JP2020202011A - Si含有負極活物質と黒鉛を併用する負極 - Google Patents
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Abstract
【課題】負極活物質としてSi含有負極活物質及び黒鉛を併用する、好適な負極を提供する。【解決手段】Si含有負極活物質と黒鉛と結着剤とを含有する負極活物質層を備える負極であって、前記結着剤が、ポリアクリル酸と一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物を含有することを特徴とする負極。【選択図】なし
Description
本発明は、Si含有負極活物質と黒鉛を併用する負極に関するものである。
一般に、二次電池等の蓄電装置は、主な構成要素として、正極、負極及び電解液を備える。そして、負極には、集電体と、充放電に関与する負極活物質が具備されている。産業界からは蓄電装置の高容量化が求められており、その対応として、各種の技術が検討されている。その具体的な技術の一つとしては、蓄電装置の負極活物質として、リチウムなどの電荷担体の吸蔵能力が高いSiを含有するSi含有負極活物質を採用する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、負極活物質がシリコンであるリチウムイオン二次電池が記載されている。特許文献2には、負極活物質がSiOであるリチウムイオン二次電池が記載されている。
特許文献3には、CaSi2を酸と反応させてCaを除去した層状ポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成し、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させたシリコン材料を製造したこと、及び、当該シリコン材料を負極活物質として具備するリチウムイオン二次電池が記載されている。
Si含有負極活物質は、充放電時に膨張及び収縮することが知られているため、Si含有負極活物質を具備する負極においては、結着力の強いポリアミドイミドやポリイミドなどの結着剤を採用するのが好ましいといえる。実際に、特許文献1〜3に記載された負極の具体的な結着剤としては、ポリアミドイミドやポリイミドが採用されている。
また、特許文献3には、シリコン材料を負極活物質として具備する負極の結着剤として、ポリアクリル酸が好ましいことも記載されている。
また、特許文献3には、シリコン材料を負極活物質として具備する負極の結着剤として、ポリアクリル酸が好ましいことも記載されている。
特許文献4には、ポリアクリル酸と多官能アミンが縮合してなる化合物が、Si含有負極活物質を具備する負極用結着剤として優れていることが記載されている。同文献には、ポリアクリル酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが縮合してなる化合物を負極用結着剤として用いたリチウムイオン二次電池が、ポリアミドイミドやポリアクリル酸を負極用結着剤として用いたリチウムイオン二次電池よりも、電池特性に優れていたことが、具体的な試験結果と共に記載されている。
Si含有負極活物質は充放電時の膨張及び収縮の程度が大きい。そのため、負極全体の充放電時の膨張及び収縮の程度を緩和させるために、負極活物質として、Si含有負極活物質及び黒鉛を併用することが行われている。
例えば、特許文献5には、負極活物質としてシリコン材料と黒鉛を併用した負極が具体的に記載されている。そして、当該負極の結着剤としては、ポリアミドイミドが採用されている。
また、上述の特許文献4には、負極活物質としてシリコン材料と黒鉛を併用し、かつ、ポリアクリル酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンが縮合してなる化合物を結着剤として採用した負極が記載されている(表15を参照。)。
また、上述の特許文献4には、負極活物質としてシリコン材料と黒鉛を併用し、かつ、ポリアクリル酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンが縮合してなる化合物を結着剤として採用した負極が記載されている(表15を参照。)。
産業界からは、より優れた性能の蓄電装置が求められている。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、負極活物質としてSi含有負極活物質及び黒鉛を併用する、好適な負極を提供することを目的とする。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、負極活物質としてSi含有負極活物質及び黒鉛を併用する、好適な負極を提供することを目的とする。
さて、環境への配慮や費用の点からみると、負極の製造時に有機溶剤を使用することは控えるのが好ましく、有機溶剤の代替溶剤として水を用いることが好ましいといえる。しかしながら、特許文献1〜特許文献5においては、負極を製造する際の溶剤として、N−メチル−2−ピロリドンを使用している。その理由は、結着剤若しくはその前駆体又はその原料化合物がN−メチル−2−ピロリドンに可溶性であり、水に対する溶解性が低いためと考えられる。
特許文献4に記載されるポリアクリル酸と多官能アミンが縮合してなる化合物は、負極用結着剤として優れているが、特許文献4に記載される多官能アミンは水に難溶性であるため、水を溶剤として負極活物質層形成用組成物を製造することは事実上、困難である。
そこで、本発明者は、特許文献4に記載される多官能アミンに替えて水溶性のポリアミノベンゼン誘導体を採用し、ポリアクリル酸、水溶性のポリアミノベンゼン誘導体、負極活物質及び水を含有する負極活物質層形成用組成物を用いて負極を製造することを想起した。
本発明者の鋭意検討の結果、ポリアクリル酸と水溶性のポリアミノベンゼン誘導体を原料とする結着剤が、負極活物質としてSi含有負極活物質及び黒鉛を併用した負極用の結着剤として、特に有利な効果を奏することを、本発明者は知見した。
以上の知見により、本発明は完成された。
以上の知見により、本発明は完成された。
本発明の負極は、Si含有負極活物質と黒鉛と結着剤とを含有する負極活物質層を備える負極であって、
前記結着剤が、ポリアクリル酸と下記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物を含有することを特徴とする。
前記結着剤が、ポリアクリル酸と下記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物を含有することを特徴とする。
一般式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換基で置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、ハロゲン、OH、SH、NO2、CN、CO2H、SO3H、CONH2から選択される。
mは2〜6の整数であり、nは0〜4の整数であって、m+n≦6である。
mは2〜6の整数であり、nは0〜4の整数であって、m+n≦6である。
本発明により、負極活物質としてSi含有負極活物質及び黒鉛を併用する、好適な負極を提供できる。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明の負極は、Si含有負極活物質と黒鉛と結着剤とを含有する負極活物質層を備える負極であって、
前記結着剤が、ポリアクリル酸と上記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物を含有する(以下、本発明の結着剤ということがある。)ことを特徴とする。
前記結着剤が、ポリアクリル酸と上記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物を含有する(以下、本発明の結着剤ということがある。)ことを特徴とする。
Si含有負極活物質の具体例として、Si単体や、Si相とケイ素酸化物相との2相に不均化された又は未不均化状態のSiOx(0.3≦x≦1.6)を例示できる。xの範囲は0.5≦x≦1.5であるのがより好ましく、0.7≦x≦1.2であるのがさらに好ましい。
Si含有負極活物質の具体例として、特許文献3などに開示されるシリコン材料(以下、単に「シリコン材料」という。)を挙げることができる。
シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するものである。シリコン材料は、例えば、CaSi2と酸とを反応させてポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成する工程、さらに、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させる工程を経て製造されるものである。
シリコン材料の製造方法を、酸として塩化水素を用いた場合の理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi2+6HCl → Si6H6+3CaCl2
Si6H6 → 6Si+3H2↑
3CaSi2+6HCl → Si6H6+3CaCl2
Si6H6 → 6Si+3H2↑
ただし、ポリシランであるSi6H6を合成する上段の反応では、副生物や不純物除去の観点から、通常、反応溶媒として水が用いられる。そして、Si6H6は水と反応し得るため、上段の反応を含む層状シリコン化合物を合成する工程において、層状シリコン化合物がSi6H6のみを含むものとして製造されることはほとんどなく、層状シリコン化合物はSi6Hs(OH)tXu(Xは酸のアニオン由来の元素若しくは基、s+t+u=6、0<s<6、0<t<6、0<u<6)で表されるものとして製造される。なお、上記の化学式においては、残存し得るCaなどの不可避不純物については、考慮していない。そして、当該層状シリコン化合物を加熱して得られるシリコン材料も、酸素や酸のアニオン由来の元素を含む。
既述のとおり、シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する。リチウムイオン等の電荷担体が効率的に吸蔵及び放出されるためには、板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。板状シリコン体の長手方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内が好ましい。また、板状シリコン体は、(長手方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。板状シリコン体の積層構造は走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。また、この積層構造は、原料のCaSi2におけるSi層の名残りであると考えられる。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。シリコン結晶子のサイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。なお、シリコン結晶子のサイズは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、得られたX線回折チャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
シリコン材料に含まれる板状シリコン体、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子の存在量や大きさは、主に加熱温度や加熱時間に左右される。加熱温度は、400℃〜900℃の範囲内が好ましく、500℃〜800℃の範囲内がより好ましい。
Si含有負極活物質は、炭素で被覆されたものが好ましい。炭素被覆により、Si含有負極活物質の導電性が向上する。
Si含有負極活物質は、粒子の集合体である粉末状のものが好ましい。Si含有負極活物質の平均粒子径RSiは、1〜20μmの範囲内が好ましく、2〜15μmの範囲内がより好ましく、3〜10μmの範囲内がさらに好ましく、4〜8μmの範囲内が特に好ましい。なお、本明細書における平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で試料を測定した場合におけるD50を意味する。
黒鉛としては、公知のものを採用すればよい。黒鉛の平均粒子径RGrは、0.1〜20μmの範囲内が好ましく、0.5〜15μmの範囲内がより好ましく、1〜10μmの範囲内がさらに好ましく、2〜5μmの範囲内が特に好ましい。
Si含有負極活物質の平均粒子径RSiと黒鉛の平均粒子径RGrの関係は、RSi>RGrを満足するのが好ましい。一般に、Si含有負極活物質と黒鉛では、黒鉛の方が導電性に優れる。RSi>RGrを満足することで、粒子径の大きなSi含有負極活物質の表面に、粒子径の小さな黒鉛が数多く接することができる。その結果、負極活物質層内部での導電パスが好適に形成されることになる。
Si含有負極活物質の平均粒子径RSiに対する黒鉛の平均粒子径RGrの比:RGr/RSiの範囲としては、0<RGr/RSi<1、0.1≦RGr/RSi≦0.9、0.3≦RGr/RSi≦0.8、0.5≦RGr/RSi≦0.7を例示できる。
Si含有負極活物質の平均粒子径RSiに対する黒鉛の平均粒子径RGrの比:RGr/RSiの範囲としては、0<RGr/RSi<1、0.1≦RGr/RSi≦0.9、0.3≦RGr/RSi≦0.8、0.5≦RGr/RSi≦0.7を例示できる。
Si含有負極活物質と黒鉛の質量比としては、10:90〜40:60の範囲内が好ましく、15:85〜30:70の範囲内がより好ましい。
Si含有負極活物質の割合が過剰であれば、負極全体の充放電時の膨張及び収縮の程度が過度に大きくなる場合があるため、負極が劣化するおそれがある。Si含有負極活物質の割合が過小であれば、負極の容量が低くなり、蓄電装置としての性能が低下する。
Si含有負極活物質の割合が過剰であれば、負極全体の充放電時の膨張及び収縮の程度が過度に大きくなる場合があるため、負極が劣化するおそれがある。Si含有負極活物質の割合が過小であれば、負極の容量が低くなり、蓄電装置としての性能が低下する。
負極活物質層におけるSi含有負極活物質と黒鉛の合計量としては、70〜99質量%、80〜95質量%、90〜93質量%を例示できる。
次に、本発明の結着剤について説明する。
本発明の結着剤は、ポリアクリル酸と上記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物(以下、本発明の化合物ということがある。)を含有するものである。
本発明の結着剤は、ポリアクリル酸と上記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物(以下、本発明の化合物ということがある。)を含有するものである。
ポリアクリル酸の重量平均分子量としては、5000〜2500000の範囲内が好ましく、10000〜2000000の範囲内がより好ましく、50000〜1800000の範囲内がさらに好ましく、100000〜1600000の範囲内がさらにより好ましく、400000〜1500000の範囲内が特に好ましい。
ポリアクリル酸の重量平均分子量が高いほど、結着力が高くなる傾向にあるが、水に溶解した場合の粘度が高くなる。
ポリアクリル酸の重量平均分子量が高いほど、結着力が高くなる傾向にあるが、水に溶解した場合の粘度が高くなる。
ポリアクリル酸に対する一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体の量としては、アクリル酸モノマーと一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体のモル比が2:1〜50:1の範囲内であるのが好ましく、4:1〜30:1の範囲内であるのがより好ましく、7:1〜25:1の範囲内であるのがさらに好ましく、10:1〜20:1の範囲内であるのが特に好ましい。
アクリル酸モノマーに対する一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体のモル比が過小であれば、蓄電装置の容量を好適に維持することが困難になる場合がある。アクリル酸モノマーに対する一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体のモル比が過大であれば、結着性が低下する場合がある。
アクリル酸モノマーに対する一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体のモル比が過小であれば、蓄電装置の容量を好適に維持することが困難になる場合がある。アクリル酸モノマーに対する一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体のモル比が過大であれば、結着性が低下する場合がある。
一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体は水溶性であるか、又は、ポリアクリル酸の存在下で水溶性を示す。ただし、本発明の化合物は、基本的に、水に難溶性となる。
一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体の具体例としては、p−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジブロモ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2−ニトロ−1,4−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン−2−スルホン酸、2−クロロ−5−ニトロ−1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−5−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール、2,5−ジアミノ安息香酸、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、1,3−フェニレンジアミン−4−スルホン酸、4−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、4−メトキシ−1,3−フェニレンジアミン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、4−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、4−ニトロ−1,2−フェニレンジアミン、1,2,4−トリアミノベンゼンが挙げられる。
一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体としては、1種類の化合物を採用してもよいし、複数種類の化合物を併用してもよい。
一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体としては、1種類の化合物を採用してもよいし、複数種類の化合物を併用してもよい。
本発明の化合物においては、ポリアクリル酸の鎖が、ポリアミノベンゼン誘導体及び/又はポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体で、架橋されていると推定される。
詳細には、第一のポリアクリル酸において隣接するアクリル酸モノマー単位の2つのカルボキシル基と、ポリアミノベンゼン誘導体のアミノ基及び/又はポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体のアミノ基とが、脱水縮合反応して、6員環イミド骨格を形成する。次に、第一のポリアクリル酸と結合した上記のポリアミノベンゼン誘導体の他のアミノ基及び/又はポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体の他のアミノ基が、第二のポリアクリル酸の2つのカルボキシル基と、脱水縮合反応して、6員環イミド骨格を形成することで、第一及び第二のポリアクリル酸の鎖同士が架橋された状態となっていると考えられる。
詳細には、第一のポリアクリル酸において隣接するアクリル酸モノマー単位の2つのカルボキシル基と、ポリアミノベンゼン誘導体のアミノ基及び/又はポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体のアミノ基とが、脱水縮合反応して、6員環イミド骨格を形成する。次に、第一のポリアクリル酸と結合した上記のポリアミノベンゼン誘導体の他のアミノ基及び/又はポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体の他のアミノ基が、第二のポリアクリル酸の2つのカルボキシル基と、脱水縮合反応して、6員環イミド骨格を形成することで、第一及び第二のポリアクリル酸の鎖同士が架橋された状態となっていると考えられる。
なお、ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体は、前記一般式(1)において、Rがそれぞれ独立にCO2H又はSO3Hから選択され、mは2〜5の整数であり、nは1〜4の整数であって、m+n≦6であるポリアミノベンゼン誘導体を用いた場合に形成され得る。詳細には、ポリアミノベンゼン誘導体のアミノ基と、他のポリアミノベンゼン誘導体のCO2H又はSO3Hが、脱水縮合反応することで、自己縮合体が形成される。
本発明の化合物の赤外吸収スペクトルにおいて、1670〜1710cm−1の間にピークトップが存在するピークと、1740〜1780cm−1の間にピークトップが存在するピークが観察される。さらに、本発明の化合物の赤外吸収スペクトルにおいて、1785〜1820cm−1の間にピークトップが存在するピークが観察される。以上の3ピークは、C=O結合に由来すると考えられる。
また、本発明の化合物のうち、CO2Hを備えるポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体が縮合した化合物においては、赤外吸収スペクトルにおいて、1520〜1580cm−1の間にピークトップが存在するピークが観察される。このピークは、ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体におけるCONH構造に由来すると考えられる。
また、本発明の化合物のうち、CO2Hを備えるポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体が縮合した化合物においては、赤外吸収スペクトルにおいて、1520〜1580cm−1の間にピークトップが存在するピークが観察される。このピークは、ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体におけるCONH構造に由来すると考えられる。
本発明の化合物においては、赤外分光法で測定した際に、イミド基のカルボニルに由来するピークの強度が、酸無水物のカルボニルに由来するピークの強度よりも大きいものが好ましい場合があるといえる。
負極活物質層における本発明の結着剤又は本発明の化合物の配合量としては、1〜15質量%、2〜10質量%、3〜9質量%を例示できる。
負極活物質層は、Si含有負極活物質及び黒鉛以外の負極活物質を含有してもよい。 また、負極活物質層は、本発明の結着剤以外の他の結着剤及び導電助剤などの添加剤を含有してもよい。
他の結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)、セルロース誘導体を例示することができる。
セルロース誘導体の存在に因り、本発明の負極の性能がさらに向上する。セルロース誘導体は結着剤としての機能と共に、負極の製造時において分散剤や凝集抑制剤としての機能が期待できるためである。
セルロース誘導体としては、特に水酸基を有するセルロース誘導体が好ましい。水酸基を有するセルロース誘導体は、ポリアクリル酸と好適に相互作用することが期待される。
セルロース誘導体としては、特に水酸基を有するセルロース誘導体が好ましい。水酸基を有するセルロース誘導体は、ポリアクリル酸と好適に相互作用することが期待される。
負極活物質層における、セルロース誘導体の配合割合は、0.1〜5質量%が好ましく、0.3〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
水酸基を有するセルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース及びその塩、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、メチルセルロース及びエチルセルロースなどのアルキルセルロース、並びに、ヒドロキシエチルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロースを例示できる。
導電助剤は、負極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、負極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、負極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独又は二種以上組み合わせて負極活物質層に添加することができる。
本発明の負極は、集電体と、集電体の表面に形成された負極活物質層を備える。
集電体は、リチウムイオン二次電池などの二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体の材料は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はない。集電体の材料としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
本発明の負極の製造方法の一態様について説明する。
本発明の負極の製造方法の一態様は、以下のa)工程〜d)工程を経て製造されるものである。
a)ポリアクリル酸と一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体を水溶媒中で混合して、混合水溶液を製造する工程
b)前記混合水溶液と負極活物質を混合して、負極活物質層形成用組成物を製造する工程
c)前記負極活物質層形成用組成物を集電体に塗布して、負極前駆体を製造する工程
d)前記負極前駆体に波長4〜8μmの光を照射、又は、前記負極前駆体を加熱して、本発明の化合物を形成させる工程
本発明の負極の製造方法の一態様は、以下のa)工程〜d)工程を経て製造されるものである。
a)ポリアクリル酸と一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体を水溶媒中で混合して、混合水溶液を製造する工程
b)前記混合水溶液と負極活物質を混合して、負極活物質層形成用組成物を製造する工程
c)前記負極活物質層形成用組成物を集電体に塗布して、負極前駆体を製造する工程
d)前記負極前駆体に波長4〜8μmの光を照射、又は、前記負極前駆体を加熱して、本発明の化合物を形成させる工程
a)工程は、加熱条件で実施するのが好ましい。加熱に因り、本発明の化合物の前駆体の形成を促進できる。加熱温度の範囲としては、50〜100℃、60〜100℃、70〜100℃、80〜90℃を例示できる。
ここで、本発明の化合物の前駆体とは、ポリアクリル酸のカルボキシル基と一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体のアミノ基がイオン結合している状態のものを意味するが、一部のカルボキシル基とアミノ基が結合してアミド結合及び/又はイミド結合を形成していてもよい。
本発明の化合物の前駆体の、想定される化学構造の一態様を図1に示す。
本発明の化合物の前駆体の、想定される化学構造の一態様を図1に示す。
次に、b)工程について説明する。b)工程は、a)工程で得られた混合水溶液と負極活物質を混合して、負極活物質層形成用組成物を製造する工程である。
負極活物質層形成用組成物は、負極活物質層の構成成分及び水を混合することで製造される。負極活物質層形成用組成物の全体に対して、水の量は、20〜80質量%が好ましく、45〜75質量%がより好ましい。
基本的に、負極活物質層形成用組成物における水以外の固形分が、負極活物質層の構成成分となる。そして、負極活物質層形成用組成物における各構成成分の配合比が、負極活物質層における配合比となる。負極活物質層形成用組成物における固形分の配合量や配合比は、上述の負極活物質層における各構成成分の好適な配合量や配合比に基づいて、決定すればよい。
次に、c)工程について説明する。c)工程は、負極活物質層形成用組成物を集電体に塗布して、負極前駆体を製造する工程である。
c)工程における塗布方法としては、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの方法を例示できる。
塗布後には、負極活物質層形成用組成物から水を除去することを目的とする、加熱乾燥工程や、負極をプレスして負極活物質層の密度を適切なものとするプレス工程を実施してもよい。加熱乾燥工程及びプレス工程は、常圧下で実施されてもよいし、減圧下で実施されてもよい。
加熱乾燥工程は、50〜150℃の温度範囲内で行われるのが好ましく、70〜140℃の温度範囲内で行われるのがより好ましく、80〜130℃の温度範囲内で行われるのがさらに好ましい。加熱乾燥工程で水を十分に留去しておくことで、次のd)工程における所要時間を短縮可能となる。ただし、加熱乾燥工程の温度を、150℃を超える温度とすることは、好ましいとはいえない。その理由は、c)工程は大気下で実施されることが想定されており、c)工程にて150℃を超える温度にすると、集電体などが酸化して、その強度が低下するおそれがあるためである。
d)工程について説明する。
d)工程は、負極前駆体に波長4〜8μmの光を照射、又は、負極前駆体を加熱して、本発明の化合物を形成させる工程である。d)工程により、本発明の化合物が合成されて、本発明の負極が製造される。
d)工程は、負極前駆体に波長4〜8μmの光を照射、又は、負極前駆体を加熱して、本発明の化合物を形成させる工程である。d)工程により、本発明の化合物が合成されて、本発明の負極が製造される。
波長4〜8μmの光は、H2Oや炭素−酸素二重結合を有する官能基が特異的に吸収する波長領域の光である。H2Oが特異的に吸収する光の波長領域が概ね5.5〜7μmであること、及び、カルボキシル基の炭素−酸素二重結合が特異的に吸収する光の波長領域が概ね5.5〜7μmであることを鑑みると、d)工程で照射する光の波長は5.5〜7μmが好ましいといえる。
波長4〜8μmの光は、ポリアクリル酸のカルボキシル基に対する一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体のアミノ基に因る求核脱水反応を促進させると考えられる。そして、その結果、一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体によるポリアクリル酸の鎖の架橋形成が促進されると考えられる。
波長4〜8μmの光は赤外線に該当するため、負極前駆体に波長4〜8μmの光を照射することで、必然的に、加熱状態となる。波長4〜8μmの光の出力の程度は、d)工程における温度状態で把握することができる。波長4〜8μmの光の出力が高いほど、d)工程における温度は高くなるし、所望の求核脱水反応が迅速に進行するといえる。
d)工程における温度としては、180〜260℃が好ましく、185〜250℃がより好ましく、190〜240℃がさらに好ましく、195〜230℃がさらにより好ましく、200〜220℃が特に好ましい。
d)工程における温度が低すぎると、所望の反応が十分に進行しないおそれがある。d)工程における温度が高すぎると、ポリアクリル酸の鎖のカルボキシル基同士の脱水反応が過剰に進行すること、すなわち酸無水物の構造が過剰に生じることで、本発明の化合物の結着剤としての機能が低下するおそれがある。また、d)工程における温度が過剰に高すぎると、本発明の化合物が分解するおそれもある。
d)工程における温度が低すぎると、所望の反応が十分に進行しないおそれがある。d)工程における温度が高すぎると、ポリアクリル酸の鎖のカルボキシル基同士の脱水反応が過剰に進行すること、すなわち酸無水物の構造が過剰に生じることで、本発明の化合物の結着剤としての機能が低下するおそれがある。また、d)工程における温度が過剰に高すぎると、本発明の化合物が分解するおそれもある。
d)工程において、負極前駆体の任意の箇所に波長4〜8μmの光を照射する時間としては、0.5〜10分が好ましく、1〜5分がより好ましく、1.5〜4分が特に好ましい。例えば、d)工程における温度が200℃の場合、d)工程における光照射時間は3分程度で十分である。
d)工程における照射時間が短すぎると、所望の反応が十分に進行しないおそれがある。d)工程における照射時間が長すぎると、エネルギーの無駄になるとともに、不都合な副反応が生じるおそれがある。
d)工程における照射時間が短すぎると、所望の反応が十分に進行しないおそれがある。d)工程における照射時間が長すぎると、エネルギーの無駄になるとともに、不都合な副反応が生じるおそれがある。
また、波長4〜8μmの光は、負極活物質層の厚み程度であれば、透過し得るので、負極活物質層の内部側に存在する本発明の化合物の前駆体、又は、ポリアクリル酸、一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及びポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体に対しても、波長4〜8μmの光が届くと考えられる。そうすると、負極活物質層の表面だけではなく、内部でも、所望の反応を促進させることが可能と考えられる。
なお、負極活物質層の厚みとしては、1〜200μm、5〜150μm、10〜100μmを例示できる。
d)工程は、不都合な酸化を抑制するために、不活性ガス雰囲気下で実施されるのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンを例示できる。また、光照射後に、負極をプレスして負極活物質層の密度を適切なものとするプレス工程を実施してもよい。
d)工程においては、ロール状の負極前駆体を搬出するロール巻出し部と、ロール状の負極が巻取られるロール巻取り部と、前記ロール巻出し部及び前記ロール巻取り部の間に配置されている波長4〜8μmの光を照射する照射部と、を具備する装置を用いるのが、負極の大量生産に好都合である。
当該装置を用いることで、平坦な集電体上に平坦な負極活物質層が存在するとの、製造バラツキが生じ難い条件下で負極を製造できるため、d)工程後の負極の性状は均一化される。また、均一な条件での光照射が容易であり、光照射時間の設定も容易であることから、負極の性能バラツキが生じ難い。さらに、生産能力の増大や、省人化にも適応可能である。
当該装置を用いることで、平坦な集電体上に平坦な負極活物質層が存在するとの、製造バラツキが生じ難い条件下で負極を製造できるため、d)工程後の負極の性状は均一化される。また、均一な条件での光照射が容易であり、光照射時間の設定も容易であることから、負極の性能バラツキが生じ難い。さらに、生産能力の増大や、省人化にも適応可能である。
本発明の負極は、蓄電装置の負極として使用することができる。
蓄電装置としては、一次電池、二次電池、キャパシタを例示できる。以下、蓄電装置の代表例であるリチウムイオン二次電池についての説明を通じて、本発明の負極を備える本発明の蓄電装置の説明をする。
蓄電装置としては、一次電池、二次電池、キャパシタを例示できる。以下、蓄電装置の代表例であるリチウムイオン二次電池についての説明を通じて、本発明の負極を備える本発明の蓄電装置の説明をする。
以下、本発明の負極を備えるリチウムイオン二次電池を、本発明のリチウムイオン二次電池という。本発明のリチウムイオン二次電池の一態様は、本発明の負極、正極、並びに、セパレータ及び電解液、又は、固体電解質を具備する。
正極は、集電体と集電体の表面に形成された正極活物質層とを具備する。
正極は、集電体と集電体の表面に形成された正極活物質層とを具備する。
正極の集電体としては、負極で説明したものを適宜適切に選択すればよい。
正極の電位をリチウム基準で4V以上とする場合には、正極用集電体としてアルミニウムを採用するのが好ましい。
具体的には、正極用集電体として、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いるのが好ましい。ここでアルミニウムは、純アルミニウムを指し、純度99.0%以上のアルミニウムを純アルミニウムと称する。純アルミニウムに種々の元素を添加して合金としたものをアルミニウム合金と称する。アルミニウム合金としては、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Fe系、Al−Si系、Al−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系が挙げられる。
また、アルミニウム又はアルミニウム合金として、具体的には、例えばJIS A1085、A1N30等のA1000系合金(純アルミニウム系)、JIS A3003、A3004等のA3000系合金(Al−Mn系)、JIS A8079、A8021等のA8000系合金(Al−Fe系)が挙げられる。
正極活物質層は、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を含む。正極活物質層には、正極活物質が正極活物質層全体の質量に対して、60〜99質量%で含まれるのが好ましく、70〜95質量%で含まれるのがより好ましい。
正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、又は、LiaNibCocAldDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、で表されるリチウム複合金属酸化物、Li2MnO3を挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn2O4等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO4、LiMVO4又はLi2MSiO4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePO4FなどのLiMPO4F(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBO3などのLiMBO3(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、電荷担体(例えば充放電に寄与するリチウムイオン)を含まないものを用いても良い。例えば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiS2などの金属硫化物、V2O5、MnO2などの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウム等の電荷担体を含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極及び/又は負極に、公知の方法により、予め電荷担体を添加しておく必要がある。電荷担体は、イオンの状態で添加しても良いし、金属等の非イオンの状態で添加しても良い。例えば、電荷担体がリチウムである場合には、リチウム箔を正極及び/又は負極に貼り付けるなどして一体化しても良い。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、層状岩塩構造の一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) 、又は、LiaNibCocAldDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)で表されるリチウム複合金属酸化物を採用することが好ましい。
上記一般式において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが30/100<b<90/100、10/100<c<90/100、1/100<d<50/100の範囲であることが好ましく、40/100<b<90/100、10/100<c<50/100、2/100<d<30/100の範囲であることがより好ましく、50/100<b<90/100、10/100<c<30/100、2/100<d<10/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、e、fについては、上記一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1をそれぞれ例示することができる。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、スピネル構造のLixMn2―yAyO4(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び、Niなどの遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素から選択される。0<x≦2.2、0≦y≦1)を例示できる。xの値の範囲としては、0.5≦x≦1.8、0.7≦x≦1.5、0.9≦x≦1.2を例示でき、yの値の範囲としては、0≦y≦0.8、0≦y≦0.6を例示できる。具体的なスピネル構造の化合物として、LiMn2O4、LiMn1.5Ni0.5O4を例示できる。
具体的な正極活物質として、LiFePO4、Li2FeSiO4、LiCoPO4、Li2CoPO4、Li2MnPO4、Li2MnSiO4、Li2CoPO4Fを例示できる。他の具体的な正極活物質として、Li2MnO3−LiCoO2を例示できる。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴムなどの公知のものを採用すればよい。
導電助剤としては、負極で説明したものを採用すればよい。
正極活物質層における、結着剤及び導電助剤の配合量は、適宜適切な量とすればよい。また、集電体の表面に正極活物質層を形成させるには、公知の方法を適宜適切に採用すればよい。
正極活物質層における、結着剤及び導電助剤の配合量は、適宜適切な量とすればよい。また、集電体の表面に正極活物質層を形成させるには、公知の方法を適宜適切に採用すればよい。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子及びセラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布及び織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。
非水溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、鎖状カーボネート、鎖状エステル、エーテル類等が使用できる。環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネートを例示でき、環状エステルとしては、ガンマブチロラクトン、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネートを例示でき、鎖状エステルとしては、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(FSO2)2等のリチウム塩を例示できる。
電解液としては、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水溶媒にリチウム塩を0.5mol/Lから3mol/L程度、好ましくは1.5mol/Lから2.5mol/Lの濃度で溶解させた溶液を例示できる。
固体電解質としては、リチウムイオン二次電池の固体電解質として使用可能なものを適宜採用すればよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の具体的な製造方法の一態様について述べる。
例えば、正極と負極とでセパレータを挟持して電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極の積層体を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までを、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。
例えば、正極と負極とでセパレータを挟持して電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極の積層体を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までを、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、例えば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例及び比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
ゲル浸透クロマトグラフィーでの分析にて重量平均分子量(Mw)が150万であるポリアクリル酸と3,5−ジアミノ安息香酸と水を混合して、混合水溶液とした。窒素ガス雰囲気下、混合水溶液を80℃の加熱条件下で2時間撹拌することで、実施例1の溶液を製造した。なお、実施例1の溶液において、アクリル酸モノマーと3,5−ジアミノ安息香酸のモル比は16:1に該当する。
ゲル浸透クロマトグラフィーでの分析にて重量平均分子量(Mw)が150万であるポリアクリル酸と3,5−ジアミノ安息香酸と水を混合して、混合水溶液とした。窒素ガス雰囲気下、混合水溶液を80℃の加熱条件下で2時間撹拌することで、実施例1の溶液を製造した。なお、実施例1の溶液において、アクリル酸モノマーと3,5−ジアミノ安息香酸のモル比は16:1に該当する。
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料24.8質量部、負極活物質として黒鉛67.2質量部、固形分が8質量部となる量の実施例1の溶液、及び、適量の水を混合して、スラリー状の実施例1の負極活物質層形成用組成物を製造した。負極活物質層形成用組成物において、水以外の固形分の割合は、63質量%であった。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは3.5μmであり、RGr/RSi=0.67であった。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは3.5μmであり、RGr/RSi=0.67であった。
集電箔として、厚み10μmの電解Cu箔を、ロール状に巻取ったものを準備した。
集電箔を搬出するロール巻出し部と、ロール状の負極前駆体が巻取られるロール巻取り部と、ロール巻出し部及びロール巻取り部の間に配置されている、負極活物質層形成用組成物を膜状に塗布する塗布部と、塗布部及びロール巻取り部の間に配置されている乾燥部とを具備する、負極前駆体製造用装置を準備した。
集電箔を搬出するロール巻出し部と、ロール状の負極前駆体が巻取られるロール巻取り部と、ロール巻出し部及びロール巻取り部の間に配置されている、負極活物質層形成用組成物を膜状に塗布する塗布部と、塗布部及びロール巻取り部の間に配置されている乾燥部とを具備する、負極前駆体製造用装置を準備した。
当該装置に集電箔及び負極活物質層形成用組成物を供給して、負極活物質層形成用組成物を集電箔に塗布した後に、水を除去して、集電箔の表面に負極活物質層を形成させて、実施例1の負極前駆体とした。実施例1の負極前駆体をロールプレス機にて圧縮した後に、次工程に供した。
ロール状の負極前駆体を搬出するロール巻出し部と、ロール状の負極が巻取られるロール巻取り部と、前記ロール巻出し部及び前記ロール巻取り部の間に配置されている波長6μmの光を照射する照射部と、を具備する装置を準備した。当該装置において、負極前駆体が光照射される道程は、窒素ガス雰囲気下とした。
波長6μmの光の出力を、照射部の雰囲気温度が230℃となるように設定した。また、負極前駆体の任意の箇所に光照射される時間が3分となるように、ロール巻取り速度を設定した。
実施例1の負極前駆体を上記の装置に配置して、以上の条件で上記の装置を作動させて、本発明の結着剤を含有する実施例1の負極を製造した。
波長6μmの光の出力を、照射部の雰囲気温度が230℃となるように設定した。また、負極前駆体の任意の箇所に光照射される時間が3分となるように、ロール巻取り速度を設定した。
実施例1の負極前駆体を上記の装置に配置して、以上の条件で上記の装置を作動させて、本発明の結着剤を含有する実施例1の負極を製造した。
正極活物質として層状岩塩構造のLiNi0.866Co0.096Al0.038O2で表されるリチウム複合金属酸化物を95.7質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを2質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを2.3質量部、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。正極用集電箔としてアルミニウム箔を準備した。アルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去して、正極活物質層が形成された正極を製造した。
ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートを40:35:20:5の体積比で混合した非水溶媒に、LiPF6を溶解して、LiPF6を1.2mol/Lの濃度で含有する電解液を製造した。
セパレータとして、ポリオレフィン製の多孔質膜を準備した。正極と実施例1の負極とでセパレータを挟持し、極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに上記電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉された実施例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例2)
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料16.3質量部、負極活物質として黒鉛79.7質量部、固形分が3質量部となる量の実施例1の溶液、セルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロース1質量部、及び、適量の水を混合して、スラリー状の実施例2の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは3.5μmであり、RGr/RSi=0.67であった。
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料16.3質量部、負極活物質として黒鉛79.7質量部、固形分が3質量部となる量の実施例1の溶液、セルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロース1質量部、及び、適量の水を混合して、スラリー状の実施例2の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは3.5μmであり、RGr/RSi=0.67であった。
実施例2の負極活物質層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例3)
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料16質量部、負極活物質として黒鉛76質量部、固形分が8質量部となる量の実施例1の溶液、及び、適量の水を混合して、スラリー状の実施例3の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは18.5μmであり、RGr/RSi=3.56であった。
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料16質量部、負極活物質として黒鉛76質量部、固形分が8質量部となる量の実施例1の溶液、及び、適量の水を混合して、スラリー状の実施例3の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは18.5μmであり、RGr/RSi=3.56であった。
実施例3の負極活物質層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例4)
負極活物質として炭素で被覆されたSiOを20.6質量部、負極活物質として黒鉛75.4質量部、固形分が4質量部となる量の実施例1の溶液、及び、適量の水を混合して、スラリー状の実施例4の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたSiOの平均粒子径RSiは5μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは3.5μmであり、RGr/RSi=0.70であった。
負極活物質として炭素で被覆されたSiOを20.6質量部、負極活物質として黒鉛75.4質量部、固形分が4質量部となる量の実施例1の溶液、及び、適量の水を混合して、スラリー状の実施例4の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたSiOの平均粒子径RSiは5μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは3.5μmであり、RGr/RSi=0.70であった。
実施例4の負極活物質層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1)
重量平均分子量10万のポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、ポリアクリル酸が10質量%で含有されるポリアクリル酸溶液を製造した。また、4,4’−ジアミノジフェニルメタンをN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を製造した。撹拌条件下、ポリアクリル酸溶液に、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を滴下して、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、ディーンスターク装置を用いて、混合物を110℃で2時間撹拌して、比較例1の溶液を製造した。
なお、比較例1の溶液においては、アクリル酸モノマーと4,4’−ジアミノジフェニルメタンのモル比は16:1に該当する。
重量平均分子量10万のポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、ポリアクリル酸が10質量%で含有されるポリアクリル酸溶液を製造した。また、4,4’−ジアミノジフェニルメタンをN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を製造した。撹拌条件下、ポリアクリル酸溶液に、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を滴下して、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、ディーンスターク装置を用いて、混合物を110℃で2時間撹拌して、比較例1の溶液を製造した。
なお、比較例1の溶液においては、アクリル酸モノマーと4,4’−ジアミノジフェニルメタンのモル比は16:1に該当する。
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料17.6質量部、負極活物質として黒鉛74.4質量部、固形分が8質量部となる量の比較例1の溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリー状の比較例1の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは3.5μmであり、RGr/RSi=0.67であった。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは3.5μmであり、RGr/RSi=0.67であった。
比較例1の負極活物質層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。なお、比較例1の負極における結着剤は、特許文献4に記載されたものである。
(比較例2)
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料16.0質量部、負極活物質として黒鉛76.0質量部、固形分が8質量部となる量の比較例1の溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリー状の比較例2の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは18.5μmであり、RGr/RSi=3.56であった。
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料16.0質量部、負極活物質として黒鉛76.0質量部、固形分が8質量部となる量の比較例1の溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリー状の比較例2の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは18.5μmであり、RGr/RSi=3.56であった。
比較例2の負極活物質層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例3)
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料19.4質量部、負極活物質として黒鉛74.6質量部、重量平均分子量100万のポリアクリル酸を6質量部、及び、適量の水を混合して、スラリー状の比較例3の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは3.5μmであり、RGr/RSi=0.67であった。
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料19.4質量部、負極活物質として黒鉛74.6質量部、重量平均分子量100万のポリアクリル酸を6質量部、及び、適量の水を混合して、スラリー状の比較例3の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは3.5μmであり、RGr/RSi=0.67であった。
比較例3の負極活物質層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例4)
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料18.2質量部、負極活物質として黒鉛73.8質量部、固形分が8質量部となる量の比較例1の溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリー状の比較例4の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは5.5μmであり、RGr/RSi=1.06であった。
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料18.2質量部、負極活物質として黒鉛73.8質量部、固形分が8質量部となる量の比較例1の溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリー状の比較例4の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは5.5μmであり、RGr/RSi=1.06であった。
比較例4の負極活物質層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例4の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例5)
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料14.6質量部、負極活物質として黒鉛79.4質量部、固形分が6質量部となる量の比較例1の溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリー状の比較例5の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは13μmであり、RGr/RSi=2.50であった。
負極活物質として炭素で被覆されたシリコン材料14.6質量部、負極活物質として黒鉛79.4質量部、固形分が6質量部となる量の比較例1の溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリー状の比較例5の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたシリコン材料の平均粒子径RSiは5.2μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは13μmであり、RGr/RSi=2.50であった。
比較例5の負極活物質層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例6)
負極活物質として炭素で被覆されたSiOを20質量部、負極活物質として黒鉛72質量部、固形分が8質量部となる量の比較例1の溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリー状の比較例6の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたSiOの平均粒子径RSiは5μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは18.5μmであり、RGr/RSi=3.70であった。
負極活物質として炭素で被覆されたSiOを20質量部、負極活物質として黒鉛72質量部、固形分が8質量部となる量の比較例1の溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリー状の比較例6の負極活物質層形成用組成物を製造した。
なお、炭素で被覆されたSiOの平均粒子径RSiは5μmであり、黒鉛の平均粒子径RGrは18.5μmであり、RGr/RSi=3.70であった。
比較例6の負極活物質層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例6の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例1)
SOC5%に調整した各リチウムイオン二次電池に対して、25℃の条件下、一定電流で5秒間放電させた場合の電圧を測定した。当該測定は、電流を変えた複数の条件下で行った。得られた結果から、SOC5%の各リチウムイオン二次電池につき、電圧2.5Vまでの放電時間が5秒となる一定電流(mA)を算出して、2.5Vとその電流値を乗算した値を、5秒出力(mW)とした。
結果を表1に示す。表1の結着剤の欄において、本発明とは本発明の結着剤を意味し、CMCとはカルボキシメチルセルロースの略称であり、特許文献4とは特許文献4に記載された結着剤を意味し、PAAとはポリアクリル酸の略称である。
SOC5%に調整した各リチウムイオン二次電池に対して、25℃の条件下、一定電流で5秒間放電させた場合の電圧を測定した。当該測定は、電流を変えた複数の条件下で行った。得られた結果から、SOC5%の各リチウムイオン二次電池につき、電圧2.5Vまでの放電時間が5秒となる一定電流(mA)を算出して、2.5Vとその電流値を乗算した値を、5秒出力(mW)とした。
結果を表1に示す。表1の結着剤の欄において、本発明とは本発明の結着剤を意味し、CMCとはカルボキシメチルセルロースの略称であり、特許文献4とは特許文献4に記載された結着剤を意味し、PAAとはポリアクリル酸の略称である。
表1の結果から、本発明の結着剤を備える実施例1〜実施例4のリチウムイオン二次電池は、いずれも、出力特性に優れるといえる。本発明の結着剤は、負極活物質としてSi含有負極活物質及び黒鉛を併用した負極用の結着剤として、非常に有用であるといえる。
実施例1〜実施例4のリチウムイオン二次電池について考察すると、Si含有負極活物質の平均粒子径RSiが黒鉛の平均粒子径RGrよりも大きい場合に、出力特性がさらに好適化するといえる。また、実施例1及び実施例2のリチウムイオン二次電池についての結果から、セルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロースの存在に因り、出力特性がさらに好適化するといえる。
(評価例2)
ゲル浸透クロマトグラフィーでの分析にて重量平均分子量(Mw)が80万であるポリアクリル酸とp−フェニレンジアミンと水を混合して、混合水溶液とした。窒素ガス雰囲気下、混合水溶液を80℃の加熱条件下で2時間撹拌することで、評価例2−1の溶液を製造した。なお、評価例2−1の溶液において、アクリル酸モノマーとp−フェニレンジアミンのモル比は16:1に該当する。
ゲル浸透クロマトグラフィーでの分析にて重量平均分子量(Mw)が80万であるポリアクリル酸とp−フェニレンジアミンと水を混合して、混合水溶液とした。窒素ガス雰囲気下、混合水溶液を80℃の加熱条件下で2時間撹拌することで、評価例2−1の溶液を製造した。なお、評価例2−1の溶液において、アクリル酸モノマーとp−フェニレンジアミンのモル比は16:1に該当する。
p−フェニレンジアミンに替えて3,5−ジアミノ安息香酸を用いた以外は、前段落と同様の方法で評価例2−2の溶液を製造した。なお、評価例2−2の溶液において、アクリル酸モノマーと3,5−ジアミノ安息香酸のモル比は16:1に該当する。
CaF2を乳鉢で粉砕し、径10mmに加圧成形して、CaF2ペレットとした。アルゴン置換したグローブボックス内にて、CaF2ペレットの上に評価例2−1の溶液又は評価例2−2の溶液を滴下し、グローブボックス中で乾燥した後に、熱走査−赤外分光測定装置での分析に供した。
測定条件は次段落のとおりとした。
同じ手順で取得したCaF2ペレットの赤外吸収スペクトルを対照として、試料の赤外吸収スペクトルの吸光度を算出した。
測定条件は次段落のとおりとした。
同じ手順で取得したCaF2ペレットの赤外吸収スペクトルを対照として、試料の赤外吸収スペクトルの吸光度を算出した。
<使用装置>フーリエ変換赤外分光光度計 Avatar360 (Nicolet社製) マルチモードセル (エス・ティ・ジャパン製)
<測定条件>ヘリウム流通下、分 解 能:4cm−1、積算回数:512 回、波数範囲:4000〜400cm−1(検出器:MCT)、窓材:KBr(赤外透過下限:450cm−1)、測定温度:室温(30℃)、100℃、150℃、180℃、200℃、2時間後の200℃、260℃
昇温プログラムは、図2に記載のとおりである。
<測定条件>ヘリウム流通下、分 解 能:4cm−1、積算回数:512 回、波数範囲:4000〜400cm−1(検出器:MCT)、窓材:KBr(赤外透過下限:450cm−1)、測定温度:室温(30℃)、100℃、150℃、180℃、200℃、2時間後の200℃、260℃
昇温プログラムは、図2に記載のとおりである。
図3に、評価例2−1の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルを示す。
評価例2−1の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルから、以下の知見が得られた。
評価例2−1の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルから、以下の知見が得られた。
(1)カルボキシル基同士が脱水縮合して形成される酸無水物のC=O結合に由来すると考えらえるピーク(1805cm−1付近)及び酸無水物のC−O結合に由来すると考えらえるピーク(1030cm−1付近)は、150℃以下では観察されず、150℃を超える加熱下又は180℃以上の加熱下にて観察され、加熱温度の上昇に伴い、ピーク強度が増加する。
(2)アミノ基とポリアクリル酸の2つのカルボキシル基とが脱水縮合して形成される6員環イミド骨格のC=O結合に由来すると考えらえるピーク(1685cm−1付近)は、180℃以下では観察されず、180℃を超える加熱下又は200℃以上の加熱下にて観察され、加熱温度の上昇に伴い、ピーク強度が増加する。
(3)C=O結合に由来すると考えらえる3つのピーク(1805cm−1付近、1757cm−1付近、1685cm−1付近)が、180℃を超える加熱下又は200℃以上の加熱下にて、明確に観察される。
(2)アミノ基とポリアクリル酸の2つのカルボキシル基とが脱水縮合して形成される6員環イミド骨格のC=O結合に由来すると考えらえるピーク(1685cm−1付近)は、180℃以下では観察されず、180℃を超える加熱下又は200℃以上の加熱下にて観察され、加熱温度の上昇に伴い、ピーク強度が増加する。
(3)C=O結合に由来すると考えらえる3つのピーク(1805cm−1付近、1757cm−1付近、1685cm−1付近)が、180℃を超える加熱下又は200℃以上の加熱下にて、明確に観察される。
以上の知見から、評価例2−1の溶液において、ポリアクリル酸の鎖をp−フェニレンジアミンで架橋する脱水縮合反応は、図4に示すメカニズムで進行していると考えられる。まず、ポリアクリル酸のカルボキシル基が脱水縮合して、6員環の酸無水物構造を形成し(Scheme 1を参照)、次に、6員環の酸無水物構造に対してp−フェニレンジアミンのアミノ基が求核攻撃を行い、6員環イミド骨格を形成する(Scheme 2を参照)とのメカニズムである。
なお、図4における化学構造のうち、PAA-chainとは、ポリアクリル酸の鎖の残りの部分を意味する。
なお、図4における化学構造のうち、PAA-chainとは、ポリアクリル酸の鎖の残りの部分を意味する。
図5に、評価例2−2の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルを示す。
評価例2−2の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルから、以下の知見が得られた。
評価例2−2の溶液を用いた試料の赤外吸収スペクトルから、以下の知見が得られた。
(1)カルボキシル基同士が脱水縮合して形成される酸無水物のC=O結合に由来すると考えらえるピーク(1803cm−1付近)及び酸無水物のC−O結合に由来すると考えらえるピーク(1040cm−1付近)は、150℃以下では観察されず、150℃を超える加熱下又は180℃以上の加熱下にて観察され、加熱温度の上昇に伴い、ピーク強度が増加する。
(2)アミノ基とポリアクリル酸の2つのカルボキシル基とが脱水縮合して形成される6員環イミド骨格のC=O結合に由来すると考えらえるピーク(1689cm−1付近)は、180℃以下では観察されず、180℃を超える加熱下又は200℃以上の加熱下にて観察され、加熱温度の上昇に伴い、ピーク強度が増加する。
(3)C=O結合に由来すると考えらえる3つのピーク(1803cm−1付近、1759cm−1付近、1689cm−1付近)が、200℃以上の加熱下にて、明確に観察される。
(4)CONH構造に由来すると考えらえるピーク(1547cm−1付近)が、30℃を超える加熱下又は100℃以上の加熱下にて、明確に観察され、180℃に到る加熱温度の上昇に伴い、そのピーク強度は増加し、200℃以上での加熱温度の上昇に伴い、相対的なピーク強度は減少傾向になる。
(2)アミノ基とポリアクリル酸の2つのカルボキシル基とが脱水縮合して形成される6員環イミド骨格のC=O結合に由来すると考えらえるピーク(1689cm−1付近)は、180℃以下では観察されず、180℃を超える加熱下又は200℃以上の加熱下にて観察され、加熱温度の上昇に伴い、ピーク強度が増加する。
(3)C=O結合に由来すると考えらえる3つのピーク(1803cm−1付近、1759cm−1付近、1689cm−1付近)が、200℃以上の加熱下にて、明確に観察される。
(4)CONH構造に由来すると考えらえるピーク(1547cm−1付近)が、30℃を超える加熱下又は100℃以上の加熱下にて、明確に観察され、180℃に到る加熱温度の上昇に伴い、そのピーク強度は増加し、200℃以上での加熱温度の上昇に伴い、相対的なピーク強度は減少傾向になる。
3,5−ジアミノ安息香酸を用いた評価例2−2の溶液についての上記の知見のうち、(1)〜(3)は、p−フェニレンジアミンを用いた評価例2−1の溶液についての知見と同様であった。しかし、評価例2−2の溶液については(4)の知見が存在する。
以上の知見から、3,5−ジアミノ安息香酸を用いた評価例2−2の溶液においては、ポリアクリル酸の鎖を架橋する脱水縮合反応は、図6に示すメカニズムで進行していると考えられる。まず、3,5−ジアミノ安息香酸同士が自己縮合する(Scheme 3を参照)。ここで、3,5−ジアミノ安息香酸同士の自己縮合体には、CONH構造が存在する。次に、ポリアクリル酸のカルボキシル基が脱水縮合して、6員環の酸無水物構造を形成し(Scheme 4を参照)、そして、6員環の酸無水物構造に対して、3,5−ジアミノ安息香酸の自己縮合体のアミノ基が求核攻撃を行い、6員環イミド骨格を形成する(Scheme 5を参照)とのメカニズムである。
(評価例3)
アルゴン置換したグローブボックス中で、3,5−ジアミノ安息香酸を用いた評価例2−2の溶液をシャーレに滴下し、乾燥して、乾燥体とした後に、以下の各条件でそれぞれ加熱して、フィルムを形成した。
<条件1>真空加熱炉を用いた減圧条件下、150℃、30分間
<条件2>真空加熱炉を用いた減圧条件下、150℃、6時間
<条件3>真空加熱炉を用いた減圧条件下、180℃、30分間
<条件4>真空加熱炉を用いた減圧条件下、230℃、30分間
加熱前の乾燥体、及び、<条件1>〜<条件4>のフィルムを、赤外分光光度計での分析に供した。
アルゴン置換したグローブボックス中で、3,5−ジアミノ安息香酸を用いた評価例2−2の溶液をシャーレに滴下し、乾燥して、乾燥体とした後に、以下の各条件でそれぞれ加熱して、フィルムを形成した。
<条件1>真空加熱炉を用いた減圧条件下、150℃、30分間
<条件2>真空加熱炉を用いた減圧条件下、150℃、6時間
<条件3>真空加熱炉を用いた減圧条件下、180℃、30分間
<条件4>真空加熱炉を用いた減圧条件下、230℃、30分間
加熱前の乾燥体、及び、<条件1>〜<条件4>のフィルムを、赤外分光光度計での分析に供した。
<条件1>のフィルムの赤外吸収スペクトルと、<条件2>のフィルムの赤外吸収スペクトルは、同等であった。加熱前の乾燥体、及び、<条件2>〜<条件4>のフィルムの赤外吸収スペクトルを図7に示す。
図7から、加熱温度の上昇に伴い、酸無水物のC=O結合に由来すると考えらえる、1785〜1820cm−1の間にピークトップが存在するピークの強度が増加することがわかる。
また、C=O結合に由来すると考えらえる、1670〜1710cm−1の間にピークトップが存在するピークと、1740〜1780cm−1の間にピークトップが存在するピークが、<条件4>のフィルムに明確に観察された。これらの2ピークは<条件3>のフィルムでは明確に観察されていないことから、これらの2ピークは180℃を超える加熱条件下で生成するといえる。すなわち、180℃以下の加熱温度で製造されたフィルムの化学構造と、180℃を超える加熱温度で製造されたフィルムの化学構造は、明らかに異なるといえる。
また、C=O結合に由来すると考えらえる、1670〜1710cm−1の間にピークトップが存在するピークと、1740〜1780cm−1の間にピークトップが存在するピークが、<条件4>のフィルムに明確に観察された。これらの2ピークは<条件3>のフィルムでは明確に観察されていないことから、これらの2ピークは180℃を超える加熱条件下で生成するといえる。すなわち、180℃以下の加熱温度で製造されたフィルムの化学構造と、180℃を超える加熱温度で製造されたフィルムの化学構造は、明らかに異なるといえる。
以上の結果から、実施例1〜実施例4の負極の製造において、230℃の加熱処理を行った時点よりも前の工程においては、ポリアクリル酸と3,5−ジアミノ安息香酸及びその自己縮合体との脱水縮合反応は完了しているとはいえない。そのため、230℃の加熱処理を行った時点よりも前の工程においては、ポリアクリル酸と3,5−ジアミノ安息香酸及びその自己縮合体は、結着剤前駆体として負極活物質層の内部に存在しているといえる。そして、230℃の加熱処理に因り、ポリアクリル酸と3,5−ジアミノ安息香酸及びその自己縮合体との脱水縮合反応が完了し、結着剤化合物が合成されるといえる。
Claims (4)
- Si含有負極活物質と黒鉛と結着剤とを含有する負極活物質層を備える負極であって、
前記結着剤が、ポリアクリル酸と下記一般式(1)で表されるポリアミノベンゼン誘導体及び/又は前記ポリアミノベンゼン誘導体の自己縮合体とが縮合してなる化合物を含有することを特徴とする負極。
mは2〜6の整数であり、nは0〜4の整数であって、m+n≦6である。 - 前記Si含有負極活物質の平均粒子径RSiと前記黒鉛の平均粒子径RGrの関係が、RSi>RGrを満足する請求項1に記載の負極。
- 前記負極活物質層がセルロース誘導体を含有する請求項1又は2に記載の負極。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の負極を備える蓄電装置。
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JP2019105743A Pending JP2020202011A (ja) | 2019-06-05 | 2019-06-05 | Si含有負極活物質と黒鉛を併用する負極 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020202011A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023210273A1 (ja) * | 2022-04-27 | 2023-11-02 | 東亞合成株式会社 | 二次電池電極用バインダー及びその利用 |
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2019
- 2019-06-05 JP JP2019105743A patent/JP2020202011A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023210273A1 (ja) * | 2022-04-27 | 2023-11-02 | 東亞合成株式会社 | 二次電池電極用バインダー及びその利用 |
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