JP4012475B2 - 冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼及びその製造方法 - Google Patents

冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車部品や産業機械部品の素材として使用される機械構造用鋼に関わり、特に引抜き、切削、冷間鍛造等の冷間加工性を向上させた機構構造用鋼、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品や産業機械部品は、一般に炭素鋼や合金鋼などの機械構造用鋼の熱間圧延材を、冷間加工性を確保する目的で軟化焼鈍を行った後、引抜き、冷間鍛造、転造あるいは切削加工にて所定の形状に成型し、焼入れ焼戻し処理で強度を付与して製造されている。
【0003】
軟化焼鈍は、例えば球状化焼鈍の場合には約20時間の長時間の熱処理を要すことから、部品製造コストに占める割合が高い。このため近年では部品コストの低減を目的に軟化焼鈍の省略化が検討され、熱間圧延ままで軟化焼鈍材と同等の加工性を得る方法が提案されている。
【0004】
熱間圧延後に徐冷する方法として、1℃/秒以下の冷却速度でフェライト変態終了まで徐冷する方法(例えば特許文献1参照)や、冷却速度を0.02〜0.3℃/秒として徐冷する方法(例えば特許文献2参照)が開示されている。本発明者らの調査によると、これらの方法では冷却速度が遅いためベイナイトなどの硬質な組織が存在せず、またフェライト分率も高くなるため軟質化するが、鋼種によっては冷却後の鋼材表面に炭素濃度の低い領域、即ち脱炭層が形成される。このような脱炭層が存在すると、最終製品での表面強度が確保できない場合がある。
【0005】
さらに熱間圧延直後に昇温する方法として、5℃/秒以上の冷却速度で制御冷却し、直ちに500〜700℃の炉雰囲気温度範囲に15分以上1時間未満保持する方法(特許文献3参照)が開示されている。この方法では熱間圧延直後の再加熱により軟質化されるものの、鋼種によっては表層に脱炭層が形成される。これは焼入れ性の高い鋼種では冷却時にパーライト変態あるいはベイナイト変態が完了せずオーステナイト/フェライト2相域のまま保持されることによると考えられる。
【0006】
また、表層部の脱炭層がない軟質線材の製造方法として、鋼片を900℃〜1250℃に加熱し、仕上げ圧延前の圧延を650〜750℃の温度範囲に60秒を超えて曝されないように行い、700〜900℃で減面率30%以上の仕上げ圧延を行い、仕上げ圧延後にMs点を超え850℃以下になるように冷却し、10〜50本/mのリング密度でコンベア上に展開し、650℃以上800℃以下になるまで冷却し、その後、リング密度を150〜500本/mに変更し冷却速度0.15〜2℃/sで500℃まで冷却する方法が開示されている(特許文献4参照)。この方法では、温度や冷却速度の厳格な管理や煩雑な製造条件が必要となる一方で、圧延材の強度は軟質化されているものの、焼鈍材と比べると強度が高い。これは仕上げ圧延後から500℃までの冷却速度が速いため、ベイナイトなどの硬質な組織の混入は防止できるものの、パーライト部の軟質化が不十分であるためである。
【0007】
以上のように、熱間圧延材を軟質化するためには、一般に熱間圧延直後に650〜750℃付近の温度域に保定することや、フェライト変態温度付近を徐冷するなどの制御冷却が行われるが、一方で中炭素鋼の脱炭はフェライト/オーステナイト2相域に保持することで発生しやすくなることが知られている。このように熱間圧延材を制御冷却により軟質化すると、脱炭が顕著に発生する温度域での滞留時間が長くなるため、従来方法では熱間圧延ままで軟化焼鈍材と同等の強度を得ようとすると、表層の脱炭が避けられない問題が残されていた。
【0008】
【特許文献1】
特公平2−13004号公報(第3頁5段23行)
【特許文献2】
特開2000−336456号公報(請求項4)
【特許文献3】
特開2000−336460号公報(請求項4)
【特許文献4】
特開2000−256740号公報(請求項1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決するため案出されたものであり、鋼材表面の脱炭層厚みが抑制され、従来の熱間圧延後に軟化焼鈍を施した鋼材と同等の冷間加工性を有する熱間圧延ままでの機械構造用鋼、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋼材成分と温度履歴が脱炭に及ぼす影響を調査し、熱間圧延材を制御冷却によって軟質化しても、脱炭の発生を抑制するには、微量元素の表面偏析により、鋼材表面での脱炭反応を抑制することが有効であると考え、種々の微量元素による表面偏析と脱炭の抑制効果を評価した。表面偏析元素として一般にCuやPが知られているが、これらは熱間延性を低下させ圧延疵の原因となったり、粒界を脆化し靭性を劣化させる。材質特性への影響が少ない脱炭を抑制する微量元素として、Te、Se、Sが有効であることを見いだし、これらの元素を特定の量添加することで、熱間圧延鋼材の軟質化と脱炭の抑制を両立することを見いだした。
【0011】
これらの元素は鋼材中では、TeやSeはMnTe、MnSe等のTe化物、Se化物、あるいはこれらとSの複合介在物の形態で存在する。またSはMnS等の硫化物として存在する。TeやSe、及びSは界面エネルギーを低下させるため、鋼材表面や結晶粒界に偏析しやすい。鋼材表面にこれらの元素が偏析することにより、鋼中の炭素が表面に偏析することを阻害する。その結果、鋼材表層での炭素と酸素、あるいは水蒸気との反応が阻害され脱炭が抑制されると考えられる。
【0012】
またTe、SeやSを鋼材表面に濃化させ脱炭を抑制するためには、熱間圧延後の熱履歴は、仕上げ圧延後に500〜700℃の温度域まで0.1℃/秒以上5℃/秒未満の冷却速度で冷却し、一旦パーライト変態を完了させた後、650℃〜750℃の温度域に再昇温する熱履歴が加工性の向上及び脱炭抑制に有効であることを見出した。
【0013】
以上により、従来の軟質化焼鈍材と同等の強度、延性を有し、表層の脱炭層厚みが抑制された熱間圧延材を発明するに至った。
本発明の要旨は以下の通りである。
【0014】
(1) 質量%で、
C :0.1〜1.2%、
Si:0.01〜2.5%、
Mn:0.1〜1.5%、
P :0.04%以下(0%を含む)、
S :0.0005〜0.05%、
Al:0.2%以下、
Te:0.0005〜0.05%
N :0.0005〜0.03%
を含有し、SとTeの含有量の合計が0.005%〜0.05%であり、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼であって、フェライトとパーライトを主体とする組織からなり、JIS G 0552で規定するフェライト結晶粒度番号が11番以上であることを特徴とする冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
(2) さらに、質量%で、
Se:0.0005〜0.05%
を含有し、S、Te、及びSeの含有量の合計が0.0005%〜0.05%であることを特徴とする上記(1)に記載の冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
【0015】
) さらに、質量%で
Sb:0.001〜0.05%
を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
【0016】
) さらに、質量%で
Cr:0.2〜2.0%、
Mo:0.1〜1.0%、
Ni:0.3〜1.5%、
Cu:1.0%以下、
B :0.005%以下
のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
【0017】
) さらに、質量%で、
Ti:0.002%〜0.05%、
Nb:0.005〜0.1%、
V :0.03〜0.3%、
のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
【0018】
) さらに、質量%で
Mg:0.0002〜0.01%、
Zr:0.0001〜0.01%
Ca:0.0002〜0.008%、
のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
【0019】
) 上記(1)乃至()のいずれかに記載の鋼成分を有する鋼を850℃以上1000℃以下の温度範囲で熱間粗圧延し、700℃以上1000℃以下の温度範囲で仕上げ圧延後、500℃以上700℃以下の温度まで0.1℃/秒以上5℃/秒未満の範囲の冷却速度で冷却し、その後直ちに650℃以上750℃以下の炉雰囲気温度に15分以上90分以下保持し、その後放冷することを特徴とする冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の機械構造用鋼についての化学成分を限定した理由を以下に説明する。
【0021】
Cは機械構造用部品としての強度を確保するため添加する。0.1%未満では機械部品として必要な強度を確保できず、1.2%を超えると延性及び靭性が劣化するため0.1〜1.2%とした。
【0022】
Siは脱酸元素として機能するとともに、鋼に必要な強度、焼入れ性を付与し、焼戻し軟化抵抗を向上するのに有効な元素である。0.01%未満ではこれらの効果が不十分で、2.5%を超えると靭性、延性が劣化するとともに硬度の上昇を招き、冷間鍛造性を劣化させるため、0.01〜2.5%とした。
【0023】
Mnは鋼に必要な強度、焼入れ性を付与するために有効な元素である。0.1%未満では効果が不十分であり、1.5%を超えると靭性が劣化するとともに硬度が上昇し冷間鍛造性を劣化させるため、0.1〜1.5%とした。
【0024】
Pは冷間鍛造時の変形抵抗を高め、靭性を劣化させる。また粒界に偏析し焼入れ焼戻し後の結晶粒界を脆化して靭性を劣化させるため低減することが望ましい。従って上限を0.04%とした。
【0025】
SはMn、Cu、Mg等の合金元素と反応して硫化物として存在する。これらの硫化物はピン止め粒子として機能し結晶粒を細粒化し延性、靭性を向上するとともに被削性を向上させる。また鋼材の表面に偏析して脱炭の抑制にも有効に機能する。0.0005%未満では脱炭抑制効果がみられず、0.05%を超えて添加すると冷間鍛造性を劣化させるとともに、焼入れ焼戻し後の結晶粒界を脆化させ靭性が劣化する。このため0.0005〜0.05%とした。
【0026】
Alは強力な脱酸元素でOと結合して酸化物を形成する。あるいはNと結合してAlNとして存在する。これらの酸化物や窒化物はピン止め粒子として機能し結晶粒を細粒化する。0.2%を超えると冷間加工性を劣化させるため、上限を0.2%とした。
【0027】
Teは表面に偏析して脱炭を抑制する。0.0005%未満では脱炭の抑制効果が少なく、0.05%を超えると熱間加工性、及び冷間加工性を劣化するため、0.0005〜0.05%とした。
【0028】
Seは表面に偏析して脱炭を抑制する。0.0005%未満では脱炭の抑制効果が少なく、0.05%を超えると熱間加工性、及び冷間加工性を劣化するため、0.0005〜0.05%とした。
【0029】
またSとTeとの含有量の合計、または、S、Te及びSe含有量の合計が0.005%未満では脱炭抑制の効果が認められず、0.05%を超えると熱間加工性を阻害する。従って、SとTeとの含有量、またはS、Te及びSeの含有量の合計を0.005〜0.05%とした。
【0030】
NはAl、Ti等と結合し窒化物を形成しピン止め粒子として機能し結晶粒を細粒化する。0.0005%未満では窒化物の析出量が不足し、結晶粒が粗大化し加工性が劣化する。また0.03%を超えて添加すると熱間延性を劣化させるため、0.0005〜0.03%とした。
【0031】
次に請求項3〜6の成分限定理由を説明する。これらの元素は以下に記載する特性の向上を目的に1種または2種以上含有させることができる。
【0032】
Sbは表面に偏析して脱炭を抑制する。0.001%未満では脱炭の抑制効果が少なく、0.05%を超えると熱間加工性、及び冷間加工性を劣化するため、0.001〜0.05%とした。
【0033】
Cr、Mo、Ni、Cu、Bは焼入れ性を向上させ鋼の高強度化に有効である。
【0034】
Crは高強度化、焼入れ性の向上を目的に添加する。0.2%未満では効果が不十分で、2.0%を超えて添加すると冷間加工性が劣化するため、0.2〜2.0%とした。
【0035】
Moは焼入れ性の向上を目的に添加する。0.1%未満では効果が不十分で、1.0%を超えて添加すると製造コストの上昇を招くため、0.1〜1.0%とした。
【0036】
Niは焼入れ性の向上を目的に添加する。0.3%未満では効果が不十分で、1.5%を超えて添加すると製造コストの上昇を招くため、0.3〜1.5%とした。
【0037】
Cuは焼入れ性の向上を目的に添加する。1.0%を超えて添加すると熱間延性を著しく低下し表面疵の原因となるため上限を1.0%とした。
【0038】
Bは焼入れ性の向上を目的に添加するが0.005%を超えて添加しても効果が飽和するので上限を0.005%とした。なお、焼入れ性のためにはBの添加量の下限を0.0003%とすることが好ましい。
【0039】
Ti、Nb、Vは炭窒化物を形成する。これらの炭窒化物は鋼中に分散しピン止め粒子として機能し、結晶粒の粗大化を抑制し、加工性を向上させる。
【0040】
TiはCあるいはNと結合してTiCあるいはTiNとして存在する。これらの炭窒化物はピン止め粒子として有効である。0.002%未満では効果が現れず、0.05%を超えるとその効果が飽和するとともに硬度の上昇を招き冷間鍛造性が劣化するため0.002〜0.05%とした。
【0041】
NbはNあるいはCと結合しNbN、NbCあるいはそれらの複合介在物を形成し、結晶粒の粗大化抑制に有効に機能する。0.005%未満では効果が不十分で、0.1%を超えて添加しても効果が飽和するため、0.005〜0.1%とした。
【0042】
VはNあるいはCと結合しVN、VCあるいはそれらの複合介在物を形成し、結晶粒の粗大化抑制に有効に機能する。0.03%未満では効果が不十分で、0.3%を超えて添加しても効果が飽和するため、0.03〜0.3%とした。
【0043】
Mg、Zr、Caは脱酸元素として含有させる。
【0044】
MgはSあるいはOと結合して酸化物、硫化物あるいはこれらを含む複合介在物として存在し、ピン止め粒子として有効に機能する。0.0002%未満では効果が現れず、0.01%を超えて添加すると製造コストの上昇を招くため0.0002〜0.01%とした。
【0045】
ZrはOと結合して酸化物として存在するほか、NあるいはCと結合しZrN、ZrCあるいはそれらの複合介在物を形成し、結晶粒の粗大化抑制に有効に機能する。0.0001未満では効果が不十分で、0.01%を超えて添加しても効果が飽和するため、0.0001〜0.01%とした。
【0046】
Caは強力な脱酸元素であるほか、硫化物の形態制御に有効である。MnSの圧延方向への伸長化を防止し、加工性や靭性の劣化を改善する。0.0002%未満では効果が不十分で、0.008%を超えて添加しても効果が飽和するとともに粗大な酸化物を生成し破壊靭性値を低下させる。
【0047】
Oは鋼中に不可避的に含有されAlやTiなどの酸化物として存在する。O含有量が高いと粗大な酸化物が形成し、疲労破壊の原因となるので0.01%以下に抑制することが望ましい。
【0048】
また、本発明の鋼は特定の組織を有する。
【0049】
フェライトとパーライトを主体とする組織としたのは、組織中に硬質なベイナイトやマルテンサイトが混入すると、強度が増加し冷間加工性を劣化させるためである。フェライト結晶粒度番号が11番未満では延性が低下する。
【0050】
次に本発明の製造方法を説明する。
【0051】
熱間粗圧延温度が1000℃を超えるとオーステナイト結晶粒が粗大化して圧延後のフェライト結晶粒度11番以上のものが得られないためである。また粗圧延温度が850℃未満では圧延機負荷の点から圧延困難となるためである。仕上げ圧延温度が1000℃を超えるとフェライト結晶粒度11番以上のものが得られなくなり、700℃未満ではオーステナイトとフェライトの2相域での圧延となり、圧延後に均一なフェライト・パーライト組織が得られず、加工性を劣化させる。
【0052】
次に圧延後の冷却速度が0.1℃/秒未満ではパーライト変態温度が高くなりラメラ間隔が厚いパーライト、即ち熱的に安定性の高いパーライトが生成し、強度が増加する。一方、5℃/秒以上では焼入れ性が高い鋼種では、圧延後の冷却中に変態が完了せず、未変態のまま保持され組織が粗大化し加工性が劣化するとともに、鋼材表面のスケール層と地鉄の界面に形成されるTe、Se濃化層でのTe、Se濃度が低くなり脱炭抑制効果が低下する。冷却終了温度が650℃を超えると一部パーライト変態が未完となり組織が不均一となり、加工性が劣化する。また冷却終了温度が500℃未満では、その後の再加熱で650℃以上の温度に到達するのに長時間を要し、生産性の低下によるコストの上昇を招く。
【0053】
再加熱温度が650℃未満ではセメンタイトの粒状化が不十分で、軟質化が不十分となる。また750℃を超えると組織の一部がオーステナイト化し強度が高くなる。また再加熱時間が15分未満ではコイルの内部では十分に温度が上がらず軟質化が不十分となる。90分以上では生産性を阻害する。
【0054】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。表1に供試鋼の化学成分を示す。これらの鋼は転炉溶製鋼を連続鋳造し、断面が162×162mmの鋼片に分塊圧延後、表2に示す圧延条件で直径11mmの線材に熱間圧延した。熱間圧延は加熱炉にて1100℃で抽出し、所定の温度で粗圧延及び仕上げ圧延を行い、リング状に巻き取り、圧延No.I、II及びIIIは搬送ライン上での衝風冷却、徐冷カバー、熱処理炉、水槽などを利用して所定の冷却速度で、所定温度まで冷却したのち、コイルに集束してライン上を移動しながら熱処理炉で30分間加熱し炉外で放冷した。圧延No.IVは従来の熱間圧延後に軟化焼鈍を行う工程に相当する。熱間圧延後、搬送ライン上で徐冷カバーをかけることで冷却し、その後放冷した。冷却後、焼鈍炉にて700℃×3hの軟化焼鈍を行った。
【0055】
【表1】
Figure 0004012475
【0056】
【表2】
Figure 0004012475
【0057】
表3には熱間圧延材と軟化焼鈍材の組織、加工性と脱炭特性を示す。加工性の評価には引張強度(TS)、絞り(RA)及び限界圧縮率を用い、脱炭性の評価にはJIS G 0558の方法でフェライト脱炭層厚みを用いた。引張試験はJIS2号引張試験片を用い、限界圧縮率は、線材をφ10に伸線加工後、文献「冷間据込み性試験方法」(塑性と加工、22(1981)、139.)に示されている1号試験片(圧縮試験片)に準拠したφ10×15mmの圧縮試験片を用い端面拘束圧縮試験により評価した。
【0058】
【表2】
Figure 0004012475
【0059】
表3に示すように、本発明の請求範囲を満たす鋼は、いずれも限界圧縮率及び低脱炭性がともに優れている。TeまたはSeの含有量が本発明の下限未満である鋼種SはI〜IIIの圧延条件のいずれで製造してもフェライト脱炭が認められ低脱炭性が劣化する。またTe含有量が本発明の上限を超える鋼U、及びSe含有量が本発明の上限を超える鋼Vはいずれもほぼ同等の成分である鋼J、Lと比べ著しく限界圧縮率が低下し、加工性が劣化する。また熱間圧延後の冷却速度が請求項で示した製造条件の下限未満である18はフェライト粒度番号が本発明を外れ延性が低下する。また熱間圧延後の冷却速度が請求項で示した製造条件の上限を超える19では組織が粗大化しフェライト粒度番号が本発明の範囲を外れ加工性が劣化するまた本発明は圧延後に軟化焼鈍を行った23と比較しても同等以上の加工性が得られることがわかる。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、軟質化焼鈍することなしに焼鈍材と同等以上の加工性を有し、さらに鋼材表面の脱炭層厚みが抑制された機械構造用鋼が提供可能であり、産業上極めて大きな効果を有する。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C :0.1〜1.2%、
    Si:0.01〜2.5%、
    Mn:0.1〜1.5%、
    P :0.04%以下(0%を含む)、
    S :0.0005〜0.05%、
    Al:0.2%以下、
    Te:0.0005〜0.05%
    N :0.0005〜0.03%
    を含有し、SとTeの含有量の合計が0.005%〜0.05%であり、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼であって、フェライトとパーライトを主体とする組織からなり、JIS G 0552で規定するフェライト結晶粒度番号が11番以上であることを特徴とする冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
  2. さらに、質量%で、
    Se:0.0005〜0.05%
    を含有し、S、Te、及びSeの含有量の合計が0.0005%〜0.05%であることを特徴とする請求項1に記載の冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
  3. さらに、質量%で
    Sb:0.001〜0.05%
    を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
  4. さらに、質量%で
    Cr:0.2〜2.0%、
    Mo:0.1〜1.0%、
    Ni:0.3〜1.5%、
    Cu:1.0%以下、
    B :0.005%以下
    のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
  5. さらに、質量%で、
    Ti:0.002%〜0.05%、
    Nb:0.005〜0.1%、
    V :0.03〜0.3%、
    のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
  6. さらに、質量%で
    Mg:0.0002〜0.01%、
    Zr:0.0001〜0.01%
    Ca:0.0002〜0.008%、
    のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼。
  7. 請求項1乃至のいずれかに記載の鋼成分を有する鋼を850℃以上1000℃以下の温度範囲で熱間粗圧延し、700℃以上1000℃以下の温度範囲で仕上げ圧延後、500℃以上700℃以下の温度まで0.1℃/秒以上5℃/秒未満の範囲の冷却速度で冷却し、その後直ちに650℃以上750℃以下の炉雰囲気温度に15分以上90分以下保持し、その後放冷することを特徴とする冷間加工性と低脱炭性に優れた機械構造用鋼の製造方法。
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