JP3025346B2 - ヘパリンカルシウムの製造方法 - Google Patents

ヘパリンカルシウムの製造方法

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JP3025346B2 JP3187309A JP18730991A JP3025346B2 JP 3025346 B2 JP3025346 B2 JP 3025346B2 JP 3187309 A JP3187309 A JP 3187309A JP 18730991 A JP18730991 A JP 18730991A JP 3025346 B2 JP3025346 B2 JP 3025346B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヘパリンのカルシウム
塩またはそのフラクションまたはフラグメントの製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】カルシウム塩とヘパリンナトリウムとの
静的透析は大変遅いので工業的には適用できない方法で
ある。血液透析型装置の使用はアメリカ特許第4,40
9,103号に記載されている。陽イオン交換樹脂の使
用は、急速に自己加水分解をするため極端に不安定なヘ
パリン酸の形でのヘパリンの使用を必要とする点で不利
である(アメリカ特許第4,168,377号)。カルシ
ウム塩溶液を使用する透析濾過はアメリカ特許第4,4
09,103号に記載されている。それは限外濾過膜を
使用している(非イオン交換膜)。塩は圧力勾配の作用
下膜を通過する水流により運ばれる。ヘパリンは、濾過
作用を通して維持することができ、その大きさは膜の孔
より大きい。この方法の不利は、充分速く行なうために
は、使用する膜が高い水透析率を有し、それ故(孔径
が)大きくなり膜を通ってヘパリンが失われてしまうこ
とである。
【0003】様々なヘパリンおよびコンドロイチン硫酸
塩の溶解性についての研究で、これらの生成物がパーチ
メント膜を使用して電気透析された(イー・ジョープ
ス、バイオケミカル・ジャーナル(Biochem.J.)、第2
9巻、第1817−1830頁(1935年))。検定
の方法は十分に正確ではないが、著者は電気透析前後の
活性損失を検出しなかった。それにもかかわらず、陽極
部で失なわれた初期活性を1%発見した。さらに、イー
・ジョープスにより記載された方法は酸の不安定形での
ヘパリンの使用を必要としている。日本特許公開第01
−149801号(ケミカル・アブストラクツ(Chemic
alAbstracts)、第112巻、22607m)は、修飾
セルロースエーテル、特にカルボキシメチルセルロース
塩の製造方法を記載し、それによるとナトリウム塩がイ
オン交換膜または限外濾過膜を通って電気透析に付さ
れ、酸形を得、得られた酸は所望の塩を得るために、陽
イオン水酸化物または陽イオンの塩で処置することが記
載されている。本方法は酸形の使用を必要とし、ヘパリ
ンナトリウムに適用する場合は、酸形でのヘパリンの低
下による損失を含む。
【0004】EDTAのようなキレート剤で複合体を形
成し、その後得られた複合体を電気透析(パテント・ア
ブストラクツ・オブ・ジャパン(PatentAbstracts of J
apan)、第13巻、第286頁(c−613)、第36
34頁、1989年6月29日、日本特許第10804
08号)に付すことにより様々な金属イオン、特にナト
リウム、カリウムまたは鉄(第二鉄)イオンを溶液から
分離することができることは知られている。電気透析
は、低分子量の様々な無機塩、特に亜硫酸カルシウムか
らの硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムまたは硫酸マグ
ネシウムを含む溶液の連続製造に利用されてきた(アメ
リカ特許第4,009,088号)。
【0005】
【発明の構成】通常の電気透析装置中に陰イオン透過性
膜(APM)および陽イオン透過性膜(CPM)を交互
配列したもので、これらの膜は2つの隣接する膜間の液
体の循環が可能なように配置されたものを使用し、ヘパ
リンのナトリウム塩またはヘパリンフラグメントまたは
フラクションの溶液およびイオン交換に使用するカルシ
ウム塩の溶液を循環させることにより、相当するカルシ
ウム塩が酸形でのヘパリンの使用を必要としないで直接
得られることを見い出した。反応は実質的に定量的であ
り、初期のヘパリン(またはそのフラクションまたはフ
ラグメント)が以下に定義されるような塩の溶液および
電極リンス溶液中で0.1%未満しか検出されないこと
も見い出した。それ故、本発明は、ヘパリンのナトリウ
ム塩またはそのフラクションまたはフラグメントの溶液
および水溶性カルシウム塩の溶液を、液体循環が可能な
ように交互に配列した陰イオン透過性膜および陽イオン
透過性膜を含む電気透析装置を通って循環させることを
特徴とする、ヘパリンのカルシウム塩またはそのフラク
ションまたはフラグメントの製造方法に関する。出発物
として、分画化または解重合により得られたヘパリンナ
トリウムまたはそのフラクションの1つ(特に、CY2
16の名で知られており、アメリカ特許第4,686,2
88号に記載されているナドロパリン)のナトリウム形
を使用するのが好ましい。後者の場合、本発明の方法
は、ナドロパリンの分子量が約2,000−約8,000
ダルトンで、そのピークが約4,500ダルトンであ
り、ヘパリンよりも実質的に小さいため、特に有利であ
る。限外濾過または透析方法中のNa−Ca交換での損
失は大きい。
【0006】例えばナドロパリンナトリウムのようなヘ
パリンナトリウムまたはヘパリンフラグメントは出発物
として使用することができ、精製するかまたは最終精製
に付さないで、所望により少量のエタノール、硫酸ナト
リウムまたは塩化ナトリウムを含むことができる。比較
試験では、出発物中少量存在する上記物質は本発明の方
法により得られるヘパリンカルシウムまたはカルシウム
塩形のヘパリンのフラグメントの品質(純度)に影響を
与えるものではないことが判明した。全てのこれらの出
発物は以下、「ヘパリン類」と称し、それに対して最終
生成物を「ヘパリンカルシウム」と称する。カルシウム
の水溶性塩は塩化物を使用するのが好ましい。本発明の
方法は特に通常の電気透析装置中に設けた陰イオン透過
性膜(APM)および陽イオン透過性膜(CPM)の使
用を含む。これらのイオン交換膜は2つの隣接する膜間
に液体を循環することが可能なように交互に配置され
る。本方法は膜の配列を通ってヘパリンまたはそのフラ
クションまたはフラグメントの1種のナトリウム塩を含
む溶液およびナトリウムと交換することができるカルシ
ウム陽イオンを含む水溶性塩(CaCl2)を循環させ
ることからなる。
【0007】膜は、分子量が約500ダルトン未満を有
する分子だけが通過できるような透過性を有するのが好
ましい。例示として、アサヒグラス(ASAHI GLASS)
(商標)AMV/CSV膜またはネオ−セプタ(Neo-Se
pta)(商標)CM1およびAM1膜(トカヤマ・ソー
ダ(Tokayama Soda)製造)を挙げることができるが、
これらに限定されるものではない。
【0008】本発明による製造を、添付の図面を用いて
説明すると次の通りである。これらの図面で、図1は、
本発明による方法での電気透析装置の機能を図式的に示
したものである。図2は、ヘパリン酸カルシウム塩(ヘ
パリンカルシウム)を製造する場合の電気透析装置のイ
オンの遊走を図式的に示したものである。電気透析装置
E(図1)に、ヘパリンナトリウム(Hn-,nNa+)お
よび例えば塩化カルシウムのような水溶性カルシウム塩
を含む溶液1(以下、「物質溶液」と称する)を導入し
かつ循環させる。溶液2(以下、「ブライン」と称す
る)を循環させるが、これは、当初は伝導率を確保する
ために塩(例えばCaCl2)を少量のみ含み、続いて
塩(例えばNaClおよびCaCl2)を濃厚にし、カ
ルシウムの水溶性塩(例えばCaCl2)を物質溶液1
に添加して、電気透析中に置きかえられる。電気透析装
置Eはセルの組合わせを含み、それぞれはAPMおよび
CPMからなる。使用する膜Mの数は30−60であ
り、40−50が好ましく、それは約500ダルトン未
満の分子を通過させる。電極は例えばHCl(0.5
%)またはKCl(1%)溶液で常法によりリンスす
る。物質溶液1は2つのコンパートメントの一方で循環
し、それに対してブライン2は他方のコンパートメント
で循環する(図2参照)。
【0009】膜に直角である連続電気電場の作用の下で
(V源により連続供給される)、−NaイオンはCMP
類を通り陰極に向かい、その中でAPMと遭遇するため
隣接したブライン区画にとじ込められる。−Na+で交
換されるべきイオン、この場合Ca2+は、CPM類を通
り陰極に向かい、それらの遊走がAPMとの遭遇で遮断
されるためブライン区画にとじ込められる。−ナトリウ
ムに代えるために加えたカルシウム塩の陰イオンはAM
P類を通り陰極に向かい、その中でCPM類に遭遇する
ためにブライン区画にとじ込められる。−ヘパリンイオ
ン(Hn-)はAMP類に向かって遊走するが、それらの
分子量が高いのでそれらを通ることができない。電気透
析膜は実際には約500未満の分子量の化学種しか透過
しない。それ故、ヘパリンイオンは物質溶液1に残る。
過剰のナトリウム陽イオンおよびカルシウム陽イオンが
ナトリウムに代わるために使用される陰イオンの塩形、
好ましくは塩化物の形で、ブラインに移送されるので、
所望の陽イオン、この場合はカルシウムを、ナトリウム
に完全に置き代わるために物質溶液に加える。その後は
生成物回路を排液することにより物質溶液を回収し、ヘ
パリンまたはそのフラクションの1つのカルシウム塩を
沈殿させるためにこの溶液にエタノール(または別のヘ
パリン沈殿剤)を加えることで充分である。
【0010】電極に適用される電位は、2−38ボルト
/cm、好ましくは5−30ボルト/cmの範囲である
ことができる。本方法は0−80℃、好ましくは室温で
行われる。本発明の方法は非常に簡単な方法で、大変速
く、0.1%未満の含量のナトリウムしか含まない非常
に純粋なカルシウム塩を生成し、生物学的活性上で大変
良い収率をもたらす。さらに、脱塩方法である簡単な電
気透析に比較して、本発明の方法は陰イオン巨大分子上
の陽イオンの直接交換をもたらす。さらに、巨大陰イオ
ンは電気透析膜を汚すことが知られている。驚くべきこ
とに、2つの試験間で水で簡単にリンスした後、開始時
に予測されるような膜の性能の減少は、観察されなかっ
た。
【0011】既知方法に比較して、本発明の方法は特に −限外濾過または透析に較べて、本発明の方法は、スピ
ードおよび無損失の結合が得られ、2種の上記記載方法
では調和がむつかしかった −連続沈殿に較べて、処理の時間、操作の数および沈殿
剤の消費はかなり減少される 点で著しく改良される。以下、本発明の実施例を示す。
これらの実施例に使用される原料は、次のとおりであ
る。 −SRTI電気透析装置モデルP1 −アサヒグラスAMV/CSV膜(69cm2に2セ
ル)(セルは1種のAPMおよび1種のCPMからな
る)。電気透析装置は総数41個の膜から構成される。
操作条件は次のとおりである。 −電極に適用される電位:実施例1では25ボルト、実
施例2では30ボルト −温度:室温
【0012】実施例1:ヘパリンカルシウムの製造 不純物存在下での製造例A ヘパリンナトリウム115g(またはヨーロッパ薬局方
(European Pharmacopoeia)、1990版、第333
頁、ヘパリンナトリウムモノグラフ−検定:V.2.2.
6.による20.6×106ユニット)を水900gに溶
解した。エタノール15g、Na2SO41.2gおよび
NaCl170mgを加えた。この溶液を電気透析に付
し、イオンを徐々に次の初期組成:CaCl2:5g/
2O:1kgのブラインに移した。装置の電極を連続
再循環する1%KCl1.2リットルでリンスした。C
aCl2の38.5%溶液100gを生成物に0、30お
よび90分に加えた。塩が豊富になったブラインを30
および90分に0.5%CaCl21kgで置き換えた。
150分後、生成溶液を排液により回収した。ヘパリン
をその後エタノールで沈殿させ、粉砕し、アルコールで
洗浄し、その後真空下オーブンで乾燥させた。次の特性
をもつ粉末生成物120gが回収された。 −生物学的活性:20.6×106ユニット(収率100
%) −ナトリウム含量:0.03% −カルシウム含量:9.2% 出発ヘパリンの僅か0.6%がトルイジンブルー検定に
よりブラインおよび電極リンス溶液で検出した(J.P.
ダクロス、ヘパリン(HEPARIN)、マッソン著、第28
5頁)。このことはヘパリンがほとんど膜不透過性であ
ることを示す。
【0013】純ヘパリンナトリウムを使用した製造例B ヘパリンナトリウム115g(またはヨーロピッパ薬局
方(EuropeanPharmacopoeia)、1990版、第333
頁、ヘパリンナトリウムモノグラフ−検定:V.2.2.
6.による20.6×106ユニット)を水900gに溶
解した。この溶液を電気透析に付し、イオンを徐々に次
の初期組成:CaCl2:5g/H2O:1kgのブライ
ンに移した。装置の電極を連続再循環する1%KCl
1.2リットルでリンスした。CaCl2の38.5%溶
液100gを生成物に0、30および90分に加えた。
塩が豊富になったブラインを30および90分に0.5
%CaCl21kgで置き換えた。150分後、生成溶
液を排液により回収した。ヘパリンをエタノールで沈殿
させ、粉砕し、アルコールで洗浄し、その後真空下オー
ブンで乾燥させた。次の特性をもつ粉末生成物120g
を回収した。 −生物学的活性:20.6×106ユニット(収率100
%) −ナトリウム含量:0.03% −カルシウム含量:9.2%
【0014】実施例2:ナドロパリンのカルシウム塩の
製造 アメリカ特許第4,686,288号に記載されたように
得られたナドロパリン220g(またはパトロジー・エ
・ビオロジー(Path.Biol.)、第36巻、第335−3
37頁(1988年)による62.0×106アンチ−X
aユニット)を水1860gに溶解した。この溶液を2
等分して、各々を電気透析に付し(装置は1回あたり1
リットルを処理することができる)、イオンを徐々に次
の初期組成:CaCl2:5g/H2O:1kgのブライ
ンに移した。装置の電極を連続再循環する0.5%HC
l 1.2リットルでリンスした。CaCl2の38.3%
溶液100gを1回目の仕込みに0、26および47分
に加え、2回目の仕込みの電気透析で0、37および7
7分に加えた。ブラインはCaCl2を溶液にそれぞれ
添加する際0.5%CaCl21リットルで置き換え
た。溶液のpHはCa(OH)2の添加により6および
7に維持した。第1電気透析で83分後および第2電気
透析で127分後、生成物を生成物回路の排液および蒸
留水でリンスすることにより回収した。ナドロパリンカ
ルシウムをエタノールで沈殿させ、粉砕し、真空下オー
ブンで乾燥した。次の特性をもつ粉末生成物220gが
回収された。 −生物学的活性:62.7×106アンチ−Xaユニット
(収率およそ100%) −ナトリウム含量:0.08% −カルシウム含量:9.8% 膜を通り損失するナドロパリンの量は0.01%未満で
あることがエタノール沈殿法により計測された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法による電気透析を示す工程図で
ある。
【図2】 カルシウムヘパリン塩(ヘパリンカルシウ
ム)を製造する場合の電気透析におけるイオン遊走を示
す工程図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ジャン−フランソワ・ブラネレク フランス76130モン・サン・テニャン、 リュ・ドゥ・ラ・ソーヌ7番 (72)発明者 クロード・ラングロワ フランス92120モンルージュ、アブニュ ー・ドゥ・ベルダン36番 (72)発明者 フィリップ・コルネ フランス94370ノワゾー、リュ・モーリ ス・ラベル16番 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08B 37/10

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヘパリンのナトリウム塩またはそのフラ
    クションまたはフラグメントの溶液および水溶性カルシ
    ウム塩の溶液を、液体循環が可能なように交互に配列し
    た陰イオン透過性膜および陽イオン透過性膜を含む電気
    透析装置を通って循環させることを特徴とする、ヘパリ
    ンのカルシウム塩またはそのフラクションまたはフラグ
    メントの製造方法。
  2. 【請求項2】 電気透析が2−38ボルト/cmの電位
    で行われる、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 電気透析が5−30ボルト/cmの電位
    で行われる、請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 使用する膜が約500ダルトン未満の分
    子量を有する分子だけを通過させる、請求項1−3の何
    れか1項記載の方法。
  5. 【請求項5】 カルシウム塩として塩化物が使用され
    る、請求項1−4の何れか1項記載の方法。
  6. 【請求項6】 電気透析が0−80℃の温度で行われ
    る、請求項1−5の何れか1項記載の方法。
  7. 【請求項7】 電気透析が室温で行われる、請求項6記
    載の方法。
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