JP2017179596A - 高炭素鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加工性に優れる高炭素鋼板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】質量%で、C:0.45〜0.90%、Si:0.001〜0.5%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Al:0.001〜0.10%、及び、N:0.01%以下を含有し、残部が鉄および不純物からなる成分組成を有し、全体の平均硬さが150HV以下であり、深さt/2部とt/4部(t:板厚)の硬度差ΔHVが10以下であり、かつ、鋼板エッジ部と中央部の硬度差ΔHVが10以下であることを特徴とする、高炭素鋼板。
【選択図】図1

Description

本発明は高炭素鋼板に関し、特に、加工性に優れた高炭素鋼板及びその製造方法に関する。
高炭素鋼板は、チェーン、ギア、クラッチ等の自動車駆動系部品等の加工素材として、又は、刃物、ばね、シートベルト金具、その他機械部品等として広く用いられている。高炭素鋼板から製品を製造する場合、通常、高炭素鋼板を打抜き、成形加工した後に、所望の硬さとなるよう焼入れ焼戻し等の熱処理を施している。複雑な形状をしている部品もあり、高炭素鋼板には高加工性が要求される。
加工性向上のため、高炭素鋼板は通常、球状化焼鈍と呼ばれる焼きなましを施し炭化物(セメンタイト)を球状化させ軟質化を図っている。不十分な球状化焼鈍では加工性が劣化し、ユーザーが部品に成形するにあたり部品に割れが発生したり金型の寿命が低下するという問題が起こる。
薄鋼板の球状化焼鈍はコイル状で行うため、コイルの幅方向エッジ部と内部で焼鈍温度履歴に差が発生し、球状化組織が板幅方向で変化し、硬さばらつきが生じやすい。さらに、球状化焼鈍前の熱延板に板厚方向の硬さにばらつきがあると、球状化焼鈍時に板厚方向の硬さばらつきも発生する。板幅方向の硬さばらつきは部品製造時の歩留まり低下による製造コスト増の原因となる。また、板厚方向の硬さばらつきは打ち抜き加工時の鋼板端面の亀裂発生を促進し伸びフランジ性や曲げ性の劣化を引き起こす。よって、板幅方向および板厚方向の硬さばらつきが小さい鋼板が求められている。
このような問題に対し、これまでにも、高炭素鋼板において球状化組織の均質化および軟質化を図る技術がいくつか提案されている。
例えば、均質化の従来技術として、特許文献1には、焼き入れ性および加工性に優れる高炭素熱延鋼板を得るにあたり、仕上圧延に際し、エッジヒーターを使用して、鋼板の板幅中央部の仕上温度と板幅端部から10mm位置の仕上温度の差を40℃以内とすることにより、板幅方向における硬度差を低減する方法が開示されている。しかし、この方法では、板厚方向の硬度差を考慮していないため、球状化焼鈍時に発生するばらつきは低減できない。
また、特許文献2では、粗圧延した後、(Ar3+80℃)越えの仕上温度で仕上圧延を行い、次いで、仕上圧延後2秒以内に120℃/秒越えの冷却速度で550℃越え650℃未満の冷却終了温度まで冷却し、次いで、550℃以下の温度で巻取り、酸洗後、箱型焼鈍法により、670℃以上Ac1変態点以下の温度で球状化焼鈍することにより、幅方向の均質性に優れた高炭素圧延鋼板を得る方法が提案されている。しかしながら、この方法でも板厚方向の硬度差等は考慮されていない。また、このような高い冷却速度とすると、板厚方向の硬度差はさらに大きくなると予測され、球状化焼鈍時に発生するばらつきが十分に低減できないと考えられる。
一方、特許文献3においては、Cを0.2〜0.7質量%含有する組成の鋼を、(Ar変態点−20℃)以上の仕上温度で熱間圧延して熱延鋼板とする工程と、前記熱延鋼板を、60℃/秒以上120℃/秒未満の冷却速度で650℃以下の温度まで冷却する工程と、前記冷却後の熱延鋼板を、600℃以下の巻取温度で巻取る工程と、前記巻取り後の熱延鋼板を、30%以上の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板とする工程と、前記冷延鋼板を、600℃以上Ac変態点以下の焼鈍温度で焼鈍する工程と、を有する高炭素冷延鋼板の製造方法が開示されている。該文献では、このように熱延工程でFDT(仕上圧延終了温度)と冷却速度を制御することにより、板厚方向の硬度差を低減できることが開示されているが、板幅方向の硬度差は考慮されていない。よって、球状化焼鈍時に発生するばらつきは低減できていない。さらに、熱延後に冷延を行う必要もあるため、エッジ割れのリスクも生じる。
したがって、特許文献1〜3の技術では、いずれも球状化焼鈍炉で起こるばらつきは考慮されておらず、板厚方向および板幅方向両方の均質化には十分に対応できていない。
次に、軟質化の従来技術としては、特許文献4に、主な特徴として、仕上圧延において、最終パスと最終前パス(最終2パス)の圧下率を12%以上とし、最終2パスの仕上温度を(Ar3−10)℃以上(Ar3+90)℃以下の温度域で行い、仕上げ圧延後1.8秒以内に120℃/秒超えの冷却速度とすることによって、球状化焼鈍時に軟質化を図ることができることが報告されている。しかし、均質化については考慮されておらず、さらに、高い冷却速度としているために板厚方向の硬度差はさらに大きくなると予測され、球状化焼鈍時に発生するばらつきが低減できないと考えられる。
また、特許文献5記載の技術では、球状化焼鈍前に冷間圧延を実施した後、75容量%以上の水素からなるガス雰囲気のベル型バッチ焼鈍炉を用い焼鈍炉焼鈍を行うことによって、軟質化を図っている。しかしながら、該文献記載の技術は、球状化焼鈍の冷却工程の冷却速度制御が十分とは言えず、軟質化も不十分と推定される。さらに、焼鈍前の冷間圧延が必須であり、かつ焼鈍炉の種類や雰囲気組成が限定されていることから、製造コスト増も懸念される。
特開2015−17285号公報 特許5262012号公報 特開2007−39797号公報 特開2009−68081号公報 特開平10−204540号公報
本発明は、上記の様な問題点に着目してなされたものであって、その目的は、均質化と軟質化の両立を図り、加工性に優れた高炭素鋼板を提供することである。
本発明者は鋭意検討を重ね、下記構成によって、上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明の一局面に係る高炭素鋼板は、質量%で、C:0.45〜0.90%、Si:0.001〜0.5%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Al:0.001〜0.10%、及び、N:0.01%以下を含有し、残部が鉄および不純物からなる成分組成を有し、全体の平均硬度硬さが150HV以下であり、深さt/2部とt/4部(t:板厚)の硬度差ΔHVが10以下であり、かつ、鋼板エッジ部と中央部の硬度差ΔHVが10以下であることを特徴とする。
また、前記高炭素鋼板が、さらに、Cr:0.005〜1.0%、Mo:0.005〜1.0%、Cu:0.005〜1.0%、Ni:0.005〜1.0%、Ti:0.005〜0.3%、Nb:0.005〜0.3%、V:0.005〜0.3%、B:0.0005〜0.01%、及びCa:0.0005〜0.01%よりなる群から選ばれる1種は2種以上を含有することが好ましい。
さらに、前記高炭素鋼板が炭化物とフェライトからなる組織を有しており、前記炭化物の平均粒径が0.5μm以上であり、かつ、球状化率が85%以上であることが好ましい。
本発明の他の局面に係る高炭素鋼板の製造方法は、上述の組成を有する鋼を、熱間圧延及び酸洗し、その後、1段目焼鈍として(T+10℃)〜(T+50℃)の温度範囲で5〜35時間焼鈍した後、平均30℃/時間以下の冷却速度でT−40℃以下まで冷却し、その後、再加熱し、2段目焼鈍として(T℃)〜(T+35℃)の温度範囲で2〜20時間焼鈍し、次いで、2段目焼鈍温度が(T+10℃)より高い場合は、(T+10℃)〜(T−20℃)の温度範囲を平均3℃/時間以下の冷却速度で冷却すること、もしくは、2段目焼鈍温度が(T+10℃)以下の場合は、2段目焼鈍温度〜(T−20℃)の温度範囲を平均3℃/時間以下の冷却速度で冷却すること、並びに、前記T(℃)が以下の式によって表され、かつ、前記1段目焼鈍温度よりも前記2段目焼鈍温度が低いことを特徴とする。
T(℃)=723−10.7(%Mn)−16.9(%Ni)+29.1(%Si)+16.9(%Cr)
本発明によれば、均質でかつ軟質であり、加工性に優れた高炭素鋼板とその製造方法を提供することができる。
図1は、実施例におけるコイルの焼鈍温度の測定箇所を示す概略図である。
本発明者は、高炭素鋼板において、均質化と軟質化の両立を図ることを目的として様々な研究を重ねた。
そして、質量%で、C:0.45〜0.90%、Si:0.001〜0.5%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Al:0.001〜0.10%、及び、N:0.01%以下を含有し、残部が鉄および不純物からなる成分組成を有し、全体の平均硬さが150HV以下であり、深さt/2部とt/4部(t:板厚)の硬度差ΔHVが10以下であり、かつ、鋼板エッジ部と中央部の硬度差ΔHVが10以下であることを特徴とする鋼板によって、上記目的に適う高炭素鋼板を提供できることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、軟質かつ均質であり、加工性に優れた高炭素鋼板を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態についてより具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
まず、本実施形態の鋼板において、化学成分組成の範囲を定めた理由は次の通りである。
[C:0.45〜0.90%]
Cは、鋼板の最終製品の硬さを確保する上で重要な元素である。0.45%以上を添加して所要の硬さを確保する。好ましい下限は0.55%である。一方、0.90%を超えると、破壊の起点となる炭化物の割合が増加し、加工性が低下するので、上限を0.90%とする。好ましい上限は0.80%である。
[Si:0.001〜0.50%]
Siは固溶強化や焼戻し軟化抵抗増大による最終製品の強度向上に有効な元素である。0.001%未満ではその効果が得られない。一方、0.50%を超えてSiを添加すると、固溶強化作用によってフェライトが硬化し、加工時に割れを発生させる原因になる。また、製造過程で鋼板表面におけるスケール疵の発生を助長し、表面品質を低下させる原因にもなる。好ましい上限は0.3%である。
[Mn:0.20〜2.0%]
Mnは、焼入れ性を向上させ、最終製品の強度を増加させるのに有効に作用する元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.2%以上含有させる必要がある。好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.45%以上、さらに好ましくは0.55%以上である。しかし過剰に含有すると強度が過度に上昇して冷間加工性が劣化することがある。従ってMn量は、2.0%以下とする。より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1.2%以下、特に好ましくは1.0%以下である。
[P:0.03%以下]
Pは鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、Pが含まれていることにより粒界偏析を起こすと延性劣化の原因となる。従ってP量は、0.03%以下(0%を含む)である必要がある。より好ましくは0.02%以下である。Pの含有量は少なければ少ないほど好ましいが、精錬コストが増大するため、下限値は0.005%が好ましい。
[S:0.005%以下]
Sは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、鋼材中にMnSとして存在し、延性を劣化させて冷間加工性を悪化させるおそれがある。従ってS量は、0.005%以下(0%を含む)である必要がある。より好ましくは0.004%以下、更に好ましくは0.003%以下である。Sの含有量は少なければ少ないほど好ましいが、精錬コストが増大するため、下限値は0.0001%が好ましい。
[Al:0.001〜0.10%]
Alは脱酸元素として作用すると共に、鋼材中に存在する固溶NをAlNとして固定し、冷間加工性を向上させる元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、Al量は0.001%以上とする必要がある。より好ましくは0.005%以上、更に好ましくは0.01%以上である。しかしAl量が過剰になると、鋼材中に介在物となるAlが過剰に生成し、冷間加工性が劣化することがある。従ってAl量は、0.10%以下とする。より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.05%以下である。
[N:0.01%以下]
Nは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、鋼材中に固溶Nとして存在すると、歪み時効による硬さ上昇および延性低下を招き、冷間加工性を劣化させるおそれがある。従ってN量は、0.01%以下(0%を含む)である必要がある。より好ましくは0.008%以下、更に好ましくは0.005%以下である。Nの含有量は少なければ少ないほど好ましいが、精錬コストが増大するため、下限値は0.001%が好ましい。
本実施形態の鋼板の基本成分は上記の通りであり、残部は実質的に鉄である。但し、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不可避的不純物が鋼中に含まれることは当然に許容される。また本実施形態の鋼板には、必要に応じて、さらに以下の元素を含有させることも有効である。
[Cr:0.005〜1.0%]
Crは、焼入れ性の改善に有効であり、焼戻し軟化抵抗を改善する作用を呈する。そのような作用を発揮させるためには、Crを0.005%以上で含むことが好ましい。より好ましい下限は0.05%である。しかし、1.0%を超える多量のCrが含まれると、焼鈍後も軟化し難く、却って冷間加工性が低下するおそれがある。より好ましい上限は0.7%である。
[Mo:0.005〜1.0%]
Moは、少量の添加でCrと同様に焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を改善する作用を呈する。そのような作用を発揮させるためには、Moを0.005%以上で含むことが好ましい。より好ましい下限は0.05%である。しかし、1.0%を超える多量のMoが含まれると、焼鈍によっても軟質化し難く、却って焼入れ前の冷間加工性が低下するおそれがある。より好ましい上限は0.5%である。
[Cu:0.005〜1.0%]
Cuは、焼入れ性を向上し、最終製品の強度を増加させるのに有効に作用する元素である。そのような作用を発揮させるためには、Cuを0.005%以上で含むことが好ましい。より好ましい下限は0.05%である。しかし、1.0%を超える多量のCuが含まれると、溶融金属脆化に起因して鋼板表面に微細なクラックが発生し易くなる。より好ましい上限は0.5%である。
[Ni:0.005〜1.0%]
Niは、焼入れ性を改善すると共に、低温靭性の向上に有効な元素である。そのような作用を発揮させるためには、Niを0.005%以上で含むことが好ましい。より好ましい下限は0.05%である。また、Niは、Cu添加に起因する溶融金属脆化の悪影響を打ち消す作用も呈する。溶融金属脆化の防止には、Cu添加量と当量程度のNiを添加することが有効である。一方で、1.0%を超える多量のNiを添加すると、球状化焼鈍によっても軟質化し難く、却って焼入れ前の冷間加工性が低下するおそれがある。より好ましい上限は0.5%である。
[Ti:0.005〜0.30%]
Tiは、溶鋼の脱酸調整に使用される合金成分であり、脱窒作用も呈する。また、鋼板に固溶しているNを窒化物として固定するため、焼入れ性改善に必要な有効B量が確保される。Ti添加で生成した炭窒化物は、焼入れ時の結晶粒粗大化を防止し、靭性改善に効果を有する。これらの作用を安定して得るためには、少なくとも0.005%以上の含有量とすることが好ましい。より好ましい下限は0.02%である。しかし、0.30%を超えると、添加効果が飽和する。より好ましい上限は0.20%である。
[Nb:0.005〜0.30%]
Nbは、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止や靭性改善に有効な元素である。これらの作用を安定して得るためには、少なくとも0.005%以上の含有量とすることが好ましい。より好ましい下限は0.02%である。しかし、0.30%を超えると、添加効果が飽和する。より好ましい上限は0.20%である。
[V:0.005〜0.30%]
Vは、Nbと同様に、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止や靭性改善に有効な元素である。これらの作用を安定して得るためには、少なくとも0.005%以上の含有量とすることが好ましい。より好ましい下限は0.02%である。しかし、0.30%を超えると、添加効果が飽和する。より好ましい上限は0.20%である。
[B:0.0005〜0.01%]
Bは、微量添加で、焼入性を高めるのに有効な元素である。当該作用を安定して得るためには、0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。より好ましい下限は0.0020%である。しかし、0.01%を超えると、鋳造性が低下し、B系化合物が生成して靭性が低下するおそれがある。より好ましい上限は0.0050%である。
[Ca:0.0005〜0.01%]
Caは、微量添加で、酸化物及び硫化物の形態を制御するのに有効な元素である。当該作用を安定して得るためには、0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。より好ましい下限は0.0010%である。しかし、0.01%を超えると、添加効果が飽和する。より好ましい上限は0.0050%である。
[硬さ]
次に、本実施形態の高炭素鋼板における加工性の確保のためには、上述したような成分組成を有する鋼板において、全体の平均硬さが150HV以下であり、深さt/2部とt/4部(t:板厚)の硬度差ΔHVが10以下であり、かつ、鋼板エッジ部と中央部の硬度差ΔHVが10以下であることが必要である。
本実施形態において、硬さとは、JIS Z2244に規定のビッカース硬さ試験方法に準じて測定されるビッカース硬さをさす。
全体の平均硬度については、鋼板の両エッジからそれぞれ50mm部と、板幅中央部からサンプルを採取し、断面の深さt/4部(表面側)及びt/2部(中心部)をそれぞれn=5でビッカース硬さを測定し、全ての平均を全体の平均硬さとする。こうして得られる全体の平均硬さが150HV以下であることにより、鋼板の冷間加工性が向上すると共に、ユーザーにおける金型寿命向上という利点がある。より好ましくは、147HV以下である。全体の平均硬さの下限は、特に限定はないが、過度の軟質化は打ち抜き加工時にダレが発生する可能性があることから、全体の平均硬さは125HV以上であることが好ましい。
次に、深さt/2部とt/4部の硬度差ΔHVについては、上述した、鋼板の両エッジからそれぞれ50mm部と、板幅中央部から採取したサンプルの全t/4部の平均硬さと全t/2部の平均硬さとの差である。このΔHVが10HV以下であることにより、打ち抜き時の端面の亀裂を抑制でき、伸びフランジ性や曲げ性の向上という利点がある。より好ましくは、8HV以下である。
また、鋼板エッジ部と中央部の硬度差ΔHVについては、両エッジ部における平均硬さ(全t/4部と全t/2部)と、中央部における平均硬さ(全t/4部と全t/2部)の差である。このΔHVが10HV以下であることにより、コイル板幅方向に材質が安定し、部品の品質安定化や金型寿命の向上という利点がある。より好ましくは、8HV以下である。
[鋼板の組織]
さらに、本実施形態の鋼板が、炭化物とフェライトからなる組織を有しており、前記炭化物の平均粒径が0.5μm以上であり、かつ、球状化率が85%以上であることが好ましい。
炭化物の平均粒径が0.5μm以上であることによって、鋼板の軟質化がより確実に得られ、加工性が向上する。
また、炭化物の球状化率が85%以上であることによって、加工時に発生する炭化物とフェライトの界面におけるボイドを抑制することができ、加工性がより向上すると考えられる。なお、本実施形態にて、平均粒径は、炭化物の円相当径の平均で求めることができる。また、球状化率とは、アスペクト比が3以下の炭化物の数量比率とする。
[製造方法]
次に、本実施形態の高炭素鋼板の製造方法について説明する。本実施形態の鋼板は、上記の様な化学成分組成を有する鋼材を溶製後、通常用いられている方法によってスラブとし、熱間圧延し、公知の方法により酸洗して、所定の焼鈍工程を経ることによって得ることができる。すなわち、本実施形態の高炭素鋼板の製造方法は、上述したような組成を有する鋼を、熱間圧延及び酸洗し、その後、1段目焼鈍として(T+10℃)〜(T+50℃)の温度範囲で5〜35時間焼鈍した後、平均30℃/時間以下の冷却速度でT−40℃以下まで冷却し、その後、再加熱し、2段目焼鈍として(T℃)〜(T+35℃)の温度範囲で2〜20時間焼鈍し、次いで、2段目焼鈍温度が(T+10℃)より高い場合は、(T+10℃)〜(T−20℃)の温度範囲を平均3℃/時間以下の冷却速度で冷却すること、もしくは、2段目焼鈍温度が(T+10℃)以下の場合は、2段目焼鈍温度〜(T−20℃)の温度範囲を平均3℃/時間以下の冷却速度で冷却すること、並びに、前記T(℃)が以下の式によって表され、かつ、前記1段目焼鈍温度よりも前記2段目焼鈍温度が低いことを特徴とする。
T(℃)=723−10.7(%Mn)−16.9(%Ni)+29.1(%Si)+16.9(%Cr)
上記のような構成により、熱延条件の制御や、特定の球状化焼鈍炉や雰囲気を使用することなく、球状化焼鈍パターンの制御のみで均質化と軟質化の両立を図ることができ、ひいては、加工性に優れた高炭素鋼板を得ることができる。
なお、上記T(℃)は、「レスリー鉄鋼材料学」(丸善株式会社発行、William
C. Leslie著、p273)に記載されているAc点を参考に、ラボ実験より導き出した。
球状化焼鈍工程において、加熱温度が低すぎたり加熱時間が短すぎるときには焼鈍前のパーライト中の炭化物の溶け込みが不十分となり、焼鈍後もパーライトが残存する。一方、加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎるときには、均熱中に炭化物の溶け込みやγ相への逆変態が過度に進行し、その後の冷却速度が速いと、炭化物が球状化せずにパーライトが再生される。ここでは、前者を残存パーライト、後者を再生パーライトと称する。いずれのパーライトも、適正球状化組織より硬質な組織であり、かつアスペクト比が高い層状の炭化物を含む。従って、これらが球状化焼鈍後に含有されると、軟質化が不十分となり、かつ球状化率も低くなる。
薄鋼板は一般的にコイル形状で焼鈍されるため、コイル内部と、コイルエッジ部や外周部では温度履歴が異なる。コイル内部は加熱されにくいため、残存パーライトが残りやすく、硬質となり、かつ球状化率も低くなりやすい。ただし、加熱温度が高くなったとしても、冷却されにくいため再生パーライトは生成されにくい。一方、焼鈍雰囲気と直接接するコイルエッジ部や外周部は加熱されやすく冷却されやすいため、再生パーライトが生成しやすく、硬質となり、かつ球状化率も低くなりやすい。そのため、加熱→均熱→冷却の単純な球状化焼鈍パターンではコイル全体に渡って均質な球状化組織を得ることが難しい状況であった。
本発明者は、その解決策として2段階で所定の焼鈍工程を行うことが有効であることを見出した。本実施形態では、1段目で、ある程度の高温まで加熱することで内部を球状化し、2段目はそれよりも低温で加熱することで、1段目で生成したコイルエッジ部や外周部の再生パーライトを球状化する。加えて、2段目の焼鈍後の冷却工程において、所定温度範囲の冷却速度を3℃/時間以下とすることで、再生パーライトが再度生成することを抑制でき、炭化物の球状化および粗大化を促進させ、コイル全体の軟質化を達成できる。
さらに、このような焼鈍工程により、焼鈍前の熱延板の板厚方向の硬さばらつきに起因した焼鈍材の板厚方向の硬さばらつきの低減にも有効であると考えられる。
以下、各条件についてより具体的に説明する。
[熱間圧延工程]
熱間圧延は通常用いられている方法で行うことができ、特に限定はない。例えば、Ar3点以上で圧延し、500℃以上、700℃以下の温度で巻き取ることによって行うことができる。
[酸洗工程]
酸洗は通常用いられている方法で行うことができ、特に限定はない。本工程では常法の酸洗を行い、脱スケールを行う。
[焼鈍(球状化)工程]
下記球状化焼鈍工程において、焼鈍炉の種類や雰囲気組成に限定はされない。また、焼鈍工程前に、必要に応じて、冷間圧延工程等を入れてもよい。
(1段目焼鈍)
1段目焼鈍として(T+10℃)〜(T+50℃)の温度範囲で5〜35時間焼鈍する。これにより、コイル内部のパーライト中の炭化物を溶け込ませる。前記温度高すぎたり、前記時間が長すぎると、炭化物が溶けすぎたり、γ相への逆変態が過度に進行するおそれがある。結果として、その後の冷却で再生パーライトが過度に生成してしまい、2段目の焼鈍でも十分に球状化できずに、軟質化が不十分となり、かつ球状化率が低下する。一方、前記温度が低すぎたり、前記時間が短すぎても、残存パーライトが残って軟質化が不十分となり、かつ球状化率が低下する。特にコイルエッジ部や外周部でその傾向が顕著であり、コイル内部との硬度差が大きくなってしまう。
1段目焼鈍の加熱後の冷却は、平均30℃/時間以下の冷却速度で行う。このような冷却速度とすることにより、コイル内部は冷却中に再生パーライトの生成を抑制しつつ、球状化炭化物を成長させることができる。前記冷却速度が速すぎるとコイル内部においても再生パーライトが多く生成し、後述の2段目の焼鈍でも十分に球状化できずに、軟質化が不十分となり、かつ球状化率が低下する。好ましくは20℃/時間以下であり、より好ましくは10℃/時間以下で冷却を行う。
1段目焼鈍の冷却停止温度は、T−40℃以下とする。この冷却停止温度が高すぎると1段目の焼鈍で逆変態したγ相が残ったまま、2段目の加熱に入ってしまい、その後の冷却で再生パーライトが生成しやすくなる。その結果、軟質化が不十分となり、かつ球状化率が低下する。特にコイルエッジ部や外周部でその傾向が顕著であり、コイル内部との硬度差が大きくなってしまう。この1段目焼鈍は室温まで冷却してもよい。
(2段目焼鈍)
上記1段目焼鈍において、T−40℃以下まで冷却後、再加熱し、2段目焼鈍として(T℃)〜(T+35℃)の温度範囲で2〜20時間焼鈍する。これにより、コイルエッジ部の再生パーライト中の炭化物を溶け込ませる。前記焼鈍温度が高すぎたり、前記焼鈍時間が長すぎると、炭化物が溶けすぎたり、γ相への逆変態が過度に進行しおそれがある。それにより、その後の冷却で再生パーライトが再度生成してしまい、軟質化が不十分となり、かつ球状化率が低下する。結果として、軟質化できている内部との硬度差が大きくなる。一方、前記焼鈍温度が低すぎたり、焼鈍時間が短すぎても、1段目で生成した再生パーライトが残ってしまい、軟質化が不十分となり、かつ球状化率が低下する。結果として、軟質化できている内部との硬度差が大きくなる。
その後、2段目焼鈍温度が(T+10℃)より高い場合は、(T+10℃)〜(T−20℃)の温度範囲を平均3℃/時間以下の冷却速度で冷却(徐冷)する。なお、2段目焼鈍温度から(T+10℃)までの冷却手段や冷却速度については特に限定はされない。
また、2段目焼鈍温度が(T+10℃)以下の場合は、(T+10℃)まで冷却する必要はなく、そのまま2段目焼鈍温度〜(T−20℃)の温度範囲を平均3℃/時間以下の冷却速度で冷却する。
それにより、特にコイルエッジ部の再生パーライトの生成を抑制でき、炭化物の球状化を促進させ、軟質化が実現できる。結果として内部との硬度差も小さくすることができる。前記冷却速度は、好ましくは2℃/時間以下であり、より好ましくは1.5℃/時間以下で冷却を行う。
上記のような条件にて得られた高炭素鋼板は、十分に軟質化されており、また硬さのばらつきもなく均質であるため、加工性に非常に優れている。
以上説明したように、本発明の一局面に係る高炭素鋼板は、質量%で、C:0.45〜0.90%、Si:0.001〜0.5%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Al:0.001〜0.10%、及び、N:0.01%以下を含有し、残部が鉄および不純物からなる成分組成を有し、全体の平均硬さが150HV以下であり、深さt/2部とt/4部(t:板厚)の硬度差ΔHVが10以下であり、かつ、鋼板エッジ部と中央部の硬度差ΔHVが10以下であることを特徴とする。
このような構成により、加工性に優れた高炭素鋼板を提供することができる。
また、前記高炭素鋼板が、さらに、Cr:0.005〜1.0%、Mo:0.005〜1.0%、Cu:0.005〜1.0%、Ni:0.005〜1.0%、Ti:0.005〜0.3%、Nb:0.005〜0.3%、V:0.005〜0.3%、B:0.0005〜0.01%、及びCa:0.0005〜0.01%よりなる群から選ばれる1種は2種以上を含有することが好ましい。
それにより、上述の効果をより確実に得ることができ、さらに強度や靱性等の特性を熱処理後の部品に付与することができる。
さらに、前記高炭素鋼板が炭化物とフェライトからなる組織を有しており、前記炭化物の平均粒径が0.5μm以上であり、かつ、球状化率が85%以上であることが好ましい。
それにより、加工性に優れた高炭素鋼板をより確実に得ることができる。
本発明の他の局面に係る高炭素鋼板の製造方法は、上述の組成を有する鋼を、熱間圧延及び酸洗し、その後、1段目焼鈍として(T+10℃)〜(T+50℃)の温度範囲で5〜35時間焼鈍した後、平均30℃/時間以下の冷却速度でT−40℃以下まで冷却し、その後、再加熱し、2段目焼鈍として(T℃)〜(T+35℃)の温度範囲で2〜20時間焼鈍し、次いで、2段目焼鈍温度が(T+10℃)より高い場合は、(T+10℃)〜(T−20℃)の温度範囲を平均3℃/時間以下の冷却速度で冷却すること、もしくは、2段目焼鈍温度が(T+10℃)以下の場合は、2段目焼鈍温度〜(T−20℃)の温度範囲を平均3℃/時間以下の冷却速度で冷却すること、並びに、前記T(℃)が以下の式によって表され、かつ、前記1段目焼鈍温度よりも前記2段目焼鈍温度が低いことを特徴とする。
T(℃)=723−10.7(%Mn)−16.9(%Ni)+29.1(%Si)+16.9(%Cr)
このような構成により、熱延条件の制御や、特定の球状化焼鈍炉や雰囲気を使用することなく、球状化焼鈍パターンの制御のみで均質化と軟質化の両立を図ることができ、加工性に優れた高炭素鋼板を製造することができる。
本発明を、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
[鋼板の製造]
下記表1に示す化学成分組成の鋼材(鋼種A〜W)を溶製した後、得られたスラブを1200℃に加熱し、仕上温度900℃にて厚み3.2mmとなるまで熱間圧延した。その後、620℃で巻き取った。なお、表1の成分組成において、空欄の箇所は無添加であることを意味する。
得られたそれぞれの鋼種の熱延鋼板について、酸洗した後、表2に示す条件で球状化焼鈍を行い、試材No.1〜39を得た。なお、焼鈍雰囲気については、水素18%、窒素82%とした。
Figure 2017179596
[評価]
得られた試材については、それぞれ、下記の通りにビッカース硬さ(HV)、組織を測定・観察した。その結果も表2に示す。
(ビッカース硬さ)
ビッカース硬さについては、JIS Z2244に規定のビッカース硬さ試験方法に準じて、サンプルを埋め込み、断面ビッカース硬さを求めた。荷重は5kgとした。
まず、全体の平均硬度硬さについては、鋼板の両エッジからそれぞれ50mm部と、板幅中央部の3箇所からサンプルを採取し、それぞれのサンプルの断面の深さt/4部(表面側)及びt/2部(中心部)について、各位置のビッカース硬さをn=5で測定し、全ての平均を全体の平均硬さとした。
次に、深さt/2部とt/4部の硬度差ΔHVについては、上述した、鋼板の両エッジからそれぞれ50mm部と、板幅中央部から採取したサンプルの全t/4部の平均硬さと全t/2部の平均硬さとの差ΔHVを求めた。
また、鋼板エッジ部と中央部の硬度差ΔHVについては、両エッジ部における平均硬さ(全t/4部と全t/2部)と、中央部における平均硬さ(全t/4部と全t/2部)の差ΔHVを求めた。
(組織の炭化物粒径および球状化率)
供試材の板幅方向中央部の圧延方向に平行な板厚断面を表面研磨した後、ピクラール液で腐食後、板厚の1/4位置(t/4部)を走査型電子顕微鏡により、倍率2000倍で観察した。観察視野は約35μm×約50μmとした。観察は5視野について行い、画像解析にて円相当径0.10μm以下の炭化物はノイズとして除去後にそれぞれの炭化物粒径と球状化率を測定した。なお、炭化物粒径については各炭化物の円相当径の平均から求め、球状化率についてはアスペクト比3以下の炭化物の数量比率とした。
(焼鈍温度の測定方法)
さらに、焼鈍温度については以下のようにして測定した。すなわち、コイルの図1に示す各箇所(図中、×で示す箇所:雰囲気にさらされているコイル外周と片側エッジ部を、90°ピッチで4箇所ずつ、合計8箇所)に熱電対を設置し、温度を測定した。その平均値を焼鈍温度とした。
Figure 2017179596
なお、表中のそれずれの数値の単位は、(T+10)、(T+50)、(T−40)、(T+35)(T−20)、(T+10)、加熱温度及び冷却温度については「℃」、加熱時間についは、「時間(hr)」、冷却速度については「℃/時間」、HVについては「ビッカース硬さ」、炭化物粒径については「μm」、並びに、球状化率については「%」とする。
[考察]
表2に示す各評価の結果より、以下のように考察される。
試材No.1〜19並びに試材No.33〜39は、本発明で規定する各要件を満足する発明例であり、全体の硬さおよびそれぞれのΔHVの値から、十分に軟質であり、かつ、均質であることが示された。また、試材No.17〜19の比較から、2段目焼鈍の(T+10℃)〜(T−20℃)の温度範囲において、冷却速度を低下していくことでより軟質の鋼板が得られることもわかった。
これに対し、試材No.20〜32(比較例)では、本発明で規定するいずれかの要件を満足していなかったため、軟質化、均質化の少なくともいずれかが劣化している。
試材No.20では、2段目焼鈍の冷却速度が速かったため、エッジ部に再生パーライトが生成してしまい、全体硬さ及びそれぞれの硬度差(ΔHVおよびΔHV)が超過し、球状化率も低下した。
試材No.21では、1段目焼鈍の加熱温度が高かったため、エッジ部に再生パーライトが生成してしまい、それぞれの硬度差(ΔHVおよびΔHV)が大きく、球状化率が低下した。
試材No.22では、1段目焼鈍の加熱温度が低かったため、コイル内部に残存パーライトが残ってしまい、全体硬さ及びそれぞれの硬度差(ΔHVおよびΔHV)が超過し、球状化率も低下した。
試材No.23では、1段目焼鈍と2段目焼鈍の加熱温度が低かったため、コイル内部に残存パーライトが残ってしまい、全体硬さ及びそれぞれの硬度差(ΔHV)が超過した。また、炭化物粒径も小さくなり、球状化率が低下した。
試材No.24では、1段目焼鈍の加熱時間が短かったため、コイル内部に残存パーライトが残ってしまい、それぞれの硬度差(ΔHVおよびΔHV)が大きく、球状化率も低下した。
試材No.25では、1段目焼鈍の加熱時間が長かったため、エッジ部に再生パーライトが生成してしまい、それぞれの硬度差(ΔHVおよびΔHV)が大きく、球状化率も低下した。
試材No.26では、1段目焼鈍の冷却速度が速過ぎたため、エッジ部に再生パーライトが生成してしまい、それぞれの硬度差(ΔHVおよびΔHV)が大きく、球状化率も低下した。
試材No.27では、1段目焼鈍の冷却停止温度が高かったため、エッジ部に再生パーライトが生成してしまい、それぞれの硬度差(ΔHVおよびΔHV)が大きく、球状化率も低下した。
試材No.28では、2段目焼鈍の加熱温度が低かったため、1段目焼鈍で生成したエッジ部の再生パーライトを球状化できずに残ってしまった。それにより、全体硬さ及びそれぞれの硬度差(ΔHVおよびΔHV)が超過し、球状化率も低下した。
試材No.29では、2段目焼鈍の加熱温度が高かったため、エッジ部に再生パーライトが再度生成してしまい、全体硬さ及びそれぞれの硬度差(ΔHVおよびΔHV)が超過し、球状化率も低下した。
試材No.30では、2段目焼鈍の加熱時間が短かったため、1段目焼鈍で生成したエッジ部の再生パーライトを球状化できずに残ってしまった。それにより、それぞれの硬度差(ΔHVおよびΔHV)が大きくなり、球状化率も低下した。
試材No.31では、2段目焼鈍の加熱時間が長かったため、エッジ部に再生パーライトが再度生成してしまい、それぞれの硬度差(ΔHVおよびΔHV)が大きくなり、球状化率も低下した。
試材No.32では、1段目焼鈍を行わず、2段目焼鈍のみを行った。その結果、コイル内部とエッジ部のばらつきは解消されず、2段階で焼鈍していないため、十分な軟質化も達成できなかった。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.45〜0.90%、
    Si:0.001〜0.5%、
    Mn:0.2〜2.0%、
    P:0.03%以下、
    S:0.005%以下、
    Al:0.001〜0.10%、及び
    N:0.01%以下
    を含有し、残部が鉄および不純物からなる成分組成を有し、
    全体の平均硬さが150HV以下であり、深さt/2部とt/4部(t:板厚)の硬度差ΔHVが10以下であり、かつ、鋼板エッジ部と中央部の硬度差ΔHVが10以下であることを特徴とする、高炭素鋼板。
  2. さらに
    Cr:0.005〜1.0%、
    Mo:0.005〜1.0%、
    Cu:0.005〜1.0%、
    Ni:0.005〜1.0%、
    Ti:0.005〜0.3%、
    Nb:0.005〜0.3%、
    V:0.005〜0.3%、
    B:0.0005〜0.01%、及び
    Ca:0.0005〜0.01%
    よりなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の高炭素鋼板。
  3. 前記高炭素鋼板が炭化物とフェライトからなる組織を有しており、前記炭化物の平均粒径が0.5μm以上であり、かつ、球状化率が85%以上である、請求項1または請求項2に記載の高炭素鋼板。
  4. 請求項1または2のいずれかに記載の組成を有する鋼を、熱間圧延及び酸洗し、
    その後、1段目焼鈍として(T+10℃)〜(T+50℃)の温度範囲で5〜35時間焼鈍した後、平均30℃/時間以下の冷却速度でT−40℃以下まで冷却し、
    その後、再加熱し、2段目焼鈍として(T℃)〜(T+35℃)の温度範囲で2〜20時間焼鈍し、次いで、2段目焼鈍温度が(T+10℃)より高い場合は、(T+10℃)〜(T−20℃)の温度範囲を平均3℃/時間以下の冷却速度で冷却すること、もしくは、2段目焼鈍温度が(T+10℃)以下の場合は、2段目焼鈍温度〜(T−20℃)の温度範囲を平均3℃/時間以下の冷却速度で冷却すること、並びに、
    前記T(℃)が以下の式によって表され、かつ、前記1段目焼鈍温度よりも前記2段目焼鈍温度が低いことを特徴とする、高炭素鋼板の製造方法。
    T(℃)=723−10.7(%Mn)−16.9(%Ni)+29.1(%Si)+16.9(%Cr)
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