JP2000093754A - アルドン酸塩の分離方法 - Google Patents

アルドン酸塩の分離方法

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JP2000093754A
JP2000093754A JP10266906A JP26690698A JP2000093754A JP 2000093754 A JP2000093754 A JP 2000093754A JP 10266906 A JP10266906 A JP 10266906A JP 26690698 A JP26690698 A JP 26690698A JP 2000093754 A JP2000093754 A JP 2000093754A
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anion exchange
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Minoru Nagao
稔 長尾
Susumu Toda
進 戸田
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Fujisawa Pharmaceutical Co Ltd
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Fujisawa Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 仲介剤を用い、糖を電気酸化してアルドン酸
塩を製造するに当たり、反応混合物から原料の還元性の
ある二糖以上の糖および仲介剤を回収しつつ所望のアル
ドン酸塩を効率良く分離することのできる方法を提供す
る。 【解決手段】 仲介剤を用い、還元性のある二糖以上の
糖を電気酸化してアルドン酸塩を製造し、反応混合物を
カチオン交換膜及びアニオン交換膜を用いる電気透析に
付してアルドン酸塩を分離するに当たり、該アニオン交
換膜として分画分子量の異なる2種類のイオン交換膜を
用い、分画分子量の小さいアニオン交換膜を介して前記
仲介剤のアニオン成分を分離すると共に、分画分子量の
大きいアニオン交換膜を介してアルドン酸塩を分離する
方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アルドン酸塩の
分離方法に関する。詳細には、仲介剤を用い、糖を電気
酸化してアルドン酸塩を製造するに当たり、反応混合物
から原料の「還元性のある二糖以上の糖」および仲介剤
を回収しつつアルドン酸塩を効率良く分離することので
きる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルドン酸(塩)を得るに当たっては、
臭化カルシウムや臭化ナトリウム等の仲介剤を用い、糖
類を電気酸化する方法が知られている。上記電気酸化法
において、反応槽や電極等を制御する改良方法は種々提
案されているが、いずれもバッチ式の製造方法であり、
アルドン酸塩の反応過程で生成する副生成物、仲介剤、
未反応の糖等を除去してアルドン酸塩を精製する為には
別途精製分離工程を設けることが必要であり、生産効率
の低下が指摘されていた。
【0003】一方、アルドン酸塩の精製に関しては、そ
の種類によって精製が極めて困難な場合がある。例え
ば、ブドウ糖を電気酸化して得られるグルコン酸カルシ
ウム等の如く水に対する溶解性が低く結晶性が良いもの
は晶析若しくは再結晶により容易に精製することが可能
であるが、水飴等のデンプン加水分解物やラクトース等
の還元性二糖類を電気酸化して得られるアルドン酸塩は
一般に結晶性が悪く、例えばラクトースを電気酸化して
得られるラクドビオン酸塩の如く水に対する溶解性が高
いものは、晶析若しくは再結晶により精製することが極
めて困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明は上記事情に
着目してなされたものであり、その目的は、仲介剤を用
い、糖を電気酸化してアルドン酸塩を製造するに当た
り、反応混合物から原料の「還元性のある二糖以上の
糖」および仲介剤を回収しつつ所望のアルドン酸塩を効
率良く分離することのできる方法を提供することにあ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し得たこ
の発明に係るアルドン酸塩の分離方法とは、(1)仲介
剤を用い、還元性のある二糖以上の糖を電気酸化してア
ルドン酸塩を製造し、反応混合物をカチオン交換膜及び
アニオン交換膜を用いる電気透析に付してアルドン酸塩
を分離するに当たり、( 2) 分画分子量の小さいアニオ
ン交換膜を介して前記仲介剤のアニオン成分を分離する
と共に、( 3) 分画分子量の大きいアニオン交換膜を介
して前記アルドン酸のアニオン成分を分離するところに
要旨を有するものである。
【0006】具体的には、原料の「還元性のある二糖以
上の糖」として、乳糖またはデンプン加水分解物を用い
ることが好ましく、とりわけ、乳糖を電気酸化してラク
トビオン酸を製造するに当たり、所望のラクトビオン酸
を効率よく分離するのに極めて有効である。
【0007】尚、この発明におけるアルドン酸とは、ア
ルドース中のアルデヒド基が酸化されてカルボキシル基
に変化した化合物の総称であって、二糖以上の糖由来の
ものを意味する。
【0008】
【発明の実施の形態】この発明者らは、電気酸化法によ
って所望のアルドン酸塩を製造するに当たり、反応混合
物から、不純物たる副生成物、原料の糖類および仲介剤
を効率よく除去してアルドン酸塩を分離することのでき
る方法について鋭意検討した。その結果、原料として還
元性のある二糖以上の糖類を用い、分画分子量の異なる
2種類のアニオン交換膜を使用すれば、反応混合物から
未反応の還元性のある二糖以上の糖および仲介剤を夫
々、別々に分離・除去することが可能であること;更
に、除去したこれら化合物を再度電気酸化に供すれば、
電気酸化法によるアルドン酸塩の製造→電気透析による
該アルドン酸塩の精製といった一連の工程を連続して行
うことが可能であることを見出し、この発明を完成した
のである。
【0009】前述した通り、仲介剤を用い、糖類を電気
酸化して所望のアルドン酸塩を製造する方法は公知であ
り、一方、得られたアルドン酸塩を電気透析により精製
分離することも周知であり、電気透析を応用したイオン
交換膜製塩法が汎用されている。例えば従来の電気透析
法として、例えばドイツ特許公報第2130994号お
よび特開平9−183738号が挙げられる。このうち
前者は透析時の電流密度を制御する方法であり、後者は
透析時の電圧を制御する方法であって、この発明の如く
アニオン交換膜の分画分子量に着目したものではない。
即ち、上記従来法には、この発明の如く、分画分子量の
異なるアニオン交換膜を使用することにより原料の還元
性のある二糖以上の糖および仲介剤を回収しつつ目的物
たるアルドン酸塩を生産性良く分離しようという構成お
よび技術的思想は示唆すらされておらず、イオン交換膜
の分画分子量に着目した上記構成はこの発明者らによっ
て始めて見出された知見であり、新規である。
【0010】更にこの発明者らが実験を重ねたところ、
分画分子量の異なる2種類のアニオン交換膜を用い、分
子量の小さい仲介剤アニオン成分を、該成分に比べて分
子量の大きいアルドン酸のアニオン成分と分離しようと
した場合、理論的には分子量の差によって分離可能なも
のであっても、現実には分離できない例もあることが明
らかになった。
【0011】例えば、現在市販品として入手可能なイオ
ン交換膜のうち最小の分画分画分子量を有するアニオン
交換膜(分画分子量=100)を用い、ブドウ糖(分子
量=180)を酸化して得られる単糖のグルコン酸アニ
オン(分子量195)と仲介剤[例えば臭化ナトリウム
を用いた場合における臭素イオン(分子量=80)]と
を分離しようとした場合、理論的には分離可能なはずで
ある。ところが、後記する比較例に示す通り、電気透析
の結果、グルコン酸アニオンは分画分子量100のアニオ
ン交換膜を通過してしまい、うまく分離できないことが
分かった。
【0012】この予想外の知見につき、更に鋭意検討を
重ねた結果、原料として還元単糖を電気酸化して得られ
るアルドン酸塩の場合は、分画分子量の異なるアニオン
交換膜を用いて電気透析したとしても、該アルドン酸塩
と仲介剤とを選択性良く分離することは困難であること
が明らかになった。これに対し、原料として還元性単糖
ではなく二糖以上の還元性のある二糖以上の糖を電気酸
化して得られるアルドン酸塩の場合は、分画分子量の異
なるアニオン交換膜を使用することにより、分画分子量
に応じてアルドン酸塩および仲介剤を効率よく分離する
ことが可能であることが分かり、この発明を完成したの
である。以下、この発明に係るアルドン酸塩の分離法に
つき、工程順に詳述する。
【0013】まず、この発明法では、仲介剤を用い、還
元性のある二糖以上の糖を電気酸化してアルドン酸塩を
製造する。図1に、電気酸化に用いられる装置(電気酸
化装置)の一態様の概略図を示し、以下、同図を用いて
電気酸化工程を説明する。
【0014】上記電気酸化槽には、直流電源、電極、p
Hセンサー、pHコントローラおよび中和剤投入装置が
設置されている。このうちpHコントローラは中和剤投
入装置に連動しており、所定のpHを維持することがで
きる様、中和剤投入装置を制御している。この装置で
は、仲介剤を介して還元性のある二糖以上の糖が電気酸
化され、アルドン酸塩が生成されるが、使用する直流電
源、電極、pHセンサー、pHコントローラ及び中和剤
投入装置の形状、材質等については特に限定されず、通
常使用されるものを適宜選択して使用することができ
る。また、電極の枚数や電極の間隔についても特に限定
されない。
【0015】前述した通り、仲介剤を用いた電気酸化法
により糖を電気酸化してアルドン酸塩を得る方法は公知
である。但し、この発明では、原料として、還元末端を
有する二糖以上の多糖類を用いることが必要である。還
元性のある二糖以上の糖ではなくブドウ糖等の還元性単
糖を用いた場合は、所望のグルコン酸と、未反応のブド
ウ糖及び仲介剤とを選択性良く分離することは、たとえ
この発明法を採用したとしても困難であるからである。
その理由は詳細には不明であるが、以下の様に考えられ
る。即ち、アニオン交換膜を含むイオン交換膜には微細
な細孔が無数に存在し、理論的には、この細孔の大きさ
によって分画分子量が決定されるはずであるが、この細
孔の大きさは不揃いである為、分画分子量と称されるも
のはあくまでも平均的な数値に過ぎず、実際の数値とは
必ずしも一致しない。また、イオン交換膜の分画分子量
は、モデル化合物の分子量から導かれるものであり、モ
デル化合物が変わり、その分子のとり得る立体構造如何
によっては、イオン交換膜の分画分子量と必ずしも一致
しないのが実情である。これらの理由に基づき、この発
明では、原料の糖を還元性のある二糖以上の糖に特定し
た次第である。
【0016】上記還元性のある二糖以上の糖としては特
に限定されず、水飴などのデンプン加水分解物や乳糖等
を使用することができる。
【0017】この様に上記の電気酸化工程では、原料と
して還元性のある二糖以上の糖を用いるところにポイン
トがあり、その他の要件は特に限定されず、通常使用さ
れる電気酸化法の条件を適宜選択して適用することがで
きる。
【0018】例えば上記仲介剤としては、通常の電気酸
化法に用いられるものであれば特に限定されず、アルカ
リ金属のハロゲン化物[塩化ナトリウム、塩化カリウム
等の塩化物;臭化ナトリウム、臭化カリウム等の臭化
物;ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のヨウ化物
等];アルカリ土類金属のハロゲン化物[塩化カルシウ
ム、塩化マグネシウム等の塩化物;臭化カルシウム、臭
化マグネシウム等の臭化物;ヨウ化カルシウム、ヨウ化
マグネシウム等のヨウ化物等]等を使用することができ
る。
【0019】また、電気酸化によって得られるアルドン
酸を中和してアルドン酸塩にする為、中和剤を使用する
が、この中和剤も特に限定されず、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、
炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等
のアルカリを、固体若しくは液体の任意の形状で使用す
ることができる。
【0020】次に、上記電気酸化によって得られた反応
混合物からアルドン酸塩を分離する為、カチオン交換膜
及びアニオン交換膜を用いて電気透析するが、この発明
では、アニオン交換膜として分画分子量の異なる2種類
のイオン交換膜を用いるところに最重要ポイントがあ
る。即ち、分画分子量の小さいアニオン交換膜を介して
仲介剤のアニオン成分を分離すると共に、分画分子量の
大きいアニオン交換膜を介してアルドン酸のアニオン成
分を分離しようというものであり、この様な2種類のア
ニオン交換膜を使用することにより、反応混合物中から
所望のアルドン酸塩を選択的に収率良く分離することが
できるのである。
【0021】この発明に用いられる2種類のアニオン交
換膜のうち「分画分子量の小さいアニオン交換膜」と
は、要するに、反応混合物中から、電気酸化に用いた仲
介剤のアニオン成分のみを通過することができ、アルド
ン酸のアニオン成分は通過することができない程度の分
画分子量を有するものであれば良く、通常、100〜3
00程度の分画分子量を有するものを使用することがで
きる。具体的には、使用する原料の還元性のある二糖以
上の糖の種類等によっても適宜変化するが、例えば原料
として乳糖を使用するときは、概ね、分画分子量約10
0程度のアニオン交換膜を使用することが推奨される。
【0022】また、「分画分子量の大きいアニオン交換
膜」とは、要するに、反応混合物中から、所望のアルド
ン酸のアニオン成分が通過し得る程度の分画分子量を有
するものであれば良く、通常、300〜1000程度の
分画分子量を有するものを使用することができる。具体
的には、使用する原料の還元性のある二糖以上の糖の種
類等によっても適宜変化するが、例えば乳糖を電気酸化
して得られるラクトビオン酸を分離するときは、概ね、
分画分子量約400程度のアニオン交換膜を使用するこ
とが推奨される。
【0023】この様に、この発明では電気透析に用いる
イオン交換膜のうち、アニオン交換膜の分画分子量を制
御したところに特徴があるのであり、一方のカチオン交
換膜については特に限定されない。従って、電気透析に
用いられる通常のカチオン交換膜を使用すれば良く、例
えば分画分子量約100〜1000のものを利用するこ
とが可能である。
【0024】以下、この発明法を一層明らかにする為、
図2に、この発明法を実施する為のアルドン酸塩の製造
・分離装置を示し、同図を用いて詳細に説明する。
【0025】上述した通り、この発明では、電気酸化に
より還元性のある二糖以上の糖からアルドン酸塩を製造
した後、反応液を随時取出し、分画分子量の異なるアニ
オン交換膜を用いた電気透析を2回行うことにより、反
応混合物中から仲介剤および所望のアルドン酸塩を分離
すると共に、更には、原料である還元性のある二糖以上
の糖を回収しようというものであり、これにより、「電
気酸化によるアルドン酸塩の製造→電気透析によるアル
ドン酸塩の精製」といった一連の工程を連続的に効率よ
く実施しようというものである。
【0026】図2の装置は、電気酸化を行う酸化槽と、
電気透析を行う透析装置とから構成されている。詳細に
は、酸化槽の次にアニオン交換膜A1を用いた透析装置
を、該透析装置の次にアニオン交換膜A2を用いた透析装
置を夫々設置している。ここで、A1は分画分子量の大き
いアニオン交換膜を、A2は分画分子量の小さいアニオン
交換膜を夫々表し、Cはカチオン交換膜を表す。尚、上
記図2の装置は、この発明を実施する為の一態様に過ぎ
ず、決してこれに限定する趣旨ではなく、例えば図3に
示す装置(酸化槽の次にアニオン交換膜A2を用いた透析
装置を、該透析装置の次にアニオン交換膜A1を用いた透
析装置を夫々設置した例)、図4に示す装置(酸化槽の
次に透析装置が設置された例であって、該透析装置に
は、アニオン交換膜A1とアニオン交換膜A2が、「C(カ
チオン交換膜)−A1−C」及び「C−A2−C」の順序で
組合わされた装置)等を採用することができる。
【0027】上記図2において電気透析装置は、電極の
間にイオン交換膜を挟んだ形状を有しており、各イオン
交換膜間はセルを構成している。各電極は電極液に浸さ
れており、この電極液は両方の電極セル間をポンプによ
り循環している。電極間には直流電圧が印加されてい
る。
【0028】上記電気透析装置の中で行われる反応工程
を簡便に説明する為、便宜上、原料の還元性のある二糖
以上の糖をSG,仲介剤を[ M+]・[X-],アルドン酸塩
を[SA-]・[ M+]で表すことにする。
【0029】まず、仲介剤のアニオン成分[ X-]は、い
ずれのアニオン交換膜(A1及びA2)をも通過する。一
方、アルドン酸塩のアニオン成分[SA-] は、分画分子量
の大きいアニオン交換膜A1のみ通過し、分画分子量の小
さいアニオン交換膜A2は通過することはできない。尚、
仲介剤およびアルドン酸塩のカチオン成分[M+ ]は、
カチオン交換膜C(分画分子量は特に限定されない)を
通過する。
【0030】従って、反応混合物中アニオン成分につい
て着目してみると、分画分子量の大きいアニオン交換膜
A1を有する電気透析装置では、アルドン酸塩のアニオン
成分[SA-] および仲介剤のアニオン成分[ X-]のいずれ
もが通過することができる。その際、反応液中に残った
未反応の原料糖SGを回収して酸化槽に再度導入すれば原
料の有効活用を図ることができ、収率が一層向上する。
【0031】この様にアニオン交換膜A1を通過したアル
ドン酸塩のアニオン成分[SA-] および仲介剤のアニオン
成分[ X-]は、分画分子量の小さいアニオン交換膜A2を
有する電気透析装置に導入されるが、当該装置では、分
子量の小さい仲介剤のアニオン成分[ X-]のみが該アニ
オン交換膜A2を通過し、アルドン酸塩のアニオン成分[S
A-] は反応液中に濃縮されることになる。この様にして
分離した仲介剤のアニオン成分[ X-]を、仲介剤の形で
回収して再度酸化槽に導入すれば、仲介剤の再利用化に
より反応効率が向上する。一方、反応液中に残ったアル
ドン酸塩のアニオン成分[SA-] は、アルドン酸塩の形で
回収し、所望のアルドン酸塩を選択的に効率よく分離す
ることが可能になるのである。
【0032】この様にして得られたアルドン酸塩は、イ
オン交換樹脂や電気透析式イオン交換装置により、容易
に遊離のアルドン酸に変換することができる。
【0033】上記の両電気透析装置におけるイオン交換
膜は、図2に示す如く、CAC (カチオン交換膜/アニオ
ン交換膜/カチオン交換膜)の組合わせを最小単位とす
るものである。但し、その構成は上記最小単位に限定さ
れず、このCAC 単位からなる組合わせを電極間に複数挟
んだ構成としても良く、実際には後者の使用が推奨され
る。
【0034】また、上記電気透析装置に用いる電極液
は、通常使用される無機電解質(例えば硫酸ナトリウ
ム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩
化ナトリウム、塩化カリウム等)を使用することができ
る。
【0035】但し、この発明では、電気透析装置の陽極
液として、原料である還元性のある二糖以上の糖及び仲
介剤を用いることが推奨される。電気透析の際には、電
極液中の電解質は容易に電気分解されないが、水は比較
的低電圧で分解される為、本来の目的ではない水の電気
分解も副反応的に同時に起こってしまうことから、従来
より消費電力の有効利用が切望されていた。上記方法
は、この様な要求特性に応え得るものであり、電気透析
装置の陽極液として、原料である上記糖及び仲介剤を用
いれば、水は分解することなく仲介剤のアニオンの酸化
が起こる為(例えば2[Br- ]→Br2 )、電気透析
に使用した電気を無駄に消費することなく、所望のアル
ドン酸塩を効率よく生成できるのである。
【0036】具体的には、電気透析装置に使用する電極
液を夫々、陽極液と陰極液に分け、このうち陽極液に
は、原料である還元性のある二糖以上の糖及び仲介剤の
水溶液を用いて電気透析すれば良い。一方、陰極液の種
類は特に限定されず、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、
硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化
カリウムなどの無機電解質を使用することができる。
【0037】尚、陽極液に用いられる糖は上記還元性の
ある二糖以上の糖に限定され、ブドウ糖等の還元性単糖
は使用できない。
【0038】上記構成からなる陽極液を利用した電気透
析装置は、前記電気酸化装置と並列して使用することも
可能であり、その場合は、電気酸化により得られる反応
液を電気透析用陽極液として利用することができる。
【0039】この陽極液を利用した電気透析法は、上記
アルドン酸塩の分離に適用される他、塩の製造分離に適
用することも可能である。図5に、上記陽極液を利用し
た製塩用電気透析装置の概略図を示す。
【0040】以下、実施例に基づいてこの発明を詳細に
述べる。ただし、下記実施例はこの発明を制限するもの
ではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施
することは全てこの発明の技術範囲に包含される。
【0041】
【実施例】実施例1:ラクドビオン酸ナトリウムの製造
・分離 (1) 乳糖の電気酸化 まず、カーボン電極(300mm ×100mm ×5mm )20枚を用
い、正極用、負極用として交互に5mm 間隔でブロック上
に固定した電極部分に、直流電源(三社電気製作所製
「HKE-8150-B」)を繋いだ。この電極と、pHセンサー
(日伸理化製「NPH-660 」)、中和剤投入用ローラーポ
ンプ(日伸理化製「NRP-75」)、及び循環用ポンプを接
地した酸化槽中に、乳糖一水和物(4.50kg)、臭化ナト
リウム(135g)及び水(18kg)を入れた後、ポンプを用
いて電極間に反応液を循環させながら、130 〜140Aで約
8 時間通電し、電気酸化した。その際、反応液は10N 水
酸化ナトリウム溶液(1.2L)を用いてpH8.0 〜9.5 の範
囲にコントロールすると共に、投込み型冷却装置(東京
理科器械製「ESC30 」)を用いて34〜40℃の温度に保持
した。上記電気酸化により所望のラクトビオン酸ナトリ
ウム粗生成物水溶液(22.5kg)を得た。該粗生成物につ
き、HPLCによる分析をした結果、各成分の含量は下記の
通りであった。 ラクトビオン酸ナトリウム 13.5% 乳糖(一水和物として) 2.8% 臭化ナトリウム 0.5%
【0042】(2) 臭化ナトリウムの除去 図6に、この実施例で使用した電気透析装置(旭化成工
業製「EX3 」)の概略図を示す。電極透析装置自体は、
電極の間にイオン交換膜を挟んだ形状を有しており、各
イオン交換膜間はセルを構成している。各電極は電極液
に浸されており、この電極液は両方の電極セル間をポン
プにより循環している。電極間には直流電圧が印加され
ている。尚、図中、Cはカチオン交換膜(分画分子量約
100)、A2はアニオン交換膜(分画分子量約10
0)、SGは原料の糖(この実施例では乳糖)、[SA-]
はアルドン酸アニオン(この実施例では、乳糖を電気酸
化して得られたラクトビオン酸アニオン)、[M+]はアル
ドン酸塩、仲介剤、電極液のカチオン成分(この実施例
ではナトリウムイオン)、[X-]は仲介剤のハロゲンイオ
ン(この実施例では臭素イオン)、[B-]は硝酸アニオン
を夫々表す。
【0043】上記電気透析装置及びイオン交換膜カート
リッジ[旭化成工業製「アシプレックスAC-110-550」/
カチオン交換膜C:スチレン・ジビニルベンゼン共重合物
のソジウムスルホン化物( 分画分子量100)、アニオン交
換膜A2: スチレン・ジビニルベンゼン・1-ビニル-2- メ
チルイミダゾール共重合物の四級化物( 分画分子量10
0)]を用い、上記ラクトビオン酸ナトリウム粗生成物の
水溶液(11.4kg)を定電圧(15V )で約10時間電気透析
することにより、臭化ナトリウムの除去されたラクトビ
オン酸ナトリウム水溶液(11.1kg)を得た。詳細には、
上記ラクトビオン酸ナトリウム粗生成物の水溶液の入っ
た供試液は、ポンプによりセル2に導かれ、該セル2を
循環している間に仲介剤[M+]・[X-] 中の[M+]はカチオン
交換膜Cを通過してセル1に、[X-]はアニオン交換膜A2
を通過してセル3に導かれる。この様にして仲介剤を分
離して回収する。
【0044】電気透析終了後、供試液を硝酸酸性にし、
硝酸銀水溶液を添加したが臭素イオンは検出されなかっ
た。HPLCによる分析の結果、ラクトビオン酸ナトリウム
水溶液中の臭化ナトリウム含量は0.01%であった。
【0045】(3) 乳糖の回収 図7に、この実施例で使用した電気透析装置(旭化成工
業製「EX3 」)の概略図を示す。この電極透析装置は、
図6で使用した分画分子量の小さいアニオン交換膜A2
(分画分子量約100 )を使用する代わりに、分画分子量
の大きいアニオン交換膜A1(分画分子量約1000)を使用
したこと以外は図6の装置と同じである。
【0046】上記電気透析装置(旭化成工業製「EX3
」)及びイオン交換膜カートリッジ[旭化成工業製
「アシプレックスAC-110-550」/カチオン交換膜C:スチ
レン・ジビニルベンゼン共重合物のソジウムスルホン化
物( 分画分子量100)、アニオン交換膜A1: スチレン・ジ
ビニルベンゼン・1-ビニル-2- メチルイミダゾール共重
合物の四級化物( 分画分子量1000) ]を用い、定電圧
(15V )で約28時間、未反応の乳糖を含むラクトビオン
酸ナトリウム水溶液(8.0kg )を電気透析することによ
り、乳糖を除去回収したラクトビオン酸ナトリウム水溶
液(5.5kg )を得ると共に、乳糖(固形分換算で120.0
g)を回収した。詳細には、上記ラクトビオン酸ナトリ
ウム水溶液の入った供試液は、ポンプによりセル2に導
かれ、該セル2を循環している間にアルドン酸塩[SA-]
[M+]中のアルドン酸アニオン[SA-] (この実施例では、
ラクトビオン酸アニオン)はアニオン交換膜A1を通過し
てセル3に、アルドン酸塩[SA-] [M+]中の[M+](この実
施例では、ナトリウムイオン)はカチオン交換膜Cを通
過してセル1に除かれる。この様にしてセル3からアル
ドン酸塩[SA-] [M+]が排出されるので、供試液中に乳糖
を残すことにより乳糖の回収を行いながら、アルドン酸
塩の純度及び濃度が高められることになる。
【0047】尚、HPLCによる分析の結果、電気透析前後
の各成分の含量は以下の通りであった。 透析前 ラクトビオン酸ナトリウム 13.9% (供試液) 乳糖(一水和物として) 2.8% 透析後 ラクトビオン酸ナトリウム 19.4% (セル3回収液) 乳糖(一水和物として) 1.8%
【0048】実施例2:オリゴ糖酸ナトリウムの製造・
分離 (1) 水飴の電気酸化 パインデックス#4 (松谷化学製「DE(ブドウ糖当量)
=19 ±2 」,平均5 量体)及びパインデックス#6 (松
谷化学製「DE=40 ±2 」,平均2.5 量体)を用いて電気
酸化した。尚、パインデックスとはデンプンを加水分解
したもの、即ち水飴を粉末化したものである。まず、パ
インデックス300gを水1.25L に溶解した後、10A の直流
にて、パインデックス#4 では2 時間、パインデックス
#6 では4 時間電気酸化した。
【0049】(2) 臭化ナトリウムの除去 電気透析装置(旭化成工業製「EX3 」)及びイオン交換
膜カートリッジ[旭化成工業製「アシプレックスAC-110
-550」/カチオン交換膜C:スチレン・ジビニルベンゼン
共重合物のソジウムスルホン化物( 分画分子量100)、ア
ニオン交換膜A2: スチレン・ジビニルベンゼン・1-ビニ
ル-2- メチルイミダゾール共重合物の4級化物( 分画分
子量100)]を用い、定電圧(15V )で80分間電気透析し
た。電気透析終了後、処理液を硝酸酸性にし、硝酸銀水
溶液を添加したが臭素イオンは検出されなかった。
【0050】比較例1:グルコン酸ナトリウム及び臭化
ナトリウムの混合液からの臭化ナトリウムの除去 供試液として、グルコン酸ナトリウム(10g )と臭化ナ
トリウム(1g)を水(100g)に溶解した混合液(グルコ
ン酸ナトリウム含量約12%)を用意し、この供試液10ml
に対し、塩回収液として水10mlを用い、電気透析装置
(旭化成工業製「S1」)及びイオン交換膜カートリッジ
[旭化成工業製「アシプレックスAC-110-20 」/カチオ
ン交換膜C:スチレン・ジビニルベンゼン共重合物のソジ
ウムスルホン化物( 分画分子量100)、アニオン交換膜A
2: スチレン・ジビニルベンゼン・1-ビニル-2- メチル
イミダゾール共重合物の四級化物( 分画分子量100)]に
より電気透析を行った。20分間電気透析した時点での供
試液中のグルコン酸ナトリウム含量は7.7 %に低下し、
一方、回収液中のグルコン酸ナトリウム含量は3.6 %に
上昇した。更に電気透析を続けたところ、40分後には、
供試液中のグルコン酸ナトリウム含量は6.4 %まで低下
し、臭素イオンは検出されなくなったのに対し、回収液
中のグルコン酸ナトリウム含量は6.0 %まで上昇してい
た。このことから、グルコン酸アニオンは分画分子量10
0 のアニオン交換膜を通過することが分かった。
【0051】実施例3:ラクドビオン酸ナトリウムの製
この実施例に使用した電気透析装置(旭化成工業製「卓
上電気透析装置S1」)を図8に示す。図中、Cはカチオ
ン交換膜(分画分子量約100)、A はアニオン交換膜
(分画分子量約100)、[LBA-]・[Na+]はラクトビオン
酸ナトリウム、[LAC] は乳糖を夫々表す。
【0052】上記電気透析装置及びイオン交換膜カート
リッジ(旭化成工業製「アシプレックスAC-112」) を使
用すると共に、電極の陽極液として、乳糖(2g)、臭化
ナトリウム(5g)及び水(100ml )からなる水溶液を用
い、別途電気酸化によって得られたラクトビオン酸ナト
リウム粗生成物の水溶液(ラクトビオン酸ナトリウム14
%、乳糖2.8 %、臭化ナトリウム0.5 %を含有)を1 時
間電気透析した。電気透析の間、電極液のpHは、1N水
酸化ナトリウム水溶液により中性に維持した。電気透析
終了後、電極液をHPLCにより分析した結果、57%の収率
でラクトビオン酸ナトリウムが得られた。
【0053】
【発明の効果】この発明は以上の如く構成されているの
で、仲介剤を用い、糖を電気酸化してアルドン酸塩を製
造するに当たり、反応混合物から原料の還元性のある二
糖以上の糖および仲介剤を回収しつつ所望のアルドン酸
塩を効率良く分離することのできる方法を提供すること
ができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に用いられる電気酸化電気酸化装置の
一態様を示す概略図。
【図2】この発明に用いられるアルドン酸塩製造分離装
置の一態様を示す概略図。
【図3】この発明に用いられるアルドン酸塩製造分離装
置の他の一態様を示す概略図。
【図4】この発明に用いられるアルドン酸塩製造分離装
置の他の一態様を示す概略図。
【図5】この発明に用いられる製塩用電気透析装置の概
略図。
【図6】実施例1の(2)に用いられる電気透析装置の
概略図。
【図7】実施例1の(3)に用いられる電気透析装置の
概略図。
【図8】実施例3に用いられる電気透析装置の概略図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4D006 GA17 KA01 KA02 KA72 KB30 MA03 MA13 MA14 MB05 MC24 MC40 PA01 PA03 PB12 PB59 PC18

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 仲介剤を用い、還元性のある二糖以上の
    糖を電気酸化してアルドン酸塩を製造し、反応混合物を
    カチオン交換膜及びアニオン交換膜を用いる電気透析に
    付してアルドン酸塩を分離するに当たり、 該アニオン交換膜として分画分子量の異なる2種類のイ
    オン交換膜を用い、 分画分子量の小さいアニオン交換膜を介して前記仲介剤
    のアニオン成分を分離すると共に、 分画分子量の大きいアニオン交換膜を介して前記アルド
    ン酸のアニオン成分を分離することを特徴とするアルド
    ン酸塩の分離方法。
  2. 【請求項2】 前記還元性のある二糖以上の糖としてデ
    ンプン加水分解物または乳糖を用いるものである請求項
    1に記載の分離方法。
  3. 【請求項3】 乳糖を電気酸化してラクトビオン酸塩を
    得るものである請求項1または2に記載の分離方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113045132A (zh) * 2021-03-24 2021-06-29 中国科学院生态环境研究中心 一种水生态修复装置及其修复方法
CN115103819A (zh) * 2020-02-18 2022-09-23 株式会社F.C.C. 离子交换装置

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