JPH089807B2 - ハイブリッド繊維 - Google Patents

ハイブリッド繊維

Info

Publication number
JPH089807B2
JPH089807B2 JP2025278A JP2527890A JPH089807B2 JP H089807 B2 JPH089807 B2 JP H089807B2 JP 2025278 A JP2025278 A JP 2025278A JP 2527890 A JP2527890 A JP 2527890A JP H089807 B2 JPH089807 B2 JP H089807B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
polymer
inorganic fiber
polycyclic aromatic
carbon
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2025278A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH03234820A (ja
Inventor
武民 山村
純一 釘本
敏弘 石川
泰広 塩路
昌樹 渋谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ube Corp
Original Assignee
Ube Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ube Industries Ltd filed Critical Ube Industries Ltd
Priority to JP2025278A priority Critical patent/JPH089807B2/ja
Publication of JPH03234820A publication Critical patent/JPH03234820A/ja
Publication of JPH089807B2 publication Critical patent/JPH089807B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Ceramic Products (AREA)
  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Inorganic Fibers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、複合材料の強化材として好適なハイブリッ
ド繊維に関する。
(従来の技術及びその問題点) 炭素繊維は、軽量でしかも高強度、高弾性であるた
め、スポーツ・レジャー用品をはじめ、航空機、自転
車、建材など広い分野に亙ってその利用が図られてい
る。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリルを原料とし
たPAN系炭素繊維と、石油系、石炭系のピッチを原料と
する、所謂ピッチ系炭素繊維が知られている。
ピッチ系炭素繊維は、一般に強度がPAN系炭素繊維に
比べて劣るが、原料が安価なことから、強度を高める方
法について種々の検討がなされ、例えば、特開昭59-223
316号公報には、効果的にメソフェーズを生成させ、紡
糸時に配向させる方法が開示されている。
しかし、基本的には、炭素繊維は結晶性の繊維である
ため、硬く、毛羽が発生し易く、また複合材料とする際
マトリックスとの濡れ性も劣るという欠点がある。
そこで種々の炭素繊維の表面処理法が考案され、現在
知られている方法として、繊維に柔軟性を付与するとと
もに、毛羽発生を抑制する目的で、ポリビニルアルコー
ル、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂のようなサ
イジング剤を表面に塗布する方法や、マトリックスとの
接着性を向上させる目的でその表面を乾式又は湿式酸化
処理する方法等がある。
これらの処理のうち、特に表面酸化層を設ける方法で
は、酸化時に繊維に損傷を与えるため物性は低下する傾
向にある。更に、炭素繊維は500℃を超える酸化雰囲気
中では、燃焼するため使用できない。
このような背景から、高強度、高弾性率を有し、しか
もマトリックスとの濡れ性、接着性が良好で、従来広範
囲の分野で使用されているPAN系炭素繊維よりも安価な
新繊維の開発が強く要望されてきた。
また、炭素繊維のより高温での耐酸化性を向上させる
ことが種々の分野で強く望まれている。
この要望を満たす方法として、例えば、特開昭62-209
139号公報、特開昭62-215016号公報に記載された方法が
提案されている。
これらの公報には、石炭系又は石油系ピッチ中の有機
溶媒可溶成分とポリシランを混合・加熱反応させてオル
ガノポリアリールシランを合成し、それを紡糸、不融
化、焼成により炭化珪素繊維と炭素繊維の中間の性質を
有する無機質繊維を製造する方法が記載されている。
しかし、上記方法では、一方の出発物質として有機溶
媒不溶分を全く含まないピッチを選び、オルガノポリア
リールシラン製造においても前記不溶分が全く生成しな
い条件下で反応を行っている。
従って得られる生成物である紡糸原料中には、炭素繊
維の強度発現に最も重要な成分と言われているメソフェ
ーズ状態を含む前記不溶分が全く含まれていない。
上記紡糸原料を紡糸、不融化、焼成して得られる無機
繊維は、条件によっては炭素の黒鉛結晶に相当する(00
2)回折線は得られるものの、ピッチ繊維特有の配向は
認められず高弾性率のものは得られない。更に上記公報
の方法では、ピッチ成分が多くなる程、不活性ガス中の
耐熱性は向上するものの、耐酸化性は低下し、しかも機
械的特性が著しく低下するという問題点がある。
本出願人は、特願平1-206640号明細書及び特願平1-22
4511号明細書に、上記問題点を解決した、複合材料用マ
トリックスに対する濡れ性が良好で、炭化珪素繊維に比
べはるかに弾性率が高く、しかもピッチ系及びPAN系炭
素繊維に比べ200〜300℃も耐酸化性の向上した高強度・
高弾性無機繊維を開示した。
(問題を解決するための手段) 本発明の目的は、上記提案の繊維の少なくとも一種を
成分とするハイブリッド繊維の提供にある。
本発明の別の目的は、機械的特性に優れた繊維強化複
合材料製造用の強化材として好適なハイブリッド繊維の
提供にある。
本発明の他の目的は、耐食性、耐熱性、耐酸化性に優
れた繊維強化複合材料製造用の強化材として好適なハイ
ブリッド繊維の提供にある。
本発明のハイブリッド繊維は、無機繊維I、無機繊維
II、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊
維、窒化珪素繊維、アラミド繊維、炭化珪素繊維、アラ
ミド繊維、カーボンを芯線とする炭化珪素繊維及びSi-M
-C-O繊維(MはTi又はZrを示す。)からなる群から選ば
れた少なくとも二種の繊維からなり、かつ該繊維の構成
成分として無機繊維I、無機繊維IIの少なくとも一方を
含有するハイブリッド繊維であって、 前記無機繊維Iは、珪素含有多環状芳香族重合体から
得られる無機繊維であり、その構成成分が i)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある多環状
芳香族化合物から導かれるラジアル構造、オニオン構
造、ランダム構造、コアラジアル構造、スキンオニオン
構造及びモザイク構造からなる群から選ばれる少なくと
も一種の結晶配列状態を示す炭素質、 ii)該重合体を構成する光学的等方性の多環状芳香族化
合物から導かれる、無配向状態の結晶質炭素及び/又は
非晶質炭素、及び iii)Si、C及びOから実質的になる非晶質相及び/又
は粒径が500Å以下の実質的にβ−SiCからなる結晶質超
微粒子と非晶質のSiOx(0<x≦2)からなる集合体で
あり、 構成元素の割合が、Si;30〜70重量%C;20〜60重量%
及びO;0.5〜10重量%であるSi-C-O物質 よりなる無機繊維であり、 前記無機繊維IIは、チタン、ジルコニウム及びハフニ
ウムからなる群から選ばれる少なくとも一種類の元素及
び珪素を含有する多環状芳香族重合体から得られる無機
繊維であって、その構成成分が、 a)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある多環状
芳香族化合物から導かれるラジアル構造、オニオン構
造、ランダム構造、コアラジアル構造、スキンオニオン
構造及びモザイク構造からなる群から選ばれる少なくと
も一種の結晶配列状態を示す炭素質、 b)該重合体を構成する有機溶媒不溶分を含む光学的等
方性の多環状芳香族化合物から導かれる、無配向状態の
結晶質炭素及び/又は非晶質炭素、及び c)Si、M、C及びOから実質的になる非晶質物質、
及び/又は 実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCの固溶体及びMC
1-xからなる粒径が500Å以下の結晶超微粒子と、非晶質
のSiOy及びMOzとの集合体であり 構成元素の割合がSi;5〜70重量%、M;0.5〜45重量
%、C;20〜40重量%及びO;0.01〜30重量%である、Si-M
-C-O物質(上記式中、MはTi、Zr及びHfから選択される
少なくとも一種の元素であり、0<x<1、0<y≦
2、0<z≦2である。) よりなる無機繊維である。
本発明における無機繊維I及び無機繊維IIについてま
ず説明する。以下の説明における「部」は全て「重量
部」であり、「%」は「重量%」である。
本発明における無機繊維Iは前述した構成成分i)、
ii)及びiii)からなっており、Si;0.01〜29重量%、C;
70〜99.9重量%及びO;0.001〜10重量%、好ましくはSi;
0.1〜25重量%、C;74〜99.8重量%及びO;0.01〜10重量
%から実質的に構成されている。
無機繊維IIは前述した構成成分a)、b)及びc)か
らなっており、Si;0.01〜30%、M;0.01〜10%、C;65〜9
9.9%及びO;0.001〜10%、好ましくはSi;0.1〜25%、M;
0.01〜8%、C;74〜99.8%及びO;0.01〜8%から実質的
に構成されている。
無機繊維I及び無機繊維IIの構成成分である結晶質炭
素は500Å以下の結晶子サイズを有し、1.5Åの分解能を
有する高分解能電子顕微鏡において、繊維軸方向に配向
した3.2Åの(002)面に相当する微細なラティスイメー
ジ像が観察されうる超微粒子のグラファイト結晶であ
る。無機繊維中の結晶質炭素は、ラジアル構造、オニオ
ン構造、ランダム構造、コアラジアル構造、スキンオニ
オン構造、モザイク構造及び一部ラジアル構造を含むラ
ンダム構造をとることができる。これは、原料中にメソ
フェーズ多環状芳香族化合物が存在することに起因す
る。
無機繊維Iにおける構成成分i)及びii)の総和100
部に対する構成成分iii)の割合は0.015〜200部であ
り、且つ構成成分i)、ii)の比率は1:0.02〜4であ
る。
構成成分i)及びii)の総和100部に対する構成成分i
ii)の割合が0.015未満の場合は、ほとんどピッチ繊維
と変わらず、耐酸化性やマトリックス炭素との界面接着
力の向上は望めず、上記割合が200部を越えた場合はグ
ラファイトの微細結晶が効果的には生成せず、高弾性率
の繊維が得られない。
無機繊維IIにおける構成成分a)及びb)の総和100
部に対する構成成分c)の割合は0.015〜200部であり、
且つ構成成分a)とb)との比率は1:0.02〜4である。
構成成分a)及びb)の総和100部に対する構成成分
c)の割合が0.015未満の場合は、ほとんどピッチ繊維
と変わらず、耐酸化性や濡れ性の向上は望めず、上記割
合が200部を越えた場合はグラファイトの微細結晶が効
果的には生成せず、高弾性率の繊維がえられない。
無機繊維I及び無機繊維IIにおいては、層間隔が小さ
く三次元的配列が付与された微結晶が効果的に生成して
おり、その微細結晶を包み込むように珪素原子が非常に
均一に分布している。
また、珪素の分布状態は、焼成時の雰囲気や原料中の
メソフェーズの大きさ、濃度によっても制御することが
できる。例えば、メソフェーズを大きく成長させた場
合、珪素含有ポリマーは繊維表面相に押し出され易く、
焼成後繊維表面に珪素に富む層を生成させることができ
る。
次に、本発明における無機繊維I及び無機繊維IIの製
造方法について説明する。
無機繊維Iは、以下の第1工程〜第4工程で製造する
ことができる。
第1工程: 出発原料の一つである有機珪素重合体は、公知の方法
で合成することができ、例えば、ジメチルジクロロシラ
ンと金属ナトリウムの反応により得られるポリメチルシ
ランを不活性ガス中で400℃以上に加熱することにより
得られる。
上記有機珪素重合体は、結合単位(Si-CH2)、又は結合
単位(Si-CH2)と結合単位(Si-Si)より主としてなり、
結合単位(Si-CH2)の全数対結合単位(Si-Si)の全数の
比率は1:0〜20の範囲内にある。
有機珪素重合体の重量平均分子量(Mw)は、一般的には
300〜1000で、Mwが400〜800のものが、優れた炭素系無
機繊維を得るための中間原料である前駆重合体(1)を
調製するために特に好ましい。
もう一つの出発原料である多環状芳香族化合物は石油
類及び/又は石炭類から得られるピッチで、特に好まし
いピッチは、石油類の流動接触分解により得られる重質
油、その重質油を蒸留して得た留出成分又は残渣油及び
それらを熱処理して得られるピッチである。
上記ピッチ中には、ベンゼン、トルエン、キシレン、
テトラヒドロフランなどの有機溶媒に不溶の成分が5〜
98重量%含まれていることが好ましい。上記の不溶成分
が5重量%未満のピッチを原料として用いた場合、強
度、弾性率共に優れた無機質繊維は得られず、また、98
重量%より多いピッチを原料として用いた場合、共重合
体の分子量上昇が激しく、一部コーキングの起こる場合
もあり、紡糸困難な状態になる。
このピッチの重量平均分子量(Mw)は、100〜3000であ
る。
重量平均分子量は以下のようにして求めた値である。
即ち、ピッチがベンゼン、トルエン、キシレン、テトラ
ヒドロフラン、クロロホルム及びジクロロベンゼン等の
ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)測定用
有機溶媒不溶分を含有しない場合はそのままGPC測定
し、ピッチが上記有機溶媒不溶分を含有する場合は、温
和な条件で水添処理し、上記有機溶媒不溶分を上記有機
溶媒可溶な成分に変えて後GPC測定する。以下、上記有
機溶媒不溶分を含有する重合体の重量平均分子量は、上
記と同様の処理を施し求めた値である。
前駆重合体(1)は、有機珪素重合体に、石油系又は
石炭系ピッチを添加し、不活性ガス中で好ましくは250
〜500℃の範囲の温度で加熱反応させることにより調製
される。
ピッチの使用割合は、有機珪素重合体100部当たり83
〜4900部であることが好ましい。ピッチの使用割合が過
度に小さい場合は、得られる無機繊維中の炭化珪素成分
が多くなり、高弾性率を有する無機繊維が得られなくな
り、また、その割合が過度に多い場合は、炭化珪素成分
が少なくなり、マトリックス炭素との界面接着性、耐酸
化性に優れた無機繊維が得られなくなる。
上記反応の反応温度が過度に低いと、珪素原子と芳香
族炭素の結合が生成しにくくなり、反応温度が過度に高
いと、生成した前駆重合体(1)の分解及び高分子量化
が激しく起こり好ましくない。
メソフェーズ多環状芳香族化合物(2)は、例えば、
石油系又は石炭系ピッチを不活性ガス中で300〜500℃に
加熱し、生成する軟質留分を除去しながら縮重合するこ
とによって調製することができる。
上記縮重合反応温度が過度に低いと縮合環の成長が充
分でなく、またその温度が過度に高いとコーキングによ
り不融化物の生成が激しくなる。
上記のメソフェーズ多環状芳香族化合物(2)は、融
点が200〜400℃の範囲にあり、また、重量平均分子量が
200〜10000である。
メソフェーズ多環状芳香族化合物(2)の中でも、20
〜100%の光学的異方性度を有し、30〜100%のベンゼ
ン、トルエン、キシレン又はテトラヒドロフランに対す
る不溶分を含むものが、機械的性能上優れた無機繊維を
得るために特に好ましい。
第1工程では、前駆重合体(1)とメソフェーズ多環
状芳香族化合物(2)とを200〜500℃の温度範囲で加熱
溶融及び/又は加熱反応し、珪素含有多環状芳香族重合
体からなる紡糸ポリマーを調製する。
メソフェーズ多環状芳香族化合物(2)の使用割合は
前駆重合体(1)100部当たり5〜50000部であることが
好ましく、5部未満では、生成物におけるメソフェーズ
含有量が不足するため、高弾性の焼成糸が得られず、ま
た、50000部より多い場合は、珪素成分の不足のためマ
トリックス炭素との界面接着性、耐酸化性に優れた無機
繊維が得られなくなる。
上記珪素含有多環状芳香族重合体の重量平均分子量は
200〜11000で、融点が200〜400℃である。
第2工程: 第1工程で得られる珪素含有多環状芳香族重合体であ
る紡糸ポリマーを加熱溶融させて、場合によってはこれ
を濾過してミクロゲル、不純物等の紡糸に際して有害と
なる物質を除去し、これを通常用いられる合成繊維紡糸
装置により紡糸する。紡糸する際の紡糸原液の温度は原
料ポリマーの軟化温度によって異なるが、220〜420℃の
範囲の温度が有利である。
前記紡糸装置において、必要に応じて紡糸筒を取付
け、該紡糸筒内の雰囲気を空気、不活性ガス、熱空気、
熱不活性ガス、スチーム、及びアンモニアガスからなる
群から選ばれる一種以上の雰囲気とした後、巻取り速度
を大きくすることにより細い直径の繊維を得ることがで
きる。前記溶融紡糸における紡糸速度は原料の平均分子
量、分子量分布、分子構造によって異なるが、50〜5000
m/分の範囲であることが好ましい。
第3工程: 第2工程で得られる紡糸繊維を張力又は無張力の作用
もとで不融化する。
代表的な不融化方法は、紡糸繊維を酸化性雰囲気中で
加熱する方法である。不融化の温度は好ましくは50〜40
0℃の範囲の温度である。不融化温度が過度に低いと紡
糸原糸を構成するポリマーのはしかけが起こらず、ま
た、この温度が過度に高いとポリマーが燃焼する。
不融化の目的は、紡糸繊維を構成するポリマーを三次
元構造の不融・不溶のはしかけ状態にし、次工程の焼成
の際に溶融せず、且つ隣接した繊維と融着しないように
することである。不融化の際の酸化性雰囲気を構成する
ガスとしては、空気、オゾン、酸素、塩素ガス、臭素ガ
ス、アンモニアガス、及びこれらの混合ガスが挙げられ
る。
上記とは別の不融化方法として、紡糸繊維に酸化性雰
囲気あるいは非酸化性雰囲気で、張力あるいは無張力で
必要に応じて低温加熱しながら、γ線照射、あるいは電
子線照射して不融化する方法も採用することができる。
このγ線あるいは電子線を照射する目的は、紡糸繊維
を形成するポリマーを、さらに重合させることによっ
て、紡糸原糸が融解し、繊維形状を失うことを防ぐこと
にある。
γ線あるいは電子線の照射線量は106〜1010ラッドが
適当である。
照射は真空、不活性ガス雰囲気下、あるいは空気、オ
ゾン、酸素、塩素ガス、臭素ガス、アンモニアガス及び
これらの混合ガスのような酸化性ガス雰囲気で行うこと
ができる。
照射による不融化は室温で行うこともでき、必要であ
れば50〜200℃の温度範囲で加熱しながら行うことによ
って不融化をより短時間で達成させることもできる。
不融化は、無張力下で行うと、前記紡糸繊維は収縮の
ため波状の形を呈するようになるが、次工程の焼成工程
で矯正できる場合もあり、張力は必ずしも必要ないが、
張力を作用させる場合には、その張力の大きさは不融化
時に紡糸繊維が収縮して波状となることを少なくとも防
止できる以上の張力を作用させると良い結果が得られ
る。
不融化の際に、作用させる張力としては、1〜500g/m
m2の範囲が好ましく、1g/mm2以下の張力を作用させても
繊維をたるませないような緊張を与えることができず、
500g/mm2以上の張力を作用させると繊維が切断すること
がある。
第4工程: 第3工程で得られる不融化糸を、真空あるいは不活性
ガス雰囲気中で800〜3000℃の範囲の温度で焼成するこ
とによって、主として炭素、珪素、酸素からなる無機繊
維が得られる。
焼成工程において、張力を作用させることは必ずしも
必要ないが0.001〜100kg/mm2の範囲で張力を作用させな
がら高温焼成すると屈曲を少なくした強度の高い無機繊
維を得ることができる。
加熱過程において、約700℃から無機化が激しくな
り、約800℃でほぼ無機化が完了するものと推定され
る。従って、焼成は、800℃以上の温度で行うことが好
ましい。また、3000℃より高い温度を得るには高価な装
置を必要とするため3000℃より高温での焼成は、コスト
面からみて実際的でない。
無機繊維IIは以下の第1工程〜第4工程で製造するこ
とができる。
第1工程: 無機繊維I製造の第1工程の前駆重合体(1)の調製
方法と同様にして、有機珪素重合体とピッチより前駆重
合体(1)が調製される。
次に、前駆重合体(1)と式MX4で示される遷移金属
化合物とを100〜500℃の範囲の温度で反応させランダム
共重合体(2)を調製する。
上記MX4において、MはTi、Zr及びHfから選択される
少なくとも一種の元素であり、Xは縮合により、Mが前
駆重合体(1)の珪素と直接あるいは酸素原子を介して
結合し得るものであればよく、特に規定はないが、ハロ
ゲン原子、アルコキシ基又はβ−ジケトンのような錯体
形成基が好ましい。
反応温度が過度に低いと、前駆重合体(1)と式MX4
との縮合反応が進行せず、反応温度が過度に高いと、M
を介した前駆重合体(1)の架橋反応が過度に進行しゲ
ル化が起こったり、前駆重合体(1)自体が縮合し高分
子量化したり、あるいは、場合によってはMX4が揮散し
好ましくない。
一例として、MがTiで、XがOC4H9の場合、反応温度
は200〜400℃が適している。
この反応によって、前駆重合体(1)の珪素原子の少
なくとも一部を金属Mと直接あるいは酸素原子を介して
結合させたランダム共重合体(3)が調製される。
金属Mは前駆重合体(1)の珪素原子に-MX3あるいは
-O-MX3のような結合様式で側鎖状に結合することもでき
るし、前駆重合体(1)の珪素原子に直接又は酸素を介
して架橋した結合様式もとり得る。
ランダム共重合体(3)を調製する方法としては、前
述の方法以外に、有機珪素重合体とMX4を反応させ、得
られた生成物にピッチをさらに反応させて調製する方法
も可能である。
第1工程においては最後にランダム共重合体(3)と
メソフェーズ多環状芳香族化合物(2)を加熱反応及び
/又は加熱溶融して、金属含有多環状芳香族重合体を調
製する。
メソフェーズ多環状芳香族化合物(2)は、無機繊維
I製造の第1工程に記載の調製方法と同様にして調製さ
れる。
メソフェーズ多環状芳香族化合物(2)は、融点が20
0〜400℃の範囲にあり、また、重量平均分子量が200〜1
0000である。
メソフェーズ多環状芳香族化合物の中でも、20〜100
%、特に40〜100%の光学的異方性度を有し、30〜100%
のベンゼン、トルエン、キシレン又はテトラヒドロフラ
ンに対する不溶分を含むものが、機械的性能の優れた無
機繊維IIを得るために好ましい。
メソフェーズ多環状芳香族化合物(2)の使用割合は
ランダム共重合体(3)100部当たり5〜50000部、より
好ましくは5〜10000部であり、5部未満では、生成物
におけるメソフェーズ含有量が不足するため、高弾性の
焼成糸が得られず、また、50000部より多い場合は、珪
素成分の不足のため、マトリックスに対する濡れ性、耐
酸化性に優れた無機繊維が得られなくなる。
ランダム共重合体(3)とメソフェーズ多環状芳香族
化合物(2)とを200〜500℃の温度範囲で加熱溶融及び
/又は加熱反応させることにより、ランダム共重合体
(3)の少なくとも一部がメソフェーズ多環状芳香族化
合物(2)と結合した金属含有多環状芳香族重合体が得
られる。ただし、ここで言う結合とは、珪素と多環状芳
香族化合物の炭素との化学結合及び/又はランダム共重
合体(2)中の珪素と化学結合した多環状芳香族環部分
とメソフェーズ多環状芳香族化合物との間のファンデル
ワールス結合等の物理的結合を意味する。
上記溶融混合温度が200℃より低いと不融部分が生
じ、糸が不均一となり、無機繊維の強度、弾性率に悪影
響を及ぼし、また、溶融混合温度が500℃より高いと縮
合反応が激しく進行し、生成重合体が高融点となり、重
合体の紡糸が著しく困難となる。
金属含有多環状芳香族重合体を調製する方法として
は、前述の方法以外に、有機珪素重合体とピッチを反応
させ、得られた生成物にメソフェーズピッチとMX4を同
時に又は順次添加し、さらに反応させて調製する方法も
可能である。
金属含有多環状芳香族重合体の重量平均分子量は200
〜11000で、融点が200〜400℃である。
第2工程: 第1工程で得られる金属含有多環状芳香族重合体であ
る紡糸ポリマーを前記した無機繊維I製造の第2工程と
同様にして紡糸する。
第3工程: 第2工程で得られる紡糸繊維を前記した無機繊維I製
造の第3工程と同様にして不融化する。
第4工程: 第3工程で得られる不融化糸を、前記した無機繊維I
製造の第4工程と同様にして焼成することによって、主
として炭素、M、珪素及び酸素からなる無機繊維IIが得
られる。
なお、無機繊維IIの構成成分c)であるSi-M-C-O物質
の形態は、第1工程乃至第4工程で採用される製造条件
によって決定される。一般的に言えば、第4工程での焼
成温度が例えば1000℃より低い場合、Si、M、C、Oか
らなる非晶質より実質的に構成される。
一方、第4工程での焼成温度が例えば1700℃以上の場
合、実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCの固溶体及びMC
1-x(ただし、0<x<1)からなる粒径500Å以下の超
微粒子及びSiOy(ただし、0<y≦2)、MOz(ただ
し、0<z≦2)からなる非晶質からなる集合体より実
質的に構成される。
上記温度の中間では、各集合体の混合系より構成され
ている。また、無機繊維中の酸素量は、例えば第1工程
におけるMX4の添加比率又は第3工程における不融化条
件により制御することができる。
また、構成成分c)の分布状態は、焼成時の雰囲気や
原料中のメソフェーズの大きさ、濃度によっても制御す
ることができる。例えば、メソフェーズを大きく成長さ
せた場合、構成成分c)は繊維表面相に押し出されやす
くなる。
本発明において上記無機繊維I及び/または無機繊維
IIと共にハイブリッド繊維を構成する繊維は炭素繊維、
ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊
維、炭化珪素繊維、アラミド繊維、カーボンを芯線とす
る炭化珪素繊維及びSi-M-C-O繊維(MはTi又はZrを示
す。)が挙げられる。
上記のSi-M-C-O繊維は、 (i)Si、M、C、及びOから実質的になる非晶質、又
は (ii)実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCの固溶体及び
MC1-xの粒径が500Å以下の各結晶質超微粒子、及び非晶
質のSiO2とMO2からなる集合体、又は (iii)上記(i)の非晶質と上記(ii)の結晶質超微
粒子集合体の混合系、 (ただし、上式中のMはTi又はZrを示し、0<x<1
を示す) からなる無機繊維である。この無機繊維は、例えば、特
公昭60-1405号公報、同58-5286号公報、同60-20485号公
報、同59-44403号公報の各明細書に記載の方法によって
調製することができる。
本発明のハイブリッド繊維を複合材の強化材として用
いる場合、繊維そのものを単軸方向、多軸方向に配合さ
せる方法、あるいは平織、朱子織、模紗織、綾織、から
み織、らせん織、三次元織物などの各種織物にして使用
する方法、あるいはチョップドファイバーとして使用す
る方法等がある。
ハイブリッド繊維中の無機繊維I及び/又は無機繊維
IIの割合は10体積%以上、好ましくは20〜90体積%であ
る。10体積%より低いと、複合材料における無機繊維に
よるマトリックスとの間の結合強さの向上、強化効率の
向上という本発明の目的とする機械的性質の改善効果に
乏しい。
ハイブリッド繊維のハイブリッド状態を形態別にみる
と(1)ある種の繊維の層と別種の繊維の層を積層した
層間ハイブリッド(2)一つの層の中ですでにハイブリ
ッド化されている層内ハイブリッドの2種類が基本で、
(3)それらの組合せがある。組合せの主な型は以下の
6種である。
(a)単層テープの積層(層単位で異質繊維を交互に積
層したもの) (b)サンドウィッチ型(層単位で異質繊維をサンドウ
ィッチに積層したもの) (c)リブ補強 (d)混織トウ(単繊維単位で異質の繊維をハイブリッ
ドしたもの) (e)混織テープの積層(糸条単位で異質の繊維を層内
でハイブリッドしたもの) (f)混織表層 本発明のハイブリッド繊維の複合材料中の含有割合は
10〜70体積%が好ましい。上記含有割合が10体積%より
少ないとハイブリッド繊維による補強効果が充分に発現
されず、また70体積%を超えるとマトリックスの量が少
ないため、ハイブリッド繊維の間隙を充分にマトリック
スで充填することができない。
従来の炭素繊維に比べ本発明のハイブリッド繊維を強
化材として用いることは、以下のような利点がある。
即ち、複合材料としての用途として、一部の面又は部
分としての優れた特性が要求される場合、例えば、複合
材表面の耐磨耗性が要求される場合、無機繊維I及び/
又は無機繊維IIとボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素
繊維、炭化珪素繊維、カーボンを芯線とする炭化珪素繊
維またはSi-M-C-O繊維とハイブリド化して用いることが
有利であり、逆に潤滑性を要求される場合、無機繊維I
及び/又は無機繊維IIと炭素繊維とをハイブリッドする
ことが有利である。また、ある方向にのみ引張強度が要
求される場合、高強度炭素繊維を強度方向に配列し高強
度化し、他の方向には無機繊維I及び/又は無機繊維II
で強化することにより圧縮破壊や層間剥離を防止すると
いった方法も有効である。
(効果) 本発明のハイブリッド繊維は、繊維強化プラスチック
複合材料、繊維強化金属複合材料、繊維強化セラミック
複合材料(この繊維強化セラミック複合材料には、主と
して炭素をマトリックスとする繊維強化炭素複合材料も
含まれるものとする。)等の複合材料の強化材として好
適に使用することができる。
例えば、本発明のハイブリッド繊維を用い得た繊維強
化プラスチック複合材料は、層間剪断強度に優れ、プラ
スチックと繊維との間の結合強度に優れているため、長
期間の苛酷な環境下での使用に耐えるものである。
本発明のハイブリッド繊維を用い得た繊維強化炭素質
複合材料は、炭素マトリックスとの接着性が改善される
ため、高強度、高弾性にして靱性に優れた炭素質複合材
料であるとともに、耐磨耗性等実用上の機械特性も向上
したものである。
(実施例) 以下実施例によって本発明を説明する。
参考例1(無機繊維Iの製造) 5lの三口フラスコに無水キシレン2.5l及びナトリウム
400gを入れ、窒素ガス気流下でキシレンの沸点まで加熱
し、ジメチルジクロロシラン1を1時間で滴下した。
滴下終了後、10時間加熱還流し沈澱物を生成させた。沈
澱を濾過し、メタノールついで水で洗浄して、白色粉末
のポリジメチルシラン420gを得た。
このポリジメチルシラン400gを、ガス導入管、攪拌
機、冷却器及び留出管を備えた3lの三口フラスコに仕込
み、攪拌しながら50ml/分の窒素気流下に420℃で加熱処
理して、留出受器に350gの無色透明な少し粘性のある液
体を得た。
この液体の数平均分子量は蒸気圧浸透法で測定したと
ころ470であった。
この物質の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、
650〜900cm-1と1250cm-1にSi-CH3の吸収、2100cm-1にSi
-Hの吸収、1020cm-1付近と1355cm-1にSi-CH2-Siの吸
収、2900cm-1と2950cm-1にC-Hの吸収が認められ、また
この物質の遠赤外線吸収スペクトルを測定したところ、
380cm-1にSi-Siの吸収が認められることから、得られた
液状物質は、主として(Si-CH2)結合単位及び(Si-Si)
結合単位からなり、珪素の側鎖に水素原子及びメチル基
を有する有機珪素重合体であることが判明した。
核磁気共鳴分析及び赤外線吸収分析の測定結果から、
この有機珪素重合体は(Si-CH2)結合単位の全数対(Si-S
i)結合単位の全数の比率がほぼ1:3である重合体である
ことが確認された。
上記有機珪素重合体300gをエタノールで処理して低分
子量物を除去して、数平均分子量が1200の重合体40gを
得た。
この物質の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、
上記と同様の吸収ピークが認められ、この物質は主とし
て(Si-CH2)結合単位及び(Si-Si)結合単位からなり、
珪素の側鎖に水素原子及びメチル基を有する有機珪素重
合体であることが判明した。
核磁気共鳴分析及び赤外線吸収分析の測定結果から、
この有機珪素重合体は(Si-CH2)結合単位の全数対(Si-S
i)結合単位の全数の比率がほぼ7:1である重合体である
ことが確認された。
石油留分のうち、軽油以上の高沸点物をシリカ・アル
ミナ系分解触媒の存在下、500℃の温度で流動接触分解
・精留を行い、その塔底より残渣を得た。以下、この残
渣をFCCスラリーオイルと呼ぶ。
このFCCスラリーオイルは、元素分析の結果、炭素原
子対水素原子の原子比(C/H)が0.75で、核磁気共鳴分
析による芳香炭素率が0.55であった。
上記FCCスラリーオイル200gを、2l/分の窒素ガス気流
下、450℃で0.5時間加熱し、同温度における留出分を留
去後、残渣を200℃にて熱時濾過を行い、同温度におけ
る不融部を除去し、軽質分除去ピッチ57gを得た。
この軽質分除去ピッチは25%のキシレン不溶分を含む
光学的に等方性のピッチであった。
この軽質分除去ピッチ57gに前記有機珪素重合体25g及
びキシレン20mlを加え、攪拌しながら昇温し、キシレン
を留去後、400℃で6時間反応させ51.0gのランダム共重
合体を得た。
この反応生成物は、赤外線吸収スペクトル測定の結
果、実施例1と同様、有機珪素重合体の珪素原子の一部
が多環状芳香族環と直接結合した部分を有するランダム
共重合体であることがわかった。また、この共重合体
は、キシレン不溶部を含まず、重量平均分子量が1400
で、融点が265℃で、軟化点が310℃であった。
一方、前記軽質分除去ピッチ180gを窒素気流下、反応
により生成する軽質分を除去しながら400℃で8時間縮
重合を行い、熱処理ピッチ97.2gを得た。
この熱処理ピッチは融点263℃、軟化点308℃、キシレ
ン不溶分77%、キノリン不溶分31%を含有しており、研
磨面の偏光顕微鏡観察による光学的異方性が75%のメソ
フェーズ多環状芳香族化合物であった。
このメソフェーズ多環状芳香族化合物90gと前記ラン
ダム共重合体6.4gを混合し、窒素雰囲気下、380℃で一
時間溶融加熱し、均一な状態にある珪素含有多環状芳香
族重合体を得た。
この重合体は、融点が267℃で、軟化点が315℃で、70
%のキシレン不溶分を含んでいた。
上記高分子量物を紡糸用原料とし、ノズル径0.15mmの
金属製ノズルを用い、360℃で溶融紡糸を行い、得られ
た紡糸原糸を、空気中、300℃で酸化、不融化し、更に
アルゴン雰囲気中、1300℃で焼成を行い、直径8μmの
無機繊維を得た。
この繊維は引張強度が320Kg/mm2、引張弾性率26t/mm2
であり、破壊面の観察よりあきらかにラジアル構造であ
った。
この無機繊維を粉砕後、アルカリ溶融、塩酸処理を施
し、水溶液とした後高周波プラズマ発光分光分析(IC
P)を行った結果、珪素含有率は0.95%であった。
参考例2(無機繊維IIの製造) 参考例1で得られた軽質分除去ピッチ57gに参考例1
で得た有機珪素重合体25g及びキシレン20mlを加え、攪
拌しながら昇温し、キシレンを留去後、400℃で4時間
反応させ57.4gの前駆重合体(1)を得た。
この前駆重合体(1)は赤外線吸収スペクトル測定の
結果、有機珪素重合体中に存在するSi-H結合(IR:2100c
m-1)の減少、及び新たなSi-C(ベンゼン環の炭素)結
合(IR:1135cm-1)の生成が認められることより有機珪
素重合体の珪素原子の一部が多環状芳香族環の炭素と直
接結合した部分を有する重合体であることがわかった。
前駆重合体(1)57.4gにテトラオクトキシチタン〔T
i(OC8H17)4〕3.87gのキシレン溶液(25%キシレン溶液1
5.5g)を加え、キシレン留去後、340℃で1時間反応さ
せ、ランダム共重合体(2)56gを得た。
この重合体は、キシレン不溶部を含まず重量平均分子
量は1580、融点は258℃、軟化点292℃であり、キシレン
可溶であった。
上記ランダム共重合体(2)6.4gと参考例1で得られ
たメソフェーズ多環状芳香族化合物(2)90gを混合、
窒素雰囲気下380℃で1時間溶融加熱し、均一な状態に
ある金属含有多環状芳香族重合体を得た。
この重合体の融点は264℃で、軟化点307℃、68%のキ
シレン不溶分を含んでいた。
上記高分子量物を紡糸用原料とし、ノズル径0.15mmの
金属製ノズルを用い、360℃で溶融紡糸を行い、得られ
た紡糸原糸を、空気中、300℃で酸化、不融化し、更に
アルゴン雰囲気中、1300℃で焼成を行い、直径7.5μm
の無機繊維を得た。
この繊維は引張強度が358kg/mm2、引張弾性率32t/mm2
であり、破断面の走査型電子顕微鏡を用いた観察より、
結晶層が幾重にも重なった珊瑚様のランダムラジアル混
在構造であった。
この無機繊維を粉砕後、アルカリ溶融、塩酸処理を施
し、水溶液とした後高周波プラズマ発光分光分析(IC
P)を行った結果、珪素含有率は0.95%、チタン含有率
は0.06%であった。
参考例3(Si-Ti-C-O繊維の製造) ジメチルジクロロシランを金属ナトリウムで脱塩素縮
合して合成されるポリジメチルシラン100部に対しポリ
ボロシロキサンを3部の割合で添加し、窒素中、350℃
で熱縮合し、式(Si-CH2)のカルボシラン単位から主とし
てなる主鎖骨格を有し、該カルボシラン単位の珪素原子
に水素原子及びメチル基を有しているポリカルボシラン
を調製した。このポリカルボシランに、チタンアルコキ
シドを加えて、窒素中、340℃で架橋重合することによ
り、カルボシラン単位100部と式(Ti-O)のチタノキサ
ン10部とからなるポリチタノカルボシランを得た。この
ポリマーを溶融紡糸し、空気中190℃で不融化処理し、
さらに引き続いて窒素中1300℃で焼成して、繊維径13
μ、引張強度310kg/mm2、弾性率16t/mm2(モノフィラメ
ント法)の主として珪素、チタン、炭素及び酸素からな
るチタン元素3%含有の無機繊維を得た。得られた無機
繊維はSi、Ti、C及びOからなる非晶質と、β−SiC、T
iC、β−SiCとTiCの固溶体及びTiC1-x(ただし、0<x
<1)の粒径が約50Åの各結晶質超微粒子及び非晶質の
SiO2とTiO2からなる集合体との混合系からなるSi-Ti-C-
O繊維であった。
実施例1 ビスフェノールA型エポキシ樹脂(チバガイギー社製
XB2879A)100部及びジシアンジアミド硬化剤(チバガイ
ギー社製XB2879B)20部を均一に混合した後に、混合物
を重量比で1:1のメチルセロソルブとアセトンとの混合
溶媒に溶解して、上記混合物の28%溶液を調製した。
参考例1で得られた無機繊維Iに上記溶液を含浸した
後に、ドラムワインダーを用いて一方向に引き取り、熱
循環オーブン中100℃で14分間加熱することによって、
半硬化状態の一方向に引き揃えられた無機繊維プリプレ
グシートを調製した。
同様にして、表面処理をした炭素繊維(ポリアクリロ
ニトリル系、繊維径7μ、引張強度300Kg/mm2、引張弾
性率24t/mm2)を用い半硬化状態の一方向に引き揃えら
れた炭素繊維プリプレグシートを調製した。
このようにして得た無機繊維IIと炭素繊維のプリプレ
グシートを軸方向を同じにして交互に積層した後ホット
プレスして、ハイブリッド繊維(無機繊維/炭素繊維)
強化エポキシ複合材料を製造した。
この複合材料の繊維含有率は無機繊維II30体積%、炭
素繊維30体積%、計60体積%であった。
得られた複合材料の0度方向の引張強度及び引張弾性
率はそれぞれ185Kg/mm2、16.3t/mm2であり、0度方向の
曲げ強度は185Kg/mm2であり、90度方向の曲げ強度は7.3
Kg/mm2、層間剪断強度は8.1Kg/mm2、曲げ衝撃値は228Kg
・cm/cm2であった。
比較例1 実施例1で用いた炭素繊維(ポリアクリロニトリル
系、繊維径7μ)のみを用い、実施例1と同様にして、
半硬化状態の一方向に引き揃えられた炭素繊維プリプレ
グシートを調製した。
このプリプレグシートを、繊維軸を同じにして、積層
した後、ホットプレスして、炭素繊維強化エポキシ複合
材料を製造した。この複合材料の繊維含有率は60体積%
である。得られた複合材料の0度方向の引張強度及び引
張弾性率はそれぞれ150Kg/mm2及び14t/mm2であり、0度
方向の曲げ強度は、172Kg/mm2、90度方向の曲げ強度は
6.2Kg/mm2、層間剪断強度は8.1Kg/mm2、曲げ衝撃値は15
0Kg・cm/cm2であった。
実施例2 無機繊維Iの代わりに無機繊維IIを用いた以外は実施
例1と同様にして繊維含有率が無機繊維30体積%、炭素
繊維30体積%、計60体積%の複合材料を製造した。得ら
れた複合材料の0度方向の引張強度及び引張弾性率はそ
れぞれ197Kg/mm2、16.8t/mm2であり、0度方向の曲げ強
度は199Kg/mm2であり、90度方向の曲げ強度は8.0Kg/m
m2、層間剪断強度は9.1Kg/mm2、曲げ衝撃値は235Kg・cm
/cm2であった。
実施例3 参考例1で得た無機繊維Iと参考例3で得たSi-Ti-C-
O繊維との混織トウ(無機繊維IとSi-Ti-C-O繊維との体
積割合は8:2であった。)より製造した平織織物にレゾ
ールタイプのフェノール樹脂(明和化成(株)製MRW-30
00)のメタノール溶液に浸し引き上げた後、メタノール
を除去後、乾燥し、プリプレグシートを得た。このプリ
プレグシートより一辺が5cmの正方形シートを切り出
し、金型中に重ね、200℃、50kg/cm2でプレスし、フェ
ノール樹脂を硬化させ、成形体を得た。この成形体を炭
素粉末中に埋め、窒素気流中5℃/hの昇温速度で1000℃
まで昇温し、無機繊維強化炭素複合材料を得た。
この複合材に参考例1に記載のメソフェーズ多環状芳
香族化合物(2)の粉末を加え、オートクレーブ中、窒
素雰囲気下、350℃に加熱し、溶融後、減圧し、気孔中
にメソフェーズ多環状芳香族化合物(2)を含浸させた
後、100kg/cm2で加圧含浸処理後、空気中で、5℃/hの
昇温速度で300℃まで昇温し、不融化後、1300℃で炭素
化した。上記メソフェーズ多環状芳香族化合物(2)の
含浸、炭素化をさらに3回繰り返した。
得られた複合材の嵩密度は、1.75g/cm3、曲げ強度28k
g/mm2、繊維体積含有率は60%であった。
この複合材の摩擦係数及び磨耗量を測定し、その結果
を第1表に示した。
比較例2 引張強度300kg/mm2、引張弾性率24t/mm2のポリアクリ
ロニトリル系炭素繊維を強化材とした以外は実施例3と
同様にしてC/Cコンポジットを製造した。このコンポジ
ットの特性を第1表に示した。
比較例3 参考例3に記載のSi-Ti-C-O繊維を強化材とした以外
は実施例3と同様にして、Si-Ti-C-O/Cコンポジットを
製造した。このコンポジットの特性を第1表に示した。
ただし、ダイナモメーターによる磨耗量の測定条件は
以下の通りであった(相手材はいずれの場合も同複合材
であった)。
慣性量 0.06〜0.08kg f・m・sec2 回転数 3000〜5000rpm 摺動初速度 10〜20m/sec 押付圧力 5〜10kg/cm2 第1表から明らかなように、実施例3で得られた複合
材の摩擦係数は0.4〜0.6、磨耗量が0.6〜1.0×10-4mm/s
top/surfであり、比較例2のC/Cコンポジットと比べ耐
磨耗性に優れている。
また、比較例3で得られたコンポジットは、摩擦系数
が0.8〜1.0と大きく、C/Cコンポジットに比べ摺動性
(自己潤滑性)に劣るのに対し、実施例3で得られた複
合材は、C/Cコンポジットの摩擦係数と同程度であっ
た。
フロントページの続き (72)発明者 渋谷 昌樹 山口県宇部市大字小串1978番地の5 宇部 興産株式会社宇部研究所内 審査官 渕野 留香 (56)参考文献 特開 昭63−182348(JP,A) 特開 昭62−7737(JP,A) 特開 昭62−215016(JP,A)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無機繊維I、無機繊維II、炭素繊維、ガラ
    ス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維、炭
    化珪素繊維、アラミド繊維、カーボンを芯線とする炭化
    珪素繊維及びSi-M-C-O繊維(MはTi又はZrを示す。)か
    らなる群から選ばれた少なくとも二種の繊維からなり、
    かつ該繊維の構成成分として無機繊維I、無機繊維IIの
    少なくとも一方を含有するハイブリッド繊維において、 上記無機繊維Iが珪素含有多環状芳香族重合体から得ら
    れる無機繊維であって、その構成成分が、 i)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある多環状
    芳香族化合物から導かれるラジアル構造、オニオン構
    造、ランダム構造、コアラジアル構造、スキンオニオン
    構造及びモザイク構造からなる群から選ばれる少なくと
    も一種の結晶配列状態を示す炭素質、 ii)該重合体を構成する光学的等方性の多環状芳香族化
    合物から導かれる、無配向状態の結晶質炭素及び/又は
    非晶質炭素、及び iii)Si、C及びOから実質的になる非晶質相及び/又
    は粒径が500Å以下の実質的にβ−SiCからなる結晶質超
    微粒子と非晶質のSiOx(0<x≦2)からなる集合体で
    あり、 構成元素の割合が、Si;30〜70重量%C;20〜60重量%及
    びO;0.5〜10重量%であるSi-C-O物質 よりなる無機繊維であり、 上記無機繊維IIがチタン、ジルコニウム及びハフニウム
    からなる群から選ばれる少なくとも一種類の元素及び珪
    素を含有する多環状芳香族重合体から得られる無機繊維
    であって、その構成成分が、 a)該重合体を構成するメソフェーズ状態にある多環状
    芳香族化合物から導かれるラジアル構造、オニオン構
    造、ランダム構造、コアラジアル構造、スキンオニオン
    構造及びモザイク構造からなる群から選ばれる少なくと
    も一種の結晶配列状態を示す炭素質、 b)該重合体を構成する光学的等方性の多環状芳香族化
    合物から導かれる、無配向状態の結晶質炭素及び/又は
    非晶質炭素、及び c)Si、M、C及びOから実質的になる非晶質物質、
    及び/又は 実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCの固溶体及びMC
    1-xからなる粒径が500Å以下の結晶超微粒子と、非晶質
    のSiOy及びMOzとの集合体であり、 構成元素の割合がSi;5〜70重量%、M;0.5〜45重量%、
    C;20〜40重量%及びO;0.01〜30重量%である、Si-M-C-O
    物質(上記式中、MはTi、Zr及びHfから選択される少な
    くとも一種の元素であり、0<x<1、0<y≦2、0
    <z≦2である。) よりなる無機繊維であることを特徴とするハイブリッド
    繊維。
JP2025278A 1990-02-06 1990-02-06 ハイブリッド繊維 Expired - Lifetime JPH089807B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2025278A JPH089807B2 (ja) 1990-02-06 1990-02-06 ハイブリッド繊維

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2025278A JPH089807B2 (ja) 1990-02-06 1990-02-06 ハイブリッド繊維

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH03234820A JPH03234820A (ja) 1991-10-18
JPH089807B2 true JPH089807B2 (ja) 1996-01-31

Family

ID=12161555

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2025278A Expired - Lifetime JPH089807B2 (ja) 1990-02-06 1990-02-06 ハイブリッド繊維

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH089807B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JPH03234820A (ja) 1991-10-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5277973A (en) Carbon fibers having high strength and high modulus of elasticity and polymer composition for their production
JP2547110B2 (ja) ハイブリッド繊維強化炭素質複合材料
JP2792180B2 (ja) ブレーキ
JP2547113B2 (ja) ハイブリッド繊維強化炭素質複合材料
JP2547112B2 (ja) ハイブリッド繊維強化炭素質複合材料
JPH089807B2 (ja) ハイブリッド繊維
JPH0757715B2 (ja) 繊維強化炭素質複合材料
JPH07103493B2 (ja) 高強度・高弾性率無機繊維及びその製造方法
JPH0764653B2 (ja) 繊維強化炭素材料
JP2547111B2 (ja) 耐熱性繊維強化無機複合材料
JP2547108B2 (ja) 繊維強化炭素質複合材料
JP2559637B2 (ja) 耐熱性繊維強化無機複合材料
JPH0757712B2 (ja) 繊維強化炭素質複合材料
JPH0764654B2 (ja) 繊維強化炭素材料
JPH0757710B2 (ja) 炭素系無機繊維強化セラミックス複合材料
JPH03103475A (ja) ハイブリッド繊維強化プラスチック複合材料
JP2547109B2 (ja) 繊維強化炭素系複合材料
JPH0781209B2 (ja) 高強度・高弾性率無機繊維及びその製造方法
JPH0726166B2 (ja) 無機繊維強化金属複合材料
JPH0689259B2 (ja) ハイブリッド繊維強化プラスチック複合材料
JPH0757713B2 (ja) 繊維強化炭素質複合材料
JPH0571612B2 (ja)
JPH038768A (ja) 繊維強化炭素質複合材料
JPH0689257B2 (ja) 無機繊維強化プラスチック複合材料
JPH0726165B2 (ja) 無機繊維強化金属複合材料