JP2514424B2 - 珪素含有多環状芳香族重合体並びにその製造方法 - Google Patents

珪素含有多環状芳香族重合体並びにその製造方法

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JP2514424B2 JP1073771A JP7377189A JP2514424B2 JP 2514424 B2 JP2514424 B2 JP 2514424B2 JP 1073771 A JP1073771 A JP 1073771A JP 7377189 A JP7377189 A JP 7377189A JP 2514424 B2 JP2514424 B2 JP 2514424B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、機械的性質、耐酸化性、複合材料用マトリ
ックスに対する適合性に優れた無機繊維や、機械的特
性、耐酸化性、耐磨耗性、耐熱性等に優れた複合材料用
マトリックス、成形体等の製造に好適な前駆体ポリマー
及びその製造方法に関する。
(従来の技術及びその問題点) 炭素繊維は、軽量でしかも高強度、高弾性であるた
め、スポーツ・レジャー用品をはじめ、航空機、自転
車、建材など広い分野に亙ってその利用が図られてい
る。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリルを原料とし
たPAN系炭素繊維と、石油系、石炭系のピッチを原料と
する、所謂ピッチ系炭素繊維が知られている。
ピッチ系炭素繊維は、一般に強度がPAN系炭素繊維に
比べて劣るが、原料が安価なことから、強度を高める方
法について種々の検討がなされ、例えば、特開昭59−22
3316号公報には、効果的にメソフェーズを生成させ、紡
糸時に配向させる方法が開示されている。
しかし、基本的には、炭素繊維は結晶性の繊維である
ため、硬く、毛羽は発生し易く、また複合材料とする際
マトリックスとの濡れ性も劣るという欠点がある。
そこで種々の炭素繊維の表面処理方が提案され、現在
知られている方法として、繊維に柔軟性を付与するとと
もに、毛羽発生を抑制する目的で、ポリビニルアルコー
ル、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂のようなサ
イジング剤を表面に塗布する方法や、マトリックスとの
接着性を向上させる目的でその表面を乾式又は湿式で酸
化処理する方法等がある。
これらの処理のうち、特に表面酸化層を設ける方法で
は、酸化時に繊維に損傷を与えるため、物性は低下する
傾向にある。更に、炭素繊維は500℃を超える酸化雰囲
気中では、燃焼するため使用できない。
このような背景から、高強度、高弾性率を有し、しか
もマトリックスとの濡れ性、接着性が良好で、従来広範
囲の分野で使用されているPAN系炭素繊維よりも安価な
新繊維の開発が強く要望されてきた。
また、炭素繊維のより高温での耐酸化性を向上させる
ことが種々の分野で強く望まれている。
一方、強化繊維として炭素繊維、無機質マトリックス
として炭素を用いた、所謂C/Cコンポジットや炭素成形
体は、比強度、比弾性、非酸化性雰囲気中における耐熱
性、靱性、摩擦特性に優れ、耐熱構造材、ブレーキ材と
して有望なものである。
しかし、C/Cコンポジットや炭素成形体はマトリック
スが炭素のみからなるため、酸化性雰囲気中の長時間の
使用は困難であり、また、摩擦特性においても潤滑性に
は優れているものの、耐摩耗性は必ずしも充分とは言え
ず、一層の機械的特性の向上が期待されている。
前記繊維における問題点を解決する方法として、 例えば、特開昭62−209139号公報、特開昭62−215016
号公報には、石炭系又は石油系ピッチ中の有機溶媒可溶
成分とポリシランを混合・加熱反応させてオルガノポリ
アリールシランを合成し、それを紡糸、不融化、焼成に
より炭化珪素繊維と炭素繊維の中間の性質を有する無機
質繊維を製造する方法が記載されている。
しかし、上記方法では、一方の出発物質として、有機
溶媒不溶分を全く含まないピッチを選び、オルガノポリ
アリールシラン製造においても前記不溶分が全く生成し
ない条件下で反応を行っている。
すなわち、得られる生成物である紡糸原料中には、炭
素繊維の強度発現に必須である配向性の成分が含まれて
おらず、上記紡糸原料からは高弾性無機繊維は得られて
いない。
更に上記公報の方法では、ピッチ成分が多くなる程、
不活性ガスの中の耐熱性は向上するものの、耐酸化性は
逆に低下し、しかも機械的特性が著しく低下するという
問題点がある。
また、前記炭素マトリックスの持つ本質的欠点を補う
方法として、Am.Ceram.Soc.Bull.62(1983)916におい
て、ウォーカー(B.E.Walker.Jr.)らは、C/Cコンポジ
ットに有機珪素高分子を含浸後、熱分解し、マトリック
スへの炭化珪素成分の導入を図るという方法について記
載しているが、得られた複合材の曲げ強度は158MPと低
強度である。
また、Proc.of Int.Symp.on Ceramic,Compon.for Eng
ine,1983,Japan,p505において、フィッツアー(E.Fitze
r)らは、C/Cコンポジットに珪素融液を含浸し、マトリ
ックスの炭化珪素化を図るという方法について記載して
いるが、得られた複合材は、そのマトリックス粒子間に
未反応のまま残存する金属珪素のため、1300℃以上の高
温ではクリープ変成を生じ、C/Cコンポジットの有する
高温特性を有していない。
上記のいずれのプロセスも、従来の複雑なC/Cコンポ
ジット製造過程に加え、さらに煩雑なプロセスが付加さ
れ、工業的利用の困難なものであった。
そこで、無機化により容易に、優れた炭素質無機繊維
や複合材料用マトリックス等に交換しうる前駆体ポリマ
ーの開発が強く要望されている。
(問題点を解決するための手段) 本発明の目的は、機械的性質、耐酸化性、複合材料用
マトリックスに対する適合性に優れた無機繊維や、機械
的特性、耐酸化性、耐磨耗性、耐熱性等に優れた複合材
料用マトリックス、成形体等の製造に好適な、上記問題
点を解決した前駆体ポリマー及びその製造方法を提供す
ることにある。
本発明によれば、 (A)結合単位(Si−CH2)、または結合単位(Si−C
H2)と結合単位(Si−Si)から主としてなり、珪素原子
の側鎖に水素原子、低級アルキル基、フェニル基及びシ
リル基からなる群から選ばれる置換基を有し、結合単位
(Si−CH2)の全数対結合単位(Si−Si)の全数の比が
1:0〜20の範囲にある有機珪素重合体単位、及び (B)外力を加えることにより、その外力の方向に分子
が配向することに起因する異方性(以下、潜在的異方性
という)を形成する成分を含む光学的に等方性の多環状
芳香族化合物単位、 からなり、前記(A)の珪素原子の少なくとも一部が、
前記(B)の芳香族環の炭素原子と珪素−炭素結合を有
するランダム共重合体を形成しており、前記(A)と前
記(B)の重量比率が1:0.5〜200であり、珪素原子の含
有割合が0.25〜30重量%、重量平均分子量が200〜11000
であることを特徴とする珪素含有多環状芳香族重合体が
提供される。
さらに本発明によれば、 i)結合単位(Si−CH2)、または結合単位(Si−CH2
と結合単位(Si−Si)から主としてなり、珪素原子の側
鎖に水素原子、低級アルキル基、フェニル基及びシリル
基からなる群から選ばれる置換基を有し、結合単位(Si
−CH2)の全数対結合単位(Si−Si)の全数の比が1:0〜
20の範囲にある有機珪素重合体の珪素原子の少なくとも
一部が、石油系又は石炭系のピッチあるいはその熱処理
物である多環状芳香族化合物の芳香族環の炭素と結合し
たランダム共重合体100重量部、及び ii)石油系又は石炭系ピッチを熱処理して得られるメソ
フェーズを含むピッチを水素化処理後、再び熱処理して
得られる潜在的異方性形成成分を含む光学的に等方性の
多環状芳香族化合物5〜900重量部を、 200〜500℃の範囲の温度で加熱反応及び/又は加熱溶融
することを特徴とする珪素含有多環状芳香族重合体の製
造方法が提供される。
まず、本発明の珪素含有多環状芳香族重合体について
説明する。以下の記載において、「部」はすべて「重量
部」であり、成分含有量の単位としてのパーセント
(%)は全て「重量%」である。
本発明の珪素含有多環状芳香族重合体は、構成成分
(A)、(B)からなり、構成成分(A)の珪素原子の
少なくとも一部が、構成成分(B)の芳香族環の炭素原
子と結合している。構成成分(A)と構成成分(B)の
重量比率は1:0.5〜200である。
構成成分(A)と構成成分(B)との重量比率が0.5
未満では、珪素含有多環状芳香族重合体中の配向性の成
分が不足し、例えば、この重合体より無機繊維を製造し
ても、強度、弾性率が低いものしか得られない。また、
上記割合が200を越えた場合は、珪素含有多環状芳香族
重合体中の有機珪素成分の不足により、この重合体の無
機化合物の耐酸化性が低下し、プラスチック等との濡れ
性が低くなる。
本発明の珪素含有多環状芳香族重合体は、珪素原子を
0.25〜30%含有しており、重量平均分子量が200〜11000
で、融点が220〜320℃である。
珪素含有多環状芳香族重合体中の珪素原子含有量が0.
25%未満では、該重合体の無機化物におけるSi、C、O
よりなる非晶相又はβ−SiC超微粒子の量が少なすぎる
ため、例えばFRPマトリックスに対する濡れ性や耐酸化
性の向上が顕著に表れず、30%を越えた場合は、上記無
機化物中のグラファイト超微粒結晶の配向による高弾
性、非酸化性雰囲気中での耐熱性向上が達成できない。
珪素含有多環状芳香族重合体の重量平均分子量が200
より低いものは、実質的に配向性成分をほとんど含んで
いないため、高性能の無機繊維、複合材、成形体を提供
できず、11000より大きい場合は、高融点となり流動性
に乏しく任意の形状に成形しにくくなる。
珪素含有多環状芳香族重合体の融点が220℃より低い
場合は、実質的に配向性成分を含んでいないうえ、この
重合体を紡糸して無機繊維を製造する場合、プレカーサ
ー糸は不融化時に融着しやすく、強度、弾性率の高い焼
成糸は得られない。一方、上記重合体の融点が320℃よ
り高い場合は、軟化・流動温度が高温となり、重合体の
分解が起こり好ましくない。
本発明の珪素含有多環状芳香族重合体は、320℃以下
の比較的低い温度で軟化・流動するため、例えば無機繊
維の前駆体として好適に使用される。
次に、本発明の珪素含有多環状芳香族重合体の製造方
法を説明する。
出発原料の一つである有機珪素重合体は、公知の方法
で合成することができ、例えばジメチルジクロロシラン
と金属ナトリウムの反応により得られるポリジメチルシ
ランを、不活性ガス中で400℃以上に加熱することによ
り得られる。
上記有機珪素重合体は、結合単位(Si−CH2)、また
は結合単位(Si−Si)と結合単位(Si−CH2)より主と
してなり、結合単位(Si−CH2)の全数対結合単位(Si
−Si)の全数の比率は1:0〜20の範囲にある。
有機珪素重合体の重量平均分子量は、一般的には300
〜1000、特に400〜800のものが、優れた無機繊維、複合
材、成形体等を得るための中間原料であるランダム共重
合体(1)を調整するために好ましい。
もう一つの出発原料である多環状芳香族化合物は石油
類及び/又は石炭類から得られるピッチで、特に石油類
の流動接触分解により得られる重質油、その重質油を蒸
留して得た留出成分又は残渣油及びそれらを熱処理して
得られるピッチである。原料油及び/または原料炭のソ
ース及び得られるピッチの性状、物性については特別の
制限はないが、最終生成物である珪素含有多環状芳香族
重合体を無機繊維製造の原料ドープとして用いる場合に
は、特に、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒド
ロフランなどの有機溶媒に不溶の成分を5〜98重量%含
有し、重量平均分子量(Mw)が30〜3000で、融点ガ70〜
200℃であるピッチが好ましい。重量平均分子量は以下
のようにして求めた値である。即ち、ビッチがベンゼ
ン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、クロロ
ホルム及びジクロロベンゼン等のゲルパーミュエーショ
ンクロマトグラフ(GPC)測定用有機溶媒不溶分を含有
しない場合はそのままGPC測定し、ピッチが上記有機溶
媒不溶分を含有する場合は、温和な条件で水添処理し、
上記有機溶媒不溶分を上記有機溶媒可能な成分に変えて
後GPC測定する。(上記有機溶媒不溶分を含有する重合
体の重量平均分子量は、上記と同様の処理を施し求めた
値である)。
ランダム共重合体(1)は、有機珪素重合体に、石油
系又は石炭系ピッチを添加し、不活性ガス中で好ましく
は250〜500℃の温度で加熱反応させることにより調製さ
れる。
ピッチの使用割合は、有機珪素重合体100部当たり83
〜1900部であることが好ましい。ピッチ成分の使用割合
が過度に小さい場合は、有機珪素成分が多くなり、潜在
的異方性の多環状芳香族化合物との相溶性が悪化し、溶
融時における均一性が損なわれ、繊維、成形体を製造し
た場合、弾性率が低下する。また、その割合が過度に多
い場合は、有機珪素重合体成分が少なすぎるため、本発
明の重合体から製造される複合材におけるマトリックス
との適合性、耐酸化性が低下する。
上記反応の反応温度が過度に低いと、珪素原子と芳香
族炭素の結合が生成しにくくなり、反応温度が過度に高
いと、生成したランダム共重合体(1)の分解及び高分
子量化が激しく起こり好ましくない。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が好適に使用
される。
潜在的異方性形成成分を含む光学的に等方性の多環状
芳香族化合物(以下、これを単に「多環状芳香族化合物
(2)」と言うことがある。)は、例えば、前記FCCス
ラリーオイルより軽質留分を除去して得られたピッチを
300〜500℃で熱処理する方法等により得られた光学的異
方性のメソフェーズピッチを、その中に含まれているメ
ソフェーズが実質的にキノリン可溶成分に変化し、ピッ
チ全体が光学的に等方性の均一相を形成するまで水素化
処理を行うことにより得ることができる。
水素化の方法は、芳香核への水素添加に採用されてい
る従来公知の種々の方法を用いることができ、例えば、
アルカリ金属、アルカリ土類金属及びそれらの化合物を
用いて還元する方法、電解還元法、錯体触媒等による均
一系の水素添加法、固体触媒を用いる不均一系での水素
添加法、無触媒下水素加圧による水素添加法、テトラリ
ン等水素供与物を用いての水素添加法等が挙げられる。
水素化の条件は、使用する方法により異なるが、400
℃以下の温度、200気圧以下の圧力で行うことができ
る。得られた水素化ピッチを、その熱安定性を高めるた
め、溶融状態で加熱保持することは、本発明の目的を何
ら妨げるものではない。この場合の加熱温度は、溶融温
度以上でかつ450度℃以下が好ましい。高温加熱によ
り、新たにメソフェーズを大量に生成させることは、軟
化点を上昇させ、好ましくない。
上記方法で得られた多環状芳香族化合物(2)は、一
般に融点が200〜300℃の範囲にあり、また、重量平均分
子量が200〜6000のキノリン可溶のピッチである。
ここで言う潜在的異方性とは、剪断力や延伸力などの
外力を加えることにより、その外力の方法に分子が配向
することに起因する異方性を言う。例えば、このピッチ
を用い、通常のピッチ系炭素繊維の製造方法に従い、紡
糸、不融化、焼成を行えば、繊維軸方向に配向性を持っ
た繊維が得られる。
ランダム共重合体(1)と多環状芳香族化合物(2)
を200〜500℃で加熱反応及び/又は加熱溶融し、珪素含
有多環状芳香族重合体を得る。
多環状芳香族化合物(2)の使用割合は、ランダム共
重合体(1)100部当たり5〜900部であることが好まし
く、5部未満では、生成する重合体における潜在的に配
向性を持った成分含有量が不足するため、得られた重合
体を無機化しても、高弾性の繊維や成形体は得られず、
また、900部より多い場合は、珪素成分の不足のためマ
トリックスに対する濡れ性に優れた繊維や、耐酸化性の
向上した成形体は得られない。
上記溶融混合温度が200℃より低いと不融部分が生
じ、系が不均一となり、また、溶融混合温度が500℃よ
り高いと縮合反応が激しく進行し、生成重合体が高融点
となり、その流動性が失われる。
(効果) 本発明による珪素含有多環状芳香族重合体は、重合体
中に有機珪素共重合体及び潜在的異方性の多環状芳香族
化合物を含有するため、この重合体を溶融紡糸、不融
化、焼成することにより、超微粒子のグラファイト結晶
上にSi、C、及びOからなる非晶質及び/又はβ−SiC
超微粒子が分散した構造の高強度、高弾性にして、しか
もプラスチックとの濡れ性に優れた炭素系無機繊維を得
ることができる。このように、機械特性とプラスチック
との濡れ性を同時に満足できる繊維は従来存在しなかっ
たため、特にFRP用の用途の開発が大きく期待される。
また、本発明の珪素含有多環状芳香族重合体から得ら
れる繊維は、炭素系繊維の高温酸化雰囲気での使用を可
能とすると共に本発明の重合体の成形加工により耐酸化
性炭素系材料を得ることができる。また、本発明は、ピ
ッチの有効利用の観点からも資するところ大なるものが
ある。
(実施例) 以下実施例によって本発明を説明する。
参考例1(有機珪素重合体の製法) 5lの三口フラスコに無水キシレン2.5l及びナトリウム
400gを入れ、窒素ガス気流下でキシレンの沸点まで加熱
し、ジメチルジクロロシラン1を1時間で滴下した。
滴下終了後、10時間加熱還流し沈澱物を生成させた。沈
澱を濾過し、メタノールついで水で洗浄して、白色粉末
のポリジメチルシラン420gを得た。
このポリジメチルシラン400gを、ガス導入管、攪拌
機、冷却器及び留出管を備えた3lの三口フラスコに仕込
み、攪拌しながら50ml/分の窒素気流下に420℃で加熱処
理して、留去受器に350gの無色透明な少し粘性のある液
体を得た。
この液体の数平均分子量は蒸気圧浸透法で測定したと
ころ470であった。
この物質の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、
650〜900cm-1と1250cm-1にSi−CH3の吸収、2100cm-1にS
i−Hの吸収、1020cm-1付近と1355cm-1にSi−CH2−Siの
吸収、2900cm-1と2950cm-1にC−Hの吸収が認められ、
またこの物質の遠赤外線吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、380cm-1にSi−Siの吸収が認められることから、得
られた液状物質は、主として(Si−CH2)結合単位及び
(Si−Si)結合単位からなり、珪素の側鎖に水素原子及
びメチル基を有する有機珪素重合体であることが判明し
た。
核磁気共鳴分析及び赤外線吸収分析の測定結果から、
この有機珪素重合体は(Si−CH2)結合単位の全数対(S
i−Si)結合単位の全数の比率がほぼ1:3である重合体で
あることが確認された。
上記有機珪素重合体300gをエタノールで処理して低分
子量物を除去して、数平均分子量が1200の重合体40gを
得た。
この物質の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、
上記と同様の吸収ピークが認められ、この物質は主とし
て(Si−CH2)結合単位及び(Si−Si)結合単位からな
り、珪素の側鎖に水素原子及びメチル基を有する有機珪
素重合体であることが判明した。
核磁気共鳴分析及び赤外線吸収分析の測定結果から、
この有機珪素重合体は(Si−CH2)結合単位の全数対(S
i−Si)結合単位の全数の比率がほぼ7:1である重合体で
あることが確認された。
参考例2(FCCスラリーオイルの製法) 石油留分のうち、経由以上の高沸点物をシリカ・アル
ミナ系分解触媒の存在下、500℃の温度で流動接触分解
・精留を行い、その塔底より残渣を得た。以下この残渣
をFCCスラリーオイルと呼ぶ。
このFCCスラリーオイルは、元素分析の結果、炭素原
子対水素原子の原子比(C/H)が0.75で、核磁気共鳴分
析による芳香炭素分率が0.55であった。
実施例1 (第1工程) 参考例2で得られたFCCスラリーオイル100gを窒素ガ
ス気流下420℃に加熱し、同温度における留出分を留去
後残渣を150℃にて熱時濾過し、同温度における不溶部
を除去し、軽質分除去ピッチ57gを得た。
この軽質分除去ピッチは60%のキシレン不溶分を含ん
でいた。
この軽質分除去ピッチ57gに参考例1で得た有機珪素
重合体25g及びキシレン20mlを加え、攪拌しながら昇温
し、キシレンを留去後400℃で4時間反応させ53gのラン
ダム共重合体(1)を得た。このランダム共重合体
(1)は赤外線吸収スペクトル測定の結果、有機珪素重
合体中に存在するSi−H結合(IR:2100cm-1)の減少及
び新たなSi−C(ベンゼン環の炭素)結合(IR:1135cm
-1)の生成が認められることにより有機珪素重合体の珪
素原子の一部が多環状芳香族環と直接結合した部分を有
していることがわかった。
また、この共重合体は、キシレン不溶部を含まず重量
平均分子量は1150、融点は245℃であった。
(第2工程) 参考例2で得られたFCCスラリーオイル400gを窒素ガ
ス気流下420℃に加熱し、同温度における留出分を留去
後150℃にて熱時濾過を行い、同温度における不溶部を
除去後400℃で9時間重縮合を行い熱処理ピッチを得
た。このピッチの融点は265℃で、軟化点が305℃で、キ
ノリン不溶分を25%含み、研磨面の偏光顕微鏡観察に異
方性を示すメソフェーズピッチであった。
このメソフェーズピッチをゼオライトを担体としたニ
ッケル・コバルト固体触媒を用い、360℃、水素圧100kg
/cm2で1時間水素化した。水素化生成物は、キノリン不
溶分を含まず、研磨面の偏光顕微鏡観察の結果、光学的
に等方性のピッチであった。このピッチを窒素気流下、
400℃で39分間保持して熱安定化を行い多環状芳香族重
合体(2)を得た。得られた多環状芳香族重合体(2)
は、キノリン不溶分を含まず融点が230℃で、軟化点が2
38℃の光学的に等方性のピッチであった。しかし、この
多環状芳香族重合体(2)を口径0.5mmのキャピラリー
を用い繊維状として、空気中300℃で不溶化後、窒素気
流中で1000℃で焼成し、その断面観察の結果、繊維軸方
向への配向が確認され、潜在的に異方性ピッチであるこ
とがわかった。
(第3工程) 第1工程で得られたランダム共重合体(1)40gと第
2工程で得られた多環状芳香族重合体(2)80gを窒素
雰囲気下350℃で1時間溶融混合し、均一な状態にある
珪素含有多環状芳香族重合体を得た。
この珪素含有多環状芳香族重合体は、キノリン不溶分
を含まず、キシレン不溶分が32%の光学的に等方性の重
合体であり、融点が241℃で、軟化点が262℃であった。
また、ゲルパーミュエイションクロマトグラフィー(GP
C)により重量平均分子量(Mw)を測定したところ、Mw
=980であった。
この珪素含有多環状芳香族重合体を空気中、1000℃に
加熱し、得られた灰分にアルカリ溶融、塩酸処理を施
し、水に溶解後、その水溶液について、高周波プラズマ
発光分光分析装置(ICP)を用い珪素濃度測定を行った
ところ、上記珪素含有多環状芳香族重合体中の珪素含量
は、5.4%であることがわかった。
実施例2 (第1工程) 軟質分除去ピッチ成分と有機珪素重合体成分との比率
を60部:40部に変更し、共重合温度を420℃、2時間とし
た以外は実施例1と同様にしてランダム共重合体(1)
を得た。この共重合体は、融点が238℃で、重量平均分
子量(Mw)が1400であり、キノリン不溶分は存在しなか
った。
(第2工程) メソフェーズ化条件を、420℃、4時間とし、水素化
を金属リチウムをエチレンジアミンを用い、95℃で2時
間水素化を行った以外は実施例1と同様にして多環状芳
香族重合体(2)を得た。この多環状芳香族重合体
(2)は融点が225℃で、軟化点が231℃で実施例1と同
様にして潜在的に異方性ピッチであることを確認した。
(第3工程) ランダム共重合体(1)と多環状芳香族重合体(2)
の仕込み比を、重量比で1:6とし、溶融混合温度を380℃
とした以外は実施例1と同様にして珪素含有多環状芳香
族重合体を得た。得られた重合体は重量平均分子量
(Mw)が800で、珪素含有率が3.2%で、融点が232℃
で、軟化点が245℃であった。
比較例1 (第1工程) 参考例2で得られたFCCスラリーオイル200gを窒素ガ
ス気流下、420℃に加熱し、同温度における軽質留分を
留去し軽質分除去ピッチを114g得た。得られたピッチ
を、130℃のキシレン500mlに溶解し、キシレン不溶分69
gを除去した後、得られたピッチ中のキシレン可溶部45g
に参考例1で得た有機珪素重合体45gを加え、400℃で6
時間共重合を行わせ32gのランダム共重合体を得た。
(第2工程) 第1工程で得たキシレン可溶のピッチ成分200gを、窒
素雰囲気下、400℃にて2時間熱処理しキノリン不溶分
を含まない光学的等方性のピッチ65gを得た。このピッ
チは、実施例1の方法により剪断を作用させても、まっ
たく配向せず潜在的異方性成分を含んでいないものであ
った。
(第3工程) 第1工程で得たランダム共重合体30gと第2工程で得
た熱処理ピッチ60gを340℃で、1時間加熱混合した。得
られた生成物は、重量平均分子量(Mw)が1450で珪素含
有率が9.8%であったが、融点は185℃であった。
比較例2 実施例1で得た軽質分除去ピッチ100gに参考例1で得
た有機珪素重合体50gを加え400℃で6時間反応し、79g
のランダム共重合体を得た。
得られた共重合体は融点が252℃、珪素含有率が15
%、平均重量分子量(Mw)は1400であった。
実施例3 実施例1及び実施例2で得た珪素含有多環状芳香族重
合体を紡糸ドープとし、口径0.3mmのノズルを用い溶融
紡糸した。得られたプレカーサー糸を空気流通下、300
℃にて不融下し、アルゴン気流下1300℃で焼成し、炭素
化無機繊維を得た。この繊維の糸径、引張強度、引張弾
性率は、それぞれ、実施例1のドープの場合で、10μ、
260kg/mm2、20t/mm2、実施例2のドープの場合で、9
μ、290kg/mm2、24t/mm2であった。
走査型電子顕微鏡観察により、両繊維ともピッチ繊維
で用いられるラジアル構造に類似した組織の断面構造を
しており、ドープ中のメソフェーズ成分が、紡糸、不融
化、焼成過程で繊維軸方向に配向したことを示してい
た。
比較例3 比較例1及び2で得られた重合体を実施例9と同条件
下で紡糸、不融化、焼成を行い焼成糸を得た。各々の繊
維の糸径、引張強度、引張弾性率は、それぞれ、比較例
1のドープの場合で、17μ、95kg/mm2、6.0t/mm2、比較
例2のドープの場合で、16μ、75kg/mm2、5.0t/mm2であ
った。
また、繊維断面は何ら配向した構造の部分を含んでい
なかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D01F 9/10 D01F 9/10 A (72)発明者 渋谷 昌樹 山口県宇部市大字小串1978番地の5 宇 部興産株式会社宇部研究所内 審査官 谷口 浩行 (56)参考文献 特開 平2−252736(JP,A) 特開 平2−167343(JP,A) 特開 平2−84436(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)結合単位(Si−CH2)、または結合
    単位(Si−CH2)と結合単位(Si−Si)から主としてな
    り、珪素原子の側鎖に水素原子、低級アルキル基、フェ
    ニル基及びシリル基からなる群から選ばれる置換基を有
    し、結合単位(Si−CH2)の全数対結合単位(Si−Si)
    の全数の比が1:0〜20の範囲にある有機珪素重合体単
    位、及び (B)外力を加えることにより、その外力の方向に分子
    が配向することに起因する異方性を形成する成分を含む
    光学的に等方性の多環状芳香族化合物単位、 からなり、前記(A)の珪素原子の少なくとも一部が、
    前記(B)の芳香族環の炭素原子と珪素−炭素結合を有
    するランダム共重合体を形成しており、前記(A)と前
    記(B)の重量比率が1:0.5〜200であり、珪素原子の含
    有割合が0.25〜30重量%、重量平均分子量が200〜11000
    であることを特徴とする珪素含有多環状芳香族重合体。
  2. 【請求項2】i)結合単位(Si−CH2)、または結合単
    位(Si−CH2)と結合単位(Si−Si)から主としてな
    り、珪素原子の側鎖に水素原子、低級アルキル基、フェ
    ニル基及びシリル基からなる群から選ばれる置換基を有
    し、結合単位(Si−CH2)の全数対結合単位(Si−Si)
    の全数の比が1:0〜20の範囲にある有機珪素重合体の珪
    素原子の少なくとも一部が、石油系又は石炭系のピッチ
    あるいはその熱処理物である多環状芳香族化合物の芳香
    環の炭素と結合したランダム共重合体100重量部、及び ii)石油系又は石炭系ピッチを熱処理して得られるメソ
    フェーズを含むピッチを水素化処理後、再び熱処理して
    得られる潜在的異方性形成成分を含む光学的に等方性の
    多環状芳香族化合物5〜900重量部を、 200〜500℃の範囲の温度で加熱反応及び/又は加熱溶融
    することを特徴とする珪素含有多環状芳香族重合体の製
    造方法。
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