JP3021504B2 - 液晶性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

液晶性ポリエステル樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は耐熱性、成形性、機械的特性とりわけ高温時
の機械的特性に優れ、異方性の少ない液晶性ポリエステ
ル樹脂組成物に関するものである。
<従来の技術> 近年プラスチックの高性能化に対する要求がますます
高まり、種々の新規性能を有するポリマが数多く開発さ
れ、市場に供されているが、なかでも特に分子鎖の平行
な配列を特徴とする光学異方性の液晶ポリマが優れた機
械的性質を有する点で注目されている。
異方性溶融相を形成するポリマとしてはたとえばp−
ヒドロキシ安息香酸にポリエチレンテレフタレートを共
重合した液晶ポリマ(特開昭49−72393号公報)、p−
ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
を共重合した液晶ポリマ(特開昭54−77691号公報)、
またp−ヒドロキシ安息香酸に4,4′−ジヒドロキシビ
フェニルとテレフタル酸、イソフタル酸を共重合した液
晶ポリマ(特公昭57−24407号公報)などが知られてい
る。
また、液晶ポリマの耐熱性と機械的強度を向上させる
目的でガラス繊維を配合することが知られている。
<発明が解決しようとする課題> しかしながら、この液晶ポリマとしてこれまで知られ
ているものは荷重たわみ温度が190℃未満と低く耐熱性
が不十分であったり、荷重たわみ温度は190℃以上と耐
熱性は良好であるが液晶開始温度が高すぎて400℃以上
でないと成形できず溶融粘度も高いなど耐熱性と成形性
のバランスの有した液晶ポリマを得ることは困難であっ
た。
また、液晶ポリマにガラス繊維を入れると機械的強
度、耐熱性は向上するが成形性が低下するなどの問題が
あり、成形性を改良するためにエチレンジオキシユニッ
トを含有したモノマを共重合する方法があるが、耐熱性
とりわけ高温時の機械的特性が低下するなどの問題があ
った。
しかもこれら液晶ポリマにガラス繊維を入れても必ず
しも異方性が十分に小さいとは言えないことがわかっ
た。
よって本発明は上記の問題を解決し、耐熱性、成形
性、高温時の機械的特性に優れ、異方性の小さい液晶性
ポリエステル樹脂組成物を得ることを課題とする。
<課題を解決するための手段> 本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結
果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記構造単位(I)、(II)、
(III)および(IV)からなり、構造単位(I)が構造
単位(I)、(II)および(III)の合計に対して40〜9
0モル%、構造単位(II)と(III)のモル比[(II)/
(III)]が9/1〜1/9である溶融成形可能な液晶性ポリ
エステル樹脂100重量部に対して、平均繊維径が3〜9
μmであり、繊維の長さが1000〜4000μmのガラス繊維
を10〜100重量部充填して得られる液晶性ポリエステル
樹脂組成物を提供するものである。
(ただし式中のR1 から選ばれた1種以上の基を、 R2 から選ばれた1種以上の基を示す。また、式中のXは水
素原子または塩素原子を示す。) 上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生
成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4′−ジヒ
ドロキシビフェニルからなる構造単位を、構造単位(II
I)はハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、
t−ブチルハイドロキノン、3,3′,5,5′−テトラメチ
ル−4,4′−ジヒドロキシビフェニルおよびフェニルハ
イドロキノンから選ばれた1種以上の芳香族ジオールか
ら生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル
酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2
−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸、
1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジ
カルボン酸および4,4′−ジフェニルエーテルジカルボ
ン酸から選ばれた1種以上の芳香族ジカルボン酸から生
成した構造単位を各々示す。これらのうち構造単位(II
I)は2,6−ジヒドロキシナフタレン、構造単位(IV)は
テレフタル酸が最も好ましい。
上記構造単位(I)〜(IV)のうち、構造単位(I)
は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対し
て、40〜90モル%であり、好ましくは60〜85モル%であ
る。構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および
(III)の合計に対して、90モル%より大きいと溶融流
動性が低下して重合時に固化し、40モル%より小さいと
流動性が不良となり好ましくない。また、構造単位
(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]は、9/1〜1
/9であり、好ましくは8/2〜2/8,更に好ましくは7/3〜3/
7である。10/0〜9/1、0/10〜1/9ではやはり耐熱性、流
動性が不良となり、本発明の目的を達成することが困難
である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および
(III)の合計と実質的に等モルである。
本発明に用いる液晶性ポリエステルの製造方法につい
ては特に限定するものではなく、公知のポリエステルの
重縮合方法に準じて製造できる。
また本発明で使用する液晶性ポリエステルの溶融粘度
は10〜15,000ポイズが好ましく、特に20〜5,000ポイズ
がより好ましい。
なお、この溶融粘度は(液晶開始温度+40℃)でずり
1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによっ
て測定した値である。
一方、この液晶性ポリエステルの対数粘度は0.1g/dl
濃度、60℃のペンタフルオロフェノール中で測定可能な
ものであり、その場合0.5〜20dl/gが好ましく、1.0〜15
dl/gが特に好ましい。
なお、本発明で使用する液晶性ポリエステルを重縮合
する際には上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分
以外に4,4′−ジフェニルジカルボン酸、3,3′−ジフェ
ニルジカルボン酸、2,2′−ジフェニルジカルボン酸な
どの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、
セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン
酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン
酸、クロルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4,
4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒ
ドロキシベンゾフェノン、4,4′−ジヒドロキシジフェ
ニルエーテル等の芳香族ジオール、1,4−ブタンジオー
ル、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコー
ル、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサ
ンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−
ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸など
の芳香族ヒドロキシカルボン酸あるいは芳香族イミド化
合物などを本発明の目的を損なわない程度の少割合でさ
らに共重合せしめることができる。
本発明に用いるガラス繊維は、好ましくは弱アルカリ
性のものが機械的強度の点ですぐれており、液晶性ポリ
エステル樹脂の強化用として適している。
またガラス繊維はエポキシ系、ウレタン系、アクリル
系などの被覆あるいは収束剤で処理されていることが好
ましく、エポキシ系が特に好ましい。またシラン系、チ
タネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で
処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミ
ノシラン系のカップリング剤が特に好ましい。
ガラス繊維の平均径は3〜9μmであり、繊維の長さ
は1000〜4000μm、充填量は液晶性ポリエステル100重
量部に対して10〜100重量部である。ガラス繊維の平均
径が3μm未満では、補強効果が小さく異方性減少効果
が少なく好ましくない。一方、9μmより大きいと成形
性が低下し、異方性減少効果が十分ではなく好ましくな
い。
本発明に使用する液晶性ポリエステルに対してさらに
充填剤を含有させることもできる。
本発明に用いることができる充填剤としては炭素繊
維、芳香族ポリアミド繊維、チタン酸カリウム繊維、石
コウ繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、
セラミックス繊維、ボロンウイスカ繊維、マイカ、タル
ク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフ
レーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、ワラステナ
イト、酸化チタン等の繊維状、粉状、粒状あるいは板状
の無機フィラーが挙げられる。
更に、本発明の組成物には、本発明の目的を損なわな
い程度の範囲で、酸化防止剤および熱安定剤(たとえば
ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類
およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえば
レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、
ベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(モンタン酸
およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ス
テアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレン
ワックスなど)、染料(たとえばニトロシンなど)およ
び顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニン、カ
ーボンブラックなど)を含む着色剤、可塑剤、帯電防止
剤、難燃剤などの通常の添加剤や他の熱可塑性樹脂を添
加して、所定の特性を付与することができる。
本発明の樹脂組成物は溶融混練することが好ましく、
溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえ
ば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単
軸もしくは二軸押出機などを用い、200〜380℃の温度で
溶融混練して組成物とすることができる。
<実施例> 以下に実施例により本発明をさらに説明する。
参考例1 攪拌機、留出管を備えた反応容器にp−ヒドロキシ安
息香酸994重量部、4,4′−ジヒドロキシビフェニル223
重量部、2,6−ジアセトキシナフタレン147重量部、テレ
フタル酸299重量部および無水酢酸1077重量部を仕込
み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
まず窒素ガス雰囲気下に100〜250℃で6時間、250〜3
30℃で2.0時間反応させた後、330℃、2時間で0.5mmHg
に減圧し、さらに1.5時間反応させ、重縮合を完結させ
たところ、ほぼ理論量の酢酸が留出し下記の理論構造式
を有する樹脂(a)を得た。
k//m/n=80/13.3/6.7/20 また、このポリエステルを偏光顕微鏡の試料台に載
せ、昇温して光学異方性の確認を行った結果、液晶開始
温度は296℃であり、良好な光学異方性を示した。
実施例1 参考例1の液晶性ポリエステル(a)100重量部に対
して、エポキシ系の被覆剤とエポキシシラン系のカップ
リング剤で処理した繊維径6μm、繊維長さ3000μmの
ガラス繊維45重量部をリボンブレンダーで混合後、40mm
φベント付押出機を使用し、330℃で溶融混練−ペレッ
ト化した。
次に得られたペレットを住友ネスタール射出成形機プ
ロマット(住友重機械工業(株)製)に供し、シリンダ
ー温度330℃、金型温度90℃の条件で2mm厚×70mm×70mm
の角板を成形した。
この角板を用いて流動方向に直角の成形収縮率を測定
し、角板を流動方向、直角方向に14mm幅に切り、ひずみ
速度1mm/分、スパン間距離40mmの条件でASTM D790規格
にしたがい曲げ弾性率の測定を行った。その結果を表1
に示す。
実施例2,比較例1〜2 参考例1の液晶性ポリエステル(a)に表1に示した
種類と割合でガラス繊維を添加し、実施例1と同様の方
法でペレット化した。
次に得られたペレットを住友ネスタール射出成形機プ
ロマット(住友重機械工業(株)製)に供し、シリンダ
ー温度300〜330℃、金型温度90℃の条件で実施例1と同
様の成形品を得た。これらの成形品について実施例1と
同様の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
表1から明らかなように本発明の液晶性ポリエステル
組成物からなる成形品は比較例1,2に比べ異方性の小さ
いことが分る。
<発明の効果> 本発明の液晶性ポリエステル組成物は耐熱性、成形性
に優れ、異方性の小さな樹脂組成物が得られる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−284547(JP,A) 特開 昭63−101448(JP,A) 特開 昭64−61087(JP,A) 特開 昭63−112652(JP,A) 特開 平3−243648(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 67/00 - 67/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記構造単位(I)、(II)、(III)お
    よび(IV)からなり、構造単位(I)が構造単位
    (I)、(II)および(III)の合計に対して40〜90モ
    ル%、構造単位(II)と(III)のモル比[(II)/(I
    II)]が9/1〜1/9である溶融成形可能な液晶性ポリエス
    テル樹脂100重量部に対して、平均繊維径が3〜9μm
    であり、繊維の長さが1000〜4000μmのガラス繊維を10
    〜100重量部充填して得られる液晶性ポリエステル樹脂
    組成物。 (ただし式中のR1 から選ばれた一種以上の基を、 R2 から選ばれた1種以上の基を示す。また、式中のXは水
    素原子または塩素原子を示す。)
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