JP2699084B2 - 温度感応型流体式フアン・カツプリング装置 - Google Patents

温度感応型流体式フアン・カツプリング装置

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、一般に自動車における機関冷却用のファン
回転を制御して、絶えず走行状態に応じた冷却送風量を
機関に供給する温度感応型流体式ファン・カップリング
装置において、すでに本出願人によって提案された特公
昭59−7846号公報記載のものの更に改良に関するもので
ある。
[従来の技術] 従来、この種のファン・カップリング装置としては第
5図に例示するように、カバー(23′)とケース(2
3″)とによる密封器匣の内部を流出調整孔(24′)を
有する仕切板(24)によって油溜り室(25)と駆動ディ
スク(22)を内装するトルク伝達室(26)とに区劃し、
且つトルク伝達室(26)側より油溜り室(25)側に通ず
るダム(28)によるポンピング機能部に連って循環流通
路(27)を設け、更に該流通路側の流入口(27′)と流
出口(27″)の少なくとも一方が、如何なる回転停止の
状態にあっても油溜り室(25)内に存在する油面上に位
置するように、前記流出口(27″)側を油溜り室(25)
の内周壁面の周りに隔壁を保持して設けた循環流通路
(27)に連る略半円で弧状の溝路(29)の先端開口部に
設けて構成されていた。
[発明を解決しようとする課題] しかしながら、これら従来技術のファン・カップリン
グ装置としては、循環流通路(27)側が油溜り室(25)
内の油面下に没した状態で停止した場合の停車の間での
該油溜り室内の油による該流通路からのトルク伝達室
(26)側への自然逆流による該トルク伝達室への流入を
防止せしめ、機関再始動直後におけるファン回転の急激
な上昇を阻止して異常なファン騒音の発生防止と、寒冷
時での暖気運転を効果的に図ることについては、一応そ
の目的を満足するものではあるが、機関を再始動した場
合、ある時間の経過に亘る“ツレ廻り”の現象について
は、その防止機能を充分発揮することができないもので
あった。即ち高温作動状態にあって仕切板(24)の流出
調整孔(24′)を開放している弁部材の状態での該調整
孔側を油溜り室(25)の油面下に没して機関を停止した
場合、停車の間に該油溜り室内の油による流出調整孔
(24′)からの自然流出によってトルク伝達室(26)側
に多量の油が流れることとなり、また、その後の機関の
再始動した後に、トルク伝達室(26)側から駆動ディス
ク(22)の外周面に流れた油のうちダム(28)のポンピ
ング作用の能力以上のものはダム(28)により抵抗を受
けてトルク伝達室(26)側へ逆行することになり、ある
時間の経過に亘って第6図の性能特性曲線(ロ)に示す
ように被駆動側に前記“ツレ廻り”を生ぜしめる問題を
有するものであった。
本発明は従来技術の有する前記問題に鑑みてなされた
もので、機関始動直後の急激なファン回転の上昇阻止に
伴う異常なファン騒音の発生防止並びに暖気運転の促進
効果に加えて、被駆動側の“ツレ廻り”をも同時に、し
かも一層効果的に防止することのできる温度感応型流体
式ファン・カップリング装置を提供することを目的とす
るものである。
[課題を解決するための手段] 本発明は上記目的を達成するため、先端に駆動ディス
クを固着した回転軸体上に軸受を介して支承され、且つ
外周に冷却ファンを取付けたカバーとケースとからなる
密封器匣の内部を、油の流出調整孔を有する仕切板によ
り油溜り室と前記駆動ディスクを内装するトルク伝達室
とに区劃し、回転時の油の集溜する駆動ディスクの外周
壁部に対向する密封器匣側の内周壁面の一部にダムと、
これに連ってトルク伝達室側より油溜り室側に通ずる循
環流通路を形成すると共に、外部周囲の温度が設定値を
越えると前記仕切板の流出調整孔を開放し、また設定値
以下では閉鎖する弁部材を前記カバー前面に設けた感温
体の温度変化に伴う変形に連動するように内部に備え、
駆動ディスクと前記ケース及びカバーとのなす外方附近
の対向壁面に設けたトルク伝達間隙部での油の有効接触
面積を増減させて、回転軸体側から被駆動側の密封器匣
側へのトルク伝達を制御するようにして成るファン・カ
ップリング装置において、前記ダムを駆動ディスクの外
周壁面に対向する密閉器匣側の径方の外側周壁底部に設
けたアイドル油溜り室内部に設け、且つ、前記循環路の
流入口に近傍してその回転方向の前部に位置せしめると
共に、ダムをその摺動板片の中央部附近をピン着し、且
つ該ピン着部より外方側に重錘体を、また常時該重錘体
が回転中心方向に附勢されるようスプリング部材により
懸張して構成して、回転時の遠心力に伴う揺動によりア
イドル油溜り室での開閉機構となして構成した温度感応
型流体式ファン・カップリング装置を要旨とするもので
あり、更にその揺動板片のなす少なくとも一端側に耐摩
部分を有して構成するものである。
[作 用] 本発明はこのように構成されているため、前記密封器
匣側の径方向の外側周壁底部に設けたアイドル油溜り室
の構造と、前記ダム部が該アイドル油溜り室内部に設け
て、前記循環路の流入口に近傍してその回転方向の前部
に位置せしめ且つ揺動によりアイドル油溜り室での開閉
機構となして構成せしめることとにより、その後の機関
始動時にあって密封器匣側の回転に伴って生ずる遠心力
によってトルク伝達室に残留している油をアイドル油溜
り室に向かって直ちに放出して該アイドル油溜り室内に
収納せしめることとなり、更にアイドル油溜り室内部に
設けた前記ダムの開放によりアイドル油溜り室での油の
流れを抵抗なく円滑に行わしめることにより一度アイド
ル油溜り室に収納された油が前記抵抗によって押し戻さ
れてトルク伝達室側への逆行することを防止することと
なり、被駆動側の“ツレ廻り”を再始動直後から一層効
果的に防止することとなる。尚本発明のファン・カップ
リング装置の作動状態を第6図の性能特性曲線(イ)と
して示す。
[実施例] 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明すれば、
第1図は本発明の温度感応型流体式ファン・カップリン
グ装置の一部切欠きによる縦断面図、第2図は第1図の
本発明の要部に係るダム部の拡大による開閉状態の説明
図、第3図は本発明の他の実施例を示すダム部の閉鎖時
の状態図、第4図は第3図の開放時の状態図であって、
(1)は先端に駆動ディスク(7)を固着し、且つ後端
部に相手基体への取付けフランジ壁(図示せず)を有す
る回転軸体であって、該軸体上に軸受(B)を介して外
周に冷却ファン(図示せず)を取付けたカバー(3)と
ケース(2)とからなる密封器匣を支承してなるもので
ある。
(5)は密封器匣の内部を油溜り室(6)と前記駆動
ディスク(7)を内装するトルク伝達室(4)とに区劃
した仕切板であり、該仕切板上には油溜り室(6)によ
りトルク伝達室(4)への油の流出調整孔(5′)が設
けてある。そして前記駆動ディスク(7)はトルク伝達
室(4)内にあって仕切板(5)を含む密封器匣の対向
壁面とにトルク伝達のための微少間隙を保持してなるも
のである。尚(5″)は前記仕切板(5)の中央部に設
けた貫孔であり、停止時にあって油溜り室(6)とトル
ク伝達室(4)とに亘って油を自然連通せしめるもので
ある。(8)は流出調整孔(5′)を開閉する弁部材で
あって、油溜り室(6)側の仕切板(5)の壁面にその
一端を鋲着し、他端を該調整孔部に位置して設け、前記
カバー(3)の前面に固定した支持金具(11)にその両
端を係支した板状バイメタルからなる感温体(10)によ
る外部周囲の温度変化に伴う変形に連動するように連桿
(9)を介して内部に備えてある。(14)は前記密封器
匣の径方向で外方に位置して、トルク伝達室(4)に連
って設けられたアイドル油溜り室であって、停止時にト
ルク伝達室(4)とアイドル油溜り室(14)とに既に集
溜する油量と少くとも略等しい容量をもって形成される
ものである。(12)は前記アイドル油溜り室(14)内に
揺動板片の中央部附近をピン着(12′)してその外方側
に重錘体(15)を、また他端側を引張スプリング部材
(16)により懸張されたダムであって、前記トルク伝達
室(4)より油溜り室(6)側への循環流通路(13)の
流入口(13′)に近傍してその回転方向の前部に位置し
た回転時の遠心力に伴う揺動により開閉機構となして前
記ピン着(12′)の両端を取付けて構成されるものであ
る。そして機関再始動後のOFF時の回転数までの間にあ
っては、トルク伝達室(4)内の油をアイドル油溜り室
(14)に向って直ちに放出して該アイドル油溜り室内に
収納せしめると共に、ダム(12)がスプリング部材(1
2)と重錘体(15)の作用により開放状態(第2図点線
及び第4図)となるためアイドル油溜り室(14)内に収
納されて流れる油は抵抗を受けず従ってトルク伝達室
(4)への油の逆行を阻止し、機関再始動後の“ツレ廻
り”現象を防止する。
次いで、機関が正常作動に入り、一層駆動ディスク
(7)の回転が高くなり、これに伴い被駆動側の密封器
匣(1)側の回転が上がると重錘体(15)に遠心力が働
きスプリング部材(16)に抗してダム(12)がアイドル
油溜り室(14)を堰止め(第2図実線及び第3図)、ダ
ム(12)のポンピング機能を発揮せしめて油を循環路
(13)を経て油溜り室(6)からトルク伝達室(4)へ
流入せしめる。
尚、スプリング部材(16)は引張スプリングだけでな
く、第3図及び第4図のような圧縮スプリングを用いる
こともでき、更に、スプリング部材(16)の張力や重錘
体(15)の重さは、“ツレ廻り”現象が発生する際にダ
ム(12)が揺動せず、通常の作動ではダム(12)が揺動
するよう適宜選定する。(17)及び(18)は所望に応じ
て前記流入口(13′)部に近設した別途通常の堰及び揺
動板片のなす先端側に設けた金属材或いはテフロン等の
樹脂材による耐摩部分である。
尚前記バイメタルからなる感温体(10)としては前記
実施例のほか渦巻状からなる形状とし、円周方向への左
右回動による変形に連動して弁部材(8)を前記流出調
整孔(5′)に対して左右への滑動によって開閉するよ
うに構成してもよい。
[発明の効果] 以上説明したように本発明による温度感応型流体式フ
ァン・スップリング装置は、前記アイドル油溜り室(1
4)の構造と、該アイドル油溜り室内部に設けた前記ダ
ム(12)の構成とにより、機関再始動後に直ちにトルク
伝達室(4)内の油を前記アイドル油溜り室(14)に向
って直ちに放出して該アイドル油溜り室内に収納せし
め、トルク伝達室(4)内に殆んど油が残存しない状態
となすことができ、更に前記ダム(12)の開放効果によ
り機関始動後のOFF時の回転数までの間にあって収納さ
れたアイドル油溜り室(14)内の油は抵抗を受けること
なく該アイドル油溜り室内を流れるためトルク伝達室
(4)への油の逆行を阻止することとなるため、これら
相乗効果によって被駆動側の“ツレ廻り”を防止するこ
とができ、更にダム(12)のポンピング作用が確実なた
め安定した制御を行うことができる等、極めて有用な温
度感応型流体式ファン・カップリング装置である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示す温度感応型流体式ファ
ン・カップリング装置の一部切欠きによる縦断面図、第
2図は第1図の本発明の要部に係るダム部の拡大による
開閉状態の説明図、第3図は本発明の他の実施例を示す
ダム部の閉鎖時の状態図、第4図は第3図の開放時の状
態図、第5図は従来例のファン・カップリング装置の縦
断面図、第6図は本発明と従来技術との比較性能特性曲
線図である。 (7)……駆動ディスク、(12)……ダム、(12′)…
…ピン着、(13)……循環路、(13′)……流入口、
(14)……アイドル油溜り室、(15)……重錘体、(1
6)……スプリング部材、(18)……耐摩部分

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】先端に駆動ディスクを固着した回転軸体上
    に軸受を介して支承され、且つ外周に冷却ファンを取付
    けたカバーとケースとからなる密封器匣の内部を、油の
    流出調整孔を有する仕切板により油溜り室と前記駆動デ
    ィスクを内装するトルク伝達室とに区劃し、回転時の油
    の集溜する駆動ディスクの外周壁部に対向する密閉器匣
    側の内周壁面の一部にダムと、これに連ってトルク伝達
    室より油溜り室側に通ずる循環流通路を形成すると共
    に、外部周囲の温度が設定値を越えると前記仕切板の流
    出調整孔を開放し、また設定値以下では閉鎖する弁部材
    を前記カバー前面に設けた感温体の温度変化に伴う変形
    に連動するように内部に備え、駆動ディスクと前記ケー
    ス及びカバーとのなす外方附近の対向壁面に設けたトル
    ク伝達間隙部での油の有効接触面積を増減させて、回転
    軸体側から被駆動側の密封器匣へのトルク伝達を制御す
    るようにして成るファン・カップリング装置において、
    前記ダム(12)を駆動ディスク(7)の外周壁部に対向
    する密封器匣側の径方向の外側周壁底部に設けたアイド
    ル油溜り室(14)内部に設け、且つ前記循環路(13)の
    流入口(13′)に近傍してその回転方向の前部に位置せ
    しめると共に、ダム(12)をその揺動板片の中央部附近
    をピン着(12′)し、且つ該ピン着(12′)部より外方
    側に重錘体(15)を、また常時該重錘体が回転中心方向
    に附勢されるようスプリング部材(16)により懸張して
    構成して回転時の遠心力に伴う揺動により前記アイドル
    油溜り室(14)での開閉機構となして構成したことを特
    徴とする温度感応型流体式ファン・カップリング装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載において、前記ダム(12)を
    その揺動板片のなす少なくとも一端側に耐摩部分(18)
    を有して構成したことを特徴とする温度感応型流体式フ
    ァン・カップリング装置。
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