 植物プロトプラストをいかなるものでもよい植物組織
から分離し、植物プロトプラストを培養するために通常
使用される栄養培地のひとつで培養し; 実際の形質転換前に、前記プロトプラストを任意に、
Ca2+,K+およびNa+イオンおよび適当な炭素源をも含む前
培養培地で4℃乃至10℃の温度で、20分乃至6時間前培
養し; 次いで該プロトプラストをこの前培養培地から分離
し、Ca2+イオンの存在下または非存在下に0.1乃至60mM
Mg2+イオンを必須成分として含む実際の形質転換培地
に再懸濁し; その後すぐに、植物中で活発な発現信号の制御下のひ
とつ以上の遺伝子および支持DNAをも含むがアグロバク
ターTiプラスミド(アグロバクテリウム癌腫誘発プラス
ミド)の配列を欠如しているDNA試料を、形質転換溶液
に加え; 0.1乃至10分後、原形質膜変性剤を加え; プロトプラストとDNA試料を上記の形質転換溶液中
で、DNAのプロトプラストへの組込みが十分である時
間、インキュベイションを行う、 プロトプラスト、および、これから得られる植物細胞
および細胞凝集物に関する。 さらに、本発明は、上記のプロトプラストから得られ
る双子葉植物および種子、並びにそれらの子孫にも関す
る。 本発明の方法はすべての植物、特に分類群アンジオス
ペルメAngiospermaeおよびジムノスペルメGymnospermae
からの植物の形質転換に好適である。 特に興味が持たれるジムノスペルメGymnospermaeはコ
ニフェレConiferae綱の植物である。 特に興味が持たれるアンジオスペルメAngiospermae
は、落葉樹木は別として、ソラナシェSolanaceae,クル
シフェレCrnciferae,コンポジテCompositae,リリアシェ
Liliaceae,ビタシェVitaceae,ケノポディアシェChenopo
diaceae,ルタシェRutaceae,アリアシェAlliaceae,アマ
リリダシェAmarylidaceae,アスパラガシェAsparagacea
e,オルキダシェOrchidaceae,パルメPalmae,ブロメリア
シェBromeliaceae,ルビアシェRubiaceae,テアシェTheac
eae,ムサシェMusaceaeまたはグラミネェGramineae科の
植物、およびレグミノセLeguminosae目の植物、特にパ
ピリオナシェPapilionaceae科の植物である。ソルナシ
ェSolnaceae,クルシフェレCruciferaeおよびグラミネェ
Gramineae科の代表的なものが望ましい。ニコチアナNic
otiana,ペチェニアPetunia,ヒオシアムスHyoscyamns,ブ
ラシカBrassicaおよびロリウムLolium族の植物、例えば
ニコチアナ タバクムNicotiana tabacum,ニコチアナ
プルバゲニフォリアNicotiana plubagenifolia,ペチュ
ニアヒブリダPetnnia hybrida,ヒオシアムス ムティカ
スHyoscyamus muticus,ブラシカ ナプスBrassica napu
s,ブラシカ ラパBrassica rapaおよびロリウム ムル
チフロルムLolium multiflorumが特に言及する価値があ
る。 トウモロコシ、コメ、コムギ、オオムギ、ライムギ、
カラスムギおよびアワのような高収量の栽培植物は特に
植物細胞形質転換の分野での努力の対象になる。 プロトプラストからの再生によりつくることができる
すべての植物は本発明の方法を使って形質転換可能であ
る。現在までの所、穀類を含まれるグラミネエGraminea
e科(草類)の代表的なものに対して遺伝的に操作する
ことができない。しかし、上記の直接遺伝子形質転換法
によりグラミ社Gramineaeプロトプラスト、すなわち穀
類の細胞を遺伝的に形質転換することが可能であること
が明らかになった。世界的な総収量や作付面積は少い
が、同様にソラナムSolanum,ニコチアナNicotiana,ブラ
シカBrassica,ベタBeta,ピスムPisum,ファゼオラスPhas
eolus,グリシネGlycine,ヘクアンタスHelianthus,アリ
ウムAllium,アベナAvena,ホルデウムHordeum,オリゼOry
zae,セタリアSetavia,セカレSecale,ソルグムSorghum,
トリティクムTriticum,ゼァZea,ムサMusa,ココスCocos,
シドニアCydonia,ピルスPyrus,マルスMalus,フェニクス
Phoenix,エレイスElaeis,ルブスRubus,フラガリアFraga
ria,プルヌスPrunns,アラキスArachis,パニクムPanicu
m,サッカルムSaccharum,コフェアCoffea,カメリアCamel
lia,アナナスAnanas,ビティスVitisまたはシトラスCitr
as属の栽培植物の形質転換も可能であり、望ましい。 培養中のプロトプラストを完全植物体に再生すること
29)エバンス等「プロトプラスト アイソレイション
アンド カルチャー」、ハンドブック オブ プラン
ト セル カルチャー 1巻:124−176頁(マクミラン
パブリッシング カンパニー、ニューヨーク1983年Ev
ans et al.,“Protoplast Isolation and Cultnre",in
Handbook of Plant Cell Culture,:124−176(Mac Mi
llan Publishing Co.New York1983);30)エムアール
ディビー,「リーセント デベロップメンツ イン
ザ カルチャー アンド リゼネレイション オブ ブ
ラント プロトプラスツ」プロトプラスツ,1983−レク
チャー プロシーディングズ,19−29頁、(ビルクホイ
ザー、バスレ1983年)MR Davey,“Recent Developments
in the Culture and Regeneration of Plant Protopla
sts",Protoplasts,1983−Lecture Proceedings,page19
−29,(Birkhuser,Basle1983);31)ピージェイ デ
イル,「プロトプラスト カルチャー アンド プラン
ト リゼネレイション オブ シリアルス アンド ア
ザー リカルシトラント クロップス」プロトプラス
ツ,1983−レクチャー プロシーディングス,31−41頁
(ビルクホイザー,バスレ 1983年)PJ Dale,“Protop
last Culture and Plant Regeneration of Cereals and
Other Recalcitrant Crops",in Protoplasts1983−Lec
ture Proceedings,page31−41,(Birkhuser,Basle198
3);および32)エイチ ビンディング「リゼネレイシ
ョン オブ プランツ」プラント プロトプラスツ 21
−37頁(シーアールシー プレス,ボカ レイトン1985
年)H Binding,“Regeneration of Hants",in Plant Pr
otoplasto,page21−37,(CRC Press,Boca Raton1985)
および12)ポトリカス アイ アンド シリトアール
ディー メソーヅ イン エンザイモロジー 118巻
プラント モレキュラー バイオロジー エイ.アンド
エイチ ワイスバック編,アカデミック プレス、オ
ルランド 1986年 Potrykus I and Shillito RD,Metho
ds in Enzymology,Vol.118,Plant Molecular Biology,e
ds.A.and H.Weissbach,Academic Press,Orlando,1986に
記載されている。再生方法は植物の種によって異る。し
かし、一般に、まず挿入された遺伝子の多数のコピーを
含む形質転換されたプロトプラスト、細胞または組織の
懸濁液をつくる。次にこのような懸濁液を使って胚形成
誘導を行うことが可能である。この胚の生長を天然の胚
の場合のように成熟および発芽の段階に進行させる。し
かし、通常、プロトプラストは公知の培養培地のひとつ
に入れて刺戟を与えて分裂させ細胞壁をつくらせる。最
終的に、何か活性成分、例えばオーキシンやサイトキニ
ンの処理により根や発芽茎の形成を誘導することができ
るカルス培養を得る。培地にはこれらの生長物質の外に
一般に種々のアミノ酸を含む。グルタミン酸およびプロ
リンを培地に入れることが、特にトウモロコシやアルフ
ァルファのような植物種の場合に有利であることが証明
されている。根や発芽茎は一般に同時に形成される。 このようにして得られた小植物を土壌に移し、普通の
苗と同じ方法で更に培養する。 再生の効率は特に培地、遺伝型および培養の前歴に依
存している。もしこれらの三つの変数が適正に調節され
ていると再生は完全に再現性を持つ。 植物のin vitro培養の分野、特に植物再生の分野にお
ける最近の開発の観点からみて、グラミネエGramineae
科の代表的なものについても植物プロトプラストから全
植物体を再生させることが可能になってきた。グラミネ
エGramineaeについて成功した再生実験の例は中でも
33)アブダラー、アール等 バイオ/テクノロジー、4
巻、1087−1090頁1986年Abdullah,R et al.,Bio/Techno
logy,:1087−1090,1986;34)フジムラ、ティー.等、
プラント ティシュー カルチャー レターズ 2巻、
74−75頁、1985年Fujimnra、T.et al.,Plant Tissue Cu
Have Lett,2:74−75,1985;35)トリヤマ,ケイ等、セ
オリティカル アンド アプライド ゼネティックス
83巻、16−19頁、1986年Toviyama,K.et al.,Theor App
l.Genet.,73:16−19,1986;36)ヤマダ、ワイ.等、プラ
ント セル レポーツ 5巻、85−88頁、1986年(コ
メ)Yamada,Y.,et al.,Plant Cell Pep.,:85−88,198
6に、また「プロトプラストからのゼア メイズ(Zea m
ays)植物の再生」の題名で1987年6月24日に出願され
た056,506号のアメリカ特許出願(pending US Patert A
pplication,serial number 056,506)に記載されてい
る。 したがって、下記の植物を本発明の範囲内で使用する
ことも可能である:ロリウムLolium、ゼアZea、トリテ
ィクムTriticum、ソルグムSorghum、サッカルムSacchar
um、ブロムスBromus、オリゼOryzae、アベナAvena、ホ
ルデウムHordeum、セカレSecaleおよびセタリアSetari
a。 形質転換された遺伝子はそれ自体公知の、例えば特に
サザーン ブロット分析や酵素活性試験を含む雑種分析
および分子生物学時研究により検出できる。 雑種分析において、形質転換された植物細胞から成長
した成熟植物をまず種子を生産する目的でそれ自身と交
配する。種子のいくつかは、新しく望ましい性質をコー
ドした挿入遺伝子を遺伝の法則に正確に相当する比で含
む。これらの種子を新しい望ましい性質を持つ植物を生
産するために使用することができる。 ホモ接合体系統を、繰返しの自家受粉と同系交配系統
をつくることによって得ることができる。次にこれらの
同系交配系統を今度は雑種をつくるために使用できる。
この目的でひとつの同系交配系統をもうひとつの同系交
配系統と交配する。 本発明は、再生された植物から得ることができる部
分、例えば花、種子、葉、枝、中でも果実で、これらの
部分が形質転換された細胞を含む場合には、これらの部
分にも関する。再生された植物の子孫(雑種の子孫も含
む)、変種および変異体も本発明の一部を形成してい
る。 サザーン ブロット分析は例えば次のようにして実施
できる:形質転換細胞またはプロトプラストから取った
DNAを制限酵素で処理した後、1%アガロース ゲルで
電気泳動を行い、ニトロセルロース膜上に移す〔37)
ザーン、イー.エム.,ジャーナル オブ モレキュラー
バイオロジー 98巻、503−517頁、1975年Southern,
E.M.,J.Mol.Biol.98,503−517(1975)〕。そしてニッ
ク翻訳に供しておいた検出のために使用するDNAと分子
雑種形成(ハイブリダイゼイション)させる〔38)リグ
ビー、ダブリュー.ジェイ.,ディークマン、エム.、ロ
ーデス、シー、アンド ピー.バーグ、ジャーナル オ
ブ モレキュラー バイオロジー 113巻、237−251
頁、1977年Rigby,W.J.,Dieckmann,M.,Rhodes,C.and P.B
erg,J.Mol.Biol.113,237−251(1977)〕(5×108乃至
10×108c.p.m/μgのDNA−比活性)。次いで、フィルタ
ーを65℃で0.03Mクエン酸ナトリウムおよび0.3M塩化ナ
トリウム水溶液で各回1時間3回洗浄する。雑種形成し
たDNAは24−48時間X線フィルムを黒色化することによ
り目に見えるようになる。 酵素活性は次のようにして調べる〔アミノグリコシド
ホスホトランスフェラーゼ(カナマイシン特異リン酸
化の酵素)の試験により詳細に説明〕:カルスまたは葉
の一部(100乃至200mg)をエッペンドルフ(Eppendor
f)遠心管内、抽出用緩衝液20μ中で磨砕する。緩衝
液は5)ヘレラーエストレラ、エル.,デブロック、エ
ム.,メッセンス,イー.,ヘルナルスティーンズ、ジェ
イ.−ピー.,バンモンタギュー、エム.アンド ジェ
イ.シェル、イーエムビーオー ジャーナル 2巻、98
7−995頁、1983年Herreva−Estvella、L.DeBlock,M.,Me
ssens,E.,Hernalsteens,J.−P.,Van Montagu,M.and J.S
chell,EMBO J.,987−995(1983)によって使用された
ものを一部変えたもので、オウシ血液アルブミンを除い
て0.1Mショ糖を加えたものである。抽出物を12,000gで
5分間遠心分離し、上澄に終濃度が0.004%になるまで
ブロモロフェノールブルーを加える。タンパク質を、10
%の非変性ポリアクリルアミド ゲルによる電気泳動で
上澄35μから分離する。ゲルをカナマイシンとγ−32
P標識ATPを含むアガロース ゲルで覆ってインキュベー
ションを行い、リン酸化された反応生成物をホワットマ
ン(Whatman)−p81−ホスホセルロース ペーパーに移
す。このペーパーを90℃の脱イオン水で6回洗浄してオ
ートラジオグラフィーを行う。 以下実施例により本発明を詳細に示すが、これに限定
されるものではない。この実施例には、雑種遺伝子の構
築と環状構造を持つ支持DNA配列へのその組込み、この
雑種遺伝子の植物細胞への移入、形質転換された植物細
胞の選択とその形質転換植物細胞からの全植物体の再
生、更にそれの雑種−遺伝学的および分子生物学的分析
を記載する。 以下の実施例には次の略号を使用する: 培地 HeNa/F 〔10mM Hepes,pH7.1,5mM CaCl2,150mM NaCl,0.
2Mマンニトール;39)クロム、エム.等、1985年Fromm,
M.et al.,(1985)〕 K3 〔0.1mg/2.4D,1.0mg/NAA,0.2mg/BAP;
40)シリト、アール.ディー.等、1981年Shillito,R.
D.et al,(1981);41)ナジ、ジェイ.アイ.アンドマ
リガ、ピー.,1976年Nagy,J.I.and Maliga,P.,(197
6)〕 KA1AO 〔42)インスタル、ピー.等、1985年Install
e,P.et al.,(1985)〕 LS 〔43)リンスメイアー.イー.エム.,スクー
ク,エフ.,フィジオロギァ プランタルム18巻,100−12
7頁,1965年Linsmaier,E.M.,Skook,F.,Physiologia Plan
tarum18,100−127,(1965)〕 Maca 〔0.4Mマンニトール,15mM CaCl2×2H2O,pH5.
6〕 MaMg 〔0.4乃至0.5Mマンニトール,15mM MgCl2,0.1%
MES,pH5.6〕 M 〔42)インスタル,ピー.等,1985年Installe,
P.,et al.,(1985)〕 MAP1AO 〔42)インスタル,ピー.等,1985年Installe,
P.,et al.,(1985)〕 MDs 〔44)ネグルチュー,アイ.等,1983年Negruti
u,I.et al.,(1983)〕 RP 〔42)インスタル,ピー.等,1985年Installe.
P.,et al.,(1985)〕 R′SA 〔42)インスタル,ピー.等,1985年Installe,
P.,et al.,(1985)〕 T 〔45)ニッチュ,ジェイ.ピー.アンド シ
ー.ニッチュ,1969年Nitsch,J.P.and C.Nitsch.(196
9)〕 Ws 〔154mM NaCl,125mM CaCl2×2H2O.5mM KCl,5mM
グルコース,pH5.6乃至6.0;46)メンツェル等,1981年Men
czel et al.,(1981)〕 化学物質 BAP ベンジルアミノプリン 2.4D (2,4−ジクロロフェノキシ)酢酸 NAA ナフチル酢酸 EDTA エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラ酢酸 PEG CMS CMS型のポリエチレングリコール〔15)ネグル
チュー,アイ.等,1986年−a Negrutiu,I.et al.,(198
6a)〕 PEG 6R R型のポリエチレングリコール〔10)シリト,
アール.ディー.等,1985年Shillito,R.D.et al.,(198
5)〕 トリス−HCl α,α,α−トリス−(ヒドロキシメチ
ル)−メチルアミン塩酸 NPT−II遺伝子 ネオマイシン−3′−ホスホトランス
フェラーゼ遺伝子、II型 表 ATF 形質転換絶対頻度 GPPL プロトプラストの総数 RTF 形質転換相対頻度 UE 形質転換処理終了後の生存プロトプラスト ZT 形質転換されたものの数 以下の実施例におけるパーセントは重量/容量パーセ
ント(W/V;容量当りの重量)である。 実施例1 プラスミドpABDlの構築 自由に入手できるプラスミドpKm21およびpKm244〔
47)ベック、イー.等、ジーン19巻、327−336頁、1982
年Beck,E.,et al.,Gene19,327−336(1982)〕を制限エ
ンドヌクレアーゼPst Iで切断する。組換えに使うプラ
スミドフラグメントを0.8%アガロースゲルにおける電
気泳動によって精製する。フラグメントを結合させて得
たプラスミドpKm21244は47)ベック等Beck et al.によ
りジーン19巻、327−336頁、1982年Gene19,327−336(1
982)に記載されているように、NPT−II遺伝子の5′−
および3′−Bal31欠損の組合せを含む。 カリフラワーモザイクウイルスのプロモーター信号を
プラスミドpKm21244のHind IIIフラグメントと結合させ
るために、カップリングプラスミドpJPAXを構築する。
カップリングプラスミドpJPAXはプラスミドpUC8とpUC9
から得る〔28)メッシング、ジェイ.アンド.ジェイ.
ビエイラ.ジーン19巻、269−276頁、1982年Messing,J.
and J.Vieira,Gene19,269−276(1982)〕。プラスミド
pUC9のカップリング配列の10塩基対を、Hind IIIとSal
Iの部位の所で切断してポリメラーゼ−I−Klenowフラ
グメントを使って接着末端をつくり〔48)ヤコブセン、
エイチ.等ヨーロッピアンジャーナルオブバイオケミス
トリー45巻、623頁、1974年Jacobsen,H.,et al.,Eur,J.
Biochem.45,623,(1974)〕、ポリヌクレオチド鎖を結
合し、その結果としてHind III部位を再びつくって、分
離する。この分離したカップリング配列のSma I部位に
8塩基対の合成カップリング要素(Xho I)を挿入す
る。プラスミドpUC8の適当なXor IおよびHind IIIフラ
グメントの、および変性したプラスミドpUC9の組換えに
より下記の連らなった制限部位を持つ部分的に非対称の
カップリング配列を持つプラスミドpJPAXを得る:EcoR
I,Sma I,BamH I,Sal I,Pst I,Himd III,BamH I,Xho Iお
よびEcoR I。NPT−II構造遺伝子に結合されたCaMV遺伝
子VIプロモーター部分は、CaMV CM1841株の変種であ
り、その完全なヌクレオチド配列は26)カードナー、ア
ール.シー.等、1981年Gardner,R.C.,et al.,1981に記
載されている、CaMV CM4 184株が起源である。 CaMVプロモーター部分をイー.コリE.coliプラスミド
pBR322の誘導体、6KbコスミドpHC79〔49)ホーンズ、ビ
ー.アンドコリンズ,ジエイ.1980年Hohns,B.and Colli
ns J.,1980)にクローニングする。CaMVゲノムとコスミ
ドpHC79をBst IIで切断し、得られたフラグメントをた
がいに結合させる。 カリフラワーモザイクウイルス遺伝子VIの5′−発現
信号とNPT−II遺伝子のHind IIIフラグメントをプラス
ミドpJPAXの中で、カリフラワーモザイクウイルス遺伝
子VIのプロモーター部分をPst I部位とHind III部位の
間に挿入することによって結合させる。得られたプラス
ミドを信号Hind III部位で切断し、プラスミドpKm21244
のHind IIIフラグメントをこの切断部位に両方向に挿入
し、プラスミドpJPAX Cakm+とpJPAX Cakm-を得る。NPT
−II雑種遺伝子の3′−末端信号の近辺にEcoR V配列を
つくるために、プラスミドpJPAX Cakm+のBamH Iフラグ
メントをプラスミドpBR327のBamH I部位に挿入する〔
50)ソベロン、エックス.等ジーン9巻、287−305頁、
1980年Soberon,X.et al.,Gene,287−305(1980)〕。 プラスミドpBR327Cakmを得る。この新しいDNA構築を
含むプラスミドpBR327CakmのEcoR Vフラグメントを、プ
ラスミドpUC8のSal I部位でクローニングしておいたカ
リフラワーモザイクウイルス遺伝子VIのEcoR V部分と置
換するために使う。その結果、NPT−II遺伝子のタンパ
ク質をコードしたDNAは、カリフラワーモザイクウイル
ス遺伝子Vの5′−および3′−発現信号の制御下にお
かれる。この得られたプラスミドをpABD IおよびpABD I
Iと呼ぶ(第1図参照)。 実施例2 NPT−II遺伝子をプラスミドpABD Iの部分としてMg2+/PE
G処理により移入することによるニコチアナタバクムシ
ー。ブイ.プチハバンナエスアール1(Nicotiana taba
cum C.V.Petit Havanna SR I1)のプロトプラストの形
質転換 ニコチアナタバクムシー.ブイ.プチハバンナNicoti
ana Tabacum C.V.Petit Havannaのタバコ プロトプラ
ストを公知の方法によりタバコの懸濁培養からつくる〔
12)ポトリカス アイ アンド シリト アール ディ
ー メソーズ イン エンザイモロジー118巻、プラン
ト モレキュラーバイオロジー エイ.アンド エイチ
ワイスバック編アカデミック プレス、オルランド、
1986年Potrykus I and Shillito RD,Methods in Enzymo
logy,uol.118,Plart Molecalar Biology,eds.A.and H.W
eissbach,Academi Piress,Orlando,1986)。〕6週間の
苗木培養から無菌的に完全に広いた葉を取り、下記の組
成を持つ酵素溶液で十分にぬらす: 酵素溶液:H2O 70ml ショ糖 13g マセロザイムR10 1g セルラーゼ 2g 「オノズカ」R10(ヤクルト株式会社、日 本Yakult Co.Ltd.,Japan) ドリセラーゼ(ヘミッシェ ファブリク シュバイツェルハーレ、スイス Chemische Fabrik Schweizerhalle,Switgerland) 0.13g フオン酸(MES) 0.5ml pH6.0 次に葉を1乃至2cm角の大きさに切り、この角片を上
記の酵素溶液に浮かす。これを暗黒下、26℃で一夜放置
する、この混合液をゆるやかに振とうし、消化が完結す
るまで更に30分間放置する。 次いで、この懸濁液を100μm幅のメッシュを持つス
チールの篩で過し、0.6Mショ糖(MES,pH5.6)で十分
にすすぎ、次に4000乃至5000μpmで10分間遠心分離す
る。液の表面にプロトプラストが集り、液を、例えば殺
菌した注射器を使用してプロトプラストの下の液を除去
する。 プロトプラストを0.4Mショ糖を含むK3A培地に再懸濁
する〔ショ糖(102.96g/);キシロース(0.25g/
);2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(0.10mg/);1−
ナフチル酢酸(1.00mg/);6−ベンジルアミノプリン
(0.20mg/);pH5.8〕〔12)ポトリカス アイ アン
ド シリト,アール.ディー.等、1981年Potrykus,I.a
nd Shillito,R.D.et al.,1981〕。 形質転換を行うために、まずプロトプラストを洗浄
し、計数してW5培地〔154mM NaCl,125mM CaCl2×2H2O,5
mM KCl,5mMグルコース,pH5.6;46)メンツェル,エル.
等、1981年Menczel,L.et al.,(1981)〕に1ml当り1乃
至2.5×106細胞の細胞濃度で再懸濁する。この濃度が分
離したプロトプラストの生存率を高くする。6乃至8℃
で30分間置いた後、プロトプラストを形質転換実験に使
用する。 分離してプロトプラストを実際に形質転換する直前に
W5培地を実際の形質転換用培地で置換する。この培地は
マンニトール/マグネシウム溶液〔MaMg−溶液:0.4−0.
5mMマンニトール、0.1%MES(モルホリンエタンスルホ
ン酸)、pH5.6〕で12乃至16mMのMg2+濃度を持つ。ま
ず、プロトプラスを100gで5分間遠心分離してW5溶液か
ら分離し、MaMg培地(0.3ml)に再懸濁する。プラスミ
ドpABD I 5乃至10μgとコウシ胸腺キャリアーDNA50μ
gを含むDNA水溶液65μをこの懸濁液に加える。後者
のDNAは形質転換挿入をしない中性キャリアーDNAで、形
質転換されるDNAをヌクレアーゼ消化から保護するため
にこの混液に過剰に加える。DNA添加後、約0.1乃至10分
間経て、終濃度が24乃至28%(W/V)になるまで40%ポ
リエチレングリコール水溶液(W/V)を加える。CMS型の
PEGを使用すると特に有利であることが証明されてい
る。これはCa2+含有0.4Mマンニトール溶液〔0.1M Ca(N
O3)2.4H2O〕で、約1000乃至6000の分子量を持つPEGを
終濃度40%(W/V)含む。この溶液のpHはpH7乃至9であ
る〔15)ネグルチュー,アイ.等、1986年−a Negruti
u,I.et al.,(1986a)〕。 ニコチアナ タバクム シー.ブィ.プチ ハバンナ
エスアール1 Nicotiana Tabacum C.V.Petit Havann
a SR1の場合、PEG CMS4000を使用すると望ましい。次い
で、形質転換培地のpH値をpH7に調整し、この混液を時
々振とうしながら26℃で30分間放置する。 もし20%以上の高濃度のPEGを使用する場合、0.2M Ca
Cl2溶液3乃至5倍量でゆっくりと希釈するのがよい。
このようにして処理したプロトプラストをつぎに遠心分
離し(100gで5分間)、新たにK3培地に再懸濁する(10
mlの新しいK3培地に0.3mlプロトプラスト溶液)。 直径10cmのペトリ皿に10mlを入れて遮光下に24℃で更
にインキュベイションを行う。この時の細胞濃度は1ml
当り4乃至8×104プロトプラストである。3日後に、
培地をペトリ皿当りK3培地0.3容量部で希釈し、3000ル
クスの人工光線を当て24℃で更に4日間インキュベイシ
ョンを続ける。全部で7日経た後、プロトプラストから
生じたクローンを50mg/のカナマイシンを含み1%ア
ガロースで固めた栄養培地に埋め、「ビーズ型」培養法
51)シリト,アール.ディー.等,プラント セル
レポーツ 2巻,244−247頁,1983年Shillito,R.D.et a
l.,Plant Cell Reports,,244−247(1983)〕に従っ
て遮光下に24℃で培養する。培養培地を同じ栄養液の新
しいもので5日毎に取換える。 実施例3 カナマイシン耐性ニコチアナ タバクム シー.ブイ.
プチ ハバンナ エスアール1N.tabacum C.V.Petit Hav
anna SR1の再生 カナマイシン含有栄養培地で3乃至4週間続けて培養
した後、直径2乃至3mmの耐性カルスをLS培地〔43)
ンスマイヤー,イー.エム.アンド スクーク,エス.
フィジオロジカル プラント 18巻,100−127頁、1965
年Linsmaier,E.M.and Skook,F.,Physiol.Plant18,100−
127(1965)〕で寒天で固め、2,4−ジクロロフェノキシ
酢酸0.05mg/,1−ナフチル酢酸2mg/,6−ベンジルア
ミノプリン0.1mg/,キネチン0.1mg/およびカナマイ
シン150mg/を含むものに移植する。カナマイシン150m
g/および6−ベンジルアミノプリン0.2mg/を含むLS
培地で幼菌を誘導し、T培地〔45)ニッチュ,ワイ.ピ
ー.アンドC.ニッチュ,サイエンス163巻,85−87頁,196
9年Nitsch,Y.P.and C.Nitsch,Science163,85−87(196
9)〕で根を形成させて変種プチ ハバンナ エス ア
ール1 Petit Hovanna SR1のカナマイシン耐性チコチ
アナ タバクムNicotiana tabacum植物を得る。 実施例4 NPT−II遺伝子をプラスミドpABD Iの部分としてMg2+/PE
G処理により移入することによるニコチアナ プルンバ
ギノフォリアのプロトプラストの形質転換 プロトプラストの分離および実際の形質転換実験のた
めに行うプロトプラストの前培養をニコチアナ タバク
ム エスアール1 Nicotiana tabacum SR1について記載
した方法と全く同じようにして実施する。 前に示したようにして前処理したニコチアナプルンバ
ギニフォリアN.plumbaginifoliaプロトプラストの実際
の形質転換を、22乃至27mMのMg2+イオン濃度を持つマン
ニトール/マグネシウム溶液〔MaMg溶液:0.4乃至0.5mM
マンニトール,0.1%MES(モルホリンエタンスルホン
酸)、pH5.6〕中で行う。プラスミドpABD I 5乃至10μ
gとコウシ胸腺キャリアーDNA50μgを含むDNA水溶液
(65μ)を加えた後、終濃度が18乃至22%(W/V)に
達するまで40%ポリエチレングリコール水溶液(W/V)
を加える。DNA添加とPEGを加えるまでの時間は、一般に
約0.1乃至10分間にすぎない。PEG CMS4000を使用すると
ニコチアナプルンバギニフォリアNicotiana plnmbagini
foliaの場合にも高形質転換率を得るのに特に有利であ
ることが証明された。次に形質転換培地のpHをpH7に調
整する。形質転換溶液を26℃で約30分間、液を時々振と
うしながらインキュベイションを行う。 最初に分離したプロトプラストを細胞濃度2乃至3×
104プロトプラスト/mlで、高ホルモン濃度の培地〔CKA1
AO培地、42)インスタル,ピー.等、ジャーナル オブ
プラレト フィジオロジー119巻,443−454頁,1985年I
nstalle,P.et al.,J.Plant Physiol.119,443−454,(19
85)〕中、4乃至12日間培養する。 細胞凝集的ができた後に、生存コロニーを選択し、計
数して、20乃至40mg/硫酸カナマイシンを含む低ホル
モン濃度のMDs培地〔44)ネグルチュ,アイ.等セオリ
ティカル アンド アプライド ゼネティックス66巻,3
41−347頁,1983年Negrutiu,I.et al.,Theov.Appl.Gene
t.66,341−347,(1983)〕またはMAP1AO培地〔42)イン
スタル,ピー.等,1985年Installe,P.et al.,(198
5)〕中で大希釈して(0.5乃至2×103コロニー/ml)し
て懸濁する。次にコロニーを寒天(1%アガロース)に
埋め、「ビーズ型」培養法〔51)シリト,アール.ディ
ー.等,1983年Shillito,R.D.et al.,(1983)〕に従っ
て遮光下に24℃の温度で培養する。栄養培地を同じ培養
溶液の新しいもので5日毎に取換える。 実施例5 カナマイシン耐性ニコチナ プルンバギニフォリアNico
tiana plumbaginifolia植物の再生 3乃至4週間培養した後、直径2乃至5mmに達した耐
性カルスを選択し、カナマイシン50mg/を含む固体培
地で更に3乃至5週間培養する。 耐性カルスをRP培地からR′SAおよび/またはM培地
に移植することにより42)インスタル,ピー.等,1985
年Installe,P.et al.,(1985)の詳細にしたがって全植
物体を再生する。 実施例6 植物遺伝型におけるNPT−II遺伝子の検出 形質転換された細胞培養からのカルスまたはそれから
再生した植物からの葉組織0.5gを、エチレンジアミンN,
N,N′,N′−テトラ酢酸(EDTA)50mmol/,塩化ナトリ
ウム0.25mol/およびα,α,α−トリス−(ヒドロキ
シメチル)−メチルアミン塩酸(トリス−HCl)50mmol/
を含む15%ショ糖溶液,pH8.0中、0℃で磨砕する。ホ
モジネートを1000g,5分間遠心分離して核をほぼ分離す
る。この細胞核をEDTA5mmol/とトリス−HCl50mmol/
を含む15%ショ糖溶液pH8.0に再懸濁し、ドデシル硫酸
ナトリウムを終濃度が0.2%になるまで加え、全体を70
℃で10分間加熱する。混液を20乃至25℃に冷却し、酢酸
カリウムを濃度が0.5mol/になるまで加える。この混
合液を0℃で1時間置く。生じた沈殿を遠心分離(微量
遠心分離機で4℃,15分間)する。DNAを2.5倍量のエタ
ノールを加えて20乃至25℃で上澄液から沈殿させる。分
離したDNAをリボヌクレアーゼ10μg/ml含むトリス−HCl
10mmol/の溶液に溶解し、37℃で10分間反応させた
後、プロティナーゼKを250μg/mlの濃度になるまで加
え、全体を37℃で更に1時間インキュベイションを行
う。プロティナーゼKをフェノールおよびクロロホルム
/イソアミルアルコール抽出処理で除去する。DNAを0.6
M酢酸ナトリウムのイソプロピル溶液0.6容量部を加えて
水相から沈殿させ、トリス−HCl10mmol/とEDTA5mmol/
を含む溶液pH7.5の50μ中に溶解する。この調製に
より、ほとんどが50,000以上の塩基対を含むDNA配列を
得る。EcoR VエンドヌクレアーゼによるこのDNAの制限
分解、放射線標識したNPT−II遺伝子のHind IIIフラグ
メントとこのフラグメントのハイブリダイゼイション、
サザンプロット分析におけるプラスミドpABD Iとの比較
から、形質転換されたニコチアナ タバクムNicotiana
tabacumおよびニコチアナ プルンバギニフォリアNicot
iana plumbaginifolia細胞の細胞核DNA中にNPT−II遺伝
子が存在することが明かとなる。 結果の部 以下に実施した形質転換の結果を種々の形質転換パラ
メータとの関係で考察する。 得られた形質転換率は「相対形質転換頻度」(RTF)
と「絶対形質転換頻度」(ATF)の形で示す。 「相対形質転換頻度」は形質転換されたものの数と非
選択的に培養されたプロトプラスト数の生存画分(コロ
ニーを形成できる)との比を表わす。一方、「絶対形質
転換頻度」は同じ形質転換されたものの数と、形質転換
前に生きていたプロトプラストの最初の数との比として
定義される。 ATFとRTFの比較は個々の形質転換と選択段階が実施さ
れた後のプロトプラストの生存率について良好な指標と
なる。 1. 使用したDNAの構造と濃度の形質転換率に対する影
形質転換率に対するDNA構造の影響をニコチアナ プ
ルンバギニフォリアNicotiana plumbaginifoliaを例と
して示す(第1表)。 実施した形質転換実験において、環状DNAより直線状D
NAを用いた方が明らかに高い形質転換率が実現すること
は明らかである。直線状DNAの場合に得られた形質転換
率は環状DNAを使って得られた値より10の2乗近く高
い。 第1表では、DNA構造のみならず加えたキャリアーDNA
に対するプラスミドDNAの比も得られる形質転換頻度に
影響を持つことが明らかに示されている。 キャリアーDNAがプラスミドDNAに対して明らかに過剰
の時に最良の結果が得られ、10:50(プラスミドDNA:キ
ャリアーDNA)の比が特に有利である。 ここに得られた結果はタバコの葉ですでに得られてい
た結果を確認している〔10)シリト,アール.等バイオ
/テクノロジー3巻,1985年Shillito,R.D.et al.,Bio/T
echnology,(1985)〕。 2. 形質転換率に対するPEG濃度の影響 第2表はニコチアナ タバクム エスアール1 Nicoti
ana tabacum SR1とニコチアナ プルンバギニフォリア
N.plumbaginifoliaについて得られる形質転換頻度に対
する異ったPEG濃度の影響を明確に示している。いずれ
の場合にも、ふたつのパラメーター間の明らかな関連を
見分けることが可能である。ニコチアナププルンバキニ
フォリアN.plumbaginifoliaの場合、PEG濃度を8%から
27%に高めると、そしてニコチアナ タバクム エスア
ール1 N.tabacum SR1の場合、13%から26%に高める
と、形質転換率はそれぞれ0.03×10-4から0.28×10-4
よび0.46×10-4から1.2×10-4に上昇する。 3. 形質転換率に対するMgCl2濃度の影響 a) 適用の時期:第3表からわかるように最高の結
果、形質転換率4.1×10-3はMgCl2を実際の形質転換の直
前に形質転換培地に加えることによって得ることができ
る。 これに対し、MgCl2を適用して2時間後まで形質転換
を行わない場合には、形質転換率は1.2×10-3にとどま
る。 また、マンニトール/MgCl2溶液(MaMg溶液)をW5塩溶
液と1:1の比率で組合せた時にも、MgCl2のモル濃度に依
存して多かれ少なかれ形質転換頻度の低下がおこる。例
えばMaMg溶液のMgCl2濃度を半分にした場合、形質転換
率の低下は約20%である。 一方、適当な緩衝液(W5溶液またはHeNa/F溶液)〔
39)クロム,エム.等プロシーディングズ オブ ナシ
ョナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ユナ
イテッド ステイツ オブ アメリカ 82巻,5842−584
8頁、1985年Fromm,M.et al.,Proc,Natl.Aced.sci.USA8
2,5842−5848,(1985)〕のみを存在させ、Mg2+を存在
させないで行った対照実験の結果と比較すると、この場
合にはその形質転換頻度は10の1乗以上低くなっている
のがわかる。上記で考察したように高い形質転換率はエ
レクトロポレイションを伴っても実現することはできな
い。 PEG/Mg2+相乗作用:Mg2+イオンとPEGを同時に使用した
場合の相乗作用は、MgCl2の存在下(6mM)でPEGを添加
せずに行った対照の形質転換結果とMgCl2およびPEGをい
っしよに使用した実際の実施例のものを比較すれば非常
に明白に示されている(第3表)。 MgCl2は6mMの濃度で存在するがPEGを加えない対照実
験では形質転換の例を全く検出できない。 これに対し、PEGを(最終度20%W/Vで)MgCl2含有形
質転換培地にDNA添加直後に(0.1乃至10分後)加えるこ
とにより上記の4.1×10-3という高い形質転換率を実現
できる。 この形質転換率はMgCl2を添加せずにPEGのみを使用し
た比較例(第2表参照)に比較しても10の1乗以上高
い。 12乃至15mMの濃度範囲のMgCl2と同時に28%の濃度のP
EG CMSを使って最高の形質転換率が得られるタバコの場
合(第2B図)に対し、ニコチアナ プルンバギニフォリ
アN.plumbaginifoliaの場合の最適範囲はより高いMgCl2
価の傾向にある(第2A図参照)。 この場合、20乃至30mMの範囲のMgCl2濃度と20%のPEG
濃度で最高形質転換率が得られている。これらにより3.
9×10-4の形質転換率が得られる。 PEG組成:前述したパラメーターの外に、使用するPEG
溶液の組成も得られる形質転換率に影響する。PEG CMS
15)ネグルチュー,アイ.等,1986年a Negrutiu,I.et a
l.,(1986a)およびPEG 6R10)シリト,アール.ディ
ー.等,1985年Shillito,R.D.et al.,(1985)を他の条
件は同じにして使用した場合(PEG濃度24%,MgCl2濃度1
2mM)、前者の場合に明らかに高い形質転換率が得ら
れ、これは1.4倍高い。 もし24%(ニコチアナ プルンバギニフォリアN.plum
baginifoliaの場合は20%)の高いPEG濃度の場合、0.2M
CaCl2×2H2O含有溶液で処理プロトプラストを洗浄する
ことが有利であることが証明された。 このようにする結果として、形質転換率は単に塩溶液
(W5溶液)のみによる処理に比較して1.7倍上昇する。 4. 形質転換された遺伝子の有性交配子孫への移入およ
び正常植物遺伝子としての遺伝的伝達の検出 遺伝的変性を受けた植物(第一世代および子孫)の詳
しい遺伝学的雑種分析と詳細な分子生物学的研究(例え
ば植物ゲノムのDNAのサザンプロット分析;アミノグリ
コシドデホスホトランスフェラーゼ、すなわちカナマイ
シン−特異リン酸化の酵素の酵素活性の検討)から次の
ような結果が得られた: 1. 細菌の遺伝子は植物ゲノムに安定して組込まれてい
る; 2. 一般に、雑種子孫に変化せず規則的に移入されてい
る; 3. その遺伝子型は天然の単純で優性の植物遺伝子のも
のに相当する; 4. DNAハイブリダイゼイションと酵素試験による分子
的分析は遺伝学的雑種分析の結果を確認; 5. 遺伝的に変性された植物は処理中にその正常な天然
の表現型を保持し;その結果、望ましくない変性は確認
されなかった。 以上の結果から、植物材料の調節された遺伝的変性の
最良の方法は本発明によるプロトプラストへの直接遺伝
子移入法によることがわかった。その遺伝的変性は安定
しており、植物の遺伝型の望ましくない変化は起らな
い。 文献: 1. ロススタイン,エス.ジェイ.アンド ダブリュ
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Plant Cell Reports,,244−247,(1983)
【図面の簡単な説明】 第1図はNPT−II構造遺伝子を含むプラスミド ベクタ
ーpABD IとpABD IIの構築を表わす図、 第2図はニコチアナ タバクム シー.ブイ.プチ ハ
バンナ エスアール1(Nicofiana tabacum C.V.Petit
Havanna SR1)における(AおよびB)、およびニコチ
アナ プルンバギニフォリア(Nicotiana plumbaginifo
lia)における(A)形質転換率に対するMgCl2濃度
(A)およびMgCl2/PEG相互作用(B)の影響を表わす
グラフである。 グラフA中、曲線aはN.tabacum SR1,曲線bはN.plumba
ginifoliaである。 MgCl2濃度は片対数スケール(横軸)で示す(PEG濃度20
%(W/V)。 グラフB中、曲線aは15mM MgCl2,曲線bは30mM MgCl2
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 Nature,Vol.295(1982) p.432−434 Cell,Vol.32(1983)p. 1033−1043 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) WPI(DIALOG) BIOSIS(DIALOG)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.植物プロトプラストをいかなるものでもよい植物組
    織から分離し、植物プロトプラストを培養するために通
    常使用される栄養培地のひとつで培養し; 実際の形質転換前に、前記プロトプラストを任意に、Ca
    2+,K+およびNa+イオンおよび適当な炭素源をも含む前培
    養培地で4℃乃至10℃の温度で、20分乃至6時間前培養
    し; 次いで該プロトプラストをこの前培養培地から分離し、
    Ca2+イオンの存在下または非存在下に0.1乃至60mM Mg2+
    イオンを必須成分として含む実際の形質転換培地に再懸
    濁し; その後すぐに、植物中で活発な発現信号の制御下のひと
    つ以上の遺伝子および支持DNAをも含むDNA試料を形質転
    換溶液に加え; 0.1乃至10分後、原形質膜変性剤を加え; プロトプラストとDNA試料を上記の形質転換溶液中で、D
    NAのプロトプラストへの取込みが十分である時間、イン
    キュベイションを行う、 植物遺伝型の形質転換法。 2.形質転換溶液がMg2+イオンを10乃至30mMの濃度で含
    む特許請求の範囲第(1)項記載の方法。 3.原形質膜変性剤がポリエチレングリコールである特
    許請求の範囲第(1)項記載の方法。 4.インキュベイション培地におけるポリエチレングリ
    コールの終濃度が10%乃至30%である特許請求の範囲第
    (3)項記載の方法。 5.植物で活性である発現信号の制御下にあるいかなる
    起源でもよいもののうち、ひとつ以上の遺伝子および支
    持DNAを含むDNA試料の濃度が2乃至20μg/mlである特許
    請求の範囲第(1)項記載の方法。 6.形質転換遺伝子を持たない中性のDNAをキャリァーD
    NAとして過剰に形質転換溶液に更に加える特許請求の範
    囲第(1)項記載の方法。 7.キャリァーDNAの濃度が50乃至70μg/mlである特許
    請求の範囲第(6)項記載の方法。 8.プロトプラストの前培養を20分乃至1時間にわたっ
    て行う特許請求の範囲第(1)項記載の方法。 9.Ca2+の存在下または非存在下で0.1乃至60mM Mg2+
    オンを必須成分として含む実際の形質転換培地において
    原形質膜変性剤の存在下に10分乃至6時間、プロトプラ
    ストとDNAをいっしょにインキュベイションを行う特許
    請求の範囲第(1)項記載の方法。 10.使用する形質転換遺伝子が、その構造遺伝子部分
    が植物、動物、微生物、ウイルスまたは合成起源であ
    り、発現信号が植物、動物または合成起源である遺伝子
    である特許請求の範囲第(1)項記載の方法。 11.形質転換遺伝子がゲノムDNA,cDNAまたは合成DN
    A、またはゲノムDNAおよびcCNAおよび/または合成DNA
    の両者からなる特許請求の範囲第(10)項記載の方法。 12.形質転換遺伝子が異なった属に属するいくつかの
    生物起源の遺伝子フラグメントからなる特許請求の範囲
    第(10)項記載の方法。 13.形質転換遺伝子が同じ生物のひとつ以上の株、変
    種または種起源の遺伝子フラグメントからなる特許請求
    の範囲第(10)項記載の方法。 14.形質転換遺伝子が同じ生物起源のひとつ以上の遺
    伝子の部分からなる特許請求の範囲第(10)項記載の方
    法。 15.形質転換遺伝子が形質転換された植物に有用で望
    ましい性質を付与する構造遺伝子を持つ特許請求の範囲
    第(10)項記載の方法。 16.構造遺伝子は、 (a)植物に、病原体、除草剤、殺虫剤および他の殺生
    物剤に対する高められた抵抗性または耐性を付与する
    か、 (b)葉、種子、塊茎、根および茎において保存および
    貯蔵される物質の形成および品質を改良するか、または (c)薬学的に受け入れられる活性物質をコードしてい
    る特許請求の範囲第(15)項記載の方法。 17.発現信号が植物または植物ウイルスの遺伝子起源
    である特許請求の範囲第(10)項記載の方法。 18.発現信号がリブロースビスホスフェートカルボキ
    シラーゼまたはクロロフィルa/b結合タンパク質の小さ
    なサブユニットをコードしている植物遺伝子起源である
    特許請求の範囲第(10)項記載の方法。 19.発現信号が植物ウイルスの遺伝子起源である特許
    請求の範囲第(10)項記載の方法。 20.植物ウイルスがカリフラワー モザイク ウイル
    ス(CaMV)である特許請求の範囲第(19)項記載の方
    法。 21.発現信号が、CaMVゲノムの35S発現信号であるか
    またはCaMVゲノムの19S発現信号である特許請求の範囲
    第(19)項記載の方法。 22.使用する植物プロトプラストが単一の種または種
    の下部に置かれる分類学的単位からのものである特許請
    求の範囲第(1)項記載の方法。 23.前記プロトプラストは葉、幼苗、茎、花、根、花
    粉または胚、または細胞培養から得る特許請求の範囲第
    (22)項記載の方法。 24.プロトプラストが、ソラナシエ、クルシフェレ、
    コンポジテ、リリアシエ、ビタシエ、ケノポディアシ
    エ、ルタシエ、アリアシエ、アマリリダシエ、アスパラ
    ガシエ、オルキダシエ、パルメ、ブロメリアシエ、ルビ
    アシエ、テアシエ、ムサシエまたはグラミネエ科または
    レグミノセ目の植物からのものである特許請求の範囲第
    (1)項記載の方法。 25.プロトプラストがソラナシエ、クリシフェレおよ
    びグラミネエ科のものである特許請求の範囲第(1)項
    記載の方法。 26.プロトプラストがトウモロコシ、コメ、コムギ、
    オオムギ、ライムギ、カラスムギまたはキビのものであ
    る特許請求の範囲第(1)項記載の方法。 27.プロトプラストがソラナム、ニコチアナ、ブラシ
    カ、ベタ、ピサム、ファゼオラス、グリシネ、ヘリアン
    タス、アリウム、アベナ、ホルデウム、オリゼ、セタリ
    ア、セカレ、ソルガム、トリティカム、デア、ムサ、コ
    コス、シドニア、ピラス、マラス、フェニクス、エレイ
    ス、ルバス、フラガリア、プルナス、アラキス、パニカ
    ム、サッカラム、コフェア、カメリア、アナナス、ビテ
    ィスまたはシトラス属のものである特許請求の範囲第
    (1)項記載の方法。 28.プロトプラストから再生することができる植物の
    形質転換のための特許請求の範囲第(1)項記載の方
    法。 29.形質転換の結果として得られた新しい遺伝子を持
    ち、それから得られる有利な性質を持つ、 植物プロトプラストをいかなるものでもよい植物組織か
    ら分離し、植物プロトプラストを培養するために通常使
    用される栄養培地のひとつで培養し; 実際の形質転換前に、前記プロトプラストを任意に、Ca
    2+,K+およびNa+イオンおよび適当な炭素源をも含む前培
    養培地で4℃乃至10℃の温度で、20分乃至6時間前培養
    し; 次いで該プロトプラストをこの前培養培地から分離し、
    Ca2+イオンの存在下または非存在下に0.1乃至60mM Mg2+
    イオンを必須成分として含む実際の形質転換培地に再懸
    濁し; その後すぐに、植物中で活発な発現信号の制御下のひと
    つ以上の遺伝子および支持DNAをも含むがアグロバクタ
    ーTiプラスミド(アグロバクテリウム癌腫誘発プラスミ
    ド)の配列を欠如しているDNA試料を、形質転換溶液に
    加え; 0.1乃至10分後、原形質膜変性剤を加え; プロトプラストとDNA試料を上記の形質転換溶液中で、D
    NAのプロトプラストへの取込みが十分である時間、イン
    キュベイションを行う、 植物遺伝型の形質転換法により得られる形質転換された
    プロトプラスト、 および、これらから得られる植物細胞および細胞凝集
    物。
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