JP4506374B2 - 高速ドライ切削用歯車素材の製造方法及びその歯車素材を用いた歯車の製造方法 - Google Patents

高速ドライ切削用歯車素材の製造方法及びその歯車素材を用いた歯車の製造方法 Download PDF

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本発明は、自動車等の駆動力伝達用に適した歯車部品の製造方法に関するものであり、特にエンジンの動力を車輪に伝えるために使用されている重要部品であるハイポイドギヤ等で、歯の形状を等高歯とし、高速のドライ切削を可能とする歯車素材の製造方法に関する。
自動車、建設用機械等ではエンジンの駆動力を伝達するために、数多くの歯車が使用されている。その中でも、例えばハイポイドギヤは、食違い二軸間の動力伝達用歯車であって、主に自動車の車輪にエンジンからの駆動力を伝達するための重要な歯車として使用されている。このハイポイドギヤは、平歯車やかさ歯車に比べて歯形状が複雑なため、歯切後において良いかみあい、歯当たりを得ることが難しい場合があり、従来は、比較的容易に歯切が可能な創生歯切法と呼ばれる歯切法が採用されていた。
しかしながら、この歯切法は、加工用素材(ワーク)を固定し、歯切り工具を回転させ、外歯と内歯で1歯ずつ切削することを特徴としており、大量の切削油(クーラント)を用いた切削であり、かつ歯切がフライス法によるため、生産性が劣り(切削速度50m/分程度)、歯切に必要な設備が多数必要となり、歯切コストが高くなるという問題があった。また、この加工法で、得られる歯の形状は、勾配歯(歯の高さが一定でない)が主体であった。
この創生歯切法とは別の歯切法として等高歯(歯の高さが一定)歯切法がある。この歯切法では、創生歯切法とは異なり、ワークを回転させながら、複数の歯を連続切削することが可能となり、歯切もホブ法により行うことによって、創生歯切法に比較して大幅に生産性を改善させることができる。しかしながら、当然の如く歯切速度が大幅に速くなるため、使用する工具への負担は大きく、歯切を行う素材に対し、切削速度を大幅に高めても問題なく歯切できる優れた歯切加工性が要求されることとなる。
これに対し、従来から普通に使用されているCr、Mo、Ni等を含有する肌焼鋼は、ドライ切削による高速度機械加工が不可能というわけではないが、前記した通り工具への負担が従来の歯切法と比較して過大となるため、その寿命は耐摩耗性に優れる高価な超硬工具を用いたとしても短いものとなり、寿命の改善を可能とする材料側の仕様(成分、組織、硬さ)を明確にすることが強く望まれていた。また、超硬工具を用いても、優れた寿命確保できず、工具コストが高価となることが、等高歯歯切法が生産性の面で優れていることがわかっているにもかかわらず、普及が進まない理由となっていた。
また、従来の歯切時には、他の切削加工と同様に切削油(クーラント)を大量に使用するが、切削油は油そのもののコストだけでなく、使用中の循環装置が必要なのは勿論の事、使用後の処理コストも必要となり、作業環境に悪影響を及ぼすという問題もあった。従って、切削油を使用せず、ドライ切削による高速歯切(200m/分程度以上)を行った場合においても、工具寿命を改善することが可能になれば、大幅に歯切コストを低減可能になるため、ドライ切削で等高歯の歯切が可能な素材の製造方法等の開発が強く望まれていた。
このような課題に対し、従来提案されている機械加工性に優れた肌焼鋼としては、例えば特許文献1に記載の鋼が提案されている。特許文献1に記載の発明は、成分の最適化により優れた加工性を得ようとするものであり、変形抵抗上昇に影響の大きいSi、Cr、Mnを低減し、それにより不足した焼入性をB添加で解決し、さらにPb、Bi等の被削性向上元素を添加したことを特徴とするものである。なお、この特許は一例であり、他にも同様に成分最適化型の機械加工性を改善した肌焼鋼の提案は多数の特許が出願公開されている。
特開平8−302447号公報
しかしながら、前記した従来の発明には次の問題がある。
従来多数出願されている成分最適化により機械加工性を改善したことを特徴とする肌焼鋼は、通常良く行われている機械加工であるドリル加工や旋削加工等では、確かにある程度改善効果を得ることができており、大きな効果を挙げてきた。しかし、本発明で工具寿命改善を図ろうとしている対象となる機械加工は、200m/分以上の極めて高速のドライ切削加工を、現状あまり実施が進んでいないハイポイドギヤ等の等高歯の製造に対して実施しようとするものであり、非常に特殊な機械加工に該当するものである。
従来多数出願されている機械加工性の優れた肌焼鋼の特許は、このような特殊な機械加工に限定されたものは非常に少なく、ハイポイドギヤ等の等高歯化に特定して、良好な機械加工性を解決することを目的に提案された特許は、皆無である。このような特殊な加工の場合においては、その加工の内容によって、素材側の最適条件が大きく異なることもしばしばであり、他の加工法では成功したことがそのまま通用しないことも多く、単純な成分の最適化だけでは、問題の解決が困難であるという問題がある。
本発明は、以上説明した問題点を解決するために成されたものであり、非常に高速な加工をクーラントを使用することなくドライで行うことが要求されるハイポイドギヤ等の等高歯化を進めた場合において、工具寿命の大幅改善を可能とする歯車素材の製造方法を新規に提案することを目的とする。
請求項1の発明は、質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.5%以下、Mn:0.20〜1.50%、P:0.03%以下、S:0.035%以下、Cr:0.30〜2.00%、Al:0.010〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、O:0.0015%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物元素からなる熱間圧延鋼材からなる鍛造用素材を1100〜1350℃に加熱して熱間鍛造することにより粗形状に加工し、その後冷却してベイナイト変態を終了させ、次に620〜750℃に加熱し、20分〜3hr保持することにより、ベイナイト単相又はベイナイト+フェライトの混合組織とすることを特徴とする高速ドライ切削用歯車素材の製造方法である。
本発明者等は等高歯の高速ドライ切削を可能にするための素材の最適条件について詳しく調査した。その結果、以下の知見を得ることにより本発明を完成したものである。
(1)組織の影響が大きく、ベイナイト組織が最もドライ切削時の工具寿命が優れる。また、若干量のフェライトが混在した組織でも同様に優れた寿命が得られる。
(2)鍛造後冷却してベイナイト単相又はベイナイト+フェライトの混合組織を得て、これを低温焼鈍により硬度を若干低下させた状態が最も工具寿命が優れる。
(3)鍛造後冷却途中で温度保持したり、鍛造後変態点以上の温度に加熱する焼鈍処理によって組織をフェライトパーライトとしたものは、本発明のベイナイト組織からなる素材に比べ、硬さを低くした場合であっても、工具寿命は劣る。
(4)歯切工具としては、超硬合金の中でもK種が他のP種を用いた場合に比べ優れており、(1)〜(3)の素材面での対策だけでは優れた寿命を得ることが難しい。(請求項3)
次に本発明で用いる鋼材の化学成分の範囲を限定した理由について説明する。
C:0.15〜0.30%
Cは侵入型元素として知られており、固溶強化により鋼の強度を高める効果のある元素である。従って、最低でも0.15%以上の含有が必要である。しかし、多量に含有させると加工性が低下し、高速ドライ切削が困難となるため、上限を0.30%とした。
Si:0.50%以下
Siは、製鋼時に脱酸剤として必要な元素であるが、多量に存在すると浸炭時に雰囲気中の酸素と反応して酸化物を形成するため、いわゆる浸炭異常層と呼ばれる焼入性の低下した層が生成しやすくなる。また、Siの多量含有は、浸炭性が低下して、浸炭後の表面炭素濃度がばらつきやすくなり、安定して目的とする表面炭素濃度が得られにくくなる。従って、Siの含有は、脱酸のために必要な最低限の量に抑えることが望ましく、上限を0.50%とした。
Mn:0.20〜1.50%
Mnは、焼入性を高め、部品の内部まで強度を確保するのに必要な元素であり、そのためには最低でも0.20%以上含有させる必要がある。しかしながら、多量に含有させると、残留オ−ステナイトが増加して、内部の硬さ、靭性が低下するとともに、高速ドライ切削による歯切加工性が低下して、本発明で目的としている加工が困難となるので、上限を1.50%とした。
P:0.03%以下
Pは製造時に少量の混入が避けられない不純物であるが、鋼中に多量に含有されると、粒界の強度が低下し、疲労特性を悪化させる原因となる元素であるので、その上限を0.03%とした。
S:0.035%以下
Sは、Pと同様に製造時に少量の混入が避けられない不純物であり、MnS等の硫化物系介在物として鋼中に存在している。そしてその含有により、歯切加工性を改善する効果がある。しかしながら、前記硫化物系介在物は、衝撃強度、曲げ強度、面圧強度を低下させる原因となるため、極端な増量は望ましくなく、上限を0.035%とした。また、本発明では、Sの添加よりも後述する組織の最適化や熱処理条件の限定等によって必要とする歯切加工性を確保しているため、Sの添加を抑制しても必要とする歯切加工性を得ることができる。
Cr:0.30〜2.00%
Crは、焼入性を向上させ、必要な強度を確保するために不可欠となる元素であり、最低でも0.30%以上の含有が必要である。しかしながら、多量に含有させると、靭性が劣化するとともに、歯切加工性も低下するため、上限を2.00%とした。
Al:0.010〜0.060%
Alは、Siと同様に脱酸に必要な元素であるとともに、AlNとして存在し、浸炭処理により生じる可能性のある結晶粒異常成長を防止する効果のある元素である。従って、前記効果を得るために、下限を0.010%とした。特に、本発明では歯切加工性の低下を防止するために、Al以外に炭窒化物の形成によって結晶粒異常成長防止効果のあるV、Ti、Nbの積極添加をしていないので、異常粒成長防止効果を十分に得るためには、少なくとも0.015%以上含有させることが望ましい。しかしながら、多量に含有させるとAl2O3等の硬質な酸化物系介在物が増加し、歯切加工性が低下するため、上限を0.060%とした。
N:0.0080〜0.0250%
Nは、Alと結合してAlNとなって鋼中に存在し、結晶粒の異常粒成長を防止する効果のある元素であり、その効果を十分に得るために含有率の下限を0.0080%とした。しかしながら、多量に含有させても効果が飽和するとともに、N含有率を0.0250%を超えて添加しようとしても、製鋼時に添加したNがガス化して製造自体が困難になるため、上限を0.0250%とした。
O:0.0015%以下
Oは、脱酸処理しても少量の含有が避けられない元素であり、鋼中でAl2O3等の硬質の酸化物系介在物となって存在する。先願特許の中には、不純物であるとして、特にその範囲を明確にしていない特許も多くみられるが、Oの含有によって生成される硬質の介在物は、優れた強度が得られなくなる原因となるため、極力低減する必要がある。従って、本発明ではその上限を明確に規定する必要があり、上限を0.0015%とした。
また、本発明で用いる鋼材は、当然の如く浸炭処理されるため、加熱時の結晶粒粗大化を考慮する必要があり、高温で浸炭処理しようとするのであれば、従来から結晶粒粗大化防止元素として知られているV、Ti、Nb等を添加した方が好ましい。しかしながら、これらの元素は、後述するMoと同様に600℃以上の高温度域における硬度を高める効果を有するため、添加するとドライ切削による歯切加工にとってはかえって不利となる。そこで、結晶粒粗大化については、前記した通りAlを十分に添加することによって防止を図ることとし、V、Ti、Nbについては、積極添加しないこととした。
以上、請求項1に記載の発明で用いる鋼材に必須で添加される元素について説明したが、本発明では、上記元素のほか必要に応じてMo、Caの1種又は2種を追加で添加した鋼を用いることができる(請求項2)。以下、その限定理由について説明する。
Mo:0.8%以下
Moは、Mn、Crと同様に焼入性を向上する効果があるとともに、浸炭異常層の生成を抑制して強度を改善する効果のある元素である。しかし、添加しなくても目的とする性能が得られる場合もあるので、必要に応じ少量添加して使用することができることとした。但し、Moは多量に添加すると、600℃以上の高温度域での硬さが高くなって歯切加工性に対し不利となる。また、Moの増量は残留オ−ステナイトが増加し、浸炭硬さが低下する原因になるとともに、内部の靭性低下の原因となるため、その添加は0.80%以下の範囲内でできるだけ少量に抑えることが好ましい。
Ca:0.0200%以下
Caは添加すると、酸化物となって存在し、これがベラーグとなって機械加工時に使用する工具を保護し、工具寿命を改善することができる元素である。従って、請求項1に記載の鋼に加えて添加することによって、工具寿命を改善することができる。添加量は要求される歯切加工性に合わせて量を調整すれば良いので、下限は特に設定していない。また、上限を200ppmとしたのは、200ppmを超えて含有させても、効果が飽和し、増量に見合う効果が得られないからである。
次に、本発明の鍛造及び熱処理条件、組織の限定理由について説明する。
本発明では、前記した成分からなる圧延鋼材を用い、これを1100〜1350℃(表面温度)に加熱し、熱間鍛造し、後述のドライ切削をする上で都合の良い粗形状に加工される。ここで、鍛造時の加熱温度の範囲を1100〜1350℃としたのは、加熱温度が1100℃未満になると、鋼中に存在するAlNが十分に固溶せず、後述の鍛造後の加熱保持時に微細析出させることができなくなるため、浸炭時に結晶粒粗大化を防止することが難しくなることと、成形荷重が高くなって、金型への負担が大きくなるためであり、上限を1350℃としたのは、それ以上温度を高くしてもエネルギーが無駄になるだけであるからである。
そして熱間鍛造後冷却し、ベイナイト変態を終了させ、ベイナイト単相か、あるいはベイナイト+フェライトの混合組織からなる鍛造品が得られる。なお、ここでの冷却は、室温まで冷却しても何ら問題はないが、ベイナイト変態が終了するまで冷却すれば狙いとする品質は得られるので、エネルギーを節約するために、ベイナイト変態が終了する温度である400℃程度まで冷却し、その後室温まで冷却することなく、後工程である620〜750℃の加熱保持を行っても良い。狙いの組織が得られている限り、目的とする品質を得ることができるからである。
また、冷却は、本発明で規定した成分範囲内の鋼であれば、概ね自然空冷でベイナイト主体の組織が得られるが、本発明の範囲内であってもMn、Cr量が比較的少なく、Moも添加されていない鋼を用いる場合には、単純な自然空冷ではベイナイト主体の組織が得られない場合もある。従って、そのような場合には、意図的に冷却速度が早まるよう冷却速度に調整して、ベイナイト主体の組織が得られるようにすることが必要である。一方逆にMn、Cr量が比較的多く、Moも添加されている場合には、自然空冷でもマルテンサイト組織が生じる場合がある。従って、この場合には逆に冷却速度が遅くなるように調整し、マルテンサイト組織が生じて被削性が低下しないように冷却速度を調整する必要がある。
次に、この鍛造品を再び620〜750℃の温度まで加熱して20分〜3hr保持する。これは、熱間鍛造後空冷したままでは、組織はベイナイト単相又はベイナイト+フェライトの混合組織であるが、硬さが若干高く靭性も劣るため、この温度域に保持して、いわゆる焼もどし効果によって硬さを下げ、靭性を高めるためである。
ここで、加熱保持温度の下限を620℃としたのは、これより低い温度では低温焼鈍による硬度低下が十分に得られないためであり、上限を750℃としたのは、これ以上温度を上げると変態点を超えて鍛造後の空冷により得られたベイナイト主体の組織の一部がオーステナイトに変化し、その後に冷却しても目的とする組織にならないためである。
また、保持時間を20分〜3hrとしたのは、20分未満の時間では、熱処理の効果が十分に得られないためであり、3hrとしたのは、これ以上時間を長くしても効果が飽和し、エネルギーのムダになるとともに、生産性も低下するためである。
以上説明したような条件で、熱間鍛造及びその後の温度保持を行うことによって、高速ドライ切削に有利な組織であって、かつ適当な硬さとなった歯車用素材を得ることができる。
なお、組織は繰返し説明しているようにベイナイト単相又はベイナイト+フェライトの混合組織とすることが必要であり、他の組織は極力生成させないことが望ましく、ベイナイトとフェライト以外の組織を3%以下とするのが、より好ましい。ベイナイトとフェライト以外の組織が0%であるのが最適であることは勿論である。
また、ベイナイト+フェライトの混合組織とする場合でもベイナイト主体の組織とする必要がある。具体的には、ベイナイトの面積率を80%以上、望ましくは90%以上とするのが良い。ベイナイト主体の組織とし、かつ前記した熱処理を施すことにより、高速ドライ切削を容易に実施することが可能になる。
次に以上説明した歯車素材を用いてドライ切削を可能にするための加工方法について説明する。前記した説明で、高速ドライ切削が可能となる歯車素材の製造方法について詳細に説明した。しかしながら、素材をこのように最適化すれば、高速ドライ切削が自動的に容易にできるというわけではなく、加工時に用いる歯切工具の材質選択も重要なポイントとなる。具体的には、超硬合金の種類をK種にした場合に、長い工具寿命が得られ、高速ドライ切削を行う際に最も有利となる。
すなわち、素材の最適化だけでも勿論工具寿命を改善することが可能であるが、さらに工具材質についても最適なものを選択することによって、より優れた工具寿命を得ることができ、歯切コストを大きく低減することができる。このように素材、歯切時の工具材質を適切に選択することにより、高速ドライ切削が可能となり、クーラントの使用を省略することができる。また、表面にTiNやTiAlNコーティングが施されている工具を用いた場合には、より優れた寿命を得ることができる。
ここで、超硬合金のうちK種を使用した場合に寿命が優れる理由についてであるが、これについては明確ではない。ただ、K種は他の超硬合金に比べ硬度が高く、衝撃性に優れているため、その点が高速ドライ切削の場合に良い影響をもたらしていると予想される。
次に、本発明である歯車素材の製造方法及びその歯車素材を用いた歯車の製造方法の特徴を比較例と対比して、実施例により説明する。表1に実施例として用いた供試鋼の化学成分を示す。表1のうち、A〜C鋼は、本発明の製造方法で規定した成分範囲内の鋼であり、D、E鋼は、本発明で規定した成分の範囲外の鋼である。
Figure 0004506374
試験片は、表1に示した成分からなる鋼を溶解し、熱間圧延して製造したφ80の丸棒を表2に示す各温度に加熱して、その温度で鍛伸してφ55の丸棒にし、これに表2中に記載した条件で熱処理を行い、熱処理後の丸棒を機械加工したものを試験片として、後述の各種試験を行った。
歯切り加工性の評価は、前記したφ55の丸棒から、直径φ50、長さ450mmの円柱試験片の長手方向に幅10mm、深さ10mmの溝が等間隔で4本加工がされた試験片を作成した。そして、この試験片を円周速度が260m/min(一部の試験片は200m/min)となるように回転させながら、0.2mm/revの送り速度で長手方向に工具を移動させるという切削試験(クーラントは未使用)を行い、工具の横逃げ面摩耗量が0.3mmとなるまでの時間を測定することにより評価した。なお、切込量は1.0mmに設定した。
なお、溝を有する試験片を用いたのは、実際の歯切加工が、前記した通り複数の歯の連続切削となるため、歯切工具に被加工材が衝撃的に衝突したり、離れたりという状態を繰返すこととなり、これが摩耗増大の一原因となっているため、それにできるだけ近い条件を試験片での加工で再現するために、このような評価を採択したものである。従って、従来から良く行われている溝無しの円柱試験片を用いた旋削試験とは必然的に評価結果は大きく変化し、ドライ切削による等高歯からなる歯切加工性を溝無しの試験片を用いた場合に比べ、より正確に評価することができる。
加工性評価に使用する工具としては、超硬のP種とK種(どちらもTiNコーティングがされたもの)を用い、実験を行った。これは、工具材質によって加工性に差異がでないかを確認するためである。
また、熱処理は、組織、硬さ等の条件によってどのように加工性に影響するかを正確に把握するため、表2に示した通り多種類の条件で実施し、最適条件の把握を行った。熱処理時の温度、冷却条件等によって当然の如く得られる組織も変化するため、ドライ切削に適した組織を把握することができる。なお、熱処理後に試験片の一部を用いて光学顕微鏡により観察した結果確認された組織を表2に示した。
Figure 0004506374
表2に示した比較例のうち、試験No.6〜10は、表2の下に示した条件1の熱処理を行った実施例で、全て本発明と同じベイナイト組織をするものである。このうち、試験No.6は、製造条件、組織共に本発明の範囲内であるが、供試材の成分のうちC含有率が高いため、本発明の方法を適用しても加工性が若干劣る結果となったものであり、No.7は焼鈍温度が低く、No.8は焼鈍時間が短すぎたため、焼鈍による硬さ低下が、後述の試験No.1〜5の場合と比較して不十分(No.7:Hv240→231、No.8:Hv238→225)となり、工具寿命が低下したものであり、No.9は、本発明の範囲に該当する歯車素材となっているが、K種ではなくP種の超硬工具を使用したため、工具寿命が低下したものである。
また、比較例のうちNo.10〜16は、本発明とは異なる条件で熱処理(詳細条件は、表2の下にまとめて示す。)を行って、被削性に改善がみられないかを調査したものである。なお、どの熱処理も本発明で検討している等高歯製造のためのドライ切削以外の機械加工を行う際に従来加工性改善のために用いられてきた熱処理方法である。このうち、条件2は、鍛造後の冷却途中に温度保持してフェライトパーライト変態を促進させ、加工性を改善する熱処理であり、条件3は等温焼なまし、条件4は、球状化焼鈍として良く知られている焼鈍方法である。しかしながら、これらの処理を行った場合は、いずれも本発明とは異なりベイナイト主体の組織とはならず、かつ工具寿命も優れた値を得ることはできなかった。
以上説明した比較例に対し、本発明の条件を満足する方法で評価を行った試験No.1〜5については、いずれもベイナイト主体の組織を有し、400秒以上の優れた工具寿命を確保することができた。
なお、試験No.1〜5の鍛伸直後の硬さは、Hv231〜238であったが、熱処理後においてはこれがHv189〜202へとHvで40程度低下していた。この熱処理による硬さ低下とベイナイト主体の組織を選択したことが、ドライ切削に適していたため、工具寿命が改善されたものと考えられる。
以上説明した評価結果より、等高歯のドライ切削時の工具寿命を改善するための歯車素材の製造方法に関する知見が試験片レベルで得られたので、実部品の歯車の製造に同様の結果が得られるかどうかをテストするため、ギヤモジュール5のハイポイドギヤを前記表1に示すB鋼に相当する鋼を用いて、TiNコーティングされた超硬K種の歯切工具を用いて、クーラント未使用で製造するテストを行った。その結果、250m/分程度の非常に高速かつドライで切削したにもかかわらず、量産製造に問題とならないレベルの工具寿命を確保できることが確認できた。
以上説明した通り、本発明は、成分を特定範囲に限定し、かつ適切な条件で加熱、鍛造して歯車の粗形状を製造し、鍛造後の冷却時にベイナイト変態を完了させ、ベイナイト主体の組織を得る。そして、その後に620〜750℃に一定時間加熱保持後空冷することにより、高速ドライ切削による等高歯の製造をした場合でも、量産で問題とならないレベルの工具寿命を確保することができる。この結果、等高歯からなるハイポイドギヤの製造コストを大幅に低減することができ、産業への貢献は極めて大きいものである。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.5%以下、Mn:0.20〜1.50%、P:0.03%以下、S:0.035%以下、Cr:0.30〜2.00%、Al:0.010〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、O:0.0015%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物元素からなる熱間圧延鋼材からなる鍛造用素材を1100〜1350℃に加熱して熱間鍛造することにより粗形状に加工し、その後冷却してベイナイト変態を終了させ、次に620〜750℃に加熱し、20分〜3hr保持することにより、ベイナイト単相又はベイナイト+フェライトの混合組織とすることを特徴とする高速ドライ切削用歯車素材の製造方法。
  2. 請求項1に記載の鋼にさらにMo:0.8%以下、Ca:0.0100%以下のうちの1種又は2種を含有する熱間圧延鋼材を用い、請求項1記載の方法を施すことを特徴とする高速ドライ切削用歯車素材の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2からなる歯車素材を用い、歯切り工具の材質として超硬合金のK種を選択し、クーラントを使用せず、ドライで高速切削により歯切加工を行うことを特徴とする歯車の製造方法。
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