JP2021172875A - 耐摩耗鋼の製造方法 - Google Patents

耐摩耗鋼の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021172875A
JP2021172875A JP2020080492A JP2020080492A JP2021172875A JP 2021172875 A JP2021172875 A JP 2021172875A JP 2020080492 A JP2020080492 A JP 2020080492A JP 2020080492 A JP2020080492 A JP 2020080492A JP 2021172875 A JP2021172875 A JP 2021172875A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel
content
less
toughness
wear
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020080492A
Other languages
English (en)
Inventor
昌毅 溝口
Masatake Mizoguchi
昌紀 皆川
Masanori Minagawa
孝浩 加茂
Takahiro Kamo
宗理 原
Sosuke Hara
拓海 三宅
Takumi Miyake
康哲 ▲高▼橋
Yasutetsu Takahashi
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2020080492A priority Critical patent/JP2021172875A/ja
Publication of JP2021172875A publication Critical patent/JP2021172875A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

【課題】寒冷地でも使用が可能な優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼の製造方法の提供。【解決手段】質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.01〜1.20%、Mn:0.01〜2.00%、Ni:0.01〜1.00%、Cu:0.01〜0.70%、Cr:0.30〜1.50%、Al:0.001〜0.100%、Ti:0.001〜0.030%、N:0.0001〜0.0070%を含有し、残部がFe及び不純物からなる組成を有する鋼片を1000〜1350℃に加熱する工程、加熱された鋼片を、1000℃以下、825℃超において20%以上の圧下率で、次いで825℃以下、730℃以上において10%以上の圧下率で熱間圧延する工程、熱間圧延された鋼板を5.0℃/秒以上の平均冷却速度で350℃以下まで冷却する工程、及び冷却した鋼板を860℃以上に再加熱し、その後焼入れする工程を含む耐摩耗鋼の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、建設機械や産業機械等の耐摩耗性が要求される機械の構成部材として用いるのに適している、耐摩耗鋼の製造方法に関する。
機械の構成部材の耐摩耗性はその表面硬度に強く支配されるため、土木、鉱山用の建設機械や産業機械のような耐摩耗性が要求される機械の構成部材には高硬度鋼が用いられる。この高硬度鋼には、安定した耐摩耗性を有して長期の使用に耐えることができる特性が要求されている。また、近年では、寒冷地で用いられる建設機械や産業機械の需要が増加しており、このような寒冷地での使用に適した低温靭性を有する鋼材が要求されている。
特許文献1では、成分系を制御し、加熱後熱間圧延を行い、その後再加熱して加速冷却を行う、耐摩耗鋼板の製造方法が提案されている。
また、特許文献2では、成分系を制御し、直径50nm以下の微細析出物を用いて、製造中にオーステナイト粒の成長を抑制する耐摩耗厚鋼板を製造する方法が提案されている。
さらに、特許文献3では、成分系を制御し、加熱後熱間圧延を行い、その熱間圧延の直後に加速冷却を適用する、低合金耐摩耗鋼板を製造する方法が提案されている。
そして、特許文献4では、成分系を制御し、加熱後にスラブ温度及び圧下率を制御して熱間圧延を行い、放冷、さらに再加熱して焼入れを行うことにより優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼板が製造可能であることが開示されている。
特開2012−214890号公報 特開2014−194042号公報 特表2016−509631号公報 国際公開第2019/181130号
しかし、特許文献1に記載の方法で製造された鋼板は、C含有量が多いことにより高靭化が難しい。また、特許文献1に記載の方法においては、熱間圧延時の圧延条件について十分な検討がされておらず、したがって、靭性の向上の観点で依然として改善の余地があった。さらに、特許文献1の実施例は、再加熱温度が低いものが多く、したがって、高い硬度を確保するという観点においても課題があった。
また、特許文献2では、鋼中に微細析出物を分散させることで、ピンニング効果によって再加熱中のオーステナイト粒の成長を抑制し、オーステナイト粒を微細化することが教示されている。しかし、このような微細析出物を鋼中に分散させる方法では、成分系の僅かな違いや再加熱温度の違いにより析出物の分散状態に大きな変動が生じるため、オーステナイト粒の安定的な微細化が難しく、必ずしも高靭化を達成できない。また、P含有量が必ずしも十分に低く抑えられておらず、さらに靭性の低下をもたらすことがある。
さらに、特許文献3に記載の方法で製造された鋼板は、C含有量が大きいことにより高靭化が難しい。また、低温での熱間圧延の直後に冷却(焼入れ)を行うことにより、鋼材組織に異方性が生じる事が、本発明者らの検討により明らかになっており、圧延方向に破壊を生じさせる場合の靭性が低くなるという問題がある。
そして、特許文献4に記載の耐摩耗鋼の製造方法では、一定以上のシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーを有する耐摩耗鋼を得ることができるものの、寒冷地でより安定的に使用可能な耐摩耗鋼とするために、より安定的に高いシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーを得るという観点から、耐摩耗鋼の製造方法には更なる改善の余地があった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、より高いシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーを有する耐摩耗鋼を製造するための耐摩耗鋼の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、
C:0.10〜0.30%、
Si:0.01〜1.20%、
Mn:0.01〜2.00%、
P:0.017%未満、
S:0.010%以下、
Ni:0.01〜1.00%、
Cu:0.01〜0.70%、
Cr:0.30〜1.50%、
Al:0.001〜0.100%、
Ti:0.001〜0.030%、及び
N:0.0001〜0.0070%
を含有し、残部がFe及び不純物からなる組成を有する鋼片を1000〜1350℃に加熱する工程、
加熱された鋼片を、1000℃以下、825℃超において20%以上の圧下率で、次いで825℃以下、730℃以上において10%以上の圧下率で熱間圧延する工程、
熱間圧延された鋼板を5.0℃/秒以上の平均冷却速度で350℃以下まで冷却する工程、及び
冷却した鋼板を860℃以上に再加熱し、その後焼入れする工程
を含むことを特徴とする、耐摩耗鋼の製造方法。
(2)前記鋼片が、さらに、質量%で、
Mo:0.80%以下、
B:0.0030%以下、
Nb:0.001〜0.050%以下、
V:0.20%以下、
W:0.50%以下、及び
Zr:0.0050%以下、
のうち、1種又は2種以上を含有する組成を有することを特徴とする、(1)に記載の耐摩耗鋼の製造方法。
(3)前記鋼片が、さらに、質量%で、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0050%以下、及び
REM:0.0050%以下
のうち、1種又は2種以上を含有する組成を有することを特徴とする、(1)または(2)に記載の耐摩耗鋼の製造方法。
本発明によれば、寒冷地でも使用が可能な優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼が得られる。
<耐摩耗鋼の製造方法>
一般には、鋼材の硬度を高くすると靭性が低下する傾向にあり、耐摩耗鋼のような高硬度な鋼材で低温靭性を確保することは容易ではない。本発明者らは、低温下でも高靭性を有する耐摩耗鋼を得るために、より具体的には、表層のブリネル硬さ:360〜500、及び−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー:150J以上を有する耐摩耗鋼を得るために検討を重ねた結果、鋼板の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における旧オーステナイト平均結晶粒径を15μm以下にすることが必要であることを知見した。
本発明者らは、旧オーステナイト粒径を微細化するために必要な製造条件を種々検討し、その結果、焼入れの際の再加熱時に、ベイナイトやマルテンサイトからオーステナイトに逆変態する際の核生成サイトを増やすことが本質的に重要であることを知見した。これは、オーステナイト逆変態の核生成サイトを著しく増加させることで、全体がオーステナイトへの逆変態を完了した際のオーステナイト粒を細粒化することができるためである。
そして、このオーステナイト逆変態の核生成サイトを増加させるためには、本発明者らは、熱間圧延時の温度と圧下率を制御することが重要であることを知見した。
すなわち、本発明の耐摩耗鋼においては、焼入れの際の再加熱時のオーステナイトの核生成サイトが、ベイナイトやマルテンサイトの旧オーステナイト粒界のような大角粒界であることが本発明者らの詳細な検討により判明している。熱間圧延時の温度と圧下率を制御することにより、熱間圧延時にオーステナイト粒径を微細化すれば、熱間圧延後に焼入れする際の再加熱時の単位体積当たりの大角粒界の面積を増加させることができる、言い換えればオーステナイト逆変態の核生成サイトを増加させることが可能となる。さらに、熱間圧延時のこのような制御により、鋼中に圧下歪を与えておくことで、結晶粒界に蓄積するエネルギーを増加させることができ、それによって逆変態を促進することができる効果もあると推定される。
以上のように、熱間圧延工程の温度及び圧下率を制御することで、核生成サイトを増加させることおよび鋼中への歪を付与することを実現した。しかしながら、熱間圧延工程の温度及び圧下率の制御のみでは、上述した旧オーステナイト平均結晶粒径を安定的に15μm以下にすることは必ずしも可能でなかった。よって、他の方法で核生成サイトの増加、鋼中への歪付与を実現し、逆変態が完了した際のオーステナイト粒径をさらに細粒化することが要求される。そこで、本発明者らは、更なるオーステナイト粒径の細粒化を目指し更なる検討を行った結果、熱間圧延工程の温度及び圧下率に加え、熱間圧延後の冷却を放冷ではなく急冷制御することにより、これらを実現できることを知見した。
また、低温靭性を有する耐摩耗鋼を得るためには、旧オーステナイト平均結晶粒径の制御だけでは靭性の改善に十分ではなく、マルテンサイト及び下部ベイナイトを主体とした組織とする必要があることを、本発明者らは知見した。加えて、靭性向上には、各種合金の適切な組み合わせも必要である。
特に、微細なオーステナイト粒径を得た場合には、一般的に焼入れ性が低下する傾向にあり、焼入れを行っても耐摩耗鋼に必要な硬度が得られない場合があるため、Cu、Niの添加により、焼入れ性を高める必要があることを本発明者らは知見した。
以下、本発明に係る耐摩耗鋼の製造方法について説明する。本発明に係る耐摩耗鋼の製造方法は、鋼片を加熱する加熱工程、加熱した鋼片を熱間圧延する熱間圧延工程、熱延鋼板を冷却する冷却工程、及び冷却した鋼板を再加熱焼入れする再加熱焼入れ工程を含む。
本発明に係る耐摩耗鋼を製造するのに使用される鋼片の製造方法は特に限定されない。例えば、溶鋼の組成を調整した後、鋳造し、鋼片を得ることができる。鋼片の厚みは、生産性の観点から、200mm以上とすることが好ましい。また、偏析の低減や、熱間圧延を行う前の加熱温度の均質性等を考慮すると、鋼片の厚みは350mm以下が好ましい。このような鋼片を、以下で説明する本発明に係る耐摩耗鋼の製造方法において使用することができる。
(加熱工程)
加熱工程では、所定の組成を有する鋼片を1000〜1350℃で加熱する。まず、鋼片の組成を限定した理由について説明する。本明細書において、成分含有量についての「%」は質量%を意味する。組成の説明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「超」又は「未満」が用いられる場合を除き、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
(C:0.10〜0.30%)
C(炭素)は、鋼の高硬度化に有効な元素であり、本発明では、硬度を確保するために、C含有量の下限を0.10%とする。好ましいC含有量の下限は0.11%であり、より好ましいC含有量の下限は0.13%である。一方、C含有量が0.30%を超えると、本発明により製造される耐摩耗鋼の目標であるブリネル硬さ500以下の範囲を満たさなくなる場合があり、したがって靭性が低下するので、C含有量の上限を0.30%とする。靭性を向上させるためには、C含有量の上限を0.25%とすることが好ましく、0.20%とするのがより好ましい。
(Si:0.01〜1.20%)
Si(ケイ素)は、脱酸元素であり、固溶強化により硬度の向上にも寄与するため、本発明ではSi含有量の下限を0.01%とする。好ましくはSi含有量の下限を0.10%、より好ましくはSi含有量の下限を0.20%とする。ただし、Si含有量が高すぎると靭性と溶接性が劣化するため、Si含有量の上限を1.20%とする。好ましくはSi含有量の上限を0.80%、より好ましくはSi含有量の上限を0.70%とする。
(Mn:0.01〜2.00%)
Mn(マンガン)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与するため、本発明ではMn含有量の下限を0.01%とする。より強度を高めるには、Mn含有量の下限を0.30%とすることが好ましく、0.50%にすることがより好ましい。一方、Mn含有量が2.00%を超えると、靭性及び溶接性が劣化するため、Mn含有量の上限を2.00%とする。Mn含有量の好ましい上限は1.80%であり、より好ましい上限は1.50%である。
(P:0.017%未満)
P(リン)は、一般に不純物として含有され、粒界に偏析し、脆性破壊の発生を助長するため、本発明ではP含有量を0.017%未満とする。0.017%以上になると靭性が著しく低下する。P含有量は可能な限り少ないことが好ましく、下限は規定しないが、例えば0%超、又は0.001%以上であってもよい。好ましくは、P含有量は0.013%以下である。
(S:0.010%以下)
S(硫黄)は、一般に不純物として含有され、MnS等の硫化物を形成して靭性を低下させるため、本発明ではS含有量を0.010%以下とする。0.010%を超えると靭性が低下する場合がある。S含有量は可能な限り少ないことが好ましく、下限は規定しないが、例えば0%超、又は0.001%以上であってもよい。好ましくは、S含有量は0.007%以下である。
(Ni:0.01〜1.00%)
Ni(ニッケル)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与するため、また、靭性の向上に寄与するため、0.01%以上を含有させる。好ましいNi含有量は0.10%以上、より好ましいNi含有量は0.20%以上である。Niの過剰な添加はコストの上昇を招くため、Ni含有量の上限を1.00%とする。Ni含有量の上限は好ましくは0.90%、より好ましくは0.80%である。
(Cu:0.01〜0.70%)
Cu(銅)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与するため、0.01%以上を含有させる。好ましくはCuを0.10%以上、より好ましくは0.20%以上含有させる。しかし、Cuの過剰な添加は、靭性低下や鋳造後の鋼片の割れや溶接性の低下をもたらすため、Cu含有量の上限を0.70%とする。Cu含有量の上限は好ましくは0.65%、より好ましくは0.60%である。
(Cr:0.30〜1.50%)
Cr(クロム)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与するため、0.30%以上を含有させる。好ましくは0.50%以上、より好ましくは0.60%以上のCrを含有させる。しかし、1.50%を超えてCrを含有させると、靭性と溶接性を低下させる。したがって、Cr含有量の上限を1.50%とする。好ましくは、Cr含有量の上限を1.30%、より好ましくは、Cr含有量の上限を1.00%とする。
(Al:0.001〜0.100%)
Al(アルミニウム)は、本発明では脱酸元素として必要であり、脱酸の効果を得るため0.001%以上、好ましくは0.010%以上を含有させる。一方、Alを過剰に添加すると、Al酸化物が粗大化して脆性破壊の基点となり、靭性が低下するので、Al含有量の上限を0.100%、好ましくは0.090%、より好ましくは0.080%とする。
(Ti:0.001〜0.030%)
Ti(チタン)は、TiNを形成して、鋼中のNを固定する元素であり、本発明では、Ti含有量の下限を0.001%とする。また、TiNは、ピンニング効果によって熱間圧延前のオーステナイト粒を細粒化する効果を有するため、0.005%以上のTiを含有させることが好ましく、0.008%以上のTiを含有させることがより好ましい。一方、Ti含有量が0.030%を超えると、粗大なTiNが生成し、靭性を損なうため、Ti含有量の上限を0.030%とする。好ましくは、Ti含有量の上限を0.020%とし、より好ましくは、Ti含有量の上限を0.015%とする。
(N:0.0001〜0.0070%)
N(窒素)は、TiNを形成し、組織の細粒化や析出強化に寄与する元素であるため、N含有量の下限を0.0001%、好ましくは0.0010%、より好ましくは0.0020%とする。しかし、N含有量が過剰になると、靭性が低下し、鋳造時の表面割れや製造された鋼材の歪時効による材質不良の原因となるため、上限を0.0070%とする。好ましくは、N含有量の上限を0.0050%とする。
硬度や靭性をより高めるために、さらに、Mo、B、Nb、V、W、Zr、Ca、Mg及びREMのうち1種又は2種以上を含有させてもよい。
(Mo:0.80%以下)
Mo(モリブデン)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与する元素である。本発明において、Mo含有量は0%であってもよいが、この効果をより確実に得るためには0.01%以上のMo含有量が好ましく、より好ましくは0.05%以上を含有させる。しかし、0.80%を超えてMoを含有させると、靭性と溶接性を低下させる。したがって、Mo含有量の上限を0.80%とする。より好ましくは、Mo含有量の上限を0.60%とする。
(B:0.0030%以下)
B(ホウ素)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇をもたらす元素であり、焼入性を上昇して靭性を向上させる元素である。本発明において、B含有量は0%であってもよいが、この効果をより確実に得るためには0.0001%以上を含有させることが好ましく、0.0005%以上含有させることがより好ましい。一方、Bの過剰な添加は靭性と溶接性を低下させるため、B含有量の上限を0.0030%とする。より好ましくはB含有量の上限を0.0015%とする。
(Nb:0.050%以下)
Nb(ニオブ)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与する元素である。本発明において、Nb含有量は0%であってもよいが、この効果をより確実に得るためには0.001%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.005%以上を含有させる。一方で、Nbを過度に添加すると、靭性と溶接性を低下させるため、Nb含有量の上限を0.050%、好ましくは0.040%とする。
(V:0.20%以下)
V(バナジウム)は、焼入れ性の向上及び析出強化を通じて硬度の上昇に寄与する元素である。本発明において、V含有量は0%であってもよいが、この効果をより確実に得るためには0.001%以上を含有させることが好ましく、0.01%以上含有させることがより好ましい。一方、Vの過剰な添加は靭性と溶接性を低下させるため、V含有量の上限を0.20%、好ましくは0.15%とする。
(W:0.50%以下)
W(タングステン)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与する元素である。本発明において、W含有量は0%であってもよいが、この効果をより確実に得るためには、0.001%以上を含有させることが好ましい。より好ましくは0.10%以上のWを含有させる。しかし、Wの過剰な添加は靭性と溶接性を低下させるため、W含有量の上限を0.50%、好ましくは0.45%とする。
(Zr:0.0050%以下)
Zr(ジルコニウム)は、炭化物及び窒化物として析出し、鋼の析出強化に寄与する。本発明において、Zr含有量は0%であってもよいが、この効果をより確実に得るためには0.0001%以上の含有が好ましい。より好ましくは0.0010%以上のZrを含有させる。一方、0.0050%を超えてZrを含有させると、Zrの炭化物及び窒化物の粗大化を招き、靭性が低下することがあるため、Zr含有量の上限を0.0050%、好ましくは0.0040%とする。
(Ca:0.0050%以下)
Ca(カルシウム)は、硫化物の形態制御に有効な元素であり、粗大なMnSの生成を抑制し、靭性の向上に寄与する。本発明において、Ca含有量は0%であってもよいが、この効果をより確実に得るためには、0.0001%以上のCaを含有させることが好ましい。より好ましくは0.0010%以上のCaを含有させる。一方、0.0050%を超えてCaを含有させると、靭性が低下することがあるため、Ca含有量の上限は0.0050%とする。より好ましいCa含有量の上限は0.0030%である。
(Mg:0.0050%以下)
Mg(マグネシウム)は、母材靭性や溶接HAZ靭性の向上に寄与する。本発明において、Mg含有量は0%であってもよいが、この効果をより確実に得るためには、0.0001%以上のMgを含有させることが好ましい。より好ましくは0.0010%以上のMgを含有させる。一方、0.0050%を超えてMgを含有させると、効果が飽和すること、および靭性が低下することがあるため、Mg含有量の上限は0.0050%、好ましくは0.0040%とする。
(REM:0.0050%以下)
REM(希土類元素)は、母材靭性や溶接HAZ靭性の向上に寄与する。本発明において、REM含有量は0%であってもよいが、この効果をより確実に得るためには、0.0001%以上のREMを含有させることが好ましい。より好ましくは0.0010%以上のREMを含有させる。一方、0.0050%を超えてREMを含有させると、効果が飽和することから、REM含有量の上限は0.0050%、好ましくは0.0040%とする。
本発明により製造される耐摩耗鋼において、上記元素以外の残部はFe及び不純物からなる。ここで「不純物」とは、耐摩耗鋼を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料をはじめとして、製造工程の種々の要因によって混入する元素であって、本発明により製造される耐摩耗鋼に対して意図的に添加した元素ではないものを意味する。また、「不純物」とは、上で説明した成分以外の元素であって、当該元素特有の作用効果が本発明に係る耐摩耗鋼の特性に影響しないレベルで当該耐摩耗鋼中に含まれる元素をも包含するものである。
熱間圧延を行う前に上記組成を有する鋼片を1000〜1350℃に加熱する。鋼片の加熱温度が1000℃未満であると、合金元素を十分に固溶できなくなる場合があるので、下限を1000℃とする。鋼片の加熱温度の下限は、好ましくは1050℃、より好ましくは1100℃とする。一方、鋼片の加熱温度が1350℃よりも高温になると、素材である鋼片の表面のスケールが液体化して製造に支障が出るため、上限は1350℃とする。鋼片の加熱温度の上限は、好ましくは1300℃、より好ましくは1250℃とする。加熱時間は、限定されないが、例えば、30分間〜600分間としてもよい。
尚、この加熱を行う前に、合金元素の固溶や偏析の低減を目的とした1100℃以上、1350℃以下の加熱を適用しても良い。
(熱間圧延工程)
本発明では、熱間圧延後の旧オーステナイト粒の細粒化と扁平化により、再加熱時のオーステナイト核生成の密度を上げるために、加熱された鋼片を、1000℃以下、825℃超において20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは35%以上の圧下率で熱間圧延を行う。この圧下率が20%を下回ると、熱間圧延後の旧オーステナイト粒の微細化が不十分になり靭性が低下する場合がある。なお、再加熱焼入れ時の過度なオーステナイト粒径の微細化による焼入れ性の低下を防ぐため、1000℃以下、825℃超における圧下率の上限は75%以下とすることが好ましい。また、熱間圧延後及び冷却後に圧下歪を残して、再加熱時のオーステナイト核生成の密度を上げるために、さらに825℃以下、730℃以上(すなわち825℃〜熱間圧延終了時の温度まで)において10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上の圧下率で熱間圧延を行う。この圧下率が10%を下回ると、熱間圧延後の旧オーステナイト粒の微細化が不十分になり靭性が低下する場合がある。なお、再加熱焼入れ時の過度なオーステナイト粒径の微細化による焼入れ性の低下を防ぐため、825℃以下、730℃以上における圧下率の上限は80%とすることが好ましい。さらに、この熱間圧延での圧延温度が730℃未満になる、すなわち熱間圧延終了時の温度が730℃未満になると生産性が低下する場合がある。
(冷却工程)
次いで、熱間圧延された鋼板を5.0℃/秒以上の平均冷却速度で350℃以下まで冷却する。当該平均冷却速度は、好ましくは6.0℃/秒以上、より好ましくは7.0℃/秒以上である。また、冷却停止温度は、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下である。平均冷却速度が5.0℃/秒未満であると、鋼中の歪量が不十分になるため核生成サイトを十分増加させることができない。また、冷却停止温度が350℃超であっても同じく歪量が不十分になり核生成サイトを十分増加させることができない。5.0℃/秒以上の平均冷却速度で350℃以下まで冷却すれば、熱間圧延工程で鋼中に十分な歪を付与でき核生成サイトを増加させることができる。この結果、次工程である再加熱・焼入れ工程の再加熱の際に、オーステナイトへ逆変態したオーステナイト粒を細粒化することができる。本発明に係る耐摩耗鋼の製造方法では、5.0℃/秒以上の平均冷却速度は、典型的に水冷により達成することができ、放冷では当該平均冷却速度を達成するのは困難である。
(再加熱・焼入れ工程)
次に、熱間圧延後に冷却した鋼板を、860℃以上の温度に再加熱して、その後加速冷却することで焼入れする。再加熱温度が860℃未満となると、合金元素の固溶が不十分になり、かつオーステナイト逆変態が100%完了せず焼入れ性が低下する可能性があるので、再加熱温度の下限は860℃とする。再加熱温度は、好ましくは880℃以上、より好ましくは900℃以上である。再加熱温度が高過ぎると、オーステナイト粒の粗大化により焼入れ後の靭性が低下する可能性があるので、再加熱温度の上限は930℃以下が好ましい。焼入れの際の平均冷却速度は5.0℃/秒以上で行うことが、硬度と靭性を確保する上で好ましい。
本発明に係る耐摩耗鋼の製造方法において得られる耐摩耗鋼の板厚は、特に限定されない。例えば、板厚は、15mm以上、20mm以上、30mm以上、又は40mm以上であり、100mm以下、90mm以下、80mm以下、又は70mm以下であってもよい。本発明によれば、熱間圧延時の温度と圧下率を制御し、圧延後の平均冷却速度を高め、さらに再加熱焼入れの温度を制御することで、板厚にかかわらず、旧オーステナイト粒を適切に微細化し十分な焼入れ性を確保することができる。より具体的には、熱間圧延時の温度と圧下率を制御して熱間圧延を行い、5.0℃/秒以上の平均冷却速度で冷却後、860℃以上の温度で再加熱することで、オーステナイト逆変態の核生成サイトを顕著に増加させることができる。その結果、オーステナイトへの逆変態が完了した後に、鋼材の内部における旧オーステナイト粒をより微細化することが可能となる。この効果は、鋼板の板厚に関係なく得ることができ、例えば従来では難しかった板厚が大きい場合(例えば15mm以上。特に、40mm以上)でも適用できる。耐摩耗鋼の形状を特に限定する必要はないが、鋼板としてもよい。
以上の条件で熱間圧延、冷却及び再加熱焼入れされて製造された耐摩耗鋼は、優れた硬度及び低温靭性を有する。具体的には、そのような耐摩耗鋼は、表層のブリネル硬さが360〜500となり、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが150J以上となる。また、本発明に係る耐摩耗鋼の製造方法は、高度な製鋼技術を必要とせず、製造負荷低減、工期の短縮を図ることができる。したがって、経済性を損なうことなく、建設機械の信頼性を向上させることができる等、産業上の貢献が極めて顕著である。
[耐摩耗鋼の物性]
次に、本発明の製造方法により製造される耐摩耗鋼の組織分率及び旧オーステナイト平均結晶粒径について説明する。通常、板厚の厚い鋼材(鋼板)では、その鋼材の板厚方向における平均的な特性が現れる鋼材の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置において物性評価がされることが多い。再加熱焼入れ時の平均冷却速度は、鋼板の表層の方が鋼板の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置より速いため、表層におけるマルテンサイトと下部ベイナイトの合計の面積分率は、鋼材の表面から厚さ方向に1/4の位置におけるそれらの面積分率よりも高くなる傾向にある。したがって、表層における靭性は、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置の靭性より向上する傾向であるため、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における靭性が高ければ、表層における靭性に関して、製品の使用上は問題ない。同様に、表層におけるマルテンサイトと下部ベイナイトの合計の面積分率は、鋼材の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置におけるそれらの面積分率よりも高いため、表層は硬さがより高くなる傾向にある。したがって、鋼材の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における組織の50面積%以上がマルテンサイト及び下部ベイナイトの1種又は2種であれば、本発明により製造される耐摩耗鋼において所望の表層のブリネル硬さが担保される。
(組織分率)
本発明により製造される耐摩耗鋼は、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における組織の50面積%以上、好ましくは60面積%以上、より好ましくは70面積%以上、さらに好ましくは80面積%以上がマルテンサイト及び下部ベイナイトの1種又は2種となる。マルテンサイトと下部ベイナイトの組織分率の合計が50面積%未満となると、靭性が低下する。また、マルテンサイトと下部ベイナイトの組織分率の合計の上限は、特に限定されず、100面積%以下であればよい。その組織分率の決定は、鋼板の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置から採取した鋼片をナイタール溶液で腐食させて電子顕微鏡で観察することにより行われる。具体的には、腐食させた鋼片を電子顕微鏡で撮影した画像に、10μm間隔で縦横に20本×20本の直線を引き、その格子点の位置の組織がマルテンサイト、下部ベイナイト、又は上部ベイナイトであるかどうかを判定し、次いで、その判定の結果から、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置におけるマルテンサイトと下部ベイナイトの合計の面積分率(面積%)を算出する。ここで、本明細書において、「上部ベイナイト」は、セメンタイトがラスの界面(ラス間)に存在しているもの、「下部ベイナイト」は、セメンタイトがラスの内部に存在しているものをいう。ラスとは、マルテンサイト変態またはベイナイト変態により旧オーステナイト粒界内に生成される金属組織をいう。
(旧オーステナイト平均結晶粒径)
本発明の製造方法により製造される耐摩耗鋼は、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における旧オーステナイト平均結晶粒径が5μm以上、15μm以下となる。当該旧オーステナイト平均結晶粒径の上限は、好ましくは14μm、より好ましくは13μm以下である。旧オーステナイト平均結晶粒径が15μmを超えると、靭性が低下する。また、旧オーステナイト平均結晶粒径が5μm未満となると、焼入れ性が低下して強度を担保できなくなる。その組織における旧オーステナイト平均結晶粒径の決定には切断法(JIS G0551:2013)を採用する。具体的には、まず、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置から採取した鋼片をピクリン酸溶液で腐食することで旧オーステナイト粒界を現出させ、光学顕微鏡で撮影する。次いで、撮影した画像に、2mm〜10mmの長さの直線(複数に分割されていても良い)を引き、直線が分断する結晶粒界の数を数えることで、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における旧オーステナイト平均結晶粒径を算出する。
(表層のブリネル硬さ)
鋼の硬度は表層のブリネル硬さで示され、本発明により製造される耐摩耗鋼の表層のブリネル硬さは360〜500の範囲に含まれる。「表層のブリネル硬さ」とは、鋼材表面から厚さ方向に1mmの位置で測定した3点のブリネル硬さの平均値である。ブリネル硬さの測定は、JIS Z2243:2008に準拠し、圧子の直径10mmの超硬合金球を用いて3000kgfの試験力で行う(HBW10/3000)。本発明に係る耐摩耗鋼の製造方法において、ブリネル硬さの下限は、好ましくは370以上、より好ましくは380以上、さらに好ましくは390以上、最も好ましくは400以上である。また、ブリネル硬さの上限は、例えば、480、460又は450であってもよい。
(−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー)
鋼の靭性は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーで示すことができる。例えば、−40℃でのシャルピー衝撃試験で評価した場合は、本発明により製造される耐摩耗鋼の吸収エネルギーは150J以上、好ましくは160J以上、より好ましくは170J以上、さらに好ましくは180J以上である。シャルピー衝撃試験はJIS Z2242:2005に準拠し、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置から採取したシャルピー試験片を使用して、低温靭性を評価するために−40℃で実施する。
本発明により製造される耐摩耗鋼、すなわち、上述の組成を有し、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における組織の50面積%以上がマルテンサイト及び下部ベイナイトの1種又は2種であり、かつ表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における旧オーステナイト平均結晶粒径が5μm以上、15μm以下である耐摩耗鋼は、150J以上の、−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーを有する。また、厚さの1/4の位置におけるマルテンサイトと下部ベイナイトの組織分率が50面積%以上であるため、再加熱焼入れ時の平均冷却速度の速い表層では360〜500のブリネル硬さを有する。
表1に示す組成を有する鋼を溶製し、連続鋳造により、厚みが240〜300mmの鋼片を製造した。鋼の溶製は転炉で行い、一次脱酸し、合金元素を添加して組成を調整し、必要に応じて、真空脱ガス処理を行った。このようにして得られた鋼片を加熱し、熱間圧延を行い、冷却した後に再加熱焼入れを行い、鋼試料を製造した。表1に示した各元素の含有量は、製造後の鋼から採取した試料を化学分析して求めたものである。
Figure 2021172875
製造の際の鋼片の加熱温度、熱間圧延等の製造条件、製造した試料の表層のブリネル硬さ、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置におけるマルテンサイト又は下部ベイナイトの組織分率、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における旧オーステナイト平均結晶粒径、及び表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーの値を、それぞれ表1に示す。
表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における組織のマルテンサイト又は下部ベイナイトの組織分率は、上述したように、鋼片をナイタール溶液で腐食して電子顕微鏡で観察することにより判定することができる。具体的には、電子顕微鏡で撮影した画像に、10μm間隔で縦横に20本×20本の直線を引き、その格子点の位置の組織がマルテンサイト、下部ベイナイト、又は上部ベイナイトであるかどうかを判定し、マルテンサイトと下部ベイナイトの合計分率を面積%で算出した。上部ベイナイトは、セメンタイトがラスの界面(ラス間)に存在しているもの、下部ベイナイトは、セメンタイトがラスの内部に存在しているものとしてそれぞれの面積率を算出した。
表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における旧オーステナイト平均結晶粒径は、上述したように、鋼片をピクリン酸溶液で腐食することで旧オーステナイト粒界を現出させ、光学顕微鏡で撮影した画像に、2mm〜10mmの長さの直線(複数に分割されていても良い)を引き、直線が分断する結晶粒界の数を数えることで旧オーステナイト平均結晶粒径を算出した。
シャルピー衝撃試験は、JIS Z2242:2005に準拠し、−40℃で行った。ブリネル硬さの測定は、JIS Z2243:2008に準拠し、圧子の直径10mmの超硬合金球を用いて3000kgfの試験力で行った(HBW10/3000)。
本発明の製造方法により製造される耐摩耗鋼の硬度及び靭性の目標値は、表層のブリネル硬さが360〜500、−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが150J以上である。
Figure 2021172875
表2に示すように、本発明例である製造No.1〜4、No.6〜8、No.10〜11、No.14〜15、No.17〜18、No.21〜27は、組成、加熱温度、1000℃以下、825℃超での熱間圧延での圧下率、825℃以下、730℃以上での熱間圧延での圧下率、平均冷却速度、冷却停止温度及び再加熱温度が本発明の範囲を満たしていた。その結果として、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置のマルテンサイト又は下部ベイナイトの組織分率が50面積%以上、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置の旧オーステナイト平均結晶粒径が15μm以下であり、したがって、表層のブリネル硬さが本発明の目標値である360〜500の範囲内であり、−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが本発明の目標値である150J以上を満たしていた。
一方、表2の製造No.5、No.9、No.12、No.13、No.16、No.19〜20、及びNo.28〜46は、表層のブリネル硬さ、−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーのいずれか又は両方が、上記の目標を満たさなかった。
製造No.5は圧延後の水冷が無く放冷であったため、平均冷却速度が遅く、旧γ粒径が大きくなっている。その結果、−40℃でのシャルピー吸収エネルギーが98Jと、本発明の目標値より低くなっている。製造No.9も、圧延後の平均冷却速度が遅いので、旧γ粒径が大きなっており、その結果、−40℃でのシャルピー吸収エネルギーが97Jと、本発明の目標値より低い値になっている。
製造No.12は、1000℃以下、825℃超での圧下率が低かったため、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置の旧オーステナイト平均結晶粒径が15μmを超え、それによって−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標を満足しなかった例である。
製造No.13は、825℃以下、730℃以上での圧下率が低かったため、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置の旧オーステナイト平均結晶粒径が15μmを超え、それによって−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標を満足しなかった例である。
製造No.16は、再加熱温度が860℃未満であったため、焼入れ性が低下し、マルテンサイト又は下部ベイナイトの組織分率が50面積%未満となり、さらに、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置の旧オーステナイト平均結晶粒径が15μmを超え、それによって、表層のブリネル硬さ及び−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標を満足しなかった例である。
製造No.19は、圧延後の平均冷却速度が遅かったため、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置の旧オーステナイト平均結晶粒径が15μmを超え、それによって−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標を満足しなかった例である。
製造No.20は、冷却停止温度が高かったため、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置の旧オーステナイト平均結晶粒径が15μmを超え、それによって−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標を満足しなかった例である。
製造No.28はC含有量が少なく、表層のブリネル硬さが目標に満たなかった例である。また、製造No.29はC含有量が多く、表層のブリネル硬さ及び−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標値に達しなかった例である。製造No.30はSi含有量が多く、製造No.32はMn含有量が多く、製造No.33はP含有量が多く、製造No.34はS含有量が多く、製造No.36はCu含有量が多く、製造No.39はCr含有量が多く、製造No.40はMo含有量が多く、製造No.41はV含有量が多く、製造No.42はNb含有量が多く、製造No.43はTi含有量が多く、製造No.44はAl含有量が多く、製造No.45はN含有量が多く、製造No.46はB含有量が多かったため、いずれの鋼試料においても、−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標値に達しなかった例である。製造No.31はMn含有量が少なく、製造No.35はCu含有量が少なく、製造No.37はNi含有量が少なく、製造No.38はCr含有量が少なかったため、いずれの鋼試料においても、表層のブリネル硬さが目標値に達しなかった例である。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.10〜0.30%、
    Si:0.01〜1.20%、
    Mn:0.01〜2.00%、
    P:0.017%未満、
    S:0.010%以下、
    Ni:0.01〜1.00%、
    Cu:0.01〜0.70%、
    Cr:0.30〜1.50%、
    Al:0.001〜0.100%、
    Ti:0.001〜0.030%、及び
    N:0.0001〜0.0070%
    を含有し、残部がFe及び不純物からなる組成を有する鋼片を1000〜1350℃に加熱する工程、
    加熱された鋼片を、1000℃以下、825℃超において20%以上の圧下率で、次いで825℃以下、730℃以上において10%以上の圧下率で熱間圧延する工程、
    熱間圧延された鋼板を5.0℃/秒以上の平均冷却速度で350℃以下まで冷却する工程、及び
    冷却した鋼板を860℃以上に再加熱し、その後焼入れする工程
    を含むことを特徴とする、耐摩耗鋼の製造方法。
  2. 前記鋼片が、さらに、質量%で、
    Mo:0.80%以下、
    B:0.0030%以下、
    Nb:0.050%以下、
    V:0.20%以下、
    W:0.50%以下、及び
    Zr:0.0050%以下、
    のうち、1種又は2種以上を含有する組成を有することを特徴とする、
    請求項1に記載の耐摩耗鋼の製造方法。
  3. 前記鋼片が、さらに、質量%で、
    Ca:0.0050%以下、
    Mg:0.0050%以下、及び
    REM:0.0050%以下
    のうち、1種又は2種以上を含有する組成を有することを特徴とする、
    請求項1または請求項2に記載の耐摩耗鋼の製造方法。
JP2020080492A 2020-04-30 2020-04-30 耐摩耗鋼の製造方法 Pending JP2021172875A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020080492A JP2021172875A (ja) 2020-04-30 2020-04-30 耐摩耗鋼の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020080492A JP2021172875A (ja) 2020-04-30 2020-04-30 耐摩耗鋼の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021172875A true JP2021172875A (ja) 2021-11-01

Family

ID=78278996

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020080492A Pending JP2021172875A (ja) 2020-04-30 2020-04-30 耐摩耗鋼の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021172875A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7093804B2 (ja) 耐摩耗鋼
CN112752861B (zh) 具有优异的硬度和冲击韧性的耐磨钢及其制造方法
JP4572002B1 (ja) 強度、延性の良好なラインパイプ用鋼板およびその製造方法
JP5124988B2 (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた引張強度900MPa以上の高張力鋼板およびその製造方法
JP5476763B2 (ja) 延性に優れた高張力鋼板及びその製造方法
WO2009154235A1 (ja) 熱処理用鋼
JP5439973B2 (ja) 優れた生産性と溶接性を兼ね備えた、pwht後の落重特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP2020504240A (ja) 高硬度耐摩耗鋼及びその製造方法
JPWO2010032428A1 (ja) 高強度厚鋼板およびその製造方法
WO2012060405A1 (ja) 高強度鋼板及びその製造方法
JP7471417B2 (ja) 低温衝撃靭性に優れた高硬度耐摩耗鋼及びその製造方法
JP2012122111A (ja) 優れた生産性と溶接性を兼ね備えた、PWHT後の落重特性に優れたTMCP−Temper型高強度厚鋼板の製造方法
WO2021054015A1 (ja) 耐摩耗鋼板およびその製造方法
JP4379085B2 (ja) 高強度高靭性厚鋼板の製造方法
JP4396851B2 (ja) 冷間加工後の塑性変形能に優れた高張力鋼およびその製造方法
JP6988836B2 (ja) 超低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法
JP2005256037A (ja) 高強度高靭性厚鋼板の製造方法
JP2023045253A (ja) 鋼板およびその製造方法
JP2021172875A (ja) 耐摩耗鋼の製造方法
JP2016180163A (ja) 溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力鋼板
JP7315874B2 (ja) 厚鋼板
WO2022149365A1 (ja) 鋼矢板およびその製造方法
JP3956634B2 (ja) 強靭性に優れた鋼板およびその製造方法
JP6519025B2 (ja) 油井用低合金高強度継目無鋼管
JP2023031269A (ja) 超低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221205

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20231228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240116

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240307