JPH0451220Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、一般に自動車における機関冷却用の
フアン回転を制御して、絶えず走行状態に応じた
冷却送風量を機関に供給する温度感応型流体式フ
アン・カツプリング装置の改善に関するものであ
る。

［従来の技術］ 従来、この種のフアン・カツプリング装置とし
ては、カバーとケースとによる密封器匣の内部を
流出調整孔を有する仕切板によつて油溜り室と、
駆動デイスクを内装するトルク伝達室とに区劃
し、且つトルク伝達室側より油溜り室側に通ずる
ポンピング機能部に連つて循環流通路を設け、更
に流通路側の流入口と流出口の少なくとも一方
が、如何なる回転停止の状態にあつても油溜り室
内に存在する油面上に位置するように、前記流出
口側を油溜り室の内周壁面の周りに隔壁を保持し
て設けた循環流通路に連る略半円で弧状の溝路の
先端開口部に設けて構成されていた。

［考案が解決しようとする問題点］ しかしながら、これら従来のフアン・カツプリ
ング装置としては、循環流通路側が油溜り室内の
油面下に没した状態で停止した場合の停車の間に
生ずる該油溜り室内の油による該流通路からのト
ルク伝達室側への自然逆流による該トルク伝達室
での集溜を防止せしめ、機関再始動直後における
フアン回転の急激な上昇を阻止して異常なフアン
騒音の防止と、寒冷時での暖気運転を効果的に図
ることについては、その目的を満足するものでは
あるが、高温作動状態にあつて仕切板の流出調整
孔を開放している弁部の状態での該流出調整孔側
を油溜り室の油面下に没して機関が停止した場合
に、停車の間に該油溜り室内の油による流出調整
孔からの自然流出によつてトルク伝達室側に多量
の油が集溜することとなり、従つてその後の機関
の再始動時に、ある時間に亘つて被駆動側のフア
ン回転数が高くなる、いわゆる“ツレ廻り”を生
ぜしめる問題を有するものであつた。

本考案は、前記高温作動状態で停止した場合で
も、被駆動側の“ツレ廻り”を機関再始動直後の
極めて短時間に極力とどめてその防止を一層効果
的とすることのできる温度感応型流体式フアン・
カツプリング装置を提供することを目的とするも
のである。

［問題を解決するための手段］ 本考案は、先端に駆動デイスクを固着した回転
軸体上に軸受を介して支承され、且つ外周に冷却
フアンを取付けたカバーとケースとからなる密封
器匣の内部を、油の流出調整孔を有する仕切板に
より油溜り室と前記駆動デイスクを内装するトル
ク伝達室とに区劃し、回転時の油の集溜する駆動
デイスクの外周壁部に対向する密封器匣側の内周
壁面の一部にダムと、これに連つてトルク伝達室
側より油溜り室側に通ずる循環流通路を形成する
と共に、外部周囲の温度が設定値を越えると前記
仕切板の流出調整孔を開放し、設定値以下では閉
鎖する弁部材を前記カバーの前面に設けた感温体
の温度変化に伴う変形に連動するように内部に備
え、駆動デイスクと前記ケース及びカバーとの外
方附近の対向壁面に設けたトルク伝達間隙部での
油の有効接触面積を増減させて、回転軸体側から
被駆動側の密封器匣側へのトルク伝達を制御する
ようにして成るフアン・カツプリング装置におい
て、前記密封器匣側のダムより径方向の外方に位
置してトルク伝達室に流通間隙を介して連通する
環状のアイドル油溜り室を備えると共に、該アイ
ドル油溜り室の内側区劃周壁をなす前記ケースと
カバーとの対向壁部にそれぞれ設けた複数の突起
壁を、前記流通間隙をもつて相互に噛合い状に形
成し、更に前記仕切板に停止時のみ油溜り室とト
ルク伝達室とに油の流通する貫孔を有して構成し
た温度感応型流体式フアン・カツプリング装置を
要旨とし、更に流通間隙を略軸方向に向く間隙と
円周方向に向く間隙とから構成し、該円周方向に
向く間隙の外方側壁をカバーとケースの外周附近
における内側面と略同一平面に形成すると共に、
外方又は内方にテーパー面を設け、且つその幅を
駆動デイスクの外側面と、カバー又はケースの内
側面との間隔より大として構成したものである。

［実施例］ 以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説明
すれば、第１図は本考案の温度感応型流体式フア
ン・カツプリング装置の一実施例縦断面図、第２
図は第１図の本考案の要部をなす連通手段を形成
する突起壁部での噛合い状態を示す一部切欠きに
よる拡大説明図、第３図は第２図Ａ−Ａ線の一部
切欠き断面図、第４図は第２図の一方側のカバー
単体の一部切欠きによる拡大斜視図、第５図は他
の実施例を示す第２図相当図、第６図は第５図実
施例の流通間隙部分の拡大断面図であつて、１は
先端に駆動デイスク７を固着した回転軸体であつ
て、該軸体上に軸受Ｂを介して外周に冷却フアン
（図示せず）を取付けたカバー３とケース２とか
らなる密封器匣を支承してなるものである。５は
密封器匣の内部を油溜り室６と前記駆動デイスク
７を内装するトルク伝達室４とに区劃した仕切板
であり、該仕切板上には油溜り室６よりトルク伝
達室４への油の流出調整孔５′を設けてある。

そして前記駆動デイスク７はトルク伝達室４内
にあつて仕切板５を含む密封器匣の対向壁面とに
トルク伝達のための微少間隙を保持してなるもの
である。８は流出調整孔５′を開閉する弁部材で
あつて、油溜り室６側の仕切板５の壁面にその一
端を鋲着し、他端を該流出調整孔部に位置して設
けてあり、前記カバー３の前面に固定した支持金
具１１にその両端を係支した板状バイメタルから
なる感温体１０による外部周囲の温度変化に伴う
変形に連動するように連桿９を介して内部に備え
てあるが、渦巻き状のバイメタルを用いて弁部材
８を仕切板５の表面を摺動するよう回動せしめ、
流出調整孔５′を開閉するよう構成してもよい。
１２は回転時の油の集溜する駆動デイスク７の外
周壁部と対向する密封器匣の内周壁面の一部に設
けたダムであつて、回転方向の該ダムの手前に近
傍して流入口１３′に連るトルク伝達室４側より
油溜り室６側への循環流通路１３を形成してポン
ピング機能を有するものである。５″は仕切板５
の中央部附近に設けた円形の貫孔であつて、停止
時のみ油溜り室６とトルク伝達室４とに油の流通
する手段として働くものである。尚貫孔は、軸芯
より同一円周上に複数配設してもよい。１４は前
記密封器匣側のダム１２より径方向の外方に位置
して備えたトルク伝達室４に連通する環状のアイ
ドル油溜り室であつて、停止時にトルク伝達室４
とアイドル油溜り室１４とに既に集溜する油量と
少なくとも略等しい容積をもつて形成されるもの
である。１６は密封器匣の外側に放射状に突設す
る冷却フインである。

更に、アイドル油溜り室１４の内側区劃周壁を
なす前記ケース２とカバー３との対向壁部に複数
の突起壁２′と３′とをそれぞれ設けて、相互に噛
合い状に形成し、前記突起壁２′と３′間に、略軸
方向に向く間隙１４″と円周方向に向く間隙１４
から成る流通間隙１４′を設けたものである。

又、該円周方向に向く間隙１４の外方側壁は
トルク伝達室４においてカバー３及びケース２の
外周附近における内側面と略同一平面に形成され
ると共に、外方に向いたテーパー面１５を有し、
且つその幅を駆動デイスク７の外側面と、カバー
３又はケース２の内側面との間のトルク伝達面の
間隔より大として構成されている。

尚アイドル油溜り室１４への流入を促進するた
めには流通間隙１４′の内方においてもテーパー
面１５′を設けると好ましい（第５図及び第６図
参照）。

［作用］ 本考案は、このように構成されているため、前
記密封器匣側のダム１２より径方向の外方に位置
してトルク伝達室４に流通間隙１４′を介して連
通するアイドル油溜り室１４を備えると共に、該
アイドル油溜り室１４の内側区劃周壁をなすケー
ス２とカバー３との対向壁部にそれぞれ設けた複
数の突起壁２′と３′を、前記流通間隙１４′をも
つて相互に噛合い状に形成し、更に仕切板５に停
止時のみにあつて油溜り室６とトルク伝達室４と
に亘つて油の自然流通する貫孔５″を有する構造
により、停止時に貫孔５″によつて高温作動後の
トルク伝達室４内に多量の油が集溜する状態での
停止であつても、該停止の間に貫孔５″を通じて
該トルク伝達室側より該油溜り室側に自然流通せ
しめることとなり、更に前記アイドル油溜り室１
４の構造により、その後の機関再始動時に際し、
密封器匣側の回転に伴つて生ずる油への遠心力に
よつてトルク伝達室４内に殘溜している油をアイ
ドル油溜り室１４に向つて放出する際に、相互に
噛合い状に形成したその内側区劃周壁での前記突
起壁２′と３′間の前記流通間隙１４′によつて、
特に円周方向に向く間隙１４の外方側壁をケー
ス２とカバー３の外周附近における内側面と略同
一平面に形成すると共に、その幅を大とし且つテ
ーパー面１５を設けたことにより、トルク伝達間
隙１４を遠心力により放射状に流れてアイドル
油溜り室１４へ流入する油のケース２側及び／又
はカバー３側における放出アンバランスを減少さ
せ、且つ該放出機能を著しく促進せしめて該アイ
ドル油溜り室内に収納し、トルク伝達室４内に殆
んど残存しない結果となる。

［考案の効果］ 以上説明したように本考案による温度感応型流
体式フアン・カツプリング装置は前記貫孔５″と
トルク伝達室４に通ずるアイドル油溜り室１４及
び前記流通間隙１４′との構造により、機関再始
動直後に直ちにトルク伝達室４内の油を前記アイ
ドル油溜り室１４に向つて放出し、しかも該放出
時に相互に噛合い状に形成したその内側区劃周壁
での相互の突起壁２′と３′間の前記流通間隙１
４′によつて該放出機能を極めて効率よく行わし
めて該アイドル油溜り室内に収納することとな
り、トルク伝達室４内に殆んど油が残存しない状
態となるため、被駆動側の“ツレ廻り”を機関再
始動直後の極めて短時間にとどめることができ、
従つて高温作動状態で停止した場合でのその後の
機関始動時に際しても、フアン回転の急激な上昇
を阻止して異常なフアン騒音の防止と暖気運転の
促進に加え、前記“ツレ廻り”を効果的に軽減、
防止することのできた極めて有用な温度感応型流
体式フアン・カツプリング装置である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例に係る温度感応型流
体式フアン・カツプリング装置の縦断面図、第２
図は第１図の本考案の要部をなす連通手段を形成
する突起壁で噛合い状態を示す一部切欠きによる
拡大説明図、第３図は第２図Ａ−Ａ線の一部切欠
き断面図、第４図は第２図の一方側のケース単体
の一部切欠きによる拡大斜視図、第５図は他の実
施例を示す第２図相当図、第６図は第５図の流通
間隙部分の拡大断面図である。 ２……ケース、２′……突起壁、３……カバー、
３′……突起壁、４……トルク伝達室、５……仕
切板、５″……貫孔、６……油溜り室、１２……
ダム、１４……アイドル油溜り室、１４′……流
通間隙。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 先端に駆動デイスクを固着した回転軸体上に
   軸受を介して支承され、且つ外周に冷却フアン
   を取付けたカバーとケースとからなる密封器匣
   の内部を、油の流出調整孔を有する仕切板によ
   り油溜り室と前記駆動デイスクを内装するトル
   ク伝達室とに区劃し、回転時の油の集溜する駆
   動デイスクの外周壁部に対向する密封器匣側の
   内周壁面の一部にダムと、これに連つてトルク
   伝達室側より油溜り室側に通ずる循環流通路を
   形成すると共に、外部周囲の温度が設定値を越
   えると前記仕切板の流出調整孔を開放し、設定
   値以下では閉鎖する弁部材を前記カバーの前面
   に設けた感温体の温度変化に伴う変形に連動す
   るように内部に備え、駆動デイスクと前記ケー
   ス及びカバーとの外方附近の対向壁面に設けた
   トルク伝達間隙部での油の有効接触面積を増減
   させて、回転軸体側から被駆動側の密封器匣側
   へのトルク伝達を制御するようにして成るフア
   ン・カツプリング装置において、前記密封器匣
   側のダム１２より径方向の外方に位置してトル
   ク伝達室４に流通間隙１４′を介して連通する
   アイドル油溜り室１４を備えると共に、該アイ
   ドル油溜り室１４の内側区劃周壁をなす前記ケ
   ース２とカバー３との対向壁部にそれぞれ設け
   た複数の突起壁２′と３′を、前記流通間隙１
   ４′をもつて相互に噛合い状に形成し、更に前
   記仕切板５に停止時のみ油溜り室６とトルク伝
   達室４とに油の流通する貫孔５″を有して構成
   したことを特徴とする温度感応型流体式フア
   ン・カツプリング装置。 ２ 実用新案登録請求の範囲第１項において、前
   記流通間隙１４′は略軸方向に向く間隙１４″と
   円周方向に向く間隙１４とから成り、該円周
   方向に向く間隙１４の外方側壁はトルク伝達
   室４においてカバー３及びケース２の外周附近
   における内側面と略同一平面に形成されること
   を特徴とする温度感応型流体式フアン・カツプ
   リング装置。 ３ 実用新案登録請求の範囲第１項又は第２項に
   おいて、前記円周方向に向く間隙１４は外方
   又は内方に向いたテーパー面１５，１５′を有
   することを特徴とする温度感応型流体式フア
   ン・カツプリング装置。 ４ 実用新案登録請求の範囲第１項又は第２項に
   おいて、前記円周方向に向く間隙１４は駆動
   デイスク７の外側面と、カバー３又はケース２
   の内側面との間隔より大なる幅を有することを
   特徴とする温度感応型流体式フアン・カツプリ
   ング装置。