WO2023120637A1 - 動物細胞培養用の組成物 - Google Patents

動物細胞培養用の組成物 Download PDF

Info

Publication number
WO2023120637A1
WO2023120637A1 PCT/JP2022/047331 JP2022047331W WO2023120637A1 WO 2023120637 A1 WO2023120637 A1 WO 2023120637A1 JP 2022047331 W JP2022047331 W JP 2022047331W WO 2023120637 A1 WO2023120637 A1 WO 2023120637A1
Authority
WO
WIPO (PCT)
Prior art keywords
cysteine
free
composition
amino acid
ketoglutarate
Prior art date
Application number
PCT/JP2022/047331
Other languages
English (en)
French (fr)
Inventor
晋也 山出
真志 原田
明梨 田代
ちひろ 辻
拓哉 樋口
聡志 奥谷
文 緒方
俊平 風呂光
雅一 杉山
Original Assignee
味の素株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 味の素株式会社 filed Critical 味の素株式会社
Publication of WO2023120637A1 publication Critical patent/WO2023120637A1/ja

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N1/00Microorganisms, e.g. protozoa; Compositions thereof; Processes of propagating, maintaining or preserving microorganisms or compositions thereof; Processes of preparing or isolating a composition containing a microorganism; Culture media therefor
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N7/00Viruses; Bacteriophages; Compositions thereof; Preparation or purification thereof
    • C12N7/02Recovery or purification
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P21/00Preparation of peptides or proteins
    • C12P21/02Preparation of peptides or proteins having a known sequence of two or more amino acids, e.g. glutathione

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Tropical Medicine & Parasitology (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

動物細胞培養用の組成物およびそれに関連する技術を提供する。動物細胞培養用の組成物であって、 アミノ酸源およびα-ケトグルタル酸を含有し、 下記性質(A)および/または(B)を有する、組成物: (A)前記α-ケトグルタル酸が、α-ケトグルタル酸の塩である; (B)前記アミノ酸源が、フリー体のL-システイン無水和物である。

Description

動物細胞培養用の組成物
 本発明は、動物細胞培養用の組成物およびそれに関連する技術に関するものである。
 動物細胞の培養には、システイン(Cys)等のアミノ酸を含有する培地が広く用いられている。Cysは、培地中で自然酸化し、シスチン((Cys)2)へと変換される。(Cys)2は溶解度が低いため、液体培地中に析出しやすい。このことから、Cysは液体培地の保存不安定性の要因となっている。
 Cysは、ピルビン酸(Pyr)やα-ケトグルタル酸等のα-ケト酸と縮合してチアゾリジン誘導体を形成し得る(非特許文献1)。α-ケト酸の使用により培地が安定化すること、およびチアゾリジン誘導体は動物細胞の培養に有効であることが報告されている(非特許文献1)。
Kuschelewski J et al., Antioxidant effect of thiazolidine molecules in cell culture media improves stability and performance. Biotechnol Prog. 2017 May;33(3):759-770.
 本発明は、動物細胞培養用の組成物およびそれに関連する技術を提供することを課題とする。
 本発明者らは、特定の形態のシステイン等のアミノ酸源と特定の形態のα-ケトグルタル酸の混合粉末において固結やシステイン含有量の減少等の問題が生じること、およびアミノ酸源とα-ケトグルタル酸の形態を調整することで当該問題を解消できることを見出し、本発明を完成させた。
 すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
 動物細胞培養用の組成物であって、
 アミノ酸源およびα-ケトグルタル酸を含有し、
 下記性質(A)および/または(B)を有する、組成物:
(A)前記α-ケトグルタル酸が、α-ケトグルタル酸の塩である;
(B)前記アミノ酸源が、フリー体のL-システイン無水和物である。
[2]
 少なくとも前記性質(A)を有する、前記組成物。
[3]
 粉末である、前記組成物。
[4]
 培地または培地添加物である、前記組成物。
[5]
 前記培地が、基礎培地、流加培地、または灌流培地である、前記組成物。
[6]
 前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、前記組成物。
[7]
 前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸のナトリウム塩またはカリウム塩である、前記組成物。
[8]
 前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸一ナトリウムまたはα-ケトグルタル酸二ナトリウムである、前記組成物。
[9]
 前記アミノ酸源が、システイン、グリシン、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、フェニルアラニン、メチオニン、オルニチン、チロシン、またはグリシン含有ジペプチドである、前記組成物。
[10]
 下記性質(1)~(10)からなる群より選択される1つまたはそれ以上の性質を有する、前記組成物:
(1)前記システインが、フリー体のL-システインまたはL-システイン塩酸塩である;
(2)前記グリシンが、フリー体のグリシンまたはフリー体のグリシル-L-チロシンである;
(3)前記アスパラギンが、フリー体のL-アスパラギンである;
(4)前記グルタミン酸が、L-グルタミン酸一ナトリウムである;
(5)前記リジンが、L-リジン塩酸塩である;
(6)前記フェニルアラニンが、フリー体のL-フェニルアラニンである;
(7)前記メチオニンが、フリー体のL-メチオニンである;
(8)前記オルニチンが、L-オルニチン塩酸塩である;
(9)前記チロシンが、L-チロシン二ナトリウムである;
(10)前記グリシン含有ジペプチドが、フリー体のグリシル-L-チロシンである。
[11]
 下記性質(1a)~(10a)からなる群より選択される1つまたはそれ以上の性質を満たす、前記組成物:
(1a)前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物またはL-システイン塩酸塩一水和物である;
(2a)前記グリシンが、フリー体のグリシンまたはフリー体のグリシル-L-チロシンである;
(3a)前記アスパラギンが、フリー体のL-アスパラギン一水和物である;
(4a)前記グルタミン酸が、L-グルタミン酸一ナトリウム一水和物である;
(5a)前記リジンが、L-リジン塩酸塩である;
(6a)前記フェニルアラニンが、フリー体のL-フェニルアラニンである;
(7a)前記メチオニンが、フリー体のL-メチオニンである;
(8a)前記オルニチンが、L-オルニチン塩酸塩である;
(9a)前記チロシンが、L-チロシン二ナトリウム二水和物である;
(10a)前記グリシン含有ジペプチドが、フリー体のグリシル-L-チロシン二水和物である。
[12]
 前記アミノ酸源が、システインである、前記組成物。
[13]
 前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物またはL-システイン塩酸塩一水和物である、前記組成物。
[14]
 前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物である、前記組成物。
[15]
 前記α-ケトグルタル酸の含有量が、モル比で、前記アミノ酸源の含有量の1~20倍である、前記組成物。
[16]
 目的物質の製造方法であって、
 前記組成物を用いて目的物質生産能を有する動物細胞を培養すること;および
 目的物質を回収すること
 を含む、方法。
[17]
 前記目的物質が、タンパク質またはウイルスである、前記方法。
[18]
 動物細胞の培養方法であって、
 前記組成物を用いて動物細胞を培養すること
 を含む、方法。
[19]
 α-ケトグルタル酸の塩の使用であって、
 アミノ酸源を含有する組成物の固結を防止するための、使用。
[20]
 前記アミノ酸源が、システイン、グリシン、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、フェニルアラニン、メチオニン、オルニチン、チロシン、またはグリシン含有ジペプチドである、前記使用。
[21]
 下記条件(1)~(10)から選択される1つまたはそれ以上の条件を満たす、前記使用:
(1)前記システインが、フリー体のL-システインまたはL-システイン塩酸塩である;
(2)前記グリシンが、フリー体のグリシンまたはフリー体のグリシル-L-チロシンである;
(3)前記アスパラギンが、フリー体のL-アスパラギンである;
(4)前記グルタミン酸が、L-グルタミン酸一ナトリウムである;
(5)前記リジンが、L-リジン塩酸塩である;
(6)前記フェニルアラニンが、フリー体のL-フェニルアラニンである;
(7)前記メチオニンが、フリー体のL-メチオニンである;
(8)前記オルニチンが、L-オルニチン塩酸塩である;
(9)前記チロシンが、L-チロシン二ナトリウムである;
(10)前記グリシン含有ジペプチドが、フリー体のグリシル-L-チロシンである。
[22]
 下記条件(1a)~(10a)から選択される1つまたはそれ以上の条件を満たす、前記使用:
(1a)前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物またはL-システイン塩酸塩一水和物である;
(2a)前記グリシンが、フリー体のグリシンまたはフリー体のグリシル-L-チロシンである;
(3a)前記アスパラギンが、フリー体のL-アスパラギン一水和物である;
(4a)前記グルタミン酸が、L-グルタミン酸一ナトリウム一水和物である;
(5a)前記リジンが、L-リジン塩酸塩である;
(6a)前記フェニルアラニンが、フリー体のL-フェニルアラニンである;
(7a)前記メチオニンが、フリー体のL-メチオニンである;
(8a)前記オルニチンが、L-オルニチン塩酸塩である;
(9a)前記チロシンが、L-チロシン二ナトリウム二水和物である;
(10a)前記グリシン含有ジペプチドが、フリー体のグリシル-L-チロシン二水和物である。
[23]
 前記アミノ酸源が、システインである、前記使用。
[24]
 α-ケトグルタル酸の塩の使用であって、
 システインを含有する組成物におけるシステイン含有量の減少を防止するための、使用。
[25]
 前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、前記使用。
[26]
 前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸のナトリウム塩またはカリウム塩である、前記使用。
[27]
 前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸一ナトリウムまたはα-ケトグルタル酸二ナトリウムである、前記使用。
[28]
 前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物またはL-システイン塩酸塩一水和物である、前記使用。
[29]
 前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物である、前記使用。
[30]
 前記α-ケトグルタル酸の塩が、前記組成物における該α-ケトグルタル酸の塩の含有量が、モル比で、前記組成物における前記アミノ酸源または前記システインの含有量の1~20倍となるように使用される、前記使用。
[31]
 動物細胞培養用の組成物を製造する方法であって、
 前記組成物が、[1]~[15]のいずれかに記載の組成物であり、
 前記アミノ酸源および前記α-ケトグルタル酸を混合することを含む、方法。
L-システインおよびα-ケトグルタル酸の混合粉体を25℃で保管した際の固結の程度を示す図(写真)。 L-システインおよびα-ケトグルタル酸の混合粉体を40℃で保管した際の固結の程度を示す図(写真)。 各種アミノ酸源およびα-ケトグルタル酸の混合粉体の調製直後の固結の程度を示す図(写真)。 各種アミノ酸源およびα-ケトグルタル酸の混合粉体を4℃で保管した際の固結の程度を示す図(写真)。 各種アミノ酸源およびα-ケトグルタル酸の混合粉体を25℃で保管した際の固結の程度を示す図(写真)。 各種アミノ酸源およびα-ケトグルタル酸の混合粉体を40℃で保管した際の固結の程度を示す図(写真)。 L-システイン塩酸塩一水和物およびフリー体のα-ケトグルタル酸の混合粉体を25℃または40℃で保管した際のL-システイン含有量の推移を示す図。 フリー体のL-システイン無水和物およびフリー体のα-ケトグルタル酸の混合粉体を25℃または40℃で保管した際のL-システイン含有量の推移を示す図。 L-システイン塩酸塩一水和物およびα-ケトグルタル酸一ナトリウムの混合粉体を25℃または40℃で保管した際のL-システイン含有量の推移を示す図。 フリー体のL-システイン無水和物およびα-ケトグルタル酸一ナトリウムの混合粉体を25℃または40℃で保管した際のL-システイン含有量の推移を示す図。
<1>本発明の組成物
 本発明の組成物は、アミノ酸源およびα-ケトグルタル酸を含有する組成物である。
 アミノ酸源およびα-ケトグルタル酸を総称して、「有効成分」ともいう。
 本発明の組成物は、例えば、動物細胞の培養に利用することができる。すなわち、本発明の組成物は、動物細胞培養用の組成物であってよい。本発明の組成物は、具体的には、例えば、後述する本発明の方法に記載の態様で動物細胞の培養に利用することができる。
 本発明の組成物は、例えば、培地であってよい。培地としては、基礎培地、流加培地(feed medium)、灌流培地(perfusion medium)が挙げられる。「基礎培地」とは、培養開始時の培地を意味してよい。基礎培地を、「初発培地」ともいう。「流加培地」とは、流加培養において培養開始後に培養系に供給される培地を意味してよい。「灌流培地」とは、連続培養(これは灌流培養に限られない)において培養開始後に培養系に供給される培地を意味してよい。
 本発明の組成物は、例えば、培地添加物であってもよい。「培地添加物」とは、培地に添加して用いられる組成物を意味してよい。培地添加物が添加される培地としては、基礎培地、流加培地、灌流培地が挙げられる。
 本発明の組成物は、下記性質(A)および/または(B)を有する:
(A)前記α-ケトグルタル酸が、α-ケトグルタル酸の塩である;
(B)前記アミノ酸源が、フリー体のL-システイン無水和物である。
 本発明の組成物は、性質(A)と(B)のいずれか一方のみを有していてもよく、性質(A)と(B)の両方を有していてもよい。本発明の組成物は、特に、少なくとも、性質(A)を有していてよい。本発明の組成物は、さらに特には、性質(A)と(B)の両方を有していてよい。
 本発明の組成物が性質(A)および/または(B)を有することにより、本発明の組成物の安定性を向上させることができる、すなわち、本発明の組成物の安定性が向上する効果が得られる。同効果を、「安定性向上効果」ともいう。具体的には、本発明の組成物が性質(A)および/または(B)を有することにより、本発明の組成物が性質(A)および/または(B)を有しない場合と比較して、本発明の組成物の安定性を向上させることができる。
 組成物の安定性の向上としては、組成物の固結の防止が挙げられる。また、本発明の組成物がシステインを含有する場合(具体的には、有効成分であるアミノ酸源としてシステインを選択した場合)、組成物の安定性の向上としては、組成物におけるシステイン含有量の減少の防止も挙げられる。「組成物の固結の防止」とは、組成物の固結の程度が低減されることを意味し、組成物が全く固結しない場合も包含する。「組成物におけるシステイン含有量の減少の防止」とは、組成物におけるシステイン含有量の減少の程度が低減されることを意味し、組成物においてシステイン含有量が全く減少しない場合も包含する。組成物の固結を防止する効果を、「固結防止効果」ともいう。組成物におけるシステイン含有量の減少を防止する効果を、「システイン減少防止効果」ともいう。すなわち、本発明の組成物が性質(A)および/または(B)を有することにより、固結防止効果および/またはシステイン減少防止効果が得られてよい。すなわち、本発明の組成物が性質(A)および/または(B)を有することにより、組成物の固結が防止されてよく、且つ/又は、組成物におけるシステイン含有量の減少が防止されてよい。具体的には、本発明の組成物が性質(A)および/または(B)を有することにより、本発明の組成物が性質(A)および/または(B)を有しない場合と比較して、組成物の固結が防止されてよく、且つ/又は、組成物におけるシステイン含有量の減少が防止されてよい。
 例えば、本発明の組成物が性質(A)と(B)のいずれか一方のみを有することにより、本発明の組成物が性質(A)と(B)のいずれも有しない場合と比較して、本発明の組成物の安定性が向上してよい。本発明の組成物が性質(A)と(B)のいずれか一方のみを有することにより、本発明の組成物が性質(A)と(B)のいずれも有しない場合と比較して、特に、組成物の固結が防止されてよい。
 例えば、本発明の組成物が性質(A)と(B)の両方を有することにより、本発明の組成物が性質(A)と(B)のいずれも有しない場合と比較して、本発明の組成物の安定性が向上してよい。本発明の組成物が性質(A)と(B)の両方を有することにより、本発明の組成物が性質(A)と(B)のいずれも有しない場合と比較して、特に、組成物の固結が防止されてよく、且つ/又は、組成物におけるシステイン含有量の減少が防止されてよい。本発明の組成物が性質(A)と(B)の両方を有することにより、本発明の組成物が性質(A)と(B)のいずれも有しない場合と比較して、さらに特には、組成物の固結が防止されてよく、且つ、組成物におけるシステイン含有量の減少が防止されてよい。
 例えば、本発明の組成物が性質(A)と(B)の両方を有することにより、本発明の組成物が性質(A)と(B)のいずれか一方のみを有する場合と比較して、本発明の組成物の安定性が向上してよい。本発明の組成物が性質(A)と(B)の両方を有することにより、本発明の組成物が性質(A)と(B)のいずれか一方のみを有する場合と比較して、特に、組成物の固結が防止されてよく、且つ/又は、組成物におけるシステイン含有量の減少が防止されてよい。本発明の組成物が性質(A)と(B)の両方を有することにより、本発明の組成物が性質(A)と(B)のいずれか一方のみを有する場合と比較して、さらに特には、組成物の固結が防止されてよく、且つ、組成物におけるシステイン含有量の減少が防止されてよい。
 本発明の組成物が性質(A)を有しない場合としては、α-ケトグルタル酸がフリー体のα-ケトグルタル酸である場合が挙げられる。本発明の組成物が性質(B)を有しない場合としては、アミノ酸源がフリー体のL-システイン以外のシステインである場合が挙げられ、具体的には、アミノ酸源がL-システイン塩酸塩一水和物である場合やアミノ酸源がL-システイン塩酸塩無水和物である場合が挙げられる。
 安定性向上効果は、所定の条件で保管後の本発明の組成物における該当パラメータを、本発明の組成物が性質(A)および/または(B)を有する場合と有しない場合とで比較することにより確認できる。
 すなわち、固結防止効果は、所定の条件で保管後の本発明の組成物の固結の程度を、本発明の組成物が性質(A)および/または(B)を有する場合と有しない場合とで比較することにより確認できる。固結の程度は、例えば、肉眼による目視により確認できる。また、固結の程度は、例えば、組成物の粒子径(例えば、平均粒子径D50)を指標として確認できる。すなわち、組成物の粒子径(例えば、平均粒子径D50)が小さい程、固結の程度が低いと判断してよい。「平均粒子径D50」とは、粒径加積曲線のグラフで通過質量百分率50%に相当する粒子径を意味してよい。平均粒子径D50は、例えば、ロータップ型ふるい振盪機により測定することができる。
 また、システイン減少防止効果は、所定の条件で保管後の本発明の組成物におけるシステイン含有量の減少の程度を、本発明の組成物が性質(A)および/または(B)を有する場合と有しない場合とで比較することにより確認できる。システイン含有量の減少の程度は、保管前後での本発明の組成物におけるシステイン含有量の比率を指標として確認できる。すなわち、保管前の本発明の組成物におけるシステイン含有量に対する保管後の本発明の組成物におけるシステイン含有量の比率が大きい程、システイン含有量の減少の程度が低いと判断してよい。システイン含有量は、例えば、WO2021/060517Aに記載の方法により測定することができる。
 上記保管にかかる所定の条件としては、本発明の組成物が性質(A)と(B)のいずれも有しない場合に固結および/またはシステイン含有量の減少が認められる条件が挙げられる。上記保管にかかる所定の条件として、具体的には、遮光条件での、25℃で3日間、25℃で7日間、25℃で14日間、25℃で21日間、40℃で3日間、40℃で7日間、40℃で14日間、40℃で21日間の保管が挙げられる。保管は、例えば、吸湿剤の存在下で実施してよい。吸湿剤としては、シリカゲル、生石灰(酸化カルシウム)、塩化カルシム、ゼオライトが挙げられる。吸湿剤としては、特に、シリカゲルが挙げられる。また、保管は、例えば、吸湿機能を有する包装材料内で実施してよい。吸湿機能を有する包装材料としては、吸湿フィルムを有するアルミパウチが挙げられる。すなわち、上記保管にかかる所定の条件として、より具体的には、吸湿剤の存在下または吸湿機能を有する包装材料内における、遮光条件での、25℃で3日間、25℃で7日間、25℃で14日間、25℃で21日間、40℃で3日間、40℃で7日間、40℃で14日間、40℃で21日間の保管が挙げられる。安定性向上効果(例えば、固結防止効果および/またはシステイン減少防止効果)は、例えば、上記例示した条件から選択される1つまたはそれ以上の条件で確認されればよい。
 「アミノ酸源」とは、アミノ酸およびそれを生じる化合物の総称である。アミノ酸源は、安定性向上効果が得られる限り、特に制限されない。アミノ酸源は、例えば、フリー体のα-ケトグルタル酸との混合物において固結が生じるものであってよい。アミノ酸源とフリー体のα-ケトグルタル酸の混合物において固結が生じるか否かは、所定の条件で保管後の当該混合物における固結の有無を確認することにより確認できる。当該保管にかかる所定の条件としては、上述した安定性向上効果の確認における保管にかかる所定の条件についての記載を準用できる。
 アミノ酸源としては、グリシン源、アラニン源、バリン源、ロイシン源、イソロイシン源、システイン源、メチオニン源、フェニルアラニン源、チロシン源、トリプトファン源、ヒスチジン源、リジン源、アルギニン源、セリン源、トレオニン源、アスパラギン酸源、グルタミン酸源、アスパラギン源、グルタミン源、プロリン源、オルニチン源が挙げられる。すなわち、アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、プロリン、オルニチンが挙げられる。アミノ酸源としては、特に、システイン源、グリシン源、アスパラギン源、グルタミン酸源、リジン源、フェニルアラニン源、メチオニン源、オルニチン源、チロシン源が挙げられる。すなわち、アミノ酸としては、特に、システイン、グリシン、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、フェニルアラニン、メチオニン、オルニチン、チロシンが挙げられる。アミノ酸源として、さらに特には、システイン源、グリシン源、アスパラギン源、グルタミン酸源、リジン源、フェニルアラニン源、メチオニン源が挙げられる。すなわち、アミノ酸として、さらに特には、システイン、グリシン、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、フェニルアラニン、メチオニンが挙げられる。アミノ酸源として、さらに特には、システイン源が挙げられる。すなわち、アミノ酸として、さらに特には、システインが挙げられる。アミノ酸を生じる化合物としては、加水分解によりアミノ酸を生じる化合物が挙げられる。加水分解によりアミノ酸を生じる化合物としては、アミノ酸を構成要素として含むペプチドが挙げられる。ペプチドとしては、ジペプチドやトリペプチドが挙げられる。ペプチドとしては、特に、グリシンを構成要素として含むジペプチド等の、グリシンを構成要素として含むペプチドが挙げられる。グリシンを構成要素として含むペプチドを、「グリシン含有ペプチド」ともいう。グリシン含有ペプチドにおけるグリシンの位置は、特に制限されない。グリシン含有ペプチドにおけるグリシンの位置は、例えば、N末端、C末端、またはそれ以外の位置であってよい。グリシン含有ペプチドにおけるグリシンの位置は、特に、N末端であってよい。グリシン含有ジペプチドとしては、特に、グリシンと上記例示したいずれかのアミノ酸とのジペプチドが挙げられる。グリシン含有ジペプチドとして、さらに特には、グリシルチロシンが挙げられる。グリシルチロシンは、グリシン源の一例であり、且つ、チロシン源の一例でもある。アミノ酸源(これは、例えば、フリー体のα-ケトグルタル酸との混合物において固結が生じるものであってよい)としては、特に、システイン、グリシン、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、フェニルアラニン、メチオニン、オルニチン、チロシン、グリシン含有ジペプチドが挙げられる。アミノ酸源(これは、例えば、フリー体のα-ケトグルタル酸との混合物において固結が生じるものであってよい)として、さらに特には、システイン、グリシン、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、フェニルアラニン、メチオニン、グリシン含有ジペプチドが挙げられる。また、システイン減少防止効果を得る場合、アミノ酸源としては、特に、システインが挙げられる。
 アミノ酸源としては、1種のアミノ酸源を用いてもよく、2種またはそれ以上のアミノ酸源を組み合わせて用いてもよい。アミノ酸源としては、例えば、システイン源と他の1種またはそれ以上のアミノ酸源とを組み合わせて用いてもよい。アミノ酸源としては、具体的には、例えば、システイン源と、グリシン源、アスパラギン源、グルタミン酸源、リジン源、フェニルアラニン源、メチオニン源、オルニチン源、およびチロシン源から選択される1種またはそれ以上のアミノ酸源とを組み合わせて用いてもよい。アミノ酸源としては、具体的には、例えば、システイン源と、グリシン源、アスパラギン源、グルタミン酸源、リジン源、フェニルアラニン源、およびメチオニン源から選択される1種またはそれ以上のアミノ酸源とを組み合わせて用いてもよい。
 アミノ酸は、例えば、L体であってよい。すなわち、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、プロリン、およびオルニチンは、それぞれ、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-システイン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-チロシン、L-トリプトファン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-アルギニン、L-セリン、L-トレオニン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-アスパラギン、L-グルタミン、L-プロリン、およびL-オルニチンであってよい。また、例えば、グリシルチロシンは、グリシル-L-チロシンであってよい。
 アミノ酸源が塩を形成し得る場合、アミノ酸源は、フリー体として使用されてもよく、塩として使用されてもよく、それらの組み合わせとして使用されてもよい。すなわち、「アミノ酸源」という用語は、特記しない限り、フリー体のアミノ酸源、もしくはその塩、またはそれらの組み合わせを意味してよい。例えば、「システイン」という用語は、特記しない限り、フリー体のシステイン、もしくはその塩、またはそれらの組み合わせを意味してよい。「フリー体」とは、塩を形成してない形態を意味する。塩は、動物細胞の培養に利用できるものであれば、特に制限されない。例えば、カルボキシル基等の酸性基に対する塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロヘキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。また、アミノ基等の塩基性基に対する塩としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩が挙げられる。塩としては、1種の塩を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩を組み合わせて用いてもよい。例えば、システイン、リジン、またはオルニチンの塩としては、特に、無機酸との塩が挙げられる。システイン、リジン、またはオルニチンの塩として、さらに特には、塩酸塩が挙げられる。また、例えば、チロシンまたはグルタミン酸の塩としては、特に、アルカリ金属との塩が挙げられる。チロシンまたはグルタミン酸の塩として、さらに特には、ナトリウム塩が挙げられる。チロシンのナトリウム塩としては、二ナトリウム塩が挙げられる。グルタミン酸のナトリウム塩としては、一ナトリウム塩が挙げられる。また、アミノ酸源が塩を形成し得る場合、アミノ酸源は、無水和物として使用されてもよく、水和物として使用されてもよく、それらの組み合わせとして使用されてもよい。すなわち、「アミノ酸源」という用語(例えば、「フリー体のアミノ酸源」や「アミノ酸源の塩」)は、特記しない限り、無水和物および水和物を包含してよい。例えば、「システイン」という用語(例えば、「フリー体のシステイン」や「システインの塩」)は、特記しない限り、無水和物および水和物を包含してよい。例えば、システイン、アスパラギン、またはグルタミン酸の水和物としては、一水和物が挙げられる。また、例えば、グリシルチロシンの水和物としては、二水和物が挙げられる。アミノ酸源は、本発明の組成物の使用時(例えば、動物細胞の培養時)にはイオン等の使用態様に応じた形態をとっていてよい。
 システイン源(具体的には、システイン)としては、特に、L-システインが挙げられる。L-システインとしては、特に、フリー体のL-システインやL-システイン塩酸塩が挙げられる。フリー体のL-システインとしては、特に、フリー体のL-システイン無水和物が挙げられる。L-システイン塩酸塩としては、特に、L-システイン塩酸塩一水和物が挙げられる。すなわち、システイン源として、さらに特には、フリー体のL-システイン無水和物やL-システイン塩酸塩一水和物が挙げられる。システイン源として、さらに特には、フリー体のL-システイン無水和物が挙げられる。なお、性質(B)を選択した場合、システイン源は、フリー体のL-システイン無水和物である。
 グリシン源(具体的には、グリシンまたはそれを構成要素として含むジペプチド)としては、特に、グリシンやグリシル-L-チロシンが挙げられる。グリシンとしては、特に、フリー体のグリシンが挙げられる。グリシル-L-チロシンとしては、特に、フリー体のグリシル-L-チロシンが挙げられる。フリー体のグリシル-L-チロシンとしては、特に、フリー体のグリシル-L-チロシン二水和物が挙げられる。
 アスパラギン源(具体的には、アスパラギン)としては、特に、L-アスパラギンが挙げられる。L-アスパラギンとしては、特に、フリー体のL-アスパラギンが挙げられる。フリー体のL-アスパラギンとしては、特に、フリー体のL-アスパラギン一水和物が挙げられる。
 グルタミン酸源(具体的には、グルタミン酸)としては、特に、L-グルタミン酸が挙げられる。L-グルタミン酸としては、特に、L-グルタミン酸一ナトリウムが挙げられる。L-グルタミン酸一ナトリウムとしては、特に、L-グルタミン酸一ナトリウム一水和物が挙げられる。
 リジン源(具体的には、リジン)としては、特に、L-リジンが挙げられる。L-リジンとしては、特に、L-リジン塩酸塩が挙げられる。
 フェニルアラニン源(具体的には、フェニルアラニン)としては、特に、L-フェニルアラニンが挙げられる。L-フェニルアラニンとしては、特に、フリー体のL-フェニルアラニンが挙げられる。
 メチオニン源(具体的には、メチオニン)としては、特に、L-メチオニンが挙げられる。L-メチオニンとしては、特に、フリー体のL-メチオニンが挙げられる。
 オルニチン源(具体的には、オルニチン)としては、特に、L-オルニチンが挙げられる。L-オルニチンとしては、特に、L-オルニチン塩酸塩が挙げられる。
 チロシン源(具体的には、チロシンまたはそれを構成要素として含むジペプチド)としては、特に、L-チロシンやグリシル-L-チロシンが挙げられる。L-チロシンとしては、特に、フリー体のL-チロシンやL-チロシン二ナトリウムが挙げられる。L-チロシン二ナトリウムとしては、特に、L-チロシン二ナトリウム二水和物が挙げられる。グリシル-L-チロシンとしては、特に、フリー体のグリシル-L-チロシンが挙げられる。フリー体のグリシル-L-チロシンとしては、特に、フリー体のグリシル-L-チロシン二水和物が挙げられる。
 すなわち、本発明の組成物は、例えば、下記性質(1)~(10)からなる群より選択される1つまたはそれ以上の性質を有してよい:
(1)前記システインが、フリー体のL-システインまたはL-システイン塩酸塩である;
(2)前記グリシンが、フリー体のグリシンまたはフリー体のグリシル-L-チロシンである;
(3)前記アスパラギンが、フリー体のL-アスパラギンである;
(4)前記グルタミン酸が、L-グルタミン酸一ナトリウムである;
(5)前記リジンが、L-リジン塩酸塩である;
(6)前記フェニルアラニンが、フリー体のL-フェニルアラニンである;
(7)前記メチオニンが、フリー体のL-メチオニンである;
(8)前記オルニチンが、L-オルニチン塩酸塩である;
(9)前記チロシンが、L-チロシン二ナトリウムである;
(10)前記グリシン含有ジペプチドが、フリー体のグリシル-L-チロシンである。
 また、本発明の組成物は、例えば、下記性質(1a)~(10a)からなる群より選択される1つまたはそれ以上の性質を有してよい:
(1a)前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物またはL-システイン塩酸塩一水和物である;
(2a)前記グリシンが、フリー体のグリシンまたはフリー体のグリシル-L-チロシンである;
(3a)前記アスパラギンが、フリー体のL-アスパラギン一水和物である;
(4a)前記グルタミン酸が、L-グルタミン酸一ナトリウム一水和物である;
(5a)前記リジンが、L-リジン塩酸塩である;
(6a)前記フェニルアラニンが、フリー体のL-フェニルアラニンである;
(7a)前記メチオニンが、フリー体のL-メチオニンである;
(8a)前記オルニチンが、L-オルニチン塩酸塩である;
(9a)前記チロシンが、L-チロシン二ナトリウム二水和物である;
(10a)前記グリシン含有ジペプチドが、フリー体のグリシル-L-チロシン二水和物である。
 前記性質(1a)~(10a)は、それぞれ、前記(1)~(10)の一例であり得る。
 アミノ酸源としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。アミノ酸源の製造方法は特に制限されない。アミノ酸源は、例えば、化学合成、酵素反応、発酵法、抽出法、またはそれらの組み合わせにより製造することができる。アミノ酸源は、具体的には、例えば、アミノ酸源の生産能を有する微生物を培養し、培養液または菌体からアミノ酸源を回収することで製造することができる。アミノ酸源は、所望の程度に精製されていてもよく、そうでなくてもよい。すなわち、アミノ酸源としては、精製品を用いてもよいし、アミノ酸源を含有する素材を用いてもよい。アミノ酸源としては、例えば、アミノ酸源の含有量が1%(w/w)以上、5%(w/w)以上、10%(w/w)以上、30%(w/w)以上、50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上の素材を用いてもよい。
 α-ケトグルタル酸は、フリー体として使用されてもよく、塩として使用されてもよく、それらの組み合わせとして使用されてもよい。すなわち、「α-ケトグルタル酸」という用語は、特記しない限り、フリー体のα-ケトグルタル酸、もしくはその塩、またはそれらの組み合わせを意味してよい。α-ケトグルタル酸の塩については、アミノ酸源の塩における酸性基に対する塩についての記載を準用できる。α-ケトグルタル酸の塩としては、特に、アルカリ金属との塩やアルカリ土類金属との塩が挙げられる。α-ケトグルタル酸の塩として、さらに特には、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属との塩が挙げられる。α-ケトグルタル酸の塩として、さらに特には、ナトリウム塩が挙げられる。α-ケトグルタル酸のナトリウム塩としては、一ナトリウム塩や二ナトリウム塩が挙げられる。α-ケトグルタル酸のナトリウム塩としては、特に、一ナトリウム塩が挙げられる。α-ケトグルタル酸のカリウム塩としては、一カリウム塩や二カリウム塩が挙げられる。また、α-ケトグルタル酸は、無水和物として使用されてもよく、水和物として使用されてもよく、それらの組み合わせとして使用されてもよい。すなわち、「α-ケトグルタル酸」という用語(例えば、「フリー体のα-ケトグルタル酸」や「α-ケトグルタル酸の塩」)は、特記しない限り、無水和物および水和物を包含してよい。α-ケトグルタル酸の水和物としては、一水和物や二水和物が挙げられる。α-ケトグルタル酸(特にα-ケトグルタル酸の塩)として、具体的には、α-ケトグルタル酸一ナトリウム無水和物やα-ケトグルタル酸二ナトリウム二水和物が挙げられる。なお、性質(A)を選択した場合、α-ケトグルタル酸は、α-ケトグルタル酸の塩である。α-ケトグルタル酸は、本発明の組成物の使用時(例えば、動物細胞の培養時)にはイオン等の使用態様に応じた形態をとっていてよい。
 α-ケトグルタル酸としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。α-ケトグルタル酸の製造方法は特に制限されない。α-ケトグルタル酸は、例えば、化学合成、酵素反応、発酵法、抽出法、またはそれらの組み合わせにより製造することができる。α-ケトグルタル酸は、具体的には、例えば、α-ケトグルタル酸の生産能を有する微生物を培養し、培養液または菌体からα-ケトグルタル酸を回収することで製造することができる。α-ケトグルタル酸は、所望の程度に精製されていてもよく、そうでなくてもよい。すなわち、α-ケトグルタル酸としては、精製品を用いてもよいし、α-ケトグルタル酸を含有する素材を用いてもよい。α-ケトグルタル酸としては、例えば、α-ケトグルタル酸の含有量が1%(w/w)以上、5%(w/w)以上、10%(w/w)以上、30%(w/w)以上、50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上の素材を用いてもよい。
 本発明の組成物は、有効成分からなるものであってもよく、有効成分以外の成分を含有していてもよい。有効成分以外の成分を、「追加成分」ともいう。
 追加成分は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限されない。追加成分は、例えば、動物細胞の種類や本発明の組成物の使用態様等の諸条件に応じて適宜選択できる。追加成分としては、培地成分が挙げられる。
 培地成分としては、炭素源、アミノ酸源、ビタミン、無機成分、pH緩衝剤、成長因子、血清、血清アルブミン、選択薬剤、遺伝子発現誘導剤が挙げられる。炭素源としては、グルコース等の糖類が挙げられる。アミノ酸源については、上述した通りである。追加成分であるアミノ酸源は、例えば、フリー体のα-ケトグルタル酸との混合物において固結が生じるものであってもよく、そうでなくてもよい。追加成分であるアミノ酸源としては、有効成分であるアミノ酸源として選択されなかったものを選択してよい。例えば、有効成分であるアミノ酸源としてシステインを選択した場合に、追加成分としてシステイン以外の1種またはそれ以上のアミノ酸源を選択してよい。追加成分であるアミノ酸源としては、特に、チロシン源が挙げられる。ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、およびビタミンKやそれらの前駆体が挙げられる。無機成分としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、各種微量元素(例えば、Co、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、Se、Si、Ni、Bi、V、およびZn)が挙げられる。pH緩衝剤としては、炭酸水素ナトリウム、リン酸塩、HEPESが挙げられる。成長因子としては、インスリン、IGF-1、FGFが挙げられる。
 追加成分が塩を形成し得る場合、追加成分は、フリー体として使用されてもよく、塩として使用されてもよく、それらの組み合わせとして使用されてもよい。すなわち、「追加成分」という用語は、特記しない限り、フリー体の追加成分、もしくはその塩、またはそれらの組み合わせを意味してよい。追加成分の塩については、アミノ酸源の塩やα-ケトグルタル酸の塩についての記載を準用できる。また、追加成分が水和物を形成し得る場合、追加成分は、無水和物として使用されてもよく、水和物として使用されてもよく、それらの組み合わせとして使用されてもよい。すなわち、「追加成分」という用語(例えば、「フリー体の追加成分」や「追加成分の塩」)は、特記しない限り、無水和物および水和物を包含してよい。追加成分の水和物については、アミノ酸源の水和物やα-ケトグルタル酸の水和物についての記載を準用できる。追加成分は、使用時にはイオン等の使用態様に応じた形態をとっていてよい。
 一態様において、本発明の組成物が性質(A)を有することにより、アミノ酸源等の追加成分の存在に起因して生じ得る本発明の組成物の固結が防止されてもよい。
 追加成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
 本発明の組成物は、例えば、有効成分および任意で追加成分を適宜混合することにより製造することができる。すなわち、本発明の組成物の製造方法としては、有効成分を混合する(すなわち、アミノ酸源およびα-ケトグルタル酸を混合する)ことを含む、本発明の組成物の製造方法が挙げられる。各有効成分は、他の有効成分との混合前に、予め追加成分と混合されていてもよく、いなくてもよい。すなわち、「有効成分を混合する」という表現における各有効成分は、予め追加成分と混合されたものであってもよい。また、有効成分の混合後に、さらに、追加成分が混合されてもよい。
 本発明の組成物は、例えば、適宜製剤化されていてもよい。製剤化にあたっては、添加剤を適宜使用してよい。添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤が挙げられる。添加剤は、例えば、本発明の組成物の形状等の諸条件に応じて、適宜選択できる。
 本発明の組成物は、例えば、粉末、フレーク、錠剤等の固体形状であってよい。本発明の組成物は、特に、粉末であってよい。例えば、少なくとも、固結防止効果を得る場合には、本発明の組成物は粉末であってよい。
 本発明の組成物における各成分(すなわち、有効成分および任意で追加成分)の含有量や含有量比は、安定性向上効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の組成物における各成分の含有量や含有量比は、動物細胞の種類や本発明の組成物の使用態様等の諸条件に応じて適宜設定できる。
 本発明の組成物における有効成分の総含有量は、0%(w/w)より多く、且つ、100%(w/w)以下である。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、例えば、1%(w/w)以上、2%(w/w)以上、5%(w/w)以上、10%(w/w)以上、20%(w/w)以上、30%(w/w)以上、50%(w/w)以上、または70%(w/w)以上、であってもよく、100%(w/w)以下、99.9%(w/w)以下、90%(w/w)以下、70%(w/w)以下、50%(w/w)以下、30%(w/w)以下、20%(w/w)以下、10%(w/w)以下、または5%(w/w)以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、具体的には、例えば、1~10%(w/w)、10~30%(w/w)、30~50%(w/w)、50~70%(w/w)、70~90%(w/w)、または70~100%(w/w)であってもよい。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、具体的には、例えば、1~100%(w/w)、5~90%(w/w)、または10~70%(w/w)であってもよい。
 本発明の組成物におけるα-ケトグルタル酸の含有量は、例えば、モル比で、本発明の組成物におけるアミノ酸源(例えばシステイン)の含有量の、0.5倍以上、1倍以上、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、5.5倍以上、6倍以上、6.5倍以上、7倍以上、7.5倍以上、8倍以上、8.5倍以上、9倍以上、9.5倍以上、または10倍以上であってもよく、20倍以下、15倍以下、12倍以下、10倍以下、9.5倍以下、9倍以下、8.5倍以下、8倍以下、7.5倍以下、7倍以下、6.5倍以下、6倍以下、5.5倍以下、5倍以下、4.5倍以下、4倍以下、3.5倍以下、3倍以下、2.5倍以下、または2倍以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。本発明の組成物におけるα-ケトグルタル酸の含有量は、具体的には、例えば、モル比で、本発明の組成物におけるアミノ酸源(例えばシステイン)の含有量の、0.5~2倍、1~2倍、1.5~2倍、2~2.5倍、2.5~3倍、3~3.5倍、3.5~4倍、4~4.5倍、4.5~5倍、5~5.5倍、5.5~6倍、6~6.5倍、6.5~7倍、7~7.5倍、7.5~8倍、8~8.5倍、8.5~9倍、9~9.5倍、9.5~10倍、10~12倍、10~15倍、または10~20倍であってもよい。本発明の組成物におけるα-ケトグルタル酸の含有量は、具体的には、例えば、モル比で、本発明の組成物におけるアミノ酸源(例えばシステイン)の含有量の、1~20倍、2~15倍、3~10倍、または4~7倍であってもよい。なお、有効成分として2種またはそれ以上のアミノ酸源を用いる場合、ここでいう「アミノ酸源の含有量」とは、それらアミノ酸源の含有量の総量を意味する。しかし、有効成分として2種またはそれ以上のアミノ酸源を用いる場合、本発明の組成物におけるα-ケトグルタル酸の含有量は、それらアミノ酸源の含有量に対してそれぞれ独立に、上記例示したα-ケトグルタル酸の含有量の範囲に設定することもできる。
 本発明の組成物における各有効成分の含有量は、例えば、上述した本発明の組成物における有効成分の総含有量と有効成分の含有量比が得られるように設定することができる。
 本発明の組成物における各成分(すなわち、有効成分および任意で追加成分)の含有量は、例えば、後述する本発明の方法における培地中の各成分の濃度が得られるように設定することができる。
 有効成分は、互いに混合された状態で本発明の組成物に含有される。追加成分は、有効成分と混合されて本発明の組成物に含有されていてもよく、有効成分とは別個に本発明の組成物に含有されていてもよい。本発明の組成物が2種またはそれ以上の追加成分を含有する場合、それら追加成分は、互いに混合されて本発明の組成物に含有されていてもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、本発明の組成物に含有されていてもよい。例えば、本発明の組成物は、有効成分のパッケージと追加成分のパッケージのセットとして提供されてもよい。このような場合、セットに含まれる成分は使用時に適宜併用することができる。また、本発明の組成物は、パッケージ内(具体的には、少なくとも有効成分のパッケージ内)に吸湿剤を封入した形態で提供されてもよい。また、本発明の組成物(具体的には、少なくとも有効成分)は、吸湿機能を有する包装材料に封入した形態で提供されてもよい。
 なお、有効成分の量(例えば含有量(濃度)や使用量)は、有効成分を含有する素材を用いる場合にあっては、当該素材中の有効成分そのものの量に基づいて算出されるものとする。また、有効成分の量(例えば含有量(濃度)や使用量)は、有効成分が塩または水和物を形成している場合にあっては、塩または水和物の質量を等モルのフリー体の無水和物の質量に換算した値に基づいて算出されるものとする。
<2>本発明の方法
 本発明の方法は、本発明の組成物を利用することを含む方法である。
 本発明の組成物は、例えば、動物細胞の培養に利用することができる。すなわち、本発明の方法は、動物細胞の培養方法であって、本発明の組成物を用いて動物細胞を培養することを含む方法であってよい。
 一態様においては、動物細胞の培養により目的物質が製造されてもよい。すなわち、動物細胞が目的物質生産能を有する場合、同細胞の培養により目的物質を製造することができる。すなわち、本発明の方法(具体的には、動物細胞の培養方法)の一態様は、目的物質の製造方法であって、本発明の組成物を用いて目的物質生産能を有する動物細胞を培養すること、および目的物質を回収することを含む方法であってもよい。
 目的物質は、動物細胞により製造できるものであれば、特に制限されない。目的物質としては、タンパク質やウイルスが挙げられる。目的物質として製造されるタンパク質を、「目的タンパク質」ともいう。目的物質として製造されるウイルスを、「目的ウイルス」ともいう。
 動物細胞は、特に制限されない。動物細胞は、例えば、動物細胞の用途等の諸条件に応じて適宜選択できる。例えば、動物細胞を目的タンパク質の製造に利用する場合、動物細胞は、目的タンパク質を発現できるものであれば、特に制限されない。動物細胞を、「宿主」、「発現宿主」、または「宿主細胞」ともいう。動物としては、哺乳類、鳥類、両生類、昆虫が挙げられる。動物としては、特に、哺乳類が挙げられる。哺乳類としては、げっ歯類、霊長類、その他の各種哺乳類が挙げられる。げっ歯類としては、ハムスター、マウス、ラット、モルモットが挙げられる。ハムスターとしては、チャイニーズハムスターが挙げられる。霊長類としては、ヒト、サル、チンパンジーが挙げられる。サルとしては、アフリカミドリザルが挙げられる。その他の哺乳類としては、イヌが挙げられる。鳥類としては、ニワトリが挙げられる。両生類としては、アフリカツメガエルが挙げられる。昆虫としては、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)が挙げられる。また、動物細胞が由来する組織または細胞は、特に制限されない。動物細胞が由来する組織または細胞としては、卵巣、腎臓、副腎、舌上皮、嗅上皮、松果体、甲状腺、メラノサイト、皮膚、脾臓、肝臓、肺、膵臓、子宮、胃、結腸、小腸、大腸、膀胱、前立腺、精巣、胸腺、筋肉、結合組織、骨、軟骨、血管組織、血液(臍帯血を含む)、骨髄、心臓、眼、脳、神経組織が挙げられる。動物細胞は、分化していてもよく、していなくてもよい。動物細胞として、具体的には、生殖細胞、体細胞、幹細胞、前駆細胞が挙げられる。生殖細胞としては、精子や卵子が挙げられる。体細胞としては、線維芽細胞、骨髄細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、好中球、赤血球、血小板、マクロファージ、単球、骨細胞、周皮細胞、樹状細胞、脂肪細胞、間葉細胞、上皮細胞、表皮細胞(たとえば、角化細胞(ケラチノサイト)、角質細胞等)、内皮細胞、血管内皮細胞、肝実質細胞、軟骨細胞、卵丘細胞、神経細胞、グリア細胞、オリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)、マイクログリア(小膠細胞)、アストロサイト(星状膠細胞)、心臓細胞、食道細胞、筋肉細胞(たとえば、平滑筋細胞、骨格筋細胞)、膵臓ベータ細胞、メラニン細胞、単核細胞が挙げられる。幹細胞としては、造血幹細胞、衛星細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、乳腺幹細胞、嗅粘膜幹細胞、神経冠幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、筋幹細胞、生殖幹細胞、腸管幹細胞、毛包幹細胞等の成体幹細胞;胚性幹細胞(ES細胞)、胚性腫瘍細胞、胚性生殖幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)等の多能性幹細胞;癌幹細胞が挙げられる。前駆細胞としては、衛星細胞、膵前駆細胞、血管前駆細胞、血管内皮前駆細胞、造血前駆細胞(臍帯血由来のCD34陽性細胞等)が挙げられる。チャイニーズハムスターの細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞株(CHO)が挙げられる。CHOとして、具体的には、CHO-DG44、CHO-K1、CHO DUX (DHFR-)、CHO-S、CHO-MKが挙げられる。マウスの細胞としては、マウス骨髄腫由来のNS0細胞が挙げられる。ヒトの細胞としては、ヒト胎児腎細胞由来細胞株(HEK)が挙げられる。HEKとして、具体的には、HEK293やHEK293Tが挙げられる。イヌの細胞としては、イヌ腎臓由来のMDCK細胞が挙げられる。アフリカミドリザルの細胞としては、アフリカミドリザル腎細胞由来細胞株(COS)が挙げられる。COSとして、具体的には、COS-1が挙げられる。アフリカツメガエルの細胞としては、アフリカツメガエル卵母細胞が挙げられる。ツマジロクサヨトウの細胞としては、ツマジロクサヨトウ卵巣由来のSf9細胞、Sf21細胞、SF+細胞が挙げられる。
 「目的物質生産能を有する動物細胞」とは、目的物質を生産する能力を有する動物細胞を意味する。「目的物質生産能を有する動物細胞」とは、具体的には、培地で培養した際に、目的物質を生成(例えば、目的タンパク質を発現)し、回収できる程度に培養物中に蓄積する能力を有する動物細胞を意味してよい。「培養物中への蓄積」とは、具体的には、培地中、細胞表層、細胞内、またはそれらの組み合わせへの蓄積を意味してよい。なお、目的物質が細胞外(例えば、培地中または細胞表層)に蓄積する場合を、目的物質の「分泌」または「分泌生産」ともいう。すなわち、動物細胞は、目的物質の分泌生産能(目的物質を分泌生産する能力)を有していてもよい。目的物質の蓄積量は、例えば、培養物中への蓄積量として、10 μg/L以上、1 mg/L以上、100 mg/L以上、または1 g/L以上であってよい。動物細胞は、1種の目的物質の生産能を有していてもよく、2種またはそれ以上の目的物質の生産能を有していてもよい。
 動物細胞は、本来的に目的物質生産能を有するものであってもよく、目的物質生産能を有するように改変されたものであってもよい。また、動物細胞は、本来的に有する目的物質生産能が増強されるように改変されたものであってもよい。目的物質生産能を有する動物細胞は、例えば、上記のような動物細胞に目的物質生産能を付与することにより、または、上記のような動物細胞の目的物質生産能を増強することにより、取得できる。例えば、目的タンパク質生産能は、目的タンパク質をコードする遺伝子の導入により、付与または増強できる。目的タンパク質をコードする遺伝子を、「目的タンパク質遺伝子」ともいう。また、例えば、目的ウイルス生産能は、動物細胞に目的ウイルスを感染させることにより、付与できる。
 目的タンパク質は、動物細胞を宿主として発現可能なものであれば、特に制限されない。タンパク質は、宿主由来のタンパク質であってもよく、異種タンパク質(heterologous protein)であってもよい。「異種タンパク質(heterologous protein)」とは、同タンパク質を生産する宿主(すなわち、目的タンパク質生産能を有する動物細胞)にとって外来性(exogenous)であるタンパク質をいう。目的タンパク質は、例えば、天然に存在するタンパク質であってもよく、それらを改変したタンパク質であってもよく、人工的にアミノ酸配列をデザインしたタンパク質であってもよい。目的タンパク質は、例えば、微生物由来のタンパク質であってもよく、植物由来のタンパク質であってもよく、動物由来のタンパク質であってもよく、ウイルス由来のタンパク質であってもよい。目的タンパク質は、特に、ヒト由来のタンパク質であってもよい。目的タンパク質は、単量体タンパク質であってもよく、多量体タンパク質であってもよい。目的タンパク質は、分泌性タンパク質であってもよく、非分泌性タンパク質であってもよい。なお、「タンパク質」には、オリゴペプチドやポリペプチド等の、ペプチドと呼ばれるものも包含される。
 目的タンパク質として、具体的には、酵素、生理活性タンパク質、レセプタータンパク質、抗原タンパク質、その他のタンパク質が挙げられる。
 酵素としては、セルラーゼ、キシラナーゼ、トランスグルタミナーゼ、プロテイングルタミナーゼ、プロテインアスパラギナーゼ、イソマルトデキストラナーゼ、プロテアーゼ、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、コラゲナーゼ、キチナーゼ、γ-グルタミルバリン合成酵素、グルタミン酸-システインリガーゼ、グルタチオン合成酵素が挙げられる。
 生理活性タンパク質としては、成長因子(増殖因子)、ホルモン、サイトカイン、抗体関連分子、抗体ミメティックが挙げられる。
 成長因子(増殖因子)としては、上皮成長因子(Epidermal growth factor;EGF)、インスリン様成長因子-1(Insulin-like growth factor-1;IGF-1)、トランスフォーミング成長因子(Transforming growth factor;TGF)、神経成長因子(Nerve growth factor;NGF)、脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor;BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(Vascular endothelial growth factor;VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte-colony stimulating factor;G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte-macrophage-colony stimulating factor;GM-CSF)、血小板由来成長因子(Platelet-derived growth factor;PDGF)、エリスロポエチン(Erythropoietin;EPO)、トロンボポエチン(Thrombopoietin;TPO)、酸性線維芽細胞増殖因子(Acidic fibroblast growth factor;aFGFまたはFGF1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(Basic fibroblast growth factor;bFGFまたはFGF2)、線維芽細胞増殖因子(Fibroblast growth factor;FGF-4)、角質細胞増殖因子(Keratinocyte growth factor;KGF-1またはFGF7や、KGF-2またはFGF10)、肝細胞増殖因子(Hepatocyte growth factor;HGF)、幹細胞因子(Stem Cell Factor;SCF)、アクチビン(Activin)が挙げられる。アクチビンとしては、アクチビンA, C, Eが挙げられる。
 ホルモンとしては、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン(somatostatin)、ヒト成長ホルモン(human growth hormone;hGH)、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)、カルシトニン(calcitonin)、エキセナチド(exenatide)が挙げられる。
 サイトカインとしては、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF)が挙げられる。
 また、生理活性タンパク質は、タンパク質全体であってもよく、その一部であってもよい。タンパク質の一部としては、例えば、生理活性を有する部分が挙げられる。生理活性を有する部分として、具体的には、例えば、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)の成熟体のN末端34アミノ酸残基からなる生理活性ペプチドTeriparatideが挙げられる。
 「抗体関連分子」とは、完全抗体を構成するドメインから選択される単一のドメインまたは2もしくはそれ以上のドメインの組合せからなる分子種を含むタンパク質を意味してよい。完全抗体を構成するドメインとしては、重鎖のドメインであるVH、CH1、CH2、およびCH3、ならびに軽鎖のドメインであるVLおよびCLが挙げられる。抗体関連分子は、上述の分子種を含む限り、単量体タンパク質であってもよく、多量体タンパク質であってもよい。なお、抗体関連分子が多量体タンパク質である場合には、単一の種類のサブユニットからなるホモ多量体であってもよく、2またはそれ以上の種類のサブユニットからなるヘテロ多量体であってもよい。抗体関連分子として、具体的には、完全抗体、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、Fc、重鎖(H鎖)と軽鎖(L鎖)からなる二量体、Fc融合タンパク質、重鎖(H鎖)、軽鎖(L鎖)、単鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、diabody、VHHフラグメント(nanobody(登録商標))が挙げられる。抗体関連分子として、より具体的には、トラスツズマブ(Trastuzumab)、アダリムマブ(Adalimumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、VHH抗体N15、VHH抗体9g8が挙げられる。Fc融合タンパク質としては、本明細書に例示する各種目的タンパク質とFc領域との融合タンパク質が挙げられる。Fc融合タンパク質として、具体的には、後述するNotchリガンドとFc領域との融合タンパク質が挙げられる。NotchリガンドとFc領域との融合タンパク質としては、DLL4-Fc(すなわち、DLL4とFc領域との融合タンパク質)が挙げられる。
 「抗体ミメティック」とは、抗原と特異的に結合することができるが、抗体とは構造的に関連しない有機化合物を意味してよい。抗体ミメティックとして、具体的には、プロテインAのZドメイン(Affibody)が挙げられる。抗体ミメティックとして、より具体的には、ZHER2 affibodyが挙げられる。
 レセプタータンパク質としては、生理活性タンパク質やその他の生理活性物質に対するレセプタータンパク質が挙げられる。その他の生理活性物質としては、ドーパミン等の神経伝達物質が挙げられる。なお、レセプタータンパク質は、対応するリガンドが知られていないオーファン受容体であってもよい。
 抗原タンパク質は、免疫応答を惹起できるものであれば、特に制限されない。抗原タンパク質は、例えば、想定する免疫応答の対象に応じて適宜選択できる。抗原タンパク質は、例えば、ワクチンとして使用することができる。
 その他のタンパク質としては、Liver-type fatty acid-binding protein(LFABP)、蛍光タンパク質、イムノグロブリン結合タンパク質、アルブミン、フィブロイン様タンパク質、細胞外タンパク質が挙げられる。蛍光タンパク質としては、Green Fluorescent Protein(GFP)が挙げられる。イムノグロブリン結合タンパク質としては、Protein A、Protein G、Protein Lが挙げられる。アルブミンとしては、ヒト血清アルブミンが挙げられる。Notchリガンドとしては、DLL1、DLL3、DLL4、Jagged-1、Jagged-2が挙げられる。Notchリガンドは、例えば、Fc領域との融合タンパク質として構成されていてもよい。フィブロイン様タンパク質としては、WO2017/090665やWO2017/171001に開示されたものが挙げられる。
 細胞外タンパク質としては、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲン、オステオポンチン、ラミニン、それらの部分配列が挙げられる。ラミニンは、α鎖、β鎖、およびγ鎖からなるヘテロ三量体構造を有するタンパク質である。ラミニンとしては、哺乳類のラミニンが挙げられる。ラミニンのサブユニット鎖(すなわち、α鎖、β鎖、およびγ鎖)としては、5種のα鎖(α1~α5)、3種のβ鎖(β1~β3)、3種のγ鎖(γ1~γ3)が挙げられる。ラミニンは、これらサブユニット鎖の組み合わせによって種々のアイソフォームを構成する。ラミニンとして、具体的には、例えば、ラミニン111、ラミニン121、ラミニン211、ラミニン213、ラミニン221、ラミニン311、ラミニン321、ラミニン332、ラミニン411、ラミニン421、ラミニン423、ラミニン511、ラミニン521、ラミニン523が挙げられる。ラミニンの部分配列としては、ラミニンのE8断片であるラミニンE8が挙げられる。ラミニンE8は、具体的には、α鎖のE8断片(α鎖E8)、β鎖のE8断片(β鎖E8)、およびγ鎖のE8断片(γ鎖E8)からなるヘテロ三量体構造を有するタンパク質である。ラミニンE8のサブユニット鎖(すなわち、α鎖E8、β鎖E8、およびγ鎖E8)を総称して、「E8サブユニット鎖」ともいう。E8サブユニット鎖としては、上記例示したラミニンサブユニット鎖のE8断片が挙げられる。ラミニンE8は、これらE8サブユニット鎖の組み合わせによって種々のアイソフォームを構成する。ラミニンE8として、具体的には、例えば、ラミニン111E8、ラミニン121E8、ラミニン211E8、ラミニン221E8、ラミニン332E8、ラミニン421E8、ラミニン411E8、ラミニン511E8、ラミニン521E8が挙げられる。ラミニンE8の名称中の数字は、左からα鎖、β鎖、およびγ鎖の種類を示す。すなわち、例えば、「ラミニン511E8」とは、ラミニン511のE8断片を意味し、具体的には、α5鎖のE8断片(α5鎖E8)、β1鎖のE8断片(β1鎖E8)、およびγ1鎖のE8断片(γ1鎖E8)からなるヘテロ三量体構造を有するタンパク質を意味する。
 「α鎖E8」とは、α鎖のC末端付近の領域を意味してよく、具体的には、α鎖の球状ドメイン4および5を除くC末端断片を意味してもよく、より具体的には、α鎖の球状ドメイン4および5を除くC末端の780~830(例えば790~800)アミノ酸残基の断片を意味してもよい。「β鎖E8」とは、β鎖のC末端断片を意味してよく、具体的には、β鎖のC末端の220~230アミノ酸残基の断片を意味してもよい。「γ鎖E8」とは、γ鎖のC末端断片を意味してよく、具体的には、γ鎖のC末端の240~250アミノ酸残基の断片を意味してもよい。ヒトのα5鎖E8としては、GenBank Accession No. NP_005551のアミノ酸番号2534~3327の部位が挙げられる。ヒトのβ1鎖E8としては、GenBank Accession No. NP_002282のアミノ酸番号1561~1786の部位が挙げられる。ヒトのγ1鎖E8としては、GenBank Accession No. NP_002284のアミノ酸番号1364~1609の部位が挙げられる。
 目的タンパク質は、例えば、上記のようなタンパク質の公知または天然のアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。また、目的タンパク質は、例えば、上記のようなタンパク質の公知または天然のアミノ酸配列を有するタンパク質のバリアントであってもよい。バリアントとしては、公知または天然のアミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。「1又は数個」とは、具体的には、例えば、1~50個、1~40個、1~30個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1~3個を意味してよい。バリアントとしては、公知または天然のアミノ酸配列全体に対して、例えば、50%以上、65%以上、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質も挙げられる。なお、由来する生物種で特定されるタンパク質は、当該生物種において見出されるタンパク質そのものに限られず、当該生物種において見出されるタンパク質のアミノ酸配列を有するタンパク質およびそれらのバリアントを包含するものとする。バリアントは、当該生物種において見出されてもよく、見出されなくてもよい。すなわち、例えば、「ヒト由来タンパク質」とは、ヒトにおいて見出されるタンパク質そのものに限られず、ヒトにおいて見出されるタンパク質のアミノ酸配列を有するタンパク質およびそれらのバリアントを包含するものとする。
 なお、アミノ酸配列間の「同一性」とは、blastpによりデフォルト設定のScoring Parameters(Matrix:BLOSUM62;Gap Costs:Existence=11, Extension=1;Compositional Adjustments:Conditional compositional score matrix adjustment)を用いて算出されるアミノ酸配列間の同一性を意味する。
 目的タンパク質遺伝子は、上記のような目的タンパク質をコードするものであれば、特に制限されない。目的タンパク質遺伝子は、例えば、上記のようなタンパク質をコードする遺伝子の公知または天然の塩基配列を有する遺伝子であってよい。また、目的タンパク質遺伝子は、例えば、上記のようなタンパク質をコードする遺伝子の公知または天然の塩基配列を有する遺伝子のバリアントであってもよい。目的タンパク質遺伝子は、例えば、上記例示したようなバリアント配列を有するタンパク質をコードするよう改変されてもよい。目的タンパク質遺伝子は、任意のコドンをそれと等価のコドンに置換したものであってもよい。目的タンパク質遺伝子は、例えば、宿主細胞のコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変されていてもよい。
 なお、本発明において、「遺伝子」という用語は、対応する発現産物をコードする限り、DNAに限られず、任意のポリヌクレオチドを包含してよい。すなわち、「目的タンパク質遺伝子」とは、目的タンパク質をコードする任意のポリヌクレオチドを意味してよい。目的タンパク質遺伝子は、DNAであってもよく、RNAであってもよく、その組み合わせであってもよい。目的タンパク質遺伝子は、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。目的タンパク質遺伝子は、一本鎖DNAであってもよく、一本鎖RNAであってもよい。目的タンパク質遺伝子は、二本鎖DNAであってもよく、二本鎖RNAであってもよく、DNA鎖とRNA鎖からなるハイブリッド鎖であってもよい。目的タンパク質遺伝子は、単一のポリヌクレオチド鎖中に、DNA残基とRNA残基の両方を含んでいてもよい。目的タンパク質遺伝子は、イントロンを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。目的タンパク質遺伝子の態様は、目的タンパク質の発現手段等の諸条件に応じて適宜選択できる。
 「(アミノ酸または塩基)配列を有する」という表現は、特記しない限り、当該「(アミノ酸または塩基)配列を含む」ことを意味し、当該「(アミノ酸または塩基)配列からなる」場合も包含する。
 目的タンパク質は、目的タンパク質遺伝子から発現する。すなわち、目的タンパク質生産能を有する動物細胞は、目的タンパク質遺伝子を有する。目的タンパク質生産能を有する動物細胞は、具体的には、目的タンパク質遺伝子を発現可能に有する。なお、目的タンパク質生産能を有する動物細胞は、所望の程度に目的タンパク質を発現するまで目的タンパク質遺伝子を有していれば足りる。すなわち、目的タンパク質生産能を有する動物細胞は、目的タンパク質の発現後には、目的タンパク質遺伝子を有していてもよく、いなくてもよい。なお、「目的タンパク質遺伝子の発現」と「目的タンパク質の発現」とは同義に用いられてよい。
 目的タンパク質遺伝子は、目的タンパク質遺伝子を有する生物からのクローニングにより取得できる。クローニングには、同遺伝子を含むゲノムDNAやcDNA等の核酸を利用できる。また、目的タンパク質遺伝子は、化学合成によっても取得できる(Gene, 60(1), 115-127 (1987))。
 取得した目的タンパク質遺伝子は、そのまま、あるいは適宜改変して、利用することができる。すなわち、目的タンパク質遺伝子を改変することにより、そのバリアントを取得することができる。遺伝子の改変は公知の手法により行うことができる。例えば、部位特異的変異法により、DNAの目的部位に目的の変異を導入することができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., 61, in PCR technology, Erlich, H. A. Eds., Stockton press (1989);Carter, P., Meth. in Enzymol., 154, 382 (1987))や、ファージを用いる方法(Kramer, W. and Frits, H. J., Meth. in Enzymol., 154, 350 (1987);Kunkel, T. A. et al., Meth. in Enzymol., 154, 367 (1987))が挙げられる。また、目的タンパク質遺伝子のバリアントを化学合成によって直接取得してもよい。
 目的タンパク質遺伝子を宿主細胞に導入する形態は特に制限されない。目的タンパク質遺伝子は、発現可能に宿主細胞に保持されていればよい。具体的には、例えば、目的タンパク質遺伝子をDNA等の転写を要する形態で導入する場合、宿主細胞において、目的タンパク質遺伝子は、当該宿主細胞で機能するプロモーターの制御下で発現可能に保持されていればよい。宿主細胞において、目的タンパク質遺伝子は、染色体外に存在していてもよく、染色体上に導入されていてもよい。2つまたはそれ以上の遺伝子を導入する場合、各遺伝子が、発現可能に宿主細胞に保持されていればよい。
 目的タンパク質遺伝子を発現させるためのプロモーターは、宿主細胞において機能するものであれば特に制限されない。「宿主細胞において機能するプロモーター」とは、宿主細胞においてプロモーター活性を有するプロモーターをいう。プロモーターは、宿主細胞由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。プロモーターは、目的タンパク質遺伝子の固有のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。プロモーターは、目的タンパク質遺伝子の固有のプロモーターよりも強力なプロモーターであってもよい。動物細胞において機能するプロモーターとしては、SV40プロモーター、EF1aプロモーター、RSVプロモーター、CMVプロモーター、SRalphaプロモーターが挙げられる。また、プロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得し利用してもよい。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載されている。
 目的タンパク質遺伝子は、例えば、同遺伝子を含むベクターを用いて宿主細胞に導入することができる。目的タンパク質遺伝子を含むベクターを、「目的タンパク質遺伝子の発現ベクター」ともいう。目的タンパク質遺伝子の発現ベクターは、例えば、目的タンパク質遺伝子を含むDNA断片をベクターと連結することにより、構築することができる。目的タンパク質遺伝子の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより、同遺伝子を宿主細胞に導入することができる。ベクターは、薬剤耐性遺伝子などのマーカーを備えていてもよい。また、ベクターは、挿入された遺伝子を発現するためのプロモーター等の発現調節配列を備えていてもよい。ベクターは、宿主細胞の種類や目的タンパク質遺伝子の導入形態等の諸条件に応じて適宜選択できる。動物細胞への遺伝子導入に用いることができるベクターとしては、プラスミドベクターやウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルスベクターやアデノウイルスベクターが挙げられる。プラスミドベクターとしては、例えば、pcDNAシリーズベクター(pcDNA3.1等;Thermo Fisher Scientific)、pBApo-CMVシリーズベクター(タカラバイオ)、pCI-neo(Promega)が挙げられる。なお、ベクターの種類や構成によっては、ベクターは、宿主細胞の染色体に組み込まれ得るし、宿主細胞の染色体外で自律複製し得るし、あるいは宿主細胞の染色体外に一時的に保持され得る。例えば、SV40複製起点等のウイルスの複製起点を有するベクターは、動物細胞の染色体外で自律複製し得る。具体的には、例えば、pcDNAシリーズベクターはSV40複製起点を有しており、SV40のラージT抗原を発現する宿主細胞(COS-1やHEK293T等)において染色体外で自律複製し得る。
 また、目的タンパク質遺伝子は、例えば、同遺伝子を含む核酸断片を宿主細胞に導入することによっても、宿主細胞に導入することができる。そのような核酸断片としては、直鎖状DNAや直鎖状RNAが挙げられる。直鎖状RNAとしては、例えば、mRNAやcRNAが挙げられる。
 ベクターや核酸断片等の核酸を宿主細胞に導入する方法は、宿主細胞の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。動物細胞にベクターや核酸断片等の核酸を導入する方法としては、DEAEデキストラン法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法が挙げられる。また、ベクターがウイルスベクターである場合は、同ベクター(ウイルス)を宿主細胞に感染させることにより、宿主細胞に同ベクターを導入することができる。
 また、本来的に目的タンパク質遺伝子を有する細胞を、目的タンパク質遺伝子の発現が増大するよう改変して用いてもよい。「遺伝子の発現が増大する」とは、同遺伝子の細胞当たりの発現量が非改変細胞と比較して増大することを意味する。ここでいう「非改変細胞」とは、標的の遺伝子の発現が増大するように改変されていない対照細胞を意味する。非改変細胞としては、野生型の細胞や改変元の細胞が挙げられる。目的タンパク質遺伝子の発現を増大させる手法としては、目的タンパク質遺伝子のコピー数を増加させることや目的タンパク質遺伝子の転写効率や翻訳効率を向上させることが挙げられる。目的タンパク質遺伝子のコピー数の増加は、目的タンパク質遺伝子を宿主細胞に導入することにより達成できる。目的タンパク質遺伝子の導入は、上述したように実施できる。なお、導入される目的タンパク質遺伝子は、宿主細胞由来であってもよく、異種由来であってもよい。目的タンパク質遺伝子の転写効率や翻訳効率の向上は、プロモーター等の遺伝子の発現調節配列の改変により達成できる。例えば、目的タンパク質遺伝子の転写効率の向上は、目的タンパク質遺伝子のプロモーターをより強力なプロモーターに置換することにより達成できる。
 動物細胞の培養方法においては、本発明の組成物を用いて動物細胞を培養する。すなわち、動物細胞の培養は、本発明の組成物を用いて実施される。本発明の組成物は、例えば、培地として動物細胞の培養に用いてよい。すなわち、例えば、本発明の組成物が培地である場合、本発明の組成物(すなわち、培地)で動物細胞を培養してよい。すなわち、「本発明の組成物を用いて動物細胞を培養する」とは、例えば、培地である本発明の組成物で動物細胞を培養することを意味してよい。また、本発明の組成物は、例えば、培地添加物として動物細胞の培養に用いてよい。すなわち、例えば、本発明の組成物が培地添加物である場合、本発明の組成物(すなわち、培地添加物)を培地に添加し、本発明の組成物を添加した培地で動物細胞を培養してよい。すなわち、「本発明の組成物を用いて動物細胞を培養する」とは、例えば、培地添加物である本発明の組成物を培地に添加し、本発明の組成物を添加した培地で動物細胞を培養することを意味してよい。
 「動物細胞の培養」には、動物細胞の増殖を目的とするものに限られず、動物細胞の維持や動物細胞による目的物質の製造等の、動物細胞の増殖を目的としないものも包含されてよい。
 培地組成や培養条件は、培養が本発明の組成物を用いて実施されること以外は、動物細胞の培養の目的を達成できる限り、特に制限されない。例えば、動物細胞の増殖を目的とする場合、培地組成や培養条件は、動物細胞が増殖するように構成することができる。また、例えば、動物細胞の維持を目的とする場合、培地組成や培養条件は、動物細胞が維持される(すなわち、動物細胞が生存する)ように構成することができる。また、例えば、目的タンパク質等の目的物質の生産を目的とする場合、培地組成や培養条件は、目的物質が生産される(例えば、目的物質が目的タンパク質である場合は目的タンパク質が発現する)ように構成することができる。動物細胞の増殖を目的としない場合、培養の際に、動物細胞は、増殖してもよく、しなくてもよい。動物細胞の増殖を目的としない場合でも、典型的には、培養の際に、動物細胞は、増殖してよい。培地組成や培養条件は、例えば、動物細胞の種類等の諸条件に応じて、適宜設定することができる。培養は、本発明の組成物を用いて実施されること以外は、例えば、動物細胞の培養に利用される通常の培地および通常の条件をそのまま、あるいは適宜改変して用いて実施することができる。
 培養は、種培養と本培養とに分けて実施してもよい。培養が種培養と本培養とに分けて実施される場合、本発明の組成物は、種培養と本培養のいずれか一方または両方で用いてよい。培養が種培養と本培養とに分けて実施される場合、本発明の組成物は、特に、少なくとも本培養で用いてもよい。培養が種培養と本培養とに分けて実施される場合、培養についての記載(例えば、「培養期間(培養の期間)」や「培養開始」)は、特記しない限り、種培養と本培養のいずれに適用してもよい。種培養と本培養の培養条件は、同一であってもよく、そうでなくてもよい。また、目的タンパク質等の目的物質の生産を目的とする場合、目的物質は、少なくとも本培養の期間に生産されればよい。例えば、種培養により動物細胞を十分に増殖させてから、本培養により目的タンパク質等の目的物質を製造してもよい。
 培養は、回分培養(batch culture)、流加培養(Fed-batch culture)、連続培養(continuous culture)、またはそれらの組み合わせにより実施することができる。連続培養としては、灌流培養(perfusion culture)やケモスタット培養(chemostat culture)が挙げられる。なお、培養開始時の培地を、「初発培地」または「基礎培地」ともいう。また、流加培養において培養系(例えば、初発培地)に供給される培地を、「流加培地(feed medium)」ともいう。また、連続培養(これは灌流培養に限られない)において培養系(例えば、初発培地)に供給される培地を、「灌流培地(perfusion medium)」ともいう。また、流加培養または連続培養において培養系に流加培地または灌流培地を供給することを、単に、「培地供給」ともいう。培地供給は、培養の全期間を通じて実施されてもよく、培養の一部の期間においてのみ実施されてもよい。また、培地供給は、連続的に実施されてもよく、間欠的に実施されてもよい。培養(特に、灌流培養等の連続培養)の際には、培養液の引き抜きが実施されてよい。培養液の引き抜きは、培養の全期間を通じて実施されてもよく、培養の一部の期間においてのみ実施されてもよい。培養液の引き抜きは、連続的に実施されてもよく、間欠的に実施されてもよい。培養液の引き抜きと培地供給は、同時に実施されてもよく、そうでなくてもよい。なお、培養が種培養と本培養とに分けて実施される場合、種培養と本培養の培養形態は、同一であってもよく、そうでなくてもよい。
 培養は、例えば、液体培地を用いて実施することができる。
 培養に用いる培地は、例えば、基礎培地、流加培地、および灌流培地について、それぞれ独立に選択することができる。
 培養に用いる培地は、市販の培地であってもよく、適宜調製した培地であってもよい。市販の培地としては、D-MEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)、CELLiST Basal Media BASAL3、BASAL4P、BASAL10(味の素株式会社)、Opti-MEM(Thermo Fisher Scientific)、RPMI 1640(Thermo Fisher Scientific)、CD293(Thermo Fisher Scientific)、CHO-S-SFMII(Thermo Fisher Scientific)、CHO-SF(Sigma-Aldrich)、EX-CELL CD CHO(Sigma-Aldrich)、EX-CELLTM302(Sigma-Aldrich)、IS CHO-CD(Irvine Scientific)、IS CHO-CDXP(Irvine Scientific)等の動物細胞培養用の培地が挙げられる。
 また、培養に用いる培地は、例えば、本発明の組成物(具体的には、培地である本発明の組成物)であってよい。すなわち、本発明の組成物が培地である場合、本発明の組成物を、そのまま、あるいは適宜、所望の組成の液体培地として調製し、培養に用いてよい。例えば、本発明の組成物を水や水性緩衝液等の水性媒体で希釈して液体培地として調製し、培養に用いてよい。本発明の組成物は、基礎培地、流加培地、および灌流培地から選択される1種またはそれ以上の培地として用いられてよい。すなわち、例えば、流加培養の場合、本発明の組成物は、基礎培地および流加培地の一方または両方として用いられてよい。また、例えば、連続培養の場合、本発明の組成物は、基礎培地および灌流培地の一方または両方として用いられてよい。
 また、培養に用いる培地は、例えば、本発明の組成物(具体的には、培地添加物である本発明の組成物)が添加された培地であってもよい。本発明の組成物が添加される培地は、市販の培地であってもよく、適宜調製した培地であってもよい。本発明の組成物は、基礎培地、流加培地、および灌流培地から選択される1種またはそれ以上の培地に添加して用いられてよい。すなわち、例えば、流加培養の場合、本発明の組成物は、基礎培地および流加培地の一方または両方に添加して用いられてよい。また、例えば、連続培養の場合、本発明の組成物は、基礎培地および灌流培地の一方または両方に添加して用いられてよい。
 培養に用いる培地は、例えば、アミノ酸源および/またはα-ケトグルタル酸を含有していてよい。例えば、培養に用いる培地が本発明の組成物である場合、または培養に用いる培地が本発明の組成物が添加された培地である場合には、培養に用いる培地はアミノ酸源およびα-ケトグルタル酸を含有する。また、培養に用いる培地は、例えば、各種培地成分を含有していてよい。培地成分については、本発明の組成物の説明において上述した通りである。上記例示したような培地は、例えば、適宜、アミノ酸源、α-ケトグルタル酸、各種培地成分等の成分を添加してから、培養に用いてもよい。
 アミノ酸源、α-ケトグルタル酸、培地成分等の各種成分は、いずれも、初発培地、流加培地、灌流培地、またはそれらの組み合わせに含有されていてよい。すなわち、培養の過程において、アミノ酸源等の各種成分を単独で、あるいは任意の組み合わせで、培地に供給してもよい。これらの成分は、いずれも、1回または複数回供給されてもよく、連続的に供給されてもよい。初発培地、流加培地、および灌流培地の組成(例えば、含有する成分の種類および/または濃度)は、同一であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、初発培地に含有される成分の種類は、流加培地または灌流培地に含有される成分の種類と、同一であってもよく、そうでなくてもよい。また、初発培地に含有される各成分の濃度は、流加培地または灌流培地に含有される各成分の濃度と、同一であってもよく、そうでなくてもよい。例えば、流加培地が灌流培養に用いられる場合に、初発培地と流加培地の組成は同一であってもよい。また、組成(例えば、含有する成分の種類および/または濃度)の異なる2種またはそれ以上の流加培地または灌流培地を用いてもよい。例えば、複数回の流加培地または灌流培地の供給が間欠的に実施される場合、流加培地または灌流培地の組成は、各回で同一であってもよく、そうでなくてもよい。また、アミノ酸源等の各種成分は、いずれも、粉末等の、流加培地または灌流培地に含有されない形態で、培地に供給してもよい。例えば、アミノ酸源等の各種成分は、いずれも、本発明の組成物の添加により培地に供給してもよい。
 培養開始時の動物細胞の播種量は、例えば、生細胞数に換算して、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以上、または1×10cells/mL以上であってもよく、1×10cells/mL以下、1×10cells/mL以下、1×10cells/mL以下、1×10cells/mL以下、または1×10cells/mL以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。培養開始時の動物細胞の播種量は、具体的には、例えば、生細胞数に換算して、1×10~1×10cells/mL、1×10~1×10cells/mL、1×10~1×10cells/mL、1×10~1×10cells/mL、または1×10~1×10cells/mLであってもよい。培養開始時の動物細胞の播種量は、具体的には、例えば、生細胞数に換算して、1×10~1×10cells/mL、1×10~1×10cells/mL、または1×10~1×10cells/mLであってもよい。生細胞数は、例えば、生死細胞オートアナライザーVi-CELLTM XR(ベックマン・コールター社)を用いて測定することができる。
 培養は、例えば、5~15%CO等のCO含有雰囲気下で実施してよい。培地のpHは、例えば、中性付近であってよい。「中性付近」とは、例えば、pH6~8、pH6.5~7.5、またはpH6.8~7.2を意味してよい。培養中、必要に応じて培地のpHを調整することができる。培地のpHは、アンモニアガス、アンモニア水、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の各種アルカリ性または酸性物質を用いて調整することができる。培養温度は、例えば、30~38℃であってよい。培養期間は、例えば、0.5日以上、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、12日以上、15日以上、または20日以上であってもよく、60日以下、50日以下、40日以下、30日以下、25日以下、20日以下、15日以下、12日以下、10日以下、9日以下、8日以下、または7日以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。培養期間は、具体的には、例えば、1~60日、3~25日、または5~20日であってもよい。培養の際には、適宜、目的タンパク質遺伝子等の遺伝子の発現を誘導してよい。
 培地中のアミノ酸源濃度は、例えば、0.1mM以上、0.3mM以上、0.5mM以上、0.7mM以上、1mM以上、1.5mM以上、2mM以上、3mM以上、4mM以上、または5mM以上であってもよく、30mM以下、25mM以下、20mM以下、15mM以下、10mM以下、7mM以下、5mM以下、4mM以下、3mM以下、2mM以下、1.5mM以下、または1mM以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。培地中のアミノ酸源濃度は、具体的には、例えば、0.1~1mM、0.3~1mM、0.5~1mM、0.7~1mM、1~1.5mM、1.5~2mM、2~3mM、3~4mM、4~5mM、5~7mM、5~10mM、5~15mM、5~20mM、5~25mM、または5~30mMであってもよい。培地中のアミノ酸源濃度は、具体的には、例えば、0.1~10mM、0.3~5mM、0.5~3mM、または1~2mMであってもよく、0.1~30mM、0.3~25mM、または0.5~20mMであってもよい。なお、有効成分として2種またはそれ以上のアミノ酸源を用いる場合、ここでいう「アミノ酸源濃度」とは、それらアミノ酸源の濃度の総量を意味する。しかし、有効成分として2種またはそれ以上のアミノ酸源を用いる場合、それらアミノ酸源の濃度は、それぞれ独立に、上記例示したアミノ酸源濃度の範囲に設定することもできる。また、上記例示したアミノ酸源濃度についての記載は、追加成分であるアミノ酸源の濃度にも準用できる。具体的には、例えば、培地中のシステイン源濃度は、0.1~10mM、0.3~5mM、0.5~3mM、または1~2mMであってもよい。また、具体的には、例えば、培地中のチロシン源濃度は、0.1~30mM、0.3~25mM、または0.5~20mMであってもよい。
 培地中のα-ケトグルタル酸濃度は、例えば、0.1mM以上、0.3mM以上、0.5mM以上、0.7mM以上、1mM以上、1.5mM以上、2mM以上、3mM以上、4mM以上、5mM以上、7mM以上、または10mM以上であってもよく、50mM以下、30mM以下、20mM以下、15mM以下、10mM以下、7mM以下、5mM以下、4mM以下、3mM以下、2mM以下、1.5mM以下、または1mM以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。培地中のα-ケトグルタル酸濃度は、具体的には、例えば、0.1~1mM、0.3~1mM、0.5~1mM、0.7~1mM、1~1.5mM、1.5~2mM、2~3mM、3~4mM、4~5mM、5~7mM、7~10mM、10~15mM、10~20mM、10~30mM、または10~50mMであってもよい。培地中のα-ケトグルタル酸濃度は、具体的には、例えば、0.1~30mM、0.3~20mM、0.5~15mM、または1~10mMであってもよい。
 アミノ酸源等の各種成分は、いずれも、培養の全期間において培地に含有されていてもよく、培養の一部の期間にのみ培地に含有されていてもよい。すなわち、「培養が或る成分を含有する培地で実施される」とは、当該成分が培養の少なくとも一部の期間において培地に含有されていれば足り、当該成分が培養の全期間において培地に含有されていることを要しない。アミノ酸源等の各種成分は、いずれも、例えば、培養開始時に培地に含有されていてもよく、培養開始後に培地に供給されてもよい。また、アミノ酸源等の各種成分は、いずれも、例えば、培養開始時に培地に含有され、且つ、培養開始後(例えば、有効成分の消費後)に培地にさらに供給されてもよい。
 アミノ酸源等の各種成分は、いずれも、例えば、培養の全期間において上記例示した濃度で培地に含有されていてもよく、培養の一部の期間にのみ上記例示した濃度で培地に含有されていてもよい。すなわち、「培養が或る成分を或る濃度で含有する培地で実施される」とは、培地中の当該成分の濃度が培養の少なくとも一部の期間において当該濃度の範囲内にあれば足り、培地中の当該成分の濃度が培養の全期間において当該濃度の範囲内にあることを要しない。アミノ酸源等の各種成分は、いずれも、例えば、培養開始時に上記例示した濃度で培地に含有されていてもよく、培養開始後に上記例示した濃度となるように培地に供給されてもよい。また、アミノ酸源等の各種成分は、いずれも、例えば、培養開始時に上記例示した濃度で培地に含有され、且つ、培養開始後(例えば、当該成分の消費後)に上記例示した濃度となるように培地にさらに供給されてもよい。
 「培養の一部の期間」の長さは、動物細胞を培養できる限り、特に制限されない。「培養の一部の期間」の長さは、成分の種類、動物細胞の種類、培養期間の長さ、所望の目的物質生産量等の諸条件に応じて適宜設定できる。「一部の期間」は、例えば、培養の全期間の10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または99%以上の期間であってよい。また、「一部の期間」は、例えば、0.5日以上、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、12日以上、または15日以上の期間であってもよい。
 また、培地中のアミノ酸源等の各種成分の濃度は、いずれも、例えば、培養中の特定の期間を通じての平均値として、上記例示した濃度に設定されてもよい。すなわち、「培養が或る成分を或る濃度で含有する培地で実施される」とは、培養中の特定の期間を通じての培地中の当該成分の濃度の平均値が当該濃度の範囲内にあることを意味してもよい。「培養中の特定の期間を通じての培地中のある成分の濃度の平均値」とは、培養中の特定の期間における当該成分の濃度の変動を把握できるものであれば特に制限されないが、例えば、培養中の特定の期間を通じて60分ごと、30分ごと、20分ごと、または10分ごとに測定された培地中の当該成分の濃度の平均値を意味してよい。「培養中の特定の期間」としては、培養の全期間や培養の一部の期間が挙げられる。「培養の一部の期間」については、上述した通りである。
 アミノ酸源等の各種成分は、いずれも、培養の全期間を通じて培地へ供給されてもよく、培養の一部の期間においてのみ培地へ供給されてもよい。「培養の一部の期間」については、上述した通りである。アミノ酸源等の各種成分は、いずれも、例えば、連続的に培地へ供給されてもよく、間欠的に培地へ供給されてもよい。アミノ酸源等の各種成分は、いずれも、例えば、毎日培地へ供給されてもよく、数日おきに培地へ供給されてもよい。
 流加培地または灌流培地中のアミノ酸源等の各種成分の濃度は、いずれも、例えば、上記例示した培地中の当該成分の濃度の範囲であってよい。また、流加培地または灌流培地中のアミノ酸源等の各種成分の濃度は、例えば、上記例示した培地中の当該成分の濃度の1倍以上、1.1倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、5倍以上、7倍以上、10倍以上、15倍以上、または20倍以上の濃度であってもよく、100倍以下、70倍以下、50倍以下、30倍以下、20倍以下、15倍以下、10倍以下、7倍以下、5倍以下、3倍以下、2倍以下の濃度であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。流加培地または灌流培地中のアミノ酸源等の各種成分の濃度は、具体的には、例えば、上記例示した培地中の当該成分の濃度の1~2倍1.1~2倍1.3~2倍1.5~2倍2~3倍3~5倍5~7倍7~10倍、10~15倍、15~20倍、20~30倍、20~50倍、20~70倍、または20~100倍であってもよい。流加培地または灌流培地中のアミノ酸源等の各種成分の濃度は、具体的には、例えば、上記例示した培地中の当該成分の濃度の1~100倍、2~50倍、または5~20倍であってもよい。また、流加培地または灌流培地中のアミノ酸源濃度(例えばシステイン濃度)は、例えば1mM以上、2mM以上、5mM以上、10mM以上、15mM以上、20mM以上、30mM以上、40mM以上、50mM以上、または60mM以上であってもよく、飽和濃度以下、100mM以下、90mM以下、80mM以下、70mM以下、60mM以下、50mM以下、40mM以下、30mM以下、または20mM以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。流加培地または灌流培地中のアミノ酸源濃度(例えばシステイン濃度)は、具体的には、例えば、1~20mM、2~20mM、5~20mM、10~20mM、15~20mM、20~30mM、30~40mM、40~50mM、50~60mM、60~70mM、60~80mM、60~90mM、60~100mM、または60mM~飽和濃度であってもよい。流加培地または灌流培地中のアミノ酸源濃度(例えばシステイン濃度)は、具体的には、例えば、5~100mM、10~90mM、または20~80mMであってもよい。なお、有効成分として2種またはそれ以上のアミノ酸源を用いる場合、ここでいう「アミノ酸源濃度」とは、それらアミノ酸源の濃度の総量を意味する。しかし、有効成分として2種またはそれ以上のアミノ酸源を用いる場合、それらアミノ酸源の濃度は、それぞれ独立に、上記例示したアミノ酸源濃度の範囲に設定することもできる。また、上記例示したアミノ酸源濃度についての記載は、追加成分であるアミノ酸源の濃度にも準用できる。
 アミノ酸源等の各種成分の濃度は、いずれも、例えば、化合物の検出または同定に用いられる公知の方法により測定することができる。そのような方法としては、例えば、HPLC、UPLC、LC/MS、GC/MS、NMRが挙げられる。これらの方法は、目的物質が生成したことの確認にも利用できる。これらの方法は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
 上記のようにして動物細胞を培養することができる。動物細胞が目的タンパク質生産能等の目的物質生産能を有する場合、上記のようにして動物細胞を培養することにより、目的物質が生成(例えば、目的タンパク質が発現)し、以て目的物質を含有する培養物が得られる。目的タンパク質等の目的物質は、具体的には、培地中、細胞表層、細胞内、またはそれらの組み合わせへ蓄積してよい。
 以下、特に、目的タンパク質を製造する場合を参照して目的タンパク質の生成の確認、回収、精製等の操作について説明するが、目的タンパク質以外の目的物質についても、適宜、そのような操作を実施することができる。
 目的タンパク質が生成したことは、タンパク質の検出または同定に用いられる公知の方法により確認することができる。そのような方法としては、例えば、SDS-PAGE、Western blotting、質量分析、N末アミノ酸配列解析、酵素活性測定が挙げられる。これらの方法は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
 目的タンパク質は、適宜回収することができる。目的タンパク質は、具体的には、目的タンパク質を含有する適当な画分として回収することができる。そのような画分としては、例えば、培養物、培養上清、培養細胞、培養細胞の処理物(破砕物、溶解物、抽出物(無細胞抽出液)等)が挙げられる。培養細胞は、例えば、アクリルアミドやカラギーナン等の担体で固定化した固定化細胞の形態で取得されてもよい。
 目的タンパク質は、さらに、所望の程度に精製されてもよい。
 培地中に目的タンパク質が蓄積する場合、目的タンパク質は、例えば、細胞等の固形分を遠心分離等により培養物から除去した後、上清から精製することができる。
 細胞内に目的タンパク質が蓄積する場合、目的タンパク質は、例えば、細胞を破砕、溶解、または抽出等の処理に供した後、処理物から精製することができる。細胞は、遠心分離等により培養物から回収することができる。細胞の破砕、溶解、または抽出等の処理は、公知の方法により行うことができる。そのような方法としては、例えば、超音波破砕法、ダイノミル法、ビーズ破砕、フレンチプレス破砕、リゾチーム処理が挙げられる。これらの方法は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
 細胞表層に目的タンパク質が蓄積する場合、目的タンパク質は、例えば、可溶化した後、可溶化物から精製することができる。可溶化は、公知の方法により行うことができる。そのような方法としては、例えば、塩濃度の上昇や界面活性剤の使用が挙げられる。これらの方法は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
 目的タンパク質の精製(例えば、上記のような上清、処理物、または可溶化物からの精製)は、タンパク質の精製に用いられる公知の方法により行うことができる。そのような方法としては、例えば、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、等電点沈殿が挙げられる。これらの方法は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
 目的タンパク質は、遊離の状態で取得されてもよいし、樹脂等の固相に固定化された固定化酵素の状態で取得されてもよい。
 回収した目的タンパク質は、適宜、製剤化してもよい。剤形は特に制限されず、目的タンパク質の使用用途等の諸条件に応じて適宜設定することができる。剤形としては、例えば、液剤、懸濁剤、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤が挙げられる。製剤化にあたっては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、矯味剤、矯臭剤、香料、希釈剤、界面活性剤等の薬理学的に許容される添加剤を使用することができる。
<4>有効成分の使用
 また、本発明は、上記例示した用途での有効成分の使用を開示する。すなわち、本発明は、例えば、組成物の安定性を向上させるための有効成分の使用や、動物細胞培養用の組成物の製造における有効成分の使用を開示する。言い換えると、本発明は、有効成分を使用して上記例示した用途を実現する方法を開示する。すなわち、本発明は、例えば、有効成分を混合することを含む、組成物の安定性を向上させる方法や、有効成分を混合することを含む、動物細胞培養用の組成物を製造する方法を開示する。
 また、本発明は、上記例示した用途に用いるための有効成分を開示する。すなわち、本発明は、例えば、組成物の安定性の向上に用いるための有効成分や、動物細胞培養用の組成物の製造に用いるための有効成分を開示する。
 また、本発明は、他の有効成分と併用するための各有効成分の使用を開示する。各有効成分は、上記例示した用途のために、他の有効成分と併用されてよい。すなわち、本発明は、例えば、アミノ酸源(例えばシステイン)を含有する組成物の安定性を向上させるためのα-ケトグルタル酸の塩の使用や、α-ケトグルタル酸を含有する組成物の安定性を向上させるためのフリー体のL-システイン無水和物の使用を開示する。アミノ酸源(例えばシステイン)を含有する組成物の安定性を向上させるためのα-ケトグルタル酸の塩の使用としては、特に、アミノ酸源(例えばシステイン)を含有する組成物の固結を防止するためのα-ケトグルタル酸の塩の使用や、システインを含有する組成物におけるシステイン含有量の減少を防止するためのα-ケトグルタル酸の塩の使用が挙げられる。α-ケトグルタル酸を含有する組成物の安定性を向上させるためのフリー体のL-システイン無水和物の使用としては、特に、α-ケトグルタル酸を含有する組成物の固結を防止するためのフリー体のL-システイン無水和物の使用が挙げられる。言い換えると、本発明は、各有効成分を他の有効成分と併用して上記例示した用途を実現する方法を開示する。すなわち、本発明は、例えば、α-ケトグルタル酸の塩をアミノ酸源(例えばシステイン)と混合することを含む、アミノ酸源(例えばシステイン)を含有する組成物の安定性を向上させる方法や、フリー体のL-システイン無水和物をα-ケトグルタル酸混合することを含む、α-ケトグルタル酸を含有する組成物の安定性を向上させる方法を開示する。アミノ酸源(例えばシステイン)を含有する組成物の安定性を向上させる方法としては、特に、アミノ酸源(例えばシステイン)を含有する組成物の固結を防止する方法や、システインを含有する組成物におけるシステイン含有量の減少を防止する方法が挙げられる。α-ケトグルタル酸を含有する組成物の安定性を向上させる方法としては、特に、α-ケトグルタル酸を含有する組成物の固結を防止する方法が挙げられる。
 以下、非限定的な実施例を参照して、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1:組成物の固結の防止
 本実施例では、L-システインとα-ケトグルタル酸の混合粉体について、L-システインおよび/またはα-ケトグルタル酸の形態を変更した際の粉体の性状への影響を評価した。
(1)混合粉体の調製
 表1に記載の各形態のL-システインとα-ケトグルタル酸をモル比で1:5.8となるように混合し混合粉体を得た。いずれの混合粉体も、白色のさらさらとした粉体として調製された。
(2)評価実験
 各混合粉体およびシリカゲル(新越化学工業社製)を25℃または40℃に温度を制御したインキュベーター(Espec社製;CSH-122HG)にて遮光条件で保管し、3日、7日、または14日保管後の粉体の固結性を目視にて評価した。表中、「-」は固結が認められなかったことを示す。表中「+」~「+++」は、固結が認められたことを示し、「+」が多いほど固結の程度が大きいことを示す。具体的な評価基準は、以下の通りである。
-:混合粉体中に固結物(固結した塊)が存在しない。
+:混合粉体全量中に固結物(固結した塊)が1~9個存在する。
++:混合粉体全量中に固結物(固結した塊)が10個以上存在し、明らかに固結している事がわかる。
+++:混合粉体が全体的に固結していて粉の形状が担保されていない。
(3)評価結果
 結果を表1および図1~2に示す。L-システイン塩酸塩一水和物とフリー体のα-ケトグルタル酸の混合粉体、およびL-システイン塩酸塩一水和物をL-システイン塩酸塩無水和物へ変更した混合粉体では、25℃、3日以上の保管で固結が確認された。それに対し、L-システイン塩酸塩一水和物をフリー体のL-システイン無水和物へ変更し、且つ/又は、フリー体のα-ケトグルタル酸をα-ケトグルタル酸一ナトリウムへ変更した混合粉体では、25℃、3日以上の保管で固結が確認されなかった。更に、L-システイン塩酸塩一水和物をフリー体のL-システイン無水和物へ変更し、且つ、フリー体のα-ケトグルタル酸をα-ケトグルタル酸一ナトリウムへ変更した混合粉体では、他の混合粉体で固結が確認された40℃、3日以上の保管でも固結が確認されなかった。
 以上より、L-システインとα-ケトグルタル酸の混合粉体について、L-システインとしてフリー体のL-システイン無水和物を用い、且つ/又は、α-ケトグルタル酸としてα-ケトグルタル酸一ナトリウムを用いることで、混合粉体の安定性(具体的には、固結耐性)が向上することが明らかとなった。特に、フリー体のL-システイン無水和物とα-ケトグルタル酸一ナトリウムを用いることで、混合粉体の安定性(具体的には、固結耐性)が顕著に向上することが明らかとなった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
実施例2:組成物の固結の防止
 本実施例では、各種アミノ酸源とα-ケトグルタル酸の混合粉体について、α-ケトグルタル酸の形態を変更した際の粉体の性状への影響を評価した。
(1)粉体の調整
 各種アミノ酸源とα-ケトグルタル酸(フリー体のα-ケトグルタル酸またはα-ケトグルタル酸一ナトリウム)とをモル比で1:1.5となるように混合し混合粉体を得た。グリシル-L-チロシン2水和物とフリー体のα-ケトグルタル酸の混合粉体、及びL-リジン塩酸塩とフリー体のα-ケトグルタル酸の混合粉体は、調製直後から固結が見られた。それら以外は、いずれの混合粉体も、白色のさらさらとした粉体として調製された。調製直後の混合粉体の写真を図3に示す。
(2)評価実験
 各混合粉体およびシリカゲル(新越化学工業社製)を4℃、25℃、または40℃に温度を制御したインキュベーター(Espec社製;CSH-122HG)にて遮光条件で保管し、3日、7日、または14日保管後の粉体の固結性を目視にて評価した。表中、「-」は固結が認められなかったことを示す。表中「+」~「+++」は、固結が認められたことを示し、「+」が多いほど固結の程度が大きいことを示す。具体的な評価基準は、以下の通りである。
-:混合粉体中に固結物(固結した塊)が存在しない。
+:混合粉体全量中に固結物(固結した塊)が1~9個存在する。
++:混合粉体全量中に固結物(固結した塊)が10個以上存在し、明らかに固結している事がわかる。
+++:混合粉体が全体的に固結していて粉の形状が担保されていない。
(3)評価結果
 結果を表2~3および図4~6に示す。多くのアミノ酸源について、フリー体のα-ケトグルタル酸をα-ケトグルタル酸一ナトリウムへ変更することにより、混合粉体の固結が防止された。特に、フリー体のグリシル-L-チロシン2水和物、フリー体のL-フェニルアラニン、L-リジン塩酸塩、フリー体のL-メチオニン、フリー体のグリシン、フリー体のL-アスパラギン一水和物、L-システイン塩酸塩無水和物、フリー体のL-システイン無水和物について、フリー体のα-ケトグルタル酸をα-ケトグルタル酸一ナトリウムへ変更することにより、混合粉体の固結が防止された。
 以上より、L-システインとα-ケトグルタル酸の混合粉体に限られず、多くのアミノ酸源とα-ケトグルタル酸の混合粉体について、α-ケトグルタル酸としてα-ケトグルタル酸一ナトリウムを用いることで、混合粉体の安定性(具体的には、固結耐性)が向上することが明らかとなった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
実施例3:組成物におけるL-システイン含有量の減少の防止
 本実験例では、L-システインとα-ケトグルタル酸の混合粉体について、L-システインおよび/またはα-ケトグルタル酸の形態を変更した際の粉体中のL-システイン含量の推移への影響を評価した。
(1)粉体の調整
 L-システイン(L-システイン塩酸塩一水和物またはフリー体のL-システイン無水和物)とα-ケトグルタル酸(フリー体のα-ケトグルタル酸またはα-ケトグルタル酸一ナトリウム)をモル比で1:4.9となるように混合し混合粉体を得た。いずれの混合粉体も、白色のさらさらとした粉体として調製された。
(2)評価実験
 各混合粉体およびシリカゲル(新越化学工業社製)を25℃または40℃に温度を制御したインキュベーター(Espec社製;CSH-122HG)にて遮光条件で保管し、WO2021/060517Aの方法に従って混合粉体中のL-システイン含有量を経時的に分析した。
(3)評価結果
 結果を図7~10に示す。フリー体のα-ケトグルタル酸を含有する混合粉体では、L-システインがL-システイン塩酸塩一水和物またはフリー体のL-システイン無水和物のいずれの場合でも、25℃または40℃での保管でL-システイン含有量の減少が確認され、40℃、7日以上の保管でL-システインが検出できなくなった。一方、フリー体のL-システインとα-ケトグルタル酸一ナトリウムを含有する混合粉体では、L-システイン含有量の減少が大幅に改善された。
 以上より、L-システインとα-ケトグルタル酸の混合粉体について、L-システインとしてフリー体のL-システイン無水和物を用い、且つ、α-ケトグルタル酸としてα-ケトグルタル酸一ナトリウムを用いることで、混合粉体の安定性(具体的には、L-システインの安定性)が向上することが明らかとなった。
 本発明によれば、アミノ酸源およびα-ケトグルタル酸を含有する組成物の安定性を向上させることができる。また、本発明によれば、当該組成物を利用して動物細胞を培養することができる。

Claims (31)

  1.  動物細胞培養用の組成物であって、
     アミノ酸源およびα-ケトグルタル酸を含有し、
     下記性質(A)および/または(B)を有する、組成物:
    (A)前記α-ケトグルタル酸が、α-ケトグルタル酸の塩である;
    (B)前記アミノ酸源が、フリー体のL-システイン無水和物である。
  2.  少なくとも前記性質(A)を有する、請求項1に記載の組成物。
  3.  粉末である、請求項1または2に記載の組成物。
  4.  培地または培地添加物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
  5.  前記培地が、基礎培地、流加培地、または灌流培地である、請求項4に記載の組成物。
  6.  前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
  7.  前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸のナトリウム塩またはカリウム塩である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
  8.  前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸一ナトリウムまたはα-ケトグルタル酸二ナトリウムである、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
  9.  前記アミノ酸源が、システイン、グリシン、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、フェニルアラニン、メチオニン、オルニチン、チロシン、またはグリシン含有ジペプチドである、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
  10.  下記性質(1)~(10)からなる群より選択される1つまたはそれ以上の性質を有する、請求項9に記載の組成物:
    (1)前記システインが、フリー体のL-システインまたはL-システイン塩酸塩である;
    (2)前記グリシンが、フリー体のグリシンまたはフリー体のグリシル-L-チロシンである;
    (3)前記アスパラギンが、フリー体のL-アスパラギンである;
    (4)前記グルタミン酸が、L-グルタミン酸一ナトリウムである;
    (5)前記リジンが、L-リジン塩酸塩である;
    (6)前記フェニルアラニンが、フリー体のL-フェニルアラニンである;
    (7)前記メチオニンが、フリー体のL-メチオニンである;
    (8)前記オルニチンが、L-オルニチン塩酸塩である;
    (9)前記チロシンが、L-チロシン二ナトリウムである;
    (10)前記グリシン含有ジペプチドが、フリー体のグリシル-L-チロシンである。
  11.  下記性質(1a)~(10a)からなる群より選択される1つまたはそれ以上の性質を満たす、請求項9または10に記載の組成物:
    (1a)前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物またはL-システイン塩酸塩一水和物である;
    (2a)前記グリシンが、フリー体のグリシンまたはフリー体のグリシル-L-チロシンである;
    (3a)前記アスパラギンが、フリー体のL-アスパラギン一水和物である;
    (4a)前記グルタミン酸が、L-グルタミン酸一ナトリウム一水和物である;
    (5a)前記リジンが、L-リジン塩酸塩である;
    (6a)前記フェニルアラニンが、フリー体のL-フェニルアラニンである;
    (7a)前記メチオニンが、フリー体のL-メチオニンである;
    (8a)前記オルニチンが、L-オルニチン塩酸塩である;
    (9a)前記チロシンが、L-チロシン二ナトリウム二水和物である;
    (10a)前記グリシン含有ジペプチドが、フリー体のグリシル-L-チロシン二水和物である。
  12.  前記アミノ酸源が、システインである、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
  13.  前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物またはL-システイン塩酸塩一水和物である、請求項9~12のいずれか1項に記載の組成物。
  14.  前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物である、請求項9~13のいずれか1項に記載の組成物。
  15.  前記α-ケトグルタル酸の含有量が、モル比で、前記アミノ酸源の含有量の1~20倍である、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
  16.  目的物質の製造方法であって、
     請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物を用いて目的物質生産能を有する動物細胞を培養すること;および
     目的物質を回収すること
     を含む、方法。
  17.  前記目的物質が、タンパク質またはウイルスである、請求項16に記載の方法。
  18.  動物細胞の培養方法であって、
     請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物を用いて動物細胞を培養すること
     を含む、方法。
  19.  α-ケトグルタル酸の塩の使用であって、
     アミノ酸源を含有する組成物の固結を防止するための、使用。
  20.  前記アミノ酸源が、システイン、グリシン、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、フェニルアラニン、メチオニン、オルニチン、チロシン、またはグリシン含有ジペプチドである、請求項19に記載の使用。
  21.  下記条件(1)~(10)から選択される1つまたはそれ以上の条件を満たす、請求項20に記載の使用:
    (1)前記システインが、フリー体のL-システインまたはL-システイン塩酸塩である;
    (2)前記グリシンが、フリー体のグリシンまたはフリー体のグリシル-L-チロシンである;
    (3)前記アスパラギンが、フリー体のL-アスパラギンである;
    (4)前記グルタミン酸が、L-グルタミン酸一ナトリウムである;
    (5)前記リジンが、L-リジン塩酸塩である;
    (6)前記フェニルアラニンが、フリー体のL-フェニルアラニンである;
    (7)前記メチオニンが、フリー体のL-メチオニンである;
    (8)前記オルニチンが、L-オルニチン塩酸塩である;
    (9)前記チロシンが、L-チロシン二ナトリウムである;
    (10)前記グリシン含有ジペプチドが、フリー体のグリシル-L-チロシンである。
  22.  下記条件(1a)~(10a)から選択される1つまたはそれ以上の条件を満たす、請求項20または21に記載の使用:
    (1a)前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物またはL-システイン塩酸塩一水和物である;
    (2a)前記グリシンが、フリー体のグリシンまたはフリー体のグリシル-L-チロシンである;
    (3a)前記アスパラギンが、フリー体のL-アスパラギン一水和物である;
    (4a)前記グルタミン酸が、L-グルタミン酸一ナトリウム一水和物である;
    (5a)前記リジンが、L-リジン塩酸塩である;
    (6a)前記フェニルアラニンが、フリー体のL-フェニルアラニンである;
    (7a)前記メチオニンが、フリー体のL-メチオニンである;
    (8a)前記オルニチンが、L-オルニチン塩酸塩である;
    (9a)前記チロシンが、L-チロシン二ナトリウム二水和物である;
    (10a)前記グリシン含有ジペプチドが、フリー体のグリシル-L-チロシン二水和物である。
  23.  前記アミノ酸源が、システインである、請求項19~22のいずれか1項に記載の使用。
  24.  α-ケトグルタル酸の塩の使用であって、
     システインを含有する組成物におけるシステイン含有量の減少を防止するための、使用。
  25.  前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、請求項19~24のいずれか1項に記載の使用。
  26.  前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸のナトリウム塩またはカリウム塩である、請求項19~25のいずれか1項に記載の使用。
  27.  前記α-ケトグルタル酸の塩が、α-ケトグルタル酸一ナトリウムまたはα-ケトグルタル酸二ナトリウムである、請求項19~26のいずれか1項に記載の使用。
  28.  前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物またはL-システイン塩酸塩一水和物である、請求項20~27のいずれか1項に記載の使用。
  29.  前記システインが、フリー体のL-システイン無水和物である、請求項20~28のいずれか1項に記載の使用。
  30.  前記α-ケトグルタル酸の塩が、前記組成物における該α-ケトグルタル酸の塩の含有量が、モル比で、前記組成物における前記アミノ酸源または前記システインの含有量の1~20倍となるように使用される、請求項19~29のいずれか1項に記載の使用。
  31.  動物細胞培養用の組成物を製造する方法であって、
     前記組成物が、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物であり、
     前記アミノ酸源および前記α-ケトグルタル酸を混合することを含む、方法。
PCT/JP2022/047331 2021-12-24 2022-12-22 動物細胞培養用の組成物 WO2023120637A1 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021-211122 2021-12-24
JP2021211122 2021-12-24

Publications (1)

Publication Number Publication Date
WO2023120637A1 true WO2023120637A1 (ja) 2023-06-29

Family

ID=86902730

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
PCT/JP2022/047331 WO2023120637A1 (ja) 2021-12-24 2022-12-22 動物細胞培養用の組成物

Country Status (1)

Country Link
WO (1) WO2023120637A1 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015535423A (ja) * 2012-11-14 2015-12-14 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングMerck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung 細胞培養培地
JP2018509920A (ja) * 2015-04-01 2018-04-12 ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 細胞培養培地
JP2018521682A (ja) * 2015-08-05 2018-08-09 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングMerck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung 細胞培養培地を生成するためのプロセス

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015535423A (ja) * 2012-11-14 2015-12-14 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングMerck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung 細胞培養培地
JP2018509920A (ja) * 2015-04-01 2018-04-12 ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 細胞培養培地
JP2018521682A (ja) * 2015-08-05 2018-08-09 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングMerck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung 細胞培養培地を生成するためのプロセス

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
"Tissue Culture Techniques [3rd Edition] Application Edition", 10 September 1997, ASAKURA PUBLISHING CO., LTD., JP, ISBN: 4-254-30053-0, article THE JAPANESE TISSUE CULTURE ASSOCIATION: "Appendix 3 Composition of medium", pages: 581 - 583, XP009547394 *

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11365389B2 (en) Cell culture medium comprising small peptides
AU2021205088B2 (en) Serum-free cell culture medium
WO2023120637A1 (ja) 動物細胞培養用の組成物
WO2021090888A1 (ja) タンパク質の製造方法
WO2024024720A1 (ja) 細胞培養用の培地
KR20240065185A (ko) 무혈청 세포 배양 배지

Legal Events

Date Code Title Description
121 Ep: the epo has been informed by wipo that ep was designated in this application

Ref document number: 22911339

Country of ref document: EP

Kind code of ref document: A1

WWE Wipo information: entry into national phase

Ref document number: 2023569533

Country of ref document: JP