JP2654232B2 - 高圧相物質単結晶の製造方法 - Google Patents

高圧相物質単結晶の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素などの高圧
相物質単結晶の製造方法に関し、特に、切削工具、精密
工具、半導体材料、電子部品、光学部品などに用いられ
る、10mm×10mm程度以上の比較的大型の高圧相物質単結
晶の製造方法に関するものである。
[従来の技術] ダイヤモンド、立方晶窒化硼素を代表とする高圧相物
質は、高硬度,高熱伝導率,透明度などの数多くの優れ
た性質を有することから、各種工具,光学部品,半導
体,電子部品などの材料として幅広く用いられており、
今後さらに重要性が増すものと考えられる。
高圧相物質のうちダイヤモンドは、これまで知られて
いる物質中で最高の硬度を示すこと、電気的には非常に
よい絶縁体であること、熱伝導率が大きく、高温で銅の
5倍程度の値を示すことなどの優れた性質を同時に有す
る。また赤外領域の一部を除いて、紫外,可視,赤外線
の広い波長範囲にわたって光の透過性がよい。また不純
物の添加により半導体となるなどの物性を有している。
これらの性質を利用して、工具表面へのコーティング,
電子材料,特に高出力の半導体レーザをもLSIなどの放
熱板などへの応用が既に進められている。また、高温領
域でも動作可能な高温半導体としての応用も考えられて
いる。
ダイヤモンドは過去には天然に産出するものが工業用
に使用されていたが、現在では人工的に合成されたもの
が中心に用いられている。従来から、第9図に示すよう
な多結晶ダイヤモンドについては、プラズマCVD(Chemi
cal Vapor Deposition)法などの気相合成法によって
比較的大型のものが人工的に製造されていた(たとえば
「応用物理,第55巻第7号,1986,p640〜p653」参照)。
しかしながら、このような多結晶ダイヤモンドは、基板
1上に形成された多結晶ダイヤモンド層2が均一でない
ため、研磨した際に十分平滑な面が得られないなどの問
題があった。よって、ダイヤモンドの用途の中でも特に
平滑な面を必要とする超精密工具や光学部品、半導体な
どに用いられる場合は、結晶方位に均一な単結晶ダイヤ
モンドを用いることが必要であった。このような単結晶
ダイヤモンドは天然にも産出されるが、極めて希少であ
るため、従来から人工的に製造する方法が検討されてい
る。
現在人工的にダイヤモンドを合成する方法として実現
しているものに、超高圧法と上述の気相合成法がある。
超高圧法ではダイヤモンドが安定な状態を保つ超高圧下
で10ct(ctはcaratの略,1carat=200mg)以上のダイヤ
モンド単結晶が合成された事例が報告されている(たと
えば「INDIAQUA No.50,1988,p126」参照)。また気相
合成法では天然または人工のダイヤモンド単結晶上にダ
イヤモンド単結晶層が成長することが確認されており
(たとえば「Journal of Crystal Growth,Vol.31,19
75,p44」参照)、異種の基板上でダイヤモンドの単結晶
を成長させる方法も開発されている(たとえば「特開昭
63−224225号公報」「SCIENCE Vol.243,1989,p1047」
参照)が、この方法では現在大型で数十μm以上の厚さ
をもつ良質のダイヤモンド単結晶は得られていない。
立方晶窒化硼素(c−BN)は、ダイヤモンドには劣る
ものの非常に高い熱伝導率(Alの5倍程度)と高硬度を
有している。さらに、鉄系材料は切削時に発生する熱に
よりダイヤモンドと反応するため、ダイヤモンドによる
加工が難しいのに対し、立方晶窒化硼素はそのようなこ
とはなく、鉄系材料の加工に有効であるといった特色も
ある。また立方晶窒化硼素に期待される将来の用途とし
て、その高い抵抗率と熱伝導率を利用し、LSIなどの電
子素子の放熱基板として用いることが考えられる。また
ドーピング物質によりp型,n型半導体とすることも可能
であると考えられる。これらのエレクトロニクス分野へ
の立方晶窒化硼素の応用のためには、単結晶薄膜の形成
技術が必要である。
立方晶窒化硼素の場合も、プラズマCVD法などにより
多結晶膜を気相合成する方法が開発されている(たとえ
ば「真空,第31巻,6号,1988,p14」参照)。立方晶窒化
硼素は、その結晶体がダイヤモンドよりも鉄鋼類の加工
に適しているため、多結晶の物については大量に生産さ
れている。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、上記従来のダイヤモンド単結晶あるい
は立方晶窒化硼素の気相合成法には、次のような問題点
があった。
超高圧法によるダイヤモンド単結晶の製造は、超高圧
容器の大きさに制限があるため大きな面積のダイヤモン
ド単結晶を成長させることは困難である。また気相合成
のための装置は大掛かりでかつ高価なものになる。気相
合成法によって天然や人工のダイヤモンド単結晶の基板
を核としてダイヤモンド単結晶層を成長させる場合に
は、天然や人工のダイヤモンド単結晶の大型のものを入
手することは現状では困難であるため、大きな面積のも
のは製造できない。すなわち、高圧法による人工のダイ
ヤモンドは直径10mmのものまで製造可能であるが、非常
に高価であり、また天然のダイヤモンドは単結晶はそれ
よりもさらに高価である。また、異種基板上の気相合成
法による単結晶成長は、ダイヤモンドと基板との格子定
数や熱膨張係数が異なるために、歪みが発生し欠陥の多
い単結晶しか得られないという問題がある。
格子定数の異なる単結晶の成長では、原子配置にずれ
が生じることから、格子不整合転移とよばれる欠陥を生
じる。また熱膨張係数の差は成長温度(700ないし1000
℃)から室温に戻したときに伸縮率の相違となって歪み
を生じる。ただし、高圧相物質同士では、格子定数が近
く(ダイヤモンドと立方晶窒化硼素との格子定数の差は
1.4%)、熱膨張係数も近いので比較的問題が少ない。
また立方晶窒化硼素は、ダイヤモンドと同様にCVD法
などにより比較的手軽に合成されるようになったもの
の、高機能化を実現するための結晶状態(単結晶,多結
晶,非晶質)の制御を容易に行なう技術は確立されてい
ない。したがって、立方晶窒化硼素をLSIなどの電子素
子に適用するために不可欠な単結晶は気相合成では微小
のものしか得られておらず、単結晶を必要とする超精密
加工分野では、立方晶窒化硼素は用いられていなかっ
た。
なお、下記の表1に、主な用途についての表面粗さの
要求水準と、主な材質の研磨後の表面粗さの水準を、と
もにRmaxで示す。
この発明は上記従来の問題点に鑑み、電子素子や超精
密部品などのエレクトロニクス分野に応用可能な、均質
かつ大型の高圧相物質単結晶を、気相合成によって得る
ことのできる製造方法を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] この発明は、25℃の平衡状態の圧力領域が1000気圧以
上である高圧相物質単結晶の製造方法に関する。本発明
の高圧相物質の製造方法の特徴は、その高圧相物質が成
長する隣り合う単結晶板上の主成長表面の面方位が相互
になす角度が5゜以内であり、その主成長表面のそれぞ
れの面に平行な面における隣り合う単結晶板の結晶方位
が相互になす角度が5゜以内であるように、かつ、その
間隔が300μm以内になるように、全てが実質的に相互
に同じ結晶方位をもつ、その高圧相物質の複数の単結晶
板を配置して、気相成長の核となる基板を形成し、この
基板上に気相合成法により高圧相物質単結晶層を形成す
る点にある。
[作用] この発明によれば、第1図に示すように、ほぼ同一平
面上にある複数の高圧相物質単結晶の板の種面3a上に高
圧相物質単結晶相4が一体に形成される。
隣り合う高圧相物質の単結晶板3は、それぞれの成長
面の法線方向の結晶方位同士がなす角度(第2図に示す
α)および成長面に平行な面内におけるそれぞれの結晶
方向のなす角度(第3図になすβ)がいずれも5゜以内
になるように設定する。その理由は以下の通りである。
隣り合う高圧相物質の単結晶板3の結晶方位間の角度の
うち、成長面の法線方向のなす角度αが5゜以内であれ
ば、隣同士の成長相が合体した直後に明瞭な粒界が観察
されるが、成長相の上部に至ると、粒界は、観察されな
くなる。そして少数の双晶や欠陥は観察されるものの、
ほぼ均質な高圧相物質単結晶層4が成長する。また角度
αが5゜以上である場合は粒界が残りやすく、双晶や欠
陥も多くなる。隣り合う高圧相物質の単結晶板3の成長
面に平行な面における結晶方位のなす角度βも、5゜以
上になると高圧相物質の単結晶板3の境界に双晶や欠陥
が生じやすくなる。α、βが5゜以下で双晶や欠陥が生
じにくいのは、不整合を欠陥などで吸収して粒界が消滅
するためであると考えられる。
また、隣り合う高圧相物質単の結晶板3同士の隙間
(第3図のδ)が300μm以下になるように高圧相物質
の単結晶板3を配置する。これは、隙間δが300μmを
こえると、高圧相物質の単結晶板3の境界に欠陥が生じ
やすくなるからである。
さらに、高圧相物質単結晶の成長面となる面の結晶方
位は、基板となる単結晶板の主面が(100)面あるいは
(111)面であることが好ましい。これは、(100)面お
よび(111)は比較的加工性がよく、これらの面を成長
面とすることにより、基板となる単結晶の製造が容易で
ある上に、単結晶層4が成長した後の表面が比較的平滑
で研磨が容易であるからである。
なお、理想的には、基板を形成する複数の高圧相物質
の単結晶板3の結晶方位のなす角度(α,β,の双方を
含む)をともに2゜以内の角度で一致させて配置するの
が好ましい。角度α,βともに2゜以内であれば、第1
図に示すように高圧相物質単結晶層4は合体した直後か
ら乱れなく一体となって均一に成長する。
[実施例] 以下本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
実施例1 本実施例においては、超高圧法により人工合成され
た、窒素含有量が5ppm以上の、いわゆるIp型ダイヤモン
ドの単結晶を(100)面が成長面となり、(110)面が側
面となるように、縦4mm,横4mm,厚さ0.3mmのサイズに成
形、研磨したものを、ダイヤモンドの単結晶板3として
用いた。このダイヤモンドの単結晶板3を縦横各4列に
計16個並べて気相合成用の基板として用いた。これらを
隣り合う単結晶のそれぞれの結晶方位同士のなす角度の
ばらつきが1.5゜以内になるように配置した。各単結晶
の板3の結晶方位同士のなす角度のばらつきは、第5図
に示すX線回折を利用した測定法を用いた。この測定法
は、第5図を参照して、X線発生装置とX線検出器12の
位置を固定し、単結晶板3の主面が(100)面の場合
に、X線の(400)回折線13がX線検出器12に入るよう
に、試料台15を平行移動あるいは揺動回転させて調節す
る。この状態における単結晶板3の法線方向は、第5図
に示す直線MN方向として一義的に決定される。なお第5
図において、MはX線の(100)面への入射点、θはX
線14および(400)回折線13と(100)面とのなす角、H1
およびH2はそれぞれM点から等距離にあるX線14上およ
び(400)回折線13上の点、N点はX線14と(400)回折
線13とのなす平面内においてH1、およびH2点から引いた
垂線の交点である。X線発生装置11とX線検出器12とが
固定されているため、試料台15の揺動回転角を計測する
ことにより、単結晶板3の(100)面の法線方向のばら
つきを検出することができる。この測定方法による測定
精度は0.1゜程度である。
このようにして形成した基板1上に公知のマイクロ波
プラズマCVD法によって、水素,メタンガスを、メタン
ガスの水素に対するモル比が1.5%になるように供給し
て、ガス圧力60Torr,基板温度870℃でダイヤモンドの成
長を200時間かけて行なった。ダイヤモンドの成長を終
えた基板1を取り出して観察したところ、16枚のダイヤ
モンドの単結晶板3からなる基板1上に成長したダイヤ
モンドの結晶は、すべて一体のダイヤモンド単結晶とな
っていた。一体の単結晶になっているか否かの判断は、
X線回折法を用いて行なった。この判定は、電子線回折
を用いて行なうこともできる。また重量の増加から推定
した成長量は、2.0ctであった。この単結晶を割って調
べたところ、一体となった成長層の厚さは、どの部分に
おいても150μm以上であった。
X線回折によりこの単結晶の6箇所を任意に抽出して
結晶方向を観察したところ、その成長面の法線方向の結
晶方位のばらつきは、最大1.3゜であった。この単結晶
のラマン散乱スペクトルには、ダイヤモンド以外の特徴
を示す散乱は観察されなかった。
以上のことから、16mm角の面積と150μm以上の厚さ
を有する良質のダイヤモンド単結晶を得たことが判明し
た。
このようにして得られたダイヤモンド単結晶層4を板
状にスライスして基板1とし、それを同一平面上に並べ
て上記実施例と同様の気相合成を行なうことにより、さ
らに大きな面積でかつ結晶方位のばらつきの少ないダイ
ヤモンド単結晶を得ることができる。
また、上記実施例のように成長をさせたダイヤモンド
単結晶層4の上に、硼素や窒素などの不純物を均一に含
有させることも容易に行なうことができる。
なお上記実施例では、ダイヤモンド単結晶の成長面と
して(100)面を選んだが、(110)面または(111)面
あるいはその他の面を成長面とすることも可能である。
しかしながら、得られる単結晶の加工が容易であること
や、成長面の平坦度が良好であることなどの点から、
(100)面を成長面とするのが最も好ましい。
また上記実施例では、気相合成法として、第6図にそ
の概略構成を示すマイクロ波プラズマCVD装置を用いて
行なった。このマイクロ波プラズマCVD装置において
は、ガス供給系21からCVDに必要なガスが反応管22に供
給され、圧力計23で圧力をモニタされて排気系24からの
排気を調節することにより所定の圧力が保持される。マ
イクロ波発振器25から発振されたマイクロ波は、マイク
ロ波出力計26へモニタされて調節され、反応管22内に置
かれた試料27の近傍にプラズマ28を発生させる。
なお本実施例では、気相合成法としてプラズマCVD法
を用いたが、他の方法を用いることも可能である。他の
気相合成法として、熱電子放射材を加熱してガスを分解
励起する熱CVD法、ガスをイオン化して基板に照射する
イオンビーム法、レーザ光線によりガスを分解し励起す
るレーザCVD法などがあげられる。これらの気相合成法
の中では、大きな面積の基板1上に均一にダイヤモンド
を成長させることができるという点で、プラズマCVD法
あるいは熱CVD法を用いることが好ましい。
実施例2 本実施例においては、超高圧法により人工合成された
立方晶窒化硼素の単結晶板16を(111)面が成長面とな
るように正三角形に切りだし、側面は成長面に対して垂
直となるように研磨した。このようにして正三角形の1
辺が0.8mm,厚さ0.3mmのサイズに成形、研磨した立方晶
窒化硼素の単結晶板16を4個並べて、第7図に示すよう
な基板1を形成して使用した。配列された単結晶板16の
それぞれの(111)面の法線方向のばらつき角度を、実
施例1と同様のX線回折を用いた方法で測定したとこ
ろ、最大のばらつき角度は3.5゜であった。
単結晶板16を配列して形成した基板1上に、第8図に
示す装置を使用した高周波プラズマCVD法によって、立
方晶窒化硼素の単結晶層を成長させた。原料ガスとし
て、ジボラン(B2H6)を10sccm、窒素を100sccm、水素
を1000sccm、アルゴンを500sccmを石英反応管29に供給
し、ガス圧力20Torr、高周波発振器30(13.56MHz)の出
力を1200W、基板温度970℃の条件で、100時間成長を行
なった。なお、高周波が供給される誘導コイル31に沿っ
て、冷却水を流す冷却管32が配されている。その結果、
基板1上に厚さ35μmの立方晶窒化硼素の単結晶層を得
た。この単結晶層の成長後の表面粗さは、Rmaxで15000
Åであったが、研磨した後には、表面粗さがRmaxで600
Åの平滑な表面を得ることができた。この単結晶層中の
(111)面の結晶軸の傾きのばらつきは2.4゜であった。
実施例3 実施例1で用いたものと同じ寸法のダイヤモンドの単
結晶板3を、横に3個縦に2個計6個同一平面上に並べ
て、実施例1と同じ装置で、気相合成の条件を種々に変
化させて、単結晶の成長速度、成長した単結晶層の結晶
軸の傾き、研磨後の表面粗さを調べた。成長時間はいず
れも120時間とし、表2に記載していない条件は実施例
1と同様である。本実施例の結果は表2に示す通りであ
る。
表2に示す結果からわかるように、角度α,βのばら
つきが5゜以上のものや、単結晶板3の間隔が300μm
以上の場合には、研磨しても平滑な表面が得られず、成
長層中の結晶軸の傾きαもより大きくなる傾向にあるこ
とがわかる。また表2の試料No.14は6個の単結晶板3
のうち3個ずつ成長面の方位を異ならせたものである。
その結果、角度α,βや単結晶板3の間隔δを好ましい
値に設定しているにもかかわらず、研磨後の表面粗さ
が、成長面の方位を統一した試料に比べて、より高くな
っていることがわかる。
実施例4 実施例1と同様の条件で、原料ガス中に水素に対して
60ppmのジボラン(B2H6)ガスを混入して成長を行なわ
せた。その結果得られた単結晶ダイヤモンド膜は全面に
わたって平均の抵抗率が2×103Ω・cmの半導体となっ
ていた。このようにして、本発明の方法で従来にない大
きな面積のダイヤモンド半導体素子用の単結晶基板を得
ることができることがわかる。
実施例5 実施例2で使用した立方晶窒化硼素の単結晶板16から
なる基板1上に、実施例1と同様の条件で、単結晶ダイ
ヤモンド層を成長させた。この単結晶ダイヤモンド層の
厚さは47μmで、種面の面方位は(111)、X線回折で
調べた単結晶ダイヤモンド層中の(111)面の傾きのば
らつきは、4.4゜であった。
以上の各実施例からわかるように、本発明によれば、
複数の高圧相物質の単結晶板を結晶方位がほぼ等しくな
るようにかつ隣接して配置して基板1を形成し、その上
に気相合成法で高圧相物質を成長させることにより、均
質で比較的厚く、かつ大きな面積の高圧相単結晶を容易
に得ることができる。
またこの発明によれば、結晶方位を任意に選んで高圧
相単結晶を成長させることができるため、加工性のよい
単結晶を得ることができる。さらに本発明の製造方法で
得られる高圧相単結晶は、硼素や窒素を容易に含有させ
ることが可能である。したがって本発明の製造方法によ
って得られる高圧相単結晶は、精密工具の刃先、耐摩工
具、耐熱工具、半導体基材、放熱基板、高圧相半導体材
料、光学材料、音響振動板などに幅広く用いることがで
きる。
なお、以上の各実施例は、いずれもダイヤモンドある
いは立方晶窒化硼素についてのものであるが、その他の
高圧相物質である六方晶ダイヤモンドやウルツ鉱型窒化
硼素にも同様に適用することができる。
また、本発明の技術は、高圧相以外で気相合成が可能
な大型単結晶材料(たとえば珪素、炭化珪素、砒化ガリ
ウム(GaAs)、酸化亜鉛など)の製造にも用いることが
できるが、これらの材料は常圧下で良質の単結晶が得ら
れるので、本発明の方法によれば、かえって高価とな
り、不適当である。
[発明の効果] 以上のように本発明によれば、複数の高圧相物質の単
結晶板を結晶方向が略等しくなるように、かつ近接させ
て配置することによって核となる基板を形成し、その上
に気相合成法で高圧物質を成長させることにより、均質
で大型かつ大面積の高圧相物質の単結晶を容易に得るこ
とができる。
またこの発明によれば、結晶方位を任意に選んで高圧
物質の単結晶を成長させることができるため、加工性の
よい単結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、基板の結晶方位にばらつきがない場合の、本
発明のダイヤモンド単結晶の製造方法による結晶成長の
様子を模式的に示す断面図である。 第2図は、成長面の方線方向の基板の結晶方位がばらつ
いている場合の、結晶成長の様子を模式的に示す断面図
である。 第3図は、本発明のダイヤモンド単結晶の製造方法にお
ける基板となるダイヤモンドの単結晶板の配置を示す平
面図である。 第4図は、本発明の実施例において使用する高圧相物質
の単結晶板3の結晶面の表示を説明するための斜視図で
ある。 第5図は、本発明の各実施例における高圧相物質単結晶
の(100)面の法線方向のばらつきを、X線回折法を用
いて測定する方法を説明するための斜視図である。 第6図は、本発明の実施例1においてダイヤモンド単結
晶を気相合成するのに用いたマイクロ波プラズマCVD装
置の概略構成を示す図である。 第7図は、本発明の実施例2において使用する立方晶窒
化硼素単結晶の配列と結晶面の表示を説明するための斜
視図である。 第8図は、本発明の実施例2において用いた高周波プラ
ズマCVD装置の概略構成を示す図である。 第9図は、従来の気相合成法によって基板上に成長した
多結晶ダイヤモンドの結晶成長の様子を示す断面図であ
る。 図において、1は基板、3は高圧相物質の単結晶板、3a
は主面、4は高圧相物質単結晶層である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】25℃での平衡状態の圧力領域が1000気圧以
    上である高圧相物質の単結晶の製造方法であって、 その高圧相物質が成長する隣り合う単結晶板上の主成長
    表面の面方位が相互になす角度が5゜以内であり、その
    主成長表面のそれぞれの面に平行な面における隣り合う
    単結晶板の結晶方位が相互になす角度が5゜以内である
    ように、かつ、その間隔が300μm以内になるように、
    全てが実質的に相互に同じ結晶方位をもつ、その高圧相
    物質の複数の単結晶板を配置して、気相成長の核となる
    基板を形成する工程と、 この基板上に気相合成法により高圧相物質単結晶層を形
    成する工程と を備えた高圧相物質単結晶の製造方法。
JP2131994A 1989-05-22 1990-05-22 高圧相物質単結晶の製造方法 Expired - Lifetime JP2654232B2 (ja)

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