JP4557833B2 - 疲労特性に優れた高強度機械構造用鋼部品およびその製法 - Google Patents
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SM≧1.0×10−5……(1)
但し、SM=[Nb]/92.9+[Ti]/47.9+[Zr]/91.2+[Ta]/181+[Hf]/178
{式中、[Nb],[Ti],[Zr],[Ta],[Hf]は、鋼部品に含まれる各元素の抽出残渣から測定した固溶量(質量%)を表わす}。
b)V:0.1%以下(0%を含まない)、
c)Ca:0.005%以下(0%を含まない)、Mg:0.005%以下(0%を含まない)、REM:0.020%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素。
Cは、機械構造用部品として必要な芯部硬さを確保する上で重要な元素であり、0.10%未満では硬さ不足により機械構造用部品としての静的強度が不足気味となる。しかしC量が多過ぎると、硬くなり過ぎて芯部の靭性が悪くなるばかりか、焼入れ熱処理前の加工性も悪くなるので、0.4%以下に抑える必要がある。より好ましいC含量は、0.15%以上、0.3%以下、更に好ましくは0.17%以上、0.25%以下である。
Siは脱酸剤として作用し、酸化物系介在物量を低減して内部品質を高める作用を有すると共に、焼戻し処理による硬さ低下を抑えて焼入れ処理後の表層硬さを確保するのに有効な元素であり、これらの効果を有効に発揮させるには0.05%以上の添加を必要とする。しかしSiが多過ぎると、鋼素材が硬くなり過ぎて加工性が劣化する他、焼入れ処理時に粒界酸化層の形成を助長して疲労特性を劣化させるので、1.5%を上限と定めた。より好ましいSi含量は、0.10%以上、1.0%以下、更に好ましくは0.2%以上、0.8%以下である。
Mnは脱酸剤として作用し、酸化物系介在物量を低減して鋼材の内部品質を高める作用を有すると共に、焼入れ性を高める上でも欠くことのできない元素であり、これらの作用を有効に発揮させるには0.3%以上含有させねばならない。しかし、Mnが多過ぎると熱間鍛造などの加工性が悪くなるので、多くとも3.0%を超えない様に制御すべきである。Mnのより好ましい含有量は0.5%以上、2.0%以下、更に好ましくは0.75%以上、1.5%以下である。
Moは鋼中に固溶し、後述する固溶Bや固溶Nb,Ti,Zr,Hf,Taと複合して焼入れ性を著しく高める作用を有する他、浸炭・窒化部や芯部の強度、靭性を高める作用を有する重要な元素であるが、多過ぎると、熱間加工後の硬度が高くなり過ぎて冷間加工性が著しく低下するので0.5%を上限とする。Moの好ましい上限は0.3%、更に好ましくは0.2%以下である。下限は特に存在しないが、好ましくは0.03%以上、更に好ましくは0.08%以上である。
Bは、熱間もしくは冷間加工性を劣化させることなく焼入れ性や靭性を高める上で欠くことのできない元素であり、本発明の如く固溶Moと、同じく固溶したNb,Ti,Zr,Ta,Hfから選ばれる元素との複合によって焼入れ性を飛躍的に高め、高強度化に寄与する。こうした効果を有効に発揮させるには、Bを0.0003%以上含有させなければならず、好ましくは0.0006%以上、更に好ましくは0.0012%以上含有させるのがよい。しかしその効果は0.015%で飽和するので、それ以上の添加は経済的に無駄である。より好ましいB含量の上限は0.005%、更に好ましくは0.0035%以下である。
Nは鋼の溶製工程で不可避的に混入してくる不純物元素であり、後述するNb,Ti,Zr,Ta,Hfと結合し窒化物系の粗大介在物となって疲労特性を劣化させるので、極力少なく抑えるのがよく、多くとも0.02%以下、好ましくは0.01%以下、更に好ましくは0.007%以下に抑えるのがよい。
本発明では、上記5種類の元素の含有量を、各々0.50%以下に抑えると共に、「SM≧1.0×10−5」の範囲に制御することを必須の要件とする。
Ni,Cu,Crの各元素は、浸炭部および芯部の強度と靭性を高める作用があり、要求される強度や靭性に応じて、1種または2種以上を適量(好ましくは、それぞれ0.1%程度以上)含有させることが有効である。しかし、多過ぎると熱間加工後の硬さが高くなり過ぎて冷間加工性を劣化させるので、Niは2.0%以下、Cuは2.0%以下、Cr:3.0%以下、より好ましくは各々1.5%以下、更に好ましくは各々1.2%以下に抑えるのがよい。中でもCrは優れた焼入れ性向上効果を有しているので、好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.5%以上含有させるのがよい。
Vは、少量の添加で焼入れ性を高めると共に、焼戻し軟化抵抗を高める作用を有しており、その効果は0.005%程度以上で有効に発揮される。しかし、多過ぎると冷間加工性を劣化させるので、0.1%以下に抑えるべきである。より好ましくは0.05%以下、更に好ましくは0.02%以下である。
これらの元素は、何れも鋼中のSと反応して硫化物を形成し、MnSの伸長を防ぐことで靭性や疲労特性を高める作用を発揮するほか、被削性の向上にも有効に作用する。しかし、多過ぎると逆に靭性を著しく劣化させるので、添加するにしてもそれぞれ上限値以下に抑えるべきである。より好ましい上限値は、Ca:0.003%、Mg:0.003%、REM:0.01%である。
表1,2に示す化学組成の鋼材を小型溶製炉で溶製し、鋳造、均熱ののち熱間鍛造を行なって一辺が155mm角の棒鋼を得た。この棒鋼を使用し、表3に示す如く1100〜1300℃の温度で60分間均熱してから空冷した。その後、950〜1100℃に再加熱し、850〜950℃の最終圧延温度で圧延することによって直径30mmの丸棒鋼を得、この丸棒鋼から直径12mm×高さ18mmの円柱試験片を作成し、下記の方法で硬さ試験を行なうと共に、焼入れ特性と結晶粒成長特性を調べた。
各供試棒鋼を圧下率70%で冷間鍛造した後、1050℃で3時間の浸炭処理+油焼き入れを行ったものについて結晶粒を測定した。また、上記で得た直径30mmの各丸棒鋼に1050℃×3時間の浸炭処理+油焼入れを行い、その後160℃で焼戻しを行なったものについて、JIS 3号シャルピー衝撃試験片を作製して衝撃試験を行ない、芯部靭性を測定した。また、各試験片芯部のビッカース硬さを荷重10kgで測定した。そして、芯部靭性は20J以上、芯部硬さはHv330以上を合格とした。
上記で得た浸炭処理後のサンプル横断面のγ結晶粒度を、JIS G 0551に定めるオーステナイト結晶粒度試験法に則って、結晶粒度番号で5番以下の粗大粒の面積率を測定し、5%を超えるものを不良(×)、5%以下のものを合格(○)とした。
10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロリド−メタノール溶液を電解液として使用し、常温で200A/m2以下の電流で電解抽出を行い、抽出残渣を0.1μmのフィルターで濾取する。そして、トータル添加量と残渣中の量との差を求め、固溶量とした。
図1に示す転動疲労試験片(直径60mm×厚さ5mmの円盤状試験片)を使用し、ラッピング加工することによって表面粗さを平均粗さで0.04μmRa以下とした後、下記の条件で転動疲労試験を行い、破損率が10%となるときの寿命(L10)を求め、3×106以上を合格とした。
Claims (6)
- C:0.10〜0.4%(化学成分の場合は質量%を意味する、以下同じ)、
Si:0.05〜1.5%、
Mn:0.3〜3.0%、
Cr:3.0%以下(0%を含まない)、
B:0.0003〜0.015%、
N:0.02%以下(0%を含まない)、
を満たし、且つ、Nb,Ti,Zr,Ta,Hfよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を、各々0.50%以下で、且つ下記(1)式の関係を満たし、残部Fe及び不可避不純物からなることを特徴とする、疲労特性に優れた高強度機械構造用鋼部品。
SM≧1.0×10-5 ……(1)
但し、SM=[Nb]/92.9+[Ti]/47.9+[Zr]/91.2+[Ta]/181+[Hf]/178
{式中、[Nb],[Ti],[Zr],[Ta],[Hf]は、鋼部品に含まれる各元素の抽出残渣から測定した固溶量(質量%)であり、添加量と、電解抽出後の抽出残渣を0.1μmのフィルターで濾取したときに得られる析出物中の量との差によって求められるものである。} - 鋼が、他の元素として、
Ni:2.0%以下(0%を含まない)、および
Cu:2.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むものである請求項1に記載の機械構造用鋼部品。 - 鋼が、更に他の元素として、
V:0.1%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1または2に記載の機械構造用鋼部品。 - 鋼が、更に他の元素として、
Ca:0.005%以下(0%を含まない)、
Mg:0.005%以下(0%を含まない)、
REM:0.02%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の機械構造用鋼部品。 - 鋼が、更に他の元素として、
Mo:0.5%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の機械構造用鋼部品。 - 請求項1〜5のいずれかに記載された化学成分の要件を満たす鋼材を、1250℃以上の温度で均熱処理し、1000℃以上の温度で浸炭加熱処理することを特徴とする疲労特性に優れた高強度機械構造用鋼部品の製法。
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