JP2792180B2 - ブレーキ - Google Patents

ブレーキ

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JP2792180B2
JP2792180B2 JP2028274A JP2827490A JP2792180B2 JP 2792180 B2 JP2792180 B2 JP 2792180B2 JP 2028274 A JP2028274 A JP 2028274A JP 2827490 A JP2827490 A JP 2827490A JP 2792180 B2 JP2792180 B2 JP 2792180B2
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武民 山村
純一 釘本
敏弘 石川
泰広 塩路
昌樹 渋谷
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は機械的特性、摩擦特性、耐熱性及び耐酸化性
に優れたブレーキに関するものである。
(従来の技術及びその問題点) 従来の車両、とくに自動車分野で用いられているディ
スクブレーキのディスクは鋳鉄製である。また、ディス
クと対で用いられるブレーキパッドは、アスベストを主
体としたレジンモールド系が使用されている。しかし、
アスベストの安全衛生上の問題から、アスベストフリー
の磨耗材が要求されている。
炭素繊維強化炭素材料(以下、C/Cコンポジットとい
う。)は炭素繊維を強化材とし、炭素をマトリックスと
した複合材料である。C/Cコンポジットは、炭素繊維で
強化されているために従来の炭素材料にくらべ常温、高
温での機械的特性にまさり、また摩擦特性、熱伝導性、
電気伝導性、耐蝕性などにもすぐれていることから、近
年航空機など厳しい性能が要求される分野でブレーキ材
料として用いられてきている。
現在C/Cコンポジットの製造方法とては大別して2つ
の系統がある。
1つはポリアクリロニトリルやレーヨンやピッチ系繊
維を炭化して得られる炭素繊維のトウ、クロス、フェル
トなどに、フェノール樹脂等の炭素材原料の熱硬化性樹
脂を含浸させたプリプレグを積層し、加圧加熱し硬化成
形体とした後、非酸化性雰囲気で炭化処理をし、必要な
らば含浸処理、炭化処理を繰り返しC/Cコンポジットと
する方法である(以下この方法をレジン・チャー法と称
する)。
レジン・チャー法は、CVD法に比べ制約も少なく工業
的には有用であるが、所定の密度をうるには含浸、炭化
を数回繰り返す必要があり、そのため後術するCVD法に
比較し密度が上がりにくく、従って磨耗量が大いなどの
欠点によって、ブレーキ材の製造方法としてはほとんど
利用されていないのが現実である。
もう1つはポリアクリロニトリルやレーヨンやピッチ
系繊維を炭化して得られる炭素繊維のトウ、クロス、フ
ェルトなどを簡単に成形した後、炉に入れて1000〜1500
℃に加熱し、そこへ炭化水素ガスを導入して分解炭化さ
せ、炭素を炭素繊維表面に沈着せしめてC/Cコンポジッ
トとする方法である(以下、この方法をCVD法と称す
る)。
現在使用されている航空機用ディスクブレーキは、ほ
とんどCVD法によって製造されているが、CVD法は生産性
が低く所定の密度を得るには多大な時間を要し、また均
一な気孔の少ない炭素材料を得るにはかなり高度な技術
を要する(例えば、Carbon vol.6 p.397〜403 1968
年)。
これらのうち、高コストのCVD法により得られたブレ
ーキであっても、繰り返し長期間使用した場合、耐磨耗
性が必ずしも充分でないため、次第に擦り減り、また、
発生する摩擦熱による酸化劣化のため性能低下をきたす
等の問題点がある。
(問題を解決するための手段) 本発明の目的は、上記問題点を解決し機械特性、耐磨
耗性、耐酸化性に優れ、かつ、安価なレジンチャー法で
製造できる繊維強化炭素質複合材料からなるブレーキを
提供することにある。
本発明によれば 無機繊維I、無機繊維IIの少なくとも一種類を含む繊
維を強化材とし、無機物質I、無機物質IIの少なくとも
一種類の無機物質をマトリックス中に含むことを特徴と
する繊維強化無機材料であって、 上記無機繊維Iが珪素含有多環状芳香族重合体から得
られる無機繊維であって、その構成成分が、 i)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある多環状
芳香族化合物から導かれるラジアル構造、オニオン構
造、ランダム構造、コアラジアル構造、スキンオニオン
構造及びモザイク構造からなる群から選ばれる少なくと
も一種の結晶配列状態を示す炭素質、 ii)該重合体を構成する光学的等方性の多環状芳香族化
合物から導かれる、無配向状態の結晶質炭素及び/又は
非晶質炭素、及び iii)Si、C及びOから実質的になる非晶質相及び/又
は粒径が500Å以下の実質的にβ−SiCからなる結晶質超
微粒子と非晶質のSiOx(0<x≦2)からなる集合体で
あり、 構成元素の割合が、Si;30〜70重量%C;20〜60重量%
及びO;0.5〜10重量%であるSi−C−O物質 よりなる無機繊維であり、 上記無機繊維IIが、金属含有多環状芳香族重合体から
得られる無機繊維であって、その構成成分が a)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある多環状
芳香族化合物から導かれるラジアル構造、オニオン構
造、ランダム構造、コアラジアル構造、スキンオニオン
構造及びモザイク構造からなる群から選ばれる少なくと
も一種の結晶配列状態を示す炭素質、 b)該重合体を構成する光学的等方性の多環状芳香族化
合物から導かれる、無配向状態の結晶質炭素及び/又は
非晶質炭素、及び c)Si、M、C及びOから実質的になる非晶質物質、
及び/又は 実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCの固溶体及びMC
1-xからなる粒径が500Å以下の結晶超微粒子と、非晶質
のSiOy及びMOzとの集合体であり 構成元素の割合がSi;5〜70重量%、M;0.5〜45重量
%、C;20〜40重量%及びO;0.01〜30重量%である、Si−
M−C−O物質(上記式中、MはTi、Zr及びHfから選択
される少なくとも一種の元素であり、0<x<1、0<
y≦2、0<z≦2である。) よりなる無機繊維であり、 前記無機物質Iが珪素含有多環状芳香族重合体から得
られる無機物質であって、その構成成分が、 iv)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある 多環状芳香族化合物から導かれる結晶質炭素、又は結
晶質炭素と非晶質炭素、 v)該重合体を構成する光学的等方性の多環状芳香族化
合物から導かれる、無配向状態の結晶質炭素及び/又は
非晶質炭素、及び vi)Si、C及びOから実質的になる非晶質相及び/又は
粒径が500Å以下の実質的にβ−SiCからなる結晶質超微
粒子と非晶質のSiOx(0<x≦2)からなる集合体であ
り、構成元素の割合がSi;30〜70重量%、C:20〜60重量
%及びO;0.5〜10重量%であるSi−C−O物質 よりなる炭素質無機物質であり、 前記無機物質IIが金属含有多環状芳香族重合体から得
られる無機繊維であって、その構成成分が、 d)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある多環状
芳香族化合物から導かれる結晶質炭素、 又は結晶質炭素と非晶質炭素、 e)該重合体を構成する光学的等方性の多環状芳香族化
合物から導かれる、無配向状態の結晶質炭素及び/又は
非晶質炭素、及び f)Si、M、C及びOから実質的になる非晶質物質、
及び/又は 実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCの固溶体及びMC
1-xからなる粒径が500Å以下の結晶超微粒子と、非晶質
のSiOy及びMOzとの集合体であり 構成元素の割合がSi;5〜70重量%、M;0.5〜45重量
%、C;20〜40重量%及びO;0.01〜30重量%である、Si−
M−C−O物質(上記式中、MはTi、Zr及びHfから選択
される少なくとも一種の元素であり、0<x<1、0<
y≦2、0<z≦2である。) よりなる炭素質無機物質である繊維強化炭素質複合材料
を用いたブレーキが提供される。
本発明における無機繊維I及び無機繊維IIについて詳
細に説明する。
以下の説明において「部」は「重量部」であり、
「%」は「重量%」である。
本発明における無機繊維Iは前述した構成成分i)、
ii)及びiii)からなっており、Si;0.01〜29重量%、C;
70〜99.9重量%及びO;0.001〜10重量%、好ましくはSi;
0.1〜25重量%、C;74〜99.8重量%及びO;0.01〜10重量
%から実質的に構成されている。
無機繊維IIは前述した構成成分a)、b)及びc)か
らなっており、Si;0.01〜30%、M;0.01〜10%、C;65〜9
9.9%及びO;0.001〜10%、好ましくはSi;0.1〜25%、M;
0.01〜8%、C;74〜99.8%及びO;0.01〜8%から実質的
に構成されている。無機繊維I及び無機繊維IIの構成成
分である結晶質炭素は500Å以下の結晶子サイズを有
し、1.5Åの分解能を有する高分解能電子顕微鏡におい
て、繊維軸方向に配向した3.2Åの(002)面に相当する
微細なラティスイメージ像が観察されうる超微粒子のグ
ラファイト結晶である。無機繊維中の結晶質炭素は、ラ
ジアル構造、オニオン構造、ランダム構造、コアラジア
ル構造、スキンオニオン構造、モザイク構造及び一部ラ
ジアル構造を含むランダム構造をとることができる。こ
れは、原料中にメソフェーズ多環状芳香族化合物が存在
することに起因する。
無機繊維Iにおける構成成分i)及びii)の総和100
部に対する構成成分iii)の割合は0.015〜200部であ
り、且つ構成成分i)、ii)の比率は1:0.02〜4であ
る。
構成成分i)及びii)の総和100部に対する構成成分i
ii)の割合が0.015未満の場合は、ほとんどピッチ繊維
と変わらず、耐酸化性やマトリックス炭素との界面接着
力の向上は望めず、上記割合が200部を越えた場合はグ
ラファイトの微細結晶が効果的には生成せず、高弾性率
の繊維が得られない。
無機繊維IIにおける構成成分a)及びb)の総和100
部に対する構成成分c)の割合は0.015〜200部であり、
且つ構成成分a)とb)との比率は1:0.02〜4である。
構成成分a)及びb)の総和100部に対する構成成分
c)の割合が0.015未満の場合は、ほとんどピッチ繊維
と変わらず、耐酸化性や濡れ性の向上は望めず、上記割
合が200部を越えら場合はグラファイトの微細結晶が効
果的には生成せず、高弾性率の繊維が得られない。
無機繊維I及び無機繊維IIにおいては、層間隔が小さ
く三次元的配列が付与された微結晶が効果的に生成して
おり、その微細結晶を包み込むように珪素原子が非常に
均一に分布している。
また、珪素の分布状態は、焼成時の雰囲気や原料中の
メソフェーズの大きさ、濃度によっても制御することが
できる。例えば、メソフェーズを大きく成長させた場
合、珪素含有ポリマーは繊維表面相に押し出され易く、
焼成後繊維表面に珪素に富む層を生成させることができ
る。
次に本発明における無機繊維I及び無機繊維IIの製造
方法について説明する。
無機繊維Iは以下の第1工程〜第4工程で製造するこ
とができる。
第1工程: 出発原料の一つである有機珪素重合体は、公知の方法
で合成することができ、例えば、ジメチルジクロロシラ
ンと金属ナトリウムの反応により得られるポリメチルシ
ランを不活性ガス中で400℃以上に加熱することにより
得られる。
上記有機珪素重合体は、結合単位(Si−CH2)、又は
結合単位(Si−CH2)と結合単位(Si−Si)より主とし
てなり、結合単位(Si−CH2)の全数対結合単位(Si−S
I)の全数の比率は1:0〜20の範囲内にある。
有機珪素重合体の重量平均分子量(MW)は、一般的に
は300〜1000で、MWが400〜800のものが、優れた炭素系
無機繊維を得るための中間原料である前駆重合体(1)
を調製するために特に好ましい。
もう一つの出発原料である多環状芳香族化合物は石油
類及び/又は石炭類から得られるピッチで、特に好まし
いピッチは、石油類の流動接触分解により得られる重質
油、その重質油を蒸留して得た留出成分又は残渣油及び
それらを熱処理して得られるピッチである。
上記ピッチ中には、ベンゼン、トルエン、キシレン、
テトラヒドロフランなどの有機溶媒に不溶の成分が5〜
98重量%含まれていることが好ましい。上記の不溶成分
が5重量%未満のピッチを原料として用いた場合、強
度、弾性率共に優れた無機質繊維は得られず、また、98
重量%より多いピッチを原料として用いた場合、共重合
体の分子量上昇が激しく、一部コーキングの起こる場合
もあり、紡糸困難な状態になる。
このピッチの重量平均分子量(MW)は、100〜3000で
ある。
重量平均分子量は以下のようにして求めた値である。
即ち、ピッチがベンゼン、トルエン、キシレン、テトラ
ヒドロフラン、クロロホルム及びジクロロベンゼン等の
ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)測定用
有機溶媒不溶分を含有しない場合はそのままGPC測定
し、ピッチが上記有機溶媒不溶分を含有する場合は、温
和な条件で水添処理し、上記有機溶媒不溶分を上記有機
溶媒可溶な成分に変えて後GPC測定する。以下、上記有
機溶媒不溶分を含有する重合体の重量平均分子量は、上
記と同様の処理を施し求めた値である。
前駆重合体(1)は、有機珪素重合体に、石油系又は
石炭系ピッチを添加し、不活性ガス中で好ましくは250
〜500℃の範囲の温度で加熱反応させることにより調製
される。
ピッチの使用割合は、有機珪素重合体100部当たり83
〜4900部であることが好ましい。ピッチの使用割合が過
度に小さい場合は、得られる無機繊維中の炭化珪素成分
が多くなり、高弾性率を有する無機繊維が得られなくな
り、また、その割合が過度に多い場合は、炭化珪素成分
が少なくなり、マトリックス炭素との界面接着性、耐酸
化性に優れた無機繊維が得られなくなる。
上記反応の反応温度が過度に低いと、珪素原子と芳香
族炭素の結合が生成しにくくなり、反応温度が過度に高
いと、生成した前駆重合体(1)の分解及び高分子量化
が激しく起こり好ましくない。
メソフェーズ多環状芳香族化合物(2)は、例えば、
石油系又は石炭系ピッチを不活性ガス中で300〜500℃に
加熱し、生成する軟質留分を除去しながら縮重合するこ
とによって調製することができる。
上記縮重合反応温度が過度に低いと縮合環の成長が充
分でなく、またその温度が過度に高いとコーキングによ
り不融化物の生成が激しくなる。
上記のメソフェーズ多環状芳香族化合物(2)は、融
点が200〜400℃の範囲にあり、また、重量平均分子量が
200〜10000である。
メソフェーズ多環状芳香族化合物(2)の中でも、20
〜100%の光学的異方性度を有し、30〜100%のベンゼ
ン、トルエン、キシレン又はテトラヒドロフランに対す
る不溶分を含むものが、機械的性能上優れた無機繊維を
得るために特に好ましい。
第1工程では、前駆重合体(1)とメソフェーズ多環
状芳香族化合物(2)とを200〜500℃の温度範囲で加熱
溶融及び/又は加熱反応し、珪素含有多環状芳香族重合
体からなる紡糸ポリマーを調製する。
メソフェーズ多環状芳香族化合物(2)の使用割合は
前駆重合体(1)100部当たり5〜50000部であることが
好ましく、5部未満では、生成物におけるメソフェーズ
含有量が不足するため、高弾性の焼成糸が得られず、ま
た、50000部より多い場合は、珪素成分の不足のためマ
トリックス炭素との界面接着性、耐酸化性に優れた無機
繊維が得られなくなる。
上記珪素含有多環状芳香族重合体の重量平均分子量は
200〜11000で、融点が200〜400℃である。
第2工程: 第1工程で得られる珪素含有多環状芳香族重合体であ
る紡糸ポリマーを加熱溶融させて、場合によってはこれ
を濾過してミクロゲル、不純物等の紡糸に際して有害と
なる物質を除去し、これを通常用いられる合成繊維紡糸
装置により紡糸する。紡糸する際の紡糸原液の温度は原
料ポリマーの軟化温度によって異なるが、220〜420℃の
範囲の温度が有利である。
前記紡糸装置において、必要に応じて紡糸筒を取付
け、該紡糸筒内の雰囲気を空気、不活性ガス、熱空気、
熱不活性ガス、スチーム、及びアンモニアガスからなる
群から選ばれる一種以上の雰囲気とした後、巻取り速度
を大きくすることにより細い直径の繊維を得ることがで
きる。前記溶融紡糸における紡糸速度は原料の平均分子
量、分子量分布、分子構造によって異なるが、50〜5000
m/分の範囲であることが好ましい。
第3工程: 第2工程で得られる紡糸繊維を張力又は無張力の作用
もとで不融化する。
代表的な不融化方法は、紡糸繊維を酸化性雰囲気中で
加熱する方法である。不融化の温度は好ましくは50〜40
0℃の範囲の温度である。不融化温度が過度に低いと紡
糸原糸を構成するポリマーのはしかけが起こらず、ま
た、この温度が過度に高いとポリマーが燃焼する。
不融化の目的は、紡糸繊維を構成するポリマーを三次
元構造の不融・不溶のはしかけ状態にし、次工程の焼成
の際に溶融せず、且つ隣接した繊維と融着しないように
することである。不融化の際の酸化性雰囲気を構成する
ガスとしては、空気、オゾン、酸素、塩素ガス、臭素ガ
ス、アンモニアガス、及びこれらの混合ガスが挙げられ
る。
上記とは別の不融化方法として、紡糸繊維に酸化性雰
囲気あるいは非酸化性雰囲気で、張力あるいは無張力で
必要に応じて低温加熱しながら、γ線照射、あるいは電
子線照射して不融化する方法も採用することができる。
このγ線あるいは電子線を照射する目的は、紡糸繊維
を形成するポリマーを、さらに重合させることによっ
て、紡糸原糸が融解し、繊維形状を失うことを防ぐこと
にある。
γ線あるいは電子線の照射線量は106〜1010ラッドが
適当である。
照射は真空、不活性ガス雰囲気下、あるいは空気、オ
ゾン、酸素、塩素ガス、臭素ガス、アンモニアガス及び
これらの混合ガスのような酸化性ガス雰囲気で行うこと
ができる。
照射による不融化は室温で行うこともでき、必要であ
れば50〜200℃の温度範囲で加熱しながら行うことによ
って不融化をより短時間で達成させることもできる。
不融化は、無張力下で行うと、前記紡糸繊維は収縮の
ため波状の形を呈するようになるが、次工程の焼成工程
で矯正できる場合もあり、張力は必ずしも必要ないが、
張力を作用させる場合には、その張力の大きさは不融化
時に紡糸繊維が収縮して波状となることを少なくとも防
止できる以上の張力を作用させると良い結果が得られ
る。
不融化の際に、作用させる張力としては、1〜500g/m
m2の範囲が好ましく、1g/mm2以下の張力を作用させても
繊維をたるませないような緊張を与えることができず、
500g/mm2以上の張力を作用させると繊維が切断すること
がある。
第4工程: 第3工程で得られる不融化糸を、真空あるいは不活性
ガス雰囲気中で800〜3000℃の範囲の温度で焼成するこ
とによって、主として炭素、珪素、酸素からなる無機繊
維が得られる。
焼成工程において、張力を作用させることは必ずしも
必要ないが0.001〜100Kg/mm2の範囲で張力を作用させな
がら高温焼成すると屈曲を少なくした強度の高い無機繊
維を得ることができる。
加熱過程において、約700℃から無機化が激しくな
り、約800℃でほぼ無機化が完了するものと推定され
る。従って、焼成は、800℃以上の温度で行うことが好
ましい。また、3000℃より高い温度を得るには高価な装
置を必要とするため3000℃より高温での焼成は、コスト
面からみて実際的でない。
無機繊維IIは以下の第1工程〜第4工程で製造するこ
とができる。
第1工程: 無機繊維I製造の第1工程の前駆重合体(1)の調製
方法と同様にして、有機珪素重合体とピッチより前駆重
合体(1)が調製される。
次に、前駆重合体(1)と式MX4で示される遷移金属
化合物とを100〜500℃の範囲の温度で反応させランダム
共重合体(3)を製造する。
前記MX4において、MはTi、Zr及びHfから選択される
少なくとも一種の元素であり、Xは縮合により、Mが前
駆重合体(1)の珪素と直接あるいは酸素原子を介して
結合し得るものであればよく、特に規定はないが、ハロ
ゲン原子、アルコキシ基又はβ−ジケトンのような錯体
形成基が好ましい。
上記反応温度が過度に低いと、前駆重合体(1)と式
MX4との縮合反応が進行せず、反応温度が過度に高い
と、Mを介した前駆重合体(1)の架橋反応が過度に進
行しゲル化が起こったり、前駆重合体(1)自体が縮合
し高分子量化したり、あるいは、場合によってはMX4
揮散し好ましくない。
一例として、MがTiで、XがOC4H9の場合、反応温度
は200〜400℃が適している。
この反応によって、前駆重合体(1)の珪素原子の少
なくとも一部を金属Mと直接あるいは酸素原子を介して
結合させたランダム共重合体(2)が調製される。
金属Mは前駆重合体(1)の珪素原子に−MX3あるい
は−O−MX3のような結合様式で側鎖状に結合すること
もできるし、前駆重合体(1)の珪素原子に直接又は酸
素を介して架橋した結合様式もとり得る。
ランダム共重合体(3)を調製する方法としては、前
述の方法以外に、有機珪素重合体とMX4を反応させ、得
られた生成物にピッチをさらに反応させて調製する方法
も可能である。
第1工程においては最後にランダム共重合体(3)と
メソフェーズ多環状芳香族化合物を加熱反応及び/又は
加熱溶融して、金属含有多環状芳香族重合体を調製す
る。
メソフェーズ多環状芳香族化合物は、無機繊維I製造
の第1工程に記載の調製方法と同様にして調製される。
上記のメソフェーズ多環状芳香族化合物は、融点が20
0〜400℃の範囲にあり、また、重量平均分子量が200〜1
0000である。
メソフェーズ多環状芳香族化合物の中でも、20〜100
%、特に40〜100%の光学的異方性度を有し、30〜100%
のベンゼン、トルエン、キシレン又はテトラヒドロフラ
ンに対する不溶分を含むものが、機械的性能の優れた無
機繊維を得るために好ましい。
メソフェーズ多環状芳香族化合物の使用割合はランダ
ム共重合体(2)100部当たり5〜50000部、より好まし
くは5〜10000部であり、5部未満では、生成物におけ
るメソフェーズ含有量が不足するため、高弾性の焼成糸
が得られず、また、50000部より多い場合は、珪素成分
の不足のため、マトリックスに対する濡れ性、耐酸化性
に優れた無機繊維が得られなくなる。
ランダム共重合体(2)とメソフェーズ多環状芳香族
化合物とを200〜500℃の温度範囲で加熱溶融及び/又は
加熱反応させることにより、ランダム共重合体(2)の
少なくとも一部がメソフェーズ多環状芳香族化合物と結
合した金属含有多環状芳香族重合体が得られる。ただ
し、ここで言う結合とは、ランダム共重合体(2)の珪
素と多環状芳香族化合物の炭素との化学結合とランダム
共重合体(2)中の珪素と化学結合した多環状芳香族環
部分とメソフェーズ多環状芳香族化合物との間のファン
デルワールス結合等の物理的結合を意味する。
上記溶融混合温度が200℃より低いと不融部分が生
じ、糸が不均一となり、無機繊維の強度、弾性率に悪影
響を及ぼし、また、溶融混合温度が500℃より高いと縮
合反応が激しく進行し、生成重合体が高融点となり、重
合体の紡糸が著しく困難となる。
金属含有多環状芳香族重合体を調製する方法として
は、前述の方法以外に、有機珪素重合体とピッチを反応
させ、得られた生成物にメソフェーズピッチとMX4を同
時に又は順次添加し、さらに反応させて調製する方法も
可能である。
上記金属含有多環状芳香族重合体の重量平均分子量は
200〜11000で、融点が200〜400℃である。
第2工程: 第1工程で得られる金属含有多環状芳香族重合体であ
る紡糸ポリマーを前記した無機繊維I製造の第2工程と
同様にして紡糸する。
第3工程: 第2工程で得られる紡糸繊維を前記した無機繊維I製
造の第3工程と同様にして不融化する。
第4工程: 第3工程で得られる不融化糸を、前記した無機繊維I
製造の第4工程と同様にして焼成することによって、主
として炭素、M、珪素及び酸素からなる無機繊維IIが得
られる。
なお、無機繊維IIの構成成分c)であるSi−M−C−
O物質の形態は、第1工程乃至第4工程で採用される製
造条件によって決定される。一般的に言えば、第4工程
での焼成温度が例えば1000℃より低い場合、Si、M、
C、Oからなる非晶質より実質的に構成される。
一方、第4工程の焼成温度が例えば1700℃以上の場
合、実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCの固溶体及びMC
1-x(ただし、0<x<1)からなる粒径500Å以下の超
微粒子及びSiOy(ただし、0<y≦2)、MO2(ただ
し、0<z≦2)からなる非晶質からなる集合体より実
質的に構成される。
上記温度の中間では、各集合体の混合系より構成され
ている。また、無機繊維中の酸素量は、例えば第1工程
におけるMX4の添加比率又は第3工程における不融化条
件により制御することができる。
また、構成成分c)の分布状態は、焼成時の雰囲気や
原料中のメソフェーズの大きさ、濃度によっても制御す
ることができる。例えば、メソフェーズを大きく成長さ
せた場合、構成成分c)は繊維表面相に押し出されやす
くなる。
本発明においては、強化繊維中に上記無機繊維I及び
/または無機繊維II以外の公知の無機繊維、例えば、炭
素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化
珪素繊維、炭化珪素繊維、カーボンを芯線とする炭化珪
素繊維及びSi−M−C−O繊維(MはTi又はZrを示
す。)を含有していてもよいが、上記無機繊維I及び/
または無機繊維IIの特性を損なわないため公知無機繊維
の繊維中の含有率は40%以下とすることが好ましい。
上記のSi−M−C−O繊維は、 (i)Si、M、C、及びOから実質的になる非晶質、又
は (ii)実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCの固溶体及び
MC1-xの粒径が500Å以下の各結晶質超微粒子、及び非晶
質のSiO2とMO2からなる集合体、又は (iii)上記(i)の非晶質と上記(ii)の結晶質超微
粒子集合体の混合系、 (ただし、上式中のMはTi又はZrを示し、0<x<1
を示す) からなる無機繊維である。この無機繊維は、例えば、特
公昭60−1405号公報、同58−5286号公報、同60−20485
号公報、同59−44403号公報に記載の方法によって調製
することができる。
本発明のブレーキ部材において、強化繊維の形態は0.
05〜50mm程度の単繊維であっても、連続繊維であっても
よく、また、クロス、フェルト、マット、シート状の形
態でも差し支えない。また、強化繊維はマトリックス中
に、そのままの状態で、または開繊された状態で全くラ
ンダムな方向をむいていてもよいし、任意の特定の方向
に向けて配列していてもよい。
次に、本発明のブレーキ部材におけるマトリックスに
ついて説明する。
本発明のブレーキ部材のマトリックスは、前記構成成
分iv)、v)及びvi)よりなる無機物質I、前記構成成
分d)、e)及びf)よりなる無機物質IIの少なくとも
一種類の無機物質からなる。
無機物質IはSi;0.5〜50%、C;40〜97%及びO;0.1〜1
0%から実質的に構成されている。
無機物質IIはSi;0.5〜50%、M;0.01〜10%、C;40〜97
%及びO;0.1〜10%から実質的に構成されている。
無機物質Iにおいて、構成成分iv)及びv)の総和10
0部に対する構成成分vi)の割合は0.5〜500部であり、
且つ構成成分iv)、v)の比率は1:0.02〜4である。
構成成分iv)及びv)の総和100部に対する構成成分v
i)の割合が0.5未満の場合は、ほとんど炭素マトリック
スと変わらず、耐酸化性や耐磨耗性の向上は望めず、上
記割合が500部を越えた場合は炭化珪素マトリックスと
変わらず、高温特性、潤滑性が低下する。
無機物質IIにおいて、構成成分d)及びe)の総和10
0部に対する構成成分f)の割合は0.5〜500部であり、
且つ構成成分d)、e)の比率は1:0.02〜4である。
構成成分d)及びe)の総和100部に対する構成成分
f)の割合が0.5未満の場合は、ほとんど炭素マトリッ
クスと変わらず、耐酸化性や耐磨耗性の向上は望めず、
上記割合が500部を越えた場合は炭化珪素マトリックス
と変わらず、高温特性、潤滑性が低下する。
無機物質I及び無機物質IIの構成成分である結晶質炭
素は500Å以下の結晶子サイズを有し、1.5Åの分解能を
有する高分解能電子顕微鏡において、繊維軸方向に配向
した3.2Åの(002)面に相当する微細なラティスイメー
ジ像が観察されうる超微粒子のグラファイト結晶であ
る。
無機物質I及び無機物質IIにおいては、層間隔が小さ
な微結晶が効果的に生成しており、その微結晶を包み込
むように珪素原子が非常に均一に分布している。
次に、本発明の繊維強化炭素質複合材料の製造方法に
ついて説明する。
前記無機物質I又は無機物質IIの単繊維、連続繊維、
又はクロス、フェルト、マット、シートなどの強化繊維
構造物に前記珪素含有多環状芳香族重合体又は前記金属
含有多環状芳香族重合体の粉末を加え加熱プレスし成形
する方法、前記構造物に珪素含有多環状芳香族重合体又
は金属含有多環状芳香族重合体の溶液又はスラリーを含
浸後、溶媒を除去、乾燥したプリプレグシートを加熱成
形する方法、前記無機繊維の短繊維、又はチョップドフ
ァイバーと珪素含有多環状芳香族重合体又は金属含有多
環状芳香族重合体を溶融混練し、プレス成形、又は射出
成形する方法等により、繊維含有成形体を製造する。
成形体中の無機繊維の含有率は10〜70体積%が好まし
い。
珪素含有多環状芳香族重合体及び金属含有多環状芳香
族重合体は、前記無機繊維I及びII製造の第一工程にお
いて製造された珪素含有多環状芳香族重合体及び金属含
有多環状芳香族重合体をそのまま使用することができる
が、繊維化することが要求されないため、珪素含有多環
状芳香族重合体又は金属含有多環状芳香族重合体中の珪
素及び炭素の構成比は、前記無機繊維I及びII製造の第
一工程において製造された珪素含有多環状芳香族重合体
又は金属含有多環状芳香族重合体より広範囲に設定でき
る。すなわち、珪素含有多環状芳香族重合体又は金属含
有多環状芳香族重合体は、前記無機繊維I又はII製造の
第一工程における前駆重合体製造の際のピッチの使用割
合が、有機珪素重合体100部当たり10〜4900部であるこ
とが好適であること以外は、前記無機繊維I又はII製造
の第一工程における珪素含有多環状芳香族重合体又は金
属含有多環状芳香族重合体の製法と同様にして製造され
る。
また、繊維含有成形体の製造に当たっては、珪素含有
多環状芳香族重合体又は金属含有多環状芳香族重合体
に、それぞれの重合体を例えば不活性ガス雰囲気中、80
0〜1000℃で焼成、無機化した仮焼体粉末を混合し、使
用することもできる。
珪素含有多環状芳香族重合体の仮焼体粉末は、Si:0.0
1〜69.9%、C:29.9〜99.9%及びO:0.001〜10%から実質
的に構成されていることが好ましい。
金属含有多環状芳香族重合体の仮焼体粉末は、Si:0.0
1〜50%、M:0.01〜10%、C:40〜99.9%及びO:0.001〜10
%から実質的に構成されていることが好ましい。
次に、上記成形体に、必要に応じて不融化処理を施
す。
不融化処理の方法は、前記無機繊維I製造の第3工程
の方法をそのまま採用することができる。
不融化された成形体は、真空あるいは不活性ガス中
で、800〜3000℃の範囲の温度で焼成し、無機化され、
繊維強化された、炭素、珪素及び酸素、又は炭素、珪
素、M及び酸素からなるマトリックスを有する複合材料
が得られる。
加熱過程において、約700℃から無機化が激しくな
り、約800℃でほぼ無機化が完了するものと推定され
る。従って、焼成は、800℃以上の温度で行うことが好
ましい。また、3000℃より高い温度を得るには高価な装
置を必要とするため3000℃より高温での焼成は、コスト
面からみて実際的でない。
なお、本工程における無機化の昇温速度を極めて遅く
することや、成形体保形用治具、パウダーヘッド等の保
形手段を用いること等により、不融化工程を省略するこ
ともできるし、成形方法として高温ホットプレスを用い
ることにより一工程で高密度複合材を得ることも可能で
ある。
焼成、無機化によって得られたハイブリッド繊維強化
炭素質複合材料は、多少とも開気孔を含んでいるため、
必要により、珪素含有多環状芳香族重合体又は金属含有
多環状芳香族重合体の融液、溶液又はスラリーを含浸後
必要により不融化、焼成し、無機化することにより複合
体を高密度化、高強度化することができる。含浸は、珪
素含有多環状芳香族重合体又は金属含有多環状芳香族重
合体の融液、溶液又はスラリーのいずれを用いてもさし
つかえないが、微細な開気孔への浸透を図るため、この
複合材に前記重合体の溶液又はスラリーを含浸後減圧下
で微細気孔への浸透を促進後溶媒を留去しつつ昇温し、
10〜500kg/cm2に加圧することにより、前記重合体の融
液を気孔に充填させることが好ましい。
得られた含浸体は、前記と同様にして、不融化し、焼
成し、無機化することができる。この操作を2〜10回繰
り返すことにより高密度、高強度な繊維強化複合材を得
ることができる。
(発明の効果) 本発明のブレーキ部材は、高強度、高靭性であり、か
つ、耐磨耗性、耐酸化性にすぐれているため、航空機の
ブレーキ、レーシングカーのブレーキに好適である。ま
た、安価なレジンチャー法で製造できるため一般の乗用
車ブレーキ部材にも適用できるものである。
(実施例) 以下実施例によって本発明を説明する。
参考例1(無機繊維Iの製造) 5の三口フラスコに無水キシレン2.5及びナトリ
ウム400gを入れ、窒素ガス気流下でキシレンの沸点まで
加熱し、ジメチルジクロロシラン1を1時間で滴下し
た。滴下終了後、10時間加熱還流し沈澱物を生成させ
た。沈澱を濾過し、メタノールついで水で洗浄して、白
色粉末のポリジメチルシラン420gを得た。
このポリジメチルシラン400gを、ガス導入管、攪拌
機、冷却器及び留出管を備えた3の三口フラスコに仕
込み、攪拌しながら50ml/分の窒素気流下に420℃で加熱
処理して、留出受器に350gの無色透明な少し粘性のある
液体を得た。
この液体の数平均分子量は蒸気圧浸透法で測定したと
ころ470であった。
この物質の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、
650〜900cm-1と1250cm-1にSi−CH3の吸収、2100cm-1にS
i−Hの吸収、1020cm-1付近と1355cm-1にSi−CH2−Siの
吸収、2900cm-1と2950cm-1にC−Hの吸収が認められ、
またこの物質の遠赤外線吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、380cm-1にSi−Siの吸収が認められることから、得
られた液状物質は、主として(Si−CH2)結合単位及び
(Si−Si)結合単位からなり、珪素の側鎖に水素原子及
びメチル器を有する有機珪素重合体であることが判明し
た。
核磁気共鳴分析及び赤外線吸収分析の測定結果から、
この有機珪素重合体は(Si−CH2)結合単位の全数対(S
i−Si)結合単位の全数の比率がほぼ1:3である重合体で
あることが確認された。
上記有機珪素重合体300gをエタノールで処理して低分
子量物を除去して、数平均分子量が1200の重合体40gを
得た。
この物質の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、
上記と同様の吸収ピークが認められ、この物質は主とし
て(Si−CH2)結合単位及び(Si−Si)結合単位からな
り、珪素の側鎖に水素原子及びメチル基を有する有機珪
素重合体であることが判明した。
核磁気共鳴分析及び赤外線吸収分析の測定結果から、
この有機珪素重合体は(Si−CH2)結合単位の全数対(S
i−Si)結合単位の全数の比率がほぼ7:1である重合体で
あることが確認された。
一方、石油留分のうち、軽油以上の高沸点物をシリカ
・アルミナ系分解触媒の存在下、500℃の温度で流動接
触分解・精留を行い、その塔底より残渣を得た。以下、
この残渣をFCCスラリーオイルと呼ぶ。
このFCCスラリーオイルは、元素分析の結果、炭素原
子対水素原子の原子比(C/H)が0.75で、核磁気共鳴分
析による芳香炭素率が0.55であった。
上記FCCスラリーオイル200gを2/分の窒素ガス気
流下450℃で0.5時間加熱し、同温度における留出分を留
去後、残渣を200℃にて熱時濾過を行い、同温度におけ
る不融部を除去し、軽質分除去ピッチ57gを得た。
この軽質分除去ピッチは25%のキシレン不溶分を含ん
でいた。
この軽質分除去ピッチ57gに先に合成した有機珪素重
合体25g及びキシレン20mlを加え、攪拌しながら昇温
し、キシレンを留去後、400℃で6時間反応させ51gの前
駆重合体(1)を得た。
この反応生成物は赤外線吸収スペクトル測定の結果、
有機珪素重合体中に存在するSi−H結合(IR:2100c
m-1)の減少、及び新たなSi−C(ベンゼン環の炭素)
結合(IR:1135cm-1)の生成が認められることにより有
機珪素重合*の珪素原子の一部が多環状芳香族環と直接
結合した部分を有する共重合体であることがわかった。
この前駆重合体(1)は、キシレン不溶部を含まず重
量平均分子量が1400で、融点が265℃で、軟化点が310℃
であった。
一方、前記軽質分除去ピッチ180gを窒素気流下、反応
により生成する軽質分を除去しながら400℃で8時間縮
重合を行い、熱処理ピッチ97.2gを得た。
この熱処理ピッチは融点263℃、軟化点308℃、キシレ
ン不溶分77%、キノリン不溶分31%を含有しており、研
磨面の偏光顕微鏡観察による光学的異方性が75%のメソ
フェーズ多環状芳香族化合物(2)であった。
このメソフェーズ多環状芳香族化合物(2)90gと前
記前駆重合体(1)6.4gを混合し、窒素雰囲気下、380
℃で一時間溶融加熱し、均一な状態にある珪素含有多環
状芳香族重合体を得た。
この重合体は、融点が267℃で、軟化点が315℃で、70
%のキシレン不溶分を含んでいた。
上記高分子量物を紡糸用原料とし、ノズル径0.15mmの
金属製ノズルを用い、360℃で溶融紡糸を行い、得られ
た紡糸原糸を、空気中、300℃で酸化、不融化し、更に
アルゴン雰囲気中、1300℃で焼成を行い、直径8μmの
無機繊維Iを得た。
この繊維は引張強度が320kg/mm2、引張弾性率26t/mm2
であり、破壊面の観察よりラジカル構造であった。
この無機物質Iを粉砕後アルカリ溶融、塩酸処理を施
し水溶液とした後、高周波プラズマ発光分光分析を行っ
た結果、この無機繊維I中の珪素含有率は0.95%である
ことがわかった。
参考例2(無機繊維IIの製造) 参考例1で得られた軽質分除去ピッチ57gに参考例1
で得た有機珪素重合体25g及びキシレン20mlを加え、攪
拌しながら昇温し、キシレンを留去後、400℃で4時間
反応させ57.4gの前駆重合体(1)を得た。
この前駆重合体(1)は赤外線吸収スペクトル測定の
結果、有機珪素重合体中に存在するSi−H結合(IR:210
0cm-1)の減少、及び新たなSi−C(ベンゼン環の炭
素)結合(IR:1135cm-1)の生成が認められることより
有機珪素重合体の珪素原子の一部が多環状芳香族環の炭
素と直接結合した部分を有する重合体であることがわか
った。
前駆重合体(1)57.4gにテトラオクトキシチタン〔T
i(OC8H17〕3.87gのキシレン溶液(25%キシレン溶
液15.5g)を加え、キシレン留去後、340℃で1時間反応
させ、ランダム共重合体(2)56gを得た。
この重合体は、キシレン不溶部を含まず重量平均分子
量は1580、融点は258℃、軟化点292℃であり、キシレン
可溶であった。
上記ランダム共重合体(2)6.4gと参考例1で得られ
たメソフェーズ多環状芳香族化合物(2)90gを混合、
窒素雰囲気下380℃で1時間溶融加熱し、均一な状態に
ある金属含有多環状芳香族重合体を得た。
この重合体の融点は264℃で、軟化点307℃、68%のキ
シレン不溶分を含んでいた。
上記高分子量物を紡糸用原料とし、ノズル径0.15mmの
金属製ノズルを用い、360℃で溶融紡糸を行い、得られ
た紡糸原糸を、空気中、300℃で酸化、不融化し、更に
アルゴン雰囲気中、1300℃で焼成を行い、直径7.5μm
の無機繊維を得た。
この繊維は引張強度が358kg/mm2、引張弾性率32t/mm2
であり、破断面の走査型電子顕微鏡を用いた観察より、
結晶層が幾重にも重なった珊瑚様のランダムラジアル混
在構造であった。
この無機繊維を粉砕後、アルカリ溶融、塩酸処理を施
し、水溶液とした後高周波プラズマ発光分光分析(IC
P)を行った結果、珪素含有率は0.95%、チタン含有率
は0.06%であった。
実施例1 参考例1で得た無機繊維Iの2次元平織クロスに参考
例1で得た珪素含有多環状芳香族重合体の30%キシレン
スラリーに含浸後乾燥しプリプレグシートを作成した。
このプリプレグシートを積層し300℃、50kg/cm2でホッ
トプレスし、120×120×10mmの板状成形体を得た。この
成形体を250℃、空気中で不融化後、窒素雰囲気中、5
℃/hの昇温速度で800℃まで昇温し、重合体を無機化し
た。
この複合材料を参考例1に記載の珪素含有多環状芳香
族重合体に埋め、オートクレーブ中、350℃、100kg/cm2
の窒素加圧下、珪素含有多環状芳香族重合体を含浸後、
上記条件にて不融化、無機化を行った。この操作をさら
に2回繰り返した後1300℃で焼成し、嵩密度1.65g/cm3
の複合材を得た。この複合材中の無機繊維の体積含有率
は55%であった。
この板状複合材を円板状に加工し、ブレーキディスク
を作成した。一方、加工時の端片より、曲げ試験片(3
×4×40mm)を作成し、三点曲げ試験を行ったところ、
曲げ強度が28kg/mm2であった。また、同試験片を700
℃、空気中に1時間さらしても強度低下は認められなか
った。
実施例2 強化繊維として、参考例2に記載の無機繊維IIのクロ
スを用い、マトリックス用ポリマーとして参考例2に記
載の金属含有多環状芳香族重合体を用い、含浸回数を4
回とし、最終焼成温度を2100℃とした以外は実施例1と
同様にして板状成形体を作成した。
この成形体の嵩密度1.65g/cm3であり、無機繊維の体
積含有率は60%であった。
この板状複合材を扇形に加工し、ブレーキパッドとし
た。この複合材の三点曲げ強度は36kg/mm2であり、700
℃、空気中に1時間さらしても強度低下は認められなか
った。
比較例1 引張強度300kg/mm2、引張弾性率24t/mm2のポリアクリ
ロニトリル系炭素繊維の平織織物にレゾールタイプのフ
ェノール樹脂(明和化成(株)製MRW−3000)の40%ア
セトン溶液に浸し引き上げた後、アセトンを除去後、乾
燥し、プリプレグシートを得た。このプリプレグシート
を、150℃、50kg/cm2でホットプレスし、800℃で無機化
した後、参考例1で用いたメソフェーズ多環状芳香族重
合体を用い、実施例1の条件で3回含浸、無機化を行っ
て、嵩密度1.60g/cm3のC/C複合材を得た。
この複合材の曲げ強度は18kg/mm2であり、700℃、空
気中に1時間さらした結果、強度測定ができない程劣化
が進行していた。
この板状複合材材料より実施例1、2と同様にディス
クとパッドを切り出した。
実施例3 実施例1、2で製造したディスクとパッドの組合せ及
び比較例1で製作したディスクとパッドの組合せによ
り、第1表に示した条件で摩擦試験を行った。
摩擦試験はブレーキディスクを回転させ、所定の周速
に達した後、一定圧力でブレーキパッドを押し付け、そ
の際生じるトルクから摩擦係数を求め、磨耗量は試験後
のパッドの厚みより直接測定し求めた。
結果を第2表に示した。
得られた複合材は、高い制動性と低い磨耗量を示し、
ブレーキ特性が優れていた。
第1表 慣性モーメント ; 0.04kg・m・s2 周速 ;15m/s 面圧 ;13kgf/m2 回数 ;100回
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D01F 9/14 511 C04B 35/52 D (72)発明者 渋谷 昌樹 山口県宇部市大字小串1978番地の5 宇 部興産株式会社宇部研究所内 審査官 安齋 美佐子 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C04B 35/52 C04B 35/83 F16D 69/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無機繊維I、無機繊維IIの少なくとも一種
    類を含む繊維を強化材とし、無機物質I、無機物質IIの
    少なくとも一種類の無機物質をマトリックス中に含むこ
    とを特徴とする繊維強化無機材料であって、 上記無機繊維Iが珪素含有多環状芳香族重合体から得ら
    れる無機繊維であって、その構成成分が、 i)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある多環状
    芳香族化合物から導かれるラジアル構造、オニオン構
    造、ランダム構造、コアラジアル構造、スキンオニオン
    構造及びモザイク構造からなる群から選ばれる少なくと
    も一種の結晶配列状態を示す炭素質、 ii)該重合体を構成する光学的等方性の多環状芳香族化
    合物から導かれる、無配向状態の結晶質炭素及び/又は
    非晶質炭素、及び iii)Si、C及びOから実質的になる非晶質相及び/又
    は粒径が500Å以下の実質的にβ−SiCからなる結晶質超
    微粒子と非晶質のSiOx(0<x≦2)からなる集合体で
    あり、 構成元素の割合が、Si;30〜70重量%C;20〜60重量%及
    びO;0.5〜10重量%であるSi−C−O物質 よりなる無機繊維であり、 上記無機繊維IIが、金属含有多環状芳香族重合体から得
    られる無機繊維であって、その構成成分が a)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある多環状
    芳香族化合物から導かれるラジアル構造、オニオン構
    造、ランダム構造、コアラジアル構造、スキンオニオン
    構造及びモザイク構造からなる群から選ばれる少なくと
    も一種の結晶配列状態を示す炭素質、 b)該重合体を構成する光学的等方性の多環状芳香族化
    合物から導かれる、無配向状態の結晶質炭素及び/又は
    非晶質炭素、及び c)Si、M、C及びOから実質的になる非晶質物質、
    及び/又は 実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCの固溶体及びMC
    1-xからなる粒径が500Å以下の結晶超微粒子と、非晶質
    のSiOy及びMOzとの集合体であり 構成元素の割合がSi;5〜70重量%、M;0.5〜45重量%、
    C;20〜40重量%及びO;0.01〜30重量%である、Si−M−
    C−O物質(上記式中、MはTi、Zr及びHfから選択され
    る少なくとも一種の元素であり、0<x<1、0<y≦
    2、0<z≦2である。) よりなる無機繊維であり、 前記無機物質Iが珪素含有多環状芳香族重合体から得ら
    れる無機物質であって、その構成成分が、 iv)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある 多環状芳香族化合物から導かれる結晶質炭素、又は結晶
    質炭素と非晶質炭素、 v)該重合体を構成する光学的等方性の多環状芳香族化
    合物から導かれる、無配向状態の結晶質炭素及び/又は
    非晶質炭素、及び vi)Si、C及びOから実質的になる非晶質相及び/又は
    粒径が500Å以下の実質的にβ−SiCからなる結晶質超微
    粒子と非晶質のSiOx(0<x≦2)からなる集合体であ
    り、構成元素の割合が、Si;30〜70重量%、C:20〜60重
    量%及びO;0.5〜10重量%であるSi−C−O物質 よりなる炭素質無機物質であり、 前記無機物質IIが金属含有多環状芳香族重合体から得ら
    れる無機物質であって、その構成成分が、 d)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある多環状
    芳香族化合物から導かれる結晶質炭素、 又は結晶質炭素と非晶質炭素、 e)該重合体を構成する光学的等方性の多環状芳香族化
    合物から導かれる、無配向状態の結晶質炭素及び/又は
    非晶質炭素、及び f)Si、M、C及びOから実質的になる非晶質物質、
    及び/又は 実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCの固溶体及びMC
    1-xからなる粒径が500Å以下の結晶超微粒子と、非晶質
    のSiOy及びMOzとの集合体であり 構成元素の割合がSi;5〜70重量%、M;0.5〜45重量%、
    C;20〜40重量%及びO;0.01〜30重量%である、Si−M−
    C−O物質(上記式中、MはTi、Zr及びHfから選択され
    る少なくとも一種の元素であり、0<x<1、0<y≦
    2、0<z≦2である。) よりなる炭素質無機物質であることを特徴とする繊維強
    化炭素質複合材料を用いたブレーキ。
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