以下、添付図面に従って本発明に係る内視鏡のコネクタ装置について説明する。
図1は、外科システム1の概略構成図である。外科システム1は、内視鏡100と、処置具200と、外套管300と、アウターシース500(外装管ともいう)とを備えており、患者の体腔内の観察と処置とに用いられる。
内視鏡100は、例えば腹腔鏡等の硬性内視鏡であり、体腔内に挿入されて体腔内を観察する。内視鏡100は、体腔内に挿入される細長い硬性の内視鏡挿入部102と、内視鏡挿入部102の基端部に連設されたL字形状のグリップ部103と、グリップ部103を介して内視鏡挿入部102に基端部が接続された軟性のユニバーサルケーブル104と、を備える。
ユニバーサルケーブル104の先端部には、本実施形態のコネクタ装置10が設けられており、コネクタ装置10を介してプロセッサ装置108と光源装置110とが内視鏡100に着脱自在に接続される。また、プロセッサ装置108には、モニタ112が接続されている。なお、本実施形態のコネクタ装置10については後述する。
図2は、内視鏡挿入部102の先端部の正面図である。なお、図1には、内視鏡挿入部102の先端部の要部断面を拡大して図示している。
図1、図2の如く、内視鏡挿入部102の先端面102Aには、観察部114が設けられている。観察部114は、観察窓116と、観察窓116の周囲に配置されたライトガイド118の先端部である出射端118Aと、観察窓116の背部に配置された撮像レンズ群120及びプリズム122と、固体撮像素子124と、を備えている。固体撮像素子124としては、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いることができる。
ライトガイド118の基端部は、内視鏡挿入部102とグリップ部103とユニバーサルケーブル104とに挿通されてコネクタ装置10のライトガイド棒12に接続され、このライトガイド棒12を介して光源装置110に接続される。これにより、光源装置110から照射された照明光がライトガイド118を介して伝送されて、ライトガイド118の3つの出射端118Aから内視鏡挿入部102の前方に照射される。これによって、患者の体腔内が照明される。
観察窓116から取り込まれた被写体光は、撮像レンズ群120及びプリズム122を介して固体撮像素子124の撮像面に結像され、固体撮像素子124により撮像信号に変換される。固体撮像素子124には、ベース基板128(図23参照)を介して信号線126の先端部が接続される。信号線126の基端部は、内視鏡挿入部102とグリップ部103とユニバーサルケーブル104とに挿通されてコネクタ装置10に接続される。そして、信号線126は、コネクタ装置10のビデオケーブル14に収容されて、ビデオケーブル14の先端部に連接された平型コネクタ16に接続される。この平型コネクタ16がプロセッサ装置108に接続されることにより、プロセッサ装置108は、固体撮像素子124から入力される撮像信号に基づき、モニタ112に内視鏡画像を表示させる。
図1に示す処置具200は、例えば高周波鉗子であり、体腔内に挿入されて体腔内の患部を処置する。処置具200は、体腔内に挿入される細長い処置具挿入部202と、処置具挿入部202の基端側に設けられ、術者に把持される操作部204と、処置具挿入部202の先端に設けられ、操作部204の操作によって高周波電流を発生する処置部206と、を備える。電気メスの構造については周知技術であるので具体的な説明は省略する。
なお、処置具200としては、電気メスに限らず、例えば鉗子、レーザープローブ、縫合器、持針器、超音波デバイス又は吸引器等の他の処置具であってもよい。
外套管300は、その内部に基端側から内視鏡挿入部102と処置具挿入部202とを挿通させて先端側から繰り出す。外套管300を体壁に刺入して、基端側を体外に配置し、且つ先端側を体腔内に配置することにより、1つの外套管300で内視鏡挿入部102と処置具挿入部202とを体腔内に案内することができる。また、外套管300は、詳しくは後述するが、内視鏡挿入部102と処置具挿入部202とを連動させて進退移動させる連動機能を備えている。これにより、例えば、処置具挿入部202のみの進退操作によって内視鏡挿入部102も進退移動させることができ、内視鏡挿入部102の進退操作を行うことなく適切な内視鏡画像が得られる。
アウターシース500は、筒状に形成されており、先端開口500a及び基端開口500bと、基端開口500bから先端開口500aに向けて外套管300が長手軸周りに回転自在に挿通される不図示の挿通路と、を有している。アウターシース500の外周部には、その周方向に沿った横溝520が多数設けられているとともに、その長手軸方向に沿った縦溝504がアウターシース500の周方向の複数箇所に設けられている。これにより、外套管300をアウターシース500とともに体壁に刺入した状態において、各横溝520が体壁に対するアウターシース500の進退移動を規制し、各縦溝504が体壁に対するアウターシース500の周方向の回転を規制する。したがって、アウターシース500に挿通された外套管300の体壁に対する意図しない回転及び進退移動を防止することができる。これにより、内視鏡挿入部102の先端の位置が変動して観察視野が意図せずに変動してしまうことを防止することができる。
次に、外套管300の構成について説明する。
図3は、外套管300の外観斜視図である。外套管300は、全体が長細い円筒形状であり、先端と基端と長手軸300aとを有している。外套管300は、長手軸300aに沿って、内視鏡挿入部102(図1参照)が進退自在に挿通される内視鏡挿通路306と、処置具挿入部202が進退自在に挿通される処置具挿通路308とを有する。内視鏡挿通路306と処置具挿通路308とは互いに平行に、且つ長手軸300aに平行に配置される。
図中の符号「306a」は、内視鏡挿通路306の中心軸に相当する内視鏡挿通軸である。また、図中の符号「308a」は、処置具挿通路308の中心軸に相当する処置具挿通軸である。本実施形態では、長手軸300aと内視鏡挿通軸306aと処置具挿通軸308aとは同一平面上に配置されるが、必ずしも同一面上に配置された構成にする必要はない。
なお、外套管300が配置された空間の位置及び向きに関して、長手軸300aに沿った方向の基端面302から先端面304への向きを前、及び長手軸300aから処置具挿通軸308aへの向きを右として、「前」「後」「左」「右」「上」「下」という用語を用いる。
外套管300の基端面302には、内視鏡挿入部102を内視鏡挿通路306に挿入する第1基端開口310と、処置具挿入部202を処置具挿通路308に挿入する第2基端開口314とが設けられている。また、外套管300の先端面304には、内視鏡挿通路306に挿入された内視鏡挿入部102を前方に繰り出す第1先端開口312と、処置具挿通路308に挿入された処置具挿入部202を前方に繰り出す第2先端開口316とが設けられている。
また、外套管300は、長手軸300aに沿って延びた形状の外套管長筒部320と、外套管長筒部320の基端に取り付けられる基端キャップ340と、外套管長筒部320の先端に取り付けられる先端キャップ360と、から構成される。
基端キャップ340は、硬質樹脂又は金属等により外套管長筒部320の外径よりも拡径された円柱状に形成され、その後側の端面が基端面302を構成する。また、先端キャップ360は、硬質樹脂又は金属等により形成されており、その前側の端面が先端面304を構成する。
外套管長筒部320は、硬質樹脂又は金属等により長手軸300aを中心軸とする長細い円筒状に形成された長筒体322を有している。また、外套管長筒部320は、長筒体322内に内視鏡挿通路306及び処置具挿通路308と、内視鏡挿入部102及び処置具挿入部202を連動させて長手軸300a方向に進退移動させるスライダ400(図4参照)と、を有している。
図4A及び図4Bは、外套管長筒部320の長筒体322を省略した外套管300の外観斜視図である。図4A及び図4Bに示すように、長筒体322内には、長手軸300aに沿って延在する略円柱状の隔壁部材324と、隔壁部材324に案内されて前後方向に進退移動可能に支持されるスライダ400とが設けられている。
図5は、隔壁部材324の外観斜視図である。隔壁部材324は、例えば樹脂で形成された中実の絶縁体であり、図3の長筒体322の内部において基端キャップ340から先端キャップ360まで延在する。図5の如く、隔壁部材324の側面には、隔壁部材324の基端から先端まで長手軸300aに平行に延びる内視鏡ガイド溝326及び処置具ガイド溝328がそれぞれ形成されている。内視鏡ガイド溝326は内視鏡挿通路306(図3参照)の一部を形成し、処置具ガイド溝328は処置具挿通路308の一部を形成する。また、隔壁部材324は、内視鏡挿通路306と処置具挿通路308との間の仕切り壁を形成している。
隔壁部材324により、外套管300に挿入された内視鏡挿入部102及び処置具挿入部202が各々に対応する内視鏡挿通路306及び処置具挿通路308の領域から外れることなく、それらの内部を確実に進行する。このため、外套管300に対する内視鏡挿入部102及び処置具挿入部202の挿入作業が容易となる。また、外套管300の内部での内視鏡挿入部102と処置具挿入部202との接触が防止される。
図4A及び図4Bに戻り、スライダ400は、図3の長筒体322の内部において隔壁部材324の外周部に外嵌されており、隔壁部材324に対して長手軸300a方向に沿って進退自在に移動するリング状の移動体である。
図6は、スライダ400の一部を構成する連結リング402の外観斜視図である。また、図7は、長手軸300aを含み、且つ上下方向に直交する水平面で外套管300及びスライダ400を切断した断面図である。
図4A、図4B、図6、及び図7に示すように、スライダ400は、内視鏡ガイド溝326の内部に配置される内視鏡連結部420と、処置具ガイド溝328の内部に配置される処置具連結部422と、これら内視鏡連結部420及び処置具連結部422を一体的に連動させる金属製の連結リング402と、を有する。
連結リング402は、図6の如く、隔壁部材324の外周を周方向に囲む筒状のリング部404と、アーム部406とを有する。リング部404は、隔壁部材324の外周面の中で内視鏡ガイド溝326及び処置具ガイド溝328以外の部分に接触又は近接している。また、アーム部406は、リング部404の処置具ガイド溝328に対向する部分から、処置具ガイド溝328に沿って前後方向に延設されている。
アーム部406の先端と基端の各々には、処置具ガイド溝328の内部に挿入配置される後規制端408と前規制端410とが設けられる。後規制端408及び前規制端410の各々には処置具挿入部202が挿通する開口408A及び開口410Aが設けられる。そして、後規制端408と前規制端410とは、両者の間で処置具ガイド溝328の内部に配置された処置具連結部422(後述の処置具固定具450)の前後方向の進退移動を規制する。
リング部404の内視鏡ガイド溝326に対向する部分には、内視鏡ガイド溝326の開口に平行で、且つ前後方向に延びる平坦な第1係合部404Aが形成されている。第1係合部404Aと、後規制端408と前規制端410とにより、隔壁部材324に対する連結リング402の長手軸300a周り(以下、長手軸周りと略す)の回転が規制される。また、第1係合部404Aには、後述する係合孔412が形成されている。
連結リング402は、隔壁部材324により前後方向に進退移動可能に支持され、且つ上下左右方向への移動及び全方向への回転が規制された状態で隔壁部材324により支持される。また、連結リング402は、連結リング402の後規制端408が基端キャップ340に当接する位置を後端とし、連結リング402の前規制端410が先端キャップ360に当接する位置を前端とする移動可能範囲内で進退移動する。
図8は、図7中の「8−8」線に沿った断面図である。図9Aは、図4Aにおいてリング部404よりも基端側に延設されたアーム部406と交差する位置で外套管300を長手軸300aに対して垂直な平面で切断したものを示した斜視図である。図9Bは、図9A中の連結リング402を省略して示した斜視図である。図9Cは、図9Bの外套管300を異なる方向から見た斜視図である。
図7、図8、及び図9A〜図9Cに示すように、内視鏡連結部420は、内視鏡ガイド溝326内に配置されており、内視鏡ガイド溝326内に挿通された内視鏡挿入部102に連結される。また、処置具連結部422は、処置具ガイド溝328内に配置されており、処置具ガイド溝328内に挿通された処置具挿入部202に連結される。
内視鏡連結部420は、内視鏡ガイド溝326の内部に配置され、且つ内視鏡ガイド溝326に形成される内視鏡挿通路306に沿って前後方向に進退自在に移動する内視鏡固定具430を有する。内視鏡固定具430は、スライダ400内で内視鏡挿入部102を保持する。内視鏡固定具430は、内視鏡ガイド溝326の内壁面に近接又は接触する筒状で、且つ金属製の保持枠432と、保持枠432の内側に固定され、弾性ゴム等の弾性材により形成されたOリング等の筒状の内視鏡弾性保持体434とから構成される。
保持枠432は、内視鏡ガイド溝326の内部において軸周り方向の移動(回転)が不能な形状を有しているので、内視鏡固定具430は内視鏡ガイド溝326内において前後方向への進退移動のみが許容される。また、保持枠432は、その内周面の前後方向に沿った断面が内周の全周に亘って凹形状に形成されている。そして、保持枠432の内周面の凹部内に内視鏡弾性保持体434が嵌合固定される。これにより、内視鏡弾性保持体434が油を含んでおり、接着剤を用いて保持枠432に固定することができない場合でも、保持枠432の内側に内視鏡弾性保持体434を固定することができる。このため、保持枠432の一部(前後方向の端部)は、内視鏡挿入部102の外周面に接触する。
保持枠432の外周面には、内視鏡ガイド溝326の開口に対向する位置においてこの開口の外側に向けて突出した突部436が設けられている。突部436は、第1係合部404Aに形成された係合孔412に挿通され、前後方向に係止される。すなわち、係合孔412を有する第1係合部404Aは、突部436を介して保持枠432と係合する。これにより、連結リング402に対する内視鏡固定具430の前後方向の相対的な進退移動が規制される。したがって、連結リング402と内視鏡固定具430とが一体的に前後方向に進退移動する。
内視鏡弾性保持体434は、その内側に挿通された内視鏡挿入部102の外周面に圧接することで、内視鏡挿入部102を弾性保持する。これにより、内視鏡挿入部102の長手軸である内視鏡長手軸100aが内視鏡挿通軸306aと略同軸上に配置される。内視鏡保持面434aは、弾性力により内視鏡挿入部102の外周面に圧接するので、内視鏡100の内視鏡長手軸100aを中心とする周方向の回転を許容する。また、内視鏡弾性保持体434は、内視鏡挿入部102の前後方向の保持位置を任意に調整することができる。
処置具連結部422は、処置具ガイド溝328の内部においてアーム部406の後規制端408と前規制端410との間に配置された処置具固定具450を有している。処置具固定具450は、スライダ400内で処置具挿入部202を保持する。換言すると、処置具200は処置具固定具450によりスライダ400に係止される。この処置具固定具450は、後規制端408と前規制端410との間において処置具ガイド溝328に沿って前後方向に進退自在に移動する。
処置具固定具450は、処置具ガイド溝328の内壁面に近接又は接触する筒状で、且つ金属製の枠体452と、枠体452の内側に固定され、弾性ゴム等の弾性材により形成されたOリング等の筒状の処置具弾性保持体454とから構成される。なお、処置具弾性保持体454の内周面は、直径が異なる複数種類の処置具挿入部202に対しても適切に係合可能なように周方向に対して凹凸が繰り返される形状に形成されている。
処置具弾性保持体454は、その内側に挿通された処置具挿入部202の外周面に圧接することで、処置具挿入部202を弾性保持する処置具保持面454aを有している。これにより、処置具挿入部202の中心軸(長手軸)が処置具挿通軸308aと略同軸上に配置される。処置具保持面454aは、弾性力により処置具挿入部202の外周面に圧接するので、処置具保持面454aによる処置具挿入部202の前後方向の保持位置を任意に調整することができる。
処置具固定具450は、処置具挿入部202の前後方向への進退移動に連動して一体的に進退移動する。この際に、処置具固定具450は、前述のように、後規制端408と前規制端410との間において処置具ガイド溝328に沿って前後方向に進退自在に移動する。すなわち、アーム部406は、連結リング402に対する処置具固定具450の前後方向の進退移動を、処置具固定具450が後規制端408に当接する位置から前規制端410に当接する位置までの範囲で許容するとともに、その範囲で規制する。
また、処置具固定具450は、処置具挿入部202の長手軸周りの回転に連動して処置具ガイド溝328の内部で回転する。
図10は、連結リング402の不感帯領域を説明するための説明図である。連結リング402に対する内視鏡固定具430の進退移動可能な範囲を第1範囲とし、連結リング402に対する処置具固定具450の進退移動可能な範囲を第2範囲とすると、内視鏡固定具430は連結リング402の第1係合部404Aに対して前後方向の進退移動が規制されるため第1範囲は零となる。これに対して第2範囲は、前述のように後規制端408と前規制端410との間の範囲である。これにより、連結リング402は、処置具固定具450及び内視鏡固定具430のいずれか一方の進退移動に対して他方を連動して進退移動させない不感帯領域を有する。
不感帯領域での進退操作(処置具固定具450と後規制端408又は前規制端410とが当接しない範囲での進退移動)に対しては、内視鏡100が進退移動しないので、モニタ112に内視鏡画像として表示される処置具200の先端部位及び体腔内部位等の観察部位の範囲は変化せず、処置具200の微小変位に応じて観察部位の画像の大きさが変動してしまうのを防止することができる。これによって、遠近感を適切に保つことができ、安定した内視鏡画像を得ることができる。
図11A及び図11Bは、連結リング402の感帯領域を説明するための説明図である。処置具固定具450が前後方向に進退移動した場合、又は内視鏡固定具430とともに連結リング402が前後方向に進退移動した場合には、処置具固定具450は後規制端408又は前規制端410に当接する。この状態において、連結リング402は、内視鏡固定具430と処置具固定具450のうちのいずれか一方の進退移動(処置具固定具450と後規制端408又は前規制端410とを離間させない方向への進退移動)に対して他方を連動して進退移動させる感帯領域を有する。
感帯領域での進退操作に対しては、内視鏡100が進退移動するので、モニタ112に表示される内視鏡画像に写り込む観察部位の範囲が処置具200の進退移動に追従するように連続的に変更される。これにより、処置具200の操作に応じて内視鏡画像に写り込む処置具200の先端部位以外の観察部位の画像の大きさ及び観察部位の範囲の大きさが変化するので、術者が望む画像を簡単に得ることができる。
このようにスライダ400は、内視鏡固定具430と連結された内視鏡挿入部102と、処置具固定具450と連結された処置具挿入部202とのうち、いずれか一方の前後方向(軸方向)への進退移動に対して他方が連動せずに進退移動しない不感帯領域と、いずれか一方の進退移動に対して他方が連動して進退移動する感帯領域とを有する。すなわち、内視鏡挿入部102は、スライダ400によって、処置具挿入部202の軸方向の進退移動に対して遊びを持って連動する。
以上の如く構成された外套管300の作用について説明する。
まず、外套管300に不図示の内針を挿入した状態で、外套管300を患者の体壁に刺入し、内針を抜去した後、体腔内に気腹ガスを注入する。この後、図12の(A)に示すように、外套管300の内視鏡挿通路306と処置具挿通路308の各々に内視鏡挿入部102と、処置具挿入部202とを挿通させて外套管300に内視鏡挿入部102と処置具挿入部202とを装着する。なお、内針の詳細な説明は省略するが、内針は外套管300の内視鏡挿通路306と処置具挿通路308に対応した2本の軸状の針部を有し、2本の針部の先端にはそれぞれ刃部が設けられている。
このとき、内視鏡挿入部102は、隔壁部材324の内視鏡ガイド溝326によりスライダ400の内視鏡固定具430を挿通する位置に確実に案内されて内視鏡固定具430に連結される。同様に、処置具挿入部202は、隔壁部材324の処置具ガイド溝328によりスライダ400の処置具固定具450を挿通する位置に確実に案内されて処置具固定具450に連結される。
なお、図12及び以下で示す図13では、アウターシース500を図示していないが、外套管300には図1に示したアウターシース500が被嵌される。ただし、アウターシース500を被嵌しないで外套管300を使用することも可能である。
そして、図12の(A)の状態が、図10に示す状態であるとする。図10は、内視鏡挿入部102と処置具挿入部202と連結したスライダ400の状態を示した断面図であり、処置具固定具450が連結リング402(アーム部406)に対する移動可能範囲の前端及び後端のいずれにも到達していない状態を示す。すなわち、処置具固定具450が後規制端408及び前規制端410のいずれにも到達していない状態を示す。
このとき、術者が処置具200の操作部204を把持している手で、処置具挿入部202を微小に前進させると、処置具固定具450のみが連結リング402に対する移動可能範囲内で前進移動し、外套管300(外套管長筒部320)に対して連結リング402が移動しない。
そのため、処置具固定具450が連結リング402に対する移動可能範囲の前端(前規制端410)に到達するまでの処置具挿入部202の前進移動に対しては、図12の(B)に示すように内視鏡挿入部102が静止した状態で処置具挿入部202のみが前進する。すなわち、スライダ400は、処置具挿入部202の進退移動に対して内視鏡挿入部102が連動しない不感帯領域を有し、このときの処置具200の前進操作はスライダ400の不感帯領域での進退操作となる。
同様に、図10に示す状態であるとしたとき、術者が処置具200の操作部204を把持している手で、処置具挿入部202を微小に後退させると、処置具固定具450のみが連結リング402に対する移動可能範囲内で後退移動し、外套管300(外套管長筒部320)に対して連結リング402が移動しない。
そのため、処置具固定具450が連結リング402に対する移動可能範囲の後端(後規制端408)に到達するまでの処置具挿入部202の後退移動に対しては、図12の(C)に示すように内視鏡挿入部102が静止した状態で処置具挿入部202のみが後退する。すなわち、このときの処置具200の後退操作は、スライダ400の不感帯領域での後退操作となる。
したがって、これらの処置具200の微小な進退操作、すなわち、不感帯領域での進退操作に対しては、内視鏡100が進退移動しないので、モニタ112に内視鏡画像として表示される処置具200の先端部位や体腔内部位等の観察部位の範囲は変化せず、処置具200の微小変位に応じて観察部位の画像の大きさが変動してしまうことを防止することができる。これによって、遠近感を適切に保つことができ、安定した内視鏡画像を得ることができる。
一方、図10に示した状態において、術者が処置具200の操作部204を把持している手で、処置具挿入部202を大きく前進させると、スライダ400の処置具固定具450が移動可能範囲の前端(前規制端410)に当接するまでの不感帯領域での前進移動の後、図11Aに示すように処置具固定具450が連結リング402に対する移動可能範囲の前端(前規制端410)に到達した状態となる。そして、さらに、処置具挿入部202が前進移動すると、処置具挿入部202とともに処置具固定具450及び連結リング402が外套管長筒部320に対して前進移動する。そして、連結リング402とともに内視鏡固定具430が前進移動し、内視鏡挿入部102が内視鏡固定具430とともに前進移動する。したがって、内視鏡挿入部102が処置具挿入部202と連動して前進移動する。
そのため、処置具固定具450が連結リング402に対する移動可能範囲の前端(前規制端410)に到達した後の処置具挿入部202の前進移動については、図12の(A)と同じ状態を示した図13の(A)の状態に対して図13の(B)に示すように処置具挿入部202と連動して内視鏡挿入部102が前進する。すなわち、スライダ400は、処置具挿入部202の進退移動に対して内視鏡挿入部102が連動する感帯領域を有し、このときの処置具200の前進操作はスライダ400の感帯領域での前進操作となる。
同様に、図10に示した状態において、術者が処置具200の操作部204を把持している手で、処置具挿入部202を大きく後退させると、スライダ400の処置具固定具450が移動可能範囲の後端(後規制端408)に当接するまでの不感帯領域での後退移動の後、図11Bに示すように処置具固定具450が連結リング402に対する移動可能範囲の後端(後規制端408)に到達した状態となる。そして、さらに、処置具挿入部202が後退移動すると、処置具挿入部202とともに処置具固定具450及び連結リング402が外套管長筒部320に対して後退移動する。そして、連結リング402とともに内視鏡固定具430が後退移動し、内視鏡挿入部102が内視鏡固定具430とともに後退移動する。したがって、内視鏡挿入部102が処置具挿入部202と連動して後退移動する。
そのため、処置具固定具450が連結リング402に対する移動可能範囲の後端(後規制端408)に到達した後の処置具挿入部202の後退移動に対しては、図13の(C)に示すように処置具挿入部202と連動して内視鏡挿入部102が後退する。すなわち、このときの処置具200の後退操作はスライダ400の感帯領域での後退操作となる。
したがって、これらの処置具200の大きな進退操作、すなわち、感帯領域での進退操作に対しては、内視鏡100が進退移動するので、モニタ112に表示される内視鏡画像に写り込む観察部位の範囲が処置具200の進退移動に追従するように連続的に変更される。これにより、処置具200の操作に応じて内視鏡画像に写り込む処置具200の先端部位以外の観察部位の画像の大きさ及び観察部位の範囲の大きさが変化するので、術者が望む画像を簡単に得ることができる。
上記実施の形態では、長手軸300aに対して内視鏡挿通路306の中心軸である内視鏡挿通軸306aと処置具挿通路308の中心軸である処置具挿通軸308aとが平行であり、内視鏡挿通軸306aと処置具挿通軸308aとが平行であるが、これらは必ずしも平行でなくてもよい。
例えば、処置具挿通路308が上記実施の形態と同様に長手軸300aに対して平行に配置され、内視鏡挿通路306が長手軸300aに対して斜交して配置される形態であってもよい。この形態の外套管について上記実施の形態の外套管300の変形例として具体的に説明する。変形例として示す以下の実施の形態において、上記実施の形態の構成要素と同一又は類似作用の構成要素には同一符号を付す。
図14は、その変形例である外套管300の外観斜視図である。
同図において、外套管300の長手軸300aに対して、処置具挿通路308の処置具挿通軸308aが平行に配置され、内視鏡挿通路306の内視鏡挿通軸306aが斜交して配置されている。すなわち、長手軸300aを含む上下方向に沿った平面を鉛直基準面とし、長手軸300aを含む左右方向に沿った平面を水平基準面とすると、処置具挿通軸308aは水平基準面と鉛直基準面の両方に対して平行である。
一方、内視鏡挿通軸306aは鉛直基準面に対して平行であり、水平基準面に対しては非平行であり、水平基準面に対して斜めに傾斜する。そして、内視鏡挿通軸306aは後方下側から前方上側に向けて傾斜し、例えば、外套管300の前後方向の略中間位置において水平基準面と交差する。
図14に示す外套管300は、外套管長筒部320と、図15及び図16に示す隔壁部材324と、スライダ400と、を有する。
図15及び図16は、図14の外套管300を構成する場合の外套管長筒部320における隔壁部材324及びスライダ400を示した斜視図である。図16に示すように、隔壁部材324の処置具ガイド溝328は、上記実施の形態と同様に長手軸300aに平行な処置具挿通軸308aに沿って形成される。
一方、図15に示すように隔壁部材324の内視鏡ガイド溝326は、長手軸300aと非平行であって水平基準面に対して斜めの内視鏡挿通軸306aに沿って形成される。
また、内視鏡ガイド溝326の内部に配置される内視鏡固定具430(図17参照)は、前後方向への進退移動とともに隔壁部材324及び連結リング402に対して上下方向にも移動するため、内視鏡固定具430の外周部に形成された突部436も内視鏡固定具430の前後方向の位置に応じて連結リング402に対して上下方向に移動する。
そこで、連結リング402の平坦な第1係合部404Aに形成される係合孔412は、突部436の上下方向の移動範囲のうちの任意の位置で係合するように、図17の拡大図に示すように第1係合部404Aの範囲を超えて周方向(上下方向)に延びる長孔として形成される。
また、連結リング402の第1係合部404Aが左右方向に直交する平面であるため、連結リング402に対する内視鏡固定具430の上下方向の移動にかかわらず内視鏡固定具430の外周面と第1係合部404Aとの距離が一定に維持される。そのため、突部436の突出量を少なくすることができ、外套管長筒部320の細径化が図られる。
一方、内視鏡ガイド溝326が斜めに形成される場合には、内視鏡ガイド溝326の開口が第1係合部404Aに対向する位置からずれるため、連結リング402の前後方向の移動によって第1係合部404Aが通過する隔壁部材324の範囲は、第1係合部404Aと干渉しないように平坦な面に沿って切り欠かれている。
このような外套管300によれば、細径化のため外套管300における内視鏡挿通路306と処置具挿通路308との間隔を狭くした場合でも外套管300を挿通した内視鏡挿入部102の先端と処置具挿入部202の先端とを離間させることができるため、処置具200の先端(処置部206)の状態を内視鏡100で観察し易くなるという利点がある。
次に、図1に示した内視鏡100について説明する。
図18は、内視鏡100の内視鏡挿入部102の外観斜視図である。内視鏡挿入部102は、第1挿入部150と、第2挿入部151とを備える。第1挿入部150は、内視鏡挿入部102の先端側に設けられ、観察部114を有する。第2挿入部151は、第1挿入部150の基端側に設けられてグリップ部103に接続され、且つ第1挿入部150よりも外径が大きい。また、第2挿入部151には、内視鏡固定具430(図7参照)に保持される被保持部153が設けられている。
図19は内視鏡挿入部102の被保持部153の内視鏡長手軸100aに沿った断面図である。なお、図19では図面の煩雑化を防止するために、内視鏡挿入部102内に挿通されているライトガイド118(図1参照)及び信号線126等は図示を省略している。ライトガイド118及び信号線126については後述する。
図19に示すように、第1挿入部150は、内視鏡長手軸100aに平行な方向に延びた金属製の筒体150aを有している。この筒体150a内に前述の観察部を構成する撮像レンズ群120、プリズム122及び固体撮像素子124が設けられているとともに、ライトガイド118及び信号線126が挿通されている。第1挿入部150の外径R1は、内視鏡固定具430(図7参照)の内径よりも一回り小さく、すなわち、第1挿入部150を内視鏡固定具430の内周に挿通させた際に抵抗が殆ど発生しない大きさに形成されている。
第2挿入部151は、内視鏡長手軸100aに平行な方向に延び、且つライトガイド118及び信号線126が挿通される金属製の筒体151aを有している。第2挿入部151(被保持部153を含む)の外径R2(R2>R1)は、内視鏡固定具430(図7参照)の内径に合わせた大きさ、すなわち、内視鏡固定具430の内周に嵌合する大きさに形成されている。例えば外径R1は3.7mmであり、外径R2は3.8mmである。
被保持部153は、内視鏡長手軸100aに平行な方向に延び、且つライトガイド118及び信号線126が挿通される金属製の筒体155と、筒体155の中央部の外周面上に外嵌された絶縁性を有する管状部材156とを有している。
筒体155の先端部は、管状部材156の先端よりも前方に延びており、第1挿入部150の筒体150aの内周に嵌合可能な形状及び外径を有している。また、筒体155の基端部は、管状部材156の基端よりも後方に延びており、第2挿入部151の筒体151aの内周に嵌合可能な形状及び外径を有している。例えば、筒体155の内視鏡長手軸100a方向の長さL1は40mmである。
筒体155の先端部が筒体150aの内周に嵌合し、且つ筒体155の基端部が筒体151aの内周に嵌合することで、第2挿入部151は被保持部153を介して第1挿入部150に連設して設けられる。また、第2挿入部151の先端から基端側に向かって被保持部153が設けられる。
管状部材156は、外径R2を有しており、その外周面が内視鏡固定具430(図7参照)により保持される被保持面となる。この管状部材156は、絶縁性を有する樹脂又はセラミックス等の絶縁性部材で形成されている。なお、管状部材156の外径R2は第1挿入部150の外径R1よりも大きいので、内視鏡挿入部102の外周面には第1挿入部150と被保持部153との境界において段差部160が形成される。
図20は、内視鏡固定具430及び被保持部153の内視鏡長手軸100aに沿った断面図である。内視鏡固定具430の内視鏡長手軸100a方向の長さをLxとした場合、管状部材156は、段差部160から基端側に少なくとも長さLx以上の長さL2を有するように形成されている。長さL2は例えば12mmである。これにより、内視鏡固定具430の金属製の保持枠432が、内視鏡挿入部102の管状部材156以外の箇所に接触することが防止される。
図21A及び図21Bは、外套管300の内視鏡固定具430による内視鏡挿入部102の保持を説明するための説明図である。術者は、外套管300をアウターシース500とともに患者の体壁に刺入した後、基端キャップ340の第1基端開口310(図3参照)から内視鏡挿通路306内に内視鏡挿入部102を挿入する。この内視鏡挿入部102の第1挿入部150の先端は、内視鏡挿通路306に沿って進み、内視鏡固定具430の内周を挿通した後、第1先端開口312から患者の体腔内に突出する。
この際に、図21Aに示すように、第1挿入部150の外径R1(図19参照)は内視鏡固定具430の内径よりも一回り小さいので、第1挿入部150を内視鏡固定具430の内周に挿通させたとしても、抵抗は殆ど発生しない。そして、術者が内視鏡挿通路306内への内視鏡挿入部102の挿通操作を継続すると、図21Bに示すように、第2挿入部151の被保持部153により形成される段差部160が内視鏡固定具430の内周の開口部に到達する。被保持部153の外径R2(図19参照)は外径R1よりも大きいので、段差部160が内視鏡固定具430の内周の開口部に到達すると、挿通操作に抗する抵抗力が生じる。このため、術者は、挿通操作を行う手の感覚だけで、段差部160が内視鏡挿通路306内の内視鏡固定具430まで到達したことを判別することができる。
次いで、術者が抵抗力に抗して挿通操作を継続すると、内視鏡固定具430の内周に被保持部153の管状部材156が嵌合して、この被保持部153が内視鏡固定具430により保持される(図20参照)。このように第1挿入部150の外径R1よりも被保持部153の外径R2を大きくすることで、術者は、外套管300の内部が見えなくとも手の感覚だけで内視鏡挿入部102の被保持部153を内視鏡固定具430に簡単に保持させることができる。
図22は、図7中の「22−22」線に沿った断面図である。
図22に示すように、第2基端開口314(図3参照)から処置具挿通路308に沿って処置具200を挿通させる場合、或いは処置具200を処置具挿通路308から取り外す場合に、高周波電流Iを発生する処置部206がスライダ400の連結リング402(リング部404)に接触するおそれがある。
このような場合に、術者が誤って処置具200に通電してしまうと、処置部206から発生した高周波電流Iが連結リング402(リング部404)及び第1係合部404A及び突部436を通って保持枠432まで流れる。この際に、保持枠432の内周面の一部に接触している内視鏡100の被保持部153の管状部材156は、絶縁性を有しているので、保持枠432から被保持部153を通して内視鏡100側に高周波電流Iが漏電することが防止される。
次に、内視鏡挿入部102に挿通される信号線126について説明する。
図23は、内視鏡挿入部102の観察部114に配置される固体撮像素子124の周辺構造を示した斜視図である。また、図23には、固体撮像素子124が搭載されたベース基板128と図1のプロセッサ装置108とに接続される複数本の信号線126が示されている。
これらの信号線126は、プロセッサ装置108から固体撮像素子124にコネクタ装置10を介して電源を供給する信号線、及び制御信号を出力する信号線等を有する。また、固体撮像素子124は、ベース基板128に搭載されており、このベース基板128と固体撮像素子124の回路基板130とがフレキシブルケーブル132によって接続されている。回路基板130には、信号線126の一部である出力信号線126Aの先端部が接続され、この出力信号線126Aは、内視鏡挿入部102に挿通されてコネクタ装置10に接続されている。
なお、図1に示した撮像レンズ群120は、図23、図24に示す鏡胴134によって保持されている。図24は、鏡胴134の拡大斜視図である。
鏡胴134は、撮像レンズ群120が保持する筒状の本体部134Aと、本体部134Aの先端部に形成され、観察窓116を保持する円環状の保持部134Bと、本体部134Aの基端部に形成され、プリズム122を保持する保持部134Cと、を備えている。
このように構成された鏡胴134、ベース基板128及び回路基板130は、図25に示すブラケット136によって一体的に保持されているが、ブラケット136は必須の部材ではない。また、図25は、図23に対してブラケット136が実装された説明図である。なお、図23に示した信号線126の先端側及びフレキシブルケーブル132は、図25に示すシリコンチューブ135に被覆されている。また、ベース基板128は、ポリイミド粘着テープ129によって被覆されている。
図26は、信号線126の中継部である端子部138を示した説明図である。
図1のコネクタ装置10から延出された信号線126は、その先端部が端子部138の基端部に接続され、端子部138の先端部に接続された信号線126が固体撮像素子124にベース基板128(図23参照)を介して接続される。また、固体撮像素子124の回路基板130から延出された出力信号線126Aの基端部が端子部138の先端部に接続され、端子部138の基端部に接続された出力信号線の先端部がコネクタ装置10に接続されるようになっている。なお、端子部138は、例えば、図19に示した被保持部153の内側に配置される。
次に、内視鏡挿入部102に挿通されるライトガイド118について説明する。
図27は、内視鏡挿入部102の第1挿入部150(図18参照)に挿通配置されるライトガイド118の一例を示した説明図である。なお、図27では、第1挿入部150を透視した図が示されている。
図1のコネクタ装置10から内視鏡挿入部102の第2挿入部151に挿入されるライトガイド118は、複数本の光ファイバ素線が結束された1本の束状のライトガイドである。そして、このライトガイド118は、例えば、図27の被保持部153の内部にて、3本のライトガイド118に分割されて、内視鏡挿入部102の観察部114まで延出される。これにより、3本のライトガイド118の出射端118Aが、図2の如く観察窓116の周囲に配置される。
次に、内視鏡挿入部102の先端に配置される観察部114から端子部138間を気密保持する気密ケーシングについて説明する。
図28は、内視鏡挿入部102の要部断面図であり、内視鏡挿入部102に内蔵された気密ケーシング250の断面を示している。図29は気密ケーシング250の組立完了図、図30は気密ケーシング250の組立前の形態を示した図である。
図28の如く、気密ケーシング250は、内視鏡挿入部102の第1挿入部150の内側に挿通配置され、第1挿入部150よりも長手軸方向の長さが短く構成される。また、気密ケーシング250は、その長手軸250bが第1挿入部150の長手軸150bに対して平行に配置され、かつ長手軸150bに対して偏心した位置に配置される。
気密ケーシング250は図29及び図30の如く、先端250Aと基端250Bを有する。 また、気密ケーシング250は、内部が中空の筒状形状を有し、先端250Aの開口が、図28の円盤状の観察窓116によって気密封止され、基端250Bの開口が円盤状の端子部138によって気密封止される。これにより、撮像レンズ群120、及びプリズム122、固体撮像素子124及び信号線126が、気密ケーシング250の内部に気密状態で収容される。
先端250Aに対する観察窓116の封止形態としては、観察窓116の側面に予めメタルコートを施し、その側面と先端250Aの内周面とを半田によって固着する封止形態を例示できる。また、基端250Bに対する端子部138の封止形態としては、図28の如く、端子部138の先端側に備えられた被嵌合部138Aと基端250Bの嵌合部250Cとを接着剤又は溶接によって接着する封止形態を例示できる。
図29の如く、気密ケーシング250は、先端側に配置された第1筒体252と基端側に配置された第2筒体254とからなる。
第1筒体252の基端側の内径D1は、第2筒体254の先端側の外径D2よりも大きく構成される。そして、図28の如く、第1筒体252の内壁面252Aに、第2筒体254の外壁面254Aが気密を保持した状態で摺接されている。なお、図28には、内壁面252Aに外壁面254Aが摺接されていることを図示していないが、第1筒体252の基端側及び第2筒体254の先端側において、内壁面252Aに外壁面254Aが摺接されている。
また、第1筒体252と第2筒体254とは、長手軸250bに沿って相対的に進退自在に摺動自在に取り付けられている。これにより、組立前の気密ケーシング250は、図30の如く、第1筒体252と第2筒体254とからなる二重管構造体として構成され、かつ長手軸250bの方向に伸縮自在なテレスコピック構造体として構成されている。
気密ケーシング250の組立時には、図30に示した二重管構造体の形態から、第2筒体254を第1筒体252から引き出し、第1筒体252の基端と第2筒体254の先端とを固定する。これにより、気密ケーシング250が図29の如く組み立てられる。なお、第1筒体252の基端と第2筒体254の先端との固定形態は、半田でもよく溶接であってもよい。
前述の信号線126及びライトガイド118は、ユニバーサルケーブル104の内部において、図31の如く挿通される。図31は、信号線126及びライトガイド118が挿通されたユニバーサルケーブル104の破断図である。
ユニバーサルケーブル104は、内側より順に可撓性を保ちながら信号線126及びライトガイド118を保護する螺管140と、螺管140の外周面に被覆される筒状のネット142と、ネット142を覆うシリコンゴム製の筒状の外皮144との3層から構成されている。
複数本の信号線126は、螺管140の内部に挿通された軟性のチューブ146に結束されており、このチューブ146の外周面上には筒状のネット148が被覆されている。また、複数本の光ファイバ素線からなるライトガイド118も同様に、螺管140の内部に挿通された軟性のチューブ149に結束されている。
次に、内視鏡100のグリップ部103について説明する。図32は、グリップ部103の拡大斜視図である。図33は、グリップ部103を構成する金属製の本体103Aの斜視図である。
本体103Aは、筒状で湾曲状に構成されており、先端部の円環部105Aが内視鏡挿入部102の基端部に接続される接続部として構成され、基端部の筒状部105Bが、ユニバーサルケーブル104の先端部に接続される接続部として構成されている。
この本体103Aに、図32に示したシリコンゴム製のカバー103Bが被覆される。これにより、グリップ部103が構成される。カバー103Bは、単体においては直棒状に形成されている。また、カバー103Bの先端部の外周面には、操作者にグリップ感を与える複数の溝107がカバー103Bの長手軸に沿って形成されている。
次に、本実施形態に係るコネクタ装置10について説明する。
図34は、コネクタ装置10の外観斜視図である。コネクタ装置10は、全体が円筒形状であり、直管状のライトガイド棒12の軸方向に平行な長手軸10aを有している。
なお、図34には、平型コネクタ16が示されている。平型コネクタ16は、ビデオケーブル14の先端部に基端部が連接された扁平状の本体部16Aと、本体部16Aの先端部から外方に突出された端子板16Bとから構成されている。
コネクタ装置10が配置された空間の位置及び向きに関して、長手軸10aに沿ったX(+)方向の向きを「前」、X(−)方向の向きを「後」、X方向に直交するY(+)方向の向きを「左」、Y(−)方向の向きを「右」、XY方向に直交するZ(+)方向の向きを「上」、Z(−)方向の向きを「下」という用語を用いる。図35は、コネクタ装置10を前方から後方に向けて見た外観斜視図である。
コネクタ装置10は、図34及び図35の外観斜視図において、耐熱性及び耐薬品性の高い樹脂製の外装部材20と、金属製のライトガイド棒12と、シリコンゴム製の2本のカバー22A、22Bと、を有している。
図36は、外装部材20を構成するプラグ(栓:plug)26の斜視図、図37は、プラグ26を前方から後方に向けて見た斜視図、図38は、プラグ26を後方から前方に向けて見た斜視図である。
また、図39は、外装部材20を構成するコネクタ外装ケース28を前方から後方に向けて見た斜視図であり、図40はコネクタ外装ケース28を後方から前方に向けて見た斜視図である。
図34及び図35に戻り、これらの図に示した外装部材20は、図36から図38に示したプラグ26を、図39及び図40に示したコネクタ外装ケース28に接続することにより構成される。
プラグ26は、図36から図38に示すように、大径の円環部26Aと、円環部26Aから前方に突出した小径の筒状部26Bと、を備えている。
プラグ26は、図35に示すように、延出部材であるライトガイド棒12を保持する部材であり、筒状部26Bの内部にはライトガイド棒12を外部に導出させる導出孔26C(図37参照)が備えられている。このライトガイド棒12の前端にライトガイド118の基端部である入射端118Bが配置されている。
ライトガイド棒12の外周面には、弾性を有するOリング30(図41参照)が嵌合されており、ライトガイド棒12は、Oリング30を介して導出孔26Cに嵌着される。すなわち、Oリング30は、ライトガイド棒12に設けられ、ライトガイド棒12と導出孔26Cとの間の隙間に介在されて外装部材20の内部を封止する第1封止部材として構成される。また、ライトガイド棒12は、Oリング30以外の部材を介することなく、Oリング30のみを介してプラグ26に保持されている。
なお、外装部材20を構成するプラグ26とコネクタ外装ケース28の材質は、一例として、ポリフェニルスルホン樹脂であり、ライトガイド棒12の材質は、一例としてステンレスであり、Oリング30の材質は、一例として耐熱性の高いフッ素ゴムである。また、プラグ26には、導出孔26Cに隣接して貫通孔26D(図37参照)が形成されており、この貫通孔26Dには、位置決めピン32(図35参照)が不図示のOリングを介して装着される。この位置決めピン32は、ライトガイド棒12を光源装置110(図1参照)に接続する際に、光源装置110に設けられた不図示の凹部に嵌合する。これにより、ライトガイド棒12が光源装置110に位置決めされて接続される。
図39及び図40に示すように、コネクタ外装ケース28は、円筒状に構成されており、円筒の軸としての長手軸10aを有している。
コネクタ外装ケース28の前端の円環部28Aには、図36に示したプラグ26の円環部26Aが嵌合される。円環部26Aの外周面にはOリング34が設けられている。これにより、プラグ26は、コネクタ外装ケース28にOリング34を介して接続される。
また、図38の如く、プラグ26の円環部26Aの外周面には、プラグ26の内側に向けて4つのナット31が等間隔に備えられている。これらのナット31は、プラグ26の成形時にインサート成形されたものである。これらのナット31の位置に対応した円環部26Aの内周面には、ナット31の長さを確保するための厚肉部33が形成されている。なお、ナット31は、厚肉部33に貫通されていない。また、4つのナット31の位置に対応したコネクタ外装ケースの円環部28Aには、図39の如く、貫通孔35が形成されており、これらの貫通孔35からピン状のネジ37が挿入されてナット31(図38参照)に締結される。これにより、コネクタ外装ケース28に接続されたプラグ26が4本のネジ37を介して固定されるとともに、コネクタ外装ケース28に対するプラグ26の長手軸10a方向の相対的な抜けが4本のネジ37によって防止される。
また、ネジ37のネジ溝37Aは、ナット31に締結される長さ分だけ形成されており、ネジ溝37Aを除く部分37B、つまり、貫通孔35に挿入される部分37Bはネジ溝37Aのない直棒状に形成されている。このようにネジ37を構成することにより、プラグ26のナット31にはネジ37のネジ溝37Aが締結され、コネクタ外装ケース28の貫通孔35には、ネジ溝37Aが形成されていない直棒状の部分37Bが挿入される。これにより、ネジ37のネジ溝37Aをナット31に締結しても、コネクタ外装ケース28にはネジ37の締結に起因する歪みが生じないので、Oリング34によるプラグ26とコネクタ外装ケース28との水密が維持される。
また、図40に示すように、コネクタ外装ケース28の後端には、金属製の延出部材である2つの固定口金36A、36B(図41参照)を外部に導出させる2つの導出孔38A、38Bが隣接して備えられている。
固定口金36Aは、内視鏡100に接続されるユニバーサルケーブル104用の第1固定口金であり、固定口金36Bは、電気コネクタである平型コネクタ16に接続されるビデオケーブル14用の第2固定口金である。
固定口金36Aの外周面には、弾性を有するOリング40A(図41参照)が嵌合されており、固定口金36Aは、Oリング40Aを介して導出孔38Aに嵌着される。すなわち、Oリング40Aは、固定口金36Aに設けられ、固定口金36Aと導出孔38Aとの間の隙間に介在されて外装部材20の内部を封止する第2封止部材として構成される。また、固定口金36Aは、Oリング40A以外の部材を介することなく、Oリング40Aのみを介してコネクタ外装ケース28に保持されている。
同様に、固定口金36Bの外周面には、弾性を有するOリング40B(図41参照)が嵌合されており、固定口金36Bは、Oリング40Bを介して導出孔38Bに嵌着される。すなわち、Oリング40Bは、固定口金36Bに設けられ、固定口金36Bと導出孔38Bとの間の隙間に介在されて外装部材20の内部を封止する第3封止部材として構成される。また、固定口金36Bは、Oリング40B以外の部材を介することなく、Oリング40Bのみを介してコネクタ外装ケース28に保持されている。
なお、固定口金36A、36Bの材質は、一例としてステンレスであり、Oリング40A、40Bの材質は、一例としてフッ素ゴムである。
以上の説明において、本実施形態のコネクタ装置10は、金属製のライトガイド棒12がフッ素ゴム製のOリング30を介して樹脂製のプラグ26に保持され、金属製の固定口金36A、36Bがフッ素ゴム製のOリング40A、40Bを介して、樹脂製のコネクタ外装ケース28に保持されている。なお、本実施形態では、2つの固定口金36A、36Bを備えたコネクタ装置10を例示したが、固定口金36Bは必須の構成部材ではなく、固定口金36Aのみを備えたコネクタ装置であっても適用することができる。
図41は、ライトガイド棒12と固定口金36A、36Bとが接続された金属製の内部部材42を示した斜視図である。なお、図41において、固定口金36Aには、筒状のカバー22Aが接続されており、このカバー22Aにユニバーサルケーブル104の先端部が挿入されて固定口金36Aに固定されている。同様に、固定口金36Bには、筒状のカバー22Bが接続されており、このカバー22Bにビデオケーブル14の基端部が挿入されて固定口金36Bに固定されている。
図42は、内部部材42を収容したコネクタ外装ケース28を照明光入射端側から見た斜視図であり、図43は、ライトガイド棒12を除く内部部材42がコネクタ外装ケース28に収容された状態を示す斜視図である。図44は、二点鎖線で示したコネクタ外装ケース28にプラグ26が接続されたコネクタ装置10の外観斜視図である。
図44に示すように、内部部材42は、プラグ26とコネクタ外装ケース28とからなる外装部材20の内部に収容される。
また、内部部材42は、図41に示すように、一方端である前端側の固定板50にライトガイド棒12が接続され、図44に示すように、他方端である後端側の固定板52に固定口金36A、36Bが接続されている。そして、前述したように、ライトガイド棒12は、Oリング30のみを介してプラグ26に保持され、固定口金36A、36Bは、Oリング40A、40Bのみを介してコネクタ外装ケース28に保持される。
このような保持構造により、内部部材42は、図43及び図44に示すようにプラグ26の内面27、及びコネクタ外装ケース28の内面29から離間して配置される。また、本実施形態のコネクタ装置10は、3つのOリング30、40A、40Bによって内部部材42を外装部材20の内部に保持することにより、外装部材20の内部の水密が確保されている。
内部部材42は、図43に示すように、金属製の基板44と、基板44を配置した金属製のシールドケース46と、シールドケース46を内部に収容した金属製のケース部材48と、から構成され、ケース部材48は、直方体形状に構成される。このケース部材48に固定板50、52が備えられている。
また、ケース部材48は、図41から図44に示すように、ケース部材48の長辺48Aがコネクタ外装ケース28の円筒の軸に相当する長手軸10aに沿った姿勢でコネクタ外装ケース28に収容されている。なお、図43の例では、シールドケース46を有する内部部材42を示しているが、シールドケース46を備えておらず、ケース部材48の内部に基板44を直接収容した内部部材であっても適用できる。
次に、本実施形態のコネクタ装置10の組立手順について説明する。
まず、ユニバーサルケーブル104と固定口金36Aとを接続し、ビデオケーブル14と固定口金36Bを接続する作業を行う。すなわち、ユニバーサルケーブル104と固定口金36Aとを接続する場合には、ユニバーサルケーブル104の先端部をコネクタ外装ケース28の導出孔38Aからコネクタ外装ケース28の内部に挿通し、ユニバーサルケーブル104の先端部を固定口金36Aに接続する(図41参照)。ビデオケーブル14と固定口金36Bとを接続する場合も同様であり、ビデオケーブル14の基端部をコネクタ外装ケース28の導出孔38Bからコネクタ外装ケース28の内部に挿通し、ビデオケーブル14の基端部を固定口金36Bに接続する(図41参照)。
次に、ユニバーサルケーブル104とビデオケーブル14とが引き出された状態でコネクタ外装ケース28をスライドさせて、固定口金36AをOリング40Aを介して導出孔38Aに嵌着し、固定口金36BをOリング40Bを介して導出孔38Bに嵌着する。これにより、図42の如く、内部部材42がコネクタ外装ケース28の内部に収容される。
次に、図44の如く、コネクタ外装ケース28の前方からプラグ26をコネクタ外装ケース28に接続する。このとき、図37のプラグ26の導出孔26Cにライトガイド棒12を挿通し、プラグ26の貫通孔26Dに位置決めピン32を挿通する。この後、前述の4本のネジ37を用いてプラグ26をコネクタ外装ケース28に固定する。以上がコネクタ装置10の組立手順である。
次に、上記の如く構成された本実施形態のコネクタ装置10の作用について説明する。
本実施形態のコネクタ装置10は、金属製の内部部材42と、内部部材42に接続された金属製のライトガイド棒12及び固定口金36A、36Bと、内部部材42を収容し、ライトガイド棒12及び固定口金36A、36Bを外部に導出させる導出孔26C、38A、38Bを備えた樹脂製の外装部材20と、を備えている。また、コネクタ装置10は、ライトガイド棒12及び固定口金36A、36Bに設けられたフッ素ゴム製のOリング30、40A、40Bであって、ライトガイド棒12及び固定口金36A、36Bと導出孔26C、38A、38Bとの間の隙間に介在されて外装部材20の内部を封止するOリング30、40A、40Bと、を備えている。
このような構成のコネクタ装置10によれば、樹脂製の外装部材20と金属製のライトガイド棒12及び固定口金36A、36Bとの熱膨張率の違いによって生じる、外装部材20の内部への水分の浸入を阻止することができる。以下、具体的に説明する。
本実施形態のコネクタ装置10を、内視鏡100とともに高圧蒸気滅菌器によって滅菌処理すると、樹脂製の外装部材20と金属製のライトガイド棒12及び固定口金36A、36Bとの線膨張係数の違いにより、ライトガイド棒12及び固定口金36A、36Bと導出孔26C、38A、38Bとの間の隙間が微小量広がる。しかしながら、その隙間には、弾性を有するフッ素ゴム製のOリング30、40A、40Bが常温状態において弾性変形された状態で嵌着されている。このため、前述の線膨張係数の違いにより、その隙間が広がったとしても、その隙間の広がりに追従するようにOリング30、40A、40Bが変形する。つまり、Oリング30、40A、40Bが元の形状に復元しようと変形することで、前述の隙間はOリング30、40A、40Bによる封止状態が保持される。
したがって、滅菌処理時にライトガイド棒12及び固定口金36A、36Bと導出孔26C、38A、38Bとの間の隙間が広がったとしても、Oリング30、40A、40Bによって外装部材20の内部の水密を維持することができる。よって、本実施形態のコネクタ装置10によれば、樹脂製の外装部材20と金属製のライトガイド棒12及び固定口金36A、36Bとの熱膨張率の違いによって生じる、外装部材20の内部への水分の浸入を阻止することができる。
また、本実施形態のコネクタ装置10によれば、内部部材42は、Oリング30、40A、40Bのみを介して外装部材20に保持されることにより、プラグ26の内面27、及びコネクタ外装ケース28の内面29から離間して配置されている。この構成により、本実施形態のコネクタ装置10は、以下の効果を得ることができる。
高圧蒸気滅菌器からコネクタ装置を備えた内視鏡を取り出すと、高圧蒸気滅菌器で加熱されたコネクタ装置の温度は外気により徐々に低下していく。ここで、例えば、内部部材のシールドケースが外装部材、特にコネクタ外装ケースの内面に接触又は近接している構成が採用される場合、滅菌処理後の温度低下の過程で、コネクタ外装ケースとシールドケースとに温度差が生じ難くなるので、コネクタ外装ケースの内部の空気中水分がシールドケースの内壁及び基板に付着して結露が生じ、基板に悪影響を与える問題がある。つまり、コネクタ外装ケースの内壁にも結露が生じるが、この結露と同時に又は時間差なく、シールドケースの内壁及び基板に結露が生じてしまう。
これに対し、本実施形態のコネクタ装置10は、Oリング30、40A、40Bのみを介して内部部材42を外装部材20に保持させることにより、内部部材42の外面をプラグ26の内面27、及びコネクタ外装ケース28の内面29から離間して配置している。また、本実施形態のコネクタ装置10は、直方体のケース部材48を円筒形状のコネクタ外装ケース28の内部に配置することにより、外装部材20の内面とケース部材48の外面との間に十分な空間を確保している。したがって、本実施形態のコネクタ装置10は、前述の温度低下の過程で、外装部材20の温度が最初に低下し始めるので、この外装部材20の内面に結露が生じ、この後、所定時間の経過後にケース部材48の外面に結露が生じる。これにより、本実施形態のコネクタ装置10によれば、ケース部材48の内側に配置された基板44への結露を防止することができる。
また、本実施形態のコネクタ装置10によれば、コネクタ外装ケース28に内部部材42を固定していないので、コネクタ外装ケース28と内部部材42との温度差による内部応力を低減することができる。これにより、蒸気滅菌によるヒートサイクル耐性が向上する。
また、本実施形態のコネクタ装置10によれば、外装部材20の内面と内部部材42の外面との間に十分な空間が確保されているので、高圧蒸気滅菌器の熱が基板44の電装部品に伝わる時定数(緩和時間)が大きくなる。これにより、電装品への熱ストレスを低減できる。
さらに、本実施形態のコネクタ装置10では、コネクタ外装ケース28とケース部材48との熱膨張差を吸収するダンパー部を内部部材42に設けている。以下、ダンパー部の構成及び作用を図面に基づいて説明する。
図45は、ケース部材48の固定板52に対する固定口金36A、36Bの固定部54の構造を示した斜視図であり、図46は、固定部54の組立斜視図である。
図45及び図46に示すように、ケース部材48には、固定口金36A、36Bを固定する固定板52が備えられている。固定板52には、固定口金36Aが取り付けられる第1取り付け孔である貫通孔56と、固定口金36Bが取り付けられる第2取り付け孔である貫通孔58と、が備えられている。本実施形態においては、固定口金36Bが本発明の一方の固定口金に相当し、貫通孔58が本発明の一方の取り付け孔に相当する。
固定口金36Aの前端面には、貫通孔56に嵌合されるマウント部60と、マウント部60から前方に突出された雄ネジ部62とが形成されている。
図47は、固定口金36Aの前端面の正面図である。固定口金36Aのマウント部60の外面は、対向する二つの円弧部分60A、60Aと円弧部分60A、60Aを接続するように対向して設けられた二つの直線部分60B、60Bとを有する。図46に戻り、固定板52の貫通孔56の内面は、円弧部分60A、60Aを受ける二つの円弧部分56A、56Aと直線部分60B、60Bを受ける二つの直線部分56B、56Bとを有する。固定板52に対する固定口金36Aの固定部においては、直線部分56B、56Bと直線部分60B、60Bとの長さは等しく形成されており、直線部分60B、60Bを直線部分56B、56Bに嵌合させることにより、固定口金36Aが固定板52に対し、上下左右に位置ずれすることなく取り付けられる。そして、図46に示すように、貫通孔56から前方に突出された雄ネジ部62にナット64を締結することにより、固定口金36Aが固定板52に固定される。
次に、固定口金36Bについて説明する。固定口金36Bの前端面には、貫通孔58に嵌合されるマウント部66と、マウント部66から前方に突出された雄ネジ部68とが形成されている。
図48は、固定口金36Bの前端面の正面図である。固定口金36Bのマウント部66の外面は、互いに対向する二つの円弧部66A、66Aと、円弧部分66A、66Aを接続するように互いに対向して設けられた二つの直線部分66B、66Bとを有する。図46に戻り、固定板52の貫通孔58の内面は、円弧部分66A、66Aを受ける二つの円弧部分58A、58Aと直線部分66B、66Bを受ける直線部分58B、58Bと、が備えられている。
図49は、貫通孔58の直線部分58B、58Bと固定口金36Bの直線部分66B、66Bの長さの関係を示した説明図である。図49に示すように、長さL1の直線部分58B、58Bは、長さL2の直線部分66B、66Bよりも長く形成されている。これにより、固定口金36Bが貫通孔58に対し、直線部分66B、66Bに沿った左右方向へ図示のa寸法だけ移動可能に取り付けられる。そして、図46に示すように、貫通孔58から前方に突出された雄ネジ部68にナット70を、ウェーブワッシャ72を介して締結することにより、固定口金36Bが固定板52に固定される。
上記の如く構成された固定部54によれば、固定口金36Bを固定板52に固定する固定部が前述したダンパー部として機能する。すなわち、コネクタ外装ケース28とケース部材48とに熱膨張差が生じると、コネクタ外装ケース28に保持されている固定口金36Bが、固定板52の貫通孔58に対し、直線部分66B、66Bに沿った左右方向へ移動する。これにより、コネクタ外装ケース28とケース部材48との熱膨張差を吸収することができる。なお、固定口金36Bの雄ネジ部68は、ナット70によって固定板52に固定されるが、固定板52とナット70との間にはウェーブワッシャ72が介在されるので、固定板52に対する固定口金36Bの左右方向の移動は規制されず、熱膨張差の分だけ固定口金36Bが左右方向に移動することができる。
以上の如く、本実施形態のコネクタ装置10によれば、固定口金36Bの固定部がダンパー部として機能するので、コネクタ外装ケース28とケース部材48とに熱膨張差が生じても、その熱膨張差を吸収することができる。よって、コネクタ外装ケース28と内部部材42との温度差による内部応力をさらに低減することができる。
なお、前述のダンパー部は、固定口金36Aの固定部に設けてもよいが、固定口金36Aには、グラスファイバー製の脆弱なライトガイド118が挿通される。このため、固定口金36Aは、内部部材42に対して移動することなく固定されることが好ましい。これに対して、固定口金36Bには、屈曲自在な信号線が挿通配置されるので、内部部材42に対して固定口金36Bが移動しても信号線に影響は与えない。この観点から、ダンパー部は、固定口金36Bに設けることが好ましい。
また、本実施形態のコネクタ装置10は、硬性内視鏡に限らず、軟性内視鏡においても適用することができる。
ところで、一般的な腹腔鏡手術では、まず、トラカールに内針を挿入した状態で、トラカールの先端を患者の体壁に刺入し、内針をトラカールから抜去する。次に、トラカールを介して体腔内に炭酸ガス等の気腹ガスを注入して気腹し、手術空間を確保する。この後、トラカールの基端の導入口から内視鏡(硬性鏡)挿入部を挿入して、内視鏡挿入部の先端を腹腔内に導入し、腹腔鏡手術を開始する。トラカールの導入口には、弁体が備えられており、この弁体が内視鏡挿入部の外周面に密着することにより、腹腔内からトラカールを介しての気腹ガスの漏れが防止され、気腹状態が維持される。
ここで、図1の外套管300に用いられる内視鏡挿入部102は、その外径が腹腔鏡手術で一般に使用される内視鏡挿入部の外径よりも小さく構成されている。そのため、腹腔鏡手術で一般に使用されるトラカールに、内視鏡挿入部102を挿入すると、内視鏡挿入部102の外周面と弁体との間に隙間が生じたり、封止が不十分であったりするので、腹腔内からトラカールを介して気腹ガスが漏れるという不具合が生じる。
そこで、このような不具合を防止するために、内視鏡挿入部102に筒状のシースを外装することで、内視鏡挿入部102の外径をシースの外径にまで大径化する。
図50には、内視鏡挿入部102に外装されるシース600が示されている。また、図51には、シース600が外装された内視鏡100が示されている。
シース600は、内視鏡挿入部102の基端部から被保持部153を覆うまでの長さに構成されている。なお、シース600の長さは、内視鏡挿入部102の全長に対応した長さ(図54参照)であってもよい。また、シース600の外径は、4.5mmから5.5mmで構成され、シース600の内径は、内視鏡挿入部102の外径(第1挿入部150の外径R1:3.7mm、第2挿入部151の外径R2:3.8mm)に対応させて、3.7mmから4.0mmで構成されている。更に、シース600の材質としては、電気的絶縁性があり、押し出し成形可能な材質が好ましく、ポリエーテルブロックアミド共重合体(ナイロン系熱可塑性エラストマ)(TPAE:Thermoplastic Polyamid Elastomer)を例示することができる。また、シース600の他の材質として、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA:Tetrafluoroethylene/Perfluoalkylvinylether Copolymer)、又はテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化)(FEP:fluorinated ethylene‐propylene copolymer)等のフッ素樹脂を例示することができ、また、ポリカーボネイト(PC:polycarbonate)又はアクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS:acrylonitrile butadiene styrene copolymer)を例示することができる。
シース600は、基端部602と先端部604とを有している。図52は、シース600の基端部602を示した要部拡大斜視図である。基端部602は、拡径したテーパ部606を備えており、基端部602から内視鏡挿入部102を挿入しやすい構造となっている。また、テーパ部606は、その最大外径D1が、図50の内視鏡100のグリップ部103の先端面の外径D2と略等しく構成されている。これにより、グリップ部103の先端面にテーパ部606を当接させたときにグリップ部103とテーパ部606とが段差無く接続される。
図53は、シース600の先端部604を示した要部拡大斜視図である。先端部604には、凹状の括れ部608が形成されている。この括れ部608の形成位置において、先端部604の外径及び内径が縮径化されており、シース600に挿入される内視鏡挿入部102の外周面が括れ部608に接触することにより、内視鏡挿入部102の挿抜に抵抗を付与する構成となっている。
図54は、腹腔鏡手術で一般に使用されるトラカール610に、シース600が外装された内視鏡挿入部102を挿通したトラカール610の断面図である。同図によれば、内視鏡挿入部102にシース600を外装させることにより、内視鏡挿入部102の外径をシース600の外径にまで大径化させることができる。これにより、シース600を外装した内視鏡挿入部102をトラカール610に挿通すると、トラカール610の弁体612、612とシース600の外周面との間に隙間が生じないので封止効果が確保できる。よって、腹腔内からトラカール610を介して気腹ガスが漏れるという問題を解消することができる。
したがって、このようなシース600を用いることにより、腹腔鏡手術で一般に使用されるトラカール610に内視鏡100を適用することができる。また、テーパ部606は、その最大外径D1が、トラカール610の基端の導入口614の内径D3よりも大きく形成されている。このような構成により、内視鏡挿入部102がシース600から抜けているときに、シース600自体がトラカール610に入り込むことを防止できる。なお、図54では、内視鏡挿入部102の全長に対応した長さのシース600が適用されている。また、図54のトラカール610は、バルブ616を備えている。このバルブ616は、導入口614が形成されている基部618に備えられており、このバルブ616を開放して気腹ガスがトラカール610に供給されるように構成されている。