JP2023045253A - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄肉材、厚肉材問わず、降伏比85%以下の低降伏比を安定して確保でき、かつ高強度、高靭性および優れた溶接性を兼ね備えた鋼板およびその製造方法を提供すること。【解決手段】C、Si、Mn、P、S、Al、およびNを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、ベイナイトの面積分率が80%以上、島状マルテンサイトの面積分率が1.0~20%、かつ前記島状マルテンサイトの平均円相当径が0.1~5.0μmであるミクロ組織を有する、鋼板。ただし、上記ミクロ組織は島状マルテンサイト以外のマルテンサイトを含まない。【選択図】なし

Description

本開示は、鋼板およびその製造方法に関する。
近年、建築構造物の高層化、大スパン化に伴い、使用される鋼材の厚肉化、高強度化が要望されている。鋼構造物の安全性の観点からは、高い許容応力を有するとともに、降伏比(引張強さに対する降伏強さの比)を低減することが要求されている。また溶接構造物でもある建築物の溶接部における安全性を確保するため、溶接熱影響部の硬さを低減するなど、高い溶接性も要求される。
降伏比を低減すると、降伏点以上の応力が付加されても破壊までに許容される応力が大きくなり、また、一様伸びが大きくなるため、塑性変形能に優れた鋼材となる。そのため、従来よりも降伏比を低減できれば、より変形能に優れた鋼材が得られる。
従来、低降伏比高張力厚鋼板の製造プロセスとしては、フェライト+オーステナイト2相域への再加熱焼入れ後、焼き戻しを行う多段熱処理が一般的である。しかしながら、前記多段熱処理によって得られる厚鋼板のミクロ組織は、主相としてのフェライト相に硬質第2相としてのベイナイトまたはマルテンサイトが分散したものであるため、フェライト相の体積分率によっては、980MPa以上の引張強さを安定して達成することが困難である。さらには、焼き戻し工程によって降伏点が上昇してしまい、高強度鋼ほど低降伏比を安定的に得ることが困難である。
また、980MPa以上の引張強さを達成するために、合金元素を多量に添加する必要がある。しかしながら、合金元素を多量に添加すると、溶接熱影響部の硬さも上昇してしまう。すなわち、低降伏比、高強度および優れた溶接性を兼ね備える鋼板を製造することは困難である。
特許文献1には、熱間圧延後の鋼板を焼入れした後、再度フェライト+オーステナイトの2相域まで加熱して焼戻しを行うことにより、高強度化と降伏比(YR):85%以下の低降伏比化を達成することが記載されている。
特許文献2には、圧延後、直ちに焼入れする直接焼入れ法により、焼入れ後のミクロ組織をベイナイト相あるいはマルテンサイト相とした後、再度フェライト+オーステナイトの2相域まで加熱して焼ならしを行うことにより、高強度化と低降伏比化を達成することが記載されている。
特許文献3には、圧延後、一定時間経過し、フェライトを析出させた後、焼入れを行う直接焼入れ法により、フェライト相+マルテンサイト相の2相組織とし、高強度化と低降伏比化を達成することが記載されている。
特開平06-248337号公報 特開平05-230530号公報 特開平07-097626号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、降伏比の低減に有効な硬質相が焼き戻しで分解されてしまい、低降伏比と高い引張強さとを安定して得ることが難しい。特許文献2、3に記載された技術では鋼板の急速加熱が必要であり、熱処理操業の負荷が大きく、特に厚肉材の製造が難しい。
本開示は、かかる事情に鑑み、薄肉材、厚肉材問わず、降伏比85%以下の低降伏比を安定して確保でき、かつ高強度、高靭性および優れた溶接性を兼ね備えた鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
なお、本願において、「溶接性」に優れるとは、溶接熱影響部の硬さが低減されていること、具体的にはビード長125mmにおける溶接条件下での溶接熱影響部の最高硬さが350以下であることを意味する。
本発明者らは、上記課題を達成するために、鋭意研究を行い、以下の知見を得た。
(1)従来プロセスでは、2相域加熱焼入れ後、終工程として靱性改善を目的とした焼き戻し処理が行われる。その結果、低降伏比を達成するために有効な島状マルテンサイト(MA)が分解してしまい、降伏強さ(YP)の上昇を抑制できる可動転位が減少し、低降伏比を達成することができない。
(2)従来の2相域再加熱後の焼入れまたは焼入れの途中停止、焼ならし工程に代えて、Ac点以上(Ac+100℃)未満の再加熱温度まで再加熱し、ベイナイト変態開始温度未満である加速冷却停止温度まで加速冷却し、次いで空冷してミクロ組織をベイナイト+島状マルテンサイトとすることで、軟質相であるフェライトの生成も抑制し、合金成分の含有量が低くても、高強度、低降伏比と溶接熱影響部の硬さ低減とを達成することができる。
本開示は、上記知見を元に、さらに検討を加えて完成されたものである。本開示の要旨は次のとおりである。
[1] 質量%で、
C :0.03~0.08%、
Si:0.01~0.50%、
Mn:0.4~5.0%、
P :0.015%以下、
S :0.0050%以下、
Al:0.005~0.1%、および
N :0.0015~0.0065%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
ベイナイトの面積分率が80%以上、
島状マルテンサイトの面積分率が1.0~20%、かつ
前記島状マルテンサイトの平均円相当径が0.1~5.0μmであるミクロ組織を有する、鋼板。
ただし、上記ミクロ組織は島状マルテンサイト以外のマルテンサイトを含まない。
[2] 前記成分組成が、質量%で、
Ti:0.03%、
Cu:1.0%以下、
Ni:3.0%以下、
Cr:3.0%以下、
Mo:1.0%以下、
B :0.005%以下、
Nb:0.1%以下、および
V :0.2%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、[1]に記載の鋼板。
[3] 前記成分組成が、質量%で、
Ca:0.005%以下、
REM:0.02%以下、および
Mg:0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、[1]または[2]に記載の鋼板。
[4] 引張強さが980MPa以上、降伏比が85%以下であり、ビード長125mmにおける溶接条件下での溶接熱影響部の最高硬さが350以下である、[1]~[3]のいずれか一に記載の鋼板。
[5] 質量%で、
C :0.03~0.08%、
Si:0.01~0.50%、
Mn:0.4~5.0%、
P :0.015%以下、
S :0.0050%以下、
Al:0.005~0.1%、および
N :0.0015~0.0065%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して熱延板とする熱間圧延工程と、
前記熱延板をAc点以上、(Ac点+100℃)未満の再加熱温度域まで再加熱し、前記再加熱温度域にて10分以上保持する再加熱工程と、
前記再加熱工程後の熱延板を、板厚1/4位置における前記再加熱温度域からベイナイト変態開始温度までの平均冷却速度を1~200℃/sとして、200℃以上、前記ベイナイト変態開始温度未満の加速冷却停止温度まで加速冷却して鋼板を得る、冷却工程とを有する、鋼板の製造方法。
[6] 前記成分組成が、質量%で、
Ti:0.004~0.03%、
Cu:1.0%以下、
Ni:3.0%以下、
Cr:3.0%以下、
Mo:1.0%以下、
B :0.005%以下、
Nb:0.1%以下、および
V :0.2%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、[5]に記載の鋼板の製造方法。
[7] 前記成分組成が、質量%で、
Ca:0.005%以下、
REM:0.02%以下、および
Mg:0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、[5]または[6]に記載の鋼板の製造方法。
本開示によれば、薄肉材、厚肉材問わず、降伏比85%以下の低降伏比を安定して確保でき、かつ高強度、高靭性および優れた溶接性を兼ね備えた鋼板およびその製造方法を提供することができる。
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明は、本開示の好適な一実施態様を示すものであり、本開示は、以下の説明によって何ら限定されるものではない。
まず、鋼板の成分組成の適正範囲およびその限定理由について説明する。なお、以下の説明において、鋼板の成分元素の含有量を表す「%」は、特に明記しない限り「質量%」を意味する。また本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
C:0.03~0.08%
Cは、鋼の強度を増加させ、構造用鋼材として必要な強度を確保する効果を有する元素である。前記効果に加え、島状マルテンサイトを生成するために、C含有量を0.03%以上とする。一方、C含有量が0.08%を超えると、溶接熱影響部の硬さが上昇し、また靭性が劣化する。そのため、C含有量を0.08%以下とする。C含有量は、好ましくは0.05%以上とする。また、C含有量は、好ましくは0.07%以下、より好ましくは0.06%以下とする。
Si:0.01~0.50%
Siは、脱酸剤として機能するとともに、母材強度を高める効果を有する元素である。前記効果を得るために、Si含有量を0.01%以上とする。一方、Si含有量が0.50%を超えると、島状マルテンサイトの生成が促進され、靭性や溶接性の低下が顕在化する。そのため、Si含有量を0.50%以下とする。Si含有量は0.35%以下とすることが好ましく、0.20%以下とすることがより好ましい。また、Si含有量は0.02%以上とすることが好ましく、0.10%以上とすることがより好ましい。
Mn:0.4~5.0%
Mnは、鋼の強度を増加させる効果を有する元素である。前記効果に加え、島状マルテンサイトを生成するために、Mn含有量を0.4%以上とする必要がある。Mn含有量は0.8%以上とすることが好ましい。一方、Mn含有量が5.0%を超えると、島状マルテンサイトが過剰に生成し、母材の靭性が著しく劣化する。そのため、Mn含有量は5.0%以下とする。Mn含有量は4.0%以下とすることが好ましく、2.8%以下とすることがより好ましい。また、Mn含有量は1.0%以上とすることが好ましく、1.5%以上とすることがより好ましい。
P:0.015%以下
Pは、母材の低温靭性を劣化させる元素であり、できるだけ低減することが望ましい。そのため、母材靭性向上のためにはPを低減することが望ましい。よって、P含有量は0.015%以下とする。P含有量の下限は特に限定されず、0%であってもよいが、生産技術上の観点から、0.004%以上とすることが好ましい。P含有量は、0.010%以下とすることが好ましい。
S:0.0050%以下
Sは、母材の低温靭性を劣化させる元素であり、できるだけ低減することが望ましい。S含有量が0.0050%を超えて含有すると、前記低温靭性の劣化が顕著となるため、S含有量は0.0050%以下とする。S含有量の下限は特に限定されず、0%であってもよいが、生産技術上の観点から、0.001%以上とすることが好ましい。S含有量は、0.0040%以下とすることが好ましい。
Al:0.005~0.1%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスにおいて、もっとも汎用的に使われる。また、Alは、鋼中のNをAlNとして固定し、母材の靭性向上に寄与する。前記効果を得るために、Al含有量を0.005%以上とする。Al含有量は、0.010%以上とすることが好ましい。一方、Al含有量が0.1%を超えると、母材の靭性が低下する。そのため、Al含有量は0.1%以下とする。Al含有量は0.07%以下とすることが好ましい。
N:0.0015~0.0065%
Nは、AlやTiと結合して炭窒化物を析出形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑制して母材靱性を向上させる。その効果を得るために、N含有量は0.0015%以上とする。N含有量は、0.0030%以上とすることが好ましい。一方、N含有量が0.0065%を超えると、固溶N量の増加により、母材および溶接部靭性が著しく低下する。そのため、N含有量は0.0065%以下とする。N含有量は0.0060%以下とすることが好ましい。
本開示の一実施形態において、鋼板は、上記の元素と、残部のFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するものとすることができる。
また、本開示の他の実施形態においては、上記成分組成が、任意に、Ti、Cu、Ni、Cr、Mo、B、Nb、およびVからなる群より選択される1または2以上をさらに含有することができる。
Ti:0.03%
Tiは、Nとの親和力が強く、凝固時にTiNとして析出する。高温でも安定なTiNのピンニング効果により、溶接熱影響部でのオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制することで、溶接熱影響部の靭性を向上させることができる。前記効果を得るために、Tiを添加する場合、Ti含有量を0.004%以上とすることが好ましい。Ti含有量は0.006%以上とすることが好ましい。一方、Ti含有量が0.03%を超えると、TiN粒子が粗大化し、オーステナイト粒の粗大化抑制効果が飽和する。そのため、Ti含有量は0.03%以下とする。Ti含有量は0.025%以下とすることが好ましい。
Cu:1.0%以下
Cuは、高靭性を保ちつつ強度を増加させることが可能な元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Cu含有量が1.0%を超えると熱間脆性を生じて鋼板の表面性状が劣化する。そのため、Cuを含有する場合、Cu含有量は1.0%以下とする。Cu含有量は0.7%以下とすることが好ましい。一方、Cu含有量の下限は特に限定されないが、前記効果を十分に得るためには、Cu含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.10%以上とすることがより好ましく、0.20%以上とすることがさらに好ましい。
Ni:3.0%以下
Niは、Cuと同様、高靭性を保ちつつ強度を増加させることが可能な元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Ni含有量が3.0%を超えると、添加効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利になる。そのため、Niを含有する場合、Ni含有量を3.0%以下とする。Ni含有量は1.7%以下とすることが好ましい。一方、Ni含有量の下限は特に限定されないが、前記効果を十分に得るためには、Ni含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.10%以上とすることがより好ましく、0.20%以上とすることがさらに好ましい。
Cr:3.0%以下
Crは、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Cr含有量が3.0%を超えると靭性が劣化するため、Crを含有する場合、Cr含有量を3.0%以下とする。一方、Cr含有量の下限は特に限定されないが、Crによる強度向上効果を十分に得るという観点からは、Cr含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
Mo:1.0%以下
Moは、Crと同様、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Mo含有量が1.0%を超えると靭性が劣化するため、Moを含有する場合、Mo含有量を1.0%以下とする。一方、Mo含有量の下限は特に限定されないが、Moによる強度向上効果を十分に得るという観点からは、Mo含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
B:0.005%以下
Bは、焼入れ性を向上させることにより、鋼の強度を向上させる作用を有する元素である。しかしB含有量が0.005%を超えると、焼入れ性が過度に高くなり、母材の靭性および延性が低下する。そのため、Bを含有する場合、B含有量を0.005%以下とする。B含有量は0.0020%以下とすることが好ましい。一方、B含有量の下限は特に限定されないが、Bの添加効果を十分に得るという観点からは、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
Nb:0.1%以下
Nbは、Cr、Moと同様、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Nb含有量が0.1%を超えると母材靭性が劣化するため、Nbを含有する場合、Nb含有量を0.1%以下とする。一方、Nb含有量の下限は特に限定されないが、Nbによる強度向上効果を十分に得るという観点からは、Nb含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
V:0.2%以下
Vは、Cr、Mo、Nbと同様、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、V含有量が0.2%を超えると靭性が劣化するため、Vを含有する場合、V含有量を0.2%以下とする。一方、V含有量の下限は特に限定されないが、Vによる強度向上効果を十分に得るという観点からは、V含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
また、本開示の他の実施形態においては、上記成分組成が、任意に、Ca、REM、およびMgからなる群より選択される1または2以上をさらに含有することができる。
Ca:0.005%以下
Caは、結晶粒を微細化することによって靭性を向上させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に含有できる。しかし、Ca含有量が0.005%を超えると、添加効果が飽和するため、Caを含有する場合、Ca含有量を0.005%以下とする。一方、Ca含有量の下限は特に限定されないが、Caによる靭性向上効果を十分に得るという観点からは、Ca含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
REM:0.02%以下
REM(希土類金属)は、Caと同様に靭性向上効果を有しており、所望する特性に応じて任意に含有できる。しかし、REM含有量が0.02%を超えると、添加効果が飽和するため、REMを含有する場合、REM含有量を0.02%以下とする。一方、REM含有量の下限は特に限定されないが、REMによる靭性向上効果を十分に得るという観点からは、REM含有量を0.002%以上とすることが好ましい。
Mg:0.005%以下
Mgは、Caと同様に結晶粒を微細化することによって靭性を向上させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に含有できる。しかし、Mg含有量が0.005%を超えると、添加効果が飽和するため、Mgを含有する場合、Mg含有量を0.005%以下とする。一方、Mg含有量の下限は特に限定されないが、Mgによる靭性向上効果を十分に得るという観点からは、Mg含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
なお、上記任意成分について、含有量が下限値未満の場合には本開示の効果を害さないため、これら任意元素を下限値未満含む場合は、これらの任意元素を不可避的不純物として含むものとする。
[ミクロ組織]
次に、鋼板のミクロ組織について説明する。
本開示の鋼板は、下記の条件をすべて満たすミクロ組織を有する。
・ベイナイトの面積分率が80%以上
・島状マルテンサイトの面積分率が1.0~20%
・島状マルテンサイトの平均円相当径が0.1~5.0μm
以下、ミクロ組織を上記の範囲に限定する理由について説明する。なお、以下の説明における「面積分率」とは、特に断らない限り、ミクロ組織全体に対する面積分率を指すものとする。また、上記ミクロ組織は、鋼板の板厚1/4位置におけるミクロ組織を指すものとする。
(ベイナイト)
面積分率:80%以上
本開示では、鋼板のミクロ組織のうち、上記MAを除く母相を、ベイナイト主体とする。強度確保の観点から、ミクロ組織全体に対するベイナイトの面積分率は、80%以上とする。ベイナイトの面積分率の上限は特に限定されないが、島状マルテンサイトの面積分率1%以上を確保するために、ベイナイトの面積分率は99%以下とする。ベイナイトの面積分率は84%以上とすることが好ましい。なお、本開示のミクロ組織においては、ベイナイトに島状マルテンサイトが内包されている。しかしながら、ベイナイトの面積分率を決定する際には、内包されている島状マルテンサイトの面積分率は含めないものとする。
ベイナイトの面積分率は、以下の通り測定する。鋼板の板厚1/4位置が観察位置となるように、組織観察用の試験片を採取する。前記試験片を、圧延方向と平行な断面が観察面となるよう樹脂に埋め、鏡面研磨する。次いで、ナイタール腐食を実施した後、倍率1000倍の走査型電子顕微鏡で観察して組織の画像を撮影する。撮影された5視野分の画像を画像解析装置によって解析し、ベイナイト組織の面積分率を求める。
(島状マルテンサイト)
本開示では、鋼板のミクロ組織が、硬質相第2相として島状マルテンサイト(Martensite―Austenite constituent、以下、単に「MA」という場合がある)を含むことが重要である。次に、この島状マルテンサイトについて説明する。
MAの面積分率:1.0~20%
MAは転位密度が非常に高く、また、Cが濃縮しているため、母相(ベイナイト)と比べて非常に硬い相である。したがって、MAを含むミクロ組織とすることにより、引張強さ(TS)を向上させるとともに、多量に導入された可動転位によって降伏強さ(YP)の上昇を抑制できるため、高強度と低降伏比との両立に有効である。島状マルテンサイト(MA)の面積分率が1.0%未満では、前記のような高強度化と低降伏比化との効果が得られない。そのため、MAの面積分率を1.0%以上とする。MAの面積分率は2%以上とすることが好ましい。一方、MAの面積分率が20%を超えると、母材の靭性が劣化する。そのため、MAの面積分率は20%以下とする。MAの面積分率は16%以下とすることが好ましい。
MAの平均円相当径:0.1~5.0μm
MAの平均円相当径が5.0μm超であると溶接部の靭性が劣化する。そのため、MAの平均円相当径を5.0μm以下とする。一方、MAの平均円相当径の下限は、高強度と低降伏比との両立するために、0.1μm以上とする。
なお、MAの面積分率および平均円相当径は、試料としての鋼板にレペラ腐食(Journal of Metals, March, 1980, p.38―39)を施した後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率2000倍で観察を行い、撮影した画像を、画像解析装置を用いて解析することにより求める。
ミクロ組織は島状マルテンサイト以外のマルテンサイトを含まない。ミクロ組織がマルテンサイトを含まないことで、過剰な合金元素の添加を回避しつつ高い降伏強さと引張強さとを得ることができる。
ミクロ組織が島状マルテンサイト以外のマルテンサイトを含まないことは、板厚1/4位置において、走査型電子顕微鏡で倍率が1000倍の組織の画像を撮影し、撮影された5視野分の画像を画像解析装置によって決定する。
MAの面積分率とベイナイトの面積分率が上記条件を満たしていれば、ミクロ組織がセメンタイトなど他の組織を含有することも許容される。ミクロ組織がセメンタイトを含有する場合、該セメンタイトの面積分率は10%未満とすることが好ましく、5%未満とすることがより好ましい。
[板厚]
本開示の鋼板の板厚は特に限定されず、任意の厚さとすることができるが、6mm以上とすることが好ましく、12mm以上とすることが好ましい。一方、板厚の上限については、100mm以下とすることが好ましい。
[機械的特性]
(降伏強さ)
本開示の鋼板の降伏強さ(YP)は、特に限定されず任意の値とすることができるが、500MPa以上とすることが好ましい。降伏強さは、より好ましくは700MPa以上とする。降伏強さの上限は特に限定されないが、930MPa以下とすることが好ましい。なお、降伏強さは、後述する実施例に記載の方法に従って測定する。
(引張強さ)
本開示の鋼板の引張強さ(TS)は、特に限定されず任意の値とすることができるが、980MPa以上とすることが好ましい。引張強さは、より好ましくは1000MPa以上とする。引張強さの上限は特に限定されないが、好ましくは1130MPa以下とする。なお、引張強さは、後述する実施例に記載の方法に従って測定する。
(降伏比)
本開示の鋼板の降伏比(YR)は、特に限定されず任意の値とすることができるが、85%以下とすることが好ましい。降伏比は、より好ましくは80%以下とする。降伏比の下限は特に限定されないが、好ましくは70%以上とする。なお、ここで降伏比とは、引張強さ(TS)に対する降伏強さ(YP)の比をパーセンテージで表した値、すなわち、YP/TS×100(%)を指す。
(シャルピー吸収エネルギー)
本開示の鋼板の0℃におけるシャルピー吸収エネルギー(vE)は、特に限定されず任意の値とすることができるが、70J以上とすることが好ましい。0℃におけるシャルピー吸収エネルギーは、より好ましくは100J以上とする。0℃におけるシャルピー吸収エネルギーの上限は特に限定されないが、好ましくは400J以下とする。なお、0℃におけるシャルピー吸収エネルギー(vE)は、後述する実施例に記載の方法に従って測定する。
(最高硬さ)
本開示の鋼板のビード長125mmにおける溶接条件下での溶接熱影響部の最高硬さは、特に限定されず任意の値とすることができるが、350以下とすることが好ましい。ビード長125mmにおける溶接条件下での溶接熱影響部の最高硬さは、より好ましくは300以下とする。また、ビード長125mmにおける溶接条件下での溶接熱影響部の最高硬さの下限は特に限定されず、低ければ低いほど好ましいが、一例においては200以上とすることができる。なお、ビード長125mmにおける溶接条件下での溶接熱影響部の最高硬さは、後述する実施例に記載の方法に従って測定する。
[製造方法]
次に、本開示の一実施形態における鋼板の製造方法について説明する。なお、以下の説明においては、特に断らない限り、温度は板厚中央の温度を指すものとする。板厚中央の温度は、放射温度計で測定した鋼板表面温度から、伝熱計算により求めることができる。また、熱間圧延後の冷却条件における温度条件は、板厚1/4位置における温度とし、冷却速度も板厚1/4位置における温度に基づいて算出された平均冷却速度を意味する。
本開示の鋼板の製造方法は、上述した成分組成を有する鋼素材を、熱間圧延して熱延板とする熱間圧延工程と、母材の強度と降伏比を向上させるため、熱延板をAc点以上、(Ac+100℃)未満の再加熱温度域まで再加熱し、前記再加熱温度域に10分以上の保持時間の間保持する再加熱工程と、前記再加熱工程後の熱延板を、板厚1/4位置における前記再加熱温度域からベイナイト変態開始温度までの平均冷却速度:1~200℃/sで、200℃以上、ベイナイト変態開始温度未満の加速冷却停止温度まで加速冷却して鋼板を得る、冷却工程を有する。以下、各工程について具体的に説明する。
(熱間圧延工程)
上述した成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して熱延板とする。前記鋼素材の製造方法は、とくに限定されないが、例えば、上記した組成を有する溶鋼を常法により溶製し、鋳造して製造することができる。前記溶製は、転炉、電気炉、誘導炉等、任意の方法により行うことができる。また、前記鋳造は、生産性の観点から連続鋳造法で行うことが好ましいが、造塊-分解圧延法により行うこともできる。前記鋼素材としては、例えば、鋼スラブを用いることができる。
前記鋼素材は、圧延に先立って加熱される。前記加熱は、鋳造などの方法によって得た鋼素材を一旦冷却した後に行ってもよく、また、得られた鋼素材を冷却することなく直接、前記加熱に供することもできる。なお、本開示においては熱間圧延後の再加熱工程および冷却工程において鋼板のミクロ組織や特性を制御するため、前記加熱温度は特に限定されず、任意の温度とすることができる。前記加熱温度は900℃以上とすることが好ましい。前記加熱温度は900℃以上であれば、鋼素材の変形抵抗を低減することができ、熱間圧延における圧延機への負荷がより低減し、熱間圧延を行うことがより容易となるためである。また、前記加熱温度は1250℃以下とすることが好ましい。前記加熱温度が1250℃以下であれば、鋼の酸化をより抑制することができ、鋼の酸化によるロスをより低減して、歩留まりがより向上するためである。
上記加熱の後、加熱された鋼素材を熱間圧延して熱延板とする。熱延板の最終板厚は特に限定されないが、6mm以上とすることが好ましく、12mm以上とすることがより好ましい。また、熱延板の最終板厚は100mm以下とすることが好ましい。
熱間圧延が終了した後、後述するように再加熱が行われるが、熱間圧延と再加熱工程との間において、熱延板を冷却することもできる。該冷却を行う場合の条件は特に限定されないが、空冷、水冷など、任意の方法で冷却を行うことができる。前記水冷としては、水を用いた任意の冷却方法(例えば、スプレー冷却、ミスト冷却、ラミナー冷却など)を用いることができる。冷却温度は、特に限定されないが、例えば、常温(20℃など)以上、100℃以下とすることができる。
(再加熱工程)
上記熱間圧延によって得られた熱延板の強度と降伏比を向上させるため、再加熱処理を行う。前記再加熱工程においては、Ac点以上、(Ac+100℃)未満の再加熱温度域まで熱延板を加熱した後、前記再加熱温度域にて保持する。
(再加熱温度域:Ac点以上、Ac+100℃未満)
再加熱工程における再加熱温度域がAc点未満であると、組織中に軟質なフェライトが生成し、母材強度が低下する。そのため、再加熱温度域はAc点以上とする。一方、再加熱温度がAc+100℃以上であると、粗大なMAが生成し母材靭性が劣化する。再加熱温度域は、好ましくは、Ac+10℃以上、より好ましくは、Ac+20℃以上とする。再加熱温度域は、好ましくは、Ac+60℃以下、より好ましくは、Ac+50℃以下とする。
なお、Ac点は下記(1)式により求める。
Ac(℃)=937.2-436.5C+56Si-19.7Mn-16.3Cu-26.6Ni -4.9Cr+38.1Mo+124.8V+136.3Ti-19.1Nb+198.4Al+3315B・・・(1)
ただし、上記(1)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、当該元素が含有されていない場合は0とする。
(保持時間:10分以上)
前記再加熱温度域に保持する保持時間は10分以上とする。保持時間が10分未満では、オーステナイト粒径のバラツキが大きくなるからである。保持時間は、好ましくは20分以上とする。一方、前記保持時間の上限は特に限定されないが、過度に長い時間保持を行うと生産性が低下するため、180分以下とすることが好ましい。
前記再加熱には、再加熱温度域と保持時間を上記の通り制御することできるものであれば、任意の加熱方法を用いることができる。加熱方法の一例としては、炉加熱が挙げられる。前記炉加熱には、特に限定されることなく、一般的な熱処理炉を用いることができる。
(加速冷却の平均冷却速度:1~200℃/s)
前記再加熱工程の後、板厚1/4位置における再加熱温度域からのベイナイト変態開始温度間の平均冷却速度:1~200℃/sにて再加熱工程後の熱延板を加速冷却する。上記加速冷却工程における平均冷却速度が1℃/s未満であると、所望の焼入組織、すなわちベイナイトが得られず強度が低下する。そのため、前記平均冷却速度は1℃/s以上とする。一方、平均冷却速度が200℃/sより高いと、鋼板内の各位置における温度制御が困難となり、板幅方向や圧延方向に材質のばらつきが出やすくなり、その結果、引張特性などの材質上のばらつきが生じる。そのため、平均冷却速度を200℃/s以下とする。加速冷却の平均冷却速度は、好ましくは好ましくは3℃/s以上とする。加速冷却の平均冷却速度は、好ましくは50℃/s以下、より好ましくは30℃/s以下とする。
前記加速冷却の方法は特に限定されないが、空冷、水冷など、任意の方法で冷却を行うことができる。前記水冷としては、水を用いた任意の冷却方法(例えば、スプレー冷却、ミスト冷却、ラミナー冷却など)を用いることができる。
(加速冷却停止温度:200℃以上、Bs点未満)
200℃以上、Bs点未満の温度で加速冷却を停止して空冷することで、未変態のオーステナイトを島状マルテンサイトに変態させ、ベイナイトを自己焼き戻しさせる。加速冷却停止温度がBs点以上では、粗大な上部ベイナイトが主体の組織となる。また、過剰な焼戻しや島状マルテンサイトが生成しても大部分が分解したりしてしまうため、所望の強度や低降伏比が得られない。一方、加速冷却停止温度が200℃未満では、島状マルテンサイトが十分に得られず、所望の降伏比が得られない。加速冷却停止温度は、好ましくは、250℃以上、より好ましくは、300℃以上とする。また、加速冷却停止温度は、好ましくは、450℃以下、より好ましくは、400℃以下とする。
なお、Bs点は下記(2)式により求める。
Bs(℃)=830-270C-90Mn-37Ni-70Cr-83Mo・・・(2)
ただし、上記(2)式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を表し、当該元素が含有されていない場合は0とする。
加速冷却停止後の温度域における冷却条件は鋼板の組織等に実質的な影響を与えない。上記加速冷却停止後、例えば空冷を行うことができる。空冷は、特に限定されることなく任意の条件で行うことができるが、一般的には、冷却速度:1℃/s未満で空冷を行うことが好ましい。
なお、上記した条件以外の製造条件は、常法によることができる。
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法によって鋼素材としての鋼スラブ(厚さ:250mm)とした。なお、上述した(1)式よって求めたAc変態点(℃)、(2)式によって求めたBs点を表1に併記する。
前記鋼スラブを1150℃に加熱した後、熱間圧延して熱延板とした。前記熱間圧延における圧延終了温度と最終板厚を表2に示す。
次いで、熱間圧延後の熱延板を、表2に示した方法で100℃まで冷却した。
次いで、前記熱延板に対して、表2に示した条件で再加熱と加速冷却を施し、加速冷却停止後は空冷して鋼板を得た。再加熱処理には熱処理炉を用いた。また、前記空冷における冷却速度は、板厚や加速冷却停止温度にもよるが、0.5~0.01℃/sであった。
上記のようにして得た鋼板のそれぞれについて、ミクロ組織、機械的特性、溶接熱影響部の最高硬さを評価した。前記評価は、以下に述べる方法で行った。結果を表3に示す。
(ミクロ組織)
上述した方法により、ベイナイトの面積分率、及び島状マルテンサイト以外のマルテンサイトの有無を調べた。また、鋼板から、板厚1/4位置が観察位置となるように、組織観察用の試験片を採取した。前記試験片を、圧延方向と垂直な断面が観察面となるよう樹脂に埋め、鏡面研磨した。次いで、レペラ腐食を実施した後、倍率2000倍の走査電子顕微鏡で観察して組織の画像を撮影し、島状マルテンサイト組織を同定した。撮影された5視野分の画像を画像解析装置によって解析し、島状マルテンサイト組織の面積分率、平均円相当径を求めた。
(機械的特性)
前記鋼板の板厚中央(板厚1/4位置)から、JIS4号引張試験片を採取した。前記引張試験片を用い、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施して、鋼板の降伏強さ(YP)、引張強さ(TS)、降伏比(YR)を評価した。
また、前記鋼板の板厚中央(板厚1/4位置)から、JIS Z 2202の規定に準拠してVノッチ試験片を採取した。前記Vノッチ試験片を用い、JIS Z 2242の規定に準拠して0℃におけるシャルピー衝撃試験を実施し、シャルピー吸収エネルギー(vE)を求め、靭性を評価した。
さらに前記鋼板のおもて面または裏面からJIS Z 3101の規定に準拠して最高硬さ試験片を採取した。前記試験片を用い、JIS Z 3101の規定に準拠して、ビード長125mmにおける溶接条件下での溶接熱影響部の最高硬さを評価した。
得られた評価結果を、表3に示す。なお、引張り強さ(TS)が980MPa以上、降伏強さ(YP)が500MPa以上、降伏比(YR)が85%以下、0℃における吸収エネルギー(vE)が70J以上、ビード長125mmにおける溶接条件下での溶接熱影響部の最高硬さ(HV10)が350以下を合格値とした。
Figure 2023045253000001
Figure 2023045253000002
Figure 2023045253000003
以上の結果から分かるように、本開示の条件を満たす鋼板は、いずれも、引張強さ:980MPa以上、降伏強さ:500MPa以上、降伏比:85%以下、0℃での吸収エネルギーvE:70J以上、最高硬さが350以下であり、高強度、低降伏比であるとともに、靭性および溶接性にも優れていた。一方、本開示の条件を満たさない鋼板は、強度、降伏比、靭性、溶接性のうち、少なくとも1つの特性が劣っていた。
[2] 前記成分組成が、質量%で、
Ti:0.03%以下
Cu:1.0%以下、
Ni:3.0%以下、
Cr:3.0%以下、
Mo:1.0%以下、
B :0.005%以下、
Nb:0.1%以下、および
V :0.2%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、[
1]に記載の鋼板。
[6] 前記成分組成が、質量%で、
Ti:0.03%以下
Cu:1.0%以下、
Ni:3.0%以下、
Cr:3.0%以下、
Mo:1.0%以下、
B :0.005%以下、
Nb:0.1%以下、および
V :0.2%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、[5]に記載の鋼板の製造方法。
Ti:0.03%以下
Tiは、Nとの親和力が強く、凝固時にTiNとして析出する。高温でも安定なTiNのピンニング効果により、溶接熱影響部でのオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制することで、溶接熱影響部の靭性を向上させることができる。前記効果を得るために、Tiを添加する場合、Ti含有量を0.004%以上とすることが好ましい。Ti含有量は0.006%以上とすることが好ましい。一方、Ti含有量が0.03%を超えると、TiN粒子が粗大化し、オーステナイト粒の粗大化抑制効果が飽和する。そのため、Ti含有量は0.03%以下とする。Ti含有量は0.025%以下とすることが好ましい。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C :0.03~0.08%、
    Si:0.01~0.50%、
    Mn:0.4~5.0%、
    P :0.015%以下、
    S :0.0050%以下、
    Al:0.005~0.1%、および
    N :0.0015~0.0065%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    ベイナイトの面積分率が80%以上、
    島状マルテンサイトの面積分率が1.0~20%、かつ
    前記島状マルテンサイトの平均円相当径が0.1~5.0μmであるミクロ組織を有する、鋼板。
    ただし、上記ミクロ組織は島状マルテンサイト以外のマルテンサイトを含まない。
  2. 前記成分組成が、質量%で、
    Ti:0.03%、
    Cu:1.0%以下、
    Ni:3.0%以下、
    Cr:3.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    B :0.005%以下、
    Nb:0.1%以下、および
    V :0.2%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項1に記載の鋼板。
  3. 前記成分組成が、質量%で、
    Ca:0.005%以下、
    REM:0.02%以下、および
    Mg:0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項1または2に記載の鋼板。
  4. 引張強さが980MPa以上、降伏比が85%以下であり、ビード長125mmにおける溶接条件下での溶接熱影響部の最高硬さが350以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の鋼板。
  5. 質量%で、
    C :0.03~0.08%、
    Si:0.01~0.50%、
    Mn:0.4~5.0%、
    P :0.015%以下、
    S :0.0050%以下、
    Al:0.005~0.1%、および
    N :0.0015~0.0065%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して熱延板とする熱間圧延工程と、
    前記熱延板をAc点以上、(Ac点+100℃)未満の再加熱温度域まで再加熱し、前記再加熱温度域にて10分以上保持する再加熱工程と、
    前記再加熱工程後の熱延板を、板厚1/4位置における前記再加熱温度域からベイナイト変態開始温度までの平均冷却速度を1~200℃/sとして、200℃以上、前記ベイナイト変態開始温度未満の加速冷却停止温度まで加速冷却して鋼板を得る、冷却工程とを有する、鋼板の製造方法。
  6. 前記成分組成が、質量%で、
    Ti:0.03%、
    Cu:1.0%以下、
    Ni:3.0%以下、
    Cr:3.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    B :0.005%以下、
    Nb:0.1%以下、および
    V :0.2%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項5に記載の鋼板の製造方法。
  7. 前記成分組成が、質量%で、
    Ca:0.005%以下、
    REM:0.02%以下、および
    Mg:0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項5または6に記載の鋼板の製造方法。
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