JPH0451222Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、一般に自動車における内燃機関冷却
用のフアン回転を制御して、絶えず走行状態に応
じた冷却送風量を機関に供給する温度感応型流体
式フアン・カツプリング装置の改良に関するもの
である。

［従来の技術］ 従来、この種のフアン・カツプリング装置とし
ては第１１図に例示するように、カバー２３′と
ケース２３″とによる密封器匣の内部を、流出調
整孔２４′を有する仕切板２４によつて油溜り室
２５と駆動デイスク２２を内装するトルク伝達室
２６とに区劃し、且つトルク伝達室２６側より油
溜り室２５側に通ずるダム２８によるポンピング
機能部に連つて循環流通路２７を設け、更に該流
通路側の流入口２７′と流出口２７″の少なくとも
一方が、如何なる回転停止の状態にあつても油溜
り室２５内に存在する油面上に位置するように、
前記流出口２７″側を油溜り室２５の内周壁面の
周りに隔壁を保持して設けた循環流通路２７に連
る略半円状の溝路２９の先端開口部に設けて構成
されていた。

［考案が解決しようとする問題点］ しかしながら、これら従来のフアン・カツプリ
ング装置としては、循環流通路２７側が油溜り室
２５内の油面下に没した状態で停止した場合の停
車の間、該油溜り室内の油が該流通路からトルク
伝達室２６側へ自然逆流して該トルク伝達室で集
溜することを防止せしめ、機関始動直後における
フアン回転の急激な上昇を阻止して異常なフアン
騒音の発生防止と、寒冷時での暖気運転を効果的
に図ることについてはその目的を満足するもので
はあるが、高温作動状態にあつて仕切板２４の流
出調整孔２４′を開放している弁部材の状態にお
いて該調整孔側を油溜り室２５の油面下に没して
機関を停止した場合に、停車の間に該油溜り室内
の油が流出調整孔２４′から自然流出によつてト
ルク伝達室２６側に集溜することとなり、従つて
その後の機関の再始動時に、ある時間の経過に亘
つて第１２図の性能特性曲線ロに示すように被駆
動側のフアン回転数が高くなる、いわゆる“ツレ
廻り”を生ぜしめる問題を有するものであつた。

本考案は、機関始動直後の急激なフアン回転の
上昇の阻止に伴う異常なフアン騒音の発生防止並
びに暖気運転の促進効果に加えて、被駆動側の前
記“ツレ廻り”を、機関再始動直後の極めて短時
間にとどめることのできる温度感応型流体式フア
ン・カツプリング装置を提供することを目的とす
るものである。

［課題を解決するための手段］ 本考案は、先端に駆動デイスクを固着した回転
軸体上に軸受を介して支承され、且つ外周に冷却
フアンを取付けたカバーとケースとからなる密封
器匣の内部を、その外方附近に油の流出調整孔を
有する仕切板により油溜り室と前記駆動デイスク
を内装するトルク伝達室とに区劃し、回転時の油
の集溜する駆動デイスクの外周壁部と対向する密
封器匣側の内周壁面の一部にダムと、これに連つ
てトルク伝達室より油溜り室側に通ずる循環流通
路を形成すると共に、外部周囲の温度が設定値を
越えると前記仕切板の流出調整孔を開放し、設定
値以下では閉鎖する弁部材を、前記カバーの前面
に設けた感温体の温度変化に伴う変形に連動する
ように内部に備え、駆動デイスクと前記ケース及
びカバーとの外方附近の対向壁面に設けたトルク
伝達間隙部での油の有効接触面積を増減させて、
回転軸体側から被駆動の密封器匣側へのトルク伝
達を制御するようにして成るフアン・カツプリン
グ装置において、前記密封器匣側のダムより径方
向の外方に、アイドル油溜り室を備えると共に、
前記油溜り室側とトルク伝達室側とを連通する油
路を設け、且つ該油路を停止時のみにあつて開放
する遠心バルブを備えて構成した温度感応型流体
式フアン・カツプリング装置を要旨とするもので
ある。

［作用］ 本考案はこのように構成されているため、前記
密封器匣側のダムより径方向の外方に位置して、
アイドル油溜り室を備え、更に停止時のみにあつ
て開放する油溜り室側よりトルク伝達室側に連通
する前記油路での遠心バルブにより、高温作動後
のトルク伝達室内に多量の油が集溜する状態の停
止であつても、該停止の間に前記油路が遠心バル
ブの復帰により開放しているため、トルク伝達室
側の油を極めて効率よく短時間に油溜り室側に自
然流出せしめてその量を減少させることとなり、
その後の機関再始動時に際し、密封器匣側の回転
に伴つて生ずる油への遠心力によつて、トルク伝
達室に残溜している少量の油をアイドル油溜り室
に向つて直ちに放出して該アイドル油溜り室内に
収納せしめることとなるため、トルク伝達室には
殆んど油の残存しない結果となる。尚、かかる状
態を第１２図の性能特性曲線イとして示す。

［実施例］ 以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説明
すれば、第１図Ａは本考案の温度感応型流体式フ
アン・カツプリング装置の一部切欠きによる縦断
面図、第１図Ｂは本考案の他の実施例を示す第１
図Ａ相当図、第２図は第１図の遠心バルブの作動
状態を示す正面図、第３図は第１図の停止時にお
ける遠心バルブ附近の一部の拡大側面断面図、第
４図は第３図の回転時における状態図、第５図、
第６図はそれぞれ他の実施例に係る遠心バルブを
仕切板上に備えた作動状態を示す正面図、第７
図、第８図は更に他の実施例を示すそれぞれの遠
心バルブを仕切板の流通貫孔の孔周部に備えた状
態の正面図、第９図、第１０図はまた更に他の実
施例に係るそれぞれの遠心バルブを油溜り室の周
側壁部に備えた拡大による一部の切欠き側面断面
図であり、１は先端に駆動デイスク７を固着した
回転軸体であつて、該軸体上に軸受Ｂを介して外
周に冷却フアン（図示せず）を取付けたカバー３
とケース２とからなる密封器匣を支承してなるも
のである。５は密封器匣の内部を油溜り室６と前
記駆動デイスク７を内装するトルク伝達室４とに
区劃した仕切板であつて、該仕切板上には油溜り
室６よりトルク伝達室４への油の流出調整孔５′
を設けてある。そして前記駆動デイスク７はトル
ク伝達室４内にあつて仕切板５を含む密封器匣の
対向壁面とトルク伝達のための微少間隙を保持し
てなるものである。８は流出調整孔５′を開閉す
る弁部材であつて、油溜り室６側の仕切板５の壁
面にその一端を鋲着し、他端を該流出調整孔部に
位置して設けてあり、前記カバー３の前面に固定
した支持金具１１にその両端を係支した板状バイ
メタルからなる感温体１０による外部周囲の温度
変化に伴う変形に連動するように連桿９を介して
内部に備えてある。１２は回転時の油の集溜する
駆動デイスク７の外周壁部と対向する密封器匣の
内周壁面の一部に設けたダムであつて、回転方向
の該ダムの手前に近傍して流入口１３′に連るト
ルク伝達室４側より油溜り室６側への循環流通路
１３を形成してポンピング機能を有するものであ
る。５″は仕切板５の軸芯部に設けた貫孔であり、
この貫孔５″は油溜り室６とトルク伝達室４との
間の圧力バランスを調整するために設けられてい
る。

１４は前記密封器匣側のダム１２より径方向の
外方に位置して、設けた環状のアイドル油溜り室
であつて、第１図Ｂのようにトルク伝達室４に流
通間隙１４′を介して連通させてもよく、停止時
に少なくともトルク伝達室４とアイドル油溜り室
１４とに集溜する総油量と略等しい容積をもつて
形成される。１５は前記仕切板５の軸芯部より径
方向の外方、若しくは油溜り室６の周側壁部に位
置して略等間隔に少くとも３つ設けた油溜り室６
側とトルク伝達室４側とを連通する油路であつ
て、該油路を停止時のみにあつて開放する遠心バ
ルブ１６を備え、且つ該油路の少くとも１つは停
止した時の油溜り室６及びトルク伝達室４におけ
る油面より下方に位置しなければならない。これ
により停止時の油面は油溜り室６とトルク伝達室
４とで同一レベルとなり、両室に残留する油量は
停止時の作動状況に関係なく一定とすることがで
きる。

尚油路１５と遠心バルブ１６の関係は、第２図
乃至第４図のように密封器匣の回転に伴つて仕切
板５に設けた油路１５をスプリングS₁に抗して先
端に重錘体１６′を取付けた遠心バルブ１６によ
り閉孔するよう構成することができ、遠心バルブ
１６が所定位置以上に回動することを阻止するよ
うストツパ１７が設けられている。

又、第５図のように一端に重錘体１６″を有す
るレバー１８の他端を遠心バルブ１６の一端に係
合させ、レバー１８の他端と遠心バルブ１６の一
端とをスプリングS₂により接続するようにしても
よいし、第６図のように遠心バルブ１６の一端に
重錘体１６′を設けると共にスプリングS₁により
仕切板５と遠心バルブ１６の一端を接続し、遠心
バルブ１６の他端で油路１５を開閉するよう構成
してもよい。

更に、第７図及び第８図のようにカバー３に穿
設した油路１５を、油溜り室６の内周壁に沿つて
設けた一端が鋲着された遠心バルブ１６により開
閉するよう構成し、この場合遠心バルブ１６の他
端をスプリングS₃により油溜り室６側に押上げる
と共に油路１５の開口部に対応する位置に重錘体
１６を取付けるか（第７図参照）、或いは遠心
バルブ１６をばね材で形成しその他端に重錘体１
６を取付けてもよい（第８図参照）。尚１９は
遠心バルブ１６の油路１５側に設けたシール材で
ある。

又、第９図のように油路１５の油溜り室６側開
口にスプリングS₃により油溜り室６側に押圧され
爪体２０によりその移動を阻止された重錘体１６
から成る遠心バルブ１６を設けることも可能で
あり、或いは油路１５を、油溜り室６の内周壁に
軸方向に設けた遠心バルブ１６により開閉するよ
う形成してもよい（第１０図参照）。

尚上記各実施例における油路の位置は高温作動
後の停止時におけるトルク伝達室及び油溜り室内
の油面以下である。

［考案の効果］ 以上説明したように本考案による温度感応型流
体式フアン・カツプリング装置は、トルク伝達室
４に通ずるアイドル油溜り室１４と、停止時のみ
にあつて油路１５を開放する遠心バルブ１６との
構造により、高温作動後の停止時にトルク伝達室
４に残溜する油を極めて効率よく短時間に油溜り
室６側へ自然流出し、トルク伝達室４側の油をア
イドル油溜り室１４の容積と略等しい量まで減少
させ、従つて機関再始動後にトルク伝達室４の減
量した油が直ちにアイドル油溜り室１４に向つて
放出されて該アイドル油溜り室内に収納されるた
め、トルク伝達室４内に殆んど油が残存しない状
態となり、被駆動側の“ツレ廻り”を機関再始動
直後の極めて短時間にとどめることができるもの
で、従つて高温作動状態で停止した場合でのその
後の機関再始動時に際しても、フアン回転の急激
な上昇を阻止して異常なフアン騒音の防止と、暖
気運転の促進に加え、前記“ツレ廻り”を効果的
に軽減、防止することのできた極めて有用な温度
感応型流体式フアン・カツプリング装置である。

【図面の簡単な説明】

第１図Ａは本考案の一実施例に係る温度感応型
流体式フアン・カツプリング装置の一部切欠きに
よる縦断面図、第１図Ｂは本考案の他の実施例の
第１図Ａ相当図、第２図は第１図の遠心バルブの
作動状態を示す正面図、第３図は第１図の停止時
における遠心バルブ附近の一部の拡大図、第４図
は第３図の回転時における状態図、第５図、第６
図はそれぞれ他の実施例に係る遠心バルブを仕切
板上に備えた作動状態を示す正面図、第７図、第
８図は更に他の実施例を示すそれぞれの遠心バル
ブを仕切板の流通貫孔の孔周部に備えた状態の正
面図、第９図、第１０図はまた更に他の実施例に
係るそれぞれの遠心バルブを油溜り室の周側壁部
に備えた拡大による一部の切欠き断面図、第１１
図は従来例を示すフアン・カツプリング装置の縦
断面図、第１２図は本考案と従来技術との比較性
能特性曲線図である。 ４……トルク伝達室、５……仕切板、６……油
溜り室、１２……ダム、１４……アイドル油溜り
室、１４′……流通間隙、１５……油路、１６…
…遠心バルブ、１６′，１６″，１６……重錘
体、S₁，S₂，S₃……スプリング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 先端に駆動デイスクを固着した回転軸体上に軸
   受を介して支承され、且つ外周に冷却フアンを取
   付けたカバーとケースとからなる密封器匣の内部
   を、その外方附近に油の流出調整孔を有する仕切
   板により油溜り室と前記駆動デイスクを内装する
   トルク伝達室とに区劃し、回転時の油の集溜する
   駆動デイスクの外周壁部と対向する密封器匣側の
   内周壁面の一部にダムと、これに連つてトルク伝
   達室より油溜り室側に通ずる循環流通路を形成す
   ると共に、外部周囲の温度が設定値を越えると前
   記仕切板の流出調整孔を開放し、設定値以下では
   閉鎖する弁部材を、前記カバーの前面に設けた感
   温体の温度変化に伴う変形に連動するように内部
   に備え、駆動デイスクと前記ケース及びカバーと
   の外方附近の対向壁面に設けたトルク伝達間隙部
   での油の有効接触面積を増減させて、回転軸体側
   から被駆動の密封器匣側へのトルク伝達を制御す
   るようにして成るフアン・カツプリング装置にお
   いて、前記密封器匣側のダム１２より径方向の外
   方に、アイドル油溜り室１４を備えると共に、前
   記油溜り室６側とトルク伝達室４側とを連通する
   油路１５を設け、且つ該油路を停止時のみにあつ
   て開放する遠心バルブを備え構成したことを特徴
   とする温度感応型流体式フアン・カツプリング装
   置。