JP2679559B2 - アンチロック制御装置 - Google Patents

アンチロック制御装置

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JP2679559B2
JP2679559B2 JP4321288A JP32128892A JP2679559B2 JP 2679559 B2 JP2679559 B2 JP 2679559B2 JP 4321288 A JP4321288 A JP 4321288A JP 32128892 A JP32128892 A JP 32128892A JP 2679559 B2 JP2679559 B2 JP 2679559B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両制動時に車輪がロ
ック状態に陥らないように車輪のブレーキ圧を制御する
アンチロック制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両制動時における制動距離の短縮と走
行安定性の向上とを図るために車両にアンチロック制御
装置を搭載することが既に行われている。このアンチロ
ック制御装置は一般に、特開平1−182155号公報
にも記載されているように、(a) 車輪の実車輪速を検出
する車輪速センサと、(b) その車輪のブレーキ圧を電気
的に制御する電磁バルブと、(c) 車輪速センサにより検
出された実車輪速と車両の走行速度との関係に基づき、
車両制動時に車輪がロック状態に陥らないように電磁バ
ルブを制御するコントローラとを含むように構成され
る。
【0003】このアンチロック制御装置は従来、車両の
複数の車輪のうち実車輪速が最大である車輪の実車輪速
が車速に精度よく一致するとの事実を利用し、複数の実
車輪速から車速を推定し、その推定車速と実車輪速との
関係に基づいてアンチロック制御を行う。しかし、車速
の推定精度を高めるにも限界があり、ひいてはアンチロ
ック制御の精度を高めるにも限界があった。
【0004】このような事情に鑑み、本出願人は先に次
のようなアンチロック制御装置を提案した。これは、本
出願人の特願平3−273317号明細書に記載されて
いるアンチロック制御装置であって、車両の路面に対す
る走行速度である対地車速を検出する対地車速センサを
有し、かつ、前記コントローラが、電磁バルブをデュー
ティ制御することによってブレーキ圧を制御し、電磁バ
ルブのデューティ比を、少なくとも、実車輪速センサに
より検出された実車輪速の対地車速センサにより検出さ
れた対地車速に基づく目標車輪速からの偏差である速度
偏差と、実車輪速の時間微分値である実車輪加速度の目
標車輪速の時間微分値である目標車輪加速度からの偏差
である加速度偏差とに基づいて変化させるアンチロック
制御装置である。
【0005】そして、本出願人はこの提案を次のような
アンチロック制御装置として実現した。すなわち、コン
トローラがデューティ比を常に、速度偏差と加速度偏差
との双方に基づいて変化させるアンチロック制御装置と
して実現したのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、デューティ比
が常に、速度偏差と加速度偏差との双方に基づいて変化
させられると、例えばブレーキ圧の減圧時にブレーキ圧
が必要以上に減圧される傾向が生じてしまい、アンチロ
ック制御を十分には高い精度で行うことができない。
【0007】すなわち、デューティ比を決定する規則は
常に同じにするのではなく、車輪のスリップ状態に応じ
て適宜変化させることが理想的なアンチロック制御を実
現するために望ましいのである。
【0008】これらの事情を背景として、本発明は、デ
ューティ比の決定規則を可変にすることにより、上記の
要望を満たすことを課題としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に、請求項1の発明は、図1に示されているように、
(a) 車輪の実車輪速を検出する車輪速センサ1と、(b)
その車輪のブレーキ圧を電気的に制御する電磁バルブ2
と、(c) 前記車輪速センサ1により検出された実車輪速
と車両の走行速度との関係に基づき、車両制動時に前記
車輪がロック状態に陥らないように前記電磁バルブ2を
制御するコントローラ3とを含むアンチロック制御装置
において、前記車両の路面に対する走行速度である対地
車速を検出する対地車速センサ4を設けるとともに、前
記コントローラ3を、前記電磁バルブ2をデューティ制
御することにより前記ブレーキ圧を制御するデューティ
制御式とし、かつ、そのコントローラ3に、 前記ブ
レーキ圧の制御モードを減圧モードと急増圧モードと緩
増圧モードと保持モードとのいずれかに決定するモード
決定手段5と、 前記減圧モードの決定時には、前記
車輪速センサ1により検出された実車輪速の前記対地車
速センサ4により検出された対地車速に基づく目標車輪
速からの偏差である速度偏差と、前記実車輪速の時間微
分値である実車輪加速度の前記目標車輪速の時間微分値
である目標車輪加速度からの偏差である加速度偏差との
いずれかに基づいて前記電磁バルブのデューティ比を決
定し、急増圧モードの決定時には、速度偏差と加速度偏
差との双方に基づいてデューティ比を決定するデューテ
ィ比決定手段6とを設けたことを特徴とする。
【0010】なお、ここにおける「デューティ比決定手
段5」は例えば、速度偏差そのものと加速度偏差そのも
のとを用いてデューティ比を決定する態様とすることが
できるが、速度偏差については、それを対地車速で割っ
た値であるいわゆるスリップ比で代用し、また、加速度
偏差については、そのスリップ比の時間微分値で代用し
てデューティ比を決定する態様とすることもできる。
【0011】また、請求項2の発明は、請求項1記載の
アンチロック制御装置において、前記デューティ比決定
手段を、前記減圧モードの決定時には、前記加速度偏差
に基づいて前記デューティ比を決定し、前記緩増圧モー
ドの決定時には、前記速度偏差に基づいてデューティ比
を決定するものとしたことを特徴とする。
【0012】
【作用】請求項1の発明に係るアンチロック制御装置に
おいては、対地車速センサ4により、車両の路面に対す
る走行速度である対地車速が検出され、コントローラ3
により、車両制動時に車輪がロック状態に陥らないよう
にその車輪の電磁バルブ2がデューティ制御される。さ
らに、モード決定手段5により、ブレーキ圧の制御モー
ドが減圧モードと急増圧モードと緩増圧モードと保持モ
ードとのいずれかに決定され、デューティ比決定手段6
により、電磁バルブ2のデューティ比が、減圧モードの
決定時には、車輪の速度偏差と加速度偏差とのいずれか
に基づいて決定され、急増圧モードの決定時には、速度
偏差と加速度偏差との双方に基づいて決定される。
た、請求項2の発明に係るアンチロック制御装置におい
ては、デューティ比決定手段6により、減圧モードの決
定時には、加速度偏差に基づいてデューティ比が決定さ
れ、緩増圧モードの決定時には、速度偏差に基づいてデ
ューティ比が決定される。
【0013】
【発明の効果】そのため、請求項1の発明によれば、減
圧モードの決定時には、速度偏差と加速度偏差とのいず
れかに基づいてデューティ比が決定されるため、速度偏
差と加速度偏差との双方に基づいてデューティ比が決定
される場合のように、ブレーキ圧の減圧量が過大となる
ことが防止されるという効果が得られる。 また、請求項
2の発明によれば、減圧モードの決定時には、速度偏差
ではなく加速度偏差に基づいてデューティ比が決定され
るため、ブレーキ圧を車輪のスリップ状態の変化により
迅速に対応可能となるとともに、緩増圧モードの決定時
には、速度偏差と加速度偏差との双方ではなく速度偏差
に基づいてデューティ比が決定されるため、ブレーキ圧
の増圧速度が過大となることが防止されるという効果が
得られる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の一実施例であるアンチロック
制御装置を含むアンチロック型ブレーキ装置を図面に基
づいて詳細に説明する。
【0015】図2において符号10はブレーキ操作部材
としてのブレーキペダルを示している。このブレーキペ
ダル10はブースタ12を介してマスタシリンダ14に
連携させられている。マスタシリンダ14は2個の加圧
室が互いに直列に並んで成るタンデム式であり、その一
方の加圧室は各電磁バルブ20を経て、左右前輪のブレ
ーキを作動させるホイールシリンダ22に接続され、他
方の加圧室も各電磁バルブ24を経て、左右後輪のホイ
ールシリンダ26に接続されている。
【0016】電磁バルブ20,24は、常には、ホイー
ルシリンダ22,26をマスタシリンダ14に連通させ
るとともにリザーバ30,32から遮断する増圧状態に
あるが、ソレノイドの励磁状態如何により、ホイールシ
リンダ22,26をマスタシリンダ14からもリザーバ
30,32からも遮断する保持状態と、ホイールシリン
ダ22,26をリザーバ30,32に連通させるととも
にマスタシリンダ14から遮断する減圧状態とのいずれ
かに切り換わる。
【0017】電磁バルブ20,24は図において3位置
弁として描かれているが、これは便宜上そのようにした
だけであって実際には、ノーマルオープン型の電磁開閉
弁である増圧弁とノーマルクローズド型の電磁開閉弁で
ある減圧弁との組合せとして構成されている。このよう
に構成された電磁バルブ20,24においては、増圧弁
も減圧弁も非通電状態とすることによって増圧状態が実
現され、増圧弁のみを通電状態とすることによって保持
状態が実現され、増圧弁も減圧弁も通電状態とすること
によって減圧状態が実現される。すなわち、各輪のブレ
ーキ圧は2個の電磁開閉弁の組合せによって、増圧状
態,保持状態および減圧状態が択一的に実現されるので
あり、以下、説明を簡単にするために、増圧状態,保持
状態および減圧状態をそれぞれ実現するために電磁バル
ブ20,24のソレノイドに供給される信号を増圧信
号,保持信号および減圧信号ということにする。
【0018】前記リザーバ30,32はそれぞれ、ポン
プ34,36を経てマスタシリンダ14に接続されてお
り、リザーバ30,32内の作動液がポンプ34,36
により汲み上げられてマスタシリンダ14に回収される
ようになっている。それらポンプ34,36は共通のモ
ータ40により駆動される。すなわち、このアンチロッ
ク型ブレーキ装置は還流式なのである。
【0019】前記電磁バルブ20,24はコントローラ
50により制御される。コントローラ50は、CPU,
ROM,RAM,入力インターフェースおよび出力イン
ターフェースを含むコンピュータを主体として構成され
ており、その出力インターフェースに電磁バルブ20,
24のソレノイドがそれぞれ接続されているのである。
入力インターフェースには、ブレーキスイッチ54と4
個の車輪速センサ56と対地車速センサ58とがそれぞ
れ接続されている。ブレーキスイッチ54は、常にはO
FF状態にあり、ブレーキペダル10が踏み込まれれば
ON状態となるものである。車輪速センサ56は、各輪
と共に回転する回転体の回転速度を検出することによ
り、左右前輪および左右後輪のそれぞれの実車輪速VW
を検出するものである。対地車速センサ58は、例えば
超音波ドップラ式や空間フィルタ式により対地車速VGS
を検出するものである。
【0020】コントローラ50はそれのROMにおいて
図3に示されているように、アンチロック制御ルーチ
ン,ブレーキ圧制御ルーチン等を予め記憶させられてお
り、それらをCPUが実行することにより、電磁バルブ
20,24がデューティ制御され、これにより各輪につ
いてアンチロック制御が実行される。
【0021】以下、コントローラ50により実行される
アンチロック制御の内容を説明するが、まず、概略的に
説明する。
【0022】まず、制御開始判定規則について説明す
る。実車輪速VW が目標車輪速VR より落ち込むんだと
きにアンチロック制御を開始すべきと判定する。ここに
おいて「目標車輪速VR 」は、対地車速VGSに適正スリ
ップ係数K(例えば、0.85〜0.9)を掛け算する
ことによって取得される。なお、本実施例においては、
この適正スリップ係数Kが前輪と後輪とで共通とされて
いるが、車両制動時における車両旋回特性などを考慮し
て、前輪と後輪とで互いに異ならせることができる。
【0023】ただし、実車輪速VW が目標車輪速VR
り落ち込みはしないが、実車輪加速度GW が負の基準加
速度G1 (例えば、−1.5G)より落ち込んだときに
は、本来のアンチロック制御に先立ち(すなわち、初回
の減圧に先立ち)、ブレーキ圧を保持する。その理由は
以下の通りである。
【0024】特に急制動時には車輪のロック傾向の増加
に対して実車輪速VW が実車輪加速度GW ほどには迅速
に応答しないため、実車輪速VW の変化のみから車輪の
ロック傾向の増加を判定することとすると、減圧開始の
タイミングが遅れ気味となってしまい、実車輪速VW
やや大きく落ち込んでしまう可能性がある。そこで、実
車輪速VW が目標車輪速VW まで落ち込んでいなくても
実車輪加速度GW が基準加速度G1 まで落ち込んだとき
には、将来車輪がロック状態に陥る可能性があると判定
してブレーキ圧を事前に保持するのである。
【0025】また、急制動がドライアスファルト路等の
高μ路上で行われる場合には、このような事前保持を行
うことにより次のような効果も得られる。
【0026】車両制動時には車体が前傾し、車両前方へ
の荷重移動が発生して、前輪の車輪荷重が増加すること
になるが、急制動時には車体の姿勢がブレーキ圧の増加
に対して迅速には応答しない。したがって、アンチロッ
ク制御に先立って事前保持を行い、車体の前傾を待ち、
前輪の車輪荷重の増加を待つようにすれば、前輪と路面
との間の摩擦係数μが増加し、実車輪加速度G W の減少
が抑制され、実車輪速VW の落ち込みも抑制される。そ
の結果、この事前保持に後続すべき減圧モードの実行量
が少なくて済み、高いブレーキ圧が確保され、減圧過剰
となる事態から回避される。
【0027】次にアンチロック制御中におけるブレーキ
圧制御モードの決定規則につき、図4の表を参照しつつ
説明する。
【0028】実車輪速VW が目標車輪速VR より落ち込
んだ状態では、減圧モードを実行し、その結果実車輪速
W が目標車輪速VR より大きくなり、車体速度VGS
近くなり過ぎてしまった状態では、増圧モードを実行す
る。すなわち、実車輪速VWの目標車輪速VR からの偏
差である速度偏差ΔVを基準として、モードが決定され
るのである。ただし、実車輪速VW が目標車輪速VR
り落ち込んでいる状態でも、実車輪加速度GW が目標車
輪速VR の時間微分値である目標車輪加速度GR 以上と
なった後には、減圧モードを中止して保持モードを実行
する。その理由は以下のとおりである。
【0029】すなわち、減圧の効果により実車輪加速度
W が目標車輪加速度GR と等しくなり、車輪の運動の
動的安定性が成立した後には、もはやこれ以上ブレーキ
圧を減圧する必要がなく、減圧過剰を防止するためであ
る。
【0030】なお付言すれば、複数の実車輪速VW から
車速を推定し、その推定車速を用いてアンチロック制御
を行う装置は一般に、減圧の効果により実車輪加速度G
W が目標車輪加速度GR まで増加しただけでは足りず、
正の基準加速度G2 まで増加するまで、減圧モードを継
続するように設計される。このように減圧をやや過剰気
味に行うのは、複数の車輪のいずれかでも実車輪速VW
が真の車速にできる限り近づく状態を実現し、これによ
り車速の推定精度をできる限り向上させることが一理由
である。しかし、本実施例においては、車速は実車輪速
W を用いた推定によって取得されるのではなく、対地
車速センサ58によって車輪のスリップ状態とは無関係
に精度よく取得されるものであるため、そのような過剰
減圧をあえて行う必要はなく、制動力を無駄に低下させ
なくて済むことになる。
【0031】コントローラ50は電磁バルブ20,24
をデューティ制御することによってアンチロック制御を
実行する。ここに「デューティ制御」とは、本実施例に
おいては、図5に示されているように、電磁バルブ2
0,24のソレノイドに対して増圧信号または減圧信号
(以下、それらを「変圧信号」と総称する)と保持信号
とをそれぞれ1回ずつそれらの順に出力することを一回
のデューティサイクルとし、かつ、その一回のデューテ
ィサイクルにおける変圧信号の継続時間を可変の変圧時
間(以下、これを「デューティ時間DUTY」という)、保
持信号の継続信号を不変の保持時間とすることにより、
一回のデューティサイクルの時間において変圧信号の継
続時間が占有する比率であるデューティ比を制御するこ
とをいう。すなわち、本実施例においては、デューティ
時間DUTYが本発明における「デューティ比」の一態様な
のである。デューティ時間DUTYは速度偏差または加速度
偏差が大きいほど長くなるように決定され、その結果、
速度偏差または加速度偏差が大きいほどブレーキ圧の増
減圧勾配が急になる。
【0032】なお、上記の説明から明らかなように、増
圧モードおよび減圧モードについては、一回のデューテ
ィサイクルの終期がデューティ時間DUTYと保持時間との
和によって決定される。これに対し、保持モードについ
ては、それの終期がそれ自身によっては決定されず、後
続する増圧モードまたは減圧モードが開始することによ
って決定される。
【0033】次に減圧モードおよび増圧モードそれぞれ
におけるデューティ時間DUTYの決定規則につき、図6の
表を参照しつつ説明する。
【0034】減圧モードについては、デューティ時間DU
TYが、 A・(GR −GW ) なる式を用いて決定される。このように加速度偏差ΔG
のみを用い、速度偏差ΔVを用いないのは、双方を用い
ると、ブレーキ圧の減圧勾配が車輪のロック傾向との関
係において急過ぎてしまい、減圧がやや過剰気味となっ
てしまうおそれがあるからである。
【0035】具体的に説明すれば、図11にグラフで示
されている一制御例においては、時刻t2 〜t3 におい
て減圧モードが実行されるが、この間、加速度偏差ΔG
のみならず速度偏差ΔVも車輪がロック傾向を示す事実
を示しており、このような状況下でそれら加速度偏差Δ
Gおよび速度偏差ΔV双方を用いてデューティ時間DUTY
を決定したのでは、デューティ時間DUTYが大きくなり過
ぎて減圧がやや過剰気味となってしまうおそれがある。
そこで、本実施例においては、加速度偏差ΔGのみに基
づいてデューティ時間DUTYを決定することとしたのであ
る。
【0036】なお、この減圧モードにおいては、加速度
偏差ΔGではなく速度偏差ΔVを用いてデューティ時間
DUTYを決定しても同様の効果が得られるが、加速度偏差
ΔGを選んだのは、このようにした方が、車輪のスリッ
プ状態の変化により迅速に対応することができると推定
されるからである。
【0037】一方、増圧モードについては、実車輪加速
度GW が目標車輪加速度GR より大きく、実車輪速VW
が車体速度VGSに接近し過ぎる傾向がある場合と、増圧
の効果により実車輪加速度GW が目標車輪加速度GR
下となった場合とで、決定規則が異なっている。具体的
には、増圧の効果が十分ではなく、実車輪加速度GW
目標車輪加速度GR より大きい状態では、 B・(GW −GR )+C・(VW −VR ) なる式を用いて決定され、一方、増圧の効果がほぼ十分
となり、実車輪加速度GW が目標車輪加速度GR 以下と
なった状態では、 D・(VW −VR ) なる式を用いて決定される。
【0038】この理由は以下の通りである。例えば図1
1の制御例においては、時刻t4 〜t5 における車輪ス
リップ状態が、実車輪加速度GW が目標車輪加速度GR
より大きい状態に該当しているが、この時刻t4 〜t5
においては、加速度偏差ΔGのみならず速度偏差ΔVも
車輪のブレーキ圧が増圧不足気味である事実を示してお
り、このような状況下では、過剰な減圧を素早く解消し
て実車輪速VW を目標車輪速VR まで減少させることが
必要であるため、加速度偏差ΔGおよび速度偏差ΔVの
双方を考慮してブレーキ圧を急増圧することが必要であ
る。これに対し、実車輪加速度GW が目標車輪加速度G
R 以下となった状態では、車輪の運動の動的安定性が成
立した後であるから、素早く増圧して実車輪速VW を目
標車輪速VR まで素早く減少させる必要はなく、速度偏
差ΔVのみを考慮してブレーキ圧を緩増圧すれば足りる
からである。
【0039】なお、実車輪加速度GW が目標車輪加速度
R 以下となった状態では、車輪のブレーキ圧がやや
圧不足気味である事実は速度偏差ΔVにのみ反映され、
加速度偏差ΔGには反映されていないため(図11にお
いて時刻t5 〜t6 参照)、速度偏差ΔVを用いてデュ
ーティ時間DUTYが決定されるようになっているのであ
る。
【0040】実車輪加速度GW が目標車輪加速度GR
下となった状態では、そのときの実車輪速VW の目標車
輪速VR への収束性が良好であるか否かによって前記制
御係数Dの値が異なる。すなわち、 実車輪速VW
目標車輪速VR への収束性が良好ではない場合には、制
御係数DがD1 とされ、 収束性が良好である場合に
は、制御係数DがD2 (<D1 )とされるのである。こ
れにより、収束性が良好である場合には、デューティ時
間DUTYが速度偏差ΔVに対して鈍感に決定され、収束性
が良好ではない場合には、敏感に決定されることとな
る。
【0041】なお、本実施例においては、 (VW −VR )<(VGS−VR )/a(ただし、aは例
えば2) なる式が成立したときに、実車輪速VW の目標車輪速V
R への収束性が良好であると判定され、成立しないとき
に、収束性が良好ではないと判定されるようになってい
る。具体的には、例えば図11に示されているように、
対地車速VGSを表す直線と目標車輪速VR を表す直線と
の間に引かれる直線(以下、「収束性判定直線」とい
う。図においても同じとする)の下側に実車輪速VW
位置する場合には、収束性が良好であると判定され、そ
の収束性判定直線の上側に実車輪速VW が位置する場合
には、収束性が良好ではないと判定される。
【0042】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、車輪のスリップ状態が実車輪速VW と目標
車輪速VR との双方により推定されるようになってい
て、実車輪速VW が目標車輪速VR 以上であり、か
つ、実車輪加速度GW が目標車輪加速度GR 以上である
場合(急増圧)には、デューティ時間DUTYが、速度偏差
ΔVと加速度偏差ΔGとの双方によって決定され、ま
た、 実車輪速VW が目標車輪速VR 以下であり、か
つ、実車輪加速度GW が目標車輪加速度GR 以下である
場合(減圧)には、デューティ時間DUTYが加速度偏差Δ
Gのみによって決定され、また、 実車輪速VW が目
標車輪速VR 以上であり、かつ、実車輪加速度GW が目
標車輪加速度GR 以下である場合(緩増圧)には、デュ
ーティ時間DUTYが速度偏差ΔVのみによって決定される
のである。
【0043】以上、本実施例におけるアンチロック制御
の内容を概略的に説明したが、それを実行するためにR
OMに記憶させられているのが前記アンチロック制御ル
ーチンであり、図7にフローチャートで表されている。
なお、ROMにはこの他にブレーキ圧制御ルーチンも記
憶させられている。これについては図示を省略されてい
るが、このブレーキ圧制御ルーチンは、アンチロック制
御ルーチンにより決定された指令(フラグの形で発令さ
れる)およびデューティ時間DUTYをRAM(図12参
照)を介して逐次監視することにより、それら指令およ
びデューティ時間DUTYが実現されるように電磁バルブ2
0,24のソレノイドに対して信号を出力するものであ
る。
【0044】次に上記アンチロック制御ルーチンを図7
に基づき、図11の一制御例を参照しつつ具体的に説明
する。
【0045】図7の説明に入る前に、このアンチロック
制御ルーチンにおいて使用される各種フラグについて説
明する。
【0046】図12に示されているように、通常状態フ
ラグ等の各種フラグがRAMに設けられている。それら
フラグは各輪ごとに設けられている。個々に説明すれ
ば、通常状態フラグは、各輪のブレーキ圧の高さがブレ
ーキペダル10の踏力に応じて忠実に変化させられる通
常状態を実現するためのものであって、セットされてい
る状態で電磁バルブ20,24を非通電状態すなわち増
圧状態とする指令を表すフラグである。事前保持フラグ
は、アンチロック制御に先立って各輪のブレーキ圧を保
持するためのものであって、セットされている状態で電
磁バルブ20,24を保持状態とする指令を表すフラグ
である。制御中フラグは、アンチロック制御(事前保持
を除く)の実行中であるか否かを示すものであって、セ
ットされている状態で制御中であることを示すものであ
る。保持モードフラグ,減圧モードフラグおよび増圧モ
ードフラグはいずれも、アンチロック制御中に使用され
るものであって、それぞれセットされている状態で電磁
バルブ20,24について保持モード,減圧モードおよ
び増圧モードを実行する指令を表すものである。
【0047】それらフラグはいずれもコンピュータの電
源投入に伴ってリセットされる。また、通常状態フラ
グ,事前保持フラグ,減圧モードフラグおよび増圧モー
ドフラグは、前記ブレーキ圧制御ルーチンにより一回監
視されるごとにもリセットされる。また、保持モードフ
ラグは、減圧モードフラグおよび増圧モードフラグがセ
ットされるのに伴ってリセットされる。また、減圧モー
ドフラグ,保持モードフラグおよび増圧モードフラグは
いずれも、制御中フラグがリセットされるのに伴っても
リセットされる。
【0048】次に図7に基づいてアンチロック制御ルー
チンを具体的に説明する。このアンチロック制御ルーチ
ンは繰り返し実行される。各回の実行時にはまず、ステ
ップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップに
ついても同じとする)において、RAMの各種数値デー
タ(デューティ時間DUTY等)のクリア,各種フラグのリ
セット等のイニシャル処理が行われ、続いて、S2にお
いて、対地車速センサ58からの出力信号に基づいて現
在の対地車速VGSが演算され、RAMに記憶される(図
12参照)。その後、S3において、その対地車速VGS
に前記適正スリップ係数Kを乗じることによって目標車
輪速VR が演算され、これもRAMに記憶される。続い
て、S4において、その目標車輪速VR を時間に関して
微分することにより、目標車輪加速度GR が演算され
る。目標車輪加速度GRは具体的には、目標車輪速VR
の今回値から前回値(予めRAMに記憶されている)を
差し引くことによって演算される。これもRAMに記憶
される。
【0049】その後、S5〜11が実行されることにな
るが、それらS5〜11は、右前輪,左前輪,右後輪お
よび左後輪の順に一回ずつ実行されるため、まず、S5
においては、それら4輪のうち今回の実行対象車輪が決
定される。続いて、S6において、その実行対象車輪に
対応する車輪速センサ56からの出力信号に基づき、実
行対象車輪の実車輪速VW が演算され、RAMに記憶さ
れる。その後、S7において、その実車輪速VW を時間
に関して微分することにより、実車輪加速度GW が演算
される。実車輪加速度 W は具体的には、実車輪速VW
の今回値から前回値(予めRAMに記憶されている)を
差し引くことによって演算される。これもRAMに記憶
される。
【0050】続いて、S8において、今回の実行対象車
輪として左右後輪が選択されているか否かが判定され
る。デューティ時間DUTYの決定規則が左右後輪と左右前
輪とで異なっているため、左右後輪が選択されている場
合には、S9において、左右後輪専用の処理が実行さ
れ、一方、左右前輪が選択されている場合には、S10
において、左右前輪専用の処理が実行されるようになっ
ているのである。それらステップの内容については後に
詳しく説明する。
【0051】S9または10の実行が終了すれば、S1
1において、S5〜10が車両の全輪について一回ずつ
実行されたか否かが判定される。今回は未だ全輪につい
て終了してはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、
S5に戻り、前回とは異なる車輪が今回の実行対象車輪
とされ、S6〜10が同様にして実行される。そして、
S5〜10の実行が全輪について終了すれば、S11の
判定がYESとなり、S12において、アンチロック制
御装置からの自己診断信号に基づき、それに異常が発生
したか否かが判定される。異常が発生していない場合に
は、判定がNOとなり、直ちにS2に戻るが、異常が発
生している場合には、判定がYESとなり、S13にお
いて、その事実が警報器を介して運転者に警報され、S
14において、フェールセーフ処理が実行された後、S
2に戻る。
【0052】ここで、S9および10の内容について詳
しく説明する。まず、概略的に説明すれば、S9は、左
右後輪についてローセレクト制御を実行するためのもの
であり、これに対して、S10は、左右前輪について左
右輪独立制御を実行するためのものである。このよう
に、両ステップは制御方式の点で互いに異なっている
が、各輪についての実行内容は基本的には共通するた
め、左右輪独立制御のみを図8〜図10に基づいて代表
的に説明し、ローセレクト制御については説明を省略す
る。なお、それら図に記載されたステップ群をサブルー
チンということにし、また、車両の4輪のうちいずれか
にのみ着目して時間の経過をおって説明することにす
る。
【0053】まず、図8のS101において、RAMの
制御中フラグの現在の状態に基づき、今回の実行対象車
輪について現在アンチロック制御が実行中でないか否
か、すなわち非制御中であるか否かが判定される。今回
は初回の実行であって、制御中フラグがリセットされて
いるから、判定がYESとなる。
【0054】このS101の判定がYESとなれば、S
102において、ブレーキスイッチ54がON状態にあ
るか否か、すなわち、車両制動状態にあるか否かが判定
される。今回は車両制動状態にはないと仮定すれば判定
がNOとなり、S103において、RAMの通常状態フ
ラグがセットされる。その結果、前記ブレーキ圧制御ル
ーチンの実行により、実行対象車輪のブレーキ圧がブレ
ーキペダル10の踏力に応じて変化させられ得る通常状
態とされる。以上で本サブルーチンの一回の実行が終了
する。
【0055】これに対して、今回は車両制動状態にある
ためにブレーキスイッチ54がON状態にあると仮定す
れば、S102の判定がYESとなり、S104におい
て、実行対象車輪の実車輪速VW が目標車輪速VR 以下
となったか否かが判定される。実行対象車輪に過大なス
リップが生じたか否かが判定されるのである。今回はそ
うではないと仮定すれば(図11において時刻t0 〜t
1 参照)、判定がNOとなり、S105において、実行
対象車輪の実車輪加速度GW が前記基準加速度G1 より
小さくなったか否かが判定される。実行対象車輪にロッ
ク傾向が生じたか否かが判定されるのであり、今回はそ
うではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S106
において、RAMの通常状態フラグがセットされる。一
方、実車輪加速度GW が基準加速度G1 より小さくなっ
たと仮定すれば(図11において時刻t1 参照)、S1
05の判定がYESとなり、S107において、RAM
の事前保持フラグがセットされる。その結果、前記ブレ
ーキ圧制御サブルーチンの実行により、ブレーキペダル
10の踏力増加に反して実行対象車輪のブレーキ圧が保
持される。いずれの場合にも、以上で本サブルーチンの
一回の実行が終了する。
【0056】その後、S101,102,104,10
5および106または107の実行が繰り返されるうち
に、ブレーキペダル10の踏力が路面の摩擦係数μとの
関係において過大となり、実行対象車輪に過大なスリッ
プが生じて、実行対象車輪の実車輪速VW が目標車輪速
R 以下となったと仮定すれば(図11において時刻t
2 参照)、S104の判定がYESとなり、S108
おいて前記制御中フラグがセットされた後、図9および
図10のS111以下のステップにより、本来のアンチ
ロック制御が開始されることになる。
【0057】S111においては、もはやアンチロック
制御を実行する必要がないか否か、すなわち、アンチロ
ック制御を終了させるべきか否かが判定される。具体的
には、運転者によるブレーキペダル10の踏込みが解除
されてブレーキスイッチ54がOFF状態となったか否
かの判定や、対地車速VGSが制御終了車速(例えば、5
km/h)以下に低下したか否かの判定などが行われ、それ
らの判定結果に基づいてアンチロック制御を終了させる
べきか否かが判定される。今回はアンチロック制御が必
要であると判定された直後であるため、判定がNOとな
り、S112以下に移行する。
【0058】S112においては、実行対象車輪の実車
輪速VW が目標車輪速VR 以下であるか否かが判定され
る。なお、このステップは、図8のS104の判定がY
ESとなった直後においては、S104と重複したステ
ップとなってしまうが、S104の判定がYESとなっ
た後に再び本サブルーチンが実行される際には、S10
4がスキップされるため、このステップの存在に意義が
ある。今回は、実行対象車輪の実車輪速VW が目標車輪
速VR 以下であると仮定されているから、判定がYES
となり、S113において、現在保持モードが継続中で
あるか否かが判定される。RAMの保持モードフラグが
セットされているか否かが判定されるのであるが、今回
はリセットされているため、判定がNOとなる。
【0059】その後、S114において、前回実行され
たモードが減圧モードであるか否か(この情報も予めR
AMに記憶されている)が判定される。今回はそうでは
ないから、判定がNOとなり、S115において減圧モ
ードフラグがセットされ、続いて、S116において、
減圧モード用のデューティ時間DUTYが演算される。具体
的には、前述のように、 DUTY=A・(GR −GW ) なる式を用いて演算される。演算されたデューティ時間
DUTYはRAMに記憶される。その結果、前記ブレーキ圧
制御ルーチンの実行により、減圧モードの実行が開始さ
れることになる(図11において時刻t2 〜t3
照)。以上で本サブルーチンの一回の実行が終了する。
【0060】その後、図8のS101が実行されれば、
今回は制御中フラグがセットされているため、判定がN
Oとなり、S102,104および107がスキップさ
れ、図9のS111に移行する。今回は未だアンチロッ
ク制御を継続させる必要があると仮定すれば、このS1
11の判定がNOとなり、S112において、依然とし
て実車輪速VW が目標車輪速VR 以下であるか否かが判
定される。今回はそうであると仮定すれば、判定がYE
Sとなり、S113において、現在保持モードの実行中
であるか否かが判定されれば、判定がNOとなり、S1
14において、前回減圧モードが実行されたか否かが判
定されれば、判定がYESとなる。その後、S117に
おいて、実行対象車輪の実車輪加速度GW が目標車輪加
速度GRより大きくなったか否かが判定される。実行対
象車輪にロック傾向の減少傾向が生じたか否かが判定さ
れるのである。今回は未だ減少傾向が生じてはいないと
仮定すれば、判定がNOとなり、S115に移行し、再
び減圧モードが実行されるが、今回は減少傾向が生じ、
実行対象車輪の実車輪加速度GW が目標車輪加速度GR
より大きくなったと仮定すれば(図11において時刻t
3 参照)、S117の判定がYESとなり、S118に
おいて保持モードフラグがセットされる。減圧モードか
ら保持モードに移行させられるのである。以上で本サブ
ルーチンの一回の実行が終了する。
【0061】その後、再び本サブルーチンが実行されれ
ば、S113において、現在保持モードの実行中である
と判定され、S119において、実行対象車輪の実車輪
加速度GW が目標車輪加速度GR より小さくなったか否
かが判定される。減圧モードの実行時間が不足していた
ため保持モードの実行により実行対象車輪にロック傾向
の増加傾向が生じてしまったか否かが判定されるのであ
る。今回はそうではないと仮定すれば、判定がNOとな
り、以上で本サブルーチンの一回の実行が終了する。し
たがって、今回は、依然として保持モードが継続される
ことになる。
【0062】これに対して、今回は、実車輪加速度GW
が目標車輪加速度GR より小さくなったと仮定すれば、
S119の判定がYESとなり、S120において、減
圧モードフラグがセットされ、S121において、前記
S116におけると同様にして、減圧モード用のデュー
ティ時間DUTYが演算され、RAMに記憶される。保持モ
ードから再び減圧モードに移行させられて、実行対象車
輪のロック傾向が確実に抑制されるのである。以上で本
サブルーチンの一回の実行が終了する。
【0063】以上のようにして減圧モードおよび保持モ
ードが実行されるうち、実行対象車輪のロック傾向が十
分に減少し、その結果、実車輪速VW が目標車輪速VR
より大きくなったと仮定すれば(図11において時刻t
4 参照)、S112の判定がNOとなり、図10のS1
31以下のステップに移行する。
【0064】S131においては、増圧モードフラグが
セットされ、続いて、S132において、実車輪加速度
W が目標車輪加速度GR より大きいか否かが判定され
る。今回はそうであると仮定すれば、判定がYESとな
り、S133において、増圧モード用のデューティ時間
DUTYが演算される。今回は急増圧のためのデューティ時
間DUTYが演算されるのであり、具体的には、前述のよう
に、 DUTY=B・(GW −GR )+C・(VW −VR ) なる式を用いて演算される。以上で本サブルーチンの一
回の実行が終了する。
【0065】その後、この急増圧が継続されるうちに、
実車輪加速度GW が目標車輪加速度GR 以下となったと
仮定すれば(図11において時刻t5 参照)、S132
の判定がNOとなり、S134において、実行対象車輪
の実車輪速VW の目標車輪速VR への収束性が良好であ
るか否かが判定される。具体的には、前述のように、 (VW −VR )<(VGS−VR )/a なる式が成立するか否かが判定される。今回は収束性が
良好であると仮定すれば、判定がYESとなり、S13
5において、前述のように、 DUTY=D1 ・(VW −VR ) なる式を用いて、緩増圧のためのデューティ時間DUTYが
演算され、一方、今回は収束性が良好ではないと仮定す
れば、S134の判定がNOとなり、S136におい
て、前述のように、 DUTY=D2 ・(VW −VR ) なる式を用いて、緩増圧のためのデューティ時間DUTYが
演算される。いずれの場合にも、以上で本サブルーチン
の一回の実行が終了する。
【0066】以上のようにして減圧モード,保持モード
および増圧モードがそれらの順に実行される単位制御を
基本とし、その単位制御が何回も繰り返されれば、実行
対象車輪の実車輪速VW が目標車輪速VR に精度よく追
従することとなり、路面の摩擦係数μを有効に利用しつ
つ車両が制動されることになる。
【0067】なお、この状態でブレーキペダル10の踏
込みが解除されるか、または、対地車速VGSが十分に小
さくなった場合などには、図9のS111の判定がYE
Sとなり、一回のアンチロック制御を終了させるべく、
S122において制御中フラグがリセットされ、S12
3において通常状態フラグがセットされ、以上で本サブ
ルーチンの一回の実行が終了する。
【0068】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、車両制動時における車輪のスリップ状態が
推定され、その推定されたスリップ状態に応じてデュー
ティ比の決定規則が変化させられるため、デューティ比
が車輪のスリップ状態との関係において十分に適正に決
定され、ブレーキ圧の必要以上の変化が抑制され、その
結果、アンチロック制御が十分に高い精度で行われると
いう効果が得られる。
【0069】また、本実施例においては、コントローラ
50の、図9のS112〜S115,S117,S11
9およびS120と、図10のS131およびS132
とを実行する部分が、本発明における「モード決定手段
5」の一態様を構成し、コントローラ50の、図9のS
116およびS121と、図10のS133,S135
およびS136とを実行する部分が、本発明における
「デューティ比決定手段6」の一態様を構成している。
【0070】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明したが、この他の態様で本発明を実施するこ
とができる。
【0071】例えば、上記実施例においては、一回のデ
ューティサイクルにおいて、保持時間を固定する一方、
変圧時間を可変にすることによってデューティ比を可変
にしていたが、例えば、変圧時間を固定する一方、保持
時間を可変にすることによってデューティ比を可変にす
るようにして本発明を実施することができる。
【0072】また、前記実施例においては、対地車速V
GSに適正スリップ係数Kが乗じられることによって目標
車輪速VR が決定されるようになっていたが、例えば、
対地車速VGWから一定値Δを差し引くことによって目標
車輪速VR が決定されるようにして本発明を実施するこ
とができる。
【0073】また、前記実施例においては、電磁バルブ
20,24が、2個の2位置弁の組合せから成るものと
されていたが、例えば、1個の3位置弁から成るものと
することができる。また、それらはいずれも、液圧源と
ホイールシリンダとリザーバとの間の作動液の流通状態
を複数の状態に切り換える状態切換式であるが、例え
ば、スプールに互いに逆向きに作用する磁気力と液圧と
をスプール自身によってバランスさせることにより液圧
の高さを磁気力に対してリニアに変化させるリニア制御
式とすることができる。
【0074】これらの他にも特許請求の範囲を逸脱する
ことなく、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を
施した態様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を概念的に示すブロック図であ
る。
【図2】本発明の一実施例であるアンチロック制御装置
を含むアンチロック型ブレーキ装置を示すシステム図で
ある。
【図3】図2におけるコントローラのコンピュータのR
OMの構成を概念的に示す図である。
【図4】上記アンチロック制御装置におけるモード決定
規則を説明するための表である。
【図5】そのアンチロック制御装置がデューティ制御を
実行するための電気信号の構成を示す図である。
【図6】そのアンチロック制御装置におけるDUTY演算式
を各モードごとに示す表である。
【図7】上記コンピュータにより実行されるアンチロッ
ク制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】図7におけるS9および10であるサブルーチ
ンの一部を示すフローチャートである。
【図9】そのサブルーチンの別の一部を示すフローチャ
ートである。
【図10】そのサブルーチンのさらに別の一部を示すフ
ローチャートである。
【図11】上記アンチロック制御装置による一制御例を
示すグラフである。
【図12】上記コンピュータのRAMの構成を概念的に
示す図である。
【符号の説明】
14 マスタシリンダ 20,24 電磁バルブ 22,26 ホイールシリンダ 50 コントローラ 56 車輪速センサ 58 対地車速センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 米山 雅利 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−182155(JP,A) 特開 平4−31158(JP,A) 特開 平1−282061(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車輪の実車輪速を検出する車輪速センサ
    と、 その車輪のブレーキ圧を電気的に制御する電磁バルブ
    と、 前記車輪速センサにより検出された実車輪速と車両の走
    行速度との関係に基づき、車両制動時に前記車輪がロッ
    ク状態に陥らないように前記電磁バルブを制御するコン
    トローラとを含むアンチロック制御装置において、 前記車両の路面に対する走行速度である対地車速を検出
    する対地車速センサを設けるとともに、前記コントロー
    ラを、前記電磁バルブをデューティ制御することにより
    前記ブレーキ圧を制御するデューティ制御式とし、か
    つ、そのコントローラに、(a) 前記ブレーキ圧の制御モ
    ードを減圧モードと急増圧モードと緩増圧モードと保持
    モードとのいずれかに決定するモード決定手段と、(b)
    減圧モードの決定時には、前記車輪速センサにより検出
    された実車輪速の前記対地車速センサにより検出された
    対地車速に基づく目標車輪速からの偏差である速度偏差
    と、前記実車輪速の時間微分値である実車輪加速度の前
    記目標車輪速の時間微分値である目標車輪加速度からの
    偏差である加速度偏差とのいずれかに基づいて前記電磁
    バルブのデューティ比を決定し、急増圧モードの決定時
    には、速度偏差と加速度偏差との双方に基づいてデュー
    ティ比を決定するデューティ比決定手段とを設けたこと
    を特徴とするアンチロック制御装置。
  2. 【請求項2】前記デューティ比決定手段が、前記減圧モ
    ードの決定時には、前記加速度偏差に基づいて前記デュ
    ーティ比を決定し、前記緩増圧モードの決定時には、前
    記速度偏差に基づいてデューティ比を決定するものであ
    る請求項1記載のアンチロック制御装置。
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