JP2554862Y2 - 温度感応型流体式ファン・カップリング装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、自動車における機関冷却用のファン回転を
走行状態に応じて外部周囲の温度変化を感知して自動制
御せしめ、機関に冷却風量を供給する温度感応型流体式
ファン・カップリング装置の構造の改良に関するもので
ある。

（従来の技術） 従来、この種のファン・カップリング装置としては、
例えば第９図及び第10図に示すように、本考案の要部に
対比する駆動ディスク（27）部に複数の流通孔（27′）
を設け、外部周囲の温度変化に追従して連動する内部に
備えた弁部材（28）による仕切板（25）上の流出調整孔
（25′）での開閉に伴う油溜り室（26）側からトルク伝
達室（24）側への油の流出調整機能によってのみ回転伝
達制御を行うように構成されていた。

（考案が解決しようとする課題） しかしながら、このような従来の技術においては、外
部周囲の温度変化のみによる伝達制御の機構によるた
め、ファンによる風量をあまり必要としない高速走行状
態での高回転時に第６図ａに（ロ）で示すように過剰な
ファン回転により冷却風量の供給が多過ぎたり、又、通
常走行状態からの加速時において大きな速度差の場合と
小さな速度差の場合を、夫々第６図ｂ及び第６図ｃに
（ロ）で示すように駆動軸の急な回転数の上昇によりフ
ァン回転数も上昇することになり、、ファン・カップリ
ング装置としての本来の目的、即ち消費馬力の節減並び
にファン騒音の低減を充分に満足するに至らず、さらに
その改善が望まれるところであった。

本考案は従来の有する前記問題に鑑みてなされたもの
で、高速走行状態での高回転時にあっても、又通常走行
状態からの急加速時にあってもファン回転数、即ち冷却
風量を抑制して適正な供給を行い、消費馬力の節減並び
にファン騒音の低減を一層効果的となすと共に、多段制
御を可能とした温度感応型流体式ファン・カップリング
装置を提供することを目的とするものである。

（課題を解決するための手段） 上記目的を達成するため、本考案は先端に流通孔を有
する駆動ディスクを固着した回転軸体に軸受を介して支
承され、かつ外周に冷却ファンを取付けたケースとカバ
ーとからなる密封器匣の内部を、油の流出調整孔を有す
る仕切板によって油溜り室と前記駆動ディスクを内装す
るトルク伝達室とに区劃し、回転時の油の集溜する駆動
ディスクの外周壁面に対向する密封器匣側の内周壁面の
一部にダムと、これに連なってトルク伝達室側から油溜
り室側に通ずる循環流通路を形成すると共に、油溜り室
側に位置してその一端を仕切板上に固定し、他端側を前
記流出調整孔附近にあって外部周囲の温度が設定値を越
えると該流出調整孔を開放し、設定値以下では閉鎖する
弁部材を、前記カバーの外面に設けた感温体の温度変化
に伴う変形に連動するように内部に備え、駆動ディスク
とのなす前記ケースおよびカバーの外方附近の対向壁面
に設けたトルク伝達間隙部での油の有効接触面積を増減
させて、駆動側の回転軸体側から被駆動側の密封器匣側
へのトルク伝達を制御するようにしてなるファン・カッ
プリング装置において、前記駆動ディスクを円盤状とな
して径方向または略同一円周上に複数個設けたそれぞれ
の流通孔部附近の該駆動ディスク上に、回転軸体の回転
数の増加につれ該流通孔を順次閉鎖する板状からなる遠
心バルブを備えて構成したことを特徴とする温度感応型
流体式ファン・カップリング装置。

（作用） 本考案はこのような構成によるため、前記駆動ディス
ク上の流通孔部に設けた遠心バルブの併備した構造によ
り、高速走行状態での高回転時、又は通常走行状態から
の大きい速度差若くは小さい速度差の加速時共に該遠心
バルブによって流通孔を閉孔せしめることとなり、従っ
てトルク伝達室内のトルク伝達間隙部のなす一方の片面
（正面）側でだけ回転伝達機能を行い、ファン回転数を
低下させ冷却風量を減少せしめ、更に径方向または略同
一円周上に複数個設けた流通孔部を遠心バルブにより順
次開閉せしめることにより多段式にファン回転数を上下
できるものである。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明すれば、
第１図は本考案の温度感応型流体式ファン・カップリン
グ装置の一部切欠き縦断面図、第２図は第１図の本考案
の基本構成の要部に係る遠心バルブの低速回転時の開孔
状態を示す一部の切欠き正面図、第３図は第２図の同上
高速回転時の閉孔状態を示す正面図、第４図及び第５図
はそれぞれ本考案の実施例の第２図及び第３図相当図、
第６図ａ〜ｃは本考案と従来例を比較した特性性能曲
線、第７図は本考案の一実施例の特性性能曲線図、第８
図は他の実施例の部分拡大した第１図相当図であって、
（１）は駆動側をなす回転軸体であり、その先端に１個
所以上の流通孔（７′）を有する駆動ディスク（７）を
固着し、且つ該軸体上に軸受を介して外周に冷却ファン
（図示せず）を取付けたカバー（３）とケース（２）と
からなる密封器匣を支承する。（５）は仕切板であり、
密封器匣の内部を油溜り室（６）と前記駆動ディスク
（７）を内装するトルク伝達室（４）とに区劃してなる
もので、該仕切板には油溜り室（６）よりトルク伝達室
（４）への油の流出調整孔（５′）が設けてある。ま
た、前記駆動ディスク（７）はトルク伝達室（４）内に
あってその外方附近で密封器匣の対向壁面にトルク伝達
のための微少間隙を保持してある。（８）は流出調整孔
（５′）部を開閉する弁部材であり、油溜り室（６）側
に位置してその一端を鋲着固定し、他端を該流出調整孔
部附近にあって設けてなるものである。そして前記カバ
ー（３）の外面（ケース（２）と共に構成した密封器匣
内部と相対する側面）に固定した支持金具（11）にその
両端を掛支した板状バイメタルからなる感温体（10）に
よる外部周囲の温度変化に伴う変形に連動するよう連桿
（９）を介して内部に備えてあり、外部周囲の温度が設
定値を越えると前記流出調整孔（５′）を開放して油を
トルク伝達室（４）側に流出せしめてトルク伝達を増
し、また設定値以下では閉鎖してトルク伝達を減少せし
めるものである。（12）はダムであって、回転時の油の
集溜する前記駆動ディスク（７）の外周壁部と対向する
密封器匣の内周壁面の一部に設けてあり、且つ回転方向
の該ダムの手前に設けた流入口に連ってトルク伝達室
（４）側から油溜り室（６）側への循環流通路（13）を
形成してポンピング機能を有するものである。

（14）は遠心バルブであり、例えば板片からなる勾玉
状（第２図乃至第４図参照）又は略三角形状（第５図参
照）の表面形状のもので、前記流通孔（７′）部附近の
駆動ディスク（７）上にその一端側を回動自在に枢着す
ると共に、他端側に第２図乃至第４図のように引張スプ
リング部材又は第５図のように圧縮スプリング部材（1
4′）を介在させてある。そして駆動ディスク（７）側
の高速回転に伴う遠心力によって流通孔（７′）を閉孔
せしめ、トルク伝達室（４）内のトルク伝達間隙部をな
すその背面側への油の流通を抑制した一方の片面（正
面）側でだけ回転伝達機能を行わしめるものであり、高
速走行時及び通常走行状態からの加速時における大きな
速度差の加速と小さな速度差の加速の特性については第
６図ａ〜ｃで夫々（イ）として示すところである。（1
5）は密封器匣の外側壁部に突設した多数の冷却フィン
である。

尚本考案では前記遠心バルブ（14）は、第４図に示す
ように径方向に設けた複数個の流通孔（７′、７′ａ、
７′ｂ）を、順次閉孔するよう夫々引張スプリング部材
（14′、14′ａ、14′ｂ）により付勢された遠心バルブ
（14、14a、14b）により構成したり、又、第５図のよう
に略同一円周上に設けた複数個の面積の小さい流通孔
（７′、７′ａ、７′ｂ）を、順次閉孔するように夫々
ばね定数の異なる圧縮スプリング部材（14′、14′ａ、
14′ｂ）により付勢された遠心バルブ（14、14a、14b）
により構成するようにして第７図のような多段制御を行
うようにしたものである。尚、この際第７図のように多
段式にファン回転数を上げてゆくのみならず、所望に応
じ多段式にファン回転数を下げてゆくよう構成すること
もできる。更に本考案は駆動ディスク（７）の外方部分
を密封器匣の対向壁面に互に径方向に噛合ってトルク伝
達間隙部を形成する第８図に示すラビリンス機構（16）
を有する温度感応型流体式ファン・カップリング装置に
も応用でき、この場合はラビリンス機構（16）とは反対
側に遠心バルブ（14）を設けると共に、該バルブ（14）
を仕切板（５）側とし、該仕切板側のトルク伝達面積を
ラビリンス機構（16）側のそれより少なくすることによ
り、駆動ディスク（７）の両側をトルク伝達面としてい
る通常走行から大きな速度差の加速をする場合に第６図
ｂで（ハ）に示す特性が得られる。

（考案の効果） 以上説明したように本考案による温度感応型流体式フ
ァン・カップリング装置は前記駆動ディスク（７）の流
通孔（７′）部に備えた遠心バルブ（14）の構造によ
り、高速回転に伴う遠心力によって該遠心バルブにより
流通孔（７′）を閉孔せしめることとなり、従ってトル
ク伝達室（４）内のトルク伝達間隙部をなす背面側への
油の流通を抑制せしめて一方の片面（正面）側だけにあ
って回転伝達機能を行わしめることとなり、前記温度感
応による流出調整孔（５′）部での弁部材（８）による
該調整孔の開放、閉鎖機能と相乗したこれら回転制御機
構によって、特に高速走行状態及び通常走行からの加速
時における高回転時にあっても前記閉孔によりファン回
転数を低下させ機関への冷却風量を減少せしめることと
なり、また所望の多段制御が可能となり、従って消費馬
力を節減し、同時にファン騒音を低減して一層効果的と
なすことができる等、極めて有用な温度感応型流体式フ
ァン・カップリング装置である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例に係る温度感応型流体式ファ
ン・カップリング装置の一部切欠き縦断面図、第２図は
第１図の本考案の基本構成の要部に係る遠心バルブの低
回転時の開孔状態を示す一部の切欠き正面図、第３図は
第２図の同上高回転時の閉孔状態を示す正面図、第４図
及び第５図はそれぞれ本考案の実施例の第２図及び第３
図相当図、第６図ａ〜ｃは本考案と従来例を比較する特
性性能曲線図、第７図は本考案の一実施例の特性性能曲
線図、第８図は他の実施例の部分拡大した第１図相当
図、第９図は従来例を示す駆動ディスク部分附近の一部
の縦断面図、第10図は第４図の駆動ディスク単体の半裁
状の正面図である。 （７）……駆動ディスク、（７′）……流通孔、（14）
……遠心バルブ、（14′）……スプリング部材。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】先端に流通孔を有する駆動ディスクを固着
   した回転軸体に軸受を介して支承され、かつ外周に冷却
   ファンを取付けたケースとカバーとからなる密封器匣の
   内部を、油の流出調整孔を有する仕切板によって油溜り
   室と前記駆動ディスクを内装するトルク伝達室とに区劃
   し、回転時の油の集溜する駆動ディスクの外周壁面に対
   向する密封器匣側の内周壁面の一部にダムと、これに連
   なってトルク伝達室側から油溜り室側に通ずる循環流通
   路を形成すると共に、油溜り室側に位置してその一端を
   仕切板上に固定し、他端側を前記流出調整孔附近にあっ
   て外部周囲の温度が設定値を越えると該流出調整孔を開
   放し、設定値以下では閉鎖する弁部材を、前記カバーの
   外面に設けた感温体の温度変化に伴う変形に連動するよ
   うに内部に備え、駆動ディスクとのなす前記ケースおよ
   びカバーの外方附近の対向壁面に設けたトルク伝達間隙
   部での油の有効接触面積を増減させて、駆動側の回転軸
   体側から被駆動側の密封器匣側へのトルク伝達を制御す
   るようにしてなるファン・カップリング装置において、
   前記駆動ディスク（７）を円盤状となして径方向または
   略同一円周上に複数個設けたそれぞれの流通孔（７′、
   ７′ａ、７′ｂ…）部附近の該駆動ディスク上に、回転
   軸体（１）の回転数の増加につれ該流通孔を順次閉鎖す
   る板状からなる遠心バルブ（14、14a、14b…）を備えて
   構成したことを特徴とする温度感応型流体式ファン・カ
   ップリング装置。