JP2683404B2 - N―フェニルマレイミド化合物の製造方法 - Google Patents

N―フェニルマレイミド化合物の製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は耐熱ポリマー原料あるいは医薬、農薬原料な
どとして有用なN−フェニルマレイミド化合物の新規な
製造方法に関する。
〔従来の技術〕
従来、N−フェニルマレイミド化合物の剛性はアミン
化合物と無水マレイン酸から得られるフェニルマレアミ
ド酸類を無水酢酸をはじめとする脂肪酸無水物を用いて
脱水閉環する方法により一般的に行われてきた(例え
ば、特開昭53-53648)。しかし、この方法においてN−
フェニルマレイミド化合物を収率よく得るには、コバル
ト塩などの高価な触媒を併用し、無水酢酸のような高価
な脱水剤を使用しなければならない等の欠点を有し、ま
たイミド化終了後、目的物を単離する際当然のことなが
ら脱水閉環剤として用いた酸の除去が必要で、酸を除去
する場合反応混合物を大量の水に注入するかあるいは反
応混合物に水を注入し結晶を析出させ、その後析出した
結晶を濾別し、この結晶を更に多量の水で洗浄する必要
がある等煩雑で必ずしも満足すべき方法ではない。
一方、アミン化合物と無水マレイン酸を有機溶剤中で
反応させ、フェニルマレアミド酸類を生成させた後、酸
触媒の存在下に加熱してイミド化させる方法(特公昭57
-42043)がある。
さらに有機溶剤中でアミン化合物と無水マレイン酸と
を反応させ、フェニルマレアミド酸類を生成させ、非プ
ロトン性極性溶媒および酸触媒の共存下で脱水閉環によ
りフェニルマレアミド化合物を製造する方法が知られて
いる(例えば、特公昭55−46394、特開昭60−100554
号)がこれらの方法では無視出来ない副生成物が生成さ
れる場合があり、反応条件による副生成物の抑制もさる
ことながら、高純度のN−フェニルマレイミド化合物を
得るには精製操作が必要である。精製法として、適当な
溶媒を用いて再結晶法で単離するか、または蒸留により
単離する方法があるが、いずれの方法においても酸触媒
の除去が不可欠である。通常使用している酸触媒は硫
酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、無水リン酸、ポ
リリン酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸等であ
り、イミド化終了後反応液を繰り返し水洗を行うか、あ
るいは希薄な弱アルカリ水溶液で中和後水洗し、酸を除
去する。得られた有機溶媒層より目的物を得ねばなら
ず、操作上手間がかかりその廃液処理も含めて必ずしも
工業的に有利な方法でない。
また、無水マレイン酸とアミン化合物をリンの酸化物
の存在下、非プロトン性極性溶媒中で加熱してイミド化
終了後、直接蒸留し、溶媒に続いてN−フェニルマレイ
ミド化合物を得る方法も提案されているが(例えば、特
開昭60−112758、特開昭60−112759)、この方法におい
ては脱水イミド化閉環剤としてリンの酸化物を反応系に
装入する際、装入時の溶媒発熱により温度制御ならびに
反応生成物の劣化などを防ぐため、あらかじめリンの酸
化物を有機溶媒で希釈した調整液を使用しなければなら
ず、さらにイミド化終了後、リンの化合物を除去する必
要がある。リン化合物を除去する際、リン化合物液層を
分液除去回収するが、効果的にリン化合物液層を分液す
るには反応混合物中の溶媒残存量が問題であり、使用し
た溶媒の濃縮状態を考慮する必要がある等、操作上合理
的でなく、しかも分離したリン化合物の処理操作が必要
など工業的には必ずしも満足する方法ではない。
〔発明が解決しようとしている課題〕
本発明は、N−フェニルマレイミド化合物を製造する
ことにあたってこれらの欠点を有しない工業的に有利な
方法を提供するものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、本発明の目的を達成すべく鋭意検討し
た結果、N−フェニルマレイミド化合物が高純度、高収
率で得られ、しかもイミド化の際使用した酸触媒は濾別
するのみで容易に除去回収でき、濾液から直ちに溶媒を
留去して目的物を得ることができ、さらに回収した酸触
媒は再使用が可能であることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は 一般式(I) (式中、R1〜R5は水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6のア
ルキル基、C1〜C6のアルキルエーテル基、水酸基、フェ
ノキシ基、カルボキシル基またはニトロ基を表す。) で表されるアミン化合物と無水マレイン酸を有機溶媒中
で反応させ、生成する 一般式(II) (式中、R1〜R5は前記一般式(I)におけるものと同一
の意味を表す。) で表されるフェニルマレアミド酸を非プロント性極性溶
媒の共存下、超強酸樹脂の存在下で脱水閉環反応させる
ことを特徴とする 一般式(III) (式中、R1〜R5は前記一般式(I)におけるものと同一
の意味を表す。) で表されるN−フェニルマレイミド化合物の製造方法で
ある。
以下、本発明の具体的態様を説明する。
本発明の方法で使用される前記一般式(I)で表され
るアミン化合物としては、例えばアニリン、トルイジ
ン、エチルアニリン、アニシジン、フェネチジン、イソ
プロポキシアニリン、クロロアニリン、プロモアニリ
ン、ヨードアニリン、ニトロアニリン、アミノフェノー
ル、アミノ安息香酸などがあげられる。
無水マレイン酸とアミン化合物の使用量は、アミン化
合物1モルに対し無水マレイン酸は1.0〜1.5モルであ
り、好ましくは1.1〜1.3モル用いるのが良い。無水マレ
イン酸に対しアミン化合物を大過剰使用した場合には過
剰量のアミン化合物が生成したN−フェニルマレイミド
に付加し、副生成物を生成することがあるため好ましく
ない。
本発明で用いる有機溶媒としては、脱水閉環反応で生
成する水を共沸除去できる溶媒が良く、ベンゼン、トル
エン、キシレン、エチレンジクロライド、クロルベンゼ
ン、メシチレン等の非極性溶媒が挙げられる。使用量は
反応を円滑に行う上から無水マレイン酸に対し3〜10倍
量(重量比)用いるのが良い。
また、本発明の方法において用いる非プロトン性極性
溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメ
チルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3
−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジエチルア
セトアミド等が挙げられ、使用量はアミン化合物1モル
に対して10〜100重量部、好ましくは10〜50重量部用い
るのが良い。
本発明に用いられる脱水イミド化剤は、超強酸性樹脂
であり超強酸性樹脂としては、スルホニルフルオライド
ビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとの共重合か
らなるパーフルオロアルカンスルホン酸型樹脂(Nafion
H,Ou'pont社製)であり、今までのスルホン酸型イオン
交換樹脂(芳香族ビニル化合物の重量体または共重合体
をスルホン化することにより得られる)は、一般に140
℃以上になると分解するのに対して、この超強酸性樹脂
(Nafion H)は200℃またはそれ以上の耐熱性があるの
が特徴である。使用量はアミン化合物1モルに対して10
〜300g使用され、好ましくは30〜150g程度用いられる。
しかしながら超強酸性樹脂はこれらの量に限定される
ものでなく、収量と経済性を考慮して最適の使用量を適
宜決められる。イミド化剤に使用した超強酸性樹脂は、
反応混合物から濾過の操作により回収し、そのままある
いは再生して次の反応に使用できる。
本発明の方法における反応は、無水マレイン酸と有機
溶剤の混合液にアミン化合物を加えて150℃以下、好ま
しくは20〜100℃で10分以上、好ましくは0.5〜1時間攪
拌してフェニルマレアミド酸を生成させ、ついで得られ
た反応液に非プロトン性有機溶媒と超強酸性樹脂を加え
80℃以上、好ましくは100℃〜180℃の温度範囲で加熱
し、0.5〜20時間、好ましくは1〜6時間攪拌し、範囲
生成水を共沸分離することによって行われる。このよう
な条件で反応を行った後冷却し、超強酸性樹脂を濾過に
より除去し、直ちに得られた有機層を減圧濃縮して溶剤
を留去し、N−フェニルマレイミド化合物を得ることが
出来る。場合によっては溶媒に続いて生成物を直ちに蒸
留により単離するか、溶媒を濃縮するか、留去して適当
な溶剤例えばエタノール、イソプロピルアルコール等に
より直ちに再結晶を行い単離することが出来る。
〔作用と効果〕
本発明の方法は、従来の製造方法に比べ反応操作が簡
単でかつ高純度、高収率でN−フェニルマレイミド化合
物を容易に製造でき、しかも濾別により除去回収した酸
触媒超強酸性樹脂は、容易に再利用出来、極めて工業的
に有利な製造方法である。
以下、実施例により本発明の方法を更に詳しく説明す
る。
超強酸性樹脂(Nafion H)の調整 Nafion K(Du'pont社製、K+型として市販)50gを4N塩
酸40mlとともに室温で4時間かきまぜた後、濾過し、蒸
留水で中性になるまで洗浄した。この操作をさらに4回
繰り返した後、10mmHg減圧下に80〜90℃で乾燥してNafi
on Hを得た。
実施例1 攪拌器、温度計およびディーンスターク共沸蒸留トラ
ップを装着した反応容器に無水マレイン酸58.8g(0.6モ
ル)、トルエン155gおよびN,N−ジメチルアセトアミド1
8gを装入し、攪拌下で滴下ロートにより、アニリン46.5
g(0.5モル)をトルエン46.5gに溶解した溶液を徐々に
添加した。続いて0.5時間反応させた後、Nafion H(超
強酸性樹脂)35g装入し、還流温度まで加熱し、反応に
より生成する水を共沸除去しながら4時間反応させ、反
応終了後、反応液を70〜80℃に冷却し、濾過により超強
酸性樹脂Nafion Hを除去後、得られた有機層より直ちに
溶剤を留去し、続いて真空蒸留を行ったところ74.6g
(アニリン基準収率86.3%)の黄色結晶のN−フェニル
マレイミドを得た。
得られた生成物のm.p.は91〜92℃、GPCによる純度分
析結果は99%以上であった。
実施例2 攪拌器、温度計およびディーンスターク共沸蒸留トラ
ップを装着した反応容器に無水マレイン酸29.4g(0.3モ
ル)、トルエン77.5gおよびN,N−ジメチルアセトアミド
9gを装入し、攪拌下で滴下ロートによりアニリン23.3g
(0.25モル)をトルエン23.3gに溶解した溶液を徐々に
添加した。続いて0.5時間反応させた後、実施例1で回
収したNafion H17.5g装入し、還流温度まで加熱し、反
応により生成する水を共沸除去しながら4時間反応させ
た。反応終了後、実施例1と同様な操作を行い、黄色結
晶のN−フェニルマレイミドを37.2g(アニリン基準収
率86.0%)得た。
得られた生成物のm.p.は91〜92℃でGPCによる純度分
析結果は99%以上であった。
実施例3 攪拌器、温度計およびディーンスターク共沸蒸留トラ
ップを装着した反応容器に無水マレイン酸58.8g(0.6モ
ル)、キシレン310gを装入し、攪拌下滴下ロートにより
p−クロロアニリン63.8g(0.5モル)をN,N−ジメチル
アセトアミド36gに溶解した溶液を徐々に添加した。続
いて0.5時間反応させた後、Nafion H70g装入し、還流温
度まで加熱し、反応により生成する水を共沸除去しなが
ら5時間反応させた。反応終了後、反応液を70〜80℃に
冷却し、濾過により超強酸性樹脂Nafion Hを除去後得ら
れた有機層により直ちに溶剤を留去し、続いてイソプロ
ピルアルコール100mlを装入し、冷却して結晶を析出さ
せた後、濾過、乾燥して淡黄色結晶のN−(p−クロロ
フェニル)マレイミド88.3g(p−クロロアニリン基準
収率85.2%)を得た。
このものはGPCによる分析で純度99%以上で、m.p.は1
16〜118℃であった。
実施例4〜8 実施例1〜3と同様な方法で、無水マレイン酸0.6モ
ルと各種フェニルアミン化合物0.5モルを反応させ、次
いで後処理および精製を行い、対応するN−フェニルマ
レイミド化合物を得た。各実施例によって得られたN−
フェニルマレイミド化合物の収率、外観、純度、融点を
各々の原料および反応条件と共にまとめて表1に示し
た。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I) (式中、R1〜R5は水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6のア
    ルキル基、C1〜C6のアルキルエーテル基、水酸基、フェ
    ノキシ基、カルボキシル基またはニトロ基を表す。) で表されるアミン化合物と無水マレイン酸を有機溶媒中
    で反応させ、生成する一般式(II) (式中、R1〜R5は前記一般式(I)におけるものと同一
    の意味を表す。) で表されるフェニルマレアミド酸を非プロトン性極性溶
    媒の共存下、超強酸樹脂の存在下で脱水閉環させること
    を特徴とする一般式(III) (式中、R1〜R5は前記一般式(I)におけるものと同一
    の意味を表す。) で表されるN−フェニルマレイミド化合物の製造方法。
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