JP2020027791A - 負極及び負極の製造方法並びに電極用結着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】結着性に優れた結着剤を用いた負極であって、負極の製造時に有機溶剤の代替溶剤として水を使用可能な負極を提供する。【解決手段】ポリアクリル酸と下記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物、セルロース誘導体、及び、負極活物質を具備することを特徴とする負極。【選択図】なし

Description

本発明は、二次電池などの蓄電装置に用いられる負極及び負極の製造方法並びに電極用結着剤に関するものである。
一般に、二次電池等の蓄電装置は、主な構成要素として、正極、負極及び電解液を備える。そして、負極には、集電体と、充放電に関与する負極活物質が具備されている。産業界からは蓄電装置の高容量化が求められており、その対応として、各種の技術が検討されている。その具体的な技術の一つとしては、蓄電装置の負極活物質として、リチウムなどの電荷担体の吸蔵能力が高いSiを含有するSi含有負極活物質を採用する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、負極活物質がシリコンであるリチウムイオン二次電池が記載されている。特許文献2には、負極活物質がSiOであるリチウムイオン二次電池が記載されている。
特許文献3には、CaSiを酸と反応させてCaを除去した層状ポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成し、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させたシリコン材料を製造したこと、及び、当該シリコン材料を負極活物質として具備するリチウムイオン二次電池が記載されている。
Si含有負極活物質は、充放電時に膨張及び収縮することが知られているため、Si含有負極活物質を具備する負極においては、結着力の強いポリアミドイミドやポリイミドなどの結着剤を採用するのが好ましいといえる。実際に、特許文献1〜3に記載された負極の具体的な結着剤としては、ポリアミドイミドやポリイミドが採用されている。
また、特許文献4には、ポリアクリル酸と多官能アミンが縮合してなる化合物が、Si含有負極活物質を具備する負極用結着剤として優れていることが記載されている。同文献には、ポリアクリル酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが縮合してなる化合物を負極用結着剤として用いたリチウムイオン二次電池が、ポリアミドイミドを負極用結着剤として用いたリチウムイオン二次電池よりも、電池特性に優れていたことが、具体的な試験結果と共に記載されている。
さらに、特許文献4には、ポリアクリル酸と多官能アミンは、150℃以上の加熱条件下で、縮合反応することが記載されている(試験9を参照。)。
そして、特許文献4には、ポリアクリル酸と多官能アミンが縮合してなる化合物を含有する負極が、以下の製造方法で得られたことが具体的に記載されている(実施例1を参照。)。
130℃の条件下、ポリアクリル酸と多官能アミンを含有する中間組成物のN−メチル−2−ピロリドン溶液を製造する

中間組成物のN−メチル−2−ピロリドン溶液を用いてスラリー状の負極活物質層形成用組成物を製造する

負極集電体に負極活物質層形成用組成物を塗布し、N−メチル−2−ピロリドンを除去する

160℃、3時間加熱処理することで、中間組成物を縮合反応させて架橋構造を有する高分子を形成し、負極を製造する
特開2015−57767号公報 特開2015−179625号公報 国際公開第2014/080608号 国際公開第2016/063882号
さて、環境への配慮や費用の点からみると、負極の製造時に有機溶剤を使用することは控えるのが好ましく、有機溶剤の代替溶剤として水を用いることが好ましいといえる。しかしながら、特許文献1〜特許文献4においては、負極を製造する際の溶剤として、N−メチル−2−ピロリドンを使用している。その理由は、結着剤若しくはその前駆体又はその原料化合物がN−メチル−2−ピロリドンに可溶性であり、水に対する溶解性が低いためと考えられる。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、結着性に優れた結着剤を用いた負極であって、負極の製造時に有機溶剤の代替溶剤として水を使用可能な負極を提供すること、及び、その負極の製造方法を提供することを目的とする。さらには、新たな電極用結着剤を提供することを目的とする。
特許文献4に記載されるポリアクリル酸と多官能アミンが縮合してなる化合物は、負極用結着剤として優れているが、特許文献4に記載される多官能アミンは水に難溶性であるため、水を溶剤として負極活物質層形成用組成物を製造することは事実上、困難である。
そこで、本発明者は、特許文献4に記載される多官能アミンに替えて水溶性のポリアミノベンゼン誘導体を採用し、ポリアクリル酸、水溶性のポリアミノベンゼン誘導体、負極活物質及び水を含有する負極活物質層形成用組成物を用いて負極を製造することを想起した。
そして、本発明者は、実際に、ポリアクリル酸、水溶性のポリアミノベンゼン誘導体、負極活物質及び水を含有する負極活物質層形成用組成物を用いて負極を製造しようとした。しかし、負極活物質層形成用組成物において凝集が生じたため、負極を製造することが出来なかった。
そこで、本発明者が、さらにセルロース誘導体を添加した負極活物質層形成用組成物を製造したところ、凝集は生じず、負極を製造することを成功した。
かかる知見に基づき、本発明者は本発明を完成させた。
本発明の負極は、ポリアクリル酸と下記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物、セルロース誘導体、及び、負極活物質を具備することを特徴とする。
一般式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換基で置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、ハロゲン、OH、SH、NO、CN、COH、SOH、CONHから選択される。
mは2〜6の整数であり、nは0〜4の整数であって、m+n≦6である。
本発明の負極の製造方法は、
a)ポリアクリル酸と前記一般式(1)のポリアミノベンゼン誘導体及び/若しくは前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物の前駆体、セルロース誘導体、負極活物質並びに水を含有する負極活物質層形成用組成物、又は、ポリアクリル酸、前記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/若しくは前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体、セルロース誘導体、負極活物質並びに水を含有する負極活物質層形成用組成物を準備する工程、
b)前記負極活物質層形成用組成物を集電体に塗布して、負極前駆体を製造する工程、
c)前記負極前駆体を加熱して、前記ポリアクリル酸と前記ポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体との縮合反応を進行させる工程、
を有することを特徴とする。
本発明の電極用結着剤は、ポリアクリル酸と前記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物を含有することを特徴とする。
本発明の負極は結着性に優れる本発明の電極用結着剤を具備する。本発明の負極の製造方法においては、溶剤として水を使用可能である。
ポリアクリル酸とポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物の前駆体の、想定される化学構造の一態様である。 評価例5の昇温プログラムである。 評価例5における、実施例3の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルである。 ポリアクリル酸の鎖をp−フェニレンジアミンで架橋する脱水縮合反応において推定される反応式である。 評価例5における、実施例5の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルである。 ポリアクリル酸の鎖を3,5−ジアミノ安息香酸の自己縮合体で架橋する脱水縮合反応において推定される反応式である。 評価例6における、加熱前の乾燥体、及び、<条件2>〜<条件4>のフィルムの赤外吸収スペクトルである。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明の負極は、ポリアクリル酸と前記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物、セルロース誘導体、及び、負極活物質を具備することを特徴とする。
本発明の負極の製造方法は、
a)ポリアクリル酸と前記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/若しくは前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物の前駆体、セルロース誘導体、負極活物質並びに水を含有する負極活物質層形成用組成物、又は、ポリアクリル酸、前記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/若しくは前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体、セルロース誘導体、負極活物質並びに水を含有する負極活物質層形成用組成物を準備する工程、
b)前記負極活物質層形成用組成物を集電体に塗布して、負極前駆体を製造する工程、
c)前記負極前駆体を加熱して、前記ポリアクリル酸と前記ポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体との縮合反応を進行させる工程、
を有することを特徴とする。
本発明の電極用結着剤は、ポリアクリル酸と前記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物(以下、本発明の化合物ということがある。)を含有することを特徴とする。
本発明の電極用結着剤は、正極用結着剤であってもよいし、負極用結着剤であってもよい。
本発明の負極は、具体的には、集電体、並びに、集電体の表面に、本発明の化合物、セルロース誘導体及び負極活物質を含有する負極活物質層を備える。本発明の負極において、本発明の化合物は結着剤として機能する。
集電体は、リチウムイオン二次電池などの二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体の材料は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はない。集電体の材料としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
負極活物質層の厚みとしては、1〜200μm、5〜150μm、10〜100μmを例示できる。
ポリアクリル酸の重量平均分子量としては、5000〜2500000の範囲内が好ましく、10000〜2000000の範囲内がより好ましく、50000〜1800000の範囲内がさらに好ましく、100000〜1600000の範囲内がさらにより好ましく、400000〜1500000の範囲内が特に好ましく、500000〜1400000の範囲内が最も好ましい。
使用するポリアクリル酸の重量平均分子量が高いほど、結着力が高くなる傾向にあるが、水に溶解した場合の粘度が高くなる。
なお、ポリアクリル酸を水に溶解した溶液の粘度と、ポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液の粘度では、前者の方が低い。そうすると、溶剤として水を用いた場合には、平均分子量のより大きなポリアクリル酸を採用することや、当該ポリアクリル酸をより高濃度で溶解させた溶液を採用することが可能となる。これらの点でも、溶剤として水を用いる本発明の負極の製造方法が好ましいといえる。
一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体は水溶性であるか、又は、ポリアクリル酸の存在下で水溶性を示す。なお、ポリアクリル酸は、水に可溶である。ただし、本発明の化合物は、基本的に、水に難溶性となる。
一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体の具体例としては、p−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジブロモ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2−ニトロ−1,4−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン−2−スルホン酸、2−クロロ−5−ニトロ−1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−5−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール、2,5−ジアミノ安息香酸、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、1,3−フェニレンジアミン−4−スルホン酸、4−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、4−メトキシ−1,3−フェニレンジアミン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、4−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、4−ニトロ−1,2−フェニレンジアミン、1,2,4−トリアミノベンゼンが挙げられる。
一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体としては、1種類の化合物を採用してもよいし、複数種類の化合物を併用してもよい。
本発明の化合物において、アクリル酸モノマー単位とポリアミノベンゼン誘導体のモル比は、2:1〜50:1が好ましく、4:1〜40:1がより好ましく、7:1〜30:1がさらに好ましく、10:1〜25:1が特に好ましい。
アクリル酸モノマーに対するポリアミノベンゼン誘導体のモル比が過小であれば、蓄電装置の容量を好適に維持することが困難になる場合がある。アクリル酸モノマーに対するポリアミノベンゼン誘導体のモル比が過大であれば、結着性が低下する場合がある。
本発明の化合物においては、ポリアクリル酸の鎖が、ポリアミノベンゼン誘導体及び/又はポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体で、架橋されていると推定される。
詳細には、第一のポリアクリル酸において隣接するアクリル酸モノマー単位の2つのカルボキシル基と、ポリアミノベンゼン誘導体のアミノ基及び/又はポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体のアミノ基とが、脱水縮合反応して、6員環イミド骨格を形成する。次に、第一のポリアクリル酸と結合した上記のポリアミノベンゼン誘導体の他のアミノ基及び/又はポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体の他のアミノ基が、第二のポリアクリル酸の2つのカルボキシル基と、脱水縮合反応して、6員環イミド骨格を形成することで、第一及び第二のポリアクリル酸の鎖同士が架橋された状態となっていると考えられる。
なお、ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体は、前記一般式(1)において、Rがそれぞれ独立にCOH又はSOHから選択され、mは2〜5の整数であり、nは1〜4の整数であって、m+n≦6であるポリアミノベンゼン誘導体を用いた場合に形成され得る。詳細には、ポリアミノベンゼン誘導体のアミノ基と、他のポリアミノベンゼン誘導体のCOH又はSOHが、脱水縮合反応することで、自己縮合体が形成される。
本発明の化合物の赤外吸収スペクトルにおいて、1670〜1710cm−1の間にピークトップが存在するピークと、1740〜1780cm−1の間にピークトップが存在するピークが観察される。さらに、本発明の化合物の赤外吸収スペクトルにおいて、1785〜1820cm−1の間にピークトップが存在するピークが観察される。以上の3ピークは、C=O結合に由来すると考えられる。
また、本発明の化合物のうち、COHを備えるポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体が縮合した化合物においては、赤外吸収スペクトルにおいて、1520〜1580cm−1の間にピークトップが存在するピークが観察される。このピークは、ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体におけるCONH構造に由来すると考えられる。
負極活物質層には、本発明の化合物が負極活物質層全体の質量に対して、1〜20質量%で含まれるのが好ましく、3〜15質量%で含まれるのがより好ましい。
セルロース誘導体は、本発明の負極の製造方法における負極活物質層形成用組成物にて、凝集抑制剤として機能する。
セルロース誘導体としては、特に水酸基を有するセルロース誘導体が好ましい。水酸基を有するセルロース誘導体は、ポリアクリル酸と好適に相互作用することが期待される。
負極活物質層における、セルロース誘導体の配合割合は、0.1〜5質量%が好ましく、0.3〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
水酸基を有するセルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース及びその塩、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、メチルセルロース及びエチルセルロースなどのアルキルセルロース、並びに、ヒドロキシエチルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロースを例示できる。
負極活物質としては、電荷担体を吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。したがって、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はない。たとえば、負極活物質としてLiや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すればよい。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質として、Nb、TiO、LiTi12、WO、MoO、Fe等の酸化物、又は、Li3−xN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
高容量化の可能性の点から、好ましい負極活物質として、黒鉛、Si含有材料、Sn含有材料を挙げることができる。また、本発明の化合物の結着剤としての好適な特性を鑑みると、充放電時に膨張及び収縮の程度が大きいSi含有負極活物質が特に好ましい。
Si含有負極活物質の具体例として、Si単体や、Si相とケイ素酸化物相との2相に不均化された又は未不均化状態のSiO(0.3≦x≦1.6)を例示できる。xの範囲は0.5≦x≦1.5であるのがより好ましく、0.7≦x≦1.2であるのがさらに好ましい。
Si含有負極活物質の具体例として、国際公開第2014/080608号などに開示されるシリコン材料(以下、単に「シリコン材料」という。)を挙げることができる。
シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するものである。シリコン材料は、例えば、CaSiと酸とを反応させてポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成する工程、さらに、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させる工程を経て製造されるものである。
シリコン材料の製造方法を、酸として塩化水素を用いた場合の理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi+6HCl → Si+3CaCl
Si → 6Si+3H
ただし、ポリシランであるSiを合成する上段の反応では、副生物や不純物除去の観点から、通常、反応溶媒として水が用いられる。そして、Siは水と反応し得るため、上段の反応を含む層状シリコン化合物を合成する工程において、層状シリコン化合物がSiのみを含むものとして製造されることはほとんどなく、層状シリコン化合物はSi(OH)(Xは酸のアニオン由来の元素若しくは基、s+t+u=6、0<s<6、0<t<6、0<u<6)で表されるものとして製造される。なお、上記の化学式においては、残存し得るCaなどの不可避不純物については、考慮していない。そして、当該層状シリコン化合物を加熱して得られるシリコン材料も、酸素や酸のアニオン由来の元素を含む。
既述のとおり、シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する。リチウムイオン等の電荷担体が効率的に吸蔵及び放出されるためには、板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。板状シリコン体の長手方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内が好ましい。また、板状シリコン体は、(長手方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。板状シリコン体の積層構造は走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。また、この積層構造は、原料のCaSiにおけるSi層の名残りであると考えられる。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。シリコン結晶子のサイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。なお、シリコン結晶子のサイズは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、得られたX線回折チャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
シリコン材料に含まれる板状シリコン体、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子の存在量や大きさは、主に加熱温度や加熱時間に左右される。加熱温度は、400℃〜900℃の範囲内が好ましく、500℃〜800℃の範囲内がより好ましい。
Si含有負極活物質は、炭素で被覆されたものが好ましい。炭素被覆により、Si含有負極活物質の導電性が向上する。
Si含有負極活物質は、粒子の集合体である粉末状のものが好ましい。Si含有負極活物質の平均粒子径は、1〜30μmの範囲内が好ましく、2〜20μmの範囲内がより好ましい。なお、本明細書における平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で試料を測定した場合におけるD50を意味する。
負極活物質層には、負極活物質が負極活物質層全体の質量に対して、60〜98質量%で含まれるのが好ましく、70〜95質量%で含まれるのがより好ましい。
負極活物質層は、必要に応じて他の結着剤及び導電助剤などの添加剤を含んでいてもよい。
他の結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)を例示することができる。
導電助剤は、負極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、負極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、負極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独又は二種以上組み合わせて負極活物質層に添加することができる。
負極活物質層中の導電助剤の配合割合は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。また、負極活物質及び導電助剤の質量比は、99:1〜85:15が好ましく、98:2〜90:10がより好ましく、97:3〜92:8が特に好ましい。
本発明の負極の製造方法におけるa)工程について説明する。
a)工程は、本発明の化合物の前駆体、セルロース誘導体、負極活物質及び水を含有する負極活物質層形成用組成物、又は、ポリアクリル酸、ポリアミノベンゼン誘導体及び/若しくは前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体、セルロース誘導体、負極活物質並びに水を含有する負極活物質層形成用組成物を準備する工程である。
本発明の化合物の前駆体とは、ポリアクリル酸のカルボキシル基とポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体のアミノ基がイオン結合している状態のものを意味するが、一部のカルボキシル基とアミノ基が結合してアミド結合及び/又はイミド結合を形成していてもよい。
本発明の化合物の前駆体の、想定される化学構造の一態様を図1に示す。
負極活物質層形成用組成物の全体に対して、水の量は、20〜80質量%が好ましく、45〜75質量%がより好ましい。
負極活物質層形成用組成物は、構成成分を混合することで製造される。ここで、セルロース誘導体が、凝集抑制剤として機能する。負極活物質層形成用組成物の水以外の固形分に対するセルロース誘導体の配合割合は、0.1〜5質量%が好ましく、0.3〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
負極活物質層形成用組成物の製造時に加熱して、本発明の化合物の前駆体を形成させるのが好ましい。または、ポリアクリル酸、ポリアミノベンゼン誘導体及び水を混合した混合溶液を加熱して、本発明の化合物の前駆体が形成された混合溶液を、負極活物質層形成用組成物の製造に用いるのが好ましい。加熱温度の範囲としては、50〜100℃、60〜95℃、70〜90℃を例示できる。
負極活物質層形成用組成物には、導電助剤やその他の添加剤を配合してもよい。
以上の記載内容から、以下の結着剤用組成物を把握することができる。
ポリアクリル酸、前記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/若しくは前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体、セルロース誘導体並びに水を含有する結着剤用組成物。
又は、本発明の化合物の前駆体、セルロース誘導体及び水を含有する結着剤用組成物。
b)工程について説明する。
b)工程は、負極活物質層形成用組成物を集電体に塗布して、負極前駆体を製造する工程である。
b)工程における塗布方法としては、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの方法を例示できる。
塗布後には、負極活物質層形成用組成物から水を除去することを目的とする、加熱乾燥工程や、負極をプレスして負極活物質層の密度を適切なものとするプレス工程を実施してもよい。加熱乾燥工程及びプレス工程は、常圧下で実施されてもよいし、減圧下で実施されてもよい。
加熱乾燥工程は、50〜150℃の温度範囲内で行われるのが好ましく、70〜140℃の温度範囲内で行われるのがより好ましく、80〜130℃の温度範囲内で行われるのがさらに好ましい。ここで水を十分に留去しておくことで、次のc)工程における所要時間を短縮可能となる。ただし、加熱乾燥工程の温度を、150℃を超える温度とすることは、好ましいとはいえない。その理由は、b)工程は大気下で実施されることが想定されており、ここで、大気下で150℃を超える温度とすることで、集電体などが酸化して、その強度が低下するおそれがあるためである。
c)工程について説明する。
c)工程は、負極前駆体を加熱して、ポリアクリル酸とポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体との縮合反応を進行させる工程である。c)工程においては、上述の縮合反応が進行し得る程度の加熱を施せばよい。そのため、c)工程の加熱の態様は特に限定されないが、負極前駆体に波長4〜8μmの光を照射することで、c)工程を実施するのが好ましい。
波長4〜8μmの光は、ポリアクリル酸のカルボキシル基に対するポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体のアミノ基に因る求核脱水反応を促進させると考えられる。そして、その結果、ポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体によるポリアクリル酸の鎖の架橋形成が促進されると考えられる。
波長4〜8μmの光は、HOや炭素−酸素二重結合を有する官能基が特異的に吸収する波長領域の光である。HOが特異的に吸収する光の波長領域が概ね5.5〜7μmであること、及び、カルボキシル基の炭素−酸素二重結合が特異的に吸収する光の波長領域が概ね5.5〜7μmであることを鑑みると、c)工程の光の波長は5.5〜7μmが好ましいといえる。
波長4〜8μmの光は赤外線に該当するため、負極前駆体に波長4〜8μmの光を照射することで、必然的に、加熱状態となる。波長4〜8μmの光の出力の程度は、c)工程における温度状態で把握することができる。波長4〜8μmの光の出力が高いほど、c)工程における温度は高くなるし、所望の求核脱水反応が迅速に進行するといえる。
c)工程における温度としては、180〜260℃が好ましく、185〜250℃がより好ましく、190〜240℃がさらに好ましく、195〜230℃がさらにより好ましく、200〜220℃が特に好ましい。
c)工程における温度が低すぎると、所望の反応が十分に進行しないおそれがある。c)工程における温度が高すぎると、ポリアクリル酸の鎖のカルボキシル基同士の脱水反応が過剰に進行すること、すなわち酸無水物の構造が過剰に生じることで、本発明の化合物の結着剤としての機能が低下するおそれがある。また、c)工程における温度が過剰に高すぎると、本発明の化合物が分解するおそれがある。
本発明の化合物においては、赤外分光法で測定した際に、イミド基のカルボニルに由来するピークの強度が、酸無水物のカルボニルに由来するピークの強度よりも大きいものが好ましい場合があるといえる。
c)工程において、負極前駆体の任意の箇所に波長4〜8μmの光を照射する時間としては、0.5〜10分が好ましく、1〜5分がより好ましく、1.5〜4分が特に好ましい。例えば、c)工程における温度が200℃の場合、c)工程における光照射時間は3分程度で十分である。
波長4〜8μmの光の照射時間が短すぎると、所望の反応が十分に進行しないおそれがある。波長4〜8μmの光の照射時間が長すぎると、エネルギーの無駄になるとともに、不都合な副反応が生じるおそれがある。
また、波長4〜8μmの光は、負極活物質層の厚み程度であれば、透過し得るので、負極活物質層の内部側に存在する本発明の化合物の前駆体、又は、ポリアクリル酸、ポリアミノベンゼン誘導体及びポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体に対しても、波長4〜8μmの光が届くと考えられる。そうすると、負極活物質層の表面だけではなく、内部でも、所望の反応を促進させることが可能と考えられる。
c)工程は、不都合な酸化を抑制するために、不活性ガス雰囲気下で実施されるのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンを例示できる。また、光照射後に、負極をプレスして負極活物質層の密度を適切なものとするプレス工程を実施してもよい。
c)工程においては、ロール状の負極前駆体を搬出するロール巻出し部と、ロール状の負極が巻取られるロール巻取り部と、前記ロール巻出し部及び前記ロール巻取り部の間に配置されている波長4〜8μmの光を照射する照射部と、を具備する装置を用いるのが、負極の大量生産に好都合である。
当該装置を用いることで、平坦な集電体上に平坦な負極活物質層が存在するとの、製造バラツキが生じ難い条件下で負極を製造できるため、c)工程後の負極の性状は均一化される。また、均一な条件での光照射が容易であり、光照射時間の設定も容易であることから、負極の性能バラツキが生じ難い。さらに、生産能力の増大や、省人化にも適応可能である。
本発明の負極は、蓄電装置の負極として使用することができる。
蓄電装置としては、一次電池、二次電池、キャパシタを例示できる。以下、蓄電装置の代表例であるリチウムイオン二次電池についての説明を通じて、本発明の負極を備える本発明の蓄電装置の説明をする。
以下、本発明の負極を備えるリチウムイオン二次電池を、本発明のリチウムイオン二次電池という。
本発明のリチウムイオン二次電池の一態様は、本発明の負極、正極、並びに、セパレータ及び電解液、又は、固体電解質を具備する。
正極は、集電体と集電体の表面に形成された正極活物質層とを具備する。
正極の集電体としては、負極で説明したものを適宜適切に選択すればよい。
正極の電位をリチウム基準で4V以上とする場合には、正極用集電体としてアルミニウムを採用するのが好ましい。
具体的には、正極用集電体として、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いるのが好ましい。ここでアルミニウムは、純アルミニウムを指し、純度99.0%以上のアルミニウムを純アルミニウムと称する。純アルミニウムに種々の元素を添加して合金としたものをアルミニウム合金と称する。アルミニウム合金としては、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Fe系、Al−Si系、Al−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系が挙げられる。
また、アルミニウム又はアルミニウム合金として、具体的には、例えばJIS A1085、A1N30等のA1000系合金(純アルミニウム系)、JIS A3003、A3004等のA3000系合金(Al−Mn系)、JIS A8079、A8021等のA8000系合金(Al−Fe系)が挙げられる。
正極活物質層は、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を含む。正極活物質層には、正極活物質が正極活物質層全体の質量に対して、60〜99質量%で含まれるのが好ましく、70〜95質量%で含まれるのがより好ましい。
正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、又は、LiNiCoAl(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、で表されるリチウム複合金属酸化物、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、電荷担体(例えば充放電に寄与するリチウムイオン)を含まないものを用いても良い。例えば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウム等の電荷担体を含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極及び/又は負極に、公知の方法により、予め電荷担体を添加しておく必要がある。電荷担体は、イオンの状態で添加しても良いし、金属等の非イオンの状態で添加しても良い。例えば、電荷担体がリチウムである場合には、リチウム箔を正極及び/又は負極に貼り付けるなどして一体化しても良い。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) 、又は、LiNiCoAl(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)で表されるリチウム複合金属酸化物を採用することが好ましい。
上記一般式において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが30/100<b<90/100、10/100<c<90/100、1/100<d<50/100の範囲であることが好ましく、40/100<b<90/100、10/100<c<50/100、2/100<d<30/100の範囲であることがより好ましく、50/100<b<90/100、10/100<c<30/100、2/100<d<10/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、e、fについては、上記一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1をそれぞれ例示することができる。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、スピネル構造のLiMn2―y(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び、Niなどの遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素から選択される。0<x≦2.2、0≦y≦1)を例示できる。xの値の範囲としては、0.5≦x≦1.8、0.7≦x≦1.5、0.9≦x≦1.2を例示でき、yの値の範囲としては、0≦y≦0.8、0≦y≦0.6を例示できる。具体的なスピネル構造の化合物として、LiMn、LiMn1.5Ni0.5を例示できる。
具体的な正極活物質として、LiFePO、LiFeSiO、LiCoPO、LiCoPO、LiMnPO、LiMnSiO、LiCoPOFを例示できる。他の具体的な正極活物質として、LiMnO−LiCoOを例示できる。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴムなどの公知のものを採用すればよい。
導電助剤としては、負極で説明したものを採用すればよい。
正極活物質層における、結着剤及び導電助剤の配合量は、適宜適切な量とすればよい。また、集電体の表面に正極活物質層を形成させるには、公知の方法を適宜適切に採用すればよい。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子及びセラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布及び織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。
非水溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、鎖状カーボネート、鎖状エステル、エーテル類等が使用できる。環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネートを例示でき、環状エステルとしては、ガンマブチロラクトン、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネートを例示でき、鎖状エステルとしては、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
電解質としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(FSO等のリチウム塩を例示できる。
電解液としては、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水溶媒にリチウム塩を0.5mol/Lから3mol/L程度、好ましくは1.5mol/Lから2.5mol/Lの濃度で溶解させた溶液を例示できる。
固体電解質としては、リチウムイオン二次電池の固体電解質として使用可能なものを適宜採用すればよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の具体的な製造方法の一態様について述べる。
例えば、正極と負極とでセパレータを挟持して電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極の積層体を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までを、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、例えば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例及び比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
重量平均分子量10万のポリアクリル酸を水に溶解して、ポリアクリル酸が10質量%で含有されるポリアクリル酸水溶液を製造した。また、p−フェニレンジアミンを水に溶解して、p−フェニレンジアミン水溶液を製造した。撹拌条件下、ポリアクリル酸水溶液に、p−フェニレンジアミン水溶液を滴下して、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、混合物を80℃で2時間撹拌して、実施例1の溶液を製造した。
なお、実施例1の溶液においては、アクリル酸モノマーとp−フェニレンジアミンのモル比は16:1に該当する。
a)工程
Si含有負極活物質として炭素で被覆されたSiO84質量部、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、結着剤として固形分が10質量部となる量の実施例1の溶液、カルボキシメチルセルロース1質量部、及び、適量の水を混合して、スラリー状の負極活物質層形成用組成物を製造した。負極活物質層形成用組成物において、水以外の固形分の割合は、40質量%であった。
b)工程
負極用集電体として、厚み30μmの電解Cu箔を、ロール状に巻き取ったものを準備した。
集電体を搬出するロール巻出し部と、ロール状の負極前駆体が巻取られるロール巻取り部と、ロール巻出し部及びロール巻取り部の間に配置されている、負極活物質層形成用組成物を膜状に塗布する塗布部と、塗布部及びロール巻取り部の間に配置されている乾燥部と、乾燥部及びロール巻取り部の間に配置されているプレス部とを具備する、負極前駆体製造用装置を準備した。
当該装置に負極用集電体及び負極活物質層形成用組成物を供給して、大気下で、負極前駆体を製造した。なお、乾燥部における乾燥温度は60℃とした。また、負極前駆体における負極活物質層の厚みは20μmであった。
c)工程
ロール状の負極前駆体を搬出するロール巻出し部と、ロール状の負極が巻取られるロール巻取り部と、前記ロール巻出し部及び前記ロール巻取り部の間に配置されている波長6μmの光を照射する照射部と、を具備する装置を準備した。当該装置において、負極前駆体が光照射される道程は、窒素ガス雰囲気下とした。
波長6μmの光の出力を、照射部の温度が200℃となるように設定した。また、負極前駆体の任意の箇所に光照射される時間が3分となるように、ロール巻取り速度を設定した。
b)工程で得た負極前駆体を上記の装置に配置して、以上の条件で上記の装置を作動させて、実施例1の負極を製造した。
<リチウムイオン二次電池の製造>
実施例1の負極を径11mmの円形に裁断し、評価極とした。厚さ500μmの金属リチウム箔を径13mmの円形に裁断し対極とした。セパレータとしてガラスフィルター(ヘキストセラニーズ社)及び単層ポリプロピレンであるcelgard2400(ポリポア株式会社)を準備した。また、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に、LiPFを1mol/Lで溶解した電解液を準備した。対極、ガラスフィルター、celgard2400、評価極の順に、2種のセパレータを対極と評価極で挟持し電極体とした。この電極体をコイン型電池ケースCR2032(宝泉株式会社)に収容し、さらに電解液を注入して、コイン型電池を得た。これを実施例1のリチウムイオン二次電池とした。
(実施例2)
重量平均分子量40万のポリアクリル酸を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の溶液、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例3)
重量平均分子量80万のポリアクリル酸を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の溶液、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例4)
a)工程を以下のとおりとした以外は、実施例3と同様の方法で、実施例4の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
a)工程
Si含有負極活物質として炭素で被覆されたSiO88質量部、導電助剤としてアセチレンブラック4質量部、結着剤として固形分が7質量部となる量の実施例3の溶液、カルボキシメチルセルロース1質量部、及び、適量の水を混合して、スラリー状の負極活物質層形成用組成物を製造した。
(実施例5)
p−フェニレンジアミンに替えて、3,5−ジアミノ安息香酸を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、実施例5の溶液、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例6)
p−フェニレンジアミンに替えて、2,5−ジアミノトルエンを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、実施例6の溶液、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例7)
p−フェニレンジアミンに替えて、2−ニトロ−1,4−フェニレンジアミンを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、実施例7の溶液、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例8)
p−フェニレンジアミンに替えて、m−フェニレンジアミンを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、実施例8の溶液、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例9)
実施例3の溶液におけるアクリル酸モノマーとp−フェニレンジアミンのモル比を4:1とした以外は、実施例3と同様の方法で、実施例9の溶液、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例10)
実施例3の溶液におけるアクリル酸モノマーとp−フェニレンジアミンのモル比を1:1とした以外は、実施例3と同様の方法で、実施例10の溶液、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例11)
実施例3の溶液におけるアクリル酸モノマーとp−フェニレンジアミンのモル比を1:2とした以外は、実施例3と同様の方法で、実施例11の溶液、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例12)
c)工程において、波長6μmの光の出力を照射部の温度が230℃となるように設定した以外は、実施例3と同様の方法で、実施例12の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1)
a)工程にて、カルボキシメチルセルロースを使用しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で、比較例1の負極を製造しようとしたが、負極活物質層形成用組成物が凝集したため、b)工程以降の工程を実施することが出来なかった。
各実施例と比較例1の製造結果からみて、負極活物質層形成用組成物の溶剤として水を用いる本発明の負極の製造方法においては、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体が必要であることが裏付けられたといえる。
(比較例2)
c)工程として以下の加熱工程を実施した以外は、実施例3と同様の方法で、比較例2の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
加熱工程:
ロール状に捲回した負極前駆体を真空加熱炉に配置し、減圧雰囲気下、120℃で8時間加熱して、比較例2の負極を製造した。
(比較例3)
c)工程として以下の加熱工程を実施した以外は、実施例3と同様の方法で、比較例3の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
加熱工程:
ロール状に捲回した負極前駆体を真空加熱炉に配置し、減圧雰囲気下、150℃で8時間加熱して、比較例3の負極を製造した。
(参考例1)
重量平均分子量10万のポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、ポリアクリル酸が10質量%で含有されるポリアクリル酸溶液を製造した。また、4,4’−ジアミノジフェニルメタンをN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を製造した。撹拌条件下、ポリアクリル酸溶液に、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を滴下して、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、ディーンスターク装置を用いて、混合物を110℃で2時間撹拌して、参考例1の溶液を製造した。
なお、参考例1の溶液においては、アクリル酸モノマーと4,4’−ジアミノジフェニルメタンのモル比は16:1に該当する。
a)工程
Si含有負極活物質として炭素で被覆されたSiO85質量部、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、結着剤として固形分が10質量部となる量の参考例1の溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリー状の負極活物質層形成用組成物を製造した。
以下、実施例1と同様の方法で、参考例1の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考例2)
重量平均分子量10万のポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、ポリアクリル酸が10質量%で含有されるポリアクリル酸溶液を製造した。また、p−フェニレンジアミンをN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、p−フェニレンジアミン溶液を製造した。撹拌条件下、ポリアクリル酸溶液に、p−フェニレンジアミン溶液を滴下して、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、ディーンスターク装置を用いて、混合物を110℃で2時間撹拌して、参考例2の溶液を製造した。
なお、参考例2の溶液においては、アクリル酸モノマーとp−フェニレンジアミンのモル比は16:1に該当する。
以下、参考例2の溶液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例2の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
負極活物質層形成用組成物の溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用いた参考例1及び参考例2においては、セルロース誘導体を使用することなく、負極活物質層形成用組成物を製造することができた。
各実施例、比較例1、参考例1及び参考例2の製造結果から、負極活物質層形成用組成物の溶剤が水の場合は凝集抑制剤としてのセルロース誘導体が必要であり、負極活物質層形成用組成物の溶剤がN−メチル−2−ピロリドンの場合は凝集抑制剤としてのセルロース誘導体は不要であるといえる。
(参考例3)
参考例1の溶液に替えてポリアミドイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例3の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考例4)
参考例1の溶液に替えて、重量平均分子量10万のポリアクリル酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例4の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
実施例1〜実施例12、比較例1〜比較例3、参考例1〜参考例4の負極の一覧を表1に示す。
表1において、NMPとはN−メチル−2−ピロリドンの略称である。
組成とは、負極活物質/導電助剤/本発明の化合物/カルボキシメチルセルロースの質量比である。ただし、参考例3の組成とは、負極活物質/導電助剤/ポリアミドイミド/カルボキシメチルセルロースの質量比である。参考例4の組成とは、負極活物質/導電助剤/ポリアクリル酸/カルボキシメチルセルロースの質量比である。
PAAとはポリアクリル酸の略称である。モル比とは、本発明の化合物における、アクリル酸モノマーとポリアミノベンゼン誘導体のモル比である。
光照射とは、c)工程における波長6μmでの光照射を意味する。
(評価例1)
引張試験機を用いて、実施例1〜実施例12、比較例2〜比較例3、参考例1〜参考例4の負極の剥離強度を測定した。試験方法はJIS Z 0237に準拠した。試験方法について詳細に述べると、負極活物質層側を下向きにして台座に粘着テープで接着し、そして、負極を上向きに90度の方向に引っ張ることにより剥離強度を測定した。剥離強度の結果を、それぞれの負極の組成や製造方法とともに、表2〜表7に示す。
実施例1、参考例1及び参考例2の負極は、いずれも、使用したポリアクリル酸の重量平均分子量が10万であり、アクリル酸モノマーとアミンのモル比が16:1であり、c)工程を同一の条件下で実施して製造されたものである。
溶剤として水を使用し、カルボキシメチルセルロースを含有する実施例1の負極は、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを使用し、カルボキシメチルセルロースを含有しない参考例1及び参考例2の負極と同等以上の剥離強度を示すといえる。
実施例1〜実施例3の負極は、使用したポリアクリル酸の重量平均分子量が異なる。ポリアクリル酸として重量平均分子量の大きいものを使用すると、剥離強度が高くなるといえる。
実施例3〜実施例8の負極は、いずれも、使用したポリアクリル酸の重量平均分子量が80万であり、アクリル酸モノマーとポリアミノベンゼン誘導体のモル比が16:1であり、c)工程を同一の条件下で実施して製造されたものである。
本発明の化合物の配合比やポリアミノベンゼン誘導体の種類に因り、剥離強度が変化することがわかる。
実施例3、実施例9〜実施例11の負極は、アクリル酸モノマーとポリアミノベンゼン誘導体のモル比が異なる。
実施例10及び実施例11の負極は、測定を開始して直ちに剥離が観察されたため、剥離強度の値が測定できなかった。剥離強度の点からは、アクリル酸モノマーとポリアミノベンゼン誘導体のモル比は、アクリル酸モノマーの値が大きい方が好ましいといえる。
実施例3、実施例12、比較例2及び比較例3の負極は、c)工程における波長6μmでの光照射の有無及び加熱条件が異なる。
実施例3及び実施例12の結果から、実施例12での230℃、3分間との光照射条件では、ポリアクリル酸の鎖のカルボキシル基同士の脱水縮合反応がやや過剰に進行していると推定される。よって、c)工程での負極前駆体に対する光照射時間が3分間の場合には、温度が200℃程度となるように光の出力を設定するのが好ましいといえる。
また、比較例2及び比較例3の負極は、波長6μmでの光照射を採用しない加熱方法において、ポリアクリル酸の鎖のカルボキシル基同士の過剰な脱水縮合反応を抑制するために、比較的低温かつ長時間加熱して製造されたものである。
比較例2及び比較例3の負極においては、剥離強度が小さいことがわかる。150℃程度の加熱では、ポリアクリル酸とポリアミノベンゼン誘導体との脱水縮合反応が十分に進行しないと考えられる。
参考例3及び参考例4の負極の剥離強度は、表7のとおりであった。
(評価例2)
実施例1〜実施例9、実施例12、比較例2〜比較例3、参考例1〜参考例4のリチウムイオン二次電池につき、0.05Cで0.01Vまで充電した後に、1Vまで放電するとの初回充放電を行った。
また、初回充放電に引き続き、0.15Cで0.01Vまで充電した後に、1Vまで放電するとの充放電サイクルを19回繰り返し行った。
以下の式に従い、初期効率及び容量維持率を算出した。結果を表8に示す。
初期効率(%)=100×(初回放電容量)/(初回充電容量)
容量維持率(%)=100×(最終サイクル時の放電容量)/(初回放電容量)
初期効率の点では、ポリアミドイミドを使用した参考例3のリチウムイオン二次電池の値が、最も低かった。また、容量維持率の点では、ポリアクリル酸を用いて、ポリアミノベンゼン誘導体を使用していない参考例4のリチウムイオン二次電池の値が、最も低かった。
本発明の負極を備える実施例のリチウムイオン二次電池は、初期効率及び容量維持率のいずれも好適であるといえる。
本発明の負極が環境や費用の点で優れているだけではなく、性能の点でも優れていることが裏付けられたといえる。
(評価例3)
種々の重量平均分子量のポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドン又は水に溶解したポリアクリル酸溶液の粘度を粘度計で測定した。結果を表9に示す。
溶液における高分子の濃度が高くなれば、その溶液の粘度も大きくなることは技術常識である。同一濃度の高分子溶液であれば、高分子の平均分子量が大きいほど、その溶液の粘度も大きくなることも技術常識である。
かかる技術常識を踏まえて、表9の結果をみると、ポリアクリル酸を水に溶解した溶液の粘度と、ポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液の粘度では、前者の方が低いことが明らかである。
負極の製造に用いる負極活物質層形成用組成物の粘度が高すぎると、製造に支障が生じ得ることは、自明といえる。そうすると、負極の製造に用いる負極活物質層形成用組成物の粘度は、一定程度の範囲内とすることが必要となる。
以上のような制約があるものの、負極活物質層形成用組成物の溶剤として水を用いた場合には、ポリアクリル酸溶液の粘度を比較的低く抑制できるため、平均分子量のより大きなポリアクリル酸を採用することや、当該ポリアクリル酸をより高濃度で溶解させたポリアクリル酸溶液を採用することが可能となる。これらの点でも、溶剤として水を用いる本発明の負極の製造方法は、優れているといえる。
(実施例13)
c)工程において、波長6μmの光の出力を照射部の温度が230℃となるように設定した以外は、実施例5と同様の方法で、実施例13の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例4)
c)工程として以下の加熱工程を実施した以外は、実施例5と同様の方法で、比較例4の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
加熱工程:
ロール状に捲回した負極前駆体を真空加熱炉に配置し、減圧雰囲気下、120℃で8時間加熱して、比較例4の負極を製造した。
(比較例5)
c)工程として以下の加熱工程を実施した以外は、実施例5と同様の方法で、比較例5の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
加熱工程:
ロール状に捲回した負極前駆体を真空加熱炉に配置し、減圧雰囲気下、150℃で8時間加熱して、比較例5の負極を製造した。
実施例5、実施例13、比較例4及び比較例5の負極の一覧を表10に示す。
(評価例4)
実施例13、比較例4及び比較例5のリチウムイオン二次電池につき、評価例2と同様の方法で試験を行った。試験結果を、実施例5の結果と共に、表11に示す。
表11から、本発明の負極の製造方法におけるc)工程の加熱温度が、負極の特性を左右するといえる。
(評価例5)
p−フェニレンジアミンを用いた実施例3、実施例12、比較例2及び比較例3の負極に対する試験結果、並びに、3,5−ジアミノ安息香酸を用いた実施例5、実施例13、比較例4及び比較例5の負極に対する試験結果を鑑み、本発明の負極の製造方法におけるc)工程の加熱温度と化学構造の変化との関係を、以下のとおり分析した。
CaFを乳鉢で粉砕し、径10mmに加圧成形して、CaFペレットとした。アルゴン置換したグローブボックス内にて、CaFペレットの上に実施例3の溶液又は実施例5の溶液を滴下し、グローブボックス中で乾燥した後に、熱走査−赤外分光測定装置での分析に供した。
測定条件は次段落のとおりとした。
同じ手順で取得したCaFペレットの赤外吸収スペクトルを対照として、試料の赤外吸収スペクトルの吸光度を算出した。
<使用装置>フーリエ変換赤外分光光度計 Avatar360 (Nicolet社製) マルチモードセル (エス・ティ・ジャパン製)
<測定条件>ヘリウム流通下、分 解 能:4cm−1、積算回数:512 回、波数範囲:4000〜400cm−1(検出器:MCT)、窓材:KBr(赤外透過下限:450cm−1)、測定温度:室温(30℃)、100℃、150℃、180℃、200℃、2時間後の200℃、260℃
昇温プログラムは、図2に記載のとおりである。
図3に、実施例3の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルを示す。
実施例3の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルから、以下の知見が得られた。
(1)カルボキシル基同士が脱水縮合して形成される酸無水物のC=O結合に由来すると考えらえるピーク(1805cm−1付近)及び酸無水物のC−O結合に由来すると考えらえるピーク(1030cm−1付近)は、150℃以下では観察されず、150℃を超える加熱下又は180℃以上の加熱下にて観察され、加熱温度の上昇に伴い、ピーク強度が増加する。
(2)アミノ基とポリアクリル酸の2つのカルボキシル基とが脱水縮合して形成される6員環イミド骨格のC=O結合に由来すると考えらえるピーク(1685cm−1付近)は、180℃以下では観察されず、180℃を超える加熱下又は200℃以上の加熱下にて観察され、加熱温度の上昇に伴い、ピーク強度が増加する。
(3)C=O結合に由来すると考えらえる3つのピーク(1805cm−1付近、1757cm−1付近、1685cm−1付近)が、180℃を超える加熱下又は200℃以上の加熱下にて、明確に観察される。
以上の知見から、実施例3の溶液において、ポリアクリル酸の鎖をp−フェニレンジアミンで架橋する脱水縮合反応は、図4に示すメカニズムで進行していると考えられる。まず、ポリアクリル酸のカルボキシル基が脱水縮合して、6員環の酸無水物構造を形成し(Scheme 1を参照)、次に、6員環の酸無水物構造に対してp−フェニレンジアミンのアミノ基が求核攻撃を行い、6員環イミド骨格を形成する(Scheme 2を参照)とのメカニズムである。
なお、図4における化学構造のうち、PAA-chainとは、ポリアクリル酸の鎖の残りの部分を意味する。
図5に、実施例5の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルを示す。
実施例5の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルから、以下の知見が得られた。
(1)カルボキシル基同士が脱水縮合して形成される酸無水物のC=O結合に由来すると考えらえるピーク(1803cm−1付近)及び酸無水物のC−O結合に由来すると考えらえるピーク(1040cm−1付近)は、150℃以下では観察されず、150℃を超える加熱下又は180℃以上の加熱下にて観察され、加熱温度の上昇に伴い、ピーク強度が増加する。
(2)アミノ基とポリアクリル酸の2つのカルボキシル基とが脱水縮合して形成される6員環イミド骨格のC=O結合に由来すると考えらえるピーク(1689cm−1付近)は、180℃以下では観察されず、180℃を超える加熱下又は200℃以上の加熱下にて観察され、加熱温度の上昇に伴い、ピーク強度が増加する。
(3)C=O結合に由来すると考えらえる3つのピーク(1803cm−1付近、1759cm−1付近、1689cm−1付近)が、200℃以上の加熱下にて、明確に観察される。
(4)CONH構造に由来すると考えらえるピーク(1547cm−1付近)が、30℃を超える加熱下又は100℃以上の加熱下にて、明確に観察され、180℃に到る加熱温度の上昇に伴い、そのピーク強度は増加し、200℃以上での加熱温度の上昇に伴い、相対的なピーク強度は減少傾向になる。
3,5−ジアミノ安息香酸を用いた実施例5の溶液についての上記の知見のうち、(1)〜(3)は、p−フェニレンジアミンを用いた実施例3の溶液についての知見と同様であった。しかし、実施例5の溶液については(4)の知見が存在する。
以上の知見から、3,5−ジアミノ安息香酸を用いた実施例5の溶液においては、ポリアクリル酸の鎖を架橋する脱水縮合反応は、図6に示すメカニズムで進行していると考えられる。まず、3,5−ジアミノ安息香酸同士が自己縮合する(Scheme 3を参照)。ここで、3,5−ジアミノ安息香酸同士の自己縮合体には、CONH構造が存在する。次に、ポリアクリル酸のカルボキシル基が脱水縮合して、6員環の酸無水物構造を形成し(Scheme 4を参照)、そして、6員環の酸無水物構造に対して、3,5−ジアミノ安息香酸の自己縮合体のアミノ基が求核攻撃を行い、6員環イミド骨格を形成する(Scheme 5を参照)とのメカニズムである。
(評価例6)
アルゴン置換したグローブボックス中で、3,5−ジアミノ安息香酸を用いた実施例5の溶液をシャーレに滴下し、乾燥して、乾燥体とした後に、以下の各条件でそれぞれ加熱して、フィルムを形成した。
<条件1>真空加熱炉を用いた減圧条件下、150℃、30分間
<条件2>真空加熱炉を用いた減圧条件下、150℃、6時間
<条件3>真空加熱炉を用いた減圧条件下、180℃、30分間
<条件4>真空加熱炉を用いた減圧条件下、230℃、30分間
加熱前の乾燥体、及び、<条件1>〜<条件4>のフィルムを、赤外分光光度計での分析に供した。
<条件1>のフィルムの赤外吸収スペクトルと、<条件2>のフィルムの赤外吸収スペクトルは、同等であった。加熱前の乾燥体、及び、<条件2>〜<条件4>のフィルムの赤外吸収スペクトルを図7に示す。
図7から、加熱温度の上昇に伴い、酸無水物のC=O結合に由来すると考えらえる、1785〜1820cm−1の間にピークトップが存在するピークの強度が増加することがわかる。
また、C=O結合に由来すると考えらえる、1670〜1710cm−1の間にピークトップが存在するピークと、1740〜1780cm−1の間にピークトップが存在するピークが、<条件4>のフィルムに明確に観察された。これらの2ピークは<条件3>のフィルムでは明確に観察されていないことから、これらの2ピークは180℃を超える加熱条件下で生成するといえる。すなわち、180℃以下の加熱温度で製造されたフィルムの化学構造と、180℃を超える加熱温度で製造されたフィルムの化学構造は、明らかに異なるといえる。

Claims (14)

  1. ポリアクリル酸と下記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物、セルロース誘導体、及び、負極活物質を具備することを特徴とする負極。
    一般式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換基で置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、ハロゲン、OH、SH、NO、CN、COH、SOH、CONHから選択される。
    mは2〜6の整数であり、nは0〜4の整数であって、m+n≦6である。
  2. 前記ポリアクリル酸を構成するアクリル酸モノマー単位と、前記ポリアミノベンゼン誘導体とのモル比が2:1〜50:1の範囲内である請求項1に記載の負極。
  3. 前記ポリアクリル酸の重量平均分子量が40万〜200万の範囲内である請求項1又は2に記載の負極。
  4. 前記負極活物質がSi含有負極活物質である請求項1〜3のいずれか1項に記載の負極。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の負極の製造方法であって、
    a)前記ポリアクリル酸と前記ポリアミノベンゼン誘導体及び/若しくは前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物の前駆体、前記セルロース誘導体、前記負極活物質並びに水を含有する負極活物質層形成用組成物、又は、前記ポリアクリル酸、前記ポリアミノベンゼン誘導体及び/若しくは前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体、前記セルロース誘導体、前記負極活物質並びに水を含有する負極活物質層形成用組成物を準備する工程、
    b)前記負極活物質層形成用組成物を集電体に塗布して、負極前駆体を製造する工程、
    c)前記負極前駆体を加熱して、前記ポリアクリル酸と前記ポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体との縮合反応を進行させる工程、
    を有することを特徴とする負極の製造方法。
  6. 前記c)工程において、前記負極前駆体に波長4〜8μmの光を照射する、請求項5に記載の負極の製造方法。
  7. 前記c)工程が、ロール状の負極前駆体を搬出するロール巻出し部と、ロール状の負極が巻取られるロール巻取り部と、前記ロール巻出し部及び前記ロール巻取り部の間に配置される波長4〜8μmの光を照射する照射部と、を具備する装置を用いる工程である、請求項5又は6に記載の負極の製造方法。
  8. ポリアクリル酸、下記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/若しくは前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体、セルロース誘導体並びに水を含有する、又は、前記ポリアクリル酸と前記ポリアミノベンゼン誘導体及び/若しくは前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物の前駆体、セルロース誘導体並びに水を含有する結着剤用組成物。
    一般式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換基で置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、ハロゲン、OH、SH、NO、CN、COH、SOH、CONHから選択される。
    mは2〜6の整数であり、nは0〜4の整数であって、m+n≦6である。
  9. ポリアクリル酸と下記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物を含有することを特徴とする電極用結着剤。
    一般式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換基で置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、ハロゲン、OH、SH、NO、CN、COH、SOH、CONHから選択される。
    mは2〜6の整数であり、nは0〜4の整数であって、m+n≦6である。
  10. 前記化合物が6員環イミド骨格を含有する請求項9に記載の電極用結着剤。
  11. 前記化合物は、その赤外吸収スペクトルにおいて、1670〜1710cm−1の間にピークトップが存在するピークと、1740〜1780cm−1の間にピークトップが存在するピークが観察される、請求項9又は10に記載の電極用結着剤。
  12. 前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体における前記ポリアミノベンゼン誘導体は、前記一般式(1)において、Rはそれぞれ独立にCOH又はSOHから選択され、mは2〜5の整数であり、nは1〜4の整数であって、m+n≦6である請求項9〜11のいずれか1項に記載の電極用結着剤。
  13. 請求項9〜12のいずれか1項に記載の電極用結着剤を具備する電極。
  14. 請求項13に記載の電極を備える蓄電装置。
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