JP5237696B2 - 機械構造用鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、機械構造用鋼材に関するものであり、特に、断続切削加工が施される冷間加工用鋼に関する。
自動車用変速機や差動装置等の各種歯車伝達装置に利用される歯車、シャフト、プーリ、等速ジョイント、クランクシャフト、コンロッド等の機械構造用部品は、一般に、鋼材に鍛造等の加工を施した後、切削加工を施すことによって最終形状に仕上げられる。そして、最終形状に仕上げられた機械構造用部品は、浸炭や浸炭窒化処理(大気圧、低圧、真空、プラズマ雰囲気を含む)等の表面硬化処理を施され、必要に応じて焼入れ−焼戻しや高周波焼入れ等が施されて所定の強度が確保される。このような機械構造用部品の製造において、切削加工に要するコストは占める割合が大きいことから、機械構造部品を構成する鋼材(機械構造用鋼)は被削性が良好であることが要求される。
機械構造用部品の一つである歯車の製造方法は、一般的に、機械構造用鋼を鍛造し、ホブ加工によって粗切し(歯切り)、シェービングにて最終形状に仕上げた後、浸炭等の熱処理を行い、再度研磨加工(ホーニング加工)を行う。さらに、近年では、歯車の寸法精度の向上のため、熱処理による形状の歪みを完全に矯正するために、前記研磨加工の前に研削加工(ハードフィニッシュ)を行うことがある。このように、歯車の製造は非常に多くの工程を必要とし、その中には切削や研削の工程が多い。したがって、特に歯車を構成する機械構造用鋼には、被削性の向上が望まれている。
前記ホブ加工は断続切削に該当する。断続切削とは、工具が被削材に連続的には接触していない切削様式である。このホブ加工に用いられる工具としては、高速度工具鋼にAlTiN等のコーティングを施したもの(以下、「ハイス工具」と称する)が、現状の主流である。切削工具としては、この他に、超硬合金にAlTiN等のコーティングを施したもの(以下、「超硬工具」と称する)がある。この工具は、旋削等の連続切削に用いられることが多い。
断続切削と連続切削とでは切削機構が異なるので、それぞれの切削に応じた工具が用いられる。したがって、被削材としての機械構造用鋼にはいずれの切削においても良好な被削性が求められる。しかしながら、断続切削においては、前記の通り、工具の空転時すなわち工具に被削材が接触していない期間があり、このとき工具に付着した鋼材の新生面が空気に曝され、さらに切削で発熱しているので急速に酸化する。その結果、工具が酸化摩耗し易く、このことから、断続切削においては工具の寿命が短いという問題がある。さらに、ホブ加工に用いられる工具は高価であるため、ホブ加工等の断続切削に供される機械構造用鋼には、被削性、特に工具寿命を向上させることが求められている。
そこで、例えば、特許文献1は、JIS鋼にB,S,Caを添加することで硫化物を生成させ、この硫化物を析出核として微細なBNを析出させることにより被削性、疲労強度、および靭性を向上させた鋼材を開示している。また、特許文献2は、被削性を向上させる元素(快削元素)であるSの代わりに、Pb,Caを添加して、靭性を保ちつつ被削性を向上させた鋼材を開示している。また、特許文献3は、S,Pb,Ca等の快削元素は添加せず、Al,Nの各含有量と両者の比を制御することでAlNを析出させ、AlNの潤滑効果により断続切削時の被削性を向上させた鋼材を開示している。
特開平6−145890公報(段落0009) 特開平3−10050号公報(請求項1) 特許第3922691号公報(段落0018〜0023)
しかしながら、特許文献1,2に開示された鋼材は、超硬工具による旋削に対応したものである。特に、特許文献2に開示された鋼材は、人体への有害性が指摘されているPbを含有しているため、これを用いることは好ましくない。なお、鋼材に限らず、近年ではPbを含有しない(Pbフリー)材料が求められている。また、特許文献3に開示された鋼材は、断続切削に対応したものではあるが、特許文献1,2に開示された鋼材と同様に、鋼材中の析出物により被削性を向上させるものである。これらのような鋼材中の介在物や析出物は、鋼材の機械的特性を劣化させ易いという問題がある。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、被削性を向上させる手段に靭性等の機械的特性を兼備させるため、鋼材中の介在物や析出物によらずに断続切削時の被削性を向上させる、特に工具寿命を向上させる機械構造用鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、Feより酸化傾向の大きい、すなわちFeと比較してO(酸素)が結合し易い元素を機械構造用鋼に添加して固溶させることにより、断続切削における機械構造用鋼の新生面の急速な酸化を防止して、工具の酸化摩耗を抑制することにした。そして、本発明者らは、このような元素として、Si,Mn,Cr,Ca,Mg,REM(希土類金属元素)について検討した結果、多量に添加できるが単独での酸化抑制効果の小さいSi,Mn,Crと、酸化抑制効果は大きいが多量に添加すると機械的特性を劣化させるCa,Mg,REMとを複合的に添加することにより、機械的特性を維持しながら、断続切削における工具の酸化摩耗を抑制できることを見出した。
すなわち本発明に係る機械構造用鋼は、C:0.05〜0.65質量%、Si:0.1〜2.0質量%、Mn:0.5〜2.0質量%、Cr:0.1〜3.0質量%、Mo:1.2質量%以下、Al:0.06質量%以下、N:0.02質量%以下、Ca:0.0005〜0.01質量%を含有し、さらに、Mg:0.0015質量%以下、REM:0.005質量%以下のうち1種以上を含有し、PおよびSを各0.03質量%以下に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、前記Si,Mn,Cr,Ca,Mg,REMの各含有量(質量%)を、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Ca]、[Mg]、[REM]と表したとき、2.25≦[Si]+[Mn]+[Cr]+100×([Ca]+[Mg]+[REM])≦7.0を満足することを特徴とする。
このように、Feより酸化傾向の大きいSi,Mn,Crと、さらに酸化傾向の大きいCa,Mg,REMとを複合的に添加することにより、断続切削において機械構造用鋼の新生面が急速に酸化することを防止できる。
本発明に係る機械構造用鋼は、さらに、B:0.005質量%以下、Ti:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、およびV:0.5質量%以下のうち1種以上を含有してもよい
これらの元素を添加することにより、浸炭処理における異常粒成長の発生を効果的に防止することができる。
あるいは本発明に係る機械構造用鋼は、さらに、Cu:5.0質量%以下、およびNi:5.0質量%以下のうち1種以上を含有してもよい
これらの元素を添加することにより、機械構造用鋼の焼入れ性を向上させて、焼入れ後の硬さを向上させることができる。
本発明に係る機械構造用鋼は、靭性等の機械的特性を十分有し、また、被削性を向上させたものである。本発明に係る機械構造用鋼は、特に、歯車等の機械構造部品を構成する鋼材として、断続切削における被削性を向上させたものであり、これにより切削工具の酸化摩耗を抑制して工具寿命を延ばすことができる。
以下、本発明に係る機械構造用鋼を実施するための最良の形態について説明する。
本発明に係る機械構造用鋼は、C:0.05〜0.65質量%、Si:0.1〜2.0質量%、Mn:0.5〜2.0質量%、Cr:0.1〜3.0質量%、Mo:1.2質量%以下、Al:0.06質量%以下、N:0.02質量%以下、Ca:0.0005〜0.01質量%を含有し、さらに、Mg:0.0015質量%以下、REM:0.005質量%以下のうち1種以上を含有し、PおよびSを各0.03質量%以下に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物で構成されるものである
そして、本発明に係る機械構造用鋼は、前記各成分のうち、Feより酸化傾向の大きい、すなわちFeと比較してOが結合し易いSi,Mn,Crの各含有量の和と、Si,Mn,CrよりさらにOが結合し易いCa,Mg,REMの各含有量の100倍の和との総和を所定範囲に限定するものである。すなわち、Si,Mn,Cr,Ca,Mg,REMの含有量(質量%)それぞれを、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Ca]、[Mg]、[REM]で表したとき、下式を満足するように、これらの成分の含有量が調整されるものである。
2.25≦[Si]+[Mn]+[Cr]+100×([Ca]+[Mg]+[REM])≦7.0
以下に、本発明に係る機械構造用鋼を構成する各成分の含有量の数値範囲およびその数値範囲の限定理由について説明する。
(C:0.05〜0.65質量%)
Cは、機械構造用鋼の強度を向上させる効果を有し、機械構造用部品に必要な芯部の硬さを確保するために有効な元素である。機械構造用鋼の硬さを十分なものとするため、C含有量は0.05質量%以上とされ、0.10質量%以上が好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましい。一方、Cが過剰に添加されると、硬さが過剰となって被削性や靭性が低下する。したがって、C含有量は0.65質量%以下とされ、0.60質量%以下が好ましく、0.55質量%以下がさらに好ましい。
(Si:0.1〜2.0質量%)
Siは、脱酸効果を有し、機械構造用鋼の酸化物系介在物を低減させて内部品質を向上させる。この効果を十分なものとするため、Si含有量は0.10質量%以上とされ、0.12質量%以上が好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましい。また、FeよりもSiにOが結合し易いため、Siは断続切削時の工具の酸化摩耗を抑制する効果を有する。一方、Siが過剰に添加されると、浸炭時に異常組織が生成したり、熱処理(焼入れ)後の残留オーステナイト(残留γ相)の量が増大して浸炭相に十分な硬さが得られない。したがって、Si含有量は2.0質量%以下とされ、1.8質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましい。
(Mn:0.5〜2.0質量%)
Mnは、焼入れ性を向上させる効果を有し、焼入れ後の機械構造用鋼の硬さを向上させる。この効果を十分なものとするため、Mn含有量は0.5質量%以上とされ、0.6質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がさらに好ましい。また、FeよりもMnにOが結合し易いため、Mnは断続切削時の工具の酸化摩耗を抑制する効果を有する。一方、Mnが過剰に添加されると、焼入れ性が過剰となって、焼ならし後でも過冷組織が生成して被削性を低下させる。したがって、Mn含有量は2.0質量%以下とされ、1.9質量%以下が好ましく、1.8質量%以下がさらに好ましい。
(Cr:0.1〜3.0質量%)
Crは、焼入れ性を向上させる効果を有し、焼入れ後の機械構造用鋼の硬さを向上させる。この効果を十分なものとするため、Cr含有量は0.1質量%以上とされ、0.3質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がさらに好ましい。また、FeよりもCrにOが結合し易いため、Crは断続切削時の工具の酸化摩耗を抑制する効果を有する。一方、Crが過剰に添加されると、焼入れ性が過剰となって過冷組織が発達するとともに、粒界に粗大な炭化物が生成して被削性が劣化する。したがって、Cr含有量は3.0質量%以下とされ、2.5質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましい。
(Mo:0質量%を超え1.2質量%以下)
Moは、鋼に固溶して焼入れ性を確保し、不完全焼入れ組織の生成を抑制する効果を有し、Mo含有量増加に伴いこの効果が大きくなる。Mo含有量は、下限値は特に規定されないが、この効果を得るためには0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましい。一方、Moが過剰に添加されると、焼入れ性が過剰となって、焼ならし後でも過冷組織が生成して被削性が低下する。したがって、Mo含有量は1.2質量%以下とされ、1.1質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。
(Al:0質量%を超え0.06質量%以下)
Alは、脱酸効果を有し、機械構造用鋼の内部品質を向上させる。また、AlはNと結合してAlNを形成し、このAlNが浸炭処理において結晶粒の異常成長を抑制する効果を有する。Al含有量は、下限値は特に規定されないが、これらの効果を得るためには0.0005質量%以上が好ましく、0.0008質量%以上がより好ましく、0.001質量%以上がさらに好ましい。なお、Alにも前記のCr等のようにOが結合し易いが、AlはOと結合すると硬質のアルミナを形成する。そして、Al含有量の増加に伴いアルミナが増加して、Al含有量が0.06質量%を超えると、アブレシブ摩耗が顕著になって被削性、特に連続切削における被削性が低下する。したがって、Al含有量は0.06質量%以下とされ、0.05質量%以下が好ましく、0.04質量%以下がさらに好ましい。
(N:0質量%を超え0.02質量%以下)
N(窒素)は鋼の溶融工程で不可避的に混入する元素である。Nは、断続切削における機械構造用鋼の新生面の酸化反応を抑制する効果を有し、断続切削における工具の寿命を延ばす。N含有量は、下限値は特に規定されないが、この効果を得るためには0.002質量%以上が好ましく、0.004質量%以上がさらに好ましい。一方、Nが過剰に添加されると、時効硬化によって延性および靭性が低下する。したがって、N含有量は0.02質量%以下とされ、0.015質量%以下が好ましい。
(P:0.03質量%以下)
Pは鋼に不可避的に含まれる元素(不純物)である。Pは、熱間加工時の割れを助長するので可能な限り低減されることが好ましい。したがって、P含有量は0.03質量%以下とされ、0.025質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がさらに好ましい。
(S:0.03質量%以下)
Sは鋼に不可避的に含まれる元素(不純物)である。Sは、被削性を向上させる効果を有するが、一方で、延性および靭性を低下させる。さらに、SはMnと反応してMnS介在物を形成する。この介在物が圧延時に圧延方向に伸展することにより、鋼材の圧延方向に対して垂直な方向(この方向を一般に「横目」という)の靭性が劣化する。したがって、S含有量は0.03質量%以下とされ、0.025質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がさらに好ましい。
(Ca:0.0005〜0.01質量%)
Caは、アルミナ等の硬質介在物を軟質化させる作用があるので、硬質介在物による工具摩耗を抑制する。この効果を十分なものとするため、Ca含有量は0.0005質量%以上とされ、0.0007質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がさらに好ましい。また、Caは、Oと結合し易いため、断続切削時の酸化摩耗を抑制する効果を有する。一方、Caが過剰に添加されると、CaO等の介在物が増大して、この介在物により延性および靭性が低下する。したがって、Ca含有量は0.01質量%以下とされ、0.009質量%以下が好ましく、0.008質量%以下がさらに好ましい。
(Mg:0.0015質量%以下、REM:0.005質量%以下)
MgおよびREM(希土類金属元素)は、Caと同様に、Oと結合し易いため、断続切削時の酸化摩耗を抑制する効果を有する。また、MgおよびREMは、アルミナ等の硬質介在物を軟質化させる作用があるので、工具摩耗を抑制する。希土類金属元素として具体的に、Ce,La,Nd等の元素が挙げられ、本明細書におけるREMの含有量とは、これらのすべての希土類金属元素の含有量の合計を指す。前記の効果を得るためには、Mg,REMの各含有量は0.0001質量%以上が好ましく、0.0002質量%以上がさらに好ましい。一方、Mg,REMは、どちらも過剰に添加されると、MgO,CeO2等の介在物が増大して、これらの介在物により延性および靭性が低下する。したがって、Mg含有量は0.0015質量%以下とされる。また、REM含有量は0.005質量%以下とされ、0.004質量%以下が好ましく、0.003質量%以下がさらに好ましい。
前記の本発明に係る機械構造用鋼の各成分のうち、Feより酸化傾向の大きい、すなわちFeと比較してOが結合し易いSi,Mn,Crの各含有量の和と、さらにOが結合し易いCa,Mg,REMの各含有量の100倍の和との総和を[A]とする。すなわち、
[A]=[Si]+[Mn]+[Cr]+100×([Ca]+[Mg]+[REM])
で表される。このとき、パラメータ[A]が2.25未満では、機械構造用鋼の酸化の抑制が不十分であり、工具の酸化摩耗が生じ易い。したがって、パラメータ[A]は、2.25以上とされ、2.35以上が好ましく、2.45以上がさらに好ましい。一方、パラメータ[A]が7.0を超えると、機械構造用鋼中の固溶元素の増大により硬さが過剰となって、逆に被削性が低下する。また、機械構造用鋼中の介在物が増加して被削性が劣化する。したがって、パラメータ[A]は7.0以下とされ、6.5以下が好ましく、6.0以下がさらに好ましい。パラメータ[A]が前記範囲となるように、本発明に係る機械構造用鋼のSi,Mn,Cr,Ca,Mg,REMの各含有量は調整される。
本発明に係る機械構造用鋼は、さらに、B:0.005質量%以下、Ti:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、およびV:0.5質量%以下のうち1種以上、または、あるいはさらに、Cu:5.0質量%以下、およびNi:5.0質量%以下のうち1種以上を含有してもよい。
(B:0.005質量%以下、Ti:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、V:0.5質量%以下)
機械構造用鋼の中でも特に肌焼鋼は、通常、表面硬化のために浸炭処理が施される。この浸炭処理時に、処理温度および処理時間、加熱速度等によっては異常粒成長が発生する場合がある。B,Ti,Nb,Vは、この異常粒成長を防止する効果を有するので、これらの元素を添加することが有効である。この効果を得るためには、B含有量は0.0001質量%以上が好ましく、0.0003質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上がさらに好ましい。同様に、Ti,Nb,Vの各含有量は0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がさらに好ましい。一方、これらの元素が過剰に添加されると、硬質炭化物が生成して被削性が劣化する。したがって、B含有量は0.005質量%以下とされ、0.003質量%以下が好ましく、0.001質量%以下がさらに好ましい。同様に、Ti,Nbの各含有量は0.2質量%以下とされ、0.15質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。そして、V含有量は0.5質量%以下とされ、0.4質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。
(Cu:5.0質量%以下、Ni:5.0質量%以下)
CuおよびNiは、焼入れ性を向上させる効果を有し、焼入れ後の機械構造用鋼の硬さを向上させる。さらに、CuおよびNiの含有量増加に伴いこの効果が大きくなる。この効果を得るためには、Cu,Niの各含有量は0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。一方、これらの元素が過剰に添加されると、焼入れ性が増大して過冷組織が生成し、延性および靭性が低下する。したがって、Cu,Niの各含有量は5.0質量%以下とされ、4.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。
以上、本発明を実施するための最良の形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例によって制限を受けるものではなく、請求項に示した範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
〔供試材作製〕
表1および表2に示される化学成分組成の鋼150kgが、真空誘導炉で溶解され、上面:φ245mm、下面:φ210mm×高さ480mmのインゴットに鋳造された。このインゴットは、1200℃×3hr程度でソーキングされた後、1100℃×1hrで、150mm角×長さ680mmの四角材に鍛造されて、長さ100mm程度に切断された。この切断された四角材は、1100℃×1hr程度で、厚さ30mm×幅150mmの板材に鍛造され、さらに長さ100mm程度に切断された。また、前記の切断された四角材は、1100℃×1hr程度で、φ80mm×長さ100mmの丸棒材に鍛造された。これらの板材および丸棒材は、焼ならし(900℃×2hrの熱処理後、空冷)されて、供試材(参考例1、実施例〜25、比較例26〜41)に作製された。作製された供試材で、以下の測定および評価が行われた。前記化学成分組成から算出したパラメータ[A]は表1および表2に併記されている。
〔測定、評価〕
(被削性)
断続切削時の被削性を評価するために、エンドミル工具による断続切削試験が行われた後、工具摩耗が観察された。供試材(板材)は、スケールを除去されて、その表面を厚さ方向に2mm研削されて、厚さ25mm×幅145mm×長さ100mmの切削試験片に作製された。マニシングセンタ主軸にエンドミル工具(三菱マテリアル製ハイスエンドミル、型番K−2SL、外径φ10mm、TiAlNコーティング厚さ2.6μm)が取り付けられ、バイスにより固定された切削試験片に対して、乾式の切削雰囲気下で断続切削が行われた。断続切削条件は下記に示される。200カット(切削距離:約3000m)の断続切削の後、使用されたエンドミル工具が光学顕微鏡にて観察され、平均逃げ面摩耗幅(工具摩耗量)が測定された。被削性の合格基準は、工具摩耗量が70μm以下とされた。なお、同じ切削試験片の表面のビッカース硬さが測定された。工具摩耗量およびビッカース硬さは表1および表2に示される。
(断続切削条件)
軸方向切り込み量:1.0mm
径方向切り込み量:1.0mm
送り量 :0.117mm/rev
送り速度 :558.9mm/min
切削速度 :150m/min
回転速度 :4777rpm
(横目の靭性)
機械的特性として、浸炭処理後の供試材の横目の靭性が評価された。供試材(丸棒材)は、圧延(鍛伸)方向に垂直な方向(横目)に沿ったノッチ(R:10mm、深さ:2mm)を形成され、10mm×10mm×55mmのサイズに削り出されて、シャルピー衝撃試験片に作製された。この試験片は、下記の条件で浸炭処理され、次に60℃のコールド油を用いて油焼入れされた後、焼戻しされた(170℃×120minの熱処理後、空冷)。以上の処理後の試験片でシャルピー衝撃値(シャルピー吸収エネルギー)が測定された。測定したシャルピー吸収エネルギーは表1および表2に示される。横目の靭性の合格基準は、シャルピー吸収エネルギーが10.0J以上とされた。
(浸炭処理条件)
900℃×90min(CO濃度:0.11%、カーボンポテンシャル(以下、CP):1.0%狙い)→900℃×90min(CO濃度:0.17%、CP:0.8%狙い)→840℃×60min(CO濃度:0.39%、CP:0.8%狙い)
Figure 0005237696
Figure 0005237696
(評価)
表1に示すように、実施例〜25は、その各成分の含有量およびパラメータ[A]が本発明の範囲であるので、断続切削試験後の工具摩耗量が小さくて断続切削時の被削性に優れており、横目の靭性も良好であった。
これに対して、表2に示すように、比較例26は、C含有量が不足しているため、工具摩耗量が大きく、また、ビッカース硬さが低下した。一方、比較例27は、C含有量が過剰なため、被削性および横目の靱性が低下した。また、比較例28はSi含有量が過剰なため、比較例29はMn含有量が過剰なため、それぞれの被削性および横目の靱性が低下した。比較例30はCr含有量が過剰なため、比較例31はMo含有量が過剰なため、比較例32はAl含有量が過剰なため、それぞれの被削性が低下した。
比較例33は、P含有量が過剰なため横目の靱性が低下した。比較例34はS含有量が過剰なため、比較例35はN含有量が過剰なため、それぞれの被削性は向上したが横目の靱性は低下した。また、比較例36は、Ca含有量が過剰なため、被削性は向上したが横目の靱性が低下した。一方、比較例37は、Ca含有量が不足している(無添加である)ため、被削性が低下した。
比較例39,40は、各成分の含有量は本発明の範囲であるが、パラメータ[A]が不足しているため、比較例38はさらにCa含有量が不足している(無添加である)ため、酸化の抑制が不十分となったことにより酸化摩耗が生じて工具摩耗量が増大した。一方、比較例41は、各成分の含有量は本発明の範囲であるが、パラメータ[A]が過剰なため、介在物が増加して被削性が低下し、また硬さが過剰となって被削性および横目の靱性が低下した。

Claims (3)

  1. C:0.05〜0.65質量%、Si:0.1〜2.0質量%、Mn:0.5〜2.0質量%、Cr:0.1〜3.0質量%、Mo:1.2質量%以下、Al:0.06質量%以下、N:0.02質量%以下、Ca:0.0005〜0.01質量%を含有し、さらに、Mg:0.0015質量%以下、REM:0.005質量%以下のうち1種以上を含有し、PおよびSを各0.03質量%以下に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    前記Si,Mn,Cr,Ca,Mg,REMの各含有量(質量%)を、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Ca]、[Mg]、[REM]と表したとき、2.25≦[Si]+[Mn]+[Cr]+100×([Ca]+[Mg]+[REM])≦7.0を満足することを特徴とする機械構造用鋼。
  2. さらに、B:0.005質量%以下、Ti:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、およびV:0.5質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の機械構造用鋼。
  3. さらに、Cu:5.0質量%以下、およびNi:5.0質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項に記載の機械構造用鋼。
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