JP2019030334A - 細胞培養培地 - Google Patents

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Abstract

【課題】チロシンおよび/またはシステインの溶解性および/または安定性を改善した乾燥粉末細胞培養培地の提供。【解決手段】細胞培養培地中のチロシンの乏しい溶解性およびシステインの多くの場合不十分な安定性を、それらの無機エステル誘導体である、硫酸エステル誘導体またはリン酸エステル誘導体を用いて置換することにより克服した乾燥粉末細胞培養培地。【選択図】なし

Description

本発明は、チロシンおよび/またはシステインの無機エステル誘導体を含む細胞培養培地に関する。細胞培養培地中のチロシンの乏しい溶解性およびシステインの多くの場合不十分な安定性は、それらを無機エステル誘導体、例えばリン酸化誘導体で置換することにより克服される。
細胞培養培地は、人工的な環境において細胞の成長を支持および維持する。
細胞培養培地は、その成長が支持されるであろう生物の種類によって、複合成分混合物を含み、時には100を超える異なる成分を含むこともある。
哺乳動物、昆虫または植物の細胞の増殖に必要とされる細胞培養培地は、典型的には、細菌および酵母の成長を支持するための培地よりもずっと複雑である。
開発された最初の細胞培養培地は、組成が不明確な成分、例えば血漿、血清、胚抽出物、または組成が不明確な他の生物学的抽出物もしくはペプトンからなっていた。従って、化学的に定義される培地の開発により、大きな進歩を遂げた。化学的に定義される培地は、しばしば、アミノ酸、ビタミン、金属塩、抗酸化剤、キレート剤、成長因子、緩衝液、ホルモン、および当業者に公知の多くのさらなる物質を含むが、これらだけには限定されない。
一部の細胞培養培地は、無菌の水性液体として提供される。液体細胞培養培地の欠点は、保存期間が短く、輸送および保存が困難であることである。結果として、多くの細胞培養培地は、現在、微粉砕された乾燥粉末混合物として提供される。それらは、水および/または水溶液中で溶解する目的で製造され、溶解した状態で、多くの場合は他の補充物質を用いて、細胞に、その細胞からのバイオ医薬品の成長および/または産生のための十分な栄養基剤を供給するように設計される。
大半のバイオ医薬品産生プラットフォームは、流加細胞培養プロトコールに基づいている。その目的は、典型的には、増加する市場需要を満たし、製造コストを低下させるための高力価の細胞培養プロセスを開発することである。高性能な組換え細胞株の使用の他に、細胞培養培地およびプロセスパラメータの改善が、最大限の産生潜在能力を実現するために必要とされる。
流加プロセス(fed-batch process)において、基礎培地は、初期成長および産生を支持し、フィード(供給)培地は、栄養分の枯渇を防止し、産生段階を持続させる。培地は、異なる産生段階の間での別個の代謝要求に適合するように選ばれる。フィード方略および制御パラメータを含めた、プロセスパラメータの設定によって、細胞成長およびタンパク質産生に適した化学的および物理的環境が決まる。
フィード培地の最適化は、流加プロセスの最適化における主要な側面である。
多くの場合、フィード培地を高度に濃縮してバイオリアクターの希釈を回避する。栄養分の制御された添加は、直接的に培養物の成長速度に影響する。
乾燥粉末からの細胞培養培地の調製についての限定因子は、一部の成分の乏しい溶解性または安定性、特にアミノ酸L−チロシンおよびL−システインの乏しい溶解性または安定性である。L−チロシンについては乏しい溶解性が主要な問題であり、L−システインについては安定性の問題が大きい。
R.H.Plimmer Biochemical Journal(1941),35,461〜46
結果的に、L−チロシンおよびL−システインの溶解性および/または安定性を改善する方法を見出すことが好ましいであろう。
L−チロシンおよびL−システインの無機エステル誘導体は、改善された溶解性および/または安定性を有し、細胞培養培地中で、細胞成長に対して負の効果がなく、時には正の効果さえもなく、それぞれL−チロシンおよびL−システインの代わりに使用することができることが見出されている。
さらに、そのような無機エステル誘導体は、pH8.5を超えないpHを有し、細胞のための栄養分として適した形態である高濃度のチロシンおよびシステインを有するフィード溶液を調製するために特に適していることが見出されている。
従って、本発明は、チロシンおよび/またはシステインの少なくとも1つの無機エステル誘導体を含む細胞培養培地を対象とする。
好ましい実施形態において、無機エステル誘導体は、硫酸エステル誘導体またはリン酸エステル誘導体である。
好ましい実施形態において、細胞培養培地は、式Iおよび/またはIIの成分:
Figure 2019030334
Figure 2019030334
のうちの1つまたは複数を含む。
好ましい実施形態において、チロシンの無機エステル誘導体は、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸またはその塩である。
別の好ましい実施形態において、システインの誘導体は、(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニルプロパン酸またはその塩である。
好ましい実施形態において、チロシンのリン酸化された誘導体は、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸二ナトリウム塩である。
好ましい実施形態において、システインのスルホン化誘導体は、(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニルプロパン酸ナトリウム塩である。
好ましい実施形態において、細胞培養培地は、乾燥粉末培地である。
別の好ましい実施形態において、細胞培養培地はフィード(供給)培地である。
別の好ましい実施形態において、細胞培養培地は、8.5またはそれ以下のpHを有し、5〜40mmol/lの間、好ましくは10〜30mmol/lの間の濃度のチロシンおよび/またはシステインの少なくとも1つの無機エステル誘導体を含む液体培地である。
好ましい実施形態において、液体培地のpHは、6.5〜8.5の間、最も好ましくは6.8〜7.8の間である。
一実施形態において、細胞培養培地は、少なくとも1つまたは複数の糖類成分、1つまたは複数のアミノ酸、1つまたは複数のビタミンまたはビタミン前駆体、1つまたは複数の塩、1つまたは複数の緩衝液成分、1つまたは複数の補因子、および1つまたは複数の核酸成分を含む。
本発明は、さらに、
a)L−チロシンおよび/またはL−システインの1つまたは複数の無機エステル誘導体を細胞培養培地の他の成分と混合すること、
b)工程a)の混合物を粉砕に供すること
により、本発明による細胞培養培地を生成するための方法を対象とする。
好ましい実施形態において、工程b)は、ピンミル、フィッツミルまたはジェットミル中で実施される。
別の好ましい実施形態において、工程a)からの混合物は、粉砕の前に0℃を下回る温度に冷却される。
本発明は、さらに、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸の二ナトリウム塩、二カリウム塩、一カリウム塩、2:1カルシウム塩、およびマグネシウム塩を対象とする。
本発明は、さらに、
a)バイオリアクターを準備すること、
b)培養する細胞を、本発明による細胞培養培地と混合すること、
c)工程b)の混合物をインキュベートすること
により、細胞を培養するためのプロセスを対象とする。
本発明は、また、
− バイオリアクターに細胞および水性細胞培養培地を充填すること、
− バイオリアクター中で細胞をインキュベートすること、
− バイオリアクター中の細胞のインキュベーションの全時間にわたり連続的に、または前記インキュベーション時間内の1回もしくは数回、バイオリアクターに細胞培養培地(この場合はフィード培地である)を添加すること
により、バイオリアクター中で細胞を培養するための流加プロセスであって、
フィード培地は、pH8.5未満のpHを有し、チロシンおよび/またはシステインの少なくとも1つの無機エステル誘導体を含む、流加プロセスを対象とする。
好ましくは、フィード培地は、10〜50mmol/lの間、好ましくは15〜30mmol/lの間の濃度のチロシンおよび/またはシステインの少なくとも1つの無機エステル誘導体を含む。
(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸を生成するための反応スキームを示す。さらなる詳細は、例1において見出すことができる。 (S)−2−アミノ−3−(4−スルホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸を生成するための反応スキームを示す。さらなる詳細は、例2において見出すことができる。 本発明による細胞培養培地を使用したバッチ中での細胞成長実験を示す。さらなる詳細は、例5および6において見出すことができる。 本発明による細胞培養培地を使用したバッチ中での細胞成長実験を示す。さらなる詳細は、例5および6において見出すことができる。 (S)−2−アミノ−3−(4−スルホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸塩を用いた本発明による最適化流加法を使用する流加細胞培養実験の結果を示す。詳細は、例7において見出すことができる。 (S)−2−アミノ−3−(4−スルホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸塩を用いた本発明による最適化流加法を使用する流加細胞培養実験の結果を示す。詳細は、例7において見出すことができる。 (S)−2−アミノ−3−(4−スルホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸塩および(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニル−プロピオン酸ナトリウム塩を用いた本発明による最適化流加法を使用する流加細胞培養実験の結果を示す。詳細は、例8において見出すことができる。 (S)−2−アミノ−3−(4−スルホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸塩および(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニル−プロピオン酸ナトリウム塩を用いた本発明による最適化流加法を使用する流加細胞培養実験の結果を示す。詳細は、例8において見出すことができる。
本発明による無機エステル誘導体は、例えば、無機オキソ酸とチロシンまたはシステインとの縮合によって得られる生成物である。無機オキソ酸の例は、例えば、リン酸、硫酸、硝酸、およびホウ酸である。硫酸またはリン酸から誘導される無機エステル誘導体が好ましい。無機エステル誘導体は、このように、無機オキソ酸とシステインまたはチロシンとのエステル、およびその塩である。チロシンの適した無機エステル誘導体の例は、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸ならびに(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸の一ナトリウム塩、二ナトリウム塩、一カリウム塩、二カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩である。
好ましい無機エステル誘導体は、また、以下の式IおよびIIにより示すことができる:
Figure 2019030334
式中、Rは、
Figure 2019030334
であり、
XおよびYは、互いに独立に、H、Li、Na、K、1/2Ca、1/2Mg、好ましくはH、Na、Kである。プロピオン酸という用語の代わりにプロパン酸という用語も使用することができる。
本発明による細胞培養培地は、細胞のインビトロでの成長を維持および/または支持する成分の任意の混合物である。細胞培養培地は、複合培地または化学組成が明確な培地でありうる。細胞培養培地は、細胞のインビトロ成長を維持および/または支持するために必要な成分を全て含んでもよく、あるいは一部の成分だけを含み、さらなる成分は別個に添加してもよい。本発明による細胞培養培地の例は、細胞のインビトロ成長を維持および/または支持するために必要な全ての成分ならびに培地補充物質またはフィードを含む完全培地である。好ましい実施形態において、細胞培養培地は、完全培地またはフィード培地である。基礎培地とも呼ばれる完全培地は、典型的には6.8〜7.8の間のpHを有する。フィード培地は、好ましくは8.5を下回るpHを有する。
典型的には、本発明による細胞培養培地は、バイオリアクター中で細胞の成長を維持および/または支持するために使用される。
フィードまたはフィード培地は、細胞培養における初期成長および産生を支持する基礎培地ではないが、栄養分の枯渇を防止するための後の段階で添加され、産生段階を持続する培地である、細胞培養培地である。フィード培地は、基礎培養培地と比較し、一部の成分をより高い濃度で有することができる。例えば、一部の成分、例えば、アミノ酸または炭水化物を含む栄養分は、基礎培地中での濃度の5×、6×、7×、8×、9×、10×、12×、14×、16×、20×、30×、50×、100×、200×、400×、600×、800×、またはさらに約1000×でフィード培地中に存在してもよい。
哺乳動物細胞培養培地は、哺乳動物細胞のインビトロ成長を維持および/または支持する成分の混合物である。哺乳動物細胞の例は、ヒト細胞または動物細胞、好ましくはCHO細胞、COS細胞、I VERO細胞、BHK細胞、AK−1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、ハイブリドーマ細胞、またはヒト細胞である。
化学的に定義された細胞培養培地は、化学的に定義されない物質を含まない細胞培養培地である。これは、培地中で使用される全ての化学物質の化学組成が既知であることを意味する。化学組成が明確な培地は、酵母、動物または植物の組織を含まず、フィーダー細胞、血清、抽出物もしくは消化物、または化学組成が十分に明確ではないタンパク質を培地に付与しうる他の成分を含まない。化学的に定義されない、または十分に定義されていない化学成分は、その化学組成および構造が既知ではなく、様々な組成で存在し、または膨大な実験的な努力を払わないと明確にすることができず、それはアルブミンまたはカゼインなどタンパク質の化学組成および構造を評価することに匹敵するものである。
粉末細胞培養培地または乾燥粉末培地は、典型的には、粉砕プロセスまたは凍結乾燥プロセスから得られた細胞培養培地である。それは、粉末細胞培養培地が、粒状、微粒子培地であり、液体培地ではないことを意味する。用語「乾燥粉末」は、用語「粉末」と互換的に使用されうる。しかし、「乾燥粉末」は、本明細書中に使用する通り、粒状材料の肉眼的外観を単に指し、特に断らない限り、材料が複合化または凝集化溶媒を全く含まないことを意味することを意図するものではない。
本発明による培地を用いて培養される細胞は、細菌細胞などの原核細胞であっても、植物細胞もしくは動物細胞などの真核細胞であってもよい。細胞は、正常細胞、不死化細胞、疾患細胞、形質転換細胞、変異細胞、体細胞、生殖細胞、幹細胞、前駆細胞、または胚性細胞であってもよく、それらのいずれも、樹立もしくは形質転換された細胞株であっても、天然の供給源から得たものであってもよい。
粒子の大きさは、粒子の平均直径を意味する。粒径は、シリコーンオイル中でのレーザー光散乱により決定される。
不活性雰囲気は、それぞれの容器または装置に不活性ガスを充填することにより生成される。適した不活性ガスは、アルゴンなどの希ガスまたは好ましくは窒素である。これらの不活性ガスは、非反応性であり、望ましくない化学反応が起こることを防止する。本発明による工程において、不活性雰囲気を生成することは、例えば、液体窒素または窒素ガスを導入することにより、酸素の濃度が10%(v/v)絶対値を下回り低下することを意味する。
様々な種類のミルが、当業者に公知であるピンミルは、遠心衝撃式ミルとも呼ばれ、固形物を粉砕し、それにより高速回転ディスク上の突出ピンが破壊エネルギーを供給する。ピンミルは、例えば、Munson Machinery(米国)、Premium Pulman(インド)、またはSturtevant(USA)により販売されている。
ジェットミルは、圧縮ガスを使用して粒子を加速させることにより、粒子をプロセスチャンバー中で互いに衝突させる。ジェットミルは、例えば、Sturtevant(米国)またはPMT(オーストリア)により販売されている。
Fitzpatrick(米国)により商品化されたフィッツミルは、粉砕用のブレードを備えたローターを使用している。
連続的に実行される工程は、バッチ式に実行されない工程である。粉砕プロセスが連続的に実行された場合、ある時間にわたりミル中に培地成分が絶えず安定的に供給されることを意味する。
本発明による細胞培養培地、特に完全培地は、典型的には、少なくとも1つまたは複数の糖類成分、1つまたは複数のアミノ酸、1つまたは複数のビタミンまたはビタミン前駆体、1つまたは複数の塩、1つまたは複数の緩衝液成分、1つまたは複数の補因子、および1つまたは複数の核酸成分を含む。
培地は、また、ピルビン酸ナトリウム、インスリン、植物タンパク質、脂肪酸および/または脂肪酸誘導体および/またはプルロニック酸および/または化学的に調製された非イオン性界面活性剤などの表面活性成分を含みうる。適した非イオン性界面活性剤の一例は、ポロキサマーとも呼ばれる一級ヒドロキシル基において終結する二官能性ブロックコポリマー界面活性剤(例えば、BASF、ドイツから商標名pluronic(登録商標)の下で入手可能)である。
糖類成分は、グルコース、ガラクトース、リボース、もしくはフルクトース(単糖類の例)またはスクロース、ラクトース、もしくはマルトース(二糖類の例)などの全ての単糖類または二糖類である。
本発明によるアミノ酸の例は、チロシン、タンパク質を構成するアミノ酸(proteinogenic amino acid)、特に必須アミノ酸である、ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファンおよびバリン、ならびにDアミノ酸などのタンパク質を構成しないアミノ酸(non−proteinogenic amino acid)である。
チロシンは、L−またはD−チロシン、好ましくはL−チロシンを意味する。
システインは、L−またはD−システイン、好ましくはL−システインを意味する。
ビタミンの例は、ビタミンA(レチノール、レチナール、種々のレチノイド、4つのカロテノイド)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン、ナイアシンアミド)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸、フォリン酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン、ヒドロキシコバラミン、メチルコバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール、トコトリエノール)、およびビタミンK(フィロキノン、メナキノン)である。ビタミン前駆体も含まれる。
塩の例は、無機イオン、例えば、重炭酸、カルシウム、塩化物、マグネシウム、リン酸、カリウム、ナトリウムのイオン、または微量元素、例えば、Co、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、Se、Si、Ni、Bi、V、およびZnを含む成分である。例としては、硫酸銅(II)五水和物(CuSO・5HO)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl・2HO)、塩化カリウム(KCl)、硫酸鉄(II)、リン酸ナトリウム一塩基性無水物(NaHPO)、硫酸マグネシウム無水物(MgSO)、リン酸ナトリウム二塩基性無水物(NaHPO)、塩化マグネシウム六水和物(MgCl・6HO)、硫酸亜鉛七水和物である。
緩衝液の例は、CO/HCO(炭酸塩)、リン酸塩、HEPES、PIPES、ACES、BES、TES、MOPS、およびTRISである。
補因子の例は、チアミン誘導体、ビオチン、ビタミンC、NAD/NADP、コバラミン、フラビンモノヌクレオチドおよびその誘導体、グルタチオン、ヘムヌクレオチドリン酸(phophates)および誘導体である。
本発明による核酸成分は、シトシン、グアニン、アデニン、チミン、またはウラシルなどの核酸塩基、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン、およびチミジンなどのヌクレオシド、ならびにアデノシン一リン酸またはアデノシン二リン酸またはアデノシン三リン酸などのヌクレオチドである。
フィード培地は、完全培地と比較し様々な組成を有しうる。それらは、典型的には、アミノ酸、微量元素およびビタミンを含む。フィード培地は、糖類成分をも含みうるが、産生の理由のため、糖類成分が別のフィード中に添加されることもある。
適したフィード培地は、例えば、以下の化合物の1つまたは複数を含みうる:
L−アスパラギン一水和物
L−イソロイシン
L−フェニルアラニン
L−グルタミン酸ナトリウム一水和物
L−ロイシン
L−スレオニン
L−リジン一塩酸塩
L−プロリン
L−セリン
L−アルギニン一塩酸塩
L−ヒスチジン一塩酸塩一水和物
L−メチオニン
L−バリン
L−アスパラギン酸一ナトリウム一水和物
L−トリプトファン
塩化コリン
ミオイノシトール
ニコチンアミド
D(+)パントテン酸カルシウム
ピリドキシン塩酸塩
チアミン塩化物塩酸塩
ビタミンB12(シアノコバラミン)微粉化
ビオチン
葉酸
リボフラビン
硫酸マグネシウム無水物
硫酸銅(II)五水和物
硫酸亜鉛七水和物
1,4−ジアミノブタン二塩酸塩(DIHYDRCHLORIDE)
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物
硫酸カドミウム水和物
塩化マンガン(II)四水和物
塩化ニッケル(II)六水和物
メタケイ酸ナトリウム
メタバナジン酸ナトリウム
塩化スズ(II)二水和物
亜セレン酸ナトリウム(約45%SE)
リン酸二水素ナトリウム一水和物
クエン酸鉄(III)アンモニウム(約18%FE)。
本発明による凍結は、0℃を下回る温度まで冷却することを意味する。
本発明の主旨は、粉末と、粉末が溶解して液体細胞培養培地、例えば完全培地、培地補充物質、培地サブグループまたは所望の均質な濃度の培地成分を有するフィードを生成するような適した溶媒とを単に混合することにより、溶媒に容易に溶解することができる粉末細胞培養培地を提供することである。
粉末細胞培養培地の単純な溶解が、水性溶媒中での乏しい溶解性および/または安定性を有するチロシンまたはシステインなどの物質により複雑化されることが多い。例えばL−チロシンは、25℃の温度で、水に対して0.4g/lの溶解性を有する。これは、1リットルの水に約0.4gのL−チロシンが溶解することを意味する。しかし、細胞培養培地中でのチロシンの要求濃度は、より高いことが多い。システインは、好気的条件下で二量体を形成する傾向がある。この二量体は、シスチンと呼ばれる。また、システインは、細胞培養培地中に存在することが多い銅または鉄などの金属との毒性副産物を形成することが公知である。細胞培養培地中に存在するシステインまたはシスチンは、二量体または毒性副産物を形成しない、本発明による無機エステル誘導体により置換することができる。
チロシンおよび/またはシステインのリン酸化および/またはスルホン化誘導体は、一方では、典型的には、水溶液に対してより高い溶解性を有し、他方では、チロシンおよび/またはシステイン/シスチンの代替物として使用することができ、細胞培養培地の成分として天然アミノ酸であるチロシンおよびシステインと同等に適していることが見出されている。それは、例えば、L−チロシンがL−チロシンの1つまたは複数の無機エステル誘導体により置換された細胞培養培地が、細胞培養においてL−チロシンだけを含む培地と同等の性能を示すことを意味する。
チロシンおよびシステインの一部の無機エステル誘導体が、当技術分野において公知である。ペプチドおよびタンパク質中で、チロシンのリン酸化は、細胞プロセスの広い範囲で重要な役割を果たし、多くのタンパク質酵素をオンおよびオフにし、それにより、それらの機能および活性を変える。
(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸一ナトリウム塩は、CAS番号146900−49−4を有する。R.H.Plimmer Biochemical Journal(1941),35,461〜469頁(非特許文献1)は、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸ならびにその1:1カルシウム塩の合成を開示している。
(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸の二ナトリウム塩、二カリウム塩、一カリウム塩、2:1カルシウム塩、およびマグネシウム塩などの、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸のさらなる新たな誘導体の合成および特徴が、本明細書中に開示される。
本発明によるチロシンの適したリン酸化誘導体は、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸またはその塩などの、フェノール性OH基でリン酸化されたものである。特に好ましい実施形態において、チロシンのリン酸化誘導体は、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸の塩である。
本発明によるチロシンの適したスルホン化誘導体は、(S)−2−アミノ−3−(4−スルホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸またはその塩などの、フェノール性OH基でスルホン化されたものである。特に好ましい実施形態において、チロシンのスルホン化誘導体は、(S)−2−アミノ−3−(4−スルホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸の塩である。
本発明によるシステインの適したリン酸化誘導体は、(S)−2−アミノ−3−ホスホノスルファニル−プロピオン酸またはその塩などの、システインのSH基でリン酸化されたものである。
本発明によるシステインの適したスルホン化誘導体は、(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニル−プロピオン酸またはその塩などの、システインのSH基でスルホン化されたものである。(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニル−プロパン酸とも呼ばれる2−アミノ−3−スルホスルファニル−プロピオン酸、S−スルホ−システインまたはシステイン−S−硫酸およびその塩の合成は、例えば、I.H.Segel and M.J.Johnson,Analytical Biochemistry 5,330〜337頁およびJ.S.Church,D.J.Evans,Spectrochimica Acta Part A 69 (2008)256〜262頁において開示されている。そのナトリウム塩は、さらに、Bachem(スイス)から市販されている。
適した塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩)であり、ナトリウム塩、カリウム塩および遊離酸が好ましく、ナトリウム塩が最も好ましい。
チロシンの無機エステル誘導体の場合において、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸−二ナトリウム塩が非常に良好な溶解性を示す。
チロシンおよびシステインの無機エステル誘導体は、任意の方法により、例えば、酵素的にまたは化学合成により生成することができる。好ましくは、チロシンのリン酸化誘導体は、五酸化リンの存在下でチロシンをリン酸と反応させることにより生成される。次いで、得られた(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸を適した塩基(水酸化ナトリウム、ナトリウムエチラート、水酸化カリウムなど)と反応させて、関連する塩を得ることができる。この合成の反応スキームを図1に示す。
(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸の溶解性は、チロシンの溶解性よりも高い(例3における表1を参照)。チロシンまたはシステイン誘導体の溶解性をさらに高めるために、上記の通り、誘導体を適した塩基と反応させることにより塩を形成することができる。例えば、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸のナトリウム塩は、より高い溶解性を有する(例3における表1を参照)。
本発明による細胞培養培地は、チロシンおよび/またはシステインの無機エステル誘導体の1つまたは複数、例えば、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸の一および二ナトリウム塩の混合物を含むことができる。
完全培地中でチロシンの無機エステル誘導体を使用する場合、培地組成に少量のチロシンを添加することが好ましいことが見出されている。これは、一部の細胞が、チロシンの無機エステル誘導体の取り込みを示さないことに起因しうる。チロシンの無機エステル誘導体は、細胞外で、ホスファターゼにより遊離チロシンに変換される必要がある。典型的には、十分な量のホスファターゼは、細胞培養の開始から2〜5日後に利用可能である。
新たに添加されるフィード培地中でチロシンの無機エステル誘導体を使用する場合、それは、細胞が既にチロシンを含む培地中で2〜5日間を超えて成長させた細胞培養物では、新たに添加されるフィード培地にチロシンを添加する必要性はないことを意味する。
結果的に、好ましい実施形態において、本発明による完全培地は、チロシンの少なくとも1つの無機エステル誘導体と、さらには5〜40%(w/w)のチロシンとを含む。
この効果は、システインの無機エステル誘導体を使用する場合は見出されない。システインの無機エステル誘導体を使用する場合は、システインの添加は必要ではない。システインの無機エステル誘導体は、いかなる場合も、システインまたはシスチンの完全な代替物として使用することができる。
また、予想外に、システインの無機エステル誘導体は、細胞成長および生産性に正の効果を示した。典型的には、システインの無機エステル誘導体を含む培地およびフィードで成長させた細胞は、成長の増大を示す。システインの無機エステル誘導体を使用する場合、経時的な細胞の生存率は、システインを使用した細胞培養と比較して高い。
システインの無機エステル誘導体を使用した場合の組換えタンパク質の産生は、システインを使用した細胞培養物と比較してさらに増加する。
システインの無機エステル誘導体の正の効果は、細胞培養培地中で典型的に使用されるシステインおよび/またはシスチンの量と等しい量を使用することにより得ることができる。
本発明の粉末細胞培養培地は、好ましくは、全ての成分を混合し、それらを粉砕することにより生成される。成分の混合は、粉砕により乾燥粉末細胞培養培地を生成する当業者に公知である。好ましくは、全ての成分を十分に混合し、混合物の全ての部分がほとんど同じ組成を有するようにする。組成の均一性が高いほど、得られた培地の均質な細胞成長に関する品質が良好となる。
粉砕は、粉末細胞培養培地を生成するために適した任意の型のミルを用いて実施することができる。典型的な例は、ボールミル、ピンミル、フィッツミルまたはジェットミルである。ピンミル、フィッツミルまたはジェットミルが好ましく、ピンミルが非常に好ましい。当業者は、そのようなミルを実行する方法を知っている。
約40cmのディスク径の大規模機器ミルは、例えば、典型的には、ピンミルの場合は1分間当たり1〜6500回転で実行し、1分間当たり1〜3000回転が好ましい。
粉砕は、10〜300μmの間、最も好ましくは25〜100μmの間の粒子サイズの粉末が得られる標準粉砕条件下で行うことができる。
好ましくは、粉砕に供する混合物の全ての成分が乾燥している。これは、成分が水を含む場合、成分が結晶水だけを含むが、非結合または非配位水分子が10重量%以下、好ましくは5重量%以下、最も好ましくは2重量%以下であることを意味する。
好ましい実施形態において、粉砕は不活性雰囲気中で実施する。好ましい不活性保護ガスは窒素である。
別の好ましい実施形態において、混合物の全ての成分が粉砕の前に凍結される。粉砕の前の成分の凍結は、0℃を下回る、最も好ましくは−20℃を下回る温度への成分の冷却を確実にする任意の手段により行うことができる。好ましい実施形態において、凍結は液体窒素を用いて行われる。これは、例えば、成分がミルに導入する前に保存される容器中に液体窒素を注ぐことにより、成分を液体窒素で処理することを意味する。好ましい実施形態において、容器はフィーダーである。容器がフィーダーである場合、液体窒素は、好ましくは成分が導入されるフィーダーの側に、またはフィーダーの側に近接して導入される。
典型的には、成分は、2〜20秒間にわたり液体窒素で処理する。
好ましくは、成分の冷却は、ミル中に入る全ての成分が0℃を下回る、最も好ましくは−20℃を下回る温度となるように行われる。
好ましい実施形態において、全ての成分を、混合物がフィーダー中に、最も好ましくは計量スクリューフィーダー中に移された容器中に入れる。フィーダー中では、成分は、フィーダーの種類によってさらに混合されることがあり、追加的に冷却される。次に、凍結混合物はフィーダーからミルに移され、ミル中で粉砕される混合物が、好ましくは、依然として、0℃を下回る、より好ましくは−20℃を下回る温度を有するようにする。
典型的には、混合時間は、フィーダー中の成分の混合物の滞留時間が、1分を超え、好ましくは15〜60分の間であることを意味する。
計量スクリューフィーダーは、投与量スネールとも呼ばれ、典型的には、10〜200回転/分の速度で実行され、好ましくは40〜60回転/分で実行される。
典型的にはミルの温度は−50〜+30℃の間に保たれる。好ましい実施形態において、温度は10℃前後に保たれる。
粉砕の間の酸素レベルは、好ましくは10%(v/v)を下回る。
このプロセスは、例えば、バッチ式または連続的に実行することができる。好ましい実施形態において、本発明によるプロセスは、一定時間にわたり、成分の混合物をフィーダー中に絶えず充填して冷却し、冷却混合物をフィーダーからのミル中に絶えず充填することにより、連続的に行われる。
粉砕された粉末培地を使用する場合は、培地に溶媒、好ましくは、水(最も特に、蒸留水および/もしくは脱イオン水または精製水または注射用水)または水性緩衝液を添加し、培地が溶媒に完全に溶解するまで成分を混合する。
この溶媒は、また、生理食塩水、適したpH範囲(典型的にはpH1.0〜pH10.0の間の範囲)を提供する可溶性の酸または塩基イオン、安定化剤、界面活性剤、保存剤およびアルコールまたは他の極性有機溶媒を含みうる。
pHの調整用の緩衝物質、ウシ胎仔血清、糖などのさらなる物質を細胞培養培地および溶媒の混合物に添加することも可能である。次いで、得られた液体細胞培養培地を成長または維持するための細胞と接触させる。
より高い濃度のチロシン、例えば、10g/lのL−チロシンを、8.5を下回るpHで含む培地組成物は、溶媒と混合した場合、非溶解チロシンに起因する濁りを示しうるが、同濃度のチロシンの無機エステル誘導体を使用した本発明による細胞培養培地は、透明な溶液となる。
本発明は、さらに、
a)バイオリアクターを準備すること、
b)培養する細胞を、本発明による細胞培養培地と混合すること、
c)工程b)の混合物をインキュベートすること
により、細胞を培養する方法を対象とする。
バイオリアクターは、細胞を培養することができる任意の容器またはタンクである。インキュベーションは、典型的には適した温度などの適した条件下で行われる。当業者は、細胞の成長/培養を支持または維持するための適したインキュベーション条件を認識している。
本発明は、また、フィード培地の調製に非常に適していることが見出された。L−チロシンおよびL−システインの可溶性、特にフィード培地に必要な濃度の制約に起因し、これら2つの分子は、典型的には、塩基性pH11.0〜11.5でのストック溶液として調製される。このpHは、全体的なバイオ医薬品バイオ生産プロセスに負の影響を有する。大規模なバイオリアクターにおける混合時間および塩基性pH値は、要するに、細胞への栄養供給に負に影響し、極度の塩基性pH値への曝露により、細胞死をある程度まで加速する。
これは、上清中への細胞内タンパク質の放出をもたらす。これらの放出されたタンパク質は、無傷細胞に付着し、それは、次に、互いに接着し、凝集体を形成する。これらの凝集体は、拡大された質量慣性により破壊され、全体的なバイオ生産プロセスがスキップを開始する。先端速度を低下させることは、選択肢ではない。なぜなら、これらのプロセスは、いずれにせよ、酸素供給の限度の近くで調節されているからである。
結果的に、ここでは、全ての必要とされる成分を1つのフィード中に高濃度で含むフィード培地が必要とされている。また、フィードのpHは、細胞培養に、負に影響しないはずである。
L−チロシンおよびL−システインの無機エステル誘導体は、改善された溶解性および/または安定性を有し、高度に濃縮されたフィード培地中で負の効果がなく、時には8.5を下回るpHでの細胞成長および/または生産性に対する正の効果でさえもなく、それぞれL−チロシンおよびL−システインの代わりに使用することができることが見出されている。
本発明は、このように、粉末培地の形態の、または溶解後は液体培地の形態のフィード培地を対象とする。
得られた液体培地は、5〜40mmol/lの間、好ましくは10〜30mmol/Lの間の濃度のチロシンおよび/またはシステインの無機エステル誘導体を含み、好ましくは8.5またはそれ以下のpHを有する。
好ましい実施形態において、pHは6.8〜8.4の間である。
本発明は、また、
− バイオリアクターに細胞および水性細胞培養培地を充填すること、
− バイオリアクター中で細胞をインキュベートすること、
− バイオリアクター中の細胞のインキュベーションの全時間にわたり連続的に、または
前記インキュベーション時間内の1回もしくは数回、バイオリアクターに細胞培養培地(
この場合はフィード培地である)を添加すること
により、バイオリアクター中で細胞を培養するための流加方法であって、
フィード培地は、好ましくは、pH8.5未満のpHを有し、チロシンおよび/またはシステインの少なくとも1つの無機エステル誘導体を含む、流加プロセスを対象とする。典型的には、フィード培地は、溶媒中に溶解される固形成分を100〜150g/lの間で含む。
チロシンおよび/またはシステインの無機エステル誘導体を使用することにより、全ての必要な供給成分を高濃度で(100〜150g/lの間の全体的な濃度)含むフィード培地を得ることができることが見出されている。2つまたはそれ以上の異なるフィード培地をバイオリアクターに供給する必要がある公知の方法とは対照的に、本発明は、全ての成分を高濃度で含む1つのフィード培地の使用を可能にする培地および方法を提供する。また、本発明によるフィード培地のpHは、典型的には8.5を下回る。細胞培養培地およびフィード中のL−チロシンおよびL−システインの可用性の制約に起因し、これら2つの分子は、典型的には、現況技術に従って、塩基性pH11.0〜11.5でのストック溶液として調製される。このpHは、全体的なバイオ医薬品バイオ生産プロセスに対して負の影響を有する。大規模なバイオリアクターにおける混合時間および塩基性pH値は、要するに、細胞への栄養供給に負に影響し、極度の塩基性pH値への曝露により、細胞死をある程度まで加速する。本発明によるチロシンおよび/またはシステインの無機エステル誘導体を使用する場合、フィード培地のpHは、8.5を下回り保つことができ、それにもかかわらず、10〜13mMの間で、チロシンおよび/またはシステインの無機エステル誘導体がフィード培地中に存在し、100〜150g/lの間の全体的な濃度である。
結果的に、好ましい実施形態において、本発明のプロセスにおいて、バイオリアクターに前記時間内に連続的または1回もしくは数回、インキュベーションの間に添加されるフィード培地は、常に同じ組成を有する。
本発明は、以下の図面および例によりさらに例示されるが、それらに制限されない。
上記および下記に引用する全ての出願、特許、および刊行物、ならびに対応するEP出願EP12007711.0(2012年11月14日に出願)の全開示が、参照により本明細書により組み入れられる。
以下の例は、本発明の実際的な適用を表す。
例1 (S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸およびその塩の合成
文献(P.F.Alewood,R.B.Johns,R.M.Valerio,Synthesis 1983,30.)に従い、L−チロシンから開始して(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸が合成され、続いてその塩に転換される。図1は、二ナトリウム塩の合成の反応スキームを示す。
塩基の化学量論および/または陽イオンを変えることにより、1、2もしくは3倍荷電のチロシンホスホン酸塩または異なる塩をそれぞれ生成することが可能である。
(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸
構造:
Figure 2019030334
合成:100g(0.55mol)のL−チロシンを400g(3.48mol)のオルトリン酸に溶解し、続いて309g(2.13mol)の五酸化リンを冷却下で5回に分けて(protions)添加することによって、反応は実施される。粘性溶液を、80℃で20時間にわたり撹拌し、次に40℃まで冷却し、400mLの水の添加により加水分解する。この溶液を80℃でさらに1時間にわたり撹拌した後、60℃で3.8Lのn−ブタノールをゆっくりと添加する。冷却は約3℃まで継続し、得られた懸濁液を濾過する。得られた無色結晶を、水、エタノール、およびメチルtert−ブチルエーテルで連続的に洗浄し、次に、真空中50℃で乾燥させる。
分析データ:
Figure 2019030334
(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸一ナトリウム塩
構造:
Figure 2019030334
分析データ:
Figure 2019030334
(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸二ナトリウム塩
構造:
Figure 2019030334
合成:50g(191mmol)の(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸を、EtOH(21重量%)中のNaOEtの溶液146mL(402mmol)中に取った後、12.5mLの水を添加する。無色のスラリーを1時間にわたり還流し、0℃まで冷却し、濾過する。無色の生成物をエタノールで洗浄し、次に、真空中50℃で乾燥させる。
分析データ:
Figure 2019030334
(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸一カリウム塩
構造:
Figure 2019030334
分析データ:
Figure 2019030334
(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸2:1カルシウム塩
構造:
Figure 2019030334
分析データ:
Figure 2019030334
(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸2:1マグネシウム塩
構造:
Figure 2019030334
分析データ:
Figure 2019030334
荷電が等しいが溶媒分離のチロシンリン酸塩の間でのH−NMRスペクトルにおけるスペクトルの類似性に起因して、ICP−OES分光分析を実施して、対応する陽イオンを明白に決定した。
例2 (S)−2−アミノ−3−(4−スルホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸およびその塩の合成
文献(*S.Futaki,T.Taike,T.Yagami,T.Ogawa,T.Akita,K.Kitagawa,J:Chem.Soc.Perkin Trans. I 1990,1739.)に従い、L−チロシンから開始して(S)−2−アミノ−3−(4−スルホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸を合成し、続いてその塩への可能な転換を行うことができる。図2は、ナトリウム塩の合成の反応スキームを示す。
塩基の化学量論および/または陽イオンを変えることにより、1もしくは2倍荷電のチロシンホスホン酸塩または異なる塩をそれぞれ生成することが可能である。
例3 水に対する溶解性
水中でのL−チロシン(化合物D1)、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸(化合物D2)、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸ナトリウム塩(化合物D3)、および(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸二ナトリウム塩(化合物D4)の溶解性を、20、25、および30℃で試験する。表1は結果を示す。
Figure 2019030334
例4 複合細胞培養培地に対する溶解性
ダルベッコ改変イーグル培地は、DMEMとしても公知であり、動物細胞を成長させるためにしばしば使用される培地である。DMEMの成分はmg/lで表す:
無機塩:
CaCl(無水):200.00
Fe(NO)・9HO:0.10
KCl:400.00
MgSO(無水):97.67
NaCl:6400.00
NaHPO・HO:125.00
他の成分:
D−グルコース:4500.00
ピルビン酸ナトリウム:110.00
プルロニック:1000.00
Hepes:15mM
アミノ酸:
L−アルギニン・HCl:84.00
L−シスチン・2HCl:63.00
L−グルタミン:584.00
グリシン:30.00
L−ヒスチジンHCl・HO:42.00
L−イソロイシン:105.00
L−ロイシン:105.00
L−リシンHCl:146.00
L−メチオニン:30.00
L−フェニルアラニン:66.00
L−セリン:42.00
L−スレオニン:95.00
L−トリプトファン:16.00
L−チロシン2Na・2HO:248.00
L−バリン:94.00
ビタミン:
D−パントテン酸カルシウム:4.00
塩化コリン:4.00
葉酸:4.00
i−イノシトール:7.20
ナイアシンアミド:4.00
リボフラビン:0.40
チアミン・HCl:4.00。
L−チロシン2Na・2HOが(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸二ナトリウム塩により等モル比で置換される以外は、同じ培地組成が作られる。
両方の培地組成について、全ての成分を混合し、投与量スネールおよびピンミルを含む本発明の方法に従って粉砕する。
得られた粉末細胞培養培地を、脱イオン水に25℃で溶解する。(撹拌機を備えたフラスコ中での)10分間の混合後に溶解性を測定する。リン酸化チロシン誘導体を有する培地組成物は透明な溶液であるが、L−チロシンを含む組成物は透明ではなく、濁りを示す。
細胞培養実験
例5
この実験についてのデータを図3に示す。チロシンがPTyr塩により置き換えられた化学組成が明確な培地中でのバッチ実験。PTyrは、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸塩を意味する。使用されるPTyrの濃度が、培地中のチロシンの濃度と同じであった場合、細胞は成長しなかった(示さず)。CDMに4.5mM(コントロール中での1mMに対し)の濃度で溶解した場合、細胞は成長することができ、コントロールにおけるさらにより高い最大生存細胞密度および全体的に延長した成長(2日間)を示した。後の分析によって、初期成長が、PTyr誘導体合成(合成不純物5%(w/w))に由来する遊離チロシンを通じて可能であることが示された。延長した成長は、遊離チロシンおよびリン酸中でのその代謝的切断後のPTyrの直接的な効果に起因しうる。
例6
この実験についてのデータを図4に示す。システインがS−スルホシステインナトリウム塩(等濃度)により置き換えられた化学組成が明確な培地中でのバッチ実験。基礎として使用したCDM粉末は、システインおよびシスチンが枯渇しており、コントロール条件(1.5および3mM)の場合はシステインが、または試験条件(1.5および3mM)の場合はS−スルホシステインナトリウム塩が復元の間に補充された。システインまたはS−スルホシステインナトリウム塩を含む、化学組成が明確な培地で培養した場合、細胞は、同程度の成長を示し、S−スルホシステインナトリウム塩をシステインの代わりとして使用することができることが示された。
例7
図5および図6は、流加プロセスにおける経時的な生存細胞密度およびIgG濃度を示す。組換えCHO細胞を、化学組成が完全に明確な基礎培地中で成長させ、pH7.0でのリン酸化Tyr塩を含むフィードを3;5、7、9日目に添加する(3%;6%、6%、6%の%v/vの添加)。条件1はPTyr二ナトリウム塩に対応し、条件2はPTyrカリウム塩に対応し、条件3はPTyrマグネシウム塩に対応し、中性PHフィード中での30mMの濃度で可溶化される。これらの場合において、システインは、依然として、pH11で別々のフィードとして添加される。
このプロセスは、37℃、5%CO、撹拌320rpmでの30mLスピンチューブ中で実施される。コントロールについては、現況技術に従い、チロシン2Na+およびシステインは、別々のフィード中のpH11で可溶化し、3;5;7;9日目に、0.3%、0.6%、0.6%、および0.6%の%(V/V)で添加する。結果的に、主なフィードは、システインおよびチロシンを含まず、上記のように添加する。
グルコース濃度を毎日測定し、それに従い、>2g/Lの濃度を維持するように調節する。
3つのホスホTyr塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム)を、成長または力価のいずれに対する負の影響を伴わず、流加プロセスにおける高度に濃縮された中性フィード中で使用し、このように、全体的なプロセスを単純化することができることがわかる。
例8
図7および8は、流加プロセスにおける経時的な生存細胞密度およびIgG濃度を示す。組換えCHO細胞は、化学組成が完全に明確な基礎培地およびpH7.0でS−スルホシステインおよびpTyr2Na+の両方を含むフィード中で成長させる。フィードは、3;5、7、9、14日目に添加する(3%;6%、6%、6%、3%の%v/vの添加)。この工程は、37℃、pH7.0、50%溶解酸素、撹拌140rpmでの1.2Lバイオリアクター中で実施する。コントロールについては、現況技術に従い、チロシン2Na+およびシステインは、別々のフィード中のpH11で可溶化し、3;5;7;9、14日目に、0.3%、0.6%、0.6%、0.6%、0.3%の%(V/V)で加える。グルコース濃度を毎日測定し、それに従い、>2g/Lの濃度を維持するように調節する。
主なフィード中でのS−スルホシステインの使用(ここではpTyr2Na+と組み合わせる)が、コントロールと比較し、拡大成長を誘導し、力価の有意な増加を示すことがわかる。

Claims (12)

  1. 溶媒を用いて溶解することによって、液体培地形状の細胞培養培地の調製に使用される、化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地であって、
    該化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地は、(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニルプロパン酸および/またはその塩を含有しており、
    該化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地を、溶媒を用いて溶解することによって、調製される、前記液体培地形状の細胞培養培地は、6.8〜8.4の間のpHを有し、そして、5〜40mmol/lの間の濃度で、(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニルプロパン酸を含んでいる
    ことを特徴とする、化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地。
  2. (S)−2−アミノ−3−スルホスルファニルプロパン酸の塩は、下記の式の(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニルプロパン酸ナトリウム塩、無水和物:
    Figure 2019030334
    である、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地。
  3. 前記化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地を溶媒中に溶解して得られる、前記液体培地形状の細胞培養培地が、10〜30mmol/lの間の濃度で、(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニルプロパン酸を含む、
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地。
  4. 前記化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地が、(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸および/またはその塩をさらに含有する、
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地。
  5. 前記化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地が、下記の式の(S)−2−アミノ−3−(4−ホスホノオキシ−フェニル)−プロピオン酸二ナトリウム塩、無水和物:
    Figure 2019030334
    をさらに含有する、
    ことを特徴とする、請求項4に記載の化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地を生成する方法であって、
    該方法は、
    a)(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニルプロパン酸および/またはその塩を、該化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地の他の成分と混合する工程;および
    b)工程a)で得られる混合物を、乾燥条件下、粉砕に供する工程
    とを含む
    ことを特徴とする、方法。
  7. 工程b)は、ピンミル、フィッツミルまたはジェットミル中で実施される
    ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. 工程a)で得られる混合物は、粉砕に先立ち、0℃を下回る温度に冷却される
    ことを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
  9. バイオリアクター中における、動物細胞の培養のための、流加プロセスであって、
    該流加プロセスは、下記の工程を含み、
    (i)バイオリアクター中に、動物細胞ならびに水性の化学的に定義される培地を添加する工程;
    (ii)バイオリアクター中で、動物細胞をインキュベーションする工程;
    (iii)バイオリアクター中の動物細胞のインキュベーションの全時間にわたり連続的に、または前記インキュベーション時間内の1回もしくは数回、液体培地形状のフィード培地を、バイオリアクターに供給する工程
    前記液体培地形状のフィード培地は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化学的に定義される乾燥粉末細胞培養培地を、溶媒により溶解することで調製される、液体培地形状のフィード培地である
    ことを特徴とする、流加プロセス。
  10. 前記溶解により得られる、液体培地形状のフィード培地は、6.8〜8.4の間のpHを有し、そして、5〜40mmol/lの間の濃度で、(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニルプロパン酸を含んでいる
    ことを特徴とする、請求項9に記載の流加プロセス。
  11. 前記溶解により得られる、液体培地形状のフィード培地は、10〜30mmol/lの間の濃度で、(S)−2−アミノ−3−スルホスルファニルプロパン酸を含んでいる
    ことを特徴とする、請求項9または10に記載の流加プロセス。
  12. バイオリアクター中において培養される動物細胞は、CHO細胞である
    ことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の流加プロセス。
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