JP3956634B2 - 強靭性に優れた鋼板およびその製造方法 - Google Patents

強靭性に優れた鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い強度と靱性(以下、これらを併せて強靭性と記す)が要求される構造物に利用される熱延鋼板や厚鋼板、電縫鋼管製造用の鋼板などに好適な引張強さが550MPa以上の高強度を有し、−60℃での吸収エネルギーが100J以上である強靱性に優れた高張力低合金鋼およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、鋼構造物の高強度化の傾向は顕著になり、高強度鋼が大型の構造物に供されるようになってきている。一般に高強度鋼は衝撃破壊に対する抵抗性が劣っており、構造物の安全性を鑑みる上でも鋼の高靭化は重要である。強度と靱性を両立させる唯一の方法は金属組織の微細化であり、微細化に関する種々の知見が開示されてきた。
【0003】
熱間圧延した鋼の組織微細化の有力な方法は、未再結晶γ域で強圧下加工する方法である。この方法は、γ結晶粒内にフェライトあるいはベイナイトなどの変態生成物の核生成サイトを増加させる方法である。同法ではポリゴナルαの場合には均一な微細組織が得られるものの、ベイナイトを主体とする組織の場合には圧延方向に平行に扁平な様相を呈する金属組織となる場合があり、圧延方向に亀裂が発生し易い。このような未再結晶γ域で強圧下加工する方法では、破壊に対する抵抗性の低下や、圧延方向に平行な方向の強度が低下するという懸念があった。
【0004】
特開平6−145881号公報には、低温靱性と加工性に優れた電縫鋼管用鋼が開示されている。同公報には、結晶粒の最大長さを20μm以下とする規定が設けられているものの、金属組織はフェライトとMA-コンスティチュエント(constituent)の混合組織となっている。MA-コンスティチュエントは、本来存在させると靭性を劣化させるが、同公報によれば、そのような組織を敢えて金属組織中に取り入れて強靭化するためには極細粒フェライトと、超微細に分散したMA中のマルテンサイトまたは残留γの存在が不可欠とされている。また、そのような組織を得るには熱間圧延後の冷却速度を15℃/秒以上とする必要があることが示されている。しかし、このような圧延後の冷却速度や、大きな圧下率での圧延は圧延後コイルとして巻き取ることのできる薄い鋼板には適用可能であるが、厚肉材への適用はできない。
【0005】
また、特開平5−230594号公報には、溶接部の脱合金化現象の小さい電縫鋼管用鋼の適切な化学組成が開示されているが、金属組織については何ら開示されていない。この電縫鋼管用鋼は、NbやTiを添加して結晶粒を微細化して強靭化を図ったもので、肉厚が9mm前後の鋼板では効果があるが、それ以上の厚肉材には効果が見られない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、550MPa以上の高強度を有し、厚肉の鋼板でありながら、−60℃での吸収エネルギーが100J以上と靱性に優れている鋼板を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋼の化学組成、金属組織および結晶粒の微細化について鋭意実験、検討した結果、以下の知見を得るに至った。
【0008】
a)強度と靱性の両特性を向上させるには、金属組織をベイナイトやアシキュラαのようなラス状αを主体とする組織とし、結晶粒を微細化するのがよい。
【0009】
b)ラス状組織が主体となる鋼において結晶粒の微細化を図るには、粒状α組織の粒径に相当する平均切片と旧γ粒界間隔の両方を制御することが必要である。
【0010】
c)平均切片の大きさは、ラス状組織の長さに強く影響され、破壊発生に影響する組織の大きさとして、ラス状組織の長さ方向の大きさも重要となる。ラス状組織の長さ方向の大きさは、強度が高くなるに従い、旧γ粒界の存在が重要になってきて、旧γ粒界による成長の遮断が強い影響を有する。厚肉鋼板でラス状組織の長さを短くするためには旧γ粒界による成長の遮断が有効である。厚肉鋼板であっても、板厚方向の旧γ粒界の間隔が小さければ、ラス状組織の板厚方向への成長は抑制され、結果的に薄肉の鋼板と同じ効果を得ることができる。
【0011】
したがって、ラス状組織の平均切片は7μm以下、後述する旧粒界の間隔を示すパラメータGで35以下とする必要がある。
【0012】
d)上記のような組織にするには、γの再結晶域および未再結晶域での圧延を適切に制御することが重要であり、まず第一としてはγの再結晶域で圧下率10%以上の大圧下を3パス以上おこなうこと、そして第二としてγの未再結晶域でトータル圧下率50%以上の圧延をおこなえばよい。
【0013】
本発明は上記の知見に基づきなされたもので、その要旨は下記の通りである。
【0014】
(1)質量%で、C:0.03%超〜0.15%、Si:0.03〜0.4%、Mn:0.6〜2%、Nb:0.005〜0.08%、Ti:0.005〜0.03%、solAl:0.05%以下、N:0.006%以下、O(酸素):0.0035%以下を含み、残部Feおよび不純物からなり、金属組織が主としてラス状αからなり、かつパーライト組織が10%以下であり、ラス状組織の平均切片値が7μm以下、旧γ粒界の間隔を示すパラメータGが35以下である靱性に優れた鋼板。
【0015】
ここで、パラメータGは、光学顕微鏡100倍の視野における板厚方向の40mmの長さの線に交差する旧粒界の数を求め、400μmを求めた旧粒界の数で徐した値で、20ヶ所測定した値の平均値とする。
【0016】
(2)Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.05〜 1.7%、Cr:0.05〜0.9%以下、Mo:0.05〜0.7%、B: 0.0003〜0.0025%、Ni:0.05〜2.5%およびV:0.01〜0.07%のうちの1種以上を含有する上記(1)に記載の強靱性に優れた鋼板。
【0017】
(3)上記(1)または(2)に記載の化学組成を有する鋼片を、1000〜1280℃の温度に加熱し、900℃以上で圧下率10%以上の圧延を3パス以上おこない、次いで900℃以下の温度域で累積圧下率50%以上の圧延をおこなった後、直ちに強制冷却を施して600℃以下の温度域で冷却を停止する強靱性に優れた鋼板の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、化学組成の説明での%表示は、全て質量%を示す。
【0019】
C:0.03超〜0.15%
Cは、鋼板の強度を確保する目的で含有させる。0.03%以下では強度が不足して550MPa以上の引張強さを確保するのが困難であり、また靱性も劣化する。強度と靱性の確保上、0.03%超えた量を含有させることが必要である。より望ましい下限は0.05%である。一方、0.15%を超えると、母材の靱性が低下するだけでなく、溶接熱影響部の硬度が上昇して溶接熱影響部の靱性が劣化するので上限を0.15%とした。望ましい上限は0.08%である。
【0020】
Si:0.03〜0.4%
Siは、鋼の脱酸を目的に精錬中に添加する元素である。その効果を得るために0.03%以上含有させる。しかし、0.4%を超えると母材および溶接熱影響部で局所的に硬度を著しく上昇させる島状マルテンサイトの生成を誘発し靱性を劣化させるので、Siの上限は0.4%以下とした。
【0021】
Mn:0.6〜2%
Mnは、鋼板の焼入性を向上させ、強度を高めるために含有させる元素であり、0.6%未満では強度確保が困難となる。強度と靱性のバランスを適切に保つための望ましい下限は1%である。また、2%を超えると、強度が上昇するものの靱性の劣化が著しいため上限を2%とした。望ましい上限は1.6%である。
【0022】
Nb:0.005〜0.08%
Nbは、γの低温域で微細なNb炭窒化物を形成することによりγ粒を微細化する。さらに析出したNb炭窒化物は圧延によって加工を受けた未再結晶γ粒の回復、再結晶を抑制する効果を有しており、母材靱性の確保に有効であり、そのためには0.005%以上の含有量が必要である。しかしながら、0.08%を超える添加は母材靱性や溶接部の靱性を劣化させるので、上限を0.08%とした。望ましい上限は0.06%、さらに望ましくは0.04%である。
【0023】
Ti:0.005〜0.03%
Tiは、γ粒を微細化して、母材および溶接部を高靭化するのに不可欠な元素である。また、連続鋳造鋳片の横ひび割れを防止する上でもその添加が不可欠である。そのためには0.005%以上含有させなければ効果がない。また、0.03%を超えて含有させると母材靱性や溶接熱影響部の靱性を著しく損なう結果となるため、上限を0.03%とした。望ましい上限は0.02%である。
【0024】
solAl:0.05%以下
Alは、脱酸および組織の微細化のために含有させる。鋼の脱酸を目的として添加して、鋼に留まる程度の量で含有する。しかし、0.05%を超えると溶接熱影響部の靱性が劣化し、また熱処理によって組織を微細化しても靱性、とくに脆性亀裂伝播停止特性が悪影響を受けるので上限を0.05%とする。望ましい範囲は0.01〜0.04%である。
【0025】
N:0.006%以下
Nは、必要により微量含有させる元素で、不純物として0.004%程度含有する。一方、含有させればNはTiと結合してTiNを形成し、加熱時のγ粒の粗大化を抑制する効果を有し、母材及び溶接熱影響部の靱性を改善する。このためには、N量はTi量の4.3分の1より僅かに多く添加されることが望ましい。しかし、0.006%を超えて含有させると靱性が劣化するので含有させる場合は、0.006%以下にする必要がある。
【0026】
O:0.0035%以下
Oは、鋼の精錬の過程で不可避的に混入してくる元素であるが、SiやAlなどの脱酸剤の添加により、ほとんどは酸化物の形で鋼中に存在する。これら酸化物は粗大な介在物を形成し靱性を劣化させるので、少なければ少ないほど良い。靱性劣化にほとんど影響しない限界量として0.0035%以下とした。
【0027】
上記の化学組成に、さらに必要により下記の元素を含有させることができる。
【0028】
Cu、Cr、Mo、B、NiおよびVの1種以上
これらの元素は、強度を高める作用を有しており、強度をより高めたい場合に含有させる。以下、それらの含有量について詳細に説明する。
【0029】
Cu:0.05〜1.7%
Cuは、含有させると焼入性を改善すると共に、焼戻時にε−Cuが析出して強度向上に効果がある。そのためには0.6%以上含有させる必要がある。しかし1.7%を超えて含有させると靱性が劣化するため上限を1.7%とする必要がある。
【0030】
Cr:0.05〜0.9%
Crは、含有させると主として焼入性の向上を通じて強度を向上させる効果がある。そのためには、0.05%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.9%を超えると母材靱性や溶接性が劣化するので上限を0.9%とした。望ましい上限は0.5%である。
【0031】
Mo:0.05〜0.7%
Moは、含有させると焼入性および焼戻軟化抵抗を向上させる効果が大きく、強度上昇に有効である。そのためには0.05%以上含有させる必要がある。しかし、0.7%を超えると強度が高くなりすぎ、母材靱性や特に溶接性が劣化するので上限を0.7%とする必要がある。望ましい上限は0.5%である。
【0032】
B:0.0003〜0.0025%
Bは、含有させると微量の固溶量で焼入性を向上させ、板厚中心部まで十分な強度を得るのに有効な元素である。含有させる場合は、0.0003%未満では効果が小さいので、0.0003%以上とした。しかしながら0.0025%を超えると母材靱性および溶接熱影響部の靱性を大幅に劣化させるので、0.0025%以下にする必要がある。
【0033】
Ni:0.05〜2.5%
Niは、含有させれば強靱性の向上に極めて有効な元素であり、そのためには、0.05%以上含有させる必要があり、多ければ多いほどよい。しかしながら、Niは高価な元素であり、含有させることによって鋼価格の上昇を招くため、経済性の観点から2.5%以下とする。望ましくは1.5%以下、さらに望ましくは1%以下である。
【0034】
V:0.01〜0.07%
Vは、炭窒化物としての析出により強度の向上に寄与する。また靱性の改善にも効果がある。0.01%未満ではその効果が見られず、0.07%を超えて含有させると靱性が劣化するので、含有させる場合の含有量は0.01〜0.08%とした。
【0035】
金属組織
本発明で規定する金属組織は、熱間圧延後に強制急冷して600℃以下の温度域で冷却を停止したときの金属組織をいう。以下、詳細に説明する。
【0036】
a)ラス状α組織
ラス状α組織とは、ラス状のフェライト組織を云う。ラス状αにはアシキュラーαやベイニテイックαなどが含まれる。これらの組織は、粒状のα組織よりも強度が高く、強加工によってより微細になる特性がある。従って、厚肉材で強度を保ちながら高靱性を得るには最も適した組織である。
【0037】
b)パーライト組織が10%以下
ここで言うパーライト組織(第2相)とは、ラス状α以外のもの全てを指すものとする。例えば、ラス間に存在する島状マルテンサイト、パーライト、疑似パーライトなどが挙げられる。ただし、粒界あるいは、粒内の初析フェライトは第2相としては計算しない。
【0038】
パーライト組織の存在率は、圧延方向に平行な鋼板断面と圧延方向に垂直な鋼板断面において光学顕微鏡の1000倍の視野における点算法により、各々20視野について測定した平均値とする。パーライト組織が10%を超えるとパーライトを起点とした破壊の起点が増加する為、パーライトの存在率の上限を10%とした。より望ましくは8%以下、さらに望ましくは5%以下である。
【0039】
c)ラス状組織の平均切片が7μm以下
ラス状組織の平均切片は、光学顕微鏡500倍の視野で、20視野観察し、各視野内でランダムな方向に40mmの直線に掛かるラス状のα粒の数を測定し、20ヶ所の平均値を平均切片値とする。ラスの組織の微細化を図るためには、ラス状組織の平均切片と旧γ粒の間隔を所定値以下にする必要がある。平均切片が7μmを超えると目標とする強度と靭性を確保することができないので上限を7μmとした。この値の測定は、圧延方向に平行な鋼板断面で測定したものとする。
【0040】
d)旧γ粒界の間隔を表すパラメータGが35以下
パラメータG は、板厚方向における旧γ粒界の間隔を示すもので、光学顕微
鏡100倍の視野における板厚方向の40mmの長さの線に交差する旧粒界の数を求め、400μmを求めた旧粒界の数で徐した値で、20ヶ所測定した値の平均値とする。
【0041】
旧γ粒界はラス状組織の成長を抑制する効果を有する。組織を微細化するためには、旧γ粒界の密度が高く、粒界の間隔は狭い程よい。高強度で靭性を確保するためには、旧γ粒径の間隔を示すパラメータの値Gを35以下になるようにしなければならない。この値は圧延方向に平行な鋼板断面で測定したものとする。
【0042】
次に本発明の鋼板の製造条件について説明する。
【0043】
スラブ等の鋼片の加熱温度は、1000〜1280℃とする。これは、スラブ全体の組織を均一にγ化するために必要な温度であり、1000℃未満では微細化に有用なNb炭窒化物を固溶させることができなく、また加熱時に均一なγ粒を得ることができない。望ましい下限は1050℃、さらには1100℃である。一方、1280℃を超えて加熱するとγ粒が著しく大きくなり母材靱性が劣化するため、加熱温度は1280℃以下とする必要がある。
【0044】
続く圧延は、900℃以上の温度で圧下率10%以上の圧延を3パス以上おこなわなければならない。900℃以上ではγの再結晶温度域になるため、圧下を受けたγ粒は微細で等方的な再結晶粒になる。このような再結晶をおこさせるためには圧下率10%以上の圧延パスを3パス以上実施しなければならない。
【0045】
続いて、900℃以下の温度域で累積圧下率50%以上の圧延をおこなわねばならない。この900℃以下の圧延ではγ粒内に格子欠陥が蓄積し続く水冷における組織の微細化に大きな効果を示す。水冷によって生成する組織を微細化するためには未再結晶温度域で50%以上の圧下をおこなう必要がある。Nbを含有する本発明鋼では未再結晶温度域が900℃以下となるため、900℃以下での圧下量を50%以上とする必要がある。
【0046】
本発明において熱間圧延後の強制冷却停止温度の制御は重要である。強制冷却停止温度が600℃を超えると、強度確保に必要なラス状αのベイニティックフェライトの生成量が不十分となり、強度が低下すると同時に靱性も劣化する。したがって、強制冷却停止温度は600以下とする必要がある。600℃以下であれば何度であってもよい。
【0047】
なお、強制冷却とは、7℃/秒以上の早さでの冷却をいい、通常は水冷で十分である。
【0048】
ラス状αを得るためには、600℃以下の温度での変態を主体とする必要があり、そのためには、圧延後600℃までの温度域は相変態が進行しないように強制冷却しなければならない。そのために必要な最低冷却速度が7℃/sである。600℃以上の冷却速度が7℃/sに満たない場合や、600℃以上で冷却を停止した場合には、粒状のαが主体となり、ラス状αが得られない。
【0049】
強制冷却停止後は、放冷であっても徐冷となるコイル状に鋼板を巻取りしても目標とする特性には影響しない。
【0050】
【実施例】
表1に示す28種の化学組成の鋼を小型真空溶解炉を用いて溶解し、各170kgの鋼塊とした。
【0051】
【表1】
Figure 0003956634
表中も鋼番1〜14は本発明で規定する化学組成の鋼で、X1〜X14は比較鋼である。これらの各鋼塊を数個に分解、鍛造して鋼片とした。
【0052】
各鋼片は炉中にて加熱し、圧延後は水冷により強制冷却をおこなった。鋼片の加熱、圧延および熱処理の各条件を表2に示す。
【0053】
【表2】
Figure 0003956634
表中、圧延番号A〜Iは本発明で規定する条件を満たしており、XA〜XHは比較例を示す。圧延仕上げ板厚は、7〜55mmと変化させ、強制冷却中止温度は常温〜650℃の範囲とし冷却中止後放冷とした。圧延番号Fについては、強制冷却中止後コイル状に巻取った。また、一部の鋼板は放冷後600〜650℃に加熱して焼戻し処理を施した。
【0054】
上記のようにして製造した各鋼板の板厚方向における中央部から、JIS 5号引張試験片およびVノッチシャルピー試験片(JIS Z 2202号)を採取し、各試験を実施して、引張り強さと−60℃での吸収エネルギーを測定した。また、強制冷却後の各鋼板から金属組織を観察するための顕微鏡試験片を採取し、前記した方法で、パーライト組織量、ラス状組織の平均切片および旧γ粒界の間隔を表すパラメータG測定した。
【0055】
これらの各測定結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
Figure 0003956634
試番1〜18は本発明例であり、板厚が20〜55mmと厚くても全て本発明の目標とする強度550MPa以上、降伏応力450MPa以上であり、また靱性も−60℃での吸収エネルギーが100J以上であり、優れた強靭性を示している。
【0057】
一方、比較例の試番19〜41から明らかなように、金属組織においてパーライト体積率もしくはラス状組織の大きさ、旧γ粒界の間隔のいずれか、あるいは複数が本発明の規定する範囲から外れているため強靱性が得られていない。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、550MPa以上の高強度でありながら、−60℃での吸収エネルギーが100J以上と靱性にも優れている厚肉の鋼板を得ることができ、鋼構造物に使用して極めて優れた効果を発揮する。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.03%超〜0.15%、Si:0.03〜0.4%、Mn:0.6〜2%、Nb:0.005〜0.08%、Ti:0.005〜0.03%、solAl:0.05%以下、N:0.006%以下、O(酸素):0.0035%以下を含み、残部Feおよび不純物からなり、金属組織が主としてラス状αからなり、かつパーライト組織が10%以下であり、ラス状組織の平均切片値が7μm以下、旧γ粒界の間隔を示すパラメータGが35以下であることを特徴とする強靱性に優れた鋼板。
    ここで、パラメータGは、光学顕微鏡100倍の視野における板厚方向の40mmの長さの線に交差する旧粒界の数を求め、400μmを求めた旧粒界の数で徐した値で、20ヶ所測定した値の平均値とする。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.05〜 1.7%、Cr:0.05〜0.9%以下、Mo:0.05〜0.7%、B: 0.0003〜0.0025%、Ni:0.05〜2.5%およびV:0.01〜0.07%のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の強靱性に優れた鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の化学組成を有する鋼片を、1000〜1280℃の温度に加熱し、900℃以上で圧下率10%以上の圧延を3パス以上おこない、次いで900℃以下の温度域で累積圧下率50%以上の圧延をおこなった後、直ちに強制冷却を施して600℃以下の温度域で冷却を停止することを特徴とする強靱性に優れた鋼板の製造方法。
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