JPH0642109Y2 - 温度感応型流体式ファン・カップリング装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、一般に自動車における機関冷却用のファン回
転を制御して、絶えず走行状態に応じた冷却送風量を機
関に供給する温度感応型流体式ファン・カップリング装
置の改善に関するものである。

［従来の技術］ 従来、この種のファン・カップリング装置としては、カ
バーとケースとによる密封器匣の内部を流出調整孔を有
する仕切板によって油溜り室と、駆動ディスクを内装す
るトルク伝達室とに区劃し、且つトルク伝達室側より油
溜り室側に通ずるダムによるポンピング機能部に連って
循環流通路を設け、更に該流通路側の流入口と流出口の
少なくとも一方が、如何なる回転停止の状態にあっても
油溜り室内に存在する油面上に位置するように、前記流
出口側を油溜り室の内周壁面の周りに隔壁を保持して設
けた循環流通路に連る略半円状の溝路の先端開口部に設
けて構成されていた。

［考案が解決しようとする問題点］ しかしながら、これら従来のファン・カップリング装置
としては、循環流通路側が油溜り室内の油面下に没した
状態で停止した場合の停車の間に生ずる該油溜り室内の
油による該流通路からトルク伝達室側への自然逆流によ
る該トルク伝達室での集溜を防止せしめ、機関再始動直
後におけるファン回転の急激な上昇を阻止して異常なフ
ァン騒音の防止と、寒冷時での暖気運転を効果的に図る
ことについては、その目的を満足するものではあるが、
高温作動状態にあって仕切板の流出調整孔を開放してい
る弁部材の状態で該流出調整孔側を油溜り室の油面下に
没して機関を停止した場合に、停車の間に該油溜り室内
の油による流出調整孔からの自然流出によってトルク伝
達室側に多量の油が集溜することとなり、従ってその後
の機関の再始動時に、ある時間に亘って被駆動側のファ
ン回転が高くなる、いわゆる“ツレ廻り”を生ぜしめる
問題を有するものであった。

本考案は、前記高温作動状態で停止した場合でも、被駆
動側の“ツレ廻り”を機関再始動直後の極めて短時間に
極力とどめることのできる温度感応型流体式ファン・カ
ップリング装置を提案することを目的とするものであ
る。

［問題を解決するための手段］ 本考案は、先端に駆動ディスクを固着した回転軸体上に
軸受を介して支承され、且つ外周に冷却ファンを取付け
たカバーとケースとからなる密封器匣の内部を、油の流
出調整孔を有する仕切板により油溜り室と前記駆動ディ
スクを内装するトルク伝達室とに区劃し、回転時の油の
集溜する駆動ディスクの外周壁部と対向する密封器匣側
の内周壁面の一部にダムと、これに連ってトルク伝達室
側より油溜り室側に通ずる循環流通路を形成すると共
に、外部周囲の温度が設定値を越えると前記仕切板の流
出調整孔を開放し、設定値以下では閉鎖する弁部材を前
記カバーの前面に設けた感温体の温度変化に伴う変形に
連動するように内部に備え、駆動ディスクと前記ケース
及びカバーとの外方附近の対向壁面に設けたトルク伝達
間隙部での油の有効接触面積を増減させて、回転軸体側
から被駆動側の密封器匣側へのトルク伝達を制御するよ
うにして成るファン・カップリング装置において、前記
密封器匣側のダムより径方向の外方に位置してトルク伝
達室に流通間隙を介して連通する環状のアイドル油溜り
室を備えると共に、前記駆動ディスクの外周側面に対向
するケース及びカバーの少くとも一方の内周側面を流通
間隙に向って外方への傾斜面として形成し、更に前記仕
切板に停止時のみトルク伝達室内の油の一部を油溜り室
に戻す貫孔を有して構成した温度感応型流体式ファン・
カップリング装置を要旨とするものである。

［実施例］ 以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説明すれば、
第１図は本考案の温度感応型流体式ファン・カップリン
グ装置の縦断面図、第２図は他の実施例を示す本考案の
要部に係る一部の切欠きによる拡大断面図、第３図は更
に他の実施例を示す第２図相当図であって、（１）は先
端に駆動ディスク（７）を固着した回転軸体であり、該
軸体上に軸受（Ｂ）を介して外周に冷却ファン（図示せ
ず）を取付けたカバー（３）とケース（２）とからなる
密封器匣を支承してなるものである。

（５）は密封器匣の内部を油溜り室（６）と前記駆動デ
ィスク（７）を内装するトルク伝達室（４）とに区劃し
た仕切板であり、該仕切板上には油溜り室（６）よりト
ルク伝達室（４）への油の流出調整孔（５′）を設けて
ある。そして前記駆動ディスク（７）はトルク伝達室
（４）内にあって仕切板（５）を含む密封器匣の対向壁
面とトルク伝達のための微少間隙を保持してなるもので
ある。（８）は流出調整孔（５′）を開閉する弁部材で
あり、油溜り室（６）側の仕切板（５）の壁面にその一
端を鋲着し、他端を該流出調整孔部に位置して設けてあ
り、前記カバー（３）の前面に固定した支持金具（11）
にその両端を係支した板状バイメタルからなる感温体
（10）による外部周囲の温度変化に伴う変形に連動する
ように連桿（９）を介して内部に備えてある。尚板状バ
イメタルに代えて、渦巻き状バイメタルを用いて弁部材
（８）を仕切板（５）表面を摺動するよう回動せしめ、
流出調整孔（５′）を開閉するよう構成してもよい。
（12）は回転時の油の集溜する駆動ディスク（７）の外
周壁部と対向する密封器匣の内周壁面の一部に設けたダ
ムであって、回転方向の該ダムの手前に近傍して流入口
（13′）に連るトルク伝達室（４）側より油溜り室
（６）側への循環流通路（13）を形成してポンピング機
能を有するものである。（５″）は仕切板（５）の中央
部附近に設けた円形の貫孔であって、停止時のみトルク
伝達室（４）内の油の一部を油溜り室（６）に戻す手段
として有してなるものであるが、軸芯より同一円周上に
複数配設してもよい。

（14）は前記密封器匣側のダム（12）より径方向の外方
に位置して、トルク伝達室（４）に流通間隙（14′）を
介して連通する環状のアイドル油溜り室であって、停止
時にトルク伝達室（４）内の油の一部を油溜り室（６）
に戻すため既に集溜する油量と少なくとも略等しい容積
をもって形成されるものである。（15）は密封器匣の外
側に放射状に突設する冷却ファンである。（16）は前記
駆動ディスク（７）の外周側面に対向するケース（２）
及びカバー（３）の少くとも一方の内周側面に形成され
た流通間隙（14′）に向って外方への傾斜面であって、
駆動ディスク（７）の回転により送られる油を速やかに
アイドル油溜り室（14）に放出する構造で、第１図のよ
うにその両側より外方に先細状に傾斜して形成したり、
第２図及び第３図のように一方向に傾斜させて形成して
もよい。又、駆動ディスク（７）の外周壁をケース
（２）及び／又はカバー（３）側の内周側面の傾斜面に
対して間隙を保持して同様な傾斜面に構成すると前記駆
動ディスク（７）の外周側面における油の有効接触面積
が減少せず、トルク伝達面を確保できるので、効果的で
ある。

［作用］ 本考案は、このように構成されているため、前記密封器
匣側のダム（12）より径方向の外方に位置してトルク伝
達室（４）に流通間隙（14′）を介して連通する環状の
アイドル油溜り室（14）を備えると共に、前記駆動ディ
スク（７）の外周側面に対向するケース（２）及びカバ
ー（３）の少くとも一方の内周側面を流通間隙（14′）
に向って外方への傾斜面（16）として形成し、更に仕切
板（５）に停止時のみにあってトルク伝達室（４）内の
油の一部を油溜り室（６）に戻す油の自然流通する貫孔
（５″）を有する構造により、停止時に貫孔（５″）に
よって高温作動後のトルク伝達室（４）内に多量の油が
集溜する状態での停止であっても、該停止の間に貫孔
（５″）を通じて該トルク伝達室側より該油溜り室側に
自然流通せしめることとなり、更に前記アイドル油溜り
室（14）の存在により、その後の機関再始動時に際し、
密封器匣側の回転に伴って生ずる油への遠心力によって
トルク伝達室（４）内に集溜している油を該アイドル油
溜り室に向って放出し、しかもこの放出時に前記傾斜面
（16）によってトルク伝達間隙を直進して来た油はその
流れ方向を大きく曲げられることなく流通間隙（14′）
をスムースに流通するため、該放出機能を促進せしめて
該アイドル油溜り室内に収納することとなり、トルク伝
達室（４）内には油が殆んど残存しない結果となる。

［考案の効果］ 以上説明したように本考案による温度感応型流体式ファ
ン・カップリング装置は、前記貫孔（５″）と、トルク
伝達室（４）に通ずる流通間隙（14′）を介して連通す
る環状のアイドル油溜り室（14）及び前記傾斜面（16）
との構造により、機関再始動直後に直ちにアイドル伝達
室（４）内の油を前記アイドル油溜り室（14）に向って
放出し、しかもこの放出時に傾斜面（16）によって該放
出機能を効率よく行わしめて該アイドル油溜り室内に収
納することとなり、トルク伝達室（４）内に殆んど油が
残存しない状態となるため、被駆動側の“ツレ廻り”を
機関再始動直後の極めて短時間にとどめることができ、
従って高温作動状態で停止した場合でのその後の機関再
始動時に際しても、ファン回転の急激な上昇を阻止して
異常なファン騒音の防止と暖気運転の促進に加え、前記
“ツレ廻り”を効果的に軽減、防止することのできた極
めて有用な温度感応型流体式ファン・カップリング装置
である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例に係る温度感応型流体式ファ
ン・カップリング装置の縦断面図、第２図は他の実施例
を示す本考案の要部に係る一部の切欠きによる拡大断面
図、第３図は更に他の実施例の第２図相当図である。 （３）……カバー、（４）……トルク伝達室、（５）…
…仕切板、（５″）……貫孔、（６）……油溜り室、
（７）……駆動ディスク、（12）……ダム、（14）……
アイドル油溜り室、（14′）……流通間隙、（16）……
傾斜面

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】先端に駆動ディスクを固着した回転軸体上
   に軸受を介して支承され、且つ外周に冷却ファンを取付
   けたカバーとケースとからなる密封器匣の内部を、油の
   流出調整孔を有する仕切板により油溜り室と、前記駆動
   ディスクを内装するトルク伝達室とに区劃し、回転時の
   油の集溜する駆動ディスクの外周壁部に対向する密封器
   匣側の内周壁面の一部にダムと、これに連ってトルク伝
   達室側より油溜り室に通ずる循環流通路を形成すると共
   に、外部周囲の温度が設定値を越えると前記仕切板の流
   通調整孔を開放し、設定値以下では閉鎖する弁部材を前
   記カバーの前面に設けた感温体の温度変化に伴う変形に
   連動するように内部に備え、駆動ディスクと前記ケース
   及びカバーとの外方附近の対向壁面に設けたトルク伝達
   間隙部での油の有効接触面積を増減させて、回転軸体側
   から被駆動側の密封器匣側へのトルク伝達を制御するよ
   うにして成るファン・カップリング装置において、前記
   密封器匣側のダム（12）より径方向の外方に位置してト
   ルク伝達室（４）に通ずる流通間隙（14′）を介して連
   通する環状のアイドル油溜り室（14）を備えると共に、
   前記駆動ディスク（７）の外周側面に対向する前記ケー
   ス（２）又はカバー（３）の少なくとも一方の内周側面
   を、前記流通間隙（14′）に向って外方への傾斜面（1
   6）として形成し、更に前記仕切板（５）に停止時のみ
   トルク伝達室（４）内の油の一部を油溜り室（６）に戻
   す貫孔（５″）を有して構成したことを特徴とする温度
   感応型流体式ファン・カップリング装置。