JP3255937B2 - 熱間鍛造用焼入省略鋼の製造方法 - Google Patents

熱間鍛造用焼入省略鋼の製造方法

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JP3255937B2 JP09961591A JP9961591A JP3255937B2 JP 3255937 B2 JP3255937 B2 JP 3255937B2 JP 09961591 A JP09961591 A JP 09961591A JP 9961591 A JP9961591 A JP 9961591A JP 3255937 B2 JP3255937 B2 JP 3255937B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱間鍛造後、焼入を省
略し、焼もどしのみ行うことによって優れた強度、靭性
ならびに高い降伏比、耐久比を有し、かつ部品寸法およ
び鍛造条件により強度、靭性の変化が少なく、また熱処
理後の割れ、歪等がほとんどない特徴を有しており、特
に高強度と高靭性を必要とする自動車の足廻り部品に用
いられる鋼として有用な熱間鍛造用焼入省略鋼の製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ステアリングナックル、アッパー
アーム等の自動車の足廻り部品やロッドエンド等の建設
機械の大型部品等のうち、特に高強度、高靭性を要求さ
れる部品には、機械構造用合金鋼であるSCr440、SCM440
などを用い、熱間鍛造後の焼入焼もどし処理(以下調質
と記す)を施すか、もしくは機械構造用炭素鋼であるS3
5C、S45C等を鍛造焼入後焼もどしして優れた性能を確保
していた。
【0003】しかし、これらの熱処理は莫大なエネルギ
ーを必要とし、かつ焼入処理を必須とするために熱処理
後に割れ、歪が発生し問題となっていた。そこで、省エ
ネルギーの社会的要請に対応するために、昭和50年代か
ら熱間鍛造時の熱を利用して、鍛造後の自然空冷にて優
れた特性の得られる非調質鋼の開発が盛んに行われてき
た。
【0004】例えば、JISG4051に規定された機械構造用
炭素鋼やJISG4106に規定された機械構造用マンガン鋼及
びマンガンクロム鋼に微量のV 、Nb、Ti等の炭窒化物形
成元素を添加し、これらの微量元素による析出強化によ
って熱処理省略を可能にした非調質鋼が開発されてい
る。しかし、これらの非調質鋼は粗大なフェライト・パ
ーライト組織を有するものであり、SCr440、SCM440、S3
5Cなどの合金鋼、炭素鋼を調質したものに比べ強度、靭
性の点で劣るのが通常である。従って、自動車の足廻り
部品等、強度、靭性に対し要求の厳しい部品に適用する
ことが困難であった。
【0005】最近では、これらのフェライト・パーライ
ト型非調質鋼が特に靭性の点で劣るという欠点を解決す
るために、ベイナイト組織を有する非調質鋼について盛
んに研究が進められている。この非調質鋼は、従来の非
調質鋼に比べ低炭素化し、かつMn、Cr、Mo、B 等を適当
量添加して焼入性を向上させ、鍛造後の自然空冷にてベ
イナイト単相ないしフェライト・ベイナイト混合組織を
有するものであり、例えば特開昭61-139646 号、特開昭
61-238941 号、特開昭62-205245 号、特開昭62-260042
号、特開昭63-130748 号の各公報に示されるような鋼が
提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述した公開特許公報
に示されるような低炭素ベイナイト型非調質鋼は、従来
のフェライト・パーライト型非調質鋼に比べ強度、靭性
の点で優れ、調質した合金鋼、炭素鋼と比べても同等の
引張強さ、衝撃値を有している。しかし、調質合金鋼、
炭素鋼と比べると降伏比、耐久比の点で劣り、引張強さ
の高い割に降伏強度、疲労強度が低くなってしまう。従
って、前記鋼と同等の降伏強度、疲労強度を得るために
は、より高い引張強さに調整しなければならず、その結
果鍛造性、切削性等が悪くなり、適用の妨げとなってい
るのが現状である。また、調質合金鋼、炭素鋼を使用し
た場合には前述したように熱処理後に割れ、歪が発生
し、割れの有無の検査と歪の修正加工が必要となり、製
造工程が複雑となるとともに、部品サイズが大きくなる
と焼入性が不足し、優れた特性を得ることが困難にな
る。
【0007】本発明は従来の調質合金鋼、炭素鋼および
非調質鋼の前記のごとき問題点を考慮してなされたもの
で、熱処理後の割れ、歪の発生がなく、降伏比、耐久比
を含めた全ての特性において調質合金鋼と同等以上の特
性を有し、大型サイズの部品にも適用が可能な低炭素ベ
イナイト型熱間鍛造用焼入省略鋼の製造方法を提供する
ことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は前記目的の下
に、特に低炭素ベイナイト型非調質鋼の降伏比、耐久比
が低い原因とその対策について鋭意研究を重ねた結果、
以下の知見をなし本発明を得た。
【0009】すなわち、ベイナイト型非調質鋼の降伏比
および耐久比が低い原因は、ベイナイト鋼のミクロ組織
中に存在する高炭素島状マルテンサイトおよび残留オー
ステナイト(以下M−Aと記す)と、熱間鍛造後の空冷
途中におきる変態によって内部に生じる残留応力による
ものであることをつきとめた。従って、前述の公開公報
に記載されている発明等の低炭素ベイナイト型非調質鋼
は、靭性に優れ、完全な熱処理省略を最大の特徴として
いる反面、組織、変態歪の点で問題があり、ベイナイト
鋼の持つ特性を完全に活かしきれていなかったわけであ
る。
【0010】そこで、本発明者はミクロ組織中のM−A
量と残留応力を低減するための方法についてさらに研究
を進めた結果、鍛造放冷後、適当な温度にて焼もどし処
理を施すことにより、鋼中に存在していたM−Aや残留
応力が消失し、調質合金鋼及び炭素鋼と同等以上の優れ
た降伏比、耐久比を得られることを見出したものであ
る。さらに、調質合金鋼、炭素鋼と違い焼入処理を省略
できるため、熱処理後の変形、割れがなく、かつ部品の
大小に関係なく優れた特性が得られることを確認し、本
発明の完成に到ったものである。
【0011】前述した考えのもとに完成された本発明の
第1発明は、重量比にしてC:0.10〜0.30% 、Si:0.05 〜
1.00% 、Mn:0.80〜3.00% 、Cr:0.30 〜2.00% 、Mo:0.0
5 〜1.00% 、Al:0.002〜0.100%、N:0.005 〜0.030%を含
有し、かつ0.5Mn(%)+0.5Cr(%)+Mo(%) ≧1.45であり、残
部がFeならびに不純物元素からなる鋼を熱間鍛造後、70
0〜 300℃の温度範囲を 5〜 150℃/minの冷却速度で冷
却し、その後 150〜 700℃の温度で焼もどしを施すこと
を特徴とする熱間鍛造用焼入省略鋼の製造方法であり、
第2発明は、炭窒化物の析出により靱性、降伏比、耐久
比を向上させるため、V:0.05〜0.50% 、Ti:0.005〜0.03
0%、Nb:0.01 〜0.30% のうち1種または2種以上を含有
させたものであり、第3、4発明は、被削性を向上させ
るため、第1、2発明の対象鋼にさらにS:0.04〜0.12%
、Pb:0.05 〜0.30% 、Ca:0.0005〜0.0100% のうち、1
種または2種以上を含有させたものである。
【0012】次に本発明の熱間鍛造用焼入省略鋼の製造
方法における成分組成限定理由について以下に説明す
る。
【0013】C:0.10〜0.29% Cは強度を確保するために必要な元素であり、0.10% 以
上の含有が必要である。しかし、多量に含有させると衝
撃値が低下するとともに、鍛造放冷中に生じる残留応力
が大きくなり、降伏比、耐久比が低下するので上限を0.
29% とした。
【0014】Si:0.05 〜1.00% Siは製鋼時の脱酸のために添加されるものであり、0.05
% 以上の含有が必要である。しかし、1.00% を越えて含
有させると靭性が低下するので、上限を1.00%とした。
【0015】Mn:0.80 〜3.00% Mnは焼入性を向上させて鍛造し冷却した後の組織をベイ
ナイト化させるのに必要な元素である。Mnの含有が0.80
% 未満だと焼入性が不足し、ベイナイト組織を得ること
が困難になり、強度、靭性が不足するので、下限を0.80
% とした。しかし、3.00% を越えて含有させても前記効
果が飽和するとともに、却って靭性が低下するので、上
限を3.00% とした。
【0016】Cr:0.30 〜2.00% CrはMnと同様に組織をベイナイト化するのに必要な元素
であり、0.30% 以上の含有が必要である。しかし、2.00
% を越えて含有させても前記効果が飽和するとともに、
コスト高となるので、上限を2.00% とした。
【0017】Mo:0.05 〜1.00% MoはMn、Crと同様に焼入性を向上させて組織をベイナイ
ト化するとともに、ベイナイトラスを微細化させて強
度、靭性を向上させるために必要な元素である。0.05%
未満の含有では前記効果が十分に得られないため、下限
を0.05% とした。しかし、1.00% を越えて含有させても
前記効果が飽和するとともに、コスト高となるため、上
限を1.00% とした。
【0018】Al:0.002〜0.100% Alは強力な脱酸効果を持つとともに、N と結びついてピ
ン止め効果によりオーステナイト結晶粒を微細化する効
果のある元素であり、その効果を得るためには0.002%以
上の含有が必要である。しかし、0.100%を越えて含有さ
せてもその効果が飽和するとともに、被削性を低下させ
るため、上限を0.100%とした。
【0019】N:0.010 〜0.030% NはAl、V 、Ti、Nbと親和力が強く、鋼中においてAl、V
、Ti、Nbの炭窒化物となって存在し、ピン止め効果に
よりオーステナイト結晶粒を微細化させて靭性を向上さ
せる効果がある。前記効果を得るためには0.010%以上含
有させることが必要である。しかし、多量に含有させる
と前記炭窒化物とならずに靭性向上に効果のないN が多
量に存在して逆に靭性が低下するので、上限を0.030%と
した。
【0020】V:0.05〜0.50% 、Ti:0.005〜0.030%、Nb:
0.01 〜0.30% V 、Ti、Nbは炭窒化物となって鋼中に析出し、結晶粒の
微細化と析出強化により本発明鋼の靭性、降伏比、耐久
比を向上させる効果のある元素である。前記効果を得る
ためには、V は0.05% 、Tiは0.005%、Nbは0.01% の含有
が必要である。しかし、多量に含有させてもその効果が
飽和するとともに、コスト高となるため、上限をV は0.
50% 、Tiは0.030%、Nbは0.30% とした。
【0021】S:0.04〜0.12% 、Pb:0.05 〜0.30% 、Ca:
0.0005 〜0.0100% S 、Pb、Caは被削性の改善に有効な元素であり、必要に
応じて添加されるものである。前記効果を得るためには
それぞれ0.04% 、0.05% 、0.0005% の含有が必要であ
る。しかし多量に含有させてもその効果が飽和するとと
もに、靭性を低下させるので、上限をそれぞれ0.12% 、
0.30% 、0.0100% とした。
【0022】0.5Mn(%)+0.5Cr(%)+Mo(%) ≧1.45 0.5Mn(%)+0.5Cr(%)+Mo(%) ≧1.45は鍛造し冷却した後の
組織を微細なベイナイトまたはベイナイト・マルテンサ
イトの混合組織とし、優れた強度、靭性を得るのに必要
な焼入性を確保するための必要条件である。もし、Mn、
Cr、Mo含有量が不足して0.5Mn(%)+0.5Cr(%)+Mo(%) <1.
45となると初析フェライトやパーライトが生成してしま
ったり、たとえベイナイト組織が得られても粗大なベイ
ナイトラス組織となってしまうため、優れた強度、靭性
が得られなくなる。従って、0.5Mn(%)+0.5Cr(%)+Mo(%)
≧1.45とする必要がある。
【0023】次に本発明の製造条件限定理由について説
明する。熱間鍛造後の冷却条件を 700から 300℃の温度
範囲で限定したのは、冷却速度が5℃/min以下になる
と、初析フェライトやパーライトが生成したり、ベイナ
イトラスの粗大化した組織となりやすく、微細なベイナ
イトラス組織として優れた特性を確保することが困難に
なるためであり、また 150℃/min以上の冷却速度になる
と、優れた機械的特性を確保することはできるが、冷却
後に割れや歪が生じる可能性があるからである。
【0024】また、焼もどし温度を 150℃以上、 700℃
以下の範囲に限定したのは、鍛造後の冷却により生じた
変態による残留応力やミクロ組織中のM−Aを分解して
降伏比、耐久比を高めるのに、 150℃以上の温度でない
と効果がなく、また、 700℃以上の温度では炭化物が凝
集化して軟化したり、αからγへの逆変態が生じて優れ
た強度が得られなくなるからである。
【0025】
【実施例】以下に本発明の特徴を比較鋼および従来鋼と
比較し、実施例でもって明らかにする。表1−1、表1
−2は実施例に用いた供試材の化学成分を示すものであ
る。
【0026】
【表1−1】
【表1−2】
【0027】表1−1、表1−2において、〜20鋼は
本発明対象鋼であり、〜3鋼は第1発明、4〜鋼は
第2発明、11〜14鋼は第3発明、15〜20鋼は第4発明に
該当する鋼である。また、21〜25鋼は本発明の条件を部
分的に満足しない比較鋼であり、26鋼は従来のフェライ
ト・パーライト型の非調質鋼、27、28鋼はそれぞれ従来
鋼であるSCM440、S35Cである。
【0028】表1−1、表1−2に示した成分組成を有
する熱間圧延にて製造した直径60mmの丸棒を、1200〜12
50℃の温度に加熱し、1100〜1150℃の温度で図1に示す
ような形状に鍛造し、熱処理を施して後述する試験によ
り各種特性を評価した。熱処理は、1〜25鋼については
鍛造後 700〜 300℃の温度範囲を20℃/minの速度で冷却
し、その後 600℃で90分加熱後自然空冷という焼もどし
処理を施した。26鋼については、鍛造後自然空冷して供
試材とし、27鋼は、鍛造後室温まで自然空冷し、 880℃
の温度に加熱後油焼入し、 580℃にて焼もどし処理を施
して供試材とした。また、28鋼は鍛造後直ちに水焼入
し、 520℃の温度で焼もどし処理を施したものである。
【0029】前記した方法にて作製した供試材を用い、
後述する方法にてミクロ組織の観察、0.2%耐力、引張強
さ、降伏比、耐久比、衝撃値、被削性、割れの有無、歪
の測定を行った。
【0030】ミクロ組織は供試材の一部を採取して、光
学顕微鏡にて倍率 400倍で観察したものである。0.2%耐
力、引張強さ、降伏比は、JIS14A号引張試験片を作製
し、引張速度 1mm/secの条件で引張試験を行って測定し
たものである。耐久比は小野式回転曲げ疲労試験により
107回転での疲労強度を求め、引張強さとの比率をとっ
たものである。被削性はドリル穿孔試験により評価し
た。なお、試験はドリルが 5mmφのストレートシャン
ク、ドリルの材質はSKH51 、ドリル回転数は1710r.p.
m.、切削油なし、荷重75kgの条件で行った。測定した結
果は従来鋼である27鋼の穿孔距離を 100とし、それぞれ
の穿孔距離を整数比で示した。割れの測定は、磁粉探傷
装置を用いて行った。また、歪の測定は各部分の寸法を
測定し、所定の公差内に入るかどうかを調べた。以上述
べた方法にて図1に示す形状の30個の鍛造品を評価し、
そのうち割れの認められた個数、公差をはずれた鍛造品
の個数を表2に示した。
【0031】
【表2−1】
【表2−2】
【0032】表2−1、表2−2から明らかなように、
比較鋼、従来鋼である21〜28鋼を本発明鋼と比較する
と、21鋼は C含有率が高いため、耐力、引張強さについ
ては優れているが、反面衝撃値が劣るものであり、22、
23鋼はMnあるいはCr含有率が低く、かつ0.5Mn+0.5Cr+Mo
(以下式(1) と記す)の値が1.45未満であるため焼入性
が不足し、フェライト、ベイナイト組織となり、0.2%耐
力、引張強さ、降伏比、耐久比が劣るものであり、24鋼
はMoの含有率及び式(1) の値が低いため22、23鋼と同様
に焼入性が不足し、0.2%耐力、引張強さ、降伏比、耐久
比が劣るものであり、25鋼は各元素の化学成分は本発明
の範囲内に入っているが、式(1) の値を満足しないため
焼入性が不足し、22〜24鋼と同様に引張強さ、降伏比、
耐久比が劣るものである。また、従来のフェライト・パ
ーライト型非調質鋼である26鋼は引張強さ、降伏比、耐
久比、衝撃値の全ての機械的性質が劣っており、SCM440
の調質材である27鋼およびS35Cの鍛造焼入焼もどし材で
ある28鋼は、機械的性質については本発明鋼とほぼ同等
であるが、焼入により割れ、歪が発生し、最終検査や修
正加工にに多大な時間を要するものである。
【0033】これに対して本発明対象鋼である1〜20鋼
は、低炭素で、かつ焼入性向上元素であるMn、Cr、Moを
適当な範囲に規制し、最適な冷却を施し、さらに焼もど
し処理を施したことによって、0.2%耐力80kgf/mm2 、引
張強さ96kgfkgf/mm2、降伏比0.81以上、耐久比0.51以
上、衝撃値10kgfm/cm2以上という優れた性能を有すると
ともに、焼入処理を省略できるため、割れ、歪等による
不良は皆無である。また、被削性についても本発明鋼は
SCM440、S35C等の従来鋼に比べて良好であり、特に被削
性元素を添加した第3、4発明は強度、靱性、疲労強度
などの性能を損なうことなく、優れた被削性を示すこと
が確認できた。
【0034】次に、鍛造後の冷却速度の変化による影響
を調査した実施例を示す。表1に示す鋼のうち本発明対
象鋼である2、5、17、19鋼と比較鋼の21、25鋼の直径
60mmの熱間圧延棒鋼を使用して、前述した実施例の供試
材製造条件に対し鍛造後の冷却速度の条件のみ変化させ
て各種特性を調査した。冷却条件の影響を調べるため
に、 700〜300 ℃における平均冷却速度を3〜 180℃/m
inの間で変化させて、前記実施例と同じ試験条件にて各
特性値を測定し、評価を行った。その結果を表3−1、
表3−2に示す。
【0035】
【表3−1】
【表3−2】
【0036】表3−1、表3−2から明らかなように、
本発明対象鋼、比較鋼ともに冷却速度が速くなるほど引
張強さ、降伏比、耐久比および衝撃値は良好となり、遅
くなるとフェライトが析出してこれらの機械的性質が低
下する。比較鋼である21鋼はC 含有率が高いため、試験
した全ての冷却速度において衝撃値が低く、25鋼は式
(1) を満足していないため、優れた強度の得られる冷却
速度の範囲が狭いものである。これに対し、本発明対象
鋼は比較鋼に比べると優れた機械的性質の得られる条件
の範囲が広いが、5℃/min以上の速度で冷却することは
必要である。一方、冷却速度を速くすると機械的性質は
良好になるが、約 150℃/minを境に割れや歪が発生す
る。従って、鍛造後の冷却速度は5℃/min以上、 150℃
/min以下とすることが必要である。
【0037】次に焼もどし温度の変化による影響を調査
した実施例について以下に示す。表1に示す鋼のうち本
発明対象鋼である13、19鋼の直径60mmの熱間圧延棒鋼を
焼もどし条件を除いて表2の実施例と同じ方法で供試材
を作成した。また、焼もどし処理の効果を把握し、近年
開発が進められている低炭素ベイナイト型非調質鋼と本
発明との違いを明確にするために、焼もどしを施さない
供試材も準備した。そして、前の実施例と同様な方法で
組織観察、引張試験、衝撃試験、疲労試験、割れ、歪の
測定を行った。その結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】表4に示すように、焼もどし処理を施すこ
とにより、降伏比、耐久比が低い点で問題のあった低炭
素ベイナイト型非調質鋼の欠点の解消が可能となること
がわかる。ただし、温度が低い場合にはその効果が不十
分であり、また高すぎると強度が低下するので注意が必
要である。表4より本発明対象鋼の場合には、処理温度
を 150℃以上 700℃以下とすればよいことがわかる。
【0040】
【発明の効果】本発明の熱間鍛造用焼入れ省略鋼の製造
方法は、低炭素ベイナイト型非調質鋼に焼もどし処理を
施すことにより、従来の低炭素ベイナイト型非調質鋼に
比べ耐久比、降伏比を著しく向上させた結果、焼入れ処
理を省略しつつ調質合金鋼、炭素鋼と同等以上の優れた
性質を有するものである。また、焼入れを省略できるの
で省エネに貢献でき、熱処理による割れ、歪の発生がな
く、かつ急速冷却を必要としないので大型サイズの部品
にも適用できる。さらに、性能も非常に優れており、強
度、靱性に関し要求の厳しい部品に対しても調質合金
鋼、炭素鋼の代わりに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例として製造した鍛造品の形状を示す図で
ある。
【表1】
【表1】
【表2】
【表2】
【表3】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/60 C22C 38/60 (72)発明者 森 元秀 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 前田 千芳利 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 安田 茂 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−130748(JP,A) 特開 昭63−118055(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 6/00 - 6/04 C21D 8/00 - 8/10 C22C 38/00 - 38/60

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比にしてC:0.10〜0.29%、Si:0.05〜
    1.00%、Mn:0.80〜3.00%、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.05〜
    1.00%、Al:0.002〜0.100%、N:0.010〜0.030%を含有し、
    かつ0.5Mn(%)+0.5Cr(%)+Mo(%)≧1.45であり、残部がFe
    ならびに不純物元素からなる鋼を熱間鍛造後、700〜300
    ℃の温度範囲を5〜150℃/minの速度で冷却し、組織をベ
    イナイトまたはベイナイト・マルテンサイト組織の混合
    組織とさせたのち、その後150〜700℃の温度で焼もどし
    を施して,高炭素島状マルテンサイトおよび残留オース
    テナイトの消滅した組織とすると共に,0.81以上の
    降伏比および0.51以上の耐久比を得ることを特徴と
    する熱間鍛造用焼入省略鋼の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量比にしてC:0.10〜0.29%、Si:0.05〜
    1.00%、Mn:0.80〜3.00%、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.05〜
    1.00%、Al:0.002〜0.100%、N:0.010〜0.030%を含有し、
    さらにV:0.05〜0.50%、Ti:0.005〜0.030%、Nb:0.01〜0.
    30%のうち1種または2種以上を含有し、かつ0.5Mn(%)+
    0.5Cr(%)+Mo(%)≧1.45であり、残部がFeならびに不純物
    元素からなる鋼を熱間鍛造後、700〜300℃の温度範囲を
    5〜150℃/minの速度で冷却し、組織をベイナイトまたは
    ベイナイト・マルテンサイト組織の混合組織とさせたの
    ち、その後150〜700℃の温度で焼もどしを施して,高炭
    素島状マルテンサイトおよび残留オーステナイトの消滅
    した組織とすると共に,0.81以上の降伏比および
    0.51以上の耐久比を得ることを特徴とする熱間鍛造
    用焼入省略鋼の製造方法。
  3. 【請求項3】 重量比にしてC:0.10〜0.29%、Si:0.05〜
    1.00%、Mn:0.80〜3.00%、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.05〜
    1.00%、Al:0.002〜0.100%、N:0.010〜0.030%を含有し、
    さらにS:0.04〜0.12%、Pb:0.05〜0.30%、Ca:0.0005〜0.
    0100%のうち1種または2種以上を含有し、かつ0.5Mn
    (%)+0.5Cr(%)+Mo(%)≧1.45であり、残部がFeならびに不
    純物元素からなる鋼を熱間鍛造後、700〜300℃の温度範
    囲を5〜150℃/minの速度で冷却し、組織をベイナイトま
    たはベイナイト・マルテンサイト組織の混合組織とさせ
    たのち、その後150〜700℃の温度で焼もどしを施して,
    高炭素島状マルテンサイトおよび残留オーステナイトの
    消滅した組織とすると共に,0.81以上の降伏比およ
    び0.51以上の耐久比を得ることを特徴とする熱間鍛
    造用焼入省略鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 重量比にしてC:0.10〜0.29%、Si:0.05〜
    1.00%、Mn:0.80〜3.00%、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.05〜
    1.00%、Al:0.002〜0.100%、N:0.010〜0.030%を含有し、
    さらにV:0.05〜0.50%、Ti:0.005〜0.030%、Nb:0.01〜0.
    30%のうち1種または2種以上とS:0.04〜0.12%、Pb:0.0
    5〜0.30%、Ca:0.0005〜0.0100%のうち1種または2種以
    上を含有し、かつ0.5Mn(%)+0.5Cr(%)+Mo(%)≧1.45であ
    り、残部がFeならびに不純物元素からなる鋼を熱間鍛造
    後、700〜300℃の温度範囲を5〜150℃/minの速度で冷却
    し、組織をベイナイトまたはベイナイト・マルテンサイ
    ト組織の混合組織とさせたのち、その後150〜700℃の温
    度で焼もどしを施して,高炭素島状マルテンサイトおよ
    び残留オーステナイトの消滅した組織とすると共に,
    0.81以上の降伏比および0.51以上の耐久比を得
    ことを特徴とする熱間鍛造用焼入省略鋼の製造方法。
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