JP6881030B2 - イオン伝導性材料 - Google Patents

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Description

本発明は、イオン伝導性材料に関するものである。
リチウムイオン二次電池に代表される二次電池は、現在、携帯電子機器用の電源として主に用いられており、さらに、電気自動車用の電源としても実用化されている。使用態様の多様化に伴い、二次電池の高容量化が求められているため、高電圧で駆動させることで二次電池を高容量化する検討が行われている。しかしながら、二次電池を高電圧で駆動させた場合には、酸化状態の正極活物質との接触に因る電解液の酸化分解が生じるとの問題があった。
そのため、正極活物質と電解液との直接接触を低減する技術として、正極活物質を含有する正極活物質層の表面に、保護層を形成する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、正極活物質の表面を被覆するコート層を設ける技術が開示されている。具体的には、集電体及び正極活物質層からなる正極を、ポリエチレンイミン溶液及びポリエチレングリコール溶液に浸漬させて、正極をポリマーでコートする技術が開示されている。
また、特許文献2にも、正極活物質の表面を被覆するコート層を設ける技術が開示されている。具体的には、集電体及び正極活物質層からなる正極を、ポリエチレングリコール溶液に浸漬させて、正極をポリマーでコートする技術が開示されている。
特開2013−243105号公報 特開2014−096343号公報
しかしながら、本来、ポリマーはリチウムイオンなどの電荷担体の移動に対する抵抗因子であるため、特許文献1及び特許文献2に開示の技術を適用した二次電池は電池としての機能面に課題があるといえる。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、ポリマーでありながらもイオン伝導性に優れる、新しいイオン伝導性材料を提供することを目的とする。
さて、イオン伝導性に優れるポリマーには、電荷を有するイオンが円滑に移動するための、極性基で囲われた移動空間が必要と考えられる。そこで、本発明者は、カルボン酸基含有ポリマーのアルカリ金属塩を用いることを着想した。しかしながら、カルボン酸基含有ポリマーのアルカリ金属塩としてポリアクリル酸リチウムを用いて製造した材料は、イオン伝導性ではあったものの、抵抗が高く、満足できるものではなかった。
本発明者のさらなる検討の結果、カルボン酸基含有ポリマーとホウ素化合物との反応物を用いて製造した膜が満足する水準でのイオン伝導性を示すことを、本発明者は発見した。かかる発見に基づき、本発明者は本発明を完成するに至った。
本発明のイオン伝導性材料は、−CO−O−B構造含有ポリマーを含むことを特徴とする。また、本発明のイオン伝導性材料の製造方法は、カルボン酸基含有ポリマー若しくはその塩とホウ素化合物との反応工程を含む。
本発明により、新しいイオン伝導性材料を提供することができる。
本発明のイオン伝導性材料の具体例の赤外吸収スペクトルである。 ポリアクリル酸ナトリウムの赤外吸収スペクトルである。 ホウ酸の赤外吸収スペクトルである。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明のイオン伝導性材料は、−CO−O−B構造含有ポリマーを含むことを特徴とする。本発明のイオン伝導性材料の製造方法は、カルボン酸基含有ポリマー若しくはその塩とホウ素化合物との反応工程を含む。
−CO−O−B構造含有ポリマーにおける−CO−O−B構造は、カルボン酸基含有ポリマー若しくはその塩とホウ素化合物との反応工程で形成される。例えば、カルボン酸基含有ポリマーのアルカリ金属塩であるポリアクリル酸ナトリウムと、ホウ素化合物であるホウ酸との反応であれば、下記の反応式のとおり、反応が進行すると考えられる。
−CO−O・Na + B(OH) → −CO−O−B(OH) ・Na
原料に存在する−CO−Oで表されるアニオンと比較して、−CO−O−B(OH) で表されるアニオンは、極性基ではあるものの、リチウムイオンなどの電荷担体に対する相互作用が低いと考えられる。そのため、本発明のイオン伝導性材料はイオン伝導性に優れるといえる。
カルボン酸基含有ポリマー若しくはその塩としては、分子内に−COOH若しくはその塩を含有するポリマーであれば、制限は無い。塩としては、Li、Na、K、Mg、Caなどの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩を例示できる。
具体的なカルボン酸基含有ポリマーとして、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシメチルセルロースを例示できる。また、カルボン酸基含有ポリマーとして、カルボン酸基含有モノマーを単独重合させたホモポリマー、複数種類のカルボン酸基含有モノマーを共重合させたコポリマー、カルボン酸基含有モノマーと他のモノマーを共重合させたコポリマーを採用してもよい。カルボン酸基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、クロトン酸、ペンテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、グルタコン酸、2−アリルマロン酸、4−メチル−3−ペンテン酸、2−(1−メチルエチリデン)コハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸、アセチレンジカルボン酸を例示できる。
カルボン酸基含有ポリマー若しくはその塩の重量平均分子量としては、5000〜2000000、10000〜1800000、25000〜1500000、50000〜1000000の範囲を例示できる。
ホウ素化合物としては、B、HBO、HBO、H、HBO、HBO若しくは下記一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物、又はこれらの塩若しくは錯体を例示できる。塩としては、Li、Na、Kなどの金属塩を例示でき、錯体としては、ジエチルエーテルなどのエーテル錯体を例示できる。
BR(OR)3−a 一般式(1)
(aは0、1、2又は3である。Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、芳香族基から選択される。2つのORにおけるRは互いに結合して環を形成してもよい。)
一般式(1)で表される具体的な化合物としては、B(OH)、B(OCH、B(OC、B(OC、B(OC、BH(OC)、BH(OC)、BH(OCH)、BH(OCH、BH、B(C(OCH)、BCH(OH)、CB(OH)、ピリジル−B(OH)、フラニル−B(OH)、チオフェン−B(OH)、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2,4,4,5,5−ペンタメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、カテコールボランを挙げることができる。
BX 一般式(2)
(Xはそれぞれ独立にF、Cl、Br又はIから選択される。)
一般式(2)で表される具体的な化合物としては、BF、BCl、BBr、BI、及び、これらのエーテル錯体を挙げることができる。
MBH4−a 一般式(3)
(MはLi、Na又はKから選択される。XはCN又はOCOCHから選択される。aは0、1、2又は3である。)
一般式(3)で表される具体的な化合物としては、NaBH、NaBHCN、NaBHOCOCH、NaBH(OCOCHを挙げることができる。
−CO−O−B構造含有ポリマーとしては、イオン伝導性の観点から、多数の−CO−O−B構造含有モノマー単位を含有するポリマーが好ましい。−CO−O−B構造含有ポリマーを構成するモノマー単位すべてに対して、−CO−O−B構造含有モノマー単位は、40〜100モル%で存在するのが好ましく、60〜100モル%で存在するのがより好ましく、80〜100モル%で存在するのがさらに好ましく、90〜100モル%で存在するのが特に好ましい。−CO−O−B構造含有ポリマーを構成するモノマー単位すべてが、−CO−O−B構造含有モノマー単位であってもよい。好適な−CO−O−B構造含有ポリマーを製造するためには、原料のカルボン酸基含有ポリマーに存在するカルボン酸基のうち、なるべく多くのカルボン酸基をホウ素化合物と反応させればよい。
−CO−O−B構造含有ポリマーにおける−CO−O−B構造と未反応のカルボン酸基との比は、10:5〜10:0の範囲内が好ましく、10:3〜10:0の範囲内がより好ましく、10:1〜10:0の範囲内がさらに好ましく、10:0が最も好ましい。
なお、カルボン酸基とホウ素化合物との反応は、カルボン酸基1つとホウ素化合物1個との反応だけではなく、下記の反応式のとおり、カルボン酸基2つとホウ素化合物1個との反応、カルボン酸基3つとホウ素化合物1個との反応、及び、カルボン酸基4つとホウ素化合物1個との反応も想定される。
−CO−OH + B(OH) → −CO−O−B(OH) + H
2(−CO−OH) + B(OH) → (−CO−O−)B(OH) + 2H
3(−CO−OH) + B(OH) → (−CO−O−)B + 3H
4(−CO−OH) + B(OH) → (−CO−O−)・H + 3H
また、−CO−O−B構造含有ポリマーにおいては、原料のカルボン酸基含有ポリマーの2分子をホウ素化合物1個が架橋する架橋構造のポリマーも想定される。
−CO−O−B構造含有ポリマーの重量平均分子量としては、5000〜4000000、10000〜3600000、25000〜3000000、50000〜2000000の範囲を例示できる。
本発明のイオン伝導性材料の製造方法の反応工程においては、(使用するカルボン酸基含有ポリマーにおけるカルボン酸基のモル数)/(使用するホウ素化合物におけるホウ素のモル数)の値は、0.25〜4の範囲内が好ましく、0.5〜2の範囲内がより好ましく、0.7〜1.5の範囲内がさらに好ましく、0.9〜1.2の範囲内が特に好ましい。
反応工程においては、反応を好適に進行させるとの観点から、反応溶媒として水含有溶媒を採用するのが好ましい。水含有溶媒としては、水のみでもよいが、水に可溶な有機溶媒を添加することもできる。当該有機溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、N−メチル−2−ピロリドンを例示できる。水と有機溶媒との体積比として、100:1〜1:1、50:1〜1.5:1、10:1〜2:1の範囲を例示できる。
反応工程における、反応時間及び反応温度は、適宜設定すればよい。さらに、反応工程で得られた反応液を加熱乾燥して、反応溶媒を除去する加熱工程を設けるのが好ましい。加熱工程に因り、カルボン酸基とホウ素化合物との脱水反応が進行する場合もあると考えられる。加熱温度はイオン伝導性材料が分解しない範囲内で適宜設定すればよく、反応溶媒の沸点以上の温度が好ましい。加熱時間は加熱温度に応じ適宜設定すればよい。
反応工程においては、カルボン酸基含有ポリマー若しくはその塩及びホウ素化合物以外に、アルカリ金属化合物を添加してもよい。アルカリ金属化合物を添加することで、本発明のイオン伝導性材料の特性が好適化する場合がある。アルカリ金属化合物の種類としては、本発明のイオン伝導性材料が使用される蓄電装置における電荷担体を含有するものが好ましい。例えば、本発明のイオン伝導性材料がリチウムイオン二次電池に使用される場合には、アルカリ金属化合物として水酸化リチウムなどのリチウム化合物を選択するのが好ましい。アルカリ金属化合物の添加量としては、使用するカルボン酸基含有ポリマーにおけるカルボン酸基のモル数に対して、0.1〜3モルの範囲が好ましく、0.5〜2モルの範囲がより好ましく、0.9〜1.5モルの範囲がさらに好ましい。また、アルカリ金属化合物の添加量としては、使用するホウ素化合物におけるホウ素のモル数に対して、0.1〜3モルの範囲が好ましく、0.5〜2モルの範囲がより好ましく、0.9〜1.5モルの範囲がさらに好ましい。
本発明のイオン伝導性材料は、−CO−O−B構造含有ポリマーを含む。本発明のイオン伝導性材料には、未反応のカルボン酸基含有ポリマーが存在していてもよく、また、本発明のイオン伝導性材料には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、公知のポリマーなどの添加物を配合することができる。本発明のイオン伝導性材料は、50質量%以上で−CO−O−B構造含有ポリマーを含むものが好ましく、70質量%以上で−CO−O−B構造含有ポリマーを含むものがより好ましく、90質量%以上で−CO−O−B構造含有ポリマーを含むものがさらに好ましい。本発明のイオン伝導性材料として、−CO−O−B構造含有ポリマーのみで構成されるものも例示できる。
本発明のイオン伝導性材料は、その特性を生かして、種々の用途に使用できる。例えば、二次電池などの蓄電装置における、正極、負極若しくはセパレータを被覆する保護層、又は、セパレータ自体若しくは固体電解質としての用途が想定される。また、二次電池における正極活物質を含む正極活物質層又は負極活物質を含む負極活物質層に、本発明のイオン伝導性材料を配合してもよい。活物質層に本発明のイオン伝導性材料が配合されることで、活物質の表面に本発明のイオン伝導性材料が配置されることとなり、活物質と電解液との直接接触を低減することができる。
以下、本発明のイオン伝導性材料を具備する蓄電装置、本発明のイオン伝導性材料で被覆されている電極(以下、本発明の電極ということがある。)についての説明をする。
蓄電装置としては、一次電池、二次電池、キャパシタを例示できる。以下、本発明のイオン伝導性材料を具備する蓄電装置を本発明の蓄電装置と、本発明のイオン伝導性材料を具備する二次電池を本発明の二次電池と、本発明のイオン伝導性材料を具備するリチウムイオン二次電池を本発明のリチウムイオン二次電池ということがある。
以下、蓄電装置の代表例であるリチウムイオン二次電池についての説明を通じて、本発明の電極及び本発明の電極を具備する本発明の蓄電装置の説明をする。
本発明の電極は、正極でもよいし、負極でもよい。本発明の電極の具体的な態様は、集電体と、集電体の表面に形成された活物質層と、活物質層の表面に形成された本発明のイオン伝導性材料を含有する層(以下、単に「イオン伝導性材料層」という。)とを具備する構成である。
集電体は、リチウムイオン二次電池などの二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体の材料は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はない。集電体の材料としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
正極の電位をリチウム基準で4V以上とする場合には、正極用集電体としてアルミニウムを採用するのが好ましい。
具体的には、正極用集電体として、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いるのが好ましい。ここでアルミニウムは、純アルミニウムを指し、純度99.0%以上のアルミニウムを純アルミニウムと称する。純アルミニウムに種々の元素を添加して合金としたものをアルミニウム合金と称する。アルミニウム合金としては、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Fe系、Al−Si系、Al−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系が挙げられる。
また、アルミニウム又はアルミニウム合金として、具体的には、例えばJIS A1085、A1N30等のA1000系合金(純アルミニウム系)、JIS A3003、A3004等のA3000系合金(Al−Mn系)、JIS A8079、A8021等のA8000系合金(Al−Fe系)が挙げられる。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
活物質層は、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出し得る活物質、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を含む。活物質層には、活物質が活物質層全体の質量に対して、60〜99質量%で含まれるのが好ましく、70〜95質量%で含まれるのがより好ましい。
正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)で表されるリチウム複合金属酸化物、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、電荷担体(例えば充放電に寄与するリチウムイオン)を含まないものを用いても良い。例えば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウム等の電荷担体を含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極及び/又は負極に、公知の方法により、予め電荷担体を添加しておく必要がある。電荷担体は、イオンの状態で添加しても良いし、金属等の非イオンの状態で添加しても良い。例えば、電荷担体がリチウムである場合には、リチウム箔を正極及び/又は負極に貼り付けるなどして一体化しても良い。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物を採用することが好ましい。
上記一般式において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが10/100<b<90/100、10/100<c<90/100、5/100<d<70/100の範囲であることが好ましく、20/100<b<80/100、12/100<c<70/100、10/100<d<60/100の範囲であることがより好ましく、30/100<b<70/100、15/100<c<50/100、12/100<d<50/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、e、fについては、上記一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1をそれぞれ例示することができる。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、スピネル構造のLiMn2―y(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び、Niなどの遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素から選択される。0<x≦2.2、0≦y≦1)を例示できる。xの値の範囲としては、0.5≦x≦1.8、0.7≦x≦1.5、0.9≦x≦1.2を例示でき、yの値の範囲としては、0≦y≦0.8、0≦y≦0.6を例示できる。具体的なスピネル構造の化合物として、LiMn、LiMn1.5Ni0.5を例示できる。
具体的な正極活物質として、LiFePO、LiFeSiO、LiCoPO、LiCoPO、LiMnPO、LiMnSiO、LiCoPOFを例示できる。他の具体的な正極活物質として、LiMnO−LiCoOを例示できる。
負極活物質としては、電荷担体を吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。したがって、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はない。たとえば、負極活物質としてLiや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すればよい。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質して、Nb、TiO、LiTi12、WO、MoO、Fe等の酸化物、又は、Li3−xN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
高容量化の可能性の点から、好ましい負極活物質として、黒鉛、Si含有材料、Sn含有材料を挙げることができる。
Si含有材料の具体例として、Si単体や、Si相とケイ素酸化物相との2相に不均化されたSiO(0.3≦x≦1.6)を例示できる。SiOにおけるSi相は、リチウムイオンを吸蔵及び放出でき、二次電池の充放電に伴って体積変化する。ケイ素酸化物相はSi相に比べて充放電に伴う体積変化が少ない。つまり、負極活物質としてのSiOは、Si相により高容量を実現するとともに、ケイ素酸化物相を有することにより負極活物質全体の体積変化を抑制する。なお、xが下限値未満であると、Siの比率が過大になるため、充放電時の体積変化が大きくなりすぎて二次電池のサイクル特性が低下する。一方、xが上限値を超えると、Si比率が過小になってエネルギー密度が低下する。xの範囲は0.5≦x≦1.5であるのがより好ましく、0.7≦x≦1.2であるのがさらに好ましい。
なお、上記したSiOにおいては、リチウムイオン二次電池の充放電時にリチウムとSi相のケイ素とによる合金化反応が生じると考えられている。そして、この合金化反応がリチウムイオン二次電池の充放電に寄与すると考えられている。後述するSn含有材料についても、同様に、スズとリチウムとの合金化反応によって充放電できると考えられている。
Sn含有材料の具体例として、Sn単体、Cu−SnやCo−Snなどのスズ合金、アモルファススズ酸化物、スズケイ素酸化物を例示できる。アモルファススズ酸化物としてはSnB0.40.63.1を例示でき、スズケイ素酸化物としてはSnSiOを例示できる。
Si含有材料、及び、Sn含有材料は、炭素材料と複合化して負極活物質とすることが好ましい。複合化に因り、特にケイ素及び/又はスズの構造が安定し、負極の耐久性が向上する。上記複合化は、既知の方法で行えば良い。複合化に用いられる炭素材料としては、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等を採用すればよい。黒鉛は、天然黒鉛でもよく、人造黒鉛でもよい。
Si含有材料の具体例として、国際公開第2014/080608号などに開示されるシリコン材料(以下、単に「シリコン材料」という。)を挙げることができる。
シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するものである。シリコン材料は、例えば、CaSiと酸とを反応させてポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成する工程、さらに、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させる工程を経て製造されるものである。
シリコン材料の製造方法を、酸として塩化水素を用いた場合の理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi+6HCl → Si+3CaCl
Si → 6Si+3H
ただし、ポリシランであるSiを合成する上段の反応では、副生物や不純物除去の観点から、通常、反応溶媒として水が用いられる。そして、Siは水と反応し得るため、上段の反応を含む層状シリコン化合物を合成する工程において、層状シリコン化合物がSiのみを含むものとして製造されることはほとんどなく、層状シリコン化合物はSi(OH)(Xは酸のアニオン由来の元素若しくは基、s+t+u=6、0<s<6、0<t<6、0<u<6)で表されるものとして製造される。なお、上記の化学式においては、残存し得るCaなどの不可避不純物については、考慮していない。そして、当該層状シリコン化合物を加熱して得られるシリコン材料も、酸素や酸のアニオン由来の元素を含む。
既述のとおり、シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する。リチウムイオン等の電荷担体が効率的に吸蔵及び放出されるためには、板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。板状シリコン体の長手方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内のものが好ましい。また、板状シリコン体は、(長手方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。板状シリコン体の積層構造は走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。また、この積層構造は、原料のCaSiにおけるSi層の名残りであると考えられる。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。シリコン結晶子のサイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。なお、シリコン結晶子のサイズは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、得られたX線回折チャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
シリコン材料に含まれる板状シリコン体、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子の存在量や大きさは、主に加熱温度や加熱時間に左右される。加熱温度は、350℃〜950℃の範囲内が好ましく、400℃〜900℃の範囲内がより好ましい。
シリコン材料は炭素で被覆されていてもよい。炭素で被覆されたシリコン材料は導電性に優れる。
シリコン材料の平均粒子径は、2〜7μmの範囲内が好ましく、2.5〜6.5μmの範囲内がより好ましい。平均粒子径が小さすぎるシリコン材料を用いると、凝集性や濡れ性の観点から、負極製造が困難になる場合がある。具体的には、負極製造時に調製するスラリー中において、平均粒子径が小さすぎるシリコン材料が凝集する場合がある。他方、平均粒子径が大きすぎるシリコン材料を用いた負極を具備するリチウムイオン二次電池は、好適な充放電ができない場合がある。平均粒子径が大きすぎるシリコン材料においては、リチウムイオンが当該シリコン材料の内部まで十分に拡散し得ないことが原因と推測される。なお、本明細書における平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で試料を測定した場合におけるD50を意味する。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴムなどの公知のものを採用すればよい。
また、国際公開第2016/063882号に開示される、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーをジアミンなどのポリアミンで架橋した架橋ポリマーを、結着剤として用いてもよい。
架橋ポリマーに用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の含飽和炭素環ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、活物質:結着剤=1:0.005〜1:0.3であるのが好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独又は二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、活物質:導電助剤=1:0.01〜1:0.5であるのが好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、結着剤、溶剤、並びに必要に応じて導電助剤を混合してスラリーにしてから、当該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
活物質層の表面に形成されたイオン伝導性材料層について説明する。イオン伝導性材料層は活物質層の表面に形成されることで、電解液と活物質との直接接触を抑制することができるため、正極活物質、負極活物質又は電解液の劣化を防止できる。イオン伝導性材料層が正極活物質層の表面に形成された正極の場合には、主に電解液の酸化分解を抑制することができ、また、イオン伝導性材料層が負極活物質層の表面に形成された負極の場合には、主に電解液の還元分解を抑制することができる。特に、正極活物質層がイオン伝導性材料層で被覆された状態の本発明の正極は、4.3V以上、4.5V以上又は4.7V以上の高電位条件下での使用も可能である。
イオン伝導性材料層の厚みは特に制限が無いが、0.01〜20μmが好ましく、0.05〜15μmがより好ましく、0.1〜10μmがさらに好ましく、0.5〜5μmが特に好ましい。
活物質層の表面にイオン伝導性材料層を設けるには、例えば、本発明のイオン伝導性材料の製造方法の反応工程後の反応液を、適宜適切な濃度に調製して、活物質層の表面に塗布する塗布工程を実施した後、乾燥工程を実施すれば良い。塗布工程では、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いればよい。乾燥工程は、常圧条件で行っても良いし、真空乾燥機を用いた減圧条件下で行っても良い。乾燥温度はイオン伝導性材料が分解しない範囲内で適宜設定すればよく、反応溶媒の沸点以上の温度が好ましい。乾燥時間は塗布量及び乾燥温度に応じ適宜設定すればよい。
本発明の二次電池は本発明の電極を具備する。本発明の二次電池において、正極及び負極の両者が本発明の電極であってもよいし、電極のいずれか一方が本発明の電極であって、他方がイオン伝導性材料層を具備しない一般的な電極であってもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池における電極以外の具体的な構成として、セパレータ及び電解液を挙げることができる。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。
非水溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類等が使用できる。環状エステル類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
電解質としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩を例示できる。
電解液としては、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水溶媒に、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSOなどのリチウム塩を0.5mol/Lから1.7mol/L程度の濃度で溶解させた溶液を例示できる。
本発明のリチウムイオン二次電池の具体的な製造方法について述べる。
例えば、正極と負極とでセパレータを挟持して電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極の積層体を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までを、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、例えば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例及び比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(製造例1)
ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量250000〜700000、和光純薬工業株式会社)7.6質量部を100質量部の水に溶解した水溶液を氷浴で冷却した。撹拌条件下、上記水溶液に5質量部のホウ酸を添加して、その後、水溶液を室温で2時間撹拌した。2時間撹拌後の水溶液に水を加えて、ポリアクリル酸ナトリウム及びホウ酸の合計量を10質量%で含有する製造例1の水溶液を調製した。
製造例1の水溶液においては、ポリアクリル酸ナトリウムを構成するアクリル酸モノマーのモル数とホウ酸のモル数の比が1:1である。換言すると、(使用するカルボン酸基含有ポリマーにおけるカルボン酸基のモル数)と(使用するホウ素化合物におけるホウ素のモル数)との比が1:1である。
(製造例2)
重量平均分子量50000のポリアクリル酸と水酸化ナトリウムとを用いてポリアクリル酸ナトリウムを調製した以外は、製造例1と同様の方法で、ポリアクリル酸ナトリウム及びホウ酸を含有する製造例2の水溶液を調製した。
(製造例3)
重量平均分子量100000のポリアクリル酸と水酸化ナトリウムとを用いてポリアクリル酸ナトリウムを調製した以外は、製造例1と同様の方法で、ポリアクリル酸ナトリウム及びホウ酸を含有する製造例3の水溶液を調製した。
(製造例4)
重量平均分子量1000000のポリアクリル酸と水酸化ナトリウムとを用いてポリアクリル酸ナトリウムを調製した以外は、製造例1と同様の方法で、ポリアクリル酸ナトリウム及びホウ酸を含有する製造例4の水溶液を調製した。
(製造例5)
水酸化ナトリウムに替えて同モルの水酸化リチウムを用いた以外は、製造例3と同様の方法で、ポリアクリル酸リチウム及びホウ酸を含有する製造例5の水溶液を調製した。
(製造例6)
水酸化ナトリウムに替えて同モルの水酸化カリウムを用いた以外は、製造例3と同様の方法で、ポリアクリル酸カリウム及びホウ酸を含有する製造例6の水溶液を調製した。
(製造例7)
ポリアクリル酸と水酸化ナトリウムの反応、及び、ポリアクリル酸ナトリウムとホウ酸の反応における反応溶媒を、水及びエタノールを2:1の体積比で混合した混合溶媒にした以外は、製造例3と同様の方法で、ポリアクリル酸ナトリウム及びホウ酸を含有する製造例7の水溶液を調製した。
(製造例8)
ポリアクリル酸と水酸化ナトリウムの反応、及び、ポリアクリル酸ナトリウムとホウ酸の反応における反応溶媒を、水及びメタノールを2:1の体積比で混合した混合溶媒にした以外は、製造例3と同様の方法で、ポリアクリル酸ナトリウム及びホウ酸を含有する製造例8の水溶液を調製した。
(製造例9)
ホウ酸の添加量を2.5質量部とした以外は、製造例1と同様の方法で、製造例9の水溶液を調製した。
製造例9の水溶液においては、ポリアクリル酸ナトリウムを構成するアクリル酸モノマーのモル数とホウ酸のモル数の比が1:0.5である。換言すると、(使用するカルボン酸基含有ポリマーにおけるカルボン酸基のモル数)と(使用するホウ素化合物におけるホウ素のモル数)との比が1:0.5である。
(製造例10)
ポリアクリル酸ナトリウムとして重量平均分子量8000のものを用いた以外は、製造例1と同様の方法で、製造例10の水溶液を調製した。
(製造例11)
ホウ酸と共に、アルカリ金属化合物として3質量部の水酸化リチウムを添加した以外は、製造例10と同様の方法で、製造例11の水溶液を調製した。
(比較製造例1)
ホウ酸を用いなかったこと以外は、製造例1と同様の方法で、ポリアクリル酸ナトリウムを含有する比較製造例1の水溶液を調製した。
(比較製造例2)
ポリアクリル酸ナトリウムを用いなかったこと以外は、製造例1と同様の方法で、ホウ酸を含有する比較製造例2の水溶液を調製した。
(比較製造例3)
ホウ酸を用いなかったこと以外は、製造例5と同様の方法で、ポリアクリル酸リチウムを含有する比較製造例3の水溶液を調製した。
(実施例A)
製造例5の水溶液をアルミニウム箔の表面に膜状に塗布し、次いで、120℃で6時間加熱して水を除去することで、膜状の実施例Aのイオン伝導性材料を製造した。
(比較例A)
比較製造例3の水溶液をアルミニウム箔の表面に膜状に塗布し、次いで、120℃で6時間加熱して水を除去することで、膜状の比較例Aのイオン伝導性材料を製造した。
(評価例1:イオン伝導度)
実施例A及び比較例Aのイオン伝導性材料について、複素交流インピーダンス測定装置を用いて、イオン伝導度を測定した。結果を表1に示す。表1から、実施例Aのイオン伝導性材料は、比較例Aのイオン伝導性材料と比較して、著しく優れたイオン伝導性を示したことがわかる。
Figure 0006881030
(実施例B)
製造例1の水溶液をアルミニウム箔の表面に膜状に塗布し、次いで、120℃で6時間加熱して水を除去することで、膜状の実施例Bのイオン伝導性材料を製造した。
(評価例2:赤外吸収スペクトル)
赤外分光光度計を用いて、実施例Bのイオン伝導性材料の赤外吸収スペクトルを測定した。得られた赤外吸収スペクトルを図1に示す。また、図2には、ポリアクリル酸ナトリウムの赤外吸収スペクトルを示し、図3には、ホウ酸の赤外吸収スペクトルを示す。
図1の赤外吸収スペクトルと、図2の赤外吸収スペクトルを比較すると、1500〜1700cm−1に観察されるCO−Oに由来するピーク形状が変化していることがわかる。また、図3の赤外吸収スペクトルには、B−OHに由来するピークが1195cm−1付近に観察されるが、図1の赤外吸収スペクトルには、1166cm−1付近のB−OHに由来するピークと共に、1040cm−1付近のB−O−COに由来すると推定されるピークが観察された。以上の結果を総合して判断すると、実施例Bのイオン伝導性材料においては、−CO−O−B構造が形成されているといえる。
評価例1において、実施例Aのイオン伝導性材料が比較例Aのイオン伝導性材料と比較して著しく優れたイオン伝導性を示したのは、実施例Aのイオン伝導性材料の化学構造がリチウムイオンの円滑な移動を補助したのに対して、比較例Aのイオン伝導性材料の化学構造はリチウムイオンの移動に対する抵抗因子となったためと考えられる。
(実施例1)
製造例1の水溶液を用いて、実施例1の正極及びリチウムイオン二次電池を以下のとおり製造した。
正極活物質としてスピネル構造のLiMn1.5Ni0.5を1.8質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを0.1質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを8質量%で含むN−メチル−2−ピロリドン溶液を1.25質量部、及び適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。正極用集電体として厚み15μmのアルミニウム箔を準備した。アルミニウム箔の表面に上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、当該アルミニウム箔をプレスし接合物を得た。得られた接合物を乾燥機で加熱乾燥して、正極活物質層が形成されたアルミニウム箔からなる正極前駆体を製造した。
製造例1の水溶液を正極前駆体の表面に膜状に塗布し、次いで、120℃で6時間加熱して水を除去することで、正極活物質層がイオン伝導性材料層で被覆された実施例1の正極を製造した。実施例1の正極の厚みと正極前駆体の厚みとの差から、イオン伝導性材料層の厚みは2.4μmと算出された。
実施例1の正極を径15mmに裁断し、評価極とした。厚さ500μmの金属リチウム箔を径16mmに裁断し対極とした。セパレータとしてガラスフィルター(ヘキストセラニーズ社)及び単層ポリプロピレンであるcelgard2400(ポリポア株式会社)を準備した。また、エチレンカーボネート50体積部及びジエチルカーボネート50体積部を混合した溶媒にLiPF6を1mol/Lで溶解した電解液を準備した。対極、ガラスフィルター、celgard2400、評価極の順に、2種のセパレータを対極と評価極で挟持し電極体とした。この電極体をコイン型電池ケースCR2032(宝泉株式会社)に収容し、さらに電解液を注入して、コイン型電池を得た。これを実施例1のリチウムイオン二次電池とした。
(実施例2〜実施例9)
製造例2〜製造例9の水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2〜実施例9の正極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1〜比較例2)
比較製造例1〜比較製造例2の水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1〜比較例2の正極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例3)
正極前駆体を評価極として用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例3:容量維持率)
各リチウムイオン二次電池につき、0.3Cレートの一定電流で4.9Vまで充電を行い、その後、0.3Cレートの一定電流で3.5Vまで放電を行うとの充放電サイクルを20回繰り返した。以下の式に従い、容量維持率を算出した。結果を表2に示す。
容量維持率(%)=100×(20サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
Figure 0006881030
表2における略号の意味は以下のとおりである。
Mw:ポリアクリル酸ナトリウム又はポリアクリル酸の重量平均分子量
モル比:アクリル酸モノマーとホウ酸のモル比
表2の結果から、実施例のリチウムイオン二次電池の容量維持率は、いずれも99%以上であることがわかる。実施例1〜実施例4の結果から、ポリアクリル酸の分子量の違いは容量維持率にそれほど影響を与えないといえる。実施例3、実施例5、実施例6の結果から、ポリアクリル酸塩のカチオン種の違いも容量維持率にそれほど影響を与えないといえる。実施例3、実施例7、実施例8の結果から、反応溶媒の種類の違いも容量維持率にそれほど影響を与えないといえる。実施例1及び実施例9の結果から、アクリル酸モノマーとホウ酸のモル比の違いも容量維持率にそれほど影響を与えないといえる。
実施例と比較例3の結果と併せて考察すると、実施例のリチウムイオン二次電池が容量維持率に優れていたのは、実施例の正極は本発明のイオン伝導性材料で被覆されているために、正極活物質と電解液との直接的な接触が抑制されて、電解液の酸化分解が抑制されたためであると考えられる。なお、通常、4.9Vでの充電条件下において、電解液は酸化状態の正極活物質と接触することで酸化分解すると考えられている。
また、比較例1及び比較例2の結果を鑑みると、ポリアクリル酸ナトリウムのみ又はホウ酸のみの化学構造は、正極活物質又は電解液に対して何らかの劣化を引き起こすか、或いは、正極活物質又は電解液の劣化を抑制できないといえる。
本発明のイオン伝導性材料においては、ポリアクリル酸ナトリウムのみ又はホウ酸のみの化学構造とは異なる−CO−O−B構造が形成されているために、正極活物質又は電解液の劣化を引き起こすこともなく、或いは、正極活物質又は電解液の劣化を著しく抑制し、イオン伝導性に優れた保護層としての機能を発揮したと考えられる。
(評価例4:レート特性)
実施例のリチウムイオン二次電池につき、0.05Cレートの一定電流で4.9Vまで充電を行い、その後、0.05Cレートの一定電流で3.5Vまで放電を行った。次に、0.05Cレートの一定電流で4.9Vまで充電を行い、その後、0.5Cレートの一定電流で3.5Vまで放電を行った。
以下の式に従い、レート特性を算出した。結果を表3に示す。
レート特性(%)=100×(0.5Cレートでの放電容量)/(0.05Cレートでの放電容量)
Figure 0006881030
表3の結果から、ポリアクリル酸の分子量の違い、ポリアクリル酸塩のカチオン種の違い、又は、反応溶媒の種類の違いに因らず、実施例1〜実施例8のリチウムイオン二次電池は、放電レートの変化に十分に追従できているといえる。他方、実施例9のリチウムイオン二次電池のレート特性は、実施例1〜実施例8のリチウムイオン二次電池のレート特性よりも劣っていた。これらの結果は、アクリル酸モノマーとホウ酸とのモル比、すなわち、(使用するカルボン酸基含有ポリマーにおけるカルボン酸基のモル数)と(使用するホウ素化合物におけるホウ素のモル数)との比には、1:1付近に最適な範囲があることを示唆するものである。
(実施例10)
製造例10の水溶液を用いて、実施例10の負極及びリチウムイオン二次電池を以下のとおり製造した。
撹拌条件下の0℃の濃塩酸溶液に、CaSiを加えて1時間反応させた。反応液に水を加え、濾過を行い、黄色の粉体を濾取した。黄色の粉体を水洗し、さらにエタノール洗浄した後に、減圧乾燥して、層状ポリシランを含有する層状シリコン化合物を得た。次いで、層状シリコン化合物をアルゴン雰囲気下、800℃で加熱して、水素を離脱させて、シリコン材料を製造した。プロパンガス雰囲気下、シリコン材料を880℃で加熱することで、炭素被覆シリコン材料を製造した。
ポリアクリル酸(重量平均分子量250000、和光純薬工業株式会社)をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、ポリアクリル酸が15質量%で含有されるポリアクリル酸溶液を製造した。また、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(東京化成工業株式会社)をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、4,4’−ジアミノジフェニルメタンが50質量%で含有される4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を製造した。窒素雰囲気下、ポリアクリル酸溶液の12.7質量部と4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液の1.05質量部を混合した混合物を室温で30分間撹拌し、さらに110℃で2時間撹拌して、結着剤溶液を製造した。
負極活物質として炭素被覆シリコン材料72.5質量部、導電助剤としてアセチレンブラック13.5質量部、結着剤として固形分が14質量部となる量の上記結着剤溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。負極用集電体として厚み30μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で180℃、2時間、加熱乾燥することで、厚み20μmの負極活物質層が形成された負極前駆体を製造した。
なお、結着剤として用いたポリアクリル酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとの混合物は、上記加熱乾燥にて脱水反応が進行して、ポリアクリル酸を4,4’−ジアミノジフェニルメタンで架橋した架橋ポリマーに変化する。
製造例10の水溶液を負極前駆体の表面に膜状に塗布し、次いで、加熱して水を除去することで、負極活物質層がイオン伝導性材料層で被覆された実施例10の負極を製造した。イオン伝導性材料層の厚みは2.5μm程度であった。
正極活物質として層状岩塩構造のLiNi1/3Co1/3Mn1/3を1.8質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを0.1質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを8質量%で含むN−メチル−2−ピロリドン溶液を1.25質量部、及び適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。正極用集電体として厚み15μmのアルミニウム箔を準備した。アルミニウム箔の表面に上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、当該アルミニウム箔をプレスし接合物を得た。得られた接合物を乾燥機で加熱乾燥して、正極活物質層が形成されたアルミニウム箔からなる厚み35μmの正極を製造した。
セパレータとして厚さ25μmのポリエチレン製多孔質膜を準備した。また、エチレンカーボネート3体積部、ジエチルカーボネート3体積部及びジメチルカーボネート4体積部を混合した溶媒にLiPF6を1mol/Lで溶解した電解液を準備した。
実施例10の負極と正極とでセパレータを挟持し、極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに電解液を注入した。残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたリチウムイオン二次電池を製造した。この電池を実施例10のリチウムイオン二次電池とした。
(実施例11)
製造例11の水溶液を用いた以外は実施例10と同様の方法で、実施例11の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例4)
負極前駆体を比較例4の負極として用いた以外は実施例10と同様の方法で、比較例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例5)
実施例10のリチウムイオン二次電池に対して、0.33Cで4.2Vまで充電した後に、さらに4.2Vの電圧を30分間維持させる定電圧充電を行った。そして、充電停止から10分後に、0.33C又は1Cで2.8Vまで放電させた。この時の放電容量を初期放電容量とした。
次に、電圧を3.2Vに調整した実施例10のリチウムイオン二次電池につき、−20℃の環境下、電圧2.5Vまで一定出力にて放電させた場合の放電時間を測定した。当該測定は、出力を変えた複数の条件下で行った。得られた結果から、−20℃の環境下、3.2Vから2.5Vまでの放電時間が5分間となる一定出力(mW)を算出した。
また、電圧を3.2Vに調整した実施例10のリチウムイオン二次電池につき、0℃の環境下、電圧2.5Vまで一定出力にて放電させた場合の放電時間を測定した。当該測定は、出力を変えた複数の条件下で行った。得られた結果から、0℃の環境下、3.2Vから2.5Vまでの放電時間が5秒間となる一定出力(mW)を算出した。
以上の試験を、実施例11及び比較例4のリチウムイオン二次電池についても実施した。結果を表4に示す。なお、表4中のPAANaとは、ポリアクリル酸ナトリウムの略称である。
Figure 0006881030
表4から、本発明のリチウムイオン二次電池は、負極が本発明のイオン伝導性材料で被覆されているにも関わらず、充放電できることが裏付けられたといえる。これらの結果から、本発明のイオン伝導性材料は、負極を被覆した場合でも、電荷担体であるリチウムイオンの移動を妨げないことがわかる。特に、実施例11のリチウムイオン二次電池が最も優れた電池特性を示したことから、本発明のイオン伝導性材料の製造時にアルカリ金属化合物を添加することで、本発明のイオン伝導性材料の性質が好適化されることが示唆される。
評価例1〜評価例5の結果を総括すれば、本発明のイオン伝導性材料は、正極又は負極のいずれを被覆した場合でも、蓄電装置における電荷担体の移動を妨げないといえる。さらに、本発明のイオン伝導性材料は、セパレータを被覆する保護層、又は、セパレータ自体若しくは固体電解質としての用途にも好適に利用可能であると期待される。

Claims (4)

  1. 集電体と、前記集電体の表面に形成された活物質層と、イオン伝導性材料を含有する反応液を前記活物質層の表面に塗布及び乾燥することで形成されたイオン伝導性材料層と、を具備し、
    前記イオン伝導性材料は、カルボン酸基含有ポリマー若しくはその塩とホウ素化合物との反応物であって、−CO−O−B構造を含有し且つ未反応のカルボン酸基を含有できる−CO−O−B構造含有ポリマーからなり、
    前記カルボン酸基含有ポリマーを構成するモノマー単位の少なくとも一部は、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、クロトン酸、ペンテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、グルタコン酸、2−アリルマロン酸、4−メチル−3−ペンテン酸、2−(1−メチルエチリデン)コハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸およびアセチレンジカルボン酸からなる群から選択される1以上のカルボン酸基含有モノマーに由来し、
    前記−CO−O−B構造含有ポリマーを構成するモノマー単位すべてに対して、前記−CO−O−B構造を含有するモノマー単位が40〜100モル%で存在し、
    前記−CO−O−B構造含有ポリマーにおける前記−CO−O−B構造とカルボン酸基との比は、10:5〜10:0の範囲内であり、
    前記−CO−O−B構造のホウ素元素には水酸基が結合していることを特徴とする、電極
  2. 集電体と、前記集電体の表面に形成された活物質層と、イオン伝導性材料を含有する反応液を前記活物質層の表面に塗布及び乾燥することで形成されたイオン伝導性材料層とを具備し、
    前記イオン伝導性材料は、カルボン酸基含有ポリマー若しくはその塩とホウ素化合物との反応物である、−CO−O−B構造を含有し且つ未反応のカルボン酸基を含有できる−CO−O−B構造含有ポリマーからなり、
    前記カルボン酸基含有ポリマーを構成するモノマー単位の少なくとも一部は、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、クロトン酸、ペンテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、グルタコン酸、2−アリルマロン酸、4−メチル−3−ペンテン酸、2−(1−メチルエチリデン)コハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸およびアセチレンジカルボン酸からなる群から選択される1以上のカルボン酸基含有モノマーに由来し、
    前記−CO−O−B構造含有ポリマーを構成するモノマー単位すべてに対して、前記−CO−O−B構造を含有するモノマー単位が40〜100モル%で存在し、
    前記イオン伝導性材料を生成する反応において、(使用する前記カルボン酸基含有ポリマーにおけるカルボン酸基のモル数)/(使用する前記ホウ素化合物におけるホウ素のモル数)の値が1〜2の範囲内であり、
    前記−CO−O−B構造のホウ素元素には水酸基が結合していることを特徴とする、電極
  3. 請求項1又は2に記載の電極を具備する蓄電装置。
  4. 前記電極が正極又は負極である請求項に記載の蓄電装置。
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