JP5443277B2 - 被削性に優れた高強度鋼、およびその製造方法 - Google Patents

被削性に優れた高強度鋼、およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、切削加工して鋼部品を製造するための鋼、およびその製造方法に関するものである。
自動車や各種機械類に用いられる鋼部品(具体的には、自動車用変速機や差動装置をはじめとする各種歯車伝達装置に利用される歯車、シャフト、プーリーや等速ジョイント等、更にはクランクシャフト、コンロッド等の機械構造部品)は、通常、熱間加工(例えば、熱間圧延や熱間鍛造など)した鋼に、切削加工を施して最終形状(部品形状)に仕上げて製造される。この鋼部品は、高強度であることが求められるが、鋼部品の強度を高めるために、切削加工前の鋼の強度を高めると切削加工が困難となる。切削加工に要するコストは、部品制作費全体中に占める割合が高いことから、切削加工前の鋼は被削性が良いことが要求される。そこで、切削加工前の鋼は、その硬さを低くして被削性を改善し、切削加工後に、焼入れ焼戻し(調質)や浸炭焼入れ等の熱処理を行うことによって鋼部品の強度を高めることが行われている。
ここで切削加工について詳しく説明すると、上記機械構造部品のうち特に歯車を製造するときの切削加工においては、ホブによる歯切りを行うのが一般的であり、この場合の切削加工は断続切削と呼ばれている。ホブ加工に用いられる工具としては、高速度工具鋼にAlTiNなどのコーティングを施したもの(以下、「ハイス工具」と略称することがある)が現状の主流である。しかしハイス工具を用いたホブ加工(断続切削)による歯切りは、低速(具体的には、切削速度150m/分程度以下)、低温(具体的には、200〜600℃程度)であるが、断続切削のため工具が空気と触れ易く、酸化、摩耗し易くなる。そのためホブ加工等の断続切削に供される鋼は、特に工具寿命を伸ばすことが求められている。
本出願人は、断続切削における被削性(特に、工具寿命)を向上させた機械構造用鋼を特許文献1、2に提案している。これらのうち特許文献1では、酸化物系介在物の各成分を適切に調整して介在物の全体が低融点で変形し易くすることによってハイス工具での連続切削における被削性を改善している。一方、特許文献2では、Feより酸化傾向の大きい元素を機械構造用鋼に添加して固溶させることによって、断続切削における機械構造用鋼の急速な酸化を防止して、工具の酸化摩耗を抑制し、鋼の被削性を改善している。しかし上記特許文献1、2では、上述したように、鋼部品の強度を高めるために、切削加工後に焼入れ焼戻し(調質)や浸炭焼入れ等の熱処理を行う必要がある。
ところで、近年では、地球環境への負荷を低減すると共に、作業環境を改善するために、焼入れ焼戻し(調質)や浸炭焼入れ等の熱処理を省略することが求められている。ところが、上記特許文献1、2において、切削加工後の熱処理を省略すると、鋼部品の強度が低下してしまう。
非調質鋼の強度を高める技術として、特許文献3、4が知られている。これらのうち特許文献3には、熱間鍛造・冷却後の組織を、初析フェライトを含まないベイナイトまたはベイナイトとマルテンサイトの混合組織にすることによって、非調質鋼の強度を高めている。この文献では、上記混合組織を得るために、鋼の成分組成に基づいて算出される臨界冷却速度Vcが、熱間鍛造後に実施される空冷もしくは衝風冷却での800〜500℃における平均冷却速度Va以下(Vc≦Va)になるように、鋼の成分組成を調整している。しかし、この技術は、非調質鋼の強度と靱性を改善するものであり、被削性(特に、断続切削したときの被削性)については全く考慮されていない。
これに対し、特許文献4には、非調質鋼の強度を高めると共に、疲労強度および被削性を向上させる技術が開示されている。この非調質鋼は、Alを0.0005〜0.050%含有すると共に、ベイナイトの組織率fを鋼に含まれるC量に対して、1.4C+0.4≧f≧1.4C、としているところに特徴がある。
特開2009−30160号公報 特開2009−287111号公報 特開平6−299285号公報 特開平7−109545号公報
本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、部品形状に切削加工した後に、焼入れ焼戻し(調質)や浸炭焼入れ等の熱処理を行わなくても鋼部品として要求される強度を確保でき、しかも切削加工時には被削性に優れた高強度鋼、およびその製造方法を提供することにある。
本発明に係る高強度鋼は、C:0.20〜0.70%(質量%の意味。以下同じ。)、Si:0.03〜2%、Mn:0.2〜1.8%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.10%以下(0%を含まない)、Al:0.12〜0.5%、B:0.0005〜0.008%、N:0.002〜0.030%、およびO:0.002%以下(0%を含まない)を含有すると共に、AlとNが下記式(1)の関係を満足し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼である。そして、前記鋼に含まれるC量が0.20%以上、0.35%未満の場合は、金属組織がフェライト、パーライト、およびベイナイトの混合組織であり、且つベイナイトの面積率f(B)が下記式(2)を満足しており、C量が0.35%以上、0.70%以下の場合は、金属組織がフェライトとパーライトの混合組織であるか、更にベイナイトを含む混合組織であり、且つベイナイトの面積率f(B)が下記式(3)を満足しているところに要旨を有している。なお、下記式(1)〜式(3)において、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。
0.10<[Al]−1.9×[N] ・・・(1)
−60×[C]+21<f(B)<−60×[C]+50 ・・・(2)
0≦f(B)<−60×[C]+50 ・・・(3)
本発明の高強度鋼は、更に他の元素として、
(a)Cr:1.5%以下(0%を含まない)、
(b)Mo:1%以下(0%を含まない)、
(c)Ti:0.005%以下(0%を含まない)、Zr:0.02%以下(0%を含まない)、Hf:0.02%以下(0%を含まない)、Ta:0.02%以下(0%を含まない)、およびNb:0.15%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、
(d)V:0.5%以下(0%を含まない)、Cu:3%以下(0%を含まない)、およびNi:3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、
等を含有してもよい。
本発明には、上記高強度鋼で形成された鋼部品も包含され、この鋼部品の金属組織は、用いた高強度鋼と同じになっている。
本発明の高強度鋼は、上記成分組成を満足する鋼を、温度850℃以上で加工した後、800℃から500℃までの温度域を、下記式(4)を満たす平均冷却速度Vaで冷却することによって製造できる。
0.1×Vc<Va<0.9×Vc ・・・(4)
上記式(4)において、Vcは下記式(5)で示され、kは下記式(6)で示される。なお、下記式(6)において[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。
Vc=10k ・・・(5)
k=4.05−{4.5×[C]+[Mn]+0.5×[Ni]+0.8×[Cr]+1.6×[Mo]+9.0×[Nb]} ・・・(6)
本発明の鋼部品は、上述した製造方法で得られた高強度鋼を、温度850℃以上に加熱することなく切削加工することによって製造できる。
本発明によれば、鋼の成分組成を規定すると共に、鋼に含まれるC量に応じて金属組織に含まれるベイナイトの面積率を適切に制御することによって、被削性に優れた高強度鋼を提供できる。即ち、本発明の高強度鋼は、切削加工したときの被削性、特に、断続切削したときの工具寿命が良好であり、しかも切削加工して形成された鋼部品は、切削加工ままの状態で鋼部品として要求される強度を確保できているため、切削加工後の焼入れ焼戻し(調質)や浸炭焼入れ等の熱処理を省略できる。
本発明者らは、切削加工時の被削性が良好で、しかも部品形状に切削加工したままの状態で鋼部品として要求される強度を確保できる高強度鋼を提供するために検討を重ねてきた。その結果、鋼の成分組成を適切に調整したうえで、鋼に含まれるC量に応じて金属組織を適切に制御、具体的には、C量が0.20%以上、0.35%未満の場合は、フェライト、パーライト、およびベイナイトの混合組織とし、C量が0.35%以上、0.70%以下の場合は、フェライトとパーライトの混合組織であるか、更にベイナイトを含む混合組織とし、且つ、混合組織に占めるベイナイトの面積率を適切に制御することによって、被削性と強度を兼ね備えた鋼を提供できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明者らは、鋼の金属組織を、フェライトとパーライトの混合組織とすれば、切削加工したときの被削性(特に、断続切削したときの工具寿命)を改善できると考えた。ところが、鋼の金属組織をフェライトとパーライトの混合組織にすると、鋼の強度が低下することがあり、鋼部品として要求される強度を確保できない場合があることが分かった。そこで、強度を高めるために、上記混合組織にベイナイトを含有させればよく、鋼のC量に応じてベイナイト分率を制御すれば、被削性を劣化させることなく強度を向上できることを見出した。
具体的には、鋼に含まれるC量が0.20%以上、0.35%未満の場合は、金属組織を、フェライト、パーライト、およびベイナイトの混合組織とし、ベイナイトの面積率f(B)は、下記式(2)を満足するように調整することが重要となる。下記式(2)において、[C]は、鋼に含まれるC量(質量%)を示している。
−60×[C]+21<f(B)<−60×[C]+50 ・・・(2)
上記面積率f(B)が「−60×[C]+21」以下になると、ベイナイト量が少な過ぎるため、鋼の強度を確保できなくなる。従って面積率f(B)は、「−60×[C]+21」超、好ましくは「−60×[C]+25」以上、より好ましくは「−60×[C]+30」以上とする。しかし上記面積率f(B)が「−60×[C]+50」以上になると、鋼の強度が高くなり過ぎて被削性が劣化する。従って面積率f(B)は、「−60×[C]+50」未満、好ましくは「−60×[C]+45」以下、より好ましくは「−60×[C]+40」以下とする。
一方、鋼に含まれるC量が0.35%以上、0.70%以下の場合は、フェライトとパーライトの混合組織であっても鋼部品に要求される強度を確保できるため、ベイナイトは必ずしも生成させなくてもよい。但し、更なる高強度化を目指してベイナイトを含有させてもよい。即ち、鋼に含まれるC量が上記範囲の場合は、金属組織を、フェライトとパーライトの混合組織とするか、更にベイナイトを含む混合組織とすればよい。
このときベイナイトの面積率f(B)は、下記式(3)を満足するように調整する。下記式(3)において、[C]は、鋼に含まれるC量(質量%)を示している。
0≦f(B)<−60×[C]+50 ・・・(3)
上記面積率f(B)は0面積%でもよいが、強度を一層高めるには、好ましくは「−60×[C]+5」以上、より好ましくは「−60×[C]+10」以上とする。しかし上記面積率f(B)が「−60×[C]+50」以上になると、上述したように、鋼の強度が高くなり過ぎて被削性が却って劣化する。従って面積率f(B)は、「−60×[C]+50」未満、好ましくは「−60×[C]+45」以下、より好ましくは「−60×[C]+40」以下とする。
ベイナイトの面積率f(B)は、レペラー腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡で観察することによって測定すればよい。
なお、上記特許文献4においては、C量の増加に伴ってベイナイトを積極的に生成させることによって非調質鋼の被削性を改善しているのに対し、本発明では、低Cの場合にはベイナイトを必須組織として生成させ、高Cの場合にはベイナイトは必須組織としていない点で相違している。このように上記特許文献4と本発明の技術的思想は全く逆になっているのであるが、上記特許文献4と本発明は、鋼の成分組成(具体的には、Al量)が相違しており、しかも本発明ではパーライトを必須組織としている点で相違しており、こうした相違点が技術的思想の違いになっていると考えられる。
上記要件を満足する金属組織は、温度850℃以上で加工した後、800℃から500℃までの温度域を通過するときの平均冷却速度Vaを適切に制御することによって製造できる。金属組織の制御方法については、後で詳述する。
本発明の高強度鋼は、その金属組織を上記のように制御したものであり、鋼の成分組成は次の通りである。
本発明の高強度鋼は、Alを0.12〜0.5%、Bを0.0005〜0.008%、Nを0.002〜0.030%含有し、AlとNが下記式(1)を満足している。Al、B、Nは、いずれも鋼の被削性(特に、断続切削したときの工具寿命)を改善するのに寄与する元素である。下記式(1)において、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。
0.10<[Al]−1.9×[N] ・・・(1)
[Al:0.12〜0.5%]
Alは、鋼中に固溶状態で存在させることによって断続切削したときの被削性を向上させる(工具表面の酸化摩耗を抑制する)ために必要な元素である。また、AlはNと結合してAlNを析出し、加工時に結晶粒が異常成長して強度が低下するのを防止する元素である。また、Alは、脱酸剤としても作用する。こうした効果を発揮させるためには、Alは、0.12%以上、好ましくは0.16%以上、より好ましくは0.20%以上とする。しかしAlが過剰になると、AlNが多量に析出して加工性を低下させる。従ってAlは0.5%以下、好ましくは0.4%以下、より好ましくは0.3%以下とする。
[B:0.0005〜0.008%]
Bは、Alの固溶量を確保して断続切削したときの被削性を向上させるのに寄与する元素である。即ち、Bは、鋼中のNと結合してBNを析出させることによって、NがAlと結合してAlNを析出するのを抑制するため、固溶Al量を確保するのに作用する。また、析出したBNは、被削性の向上に寄与する。また、Bは、焼入れ性や粒界強度を向上させて鋼の強度を高めるのにも作用する元素である。こうした効果を発揮させるには、Bは、0.0005%以上、好ましくは0.0010%以上、より好ましくは0.0025%以上とする。しかしBが過剰になると、鋼が硬くなり過ぎて被削性が却って劣化する。従ってBは0.008%以下、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.0040%以下とする。
[N:0.002〜0.030%]
Nは、AlNを析出して加工時に結晶粒が異常成長して強度が低下するのを防止する他、BNを析出して被削性を向上させるのに寄与する元素である。こうした効果を発揮させるには、Nは0.002%以上、好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.005%以上とする。しかしNが過剰になると、AlNが多量に析出して加工性を低下させる。従ってNは、0.030%以下、好ましくは0.020%以下、より好ましくは0.015%以下、特に好ましくは0.010%以下とする。
上記AlとNは、上記式(1)を満足している必要があり、この式を満足することによってAlを固溶状態で存在させることができる。「[Al]−1.9×[N]」の値は、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.18以上である。
Al、B、N以外の成分組成は次の通りである。
[C:0.20〜0.70%]
Cは、強度を確保するために必要な元素であり、0.20%以上含有する。Cは、好ましくは0.30%以上であり、より好ましくは0.40%以上である。しかしC量が過剰になると、鋼が硬くなり過ぎて被削性や靱性が劣化する。従ってC量は0.70%以下とする。C量は、好ましくは0.60%以下であり、より好ましくは0.55%以下である。
[Si:0.03〜2%]
Siは、脱酸元素として作用し、鋼の内部品質を向上させるのに必要な元素である。Siは、0.03%以上、好ましくは0.10%以上、より好ましくは0.20%以上とする。しかしSi量が過剰になると、温度850℃以上の加工時に異常組織が生成したり、このときの加工性が劣化する。従ってSiは、2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.7%以下とする。
[Mn:0.2〜1.8%]
Mnは、焼入れ性を向上させて鋼の強度を向上させるのに必要な元素であり、0.2%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.90%以上とする。しかしMnが過剰になると、焼入れ性が向上し過ぎて過剰にベイナイトが生成したり、マルテンサイトが生成し易くなり、被削性が低下する。従ってMnは、1.8%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.10%以下とする。
[P:0.03%以下(0%を含まない)]
Pは、鋼に不可避的に含まれる不純物元素であり、P量が過剰になると加工時に割れが発生するのを助長するので、できるだけ低減する必要がある。従ってPは、0.03%以下、好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.015%以下とする。なお、P量を0%とすることは工業的に困難である。
[S:0.10%以下(0%を含まない)]
Sは、鋼中のMnと結合してMnS介在物を形成し、鋼の被削性を向上させるのに有効に作用する元素である。しかしS量が過剰になると、MnS系介在物量が増大し、この介在物が加工時(例えば、熱間圧延や熱間鍛造など)に加工方向に伸展するため、加工方向に直角な方向の靱性(横目靱性)が劣化する原因となる。従ってS量は0.10%以下、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.05%以下とする。なお、Sは、鋼に不可避的に含まれる不純物であるため、その量を0%とすることは工業的に困難である。
[O:0.002%以下(0%を含まない)]
Oは、鋼に不可避的に含まれる不純物元素であり、O量が過剰になると、粗大な酸化物系介在物が生成し、熱間加工性、延性、靱性、および被削性が劣化する。従ってO量は0.002%以下、好ましくは0.0018%以下、より好ましくは0.0015%以下とする。
本発明に係る高強度鋼の成分組成は上記の通りであり、残部は、鉄および不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる微量元素(例えば、As、Sb、Snなど)の混入が許容される。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の元素として、Cr、Mo、Ti、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cu、Niなどを積極的に含有させてもよい。
[Cr:1.5%以下(0%を含まない)]
Crは、鋼の焼入れ性を高め、強度を向上させるために有効に作用する元素である。また、Alとの複合添加によって、鋼の被削性(特に、断続切削性)を高めるのにも有効に作用する元素である。こうした効果を発揮させるには、Crは0.08%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.10%以上、更に好ましくは0.2%以上、特に好ましくは0.7%以上である。しかし、Cr量が過剰になると、粗大な炭化物が生成するか、或いは過冷組織が生成して被削性を却って劣化させるので、Cr量は1.5%以下とすることが好ましく、より好ましくは1.3%以下である。
[Mo:1%以下(0%を含まない)]
Moは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れされていない組織が生成するのを抑制するのに作用する元素である。こうした作用は、その含有量が増加するにつれて増大するが、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.15%以上である。しかしMoを過剰に含有すると、焼きならし後でも過冷組織が生成して被削性が低下するため、1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下であり、更に好ましくは0.5%以下である。
[Ti:0.005%以下(0%を含まない)、Zr:0.02%以下(0%を含まない)、Hf:0.02%以下(0%を含まない)、Ta:0.02%以下(0%を含まない)、およびNb:0.15%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素]
Ti、Zr、Hf、Ta、およびNbは、熱間加工時に結晶粒が異常成長するのを防止し、鋼の靱性や疲労強度を低下するのを防止する作用を有する元素であり、1種または任意に選択される2種以上を含有することによってこうした作用が発揮される。こうした作用は、その含有量が増加するにつれて増大するが、Tiは0.0003%以上(特に0.0005%以上)、Zrは0.002%以上(特に0.005%以上)、Hfは0.002%以上(特に0.005%以上)、Taは0.002%以上(特に0.005%以上)、Nbは0.015%以上(特に0.05%以上)含有することが好ましい。しかし、これらの元素を過剰に含有すると、硬質の炭化物が生成して鋼の被削性が却って低下するので、Tiは0.005%以下(特に0.003%以下)、Zrは0.02%以下(特に0.015%以下)、Hfは0.02%以下(特に0.015%以下)、Taは0.02%以下(特に0.015%以下)、Nbは0.15%以下(特に0.14%以下)とすることが好ましい。
[V:0.5%以下(0%を含まない)、Cu:3%以下(0%を含まない)、およびNi:3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素]
V、Cu、およびNiは、焼入れ性を向上させて強度を高めるのに有効に作用する元素である。こうした作用は、これらの元素の含有量が増加するにつれて増大するが、有効に発揮させるには、Vは0.05%以上、Cuは0.1%以上、Niは0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは、Vは0.1%以上、Cuは0.2%以上、Niは0.5%以上である。しかし過剰に含有させると過冷組織が生成し、延性や靭性が低下するので、Vは0.5%以下、Cuは3%以下、Niは3%以下とすることが好ましい。より好ましくは、Vは0.3%以下、Cuは2%以下、Niは2%以下である。なお、V、Cu、およびNiは、夫々、単独で含有させてもよいし、任意に選ばれる2種以上を含有させてもよい。
こうした本発明の高強度鋼は、上記成分組成を満足する鋼を、温度850℃以上で加工した後、800℃から500℃までの温度域を、下記式(4)を満たす平均冷却速度Vaで冷却することによって製造できる。
0.1×Vc<Va<0.9×Vc ・・・(4)
上記温度850℃以上で加工することによって、金属組織をオーステナイト単相にし、その後、800℃から500℃までの温度域における平均冷却速度Vaを適切に制御して冷却することによって、所定量のベイナイトを生成させることができる。
上記850℃以上で行う加工は、熱間圧延や熱間鍛造など加熱を伴う加工熱処理であり、塑性加工であればよい。850℃以上で行う加工が熱間圧延の場合は、上記成分組成を満足する鋼を溶製し、鋳造した後、温度850℃以上で熱間圧延すればよい。一方、850℃以上で行う加工が熱間鍛造の場合は、上記成分組成を満足する鋼を用意し、この鋼を温度850℃以上で熱間鍛造すればよい。
上記加工温度は、好ましくは950℃以上である。加工温度の上限は特に限定されないが、例えば、1050℃程度である。
上記平均冷却速度Vaは、上記式(4)で規定する範囲を満足している必要があり、Vcは、臨界冷却速度を示している。Vcは下記式(5)で算出され、kは下記式(6)で算出される。下記式(6)において[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。なお、Ni、Cr、Mo、Nbは、本発明の高強度鋼においては選択元素であるため、添加しない場合は、その項がないものとして計算すればよい。
Vc=10k ・・・(5)
k=4.05−{4.5×[C]+[Mn]+0.5×[Ni]+0.8×[Cr]+1.6×[Mo]+9.0×[Nb]} ・・・(6)
上記平均冷却速度Vaが0.1×Vc以下になると、ベイナイトの生成量が少なくなり、強度不足となる。従って平均冷却速度Vaは0.1×Vc超、好ましくは0.2×Vc以上、より好ましくは0.3×Vc以上とする。しかし上記平均冷却速度Vaが0.9×Vc以上になると、ベイナイトの生成量が多くなり、強度が高くなり過ぎるため、被削性が劣化する。従って平均冷却速度Vaは0.9×Vc未満、好ましくは0.8×Vc以下、より好ましくは0.7×Vc以下とする。
上記条件で冷却して得られた本発明の高強度鋼は、被削性に優れているにもかかわらず、鋼部品として要求される強度を有している。従って本発明の高強度鋼を、部品形状に切削加工すれば、切削加工ままの状態でも鋼部品として要求される強度を兼ね備えている。即ち、本発明の高強度鋼を用いて鋼部品を製造すれば、従来切削加工後に強度を向上させるために行っていた焼入れ焼戻し(調質)や浸炭焼入れ等の熱処理を省略することができる。
上記切削加工としては、断続切削加工(ホブ加工)を採用することによって本発明の効果が充分に発揮される。断続切削加工は、低速(具体的には、切削速度150m/分程度以下)、低温(具体的には、200〜600℃程度)で行えばよい。
上記高強度鋼を部品形状に切削加工するにあたっては、温度850℃以上に加熱することなく切削加工する必要がある。上記高強度鋼を温度850℃以上に加熱すると、適切に調整した金属組織が全てキャンセルされるため、被削性が劣化する。換言すると、上記高強度鋼は、部品形状に切削加工する前に、温度が850℃以上にならない範囲で加熱してから切削加工を行ってもよい。
また、上記高強度鋼は、切削加工前に、必要に応じて冷間加工および/または温間加工を行ってもよく、このときも温度が850℃以上にならないように制御する必要がある。
本発明の鋼部品は、上記高強度鋼で形成されているため、高強度鋼の成分組成と金属組織を満足したものとなり、鋼部品として要求される強度を有しているが、鋼部品表面の耐摩耗性を更に向上させるために、表面硬化処理を行ってもよい。
表面硬化処理は、焼入れ焼戻し(調質)のように、鋼部品全体の温度を高めるものではなく、鋼部品の強度を低下させないように、鋼部品表面のみを硬化させる方法を採用すべきである。
表面硬化処理方法としては、例えば、高周波焼入れや窒化処理が挙げられる。
高周波焼入れは、高周波焼入れ装置により鋼部品表面を順次短時間加熱し、加熱された部分を直ぐに冷却して焼入れを行なう方法である。冷却方法としては、水冷却(例えば、噴射水冷却)が採用される。加熱温度は、例えば、Ac3変態点以上、950℃以下とすればよい。加熱温度は、好ましくは、Ac3変態点+30℃以上、920℃以下である。
高周波焼入れ後は、焼戻しを行ってもよい。焼戻し温度は、例えば、100℃以上、250℃以下とすればよい。好ましくは120℃以上、230℃以下である。
窒化処理の方法としては、イオン窒化(プラズマ窒化)やラジカル窒化などの方法を適用できる。窒化処理の好ましい条件は、処理温度:500〜650℃(より好ましくは500〜575℃)、処理時間:4〜12時間(より好ましくは6〜10時間)である。窒化処理時の処理温度が、650℃を超えると鋼が軟化しやすくなり、500℃よりも低くなると、窒化深さ(硬化層深さ)が浅くなって、表面の硬化が不充分となる。
本発明の鋼部品は、自動車用変速機や差動装置をはじめとする各種歯車伝達装置に利用される歯車、シャフト、プーリーや等速ジョイント等、更にはクランクシャフト、コンロッド等の機械構造部品として好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す化学成分組成の鋼(残部は鉄および不可避不純物)150kgを真空誘導炉で溶解し、上面:φ245mm×下面:φ210mm×長さ:480mmのインゴットに鋳造し、熱間鍛造(ソーキング:1250℃×3時間程度、鍛造加熱:1100℃×1時間程度)してφ60mmの丸棒とした。熱間鍛造後、保温材の使用、送風条件などを調整して800℃から500℃までの温度域における平均冷却速度Va(℃/秒)を制御した。下記表2に平均冷却速度Vaを示す。また、下記表2には、下記表1に示す成分の含有量と上記式(5)、式(6)から算出したk値、Vc値(10kの値)、並びに「0.1×Vc」の値、「0.9×Vc」の値、を夫々示す。
冷却後、切断し、厚さ:30mm×幅:155mm×長さ:100mmの板材を製造した。
得られた板材について、下記に示す手順で金属組織に占めるベイナイト面積率f(B)およびビッカース硬さを測定した。また、下記に示す手順で板材の被削性を評価した。
《金属組織の観察》
板材の金属組織は、板厚中央部をナイタール腐食し、光学顕微鏡で観察倍率200倍で撮影した写真を画像解析して各組織の面積率を測定した。各組織のうち、ベイナイト面積率f(B)を下記表2に示す。なお、ベイナイト以外の組織は、フェライトとパーライトであることを確認した。
下記表2には、下記表1に示したC量に基づいて算出される「−60×[C]+50」の値(上記式(2)および式(3)の右辺の値)を示す。また、下記表1に示したC量が0.35%未満の場合は、C量に基づいて算出される「−60×[C]+21」の値(上記式(2)の左辺の値)を示した。
また、ベイナイト面積率f(B)が、C量に応じて上記式(2)または式(3)の関係を満足している場合を○、満足していない場合を×として合否結果を下記表2に示す。
《ビッカース硬さの測定》
板材の強度を評価するために、板材のビッカース硬さHvを測定した。ビッカース硬さは、厚さ:30mm×幅:155mm断面の中心位置において、荷重:200gとして測定した。測定結果を下記表2に示す。本発明では、ビッカース硬さがHv230以上の場合を合格(高強度)、Hv230未満の場合を不合格(低強度)とした。
《板材の被削性について(断続切削時の被削性評価)》
板材の被削性を評価するために、エンドミル切削試験を行い、板材を断続切削したときの工具摩耗量を測定した。エンドミル切削試験では、上記板材をスケール除去した後、表面を約2mm研削したものをエンドミル切削試験片(被削材)として用いた。具体的には、マニシングセンタ主軸にエンドミル工具を取り付け、上記のようにして製造した厚さ:25mm×幅:150mm×長さ:100mmの試験片をバイスにより固定し、乾式の切削雰囲気下でダウンカット加工を行った。詳細な加工条件を下記表3に示す。断続切削を200カット行った後、工具表面を光学顕微鏡で観察倍率100倍で観察し、逃げ面摩耗量(工具摩耗量)Vbを測定し平均値を求めた。結果を下記表2に示す。本発明では、断続切削後の逃げ面摩耗量Vbが100μm以下のものを、「断続切削時の被削性に優れる」と評価した。
なお、下記表2に示すNo.14、15、19、20、22、26、27については、上記板材に表面硬化処理を行い、表面硬化処理後のビッカース硬さを測定した。表面硬化処理は、窒化処理または高周波焼入れを行った。窒化処理は、ガス軟窒化処理を、処理温度530℃、処理時間2時間で行った。高周波焼入れは、加熱温度850℃とし、冷却は水冷で行った。
表面硬化処理後の板材のビッカース硬さは、厚さ:30mm×幅:155mm断面の中心位置において、荷重:200gとして測定した。その結果、表面硬化処理後のビッカース硬さは、表面硬化処理前のビッカース硬さと変化が認められなかった。
Figure 0005443277
Figure 0005443277
Figure 0005443277
表1、表2から次のように考察できる。No.1〜21は、本発明で規定する要件を満足する例であり、所望の硬さ(強度)と被削性を兼ね備えた鋼を実現できている。
これに対し、No.22〜27は、本発明で規定するいずれかの要件を満足していない例であり、強度と被削性の少なくとも一方を改善できていない。No.22は、C量が少な過ぎる例であり、ベイナイトが生成せず、硬さを確保できていない。従って強度不足になっている。No.23は、C量が過剰で、しかも平均冷却速度Vaが所定の範囲を超えている例である。そのため、ベイナイトが過剰に生成し、硬くなり過ぎて逃げ面摩耗量Vbが多くなり、被削性が劣化している。
No.24は、Alが少な過ぎる例であり、AlとNの関係が、上記式(1)を満足していない。そのため、固溶Al量が不足したため、逃げ面摩耗量Vbが多くなり、被削性を改善できていない。No.25は、Bが少な過ぎる例であり、固溶Al量が不足したため、逃げ面摩耗量Vbが多くなり、被削性を改善できていない。
No.26は、平均冷却速度Vaが本発明で規定する範囲を下回る例であり、ベイナイトの生成量が少な過ぎるため、硬さを確保できず、強度不足になっている。No.27は、平均冷却速度Vaが本発明で規定する範囲を超える例であり、ベイナイトが過剰に生成しているため、逃げ面摩耗量Vbが多くなり、被削性を改善できていない。

Claims (8)

  1. C :0.20〜0.70%(質量%の意味。以下同じ。)、
    Si:0.03〜2%、
    Mn:0.2〜1.8%、
    P :0.03%以下(0%を含まない)、
    S :0.10%以下(0%を含まない)、
    Al:0.12〜0.5%、
    B :0.0005〜0.008%、
    N :0.002〜0.030%、および
    O :0.002%以下(0%を含まない)を含有すると共に、
    AlとNが下記式(1)の関係を満足し、
    残部が鉄および不可避不純物からなる鋼であり、
    前記鋼に含まれるC量が0.20%以上、0.35%未満の場合、金属組織がフェライト、パーライト、およびベイナイトの混合組織であり、且つベイナイトの面積率f(B)が下記式(2)を満足しており、
    C量が0.35%以上、0.70%以下の場合、金属組織がフェライトとパーライトの混合組織であるか、更にベイナイトを含む混合組織であり、且つベイナイトの面積率f(B)が下記式(3)を満足すること特徴とする被削性に優れた高強度鋼。
    0.10<[Al]−1.9×[N] ・・・(1)
    −60×[C]+21<f(B)<−60×[C]+50 ・・・(2)
    0≦f(B)<−60×[C]+50 ・・・(3)
    [上記式(1)〜式(3)において、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。]
  2. 更に他の元素として、
    Cr:1.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1に記載の高強度鋼。
  3. 更に他の元素として、
    Mo:1%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の高強度鋼。
  4. 更に他の元素として、
    Ti:0.005%以下(0%を含まない)、
    Zr:0.02%以下(0%を含まない)、
    Hf:0.02%以下(0%を含まない)、
    Ta:0.02%以下(0%を含まない)、および
    Nb:0.15%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の高強度鋼。
  5. 更に他の元素として、
    V :0.5%以下(0%を含まない)、
    Cu:3%以下(0%を含まない)、および
    Ni:3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の高強度鋼。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の高強度鋼で形成された鋼部品。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の成分組成を満足する鋼を、
    温度850℃以上で加工した後、800℃から500℃までの温度域を、下記式(4)を満たす平均冷却速度Vaで冷却することによって、
    前記鋼に含まれるC量が0.20%以上、0.35%未満の場合、金属組織がフェライト、パーライト、およびベイナイトの混合組織であり、且つベイナイトの面積率f(B)が下記式(2)を満足しており、
    C量が0.35%以上、0.70%以下の場合、金属組織がフェライトとパーライトの混合組織であるか、更にベイナイトを含む混合組織であり、且つベイナイトの面積率f(B)が下記式(3)を満足する被削性に優れた高強度鋼の製造方法。
    0.1×Vc<Va<0.9×Vc ・・・(4)
    上記式(4)において、Vcは下記式(5)で示され、kは下記式(6)で示される。なお、下記式(6)において[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。
    Vc=10k ・・・(5)
    k=4.05−{4.5×[C]+[Mn]+0.5×[Ni]+0.8×[Cr]+1.6×[Mo]+9.0×[Nb]} ・・・(6)
    −60×[C]+21<f(B)<−60×[C]+50 ・・・(2)
    0≦f(B)<−60×[C]+50 ・・・(3)
    [上記式(2)、式(3)において、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。]
  8. 請求項7で得られた高強度鋼を、温度850℃以上に加熱することなく切削加工することを特徴とする鋼部品の製造方法。
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