JP3241897B2 - 引張強度、疲労強度および被削性に優れる熱間鍛造用非調質鋼 - Google Patents
引張強度、疲労強度および被削性に優れる熱間鍛造用非調質鋼Info
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Description
し等の調質処理を施さなくとも、優れた引張強度と疲労
強度および被削性を同時に有する熱間鍛造ままで使用す
る非調質鋼に関するものである。
自動車を始めとする機械構造用部品に対して非調質鋼の
適用が普及している。
るいは硬さ)と降伏強度および靭性を有することを主眼
に開発が行われてきた。そこで例えば特開昭62−20
5245号公報などに見られるように、析出強化の代表
的元素であるVを使った非調質鋼が提案されてきた。と
ころがこの様な高強度高靭性の非調質鋼の機械部品への
適用において真に障害となるものは疲労強度および被削
性である。
され、引張強度を高くすれば高くなる。しかし引張強度
を上げることによって被削性は極端に劣化し引張強度が
120kgf/mm2 を超えるともはや通常の生産能率
では生産ができなくなってしまう。そこで被削性を劣化
させずに疲労強度を向上させる非調質鋼の具現化が切望
された。
耐久比を向上させることが有効な手段である。そこで例
えば特開平4−176842号公報などに見られるよう
に、ベイナイト主体の金属組織とし組織中の高炭素島状
マルテンサイトおよび残留オーステナイトを低減する方
法などが提案されてきた。
ず、耐久比はせいぜい0.55程度であり、被削性も極
めて不良である従来型のベイナイト非調質鋼の高々2倍
程度にしか改善されない。
ト含有組織に着目しこれにまずMnS上にTiNおよ
びVNを複合析出させこれによって鍛造加熱時のオース
テナイト結晶粒を微細化するとともにこの複合析出物を
核発生サイトとしてフェライトを微細析出させる、つ
いでパーライトが析出するに当たって、析出したパーラ
イト中のフェライトマトリックス地にさらにV炭化物ま
たはV炭室化物を極めて微細に析出させる、このような
2段の析出を活用した手法により組織全体が微細でかつ
析出強化されたパーライトを有する金属組織を得ること
を組み合わすことによって疲労強度および被削性の優れ
る熱間鍛造用非調質鋼を発明した。しかしこの型の非調
質鋼では引張強度で高々100kgf/mm2 程度が限
界でありそれ故耐久比を向上させたとしても疲労強度に
も限界があった。
質鋼では実現が困難であった、高い疲労強度および引張
強度と被削性を有する熱間鍛造用非調質鋼を提供するも
のである。
た場合、最も容易な方法は引張強度(硬さ)を上げるこ
とである。引張強度を上げるためには、マルテンサイト
あるいはベイナイトといった低温変態組織を導入すれば
良いが、従来技術の中で述べたごとく、このような方法
は被削性を顕著に劣化せしめる。
イナイト組織が混ざる金属組織を持つ数種類の熱間鍛造
材について、その疲労特性および被削性について検討し
た。その結果、組織を微細化する目的でMnS+Ti
N+VNの複合析出物をフェライトの析出核として活用
する低Cおよび低N化により硬さを制御したベイナイ
ト組織を適当量含有するフェライト−ベイナイト2相組
織とするベイナイト組織中にV炭化物を析出させるこ
との3点から、引張強度および疲労強度を向上させかつ
被削性も現行の切削工程で許容可能なレベルを確保でき
るフェライト−ベイナイト型の熱間鍛造用非調質鋼を発
明するに至った。
てC:0.10〜0.35%、Si:0.15〜2.0
0%、Mn:0.40〜2.00%、S:0.03〜
0.10%、Al:0.0005〜0.050%、T
i:0.003〜0.050%、N:0.0020〜
0.0070%、V:0.30〜0.70%を含有し、
残部はFeならびに不純物元素からなる組成を有し、熱
間鍛造を施し室温まで冷却した後の金属組織においてベ
イナイト組織の組織率fが含有炭素量C(%)に対して
1.4C+0.4≧f≧1.4Cであり、引張強度が9
5.6kgf/mm 2 以上であることを特徴とする熱間
鍛造したままで使用するフェライト−ベイナイト型非調
質鋼であり、第2発明は結晶粒微細化とベイナイト組織
率の調整および被削性のさらなる向上のため、第1発明
鋼の成分にさらにCr:0.02〜1.50%、Mo:
0.02〜1.00%、Nb:0.001〜0.20
%、Pb:0.05〜0.30%、Ca:0.0005
〜0.010%の内の1種または2種以上を含有させた
ものである。
調質鋼における化学成分および熱間鍛造を施し室温まで
冷却した後の金属組織の限定理由について以下に説明す
る。
終製品の引張強度を増加させる重要な元素であるが過多
であると強度が上がりすぎて被削性が顕著に劣化する。
すなわち、0.10%未満では低引張強度および低疲労
強度となり、逆に0.35%超過では高引張強度となり
すぎ被削性が顕著に低下するので0.10〜0.35%
とする。
する元素で、0.15%未満ではその効果は小さく、
2.00%超過では耐久比、被削性、のいずれも低下す
るので0.15%〜2.00%とする。
にMnSとなることによりフェライトの析出サイトであ
る複合析出物の基盤となる元素で、0.40%未満では
その効果が小さく、2.00%超過ではベイナイトが多
量発生して耐久比、被削性のいずれも低下するので0.
40〜2.00%とする。
析出サイトである複合析出物の基盤となりかつ被削性を
向上させる元素で、0.03〜0.10%とする。
元素で、0.0005%未満ではその効果が小さく、
0.050%超過では硬質介在物を形成し耐久比、被削
性のいずれも低下するので0.0005〜0.050%
とする。
ェライトの析出サイトとなる複合析出物を形成する元素
で、0.003%未満ではその効果が小さく、0.05
0%超過では粗大硬質介在物の形成を促し耐久比、被削
性のいずれも低下するので0.003〜0.050%と
する。
物を形成する元素で、0.0020%未満ではその効果
が小さく、0.0070%超過では耐久比、被削性のい
ずれも低下するので、0.0020〜0.0070%と
する。
成するとともにベイナイト中のマトリックスフェライト
を析出強化する元素で、0.30%未満ではその効果が
小さく、0.70%超過では耐久比、被削性のいずれも
低下するので、0.30〜0.70%とする。
理由である。本願第2発明においては、結晶粒微細化と
ベイナイト組織率の調整および被削性のさらなる向上の
ため、第1発明鋼の成分にさらにCr、Mo、Nb、P
b、Caの内の1種または2種以上を含有させる。これ
らの化学成分の限定理由について以下に述べる。
率を調整する元素で、0.02%未満ではその効果が小
さく、1.50%超過ではベイナイトが多量発生して耐
久比、被削性のいずれも低下するので0.02〜1.5
0%とする。
元素で、0.02%未満ではその効果が小さく、1.0
0%超過ではベイナイトが多量発生して耐久比、被削性
のいずれも低下するので0.02〜1.00%とする。
つ元素で、0.001%未満ではその効果が小さく、
0.20%超過では耐久比、被削性のいずれも低下する
ので、0.001〜0.20%とする。
05%未満ではその効果が小さく、0.30%超過では
その効果は飽和し疲労強度および耐久比が低下するの
で、0.05〜0.30%とする。
で、0.0005%未満ではその効果が小さく0.01
0%超過ではその効果は飽和し疲労強度および耐久比が
低下するので0.0005〜0.010%とする。
た化学成分の限定理由である。次に本願発明の鋼におい
て熱間鍛造後室温まで冷却した際の金属組織の限定理由
について述べる。
トの2相組織としベイナイトが適当量存在することが高
い引張強度、高い疲労強度および被削性の確保をもたら
す。ベイナイト組織率は鋼のC含有量と焼入れ性および
オーステナイト域からの冷却速度で制御できる。ベイナ
イト組織を有効に活用するためには、その組織率fが含
有炭素量C(%)に対して1.4C以上が必要であり、
一方1.4C+0.4超過となると被削性が極端に劣化
するので、ベイナイト組織率fを含有炭素量C(%)に
対して1.4C以上1.4C+0.4以下とした。この
ようなベイナイト組織を含む金属組織を達成できれば、
熱間鍛造後の冷却方法は特に指定しないが、設備や製造
コストの点からは自然放冷が当然望ましい。なお、ベイ
ナイト組織率fは腐食した試験片を光学顕微鏡等で観察
するとともにマイクロビッカース硬度計によりその組織
硬度を求め、最終的に面積率を測定することによって求
める。
らに具体的に示す。
件が本発明を満足する実施例であり、それ以外は比較例
である。
kgの鋼塊としこれから鍛造用材料を切り出し、一旦9
50℃加熱放冷で焼準した後、1100〜1250℃に
加熱して1050〜1200℃の温度で熱間鍛造を行
い、その後放冷した。この材料の中央部よりJIS4号
引張試験片、JIS1号回転曲げ試験片を採取し、引張
試験および回転曲げ疲労試験を行った。同材料から光学
顕微鏡観察試験片を採取し5%ナイタールで腐食して2
00倍で観察しベイナイト組織率を求めた。さらに同材
料より切削試験片を採取し、SKH9製10mmφスト
レートシャンクドリルを用いて30mm深さのブライン
ドホールを穿孔し、ドリルが寿命破壊するまでの総穿孔
距離を測定した。測定した結果は従来鋼であるNo鋼の
総穿孔距離を1.00とし、それとの相対比で切削性を
評価した。なお、切削速度は50m/min、送り速度
は0.35mm/rev、切削油7L/minの条件と
した。
性能評価結果を示す。
47・切削性1.00に対し、本発明例であるNo.1
〜20はいずれも引張強度が95.6kgf/mm 2 以
上で耐久比は0.57以上であり、また切削性もNo.
42の2倍から3倍近く良好である。
強度が低くかつ耐久比も低いので疲労特性は不良であ
る。比較例のNo.22はC量が高すぎるためマルテン
サイトが発生し本発明のベイナイト組織率の条件が満足
できず、引張強度は高くなるが本発明例に比べ耐久比が
低く切削性も不良である。
酸程度が低く耐久比は本発明例に比べ低い。比較例のN
o.24はSi量が高いためマルテンサイトが発生し本
発明のベイナイト組織率の条件が満足できず、耐久比は
本発明例に比べ低く切削性も不良である。
合析出物の析出が少なく、耐久比が本発明例に比べ低
い。比較例のNo.26はMn量が高いためマルテンサ
イトが発生し本発明のベイナイト組織率の条件が満足で
きず、耐久比は本発明例に比べ低く切削性も不良であ
る。
介在物の析出が少なく、耐久比が本発明例に比べ低く、
またMnSの切削性向上効果を得られないので切削性も
不良である。比較例のNo.28はS量が高いためMn
Sの析出が過多となり、耐久比が本発明例に比べ低い。
酸程度および結晶粒微細化効果が小さく、耐久比が本発
明例に比べ低い。比較例のNo.30はAl量が高いた
め硬質介在物が形成され、耐久比は本発明例に比べ低く
切削性も不良である。
合析出物の析出が少なく、耐久比が本発明例に比べ低
い。比較例のNo.32はTi量が高いため硬質介在物
が形成され、耐久比は本発明例に比べ低く切削性も不良
である。
析出物の析出が少なく、耐久比が本発明例に比べ低い。
比較例のNo.34はN量が高いためマトリックスが硬
化し、耐久比は本発明例に比べ低く切削性も不良であ
る。
析出物の析出が少なくかつマトリックスフェライトを析
出強化する効果が小さいので、耐久比が本発明例に比べ
低い。比較例のNo.36はV量が高いため、耐久比は
本発明例に比べ低く切削性も不良である。
ルテンサイトが発生し本発明のベイナイト組織率の条件
が満足できず、耐久比は本発明例に比べ低く切削性も不
良である。
ルテンサイトが発生し本発明のベイナイト組織率の条件
が満足できず、耐久比は本発明例に比べ低く切削性も不
良である。
耐久比は本発明例に比べ低く切削性も不良である。
切削性は良好なるも耐久比が不良である。
切削性は良好なるも耐久比が不良である。
組織率変化の影響 表1に示す化学成分の鋼を高周波炉にて溶解し、150
kgの鋼塊としこれから鍛造用材料を切り出し、一旦9
50℃加熱放冷で焼準した後、1100〜1250℃に
加熱して1050〜1200℃の温度で熱間鍛造を行
い、その後同じく表3に示す方法で放冷した。この材料
の中央部より実施例1と同様の方法で、引張強度、疲労
強度、被削性およびベイナイト組織率を求めた。表4に
各供試材のベイナイト組織率および性能評価結果を示
す。
発明のベイナイト組織率の条件である組織率fが含有炭
素量C(%)に対して1.4C+0.4以上1.4C以
下を満足する本発明の例であり、いずれも耐久比は0.
55以上を確保しまた切削性も現行調質鋼であるNo.
42の2.5倍程度と良好である。
したもので、その組織は大部分がフェライトまたはフェ
ライト+球状セメンタイトであってベイナイト組織率が
小さい。そのため引張強度自体が低いが、フェライト+
ベイナイト2相組織化による効果が消失し、耐久比は
0.54以下と低く、切削性も本発明例に比較して不良
である。
によりマルテンサイトを主とする組織としたものであ
り、引張強度は高くなるものの耐久比は極めて低く、ま
た切削性も不良で工具寿命は小さい。
−ベイナイト2相組織とすることにより高い引張強度を
得ると共に被削性を確保し、さらにMnS,Ti窒化物
およびV窒化物から形成される複合析出物を使って金属
組織の微細化とV炭化物(または炭窒化物)によるベイ
ナイト中のフェライトマトリックスの強化を同時に行う
ことにより被削性を損なわずに耐久比すなわち疲労特性
を向上させることが可能となり、従来、切望されていた
高引張強度でかつ高い疲労強度と被削性の兼備を満足す
る熱間鍛造用非調質鋼を提示することが可能となり、産
業上極めて効果が大きい。
Claims (2)
- 【請求項1】重量比にして C :0.10〜0.35% Si:0.15〜2.00% Mn:0.40〜2.00% S :0.03〜0.10% Al:0.0005〜0.050% Ti:0.003〜0.050% N :0.0020〜0.0070% V :0.30〜0.70%を含有し 残部はFeならびに不純物元素からなる組成を有し熱間
鍛造を施し室温まで冷却した後の金属組織においてベイ
ナイト組織の組織率fが含有炭素量C(%)に対して 1.4C+0.4≧f≧1.4C であり、引張強度が95.6kgf/mm 2 以上である
ことを特徴とする熱間鍛造したままで使用するフェライ
ト−ベイナイト型非調質鋼。 - 【請求項2】成分がさらに Cr:0.02〜1.50% Mo:0.02〜1.00% Nb:0.001〜0.20% Pb:0.05〜0.30% Ca:0.0005〜0.010% の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする
請求項1記載の熱間鍛造したままで使用するフェライト
−ベイナイト型非調質鋼。
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