JP2743116B2 - 熱間鍛造用非調質鋼 - Google Patents

熱間鍛造用非調質鋼

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JP2743116B2
JP2743116B2 JP2262588A JP26258890A JP2743116B2 JP 2743116 B2 JP2743116 B2 JP 2743116B2 JP 2262588 A JP2262588 A JP 2262588A JP 26258890 A JP26258890 A JP 26258890A JP 2743116 B2 JP2743116 B2 JP 2743116B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は熱間鍛造後の熱処理を必要とせず、自然空冷
によって優れた強度、靱性、疲労強度を確保でき、かつ
部品寸法および鍛造条件が変化しても性能の変化が少な
く、特に高靱性を必要とする自動車の足廻り部品や建設
機械の油圧部品等に用いられる鋼として有用な熱間鍛造
用非調質鋼に関する。
(従来技術) 従来、ステアリングナックル、アッパーアーム等の自
動車の足廻り部品やロッドエンド等の建設機械の油圧部
品には高強度、高靱性が要求され、機械構造用炭素鋼で
あるS43C、S45C、S48Cなどを用い、熱間鍛造により成形
後、焼入焼もどし等の熱処理(以下調質と記す)を施
し、必要な性能を確保していた。
しかし、これらの熱処理は莫大なエネルギーを必要と
するため、省エネルギーの社会的要請に応えるために、
熱間鍛造後の自然空冷にて必要な性能の得られる非調質
鋼の開発が近年盛んに行われている。例えばCを0.20〜
0.50%程度含有する中炭素鋼に0.03〜0.20%のVを添加
した非調質鋼が提案され、使用されている。この非調質
鋼は熱間鍛造後の冷却過程で析出するVの炭窒化物がフ
ェライト生地を強化し、調質することなく必要な強度を
得るものである。
(発明が解決しようとする問題点) しかしながら、従来から提案されている非調質鋼は粗
大なフェライト・パーライト組織を有するものであり、
靱性は中炭素鋼の調質材に比べて低いという欠点を有す
る。また、優れた特性の得られる鍛造条件(加熱温度、
鍛造温度、冷却速度等)の範囲が狭いため、新製品製造
の立上げ時には最適製造条件を得るためのテストが必要
である。さらに、立上げ後も安定して優れた性能を確保
するためには、鍛造条件を厳しく管理する必要があっ
た。
最近ではこれらの問題点を解決するために、低Cベイ
ナイト型非調質鋼の開発が進められつつある。しかし、
この低Cベイナイト鋼は靱性には優れているものの、降
伏比、耐久比の点で劣る。このため、降伏点、疲労強度
を要求水準に上げるためには、より高い引張強度にいな
くてはならず、その結果鍛造性、切削性等が悪くなり、
適用の妨げとなっているのが現状である。また、中炭素
鋼の調質材においても、大形の部品、例えば部品の断面
積が104mm2以上のものについては中心部まで十分焼きが
入れず、高強度、高靱性を付与させることは困難であっ
た。
本発明は従来の調質炭素鋼および非調質鋼の前記のご
とき問題点を考慮してなされたもので、部品寸法および
鍛造条件によって強度、靱性等の性能が変化せず、新製
品のスムーズな立上げを可能とし、かつあらゆる性能に
おいて調質炭素鋼以上の性質を示す熱間鍛造用非調質鋼
を提供することを目的とする。
(問題を解決するための手段) 本発明者は前記目的の下に、熱間鍛造用非調質鋼、中
でも特にベイナイト型のものについて鋭意研究を重ねた
結果、以下の知見をなし本発明を得た。
すなわち、ベイナイト鋼の降伏比および耐久比が低い
原因は、ベイナイト鋼のミクロ組織中に存在する高炭素
島状マルテンサイトおよび残留オーステナイト(以下M
−A constituentまたはM−Aと記す)と、変態温度が
低いために生じる変態歪によるものであることを発見し
た。そこでミクロ組織中のM−A量と変態歪を低減する
ための方法を検討した結果、C量と合金元素量の関係を
適当な範囲に規制し、さらにトータル化学成分の調整に
よって変態温度の下限を規制することによりM−A量、
変態歪の生成を少なく抑えることができ、降伏比および
耐久比が向上することを見出したものである。
また、Mo、Vの複合添加するとベイナイトラスが微細
化し、著しく靱性が向上することを確認したものであ
る。
さらに、オーステナイト結晶粒微細化による靱性向上
効果について検討を加えた結果、Ti含有鋼については、
Al、Ti、Nの間の含有率の関係を適当な範囲に規制する
と、結晶粒がさらに微細化し、靱性が向上することを新
しく知見したものである。
以上記載した考えのもとに設計した鋼が、鍛造条件の
変化によって性能が殆ど変わらず、優れた特性を示すこ
とを実験により確認し、本発明の完成に到ったものであ
る。
すなわち、本発明の第1発明は熱間鍛造後空冷し、熱
処理することなく用いられる鋼であって、その化学成分
が重量比にしてC:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.50%、Mn:
0.80〜2.00%、Cr:0.30〜1.50%、Mo:0.05〜0.50%、A
l:0.002〜0.060%、V:005〜0.50%、Ti:0.005〜0.030
%、N:0.008〜0.020%を含有し、かつMo(%)+V
(%)≧0.20(%)、1.8Mn(%)+Cr(%)+0.5Mo
(%)≦200C(%)、Bs≧550(℃)(Bs=830−270C
(%)−90Mn(%)−70Cr(%)−83Mo(%)であり、
残部Feならびに不純物元素からなり、主となる組織がフ
ェナイト+ベイナイトまたはベイナイトであって、M−
A constituent(島状マルテンサイト[M]+残留オー
ステナイト[A])量が1.0%以下である組織を有し、
降伏比(0.2%耐力/引張強さ)が0.71以上であること
を特徴とする熱間鍛造用非調質鋼であり、第2発明は被
削性を改善するために、第1発明鋼にさらにS:0.04〜0.
12%、Pb:0.05〜0.30%、C:0.0005〜0.01%のうち1種
または2種以上を含有させたものである。また、第3、
4発明は第1、2発明鋼の性能をさらに向上させるた
め、Al、Ti、Nの含有率を適当な範囲に規制して、結晶
粒を微細化し、耐久比、靱性を一層向上させたものであ
る。
次に本発明の熱間鍛造用非調質鋼における成分組成限
定理由について以下に説明する。
C;0.10〜0.30% Cは強度を確保するために必要な元素であり、0.10%
以上の含有が必要である。しかし、0.30%を越えて含有
させると靱性が低下するので上限を0.30%とした。
Siは製鋼時の脱酸材として添加されるものであり、0.
05%以上含有させることが必要である。しかし0.50%を
越えると靱性が低下するので上限を0.50%とした。
Mn;0.80〜2.00% Mnは焼入性を向上させて組織をベンナイト化するのに
必要な元素である。Mnの含有が0.80%未満であると焼入
性が不足し、ベイナイトの生成量が少なくなり、強度お
よび靱性が不足するので下限を0.80%とした。しかし2.
00%を越えて含有させると焼入性が向上し過ぎるととも
にM−Aの生成を促進し、降伏比および耐久比が低下す
るので上限を2.00%とした。
Cr;0.30〜1.50% CrはMnと同様に組織をベンナイト化するのに必要な元
素である。0.30%未満の含有では前記効果が不十分であ
るので下限を0.30%とした。しかし1.50%を越えて含有
させるとM−Aの生成を促進し、降伏比および耐久比が
低下するので上限を1.50%とした。
Mo;0.05〜0.50% Moは組織をベンナイト化するとともにベイナイトラス
を微細化させて靱性を向上させるために必要な元素であ
る。0.05%未満の含有では前記効果が不十分なので下限
を0.05%とした。しかし0.50%を越えて含有させてもそ
の効果が飽和するとともにコスト高となり、またMn、Cr
と同様に過剰添加はM−Aの生成を促進し、降伏比およ
び耐久比が低下するので上限を0.50%とした。
Al;0.002〜0.060% Alは強力な脱酸効果を持つ元素であるが、0.002%未
満の含有では脱酸効果が認められなくなるので下限を0.
002%とした。しかし0.060%を越えて含有させると前記
効果が飽和するとともに被削性を低下させるので上限を
0.060%とした。
V;0.05〜0.50% VはC、Nと親和力が強く、鋼中において炭窒化物と
して析出し、初析フェライトが生成した場合にこれを析
出強化させて強度を向上させるとともに、ベイナイトラ
スを微細化させて靱性を向上させる効果のある元素であ
るが、0.05%未満の含有ではその効果が不十分であるの
で下限を0.05%とした。しし、0.50%を越えて含有させ
てもその効果が飽和するとともにコスト高となるため上
限を0.50%とした。
N;0.008〜0.020% NはAl、Nb、Tiと親和力が強く、鋼中においてAl、N
b、Tiの炭窒化物として析出し、ピン止め効果によりオ
ーステナイト結晶粒を微細化させて靱性を向上させる効
果がある。前記効果を得るためには少なくとも0.008%
の含有が必要である。しかし0.020%を越えて含有させ
ると逆に靱性を低下させるので上限を0.020%とした。
Ti;0.005〜0.030%、Nb;0.01〜0.30% TiおよびNbは鋼中において炭窒化物として析出し、ピ
ン止め効果によりオーステナイト結晶粒を微細化する効
果があり、Al、Vの窒化物に比べその効果が大きい。従
って靱性をさらに向上させるために有効な元素である。
前記効果を得るためには少なくともTiは0.005%以上、N
bは0.01%以上の含有が必要である。特にTiはその効果
が大きいため、本願発明ではその添加を必須とし、Nbは
必要に応じ追加添加することができるものである。しか
しTiは0.030%、Nbは0.30%を越えて含有させても前記
効果が飽和するとともに、コスト高となるので上限をTi
は0.030%、Nbは0.30%とした。
S;0.04〜0.12%、Pb;0.05〜0.30%、Ca;0.0005〜0.01% S、Pb、Caは被削性の改善に有効な元素であり、必要
に応じて添加されるものである。前記効果を得るために
はそれぞれ0.04%、0.05%、0.0005%の含有が必要であ
る。しかし、多量に含有させてもその効果が飽和すると
ともに、靱性を低下させるので上限をそれぞれ0.12%、
0.30%、0.01%とした。
Mo(%)+V(%)≧0.20(%) Mo、Vの複合添加はCの拡散を遅滞させてベイナイト
ラスの成長を妨げるので、ベイナイトラスを特に微細に
する効果がある。前記効果を得るためにはMo、Vの合計
含有率を0.20%以上にする必要がある。
1.8Mn(%)+Cr(%)+0.5Mo(%)≦20C(%) 1.8Mn(%)+Cr(%)+0.5Mo(%)≦20C(%)は
ベイナイトのミクロ組織中に存在するM−A量を1%以
下にし、微細なセメンタイトを析出させるための必要条
件である。Mn、Cr、Moを過剰に添加し1.8Mn(%)+Cr
(%)+0.5Mo(%)≦20C(%)となるとセメンタイト
の析出量が減少し、これに代わってM−Aが多量に生成
し、降伏比および耐久比を低下させるため1.8Mn(%)
+Cr(%)+0.5Mo(%)≦20C(%)とする必要があ
る。
Bs≧550(℃)(Bs=830-270C(%)−90Mn(%)−70C
r(%)−83Mo(%) 上式で示されるBsはベイナイト変態開始温度を示し、
Bsが高いと変態歪は小さく、Bsが低いと変態歪が大きく
なる。変態歪は降伏比および耐久比を低下させるが、特
にBs<550(℃)では変態歪が急増し、降伏比、耐久比
を著しく低下させるためBs≧550(℃)とする必要があ
る。
Al(%)/27<N(%)/14 Tiは窒化物を形成して、ピン止め効果により結晶粒を
微細化する効果があり、AlNに比べてその効果が大き
い。しかし、Alの方がNとの親和力が強く、AlとTiが共
存した場合、Alの方が優先的にNと結びついてしまう。
従って、Tiによる結晶粒微細化効果を十分に得るために
は、NがAl含有率に比べ一定量以上含有していなければ
ならず、Al(%)/27<N(%)/14を満足することが必
要である。
Ti(%)/N(%)<1.4 TiNの析出は結晶粒微細化に効果があるが、その効果
を十分に得るためには、TiNを細かく析出させる必要が
ある。TiNの粒径はTiとNの含有率の比によって変化
し、十分な微細化効果を得るためには、Ti(%)/N
(%)<1.4とする必要がある。
(実施例) 以下に本発明の特徴を比較鋼および従来鋼と比較し、
実施例でもって明らかにする。
第1−1、1−2表は実施例に用いた供試材の化学成分
を示すものである。
第1−1、1−2表において1〜15鋼は本発明鋼であ
り、1は第1発明鋼、3鋼は第2発明鋼、7〜10鋼は第
3発明鋼、11〜15鋼は第4発明鋼である。また、16〜27
鋼はTiを含有しない比較鋼(以下、比較鋼1と記
す。)、28〜34鋼は、Tiが未添加であり、かつ他の一部
の条件が本発明の範囲外である比較鋼(以下、比較鋼2
と記す。)であり、35鋼はフェライト・パーライト型の
従来の非調質鋼、36鋼は従来鋼であるS45Cである。な
お、式(2)、(3)(第1表参照)を満足するかどう
かについては、Ti含有鋼(ただしNb未含有鋼)について
のみ記載した。
36鋼を除く供試材については、熱間圧延にて製造した
直径60mmの丸棒を1250℃に加熱後、1150℃にて直径30mm
の丸棒に鍛造し、室温まで自然空冷し試験材とした。ま
た、S45Cである36鋼については熱間圧延にて製造した直
径30mmの丸棒を880℃にて加熱後油浴中にて焼入を行
い、続いて580℃にて焼もどしを行い試験材とした。
各供試材の試験材を用いて、ミクロ組織、ベイナイト
ラス寸法、M−A量、0.2%耐力、引張強さ、降伏比、
耐久比、衝撃値、被削性について後述する方法にて測定
した。
ベイナイトラス寸法は長手方向の寸法を光学顕微鏡に
て倍率1000倍で100視野の測定を行い、その平均値をも
って測定値とした。
M−A量は倍率5000倍の走査型電子顕微鏡により各試
料100視野をポイントカウンティング法で測定し、その
平均値をもって測定値とした。
引張試験の結果はJIS4号引張試験片を作製し、引張速
度1mm/secで測定したものであり、衝撃値はJIS3号Uノ
ッチシャルピー試験片を作製し、測定したものである。
耐久比は小野式回転曲げ疲労試験により107回転での
耐久限を求め、引張強度との比率をとったものである。
被削性はドリル穿孔試験により評価した。なお、試験
はドリルは5mmφのストレートシャンク、ドリルの材質
はSKH9、ドリル回転数は1710r.p.m.、切削油なし、荷重
75kgの条件で行った。測定した結果は、従来鋼である36
鋼の穿孔距離を100とし、それぞれの穿孔距離を整数比
で整理した。
各供試材の性能評価結果を第2表に示す。
第2表から明らかなように比較鋼2、従来鋼である28
〜34鋼を本発明鋼と比較すると、28鋼はC含有率が高い
ため衝撃値、被削性がともに劣るものであり、29、30鋼
はMnあるいはCr含有率が高いため焼入性が向上し過ぎる
とともに、M−A量が非常に多く、また式(1)(第2
表参照)およびBs≧550(℃)を満足しないため、降伏
比および耐久性が劣るものであり、31鋼はMoの含有率お
よびMo、Vの合計含有率が低いため、ベイナイト化が不
十分となり、一部パーライトが生成したため強度が劣る
とともに、式(1)を満足せずM−A生成量が多く、ベ
イナイトラス寸法が大きいために降伏比、耐久比、衝撃
値がともに劣るものであり、32鋼はVの含有率が低いた
め、ベイナイトラス寸法が大きくなり、耐久比と衝撃値
が劣るものであり、33、34鋼は化学成分は本発明鋼の範
囲に入っているが、33鋼は式(1)を、34鋼はBs≧550
(℃)を満足しないために降伏比、耐久比が劣るもので
ある。また、従来のフェライト・パーライト型非調質鋼
である35鋼は降伏比、耐久比および衝撃値が低く、S45C
である36鋼は焼入焼もどしを行っても不完全焼入組織と
なり、降伏比、耐久比、衝撃値がともに劣るものであ
る。さらに、Tiを含有しない比較鋼である16〜27鋼(比
較鋼1)は、Ti含有による靱性向上効果が得られていな
いため、靱性以外の特性は優れているが、Ti以外の成分
が同じ発明鋼に比べて、若干衝撃値が劣るものである。
これに対して本発明鋼である1〜15鋼はMo、Vを複合
添加したこと、C量と合金元素量の関係を適切な範囲内
に規制した(式(1)こと、およびBs≧550(℃)とし
たことによりベイナイトラス寸法が微細化されM−A量
も1%以下と少なく抑えられた結果、0.2%耐力54kgf/m
m2以上、引張強さ75kgf/mm2以上、降伏比0.71以上、耐
久比0.51以上、衝撃値16kgfm/cm2以上という調質炭素鋼
以上の優れた性能を示すものである。また被削性につい
ても被削性元素を添加した第2、4発明鋼は第1、3発
明鋼に比べて強度、靱性、疲労強度などの性能を損なう
ことなく優れた被削性を示すことが確認できた。
次に、鍛造条件の変化による影響に関する本発明の特
徴を別の実施例により明らかにする。
第1−1、1−2表に示す鋼のうち本発明鋼の1、
3、7、11鋼、比較鋼1の18、21鋼と従来の非調質鋼で
ある35鋼を各種条件にて鍛造し、引張強さ、0.2%耐
力、降伏比および衝撃値を評価した。
第3表は鍛造加熱温度と引張強さ、0.2%耐力、降伏
比および衝撃値の関係を示したものである。試験データ
は前記1、3、7、11、18、21、35鋼の直径60mmの丸棒
を1350℃、1250℃および1150℃に加熱し各々1250℃、11
50℃および1050℃にて直径30mmの丸棒に鍛造後室温まで
自然空冷したものを供試材として、その中心部よりJIS4
号引張試験片およびJIS3号Uノッチシャルピー試験片を
採取し、試験を実施して得られたものである。
第3表から明らかなように、従来のフェライト・パー
ライト型の非調質鋼である35鋼は加熱温度の上昇に伴
い、引張強さ、0.2%耐力が増加し、衝撃値が著しく低
下するのに対し、ベイナイト組織を有する本発明鋼1、
3、7、11鋼は加熱温度、加工温度によって性能が殆ど
変化せず、全ての条件において優れた特性を得られるこ
とがわかる。比較鋼1の18、21鋼は、本発明鋼と同様に
加熱温度が変化しても性能が殆ど変化しないが、Tiが未
添加であるため、Ti以外の成分が同一の本発明鋼に比べ
衝撃値が若干劣るものである。
また第4表は鍛造後の冷却速度と引張強さ、0.2%耐
力、降伏比および衝撃値の関係を示したものである。な
お鍛造後の冷却速度は鍛伸する丸棒サイズをφ30、φ6
0、φ100と変化させることにより振り分けてある。すな
わちφ30は比較的早い冷却速度(800〜650℃の平均冷却
速度40℃/min.)、φ100は遅い冷却速度(800〜650℃の
平均冷却速度10℃/min.)に対応している。上記の鋼
1、3、7、11、18、21および35鋼の直径200mm、120m
m、60mmの各サイズの丸棒を1250℃に加熱し、各々直径1
00mm、60mm、30mmの丸棒に鍛造後室温まで自然空冷した
ものを供試材としてその中心部よりJIS4号引張試験片、
およびJIS3号Uノッチシャルピー試験片を採取し試験を
実施した。
第4表から明らかなように、本発明鋼の1、3、7、
11鋼は冷却速度(鍛伸丸棒サイズ)が変化しても引張強
さ、0.2%耐力および衝撃値は殆ど変化せず安定した性
能が得られるのに対し、フェライト・バーライト型の従
来の非調質鋼である35鋼は、冷却速度が遅くなるにつれ
て0.2%耐力、引張強さおよび衝撃値が徐々に低下する
ことがわかる。また、比較鋼1である18、21鋼は冷却速
度による影響はほとんどないが、前記した実施例と同様
にTiが未添加であるため、衝撃値が若干低いものであ
る。さらに参考として第4表には従来鋼である36鋼のφ
100丸棒を880℃にて加熱後油焼入し、580℃にて焼もど
しを行った場合のデータを示してある。この結果から明
らかなように、S45C調質材において寸法がφ100と大き
い場合には、十分に焼きが入れず、強度が極端に低くな
っている。これに対し本発明鋼は、今回試験したあらゆ
る鍛造条件において優れた機械的特性を示している。
(発明の効果) 本発明の熱間鍛造用非調質鋼は従来のゲライト・パー
ライト型非調質鋼が有していた靱性が劣ることおよび鍛
造時の条件を厳しく管理しないと優れた性能が得られな
いといった問題点を解決し、広い範囲の鍛造条件にて従
来の非調質鋼に比べ優れた強度、靱性、疲労強度が得ら
れるものである。
従って、本発明鋼は自動車の足廻り部品や建設機械の
油圧部品の非調質化を達成し、省エネルギーの社会的要
請への対応を可能にするものであり、産業上寄与すると
ころは極めて大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−74055(JP,A) 特開 昭61−279656(JP,A) 特開 昭59−100256(JP,A) 特開 平2−153018(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱間鍛造後空冷し、熱処理することなく用
    いられる鋼であって、その化学成分が重量比にしてC:0.
    10〜0.30%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.80〜2.00%、Cr:
    0.30〜1.50%、Mo:0.05〜0.50%、Al:0.002〜0.060%、
    V:0.05〜0.50%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.008〜0.020
    %を含有し、かつMo(%)+V(%)≧0.20(%)、1.
    8Mn(%)+Cr(%)+0.5Mo(%)≦20C(%)、Bs≧5
    50(℃)(Bs=830-270C(%)−90Mn(%)−70Cr
    (%)−83Mo(%))であり、残部Feならびに不純物元
    素からなり、主となる組織がフェライト+ベイナイトま
    たはベイナイトであって、M−A constituent(島状マ
    ルテンサイト[M]+残留オーステナイト[A])量が
    1.0%以下である組織を有し、降伏比(0.2%耐力/引張
    強さ)が0.71以上であることを特徴とする熱間鍛造用非
    調質鋼。
  2. 【請求項2】熱間鍛造後空冷し、熱処理することなく用
    いられる鋼であって、その化学成分が重量比にしてC:0.
    10〜0.30%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.80〜2.00%、Cr:
    0.30〜1.50%、Mo:0.05〜0.50%、Al:0.002〜0.060%、
    V:0.05〜0.50%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.008〜0.020
    %を含有し、さらにS:0.04〜0.12%、Pb:0.05〜0.30
    %、Ca:0.0005〜0.01%のうち1種または2種以上を含
    有し、かつMo(%)+V(%)≧0.20(%)、1.8Mn
    (%)+Cr(%)+0.5Mo(%)≦20C(%)、Bs≧550
    (℃)(Bs=830-270C(%)−90Mn(%)−70Cr(%)
    −83Mo(%))であり、残部Feならびに不純物元素から
    なり、主となる組織がフェライト+ベイナイトまたはベ
    イナイトであって、M−A constituent(島状マルテン
    サイト[M]+残留オーステナイト[A])量が1.0%
    以下である組織を有し、降伏比(0.2%耐力/引張強
    さ)が0.71以上であることを特徴とする熱間鍛造用非調
    質鋼。
  3. 【請求項3】熱間鍛造後空冷し、熱処理することなく用
    いられる鋼であって、その化学成分が重量比にしてC:0.
    10〜0.30%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.80〜2.00%、Cr:
    0.30〜1.50%、Mo:0.05〜0.50%、Al:0.002〜0.060%、
    V:0.05〜0.50%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.008〜0.020
    %を含有し、かつMo(%)+V(%)≧0.20(%)、1.
    8Mn(%)+Cr(%)+0.5Mo(%)≦20C(%)、Bs≧5
    50(℃)(Bs=830-270C(%)−90Mn(%)−70Cr
    (%)−83Mo(%))であり、さらに、Al(%)2/7<
    N(%)/14、Ti(%)/N(%)<1.4の2式を満足し、
    残部Feならびに不純物元素からなり、主となる組織がフ
    ェライト+ベイナイトまたはベイナイトであって、M−
    A constituent(島状マルテンサイト[M]+残留オー
    ステナイト[A])量が1.0%以下である組織を有し、
    降伏比(0.2%耐力/引張強さ)が0.71以上であること
    を特徴とする熱間鍛造用非調質鋼。
  4. 【請求項4】熱間鍛造後空冷し、熱処理することなく用
    いられる鋼であって、その化学成分が重量比にしてC:0.
    10〜0.30%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.80〜2.00%、Cr:
    0.30〜1.50%、Mo:0.05〜0.50%、Al:0.002〜0.060%、
    V:0.05〜0.50%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.008〜0.020
    %を含有し、さらにS:0.04〜0.12%、Pb:0.05〜0.30
    %、Ca:0.0005〜0.01%のうち1種または2種以上を含
    有し、かつMo(%)+V(%)≧0.20(%)、1.8Mn
    (%)+Cr(%)+0.5Mo(%)≦20C(%)、Bs≧550
    (℃)(Bs=830−270C(%)−90Mn(%)−70Cr
    (%)−83Mo(%))であり、さらに、Al(%)/27<
    N(%)/14、Ti(%)/N(%)<1.4の2式を満足し、
    残部Feならびに不純物元素からなり、主となる組織がフ
    ェライト+ベイナイトまたはベイナイトであって、M−
    A constituent(島状マルテンサイト[M]+残留オー
    ステナイト[A])量が1.0%以下である組織を有し、
    降伏比(0.2%耐力/引張強さ)が0.71以上であること
    を特徴とする熱間鍛造用非調質鋼。
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