JP2541886Y2 - 感温作動型流体式ファン・カップリング装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、一般に自動車における機関冷却用のファン
回転を制御して絶えず走行時の機関周囲の温度状態に応
じた冷却送風量を供給する感温作動型流体式ファン・カ
ップリング装置の構造の改良に関するものである。

（従来の技術） 従来、この種のファン・カップリング装置としては例
えば第７図に本考案の要部に対比する流出調整孔（2
5′）部での弁部材（28）の開閉構造を示すように、仕
切板（25）に設けたトルク伝達室（24）側への前記流出
調整孔（25′）をその単数によって形成せしめると共
に、油溜り室（26）側に位置して仕切板（25）上にその
一端を固定した単体からなる前記弁部材（28）により、
流出調整孔（25′）を開閉してトルク伝達間隙部での油
の有効接触面積を増減せしめるオン、オフ機能による回
転トルク伝達の制御機構によって構成されていた。尚
（22）はケース、（23）はカバーで密封器匣をなすもの
であり、（27）は連通孔（27′）を有する駆動ディスク
である。

（考案が解決しようとする課題） しかしながら、このような従来の技術においては、単
数の流出調整孔（25′）部での単体弁部材（28）による
オン・オフ機構（一段制御）によって構成されるため、
第８図にその特性曲線図を示すように、設定温度を境と
した急激な回転トルク伝達の増減に伴いそのオン・オフ
機能の中間附近にあって冷却送風量の過不足を生ぜしめ
ることとなり、同時にこれら機能によってファン騒音を
誘発すると共に、軸受並びにファン部材に疲労を招いて
強いては破損、変形を生ぜしめる等の問題があった。

本考案は従来技術の有する前記問題に鑑みてなされた
もので、温度変化に応じた回転トルク伝達機能（二段制
御）の構造となし、その中間附近での機関への冷却送風
量の過不足をさけて極力適正となし、制御機能をできる
だけ緩和して円滑に行わしめることにより性能の一層の
向上を図り、同時にファン騒音の低下と軸受並びにファ
ン部材での疲労を軽減して破損、変形等の生ずる憂いを
なくし、長期に亘り耐用することのできる感温作動型流
体式ファン・カップリング装置を提供することを目的と
するものである。

（課題を解決するための手段） 上記目的を達成するために本考案の第１の実施態様
は、複数の連通孔を有する駆動ディスクを先端部に固着
した回転軸体上に軸受を介して支承され、且つ外周部に
冷却ファンを取付けたケースとカバーとからなる密封器
匣の内部を、油の流出調整孔を設けた仕切板により油溜
り室と前記駆動ディスクを内装するトルク伝達室とに区
劃し、回転時の油の集溜する駆動ディスクの外周側壁面
に対向する密封器匣側の内周側壁面の一部にダムと、該
ダムに連なってトルク伝達室側より油溜り室側に通ずる
循環流通路を形成すると共に、油溜り室側に位置してそ
の一端を仕切板上に固定し、他端側を外部周囲の温度が
設定値を越えると前記仕切板の流出調整孔を開放し、設
定値以下では閉鎖する弾性弁部材を、前記カバーの前面
に設けた感温体の温度変化に伴う変形に連動するように
内部に備え、駆動ディスクと前記トルク伝達室の外方部
分との対向壁面に設けたトルク伝達間隙部での油の有効
接触面積を増減させて駆動側の回転軸体側から被駆動側
の密封器匣側への回転トルク伝達を制御せしめるように
してなるファン・カップリング装置において、前記仕切
板に流出調整孔部より径方向の内側に位置して流出調整
孔とは別の流通孔を前記駆動ディスク側の連通孔部に略
対向位置して設けると共に、前記弁部材と対応して軸方
向に間隔をおいてその一端を該弁部材に直接固定した別
途補助弁部材を設けて該補助弁部材により前記流通孔を
開閉するように形成し、弁部材と補助弁部材との少なく
とも一方側での作動によりオン・オフ中間での回転トル
ク伝達の制御機能を備えて構成した感温作動型流体式フ
ァン・カップリング装置を特徴とするものである。

また本考案の第２の実施態様は、複数の連通孔を有す
る駆動ディスクを先端部に固着した回転軸体上に軸受を
介して支承され、且つ外周部に冷却ファンを取付けたケ
ースとカバーとからなる密封器匣の内部を、油の流出調
整孔を設けた仕切板により油溜り室と前記駆動ディスク
を内装するトルク伝達室とに区劃し、回転時の油の集溜
する駆動ディスクの外周側壁面に対向する密封器匣側の
内周側壁面の一部にダムと、該ダムに連なってトルク伝
達室側より油溜り室側に通ずる循環流通路を形成すると
共に、油溜り室側に位置してその一端を仕切板上に固定
し、他端側を外部周囲の温度が設定値を越えると前記仕
切板の流出調整孔を開放し、設定値以下では閉鎖する弾
性弁部材を、前記カバーの前面に設けた感温体の温度変
化に伴う変形に連動するように内部に備え、駆動ディス
クと前記トルク伝達室の外方部分との対向壁面に設けた
トルク伝達間隙部での油の有効接触面積を増減させて駆
動側の回転軸体側から被駆動側の密封器匣側への回転ト
ルク伝達を制御せしめるようにしてなるファン・カップ
リング装置において、前記仕切板に、流出調整孔部より
径方向の内側に位置して流出調整孔とは別の流通孔を前
記駆動ディスク側の連通孔部に略対向位置して設けると
共に、前記弁部材にその一端を固定したスプリング体に
連着し、且つ該弁部材と対応して軸方向に間隔をおいて
別途補助弁部材を設けて該補助弁部材により前記流通孔
を開閉するように形成し、弁部材と補助弁部材との少な
くとも一方側での作動によりオン・オフ中間での回転ト
ルク伝達の制御機能を備えて構成した感温作動型流体式
ファン・カップリング装置を特徴とするものである。

更に、本考案では前記駆動ディスク側の複数の連通孔
部を包囲するように該駆動ディスクの油溜り室側の側面
に環状の突起堰を設けて構成したり、或いは前記流通孔
の孔周端部を、連通孔側への突出壁となして形成するこ
とが好ましい。

（作用） 本考案はこのように構成されているため、外部周囲の
低温での流出調整孔並びに流通孔をそれぞれ閉鎖してな
る弁部材及び補助弁部材の状態にあって、その後の温度
上昇に伴い弁部材が開放して油溜り室に集溜する油をト
ルク伝達室側の伝達間隙部をなす前面側に流出せしめ、
中間でのトルク伝達機能を行わしめることとなり、更に
温度の上昇により補助弁部材をも開放してトルク伝達室
の背面側に油を流出して完全なオンの状態での充分な冷
却送風量を供給することとなる。また反面、外部周囲の
温度降下に際しては開放状態にある前記補助弁部材がま
ず閉鎖して一方側の伝達間隙部をなす前面側だけへの流
出にとどめて中間でのトルク伝達機能を維持せしめるこ
ととなり、更にその後の温度の降下に応じて弁部材をも
閉鎖して完全なオフの状態となるのである。即ちオン・
オフ機構にあってその中間でのトルク伝達の制御機構を
備えることにより、温度変化に応じた回転トルク伝達機
能（二段制御）の構造となすため、その中間附近での機
関への冷却送風量の過不足をさけて極力適正となすこと
となり、これらオン・オフ制御機能をできるだけ緩和し
て円滑に作動せしめて性能を一層向上することができ、
また同時に制御時の回転の増速に伴うファン騒音を低下
せしめ、更に軸受並びにファン部材での疲労を軽減して
破損・変形等の生ずる憂いがなく、長期に亘り耐用する
ことができることとなる。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明すれば、
第１図は本考案の感温作動型流体式ファン・カップリン
グ装置の一部切欠きによるオフ状態時の縦断面図、第２
図は第１図の本考案の要部を示す中間状態時の拡大によ
る一部の断面図、第３図は第２図の完全なオン状態図、
第４図は他の実施例に係る拡大による第２図相当図、第
５図及び第６図は本考案のそれぞれの特性曲線図であっ
て、（１）は回転軸体であり、その先端部に複数の連通
孔（７′）を有する駆動ディスク（７）を固着し、且つ
後端部に相手基体への取付けフランジ壁（１′）を有し
て駆動側をなすものである。そして該軸体上に軸受
（Ｂ）を介して外周部に冷却ファン（Ｆ）を取付けたケ
ース（２）とカバー（３）とからなる密封器匣を支承し
てある。（５）は仕切板であり、密封器匣の内部を油溜
り室（６）と前記駆動ディスク（７）を内装するトルク
伝達室（４）とに区劃してなるものであって、該仕切板
には油溜り室（６）よりトルク伝達室（４）への油の流
出調整孔（５′）を設けると共に、流出調整孔（５′）
部より径方向の内側に位置して該流出調整孔とは別の流
通孔（14）を前記駆動ディスク（７）側の連通孔
（７′）部に略対向位置して設けてある。そして駆動デ
ィスク（７）はトルク伝達室（４）内にあって仕切板
（５）を含む密封器匣との外方附近の対向壁面とにその
両側面に亘ってトルク伝達のための微少間隙を保持して
ある。（８）は流出調整孔（５′）を開閉する弁部材で
あって、油溜り室（６）側の仕切板（５）の壁面にその
一端を鋲着し、他端を該流出調整孔部に位置して設ける
と共に、同時に弁部材（８）にその一端を固定するか、
（第１図）もしくは一端を固定したコイル・スプリング
体（16）に連着するか（第４図）して弁部材（８）と対
応して軸方向に間隔をおいて別途補助弁部材（８′）を
設け、該補助弁部材により前記流通孔（14）を開閉する
ように構成される。そして前記カバー（３）の前面に固
定した支持金具（11）にその両端部を係支した板状バイ
メタルからなる感温体（10）による外部周囲の温度変化
に伴う変動に連動するように連桿（９）を介して内部に
備えてある。（12）はダムであり、回転作動時の油の集
溜する駆動ディスク（７）の外周側壁面とに対向する密
封器匣の内周側壁面の一部に設けたものであって、回転
方向の該ダムの手前に近傍して形成した流入口に連るト
ルク伝達室（４）より油溜り室（６）側への循環流通路
（13）とによってポンピング機能をなすものである。
（14′）は前記流通孔（14）の孔周端部にあって連通孔
（７′）側への突出壁であり、該連通孔の表面近くまで
突設することにより流通孔（14）部での開放時になす連
通孔（７′）を通じた背面側のトルク伝達間隙部だけへ
の流出を確実となすものである。（15）は環状の突起堰
であり、前記駆動ディスク（７）の複数の連通孔
（７′）部を包囲するように該駆動ディスクの油溜り室
（６）側の側面に設けられてなるもので、前記同様に流
通孔（14）での開放時に背面側のトルク伝達間隙部だけ
への流出を、突出壁（14′）による効果によって一層確
実となすものである。（17）及び（18）は所望に応じて
駆動ディスク（７）の外周側壁面に設けた歯型面及び該
駆動ディスクの外周端附近に対向する密封器匣側の内周
面に設けたフィン状壁であり、これら歯型面（17）或い
はフィン状壁（18）により補助弁部材（８′）の開放に
伴う中間でのトルク伝達制御時に、前面側のトルク伝達
間隙部側への油の廻流を効率よく阻止して背面側の伝達
間隙部だけにとどめるものである。

尚、弁部材（８）と補助弁部材（８′）とを連桿
（９）の当接する略中央附近の相互の間にスペーサー、
もしくはその一方に突出壁を有して（図示せず）長手方
向に重合状に構成してもよく、更にこれら弁部材（8,
8′）の先端附近の少なくとも一方側に、所望に応じて
重錘片を有して（図示せず）それぞれのバネ特性を調整
し得るように構成してもよい。

（考案の効果） 以上説明したように本考案による感温作動型流体式フ
ァン・カップリング装置は、そのオン・オフ機能にあっ
て特に別途設けた流通孔（14）での補助弁部材（８′）
により、温度変化に応じてトルク伝達間隙部のなす背面
側だけに油の流出を行って二段制御による中間でのトル
ク伝達制御機構を備えて構成されるため、その中間附近
での機関への冷却送風量の過不足をさけて極力適正とな
すことができ、これらオン・オフ制御機能をできるだけ
緩和して円滑に作動せしめて性能を一層向上することが
でき、また更に制御時の回転の増速に伴うファン騒音を
低下せしめ、同時に軸受並びにファン部材での疲労を軽
減して破損、変形の憂いをなくし、長期に亘って耐圧す
ることができる等、極めて有用な感温作動型流体式ファ
ン・カップリング装置である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例に係る感温作動型流体式ファ
ン・カップリング装置の一部切欠きによるオフ状態時の
縦断面図、第２図は第１図の本考案の要部を示す中間状
態時の拡大による一部の断面図、第３図は第２図の完全
なオン状態図、第４図は他の実施例に係る拡大による第
２図相当図、第５図及び第６図は本考案のそれぞれの特
性曲線図、第７図は従来例を示すファン・カップリング
装置の本考案の要部に対比する流出調整孔部での弁部材
との構造の切欠きによる一部の拡大断面図、第８図は第
７図の特性曲線図である。 （５）…仕切板、（５′）…流出調整孔、（７）…駆動
ディスク、（７′）…連通孔、（８）…弁部材、
（８′）…補助弁部材、（14）…流通孔、（14′）…突
出壁、（15）…突起堰、（16）…スプリング体。

Claims (4)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】複数の連通孔を有する駆動ディスクを先端
   部に固着した回転軸体上に軸受を介して支承され、且つ
   外周部に冷却ファンを取付けたケースとカバーとからな
   る密封器匣の内部を、油の流出調整孔を設けた仕切板に
   より油溜り室と前記駆動ディスクを内装するトルク伝達
   室とに区劃し、回転時の油の集溜する駆動ディスクの外
   周側壁面に対向する密封器匣側の内周側壁面の一部にダ
   ムと、該ダムに連なってトルク伝達室側より油溜り室側
   に通ずる循環流通路を形成すると共に、油溜り室側に位
   置してその一端を仕切板上に固定し、他端側を外部周囲
   の温度が設定値を越えると前記仕切板の流出調整孔を開
   放し、設定値以下では閉鎖する弾性弁部材を、前記カバ
   ーの前面に設けた感温体の温度変化に伴う変形に連動す
   るように内部に備え、駆動ディスクと前記トルク伝達室
   の外方部分との対向壁面に設けたトルク伝達間隙部での
   油の有効接触面積を増減させて駆動側の回転軸体側から
   被駆動側の密封器匣側への回転トルク伝達を制御せしめ
   るようにしてなるファン・カップリング装置において、
   前記仕切板（５）に流出調整孔（５′）部より径方向の
   内側に位置して流出調整孔（５′）とは別の流通孔（1
   4）を前記駆動ディスク（７）側の連通孔（７′）部に
   略対向位置して設けると共に、前記弁部材（８）と対応
   して軸方向に間隔をおいてその一端を該弁部材に直接固
   定した別途補助弁部材（８′）を設けて該補助弁部材に
   より前記流通孔（14）を開閉するように形成し、弁部材
   （８）と補助弁部材（８′）との少なくとも一方側での
   作動によりオン・オフ中間での回転トルク伝達の制御機
   能を備えて構成したことを特徴とする感温作動型流体式
   ファン・カップリング装置。
2. 【請求項２】複数の連通孔を有する駆動ディスクを先端
   部に固着した回転軸体上に軸受を介して支承され、且つ
   外周部に冷却ファンを取付けたケースとカバーとからな
   る密封器匣の内部を、油の流出調整孔を設けた仕切板に
   より油溜り室と前記駆動ディスクを内装するトルク伝達
   室とに区劃し、回転時の油の集溜する駆動ディスクの外
   周側壁面に対向する密封器匣側の内周側壁面の一部にダ
   ムと、該ダムに連なってトルク伝達室側より油溜り室側
   に通ずる循環流通路を形成すると共に、油溜り室側に位
   置してその一端を仕切板上に固定し、他端側を外部周囲
   の温度が設定値を越えると前記仕切板の流出調整孔を開
   放し、設定値以下では閉鎖する弾性弁部材を、前記カバ
   ーの前面に設けた感温体の温度変化に伴う変形に連動す
   るように内部に備え、駆動ディスクと前記トルク伝達室
   の外方部分との対向壁面に設けたトルク伝達間隙部での
   油の有効接触面積を増減させて駆動側の回転軸体側から
   被駆動側の密封器匣側への回転トルク伝達を制御せしめ
   るようにしてなるファン・カップリング装置において、
   前記仕切板（５）に、流出調整孔（５′）部より径方向
   の内側に位置して流出調整孔（５′）とは別の流通孔
   （14）を前記駆動ディスク（７）側の連通孔（７′）部
   に略対向位置して設けると共に、前記弁部材（８）にそ
   の一端を固定したスプリング体（16）に連着し、且つ該
   弁部材と対応して軸方向に間隔をおいて別途補助弁部材
   （８′）を設けて該補助弁部材により前記流通孔（14）
   を開閉するように形成し、弁部材（８）と補助弁部材
   （８′）との少なくとも一方側での作動によりオン・オ
   フ中間での回転トルク伝達の制御機能を備えて構成した
   ことを特徴とする感温作動型流体式ファン・カップリン
   グ装置。
3. 【請求項３】前記駆動ディスク（７）側の複数の連通孔
   （７′）部を包囲するように該駆動ディスクの油溜り室
   （６）側の側面に環状の突起堰（15）を設けて構成した
   ことを特徴とする請求項１又は２記載の感温作動型流体
   式ファン・カップリング装置。
4. 【請求項４】前記流通孔（14）の孔周端部を、連通孔
   （７′）側への突出壁（14′）となして形成したことを
   特徴とする請求項１又は２記載の感温作動型流体式ファ
   ン・カップリング装置。