図1及び34〜36の代謝経路
図1及び34〜36は、基質からのアセトン、イソプロパノール、イソブチレン、3−ヒドロキシブチレート(R及びS異性体)、1,3−ブタンジオール、2−ヒドロキシイソブチレート、アジピン酸、1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2−ブタノール、2−ブテン−1−オール、イソバレレート、及びイソアミルアルコールを含む、様々な酸、アルケン、ケトン、アルデヒド、アルコール、及びジオール産物の産生のための代謝経路の図である。太矢印は、Ptb−Bukにより触媒され得るステップを示す。例となる酵素はステップの各々について提供され、酵素経路は図1及び34〜36において詳記されている。しかしながら、追加の適切な酵素が当業者に知られている場合がある。
ステップ1は、アセチル−CoAのアセトアセチル−CoAへの変換を示す。このステップは、チオラーゼ(すなわち、アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ)(EC2.3.1.9)により触媒してもよい。チオラーゼは、例えば、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)からのThlA(WP_010966157.1)(配列番号1)、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)からのPhaA(WP_013956452.1)(配列番号2)、カプリアビダス・ネカトールからのBktB(WP_011615089.1)(配列番号3)、またはエシェリキア・コリ(Escherichia coli)からのAtoB(NP_416728.1)(配列番号4)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・ユングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、及びクロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)は、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについての天然活性を有する。
ステップ2は、アセトアセチル−CoAのアセトアセテートへの変換を示す。このステップは、CoAトランスフェラーゼ(すなわち、アセチル−CoA:アセトアセチル−CoAトランスフェラーゼ)(EC2.8.3.9)により触媒してもよい。CoAトランスフェラーゼは、例えば、クロストリジウム・ベイジェリンキイ(Clostridium beijerinckii)からの、CtfAB、サブユニットCtfA及びCtfBを含むヘテロ二量体(CtfA、WP_012059996.1)(配列番号5)(CtfB、WP_012059997.1)(配列番号6)であってもよい。このステップはまた、チオエステラーゼ(EC3.1.2.20)により触媒してもよい。チオエステラーゼは、例えば、エシェリキア・コリからのTesB(NP_414986.1)(配列番号7)であってもよい。このステップはまた、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムまたはクロストリジウム・ユングダリイからの、推定チオエステラーゼにより触媒してもよい。特に、クロストリジウム・オートエタノゲナムにおいて3つの推定チオエステラーゼ、(1)「チオエステラーゼ1」(AGY74947.1、パルミトイル−CoAヒドロラーゼとしてアノテートされている、配列番号8)、(2)「チオエステラーゼ2」(AGY75747.1、4−ヒドロキシベンゾイル−CoAチオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号9)、及び(3)「チオエステラーゼ3」(AGY75999.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号10)が同定されている。クロストリジウム・ユングダリイにおいても3つの推定チオエステラーゼ、(1)「チオエステラーゼ1」(ADK15695.1、推定アシル−CoAチオエステラーゼ1としてアノテートされている、配列番号11)、(2)「チオエステラーゼ2」(ADK16655.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号12)、及び(3)「チオエステラーゼ3」(ADK16959.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号13)が同定されている。このステップはまた、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)+ブチレートキナーゼ(EC2.7.2.7)により触媒してもよい。ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ及びブチレートキナーゼの例となる供給源は、本出願において他で記載されている。クロストリジウム・オートエタノゲナムからのチオエステラーゼのような、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ(またはエシェリキア・コリ)における天然酵素は、このステップを触媒し、いくらかの量の下流産物の産生をもたらし得る。しかしながら、外因性酵素の導入または内因性酵素の過剰発現は、所望のレベルで下流産物を産生するのに必要となり得る。また、特定の実施形態では、破壊的変異は、導入されたPtb−Bukとの競合を低減するか、または排除するために、内因性チオエステラーゼのような内因性酵素に導入され得る。
ステップ3は、アセトアセテートのアセトンへの変換を示す。このステップは、アセトアセテートデカルボキシラーゼ(EC4.1.1.4)により触媒してもよい。アセトアセテートデカルボキシラーゼは、例えば、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのAdc(WP_012059998.1)(配列番号14)であってもよい。このステップはまた、α−ケトイソバレレートデカルボキシラーゼ(EC4.1.1.74)により触媒してもよい。α−ケトイソイソバレレートデカルボキシラーゼは、例えば、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)からのKivD(配列番号15)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。また、エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。まれに、アセトアセテートのアセトンへの変換は自発的に起こり得る。しかしながら、自発的変換は、非常に非効率的であり、所望のレベルでの下流産物の産生をもたらす可能性が低い。
ステップ4は、アセトンのイソプロパノールへの変換を示す。このステップは、第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.2)により触媒してもよい。第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのSecAdh(AGY74782.1)(配列番号16)、クロストリジウム・ユングダリイからのSecAdh(ADK15544.1)(配列番号17)、クロストリジウム・ラグスダレイからのSecAdh(WP_013239134.1)(配列番号18)、またはクロストリジウム・ベイジェリンキイからのSecAdh(WP_026889046.1)(配列番号19)であってもよい。このステップはまた、サーモアナエロバクター・ブロキイ(Thermoanaerobacter brokii)からのSecAdh(3FSR_A)(配列番号20)のような、第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.80)により触媒してもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについての天然活性を有する(Kopke、Appl Environ Microbiol、80:3394−3403、2014)。しかしながら、エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイにおいてこの酵素をノックダウンまたはノックアウトすることは、イソプロパノールではなくアセトンの産生及び蓄積をもたらす(WO2015/085015)。
ステップ5は、アセトンの3−ヒドロキシイソバレレートへの変換を示す。このステップは、ムス・ムスクルス(Mus musculus)からのヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼ(HMG−CoAシンターゼ)(EC2.3.3.10)(配列番号21)のような、ヒドロキシイソバレレートシンターゼにより触媒してもよい(US2012/0110001)。ヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼは、活性を向上させるように操作してもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ6は、3−ヒドロキシイソバレレートのイソブチレン(イソブテン)への変換を示す。このステップは、ヒドロキシイソバレレートホスホリラーゼ/デカルボキシラーゼにより触媒してもよい。このステップはまた、メバロネートジホスフェートデカルボキシラーゼ(ヒドロキシイソバレレートデカルボキシラーゼ)(EC4.1.1.33)により触媒してもよい。メバロネートジホスフェートデカルボキシラーゼは、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)からのMdd(CAA96324.1)(配列番号22)またはピクロフィラス・トリダス(Picrophilus torridus)からのMdd(WP_011178157.1)(配列番号23)であってもよい(US2011/0165644、van Leeuwen、Appl Microbiol Biotechnol、93:1377−1387、2012)。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ7は、アセトンの3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの変換を示す。このステップは、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAシンターゼにより触媒してもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ8は、3−ヒドロキシイソバレリル−CoAの3−ヒドロキシイソバレレートへの変換を示す。このステップは、CoAトランスフェラーゼ(すなわち、アセチル−CoA:アセトアセチル−CoAトランスフェラーゼ)(EC2.8.3.9)により触媒してもよい。CoAトランスフェラーゼは、例えば、クロストリジウム・ベイジェリンキイ(Clostridium beijerinckii)からの、CtfAB、サブユニットCtfA及びCtfBを含むヘテロ二量体(CtfA、WP_012059996.1)(配列番号5)(CtfB、WP_012059997.1)(配列番号6)であってもよい。このステップはまた、チオエステラーゼ(EC3.1.2.20)により触媒してもよい。チオエステラーゼは、例えば、エシェリキア・コリからのTesB(NP_414986.1)(配列番号7)であってもよい。このステップはまた、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムまたはクロストリジウム・ユングダリイからの、推定チオエステラーゼにより触媒してもよい。特に、クロストリジウム・オートエタノゲナムにおいて3つの推定チオエステラーゼ、(1)「チオエステラーゼ1」(AGY74947.1、パルミトイル−CoAヒドロラーゼとしてアノテートされている、配列番号8)、(2)「チオエステラーゼ2」(AGY75747.1、4−ヒドロキシベンゾイル−CoAチオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号9)、及び(3)「チオエステラーゼ3」(AGY75999.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号10)が同定されている。クロストリジウム・ユングダリイにおいても3つの推定チオエステラーゼ、(1)「チオエステラーゼ1」(ADK15695.1、推定アシル−CoAチオエステラーゼ1としてアノテートされている、配列番号11)、(2)「チオエステラーゼ2」(ADK16655.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号12)、及び(3)「チオエステラーゼ3」(ADK16959.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号13)が同定されている。このステップはまた、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)+ブチレートキナーゼ(EC2.7.2.7)により触媒してもよい。ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ及びブチレートキナーゼの例となる供給源は、本出願において他で記載されている。クロストリジウム・オートエタノゲナムからのチオエステラーゼのような、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ(またはエシェリキア・コリ)における天然酵素は、このステップを触媒し、いくらかの量の下流産物の産生をもたらし得る。しかしながら、外因性酵素の導入または内因性酵素の過剰発現は、所望のレベルで下流産物を産生するのに必要となり得る。また、特定の実施形態では、破壊的変異は、導入されたPtb−Bukとの競合を低減するか、または排除するために、内因性チオエステラーゼのような内因性酵素に導入され得る。
ステップ9は、アセチル−CoAの3−メチル−2−オキソペンタノエートへの変換を示す。このステップは、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ(ならびにエシェリキア・コリ)を含む、多くの細菌中に天然に存在する、イソロイシン生合成経路に関与する多数の酵素反応を包含する。アセチル−CoAの3−メチル−2−オキソペンタノエートへの変換に関与する酵素としては、シトラマレートシンターゼ(EC2.3.1.182)、3−イソプロピルマレートデヒドラターゼ(EC4.2.1.35)、3−イソプロピルマレートデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.85)、アセトラクテートシンターゼ(EC2.2.1.6)、ケトール酸レダクトイソメラーゼ(EC1.1.1.86)、及び/またはジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC4.2.1.9)が挙げられ得る。シトラマレートシンターゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのCimA(AGY76958.1)(配列番号24)またはメタノカルドコッカス・ヤンナスキイ(Methanocaldococcus jannaschii)からのCimA(NP_248395.1)(配列番号25)であってもよい。3−イソプロピルマレートデヒドラターゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのLeuCD(WP_023162955.1、LeuC、AGY77204、LeuD)(それぞれ、配列番号26及び27)またはエシェリキア・コリからのLeuCD(NP_414614.1、LeuC、NP_414613.1、LeuD)(それぞれ、配列番号28及び29)であってもよい。3−イソプロピルマレートデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのLeuB(WP_023162957.1)(配列番号30)またはエシェリキア・コリからのLeuB(NP_414615.4)(配列番号31)であってもよい。アセトラクテートシンターゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのIlvBN(AGY74359.1、IlvB、AGY74635.1、IlvB、AGY74360.1、IlvN)(それぞれ、配列番号32、33、及び34)またはエシェリキア・コリからのIlvBN(NP_418127.1、IlvB、NP_418216.1、IlvN)(それぞれ、配列番号35及び36)であってもよい。ケトール酸レダクトイソメラーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのIlvC(WP_013238693.1)(配列番号37)またはエシェリキア・コリからのIlvC(NP_418222.1)(配列番号38)であってもよい。ジヒドロキシ酸デヒドラターゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのIlvD(WP_013238694.1)(配列番号39)またはエシェリキア・コリからのIlvD(YP_026248.1)(配列番号40)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについての天然活性を有する。
ステップ10は、3−メチル−2−オキソペンタノエートの2−メチルブタノイル−CoAへの変換を示す。このステップは、ケトイソバレレートオキシドレダクターゼ(EC1.2.7.7)により触媒してもよい。ケトイソバレレートオキシドレダクターゼは、例えば、メタノサーモバクター・サームオートトロフィカス(Methanothermobacter thermautotrophicus)からのVorABCD(WP_010876344.1、VorA、WP_010876343.1、VorB、WP_010876342.1、VorC、WP_010876341.1、VorD)(それぞれ、配列番号41〜44)またはパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)からのVorABCD(WP_011012106.1、VorA、WP_011012105.1、VorB、WP_011012108.1、VorC、WP_011012107.1、VorD)(それぞれ、配列番号45〜48)であってもよい。VorABCDは、4サブユニット酵素である。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ11は、2−メチルブタノイル−CoAの2−メチルクロトニル−CoAへの変換を示す。このステップは、2−メチルブタノイル−CoAデヒドロゲナーゼ(EC1.3.99.12)により触媒してもよい。2−メチルブタノイル−CoAデヒドロゲナーゼは、例えば、ストレプトマイセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)からのAcdH(AAD44196.1もしくはBAB69160.1)(配列番号49)またはストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)からのAcdH(AAD44195.1)(配列番号50)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ12は、2−メチルクロトニル−CoAの3−ヒドロキシイソバレリル−CoAへの変換を示す。このステップは、クロトナーゼ/3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドラターゼ(EC4.2.1.55)により触媒してもよい。クロトナーゼ/3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドラターゼは、例えば、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのCrt(ABR34202.1)(配列番号51)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのCrt(NP_349318.1)(配列番号52)、またはミクソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)からのLiuC(WP_011553770.1)であってもよい。このステップはまた、クロトニル−CoAカルボキシラーゼ−レダクターゼ(EC1.3.1.86)により触媒してもよい。クロトニル−CoAカルボキシラーゼ−レダクターゼは、例えば、トレポネマ・デンチコラ(Treponema denticola)からのCcr(NP_971211.1)(配列番号53)であってもよい。このステップはまた、クロトニル−CoAレダクターゼ(EC1.3.1.44)により触媒してもよい。クロトニル−CoAレダクターゼは、例えば、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)からのTer(AAW66853.1)(配列番号54)であってもよい。このステップはまた、3−ヒドロキシプロピオニル−CoAデヒドラターゼ(EC4.2.1.116)により触媒してもよい。この3−ヒドロキシプロピオニル−CoAデヒドラターゼは、例えば、メタロスフェラ・セデュラ(Metallosphaera sedula)からのMsed_2001(WP_012021928.1)であってもよい。このステップはまた、エノイル−CoAヒドラターゼにより触媒してもよい。このエノイル−CoAヒドラターゼ(4.2.1.17)は、例えば、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)からのYngF(WP_000787371.1)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ13は、アセトアセチル−CoAの3−ヒドロキシブチリル−CoAへの変換を示す。このステップは、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.157)により触媒してもよい。3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのHbd(WP_011967675.1)(配列番号55)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのHbd(NP_349314.1)(配列番号56)、またはクロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)からのHbd1(WP_011989027.1)(配列番号57)であってもよい。このステップはまた、アセトアセチル−CoAレダクターゼ(EC4.2.1.36)により触媒してもよい。アセトアセチル−CoAレダクターゼは、例えば、カプリアビダス・ネカトールからのPhaB(WP_010810131.1)(配列番号58)であってもよい。このステップはまた、アセトアセチル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.119)により触媒してもよい。留意点として、PhaBはR特異的であり、HbdはS特異的である。また、クロストリジウム・クルイベリからのHbd1はNADPH依存的であり、クロストリジウム・アセトブチリカム及びクロストリジウム・ベイジェリンキイからのHbdはNADH依存的である。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ14は、3−ヒドロキシブチリル−CoAの3−ヒドロキシブチレートへの変換を示す。このステップは、チオエステラーゼ(EC3.1.2.20)により触媒してもよい。チオエステラーゼは、例えば、エシェリキア・コリからのTesB(NP_414986.1)(配列番号7)であってもよい。このステップはまた、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムまたはクロストリジウム・ユングダリイからの、推定チオエステラーゼにより触媒してもよい。特に、クロストリジウム・オートエタノゲナムにおいて3つの推定チオエステラーゼ、(1)「チオエステラーゼ1」(AGY74947.1、パルミトイル−CoAヒドロラーゼとしてアノテートされている、配列番号8)、(2)「チオエステラーゼ2」(AGY75747.1、4−ヒドロキシベンゾイル−CoAチオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号9)、及び(3)「チオエステラーゼ3」(AGY75999.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号10)が同定されている。クロストリジウム・ユングダリイにおいても3つの推定チオエステラーゼ、(1)「チオエステラーゼ1」(ADK15695.1、推定アシル−CoAチオエステラーゼ1としてアノテートされている、配列番号11)、(2)「チオエステラーゼ2」(ADK16655.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号12)、及び(3)「チオエステラーゼ3」(ADK16959.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号13)が同定されている。このステップはまた、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)+ブチレートキナーゼ(EC2.7.2.7)により触媒してもよい。ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ及びブチレートキナーゼの例となる供給源は、本出願において他で記載されている。クロストリジウム・オートエタノゲナムからのチオエステラーゼのような、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ(またはエシェリキア・コリ)における天然酵素は、このステップを触媒し、いくらかの量の下流産物の産生をもたらし得る。しかしながら、外因性酵素の導入または内因性酵素の過剰発現は、所望のレベルで下流産物を産生するのに必要となり得る。また、特定の実施形態では、破壊的変異は、導入されたPtb−Bukとの競合を低減するか、または排除するために、内因性チオエステラーゼのような内因性酵素に導入され得る。
ステップ15は、3−ヒドロキシブチレートのアセトアセテートへの変換を示す。このステップは、3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.30)により触媒してもよい。3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼは、例えば、ラルストニア・ピケッティイ(Ralstonia pickettii)からのBdh1(BAE72684.1)(配列番号60)またはラルストニア・ピケッティイからのBdh2(BAE72685.1)(配列番号61)であってもよい。逆反応、アセトアセテートの3−ヒドロキシブチレートへの変換は、異なる3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.30)により触媒してもよい。例えば、アセトアセテートの3−ヒドロキシブチレートへの変換は、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのBdh(AGY75962)(配列番号62)により触媒してもよい。クロストリジウム・ユングダリイ及びクロストリジウム・ラグスダレイは、おそらく同様の活性を有する酵素を有する。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ16は、3−ヒドロキシブチレートの3−ヒドロキシブチリルアルデヒドへの変換を示す。このステップは、アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(EC1.2.7.5)により触媒してもよい。アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(AOR)は、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのAOR(WP_013238665.1、WP_013238675.1)(それぞれ、配列番号63及び64)またはクロストリジウム・ユングダリイからのAOR(ADK15073.1、ADK15083.1)(それぞれ、配列番号65及び66)であってもよい。さらなる実施形態では、アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼは、例えば、その配列が公表されている、下記の供給源のいずれかであってもよく、またはこれに由来してもよい。
AORは、アルデヒド及び酸化フェレドキシンを形成する酸及び還元フェレドキシンの反応を触媒する。アセトゲンにおいて、この反応は、共に還元フェレドキシンをもたらす酸化CO(COデヒドロゲナーゼ、EC1.2.7.4を通して)または水素(フェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼ、EC1.12.7.2もしくは1.12.1.4を通して)と共役することができる(Kopke、Curr Opin Biotechnol 22:320−325、2011、Kopke、PNAS USA、107:13087−13092、2010)。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについての天然活性を有する。しかしながら、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイにおける内因性AORの過剰発現または外因性AORの導入は、産物収率を向上させるのに望ましい場合があり得る。あるいは、外因性AORを、AORを天然に含まない微生物、例えば、E・コリに導入してもよい。特に、Ptb−Buk及びAOR(ならびに、任意で、Adh)の共発現は、こうした微生物が新たな非天然産物を産生することを可能にし得る。
ステップ17は、3−ヒドロキシブチリルアルデヒドの1,3−ブタンジオールへの変換を示す。このステップは、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.1.または1.1.1.2.)により触媒してもよい。アルコールデヒドロゲナーゼは、アルデヒド及びNAD(P)Hをアルコール及びNAD(P)に変換することができる。アルコールデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(AGY76060.1)(配列番号67)、クロストリジウム・ユングダリイ(ADK17019.1)(配列番号68)、もしくはクロストリジウム・ラグスダレイからのAdh、クロストリジウム・アセトブチリカムからのBdhB(NP_349891.1)(配列番号69)、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのBdh(WP_041897187.1)(配列番号70)、クロストリジウム・ユングダリイからのBdh1(YP_003780648.1)(配列番号71)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのBdh1(AGY76060.1)(配列番号72)、クロストリジウム・ユングダリイからのBdh2(YP_003782121.1)(配列番号73)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのBdh2(AGY74784.1)(配列番号74)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのAdhE1(NP_149325.1)(配列番号75)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのAdhE2(NP_149199.1)(配列番号76)、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのAdhE(WP_041893626.1)(配列番号77)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのAdhE1(WP_023163372.1)(配列番号78)、またはクロストリジウム・オートエタノゲナムからのAdhE2(WP_023163373.1)(配列番号79)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについての天然活性を有する。しかしながら、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイにおける内因性アルコールデヒドロゲナーゼの過剰発現または外因性アルコールデヒドロゲナーゼの導入は、産物収率を向上させるのに望ましい場合があり得る。エシェリキア・コリは、おそらくこのステップについての天然活性を有しない。
ステップ18は、3−ヒドロキシブチリル−CoAの3−ヒドロキシブチリルアルデヒドへの変換を示す。このステップは、ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC1.2.1.57)により触媒してもよい。ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・サッカロペルブチルアセトニカム(Clostridium saccharoperbutylacetonicum)からのBld(AAP42563.1)(配列番号80)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ19は、3−ヒドロキシブチリル−CoAの2−ヒドロキシイソブチリル−CoAへの変換を示す。このステップは、2−ヒドロキシイソブチリル−CoAムターゼ(EC5.4.99.−)により触媒してもよい。2−ヒドロキシイソブチリル−CoAムターゼは、例えば、アクインコラ・テルチアリカルボニス(Aquincola tertiaricarbonis)からのHcmAB(AFK77668.1、大サブユニット、AFK77665.1、小サブユニット)(それぞれ、配列番号81及び82)またはキルピジア・ツシアエ(Kyrpidia tusciae)からのHcmAB(WP_013074530.1、大サブユニット、WP_013074531.1、小サブユニット)(それぞれ、配列番号83及び84)であってもよい。シャペロンMeaB(AFK77667.1、アクインコラ・テルチアリカルボニス、WP_013074529.1、キルピジア・ツシアエ)(それぞれ、配列番号85及び86)は、HcmAB機能にMeaBは必要ないが、HcmABを再活性化することによりHcmABの活性を向上させることが記載されている(Yaneva、J Biol Chem、287:15502−15511、2012)。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ20は、2−ヒドロキシイソブチリル−CoAの2−ヒドロキシイソブチレートへの変換を示す。このステップは、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)+ブチレートキナーゼ(EC2.7.2.7)により触媒してもよい。ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ及びブチレートキナーゼの例となる供給源は、本出願において他で記載されている。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ21は、アセチル−CoAのスクシニル−CoAへの変換を示す。このステップは、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ(ならびにエシェリキア・コリ)を含む、多くの細菌中に天然に存在する、還元的TCA経路に関与する多数の酵素反応を包含する(Brown、Biotechnol Biofuels、7:40、2014、米国特許第9,297,026号)。アセチル−CoAのスクシニル−CoAへの変換に関与する酵素としては、ピルベート:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(PFOR)(EC1.2.7.1)、ピルベートカルボキシラーゼ(PYC)(EC6.4.1.1)、マリック酵素/マレートデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.38、EC1.1.1.40)、ピルベートホスフェートジキナーゼ(PPDK)(EC2.7.9.1)、PEPカルボキシキナーゼ(PCK)(EC4.1.1.49)、フマレートヒドラターゼ/フメラーゼ(EC4.2.1.2)、フマレートレダクターゼ(EC1.3.5.1)/スクシネートデヒドロゲナーゼ(EC1.3.5.4)、及びスクシニル−CoAシンセターゼ(EC6.2.1.5)が挙げられ得る。ピルベート:フェレドキシンオキシドレダクターゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(AGY75153、AGY77232)またはエシェリキア・コリ(NP_415896)からであってもよい。ピルベートカルボキシラーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(AGY75817)からであってもよい。マリック酵素/マレートデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(AGY76687)またはエシェリキア・コリ(NP_416714、NP_417703)からであってもよい。ピルベートホスフェートジキナーゼ(PPDK)は、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(AGY76274、AGY77114)からであってもよい。PEPカルボキシキナーゼ(PCK)は、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(AGY76928)またはエシェリキア・コリ(NP_417862)からであってもよい。フマレートヒドラターゼ/フメラーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(AGY76121、AGY76122)またはエシェリキア・コリ(NP_416128、NP_416129、NP_418546)からであってもよい。フマレートレダクターゼ/スクシネートデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(AGY74573、AGY74575、AGY75257、AGY77166)またはエシェリキア・コリ(NP_415249、NP_415250、NP_415251、NP_415252、NP_418575、NP_418576、NP_418577、NP_418578)からであってもよい。スクシニル−CoAシンセターゼは、例えば、エシェリキア・コリ(NP_415256、NP_415257)からであってもよい。
ステップ22は、アセチル−CoA及びスクシニル−CoAの3−オキソ−アジピル−CoAへの変換を示す。このステップは、β−ケトアジピル−CoAチオラーゼ(EC2.3.1.16)により触媒してもよい。ケトイソバレレートオキシドレダクターゼは、例えば、エシェリキア・コリからのPaaJ(WP_001206190.1)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ23は、3−オキソ−アジピル−CoAの3−ヒドロキシアジピル−CoAへの変換を示す。このステップは、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.157)またはアセトアセチル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.119)により触媒してもよい。3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼまたはアセトアセチル−CoAヒドラターゼは、例えば、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのHbd(WP_011967675.1)(配列番号55)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのHbd(NP_349314.1)(配列番号56)、クロストリジウム・クルイベリからのHbd1(WP_011989027.1)(配列番号57)、またはカプリアビダス・ネカトールからのPaaH1(WP_010814882.1)であってもよい。留意点として、PhaBはR特異的であり、HbdはS特異的である。また、クロストリジウム・クルイベリからのHbd1はNADPH依存的であり、クロストリジウム・アセトブチリカム及びクロストリジウム・ベイジェリンキイからのHbdはNADH依存的である。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ24は、3−ヒドロキシアジピル−CoAの2,3−デヒドロアジピル−CoAへの変換を示す。このステップは、エノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.17)またはエノイル−CoAレダクターゼ(EC1.3.1.38)により触媒してもよい。エノイル−CoAヒドラターゼまたはエノイル−CoAレダクターゼは、例えば、C・アセトブチリカムからのCrt(NP_349318.1)またはアエロモナス・カビエ(Aeromonas caviae)からのPhaJ(O32472)(配列番号52)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ25は、2,3−デヒドロアジピル−CoAのアジピル−CoAへの変換を示す。このステップは、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(EC1.3.8.1、EC1.3.1.86、EC1.3.1.85、EC1.3.1.44)により触媒してもよい。トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼは、例えば、電子フラボタンパク質EtfAB(NP_349315、NP_349316)と複合体を形成するC・アセトブチリカムからのBcd(NP_349317.1)、ストレプトマイセス・コリヌス(Streptomyces collinus)からのCcr(AAA92890)、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)からのCcr(YP_354044.1)、トレポネマ・デンチコラからのTer(NP_971211.1)、またはユーグレナ・グラシリスからのTer(AY741582.1)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ26は、アジピル−CoAのアジピン酸への変換を示す。このステップは、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)+ブチレートキナーゼ(EC2.7.2.7)により触媒してもよい。ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ及びブチレートキナーゼの例となる供給源は、本出願において他で記載されている。クロストリジウム・オートエタノゲナムからのチオエステラーゼのような、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ(またはエシェリキア・コリ)における天然酵素は、このステップを触媒し、いくらかの量の下流産物の産生をもたらし得る。しかしながら、外因性酵素の導入または内因性酵素の過剰発現は、所望のレベルで下流産物を産生するのに必要となり得る。また、特定の実施形態では、破壊的変異は、導入されたPtb−Bukとの競合を低減するか、または排除するために、内因性チオエステラーゼのような内因性酵素に導入され得る。
ステップ27は、3−ヒドロキシブチリル−CoAの3−クロトニル−CoAへの変換を示す。このステップは、クロトニル−CoAヒドラターゼ(クロトナーゼ)(EC4.2.1.17)またはクロトニル−CoAレダクターゼ(EC1.3.1.38)により触媒してもよい。クロトニル−CoAヒドラターゼ(クロトナーゼ)またはクロトニル−CoAレダクターゼは、例えば、C・アセトブチリカムからのCrt(NP_349318.1)(配列番号52)またはアエロモナス・カビエからのPhaJ(O32472)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ28は、クロトニル−CoAのクロトネートへの変換を示す。このステップは、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)+ブチレートキナーゼ(EC2.7.2.7)により触媒してもよい。ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ及びブチレートキナーゼの例となる供給源は、本出願において他で記載されている。クロストリジウム・オートエタノゲナムからのチオエステラーゼのような、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ(またはエシェリキア・コリ)における天然酵素は、このステップを触媒し、いくらかの量の下流産物の産生をもたらし得る。しかしながら、外因性酵素の導入または内因性酵素の過剰発現は、所望のレベルで下流産物を産生するのに必要となり得る。また、特定の実施形態では、破壊的変異は、導入されたPtb−Bukとの競合を低減するか、または排除するために、内因性チオエステラーゼのような内因性酵素に導入され得る。
ステップ29は、クロトネートのクロトンアルデヒドへの変換を示す。このステップは、アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(EC1.2.7.5)により触媒してもよい。アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼの例となる供給源は、本出願において他で記載されている。AORは、アルデヒド及び酸化フェレドキシンを形成する酸及び還元フェレドキシンの反応を触媒する。アセトゲンにおいて、この反応は、共に還元フェレドキシンをもたらす酸化CO(COデヒドロゲナーゼ、EC1.2.7.4を通して)または水素(フェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼ、EC1.12.7.2もしくは1.12.1.4を通して)と共役することができる(Kopke、Curr Opin Biotechnol 22:320−325、2011、Kopke、PNAS USA、107:13087−13092、2010)。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについての天然活性を有する。しかしながら、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイにおける内因性AORの過剰発現または外因性AORの導入は、産物収率を向上させるのに望ましい場合があり得る。パイロコッカス・フリオサスのAORは、クロトンアルデヒド及びクロトネートを変換する活性について実証されている(Loes、J Bacteriol、187:7056−7061、2005)。あるいは、外因性AORを、AORを天然に含まない微生物、例えば、E・コリに導入してもよい。特に、Ptb−Buk及びAOR(ならびに、任意で、Adh)の共発現は、こうした微生物が新たな非天然産物を産生することを可能にし得る。
ステップ30は、クロトンアルデヒドの2−ブテン−1−オールへの変換を示す。このステップは、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.1.または1.1.1.2.)により触媒してもよい。アルコールデヒドロゲナーゼは、アルデヒド及びNAD(P)Hをアルコール及びNAD(P)に変換することができる。アルコールデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(AGY76060.1)(配列番号67)、クロストリジウム・ユングダリイ(ADK17019.1)(配列番号68)、もしくはクロストリジウム・ラグスダレイからのAdh、クロストリジウム・アセトブチリカムからのBdhB(NP_349891.1)(配列番号69)、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのBdh(WP_041897187.1)(配列番号70)、クロストリジウム・ユングダリイからのBdh1(YP_003780648.1)(配列番号71)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのBdh1(AGY76060.1)(配列番号72)、クロストリジウム・ユングダリイからのBdh2(YP_003782121.1)(配列番号73)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのBdh2(AGY74784.1)(配列番号74)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのAdhE1(NP_149325.1)(配列番号75)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのAdhE2(NP_149199.1)(配列番号76)、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのAdhE(WP_041893626.1)(配列番号77)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのAdhE1(WP_023163372.1)(配列番号78)、またはクロストリジウム・オートエタノゲナムからのAdhE2(WP_023163373.1)(配列番号79)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについての天然活性を有する。しかしながら、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイにおける内因性アルコールデヒドロゲナーゼの過剰発現または外因性アルコールデヒドロゲナーゼの導入は、産物収率を向上させるのに望ましい場合があり得る。エシェリキア・コリは、おそらくこのステップについての天然活性を有しない。
ステップ31は、クロトニル−CoAのブチリル−CoAへの変換を示す。このステップは、ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼまたはトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(EC1.3.8.1、EC1.3.1.86、EC1.3.1.85、EC1.3.1.44)により触媒してもよい。ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼまたはトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼは、例えば、電子フラボタンパク質EtfAB(NP_349315、NP_349316)と複合体を形成するC・アセトブチリカムからのBcd(NP_349317.1)、ストレプトマイセス・コリヌスからのCcr(AAA92890)、ロドバクター・スファエロイデスからのCcr(YP_354044.1)、トレポネマ・デンチコラからのTer(NP_971211.1)、またはユーグレナ・グラシリスからのTer(AY741582.1)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ32は、ブチリル−CoAのアセトブチリル−CoAへの変換を示す。このステップは、チオラーゼまたはアシル−CoAアセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)により触媒してもよい。チオラーゼは、例えば、クロストリジウム・アセトブチリカムからのThlA(WP_010966157.1)(配列番号1)、クロストリジウム・クルイベリからのThlA1(EDK35681)、クロストリジウム・クルイベリからのThlA2(EDK35682)、クロストリジウム・クルイベリからのThlA3(EDK35683)、カプリアビダス・ネカトールからのPhaA(WP_013956452.1)(配列番号2)、カプリアビダス・ネカトールからのBktB(WP_011615089.1)(配列番号3)、またはエシェリキア・コリからのAtoB(NP_416728.1)(配列番号4)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについての天然活性を有する。
ステップ33は、アセトブチリル−CoAのアセトブチレートへの変換を示す。このステップは、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)+ブチレートキナーゼ(EC2.7.2.7)により触媒してもよい。ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ及びブチレートキナーゼの例となる供給源は、本出願において他で記載されている。クロストリジウム・オートエタノゲナムからのチオエステラーゼのような、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ(またはエシェリキア・コリ)における天然酵素は、このステップを触媒し、いくらかの量の下流産物の産生をもたらし得る。しかしながら、外因性酵素の導入または内因性酵素の過剰発現は、所望のレベルで下流産物を産生するのに必要となり得る。また、特定の実施形態では、破壊的変異は、導入されたPtb−Bukとの競合を低減するか、または排除するために、内因性チオエステラーゼのような内因性酵素に導入され得る。
ステップ34は、アセトブチレートのアセチルアセトンへの変換を示す。このステップは、アセトアセテートデカルボキシラーゼ(EC4.1.1.4)により触媒してもよい。アセトアセテートデカルボキシラーゼは、例えば、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのAdc(WP_012059998.1)(配列番号14)であってもよい。このステップはまた、α−ケトイソバレレートデカルボキシラーゼ(EC4.1.1.74)により触媒してもよい。α−ケトイソイソバレレートデカルボキシラーゼは、例えば、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)からのKivD(配列番号15)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。また、エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。まれに、アセトアセテートのアセトンへの変換は自発的に起こり得る。しかしながら、自発的変換は、非常に非効率的であり、所望のレベルでの下流産物の産生をもたらす可能性が低い。
ステップ35は、アセチルアセトンの3−メチル−2−ブタノールへの変換を示す。このステップは、第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.2)により触媒してもよい。第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのSecAdh(AGY74782.1)(配列番号16)、クロストリジウム・ユングダリイからのSecAdh(ADK15544.1)(配列番号17)、クロストリジウム・ラグスダレイからのSecAdh(WP_013239134.1)(配列番号18)、またはクロストリジウム・ベイジェリンキイからのSecAdh(WP_026889046.1)(配列番号19)であってもよい。このステップはまた、サーモアナエロバクター・ブロキイ(Thermoanaerobacter brokii)からのSecAdh(3FSR_A)(配列番号20)のような、第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.80)により触媒してもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについての天然活性を有する(Kopke、Appl Environ Microbiol、80:3394−3403、2014)。しかしながら、エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイにおいてこの酵素をノックダウンまたはノックアウトすることは、3−メチル−2−ブタノールではなくアセチルアセトンの産生及び蓄積をもたらす(WO2015/085015)。
ステップ36は、アセトブチリル−CoAの3−ヒドロキシヘキサノイル−CoAへの変換を示す。このステップは、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.157)またはアセトアセチル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.119)により触媒してもよい。3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼまたはアセトアセチル−CoAヒドラターゼは、例えば、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのHbd(WP_011967675.1)(配列番号55)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのHbd(NP_349314.1)(配列番号56)、クロストリジウム・クルイベリからのHbd1(WP_011989027.1)(配列番号57)、クロストリジウム・クルイベリからのHbd2(EDK34807)、またはカプリアビダス・ネカトールからのPaaH1(WP_010814882.1)であってもよい。留意点として、PhaBはR特異的であり、HbdはS特異的である。また、クロストリジウム・クルイベリからのHbd1はNADPH依存的であり、クロストリジウム・アセトブチリカム及びクロストリジウム・ベイジェリンキイからのHbdはNADH依存的である。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ37は、3−ヒドロキシヘキサノイル−CoAの3−ヒドロキシヘキサノエートへの変換を示す。このステップは、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)+ブチレートキナーゼ(EC2.7.2.7)により触媒してもよい。ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ及びブチレートキナーゼの例となる供給源は、本出願において他で記載されている。クロストリジウム・オートエタノゲナムからのチオエステラーゼのような、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ(またはエシェリキア・コリ)における天然酵素は、このステップを触媒し、いくらかの量の下流産物の産生をもたらし得る。しかしながら、外因性酵素の導入または内因性酵素の過剰発現は、所望のレベルで下流産物を産生するのに必要となり得る。また、特定の実施形態では、破壊的変異は、導入されたPtb−Bukとの競合を低減するか、または排除するために、内因性チオエステラーゼのような内因性酵素に導入され得る。
ステップ38は、3−ヒドロキシヘキサノエートの1,3−ヘキサアルデヒドへの変換を示す。このステップは、アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(EC1.2.7.5)により触媒してもよい。アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼの例となる供給源は、本出願において他で記載されている。AORは、アルデヒド及び酸化フェレドキシンを形成する酸及び還元フェレドキシンの反応を触媒する。アセトゲンにおいて、この反応は、共に還元フェレドキシンをもたらす酸化CO(COデヒドロゲナーゼ、EC1.2.7.4を通して)または水素(フェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼ、EC1.12.7.2もしくは1.12.1.4を通して)と共役することができる(Kopke、Curr Opin Biotechnol 22:320−325、2011、Kopke、PNAS USA、107:13087−13092、2010)。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについての天然活性を有する。しかしながら、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイにおける内因性AORの過剰発現または外因性AORの導入は、産物収率を向上させるのに望ましい場合があり得る。あるいは、外因性AORを、AORを天然に含まない微生物、例えば、E・コリに導入してもよい。特に、Ptb−Buk及びAOR(ならびに、任意で、Adh)の共発現は、こうした微生物が新たな非天然産物を産生することを可能にし得る。
ステップ39は、1,3−ヘキサアルデヒドの1,3−ヘキサンジオールへの変換を示す。このステップは、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.1.または1.1.1.2.)により触媒してもよい。アルコールデヒドロゲナーゼは、アルデヒド及びNAD(P)Hをアルコール及びNAD(P)に変換することができる。アルコールデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(AGY76060.1)(配列番号67)、クロストリジウム・ユングダリイ(ADK17019.1)(配列番号68)、もしくはクロストリジウム・ラグスダレイからのAdh、クロストリジウム・アセトブチリカムからのBdhB(NP_349891.1)(配列番号69)、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのBdh(WP_041897187.1)(配列番号70)、クロストリジウム・ユングダリイからのBdh1(YP_003780648.1)(配列番号71)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのBdh1(AGY76060.1)(配列番号72)、クロストリジウム・ユングダリイからのBdh2(YP_003782121.1)(配列番号73)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのBdh2(AGY74784.1)(配列番号74)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのAdhE1(NP_149325.1)(配列番号75)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのAdhE2(NP_149199.1)(配列番号76)、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのAdhE(WP_041893626.1)(配列番号77)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのAdhE1(WP_023163372.1)(配列番号78)、またはクロストリジウム・オートエタノゲナムからのAdhE2(WP_023163373.1)(配列番号79)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについての天然活性を有する。しかしながら、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイにおける内因性アルコールデヒドロゲナーゼの過剰発現または外因性アルコールデヒドロゲナーゼの導入は、産物収率を向上させるのに望ましい場合があり得る。エシェリキア・コリは、おそらくこのステップについての天然活性を有しない。
ステップ40は、アセトアセチル−CoAの3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAへの変換を示す。このステップは、ヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼ(HMG−CoAシンターゼ)(EC2.3.3.10)により触媒してもよい。HMG−CoAシンターゼは、生物の多くの属及び界にわたって広く存在し、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)からのMvaS(WP_053014863.1)、サッカロマイセス・セレビシエからのERG13(NP_013580.1)、ムス・ムスクルスからのHMGCS2(NP_032282.2)、及び酵素のEC2.3.3.10グループの多くの他のメンバーが含まれる。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ41は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタノイル−CoAの3−メチルグルコニル−CoAへの変換を示す。このステップは、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドラターゼ(EC4.2.1.55)により触媒してもよい。3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドラターゼは、例えば、ミクソコッカス・キサンタスからのLiuC(WP_011553770.1)であってもよい。このステップはまた、短鎖エノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.150)またはエノイル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.17)により触媒してもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ42は、3−メチルグルコニル−CoAの2−メチルクロトニル−CoAへの変換を示す。このステップは、メチルクロトニル−CoAデカルボキシラーゼ(グルタコネート−CoAトランスフェラーゼ(EC2.8.3.12)との高い構造的類似性を有する)、例えば、ミクソコッカス・キサンタスからのaibAB(WP_011554267.1及びWP_011554268.1)により触媒してもよい。このステップはまた、メチルクロトノイル−CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.4)、例えば、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)からのLiuDB(NP_250702.1及びNP_250704.1)またはアラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)からのMCCA及びMCCB(NP_563674.1及びNP_567950.1)により触媒してもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ43は、メチルクロトニル−CoAのイソバレリル−CoAへの変換を示す。このステップは、オキシドレダクターゼ、亜鉛結合デヒドロゲナーゼにより触媒してもよい。このオキシドレダクターゼ、亜鉛結合デヒドロゲナーゼは、例えば、ミクソコッカス・キサンタスからのAibC(WP_011554269.1)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについて知られている天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
ステップ44は、イソバレリル−CoAのイソバレレートへの変換を示す。このステップは、CoAトランスフェラーゼ(すなわち、アセチル−CoA:アセトアセチル−CoAトランスフェラーゼ)(EC2.8.3.9)により触媒してもよい。CoAトランスフェラーゼは、例えば、クロストリジウム・ベイジェリンキイ(Clostridium beijerinckii)からの、CtfAB、サブユニットCtfA及びCtfBを含むヘテロ二量体(CtfA、WP_012059996.1)(配列番号5)(CtfB、WP_012059997.1)(配列番号6)であってもよい。このステップはまた、チオエステラーゼ(EC3.1.2.20)により触媒してもよい。チオエステラーゼは、例えば、エシェリキア・コリからのTesB(NP_414986.1)(配列番号7)であってもよい。このステップはまた、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムまたはクロストリジウム・ユングダリイからの、推定チオエステラーゼにより触媒してもよい。特に、クロストリジウム・オートエタノゲナムにおいて3つの推定チオエステラーゼ、(1)「チオエステラーゼ1」(AGY74947.1、パルミトイル−CoAヒドロラーゼとしてアノテートされている、配列番号8)、(2)「チオエステラーゼ2」(AGY75747.1、4−ヒドロキシベンゾイル−CoAチオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号9)、及び(3)「チオエステラーゼ3」(AGY75999.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号10)が同定されている。クロストリジウム・ユングダリイにおいても3つの推定チオエステラーゼ、(1)「チオエステラーゼ1」(ADK15695.1、推定アシル−CoAチオエステラーゼ1としてアノテートされている、配列番号11)、(2)「チオエステラーゼ2」(ADK16655.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号12)、及び(3)「チオエステラーゼ3」(ADK16959.1、推定チオエステラーゼとしてアノテートされている、配列番号13)が同定されている。このステップはまた、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.19)+ブチレートキナーゼ(EC2.7.2.7)により触媒してもよい。ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ及びブチレートキナーゼの例となる供給源は、本出願において他で記載されている。クロストリジウム・オートエタノゲナムからのチオエステラーゼのような、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ(またはエシェリキア・コリ)における天然酵素は、このステップを触媒し、いくらかの量の下流産物の産生をもたらし得る。しかしながら、外因性酵素の導入または内因性酵素の過剰発現は、所望のレベルで下流産物を産生するのに必要となり得る。また、特定の実施形態では、破壊的変異は、導入されたPtb−Bukとの競合を低減するか、または排除するために、内因性チオエステラーゼのような内因性酵素に導入され得る。
ステップ45は、イソバレレートのイソバレルアルデヒドへの変換を示す。このステップは、アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(EC1.2.7.5)により触媒してもよい。アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(AOR)は、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのAOR(WP_013238665.1、WP_013238675.1)(それぞれ、配列番号63及び64)またはクロストリジウム・ユングダリイからのAOR(ADK15073.1、ADK15083.1)(それぞれ、配列番号65及び66)であってもよい。アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼのさらなる例となる供給源は、本出願において他で記載されている。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについての天然活性を有する。しかしながら、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイにおける内因性AORの過剰発現または外因性AORの導入は、産物収率を向上させるのに望ましい場合があり得る。あるいは、外因性AORを、AORを天然に含まない微生物、例えば、E・コリに導入してもよい。特に、Ptb−Buk及びAOR(ならびに、任意で、Adh)の共発現は、こうした微生物が新たな非天然産物を産生することを可能にし得る。
ステップ46は、イソバレルアルデヒドのイソアミルアルコールへの変換を示す。このステップは、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.1.または1.1.1.2.)により触媒してもよい。アルコールデヒドロゲナーゼは、アルデヒド及びNAD(P)Hをアルコール及びNAD(P)に変換することができる。アルコールデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(AGY76060.1)(配列番号67)、クロストリジウム・ユングダリイ(ADK17019.1)(配列番号68)、もしくはクロストリジウム・ラグスダレイからのAdh、クロストリジウム・アセトブチリカムからのBdhB(NP_349891.1)(配列番号69)、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのBdh(WP_041897187.1)(配列番号70)、クロストリジウム・ユングダリイからのBdh1(YP_003780648.1)(配列番号71)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのBdh1(AGY76060.1)(配列番号72)、クロストリジウム・ユングダリイからのBdh2(YP_003782121.1)(配列番号73)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのBdh2(AGY74784.1)(配列番号74)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのAdhE1(NP_149325.1)(配列番号75)、クロストリジウム・アセトブチリカムからのAdhE2(NP_149199.1)(配列番号76)、クロストリジウム・ベイジェリンキイからのAdhE(WP_041893626.1)(配列番号77)、クロストリジウム・オートエタノゲナムからのAdhE1(WP_023163372.1)(配列番号78)、またはクロストリジウム・オートエタノゲナムからのAdhE2(WP_023163373.1)(配列番号79)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、このステップについての天然活性を有する。しかしながら、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイにおける内因性アルコールデヒドロゲナーゼの過剰発現または外因性アルコールデヒドロゲナーゼの導入は、産物収率を向上させるのに望ましい場合があり得る。エシェリキア・コリは、おそらくこのステップについての天然活性を有しない。
ステップ47は、イソバレリル−CoAのイソバレルアルデヒドへの変換を示す。このステップは、ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC1.2.1.57)により触媒してもよい。ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼは、例えば、クロストリジウム・サッカロペルブチルアセトニカム(Clostridium saccharoperbutylacetonicum)からのBld(AAP42563.1)(配列番号80)であってもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、おそらくこのステップについての天然活性を有しない。エシェリキア・コリは、このステップについて知られている天然活性を有しない。
Ptb−Bukの概説
本発明は、Ptb−Buk酵素系を利用する新たな経路を提供する。天然では、この酵素系は、ブチレート産生クロストリジウムまたはブチリビブリオのような、様々なブチレート産生微生物において見られる。特に、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼ(Ptb)(EC2.3.1.19)は、CoA+ブタノイルホスフェートを形成するブタノイル−CoA+ホスフェートの反応を天然に触媒し、ブチレートキナーゼ(Buk)(EC2.7.2.7)は、ブチレート(ブタノエート)及びATPを形成するブタノイルホスフェート及びADPの反応を天然に触媒する。したがって、これらの酵素は共に(Ptb−Buk)、ブタノイル−CoAのブチレートへの変換を天然に触媒し、基質レベルのリン酸化を通して1つのATPを発生させる(図2)。しかしながら、本発明者らは、Ptbが無差別的であり、様々なアシル−CoA及びエノイル−CoAを基質として受け入れることができ、Ptb−Bukが、同時にATPを発生させながら、多数のアシル−CoA及びエノイル−CoAを、それぞれ、それらの対応する酸またはアルケネートに変換するのに使用され得ることを発見した。Ptbは、インビトロで、アセトアセチル−CoAを含む様々なアシル−CoAに対して活性であることが報告されている(Thompson、Appl Environ Microbiol、56:607−613、1990)。アセトアセチルホスフェートがBukの基質となり得ることは以前に示されていない。Bukが広範囲の基質を受け入れることは知られている(Liu、Appl Microbiol Biotechnol、53:545−552、2000)が、活性はインビボで示されていない。
また、本発明者らは、外因性Ptb−Bukの導入が、特定の微生物に、アセトン、イソプロパノール、イソブチレン、3−ヒドロキシブチレート、1,3−ブタンジオール、及び2−ヒドロキシイソブチレートを含む、有用な産物、ならびにプロピオネート、カプロエート、及びオクトネートのような他の産物を産生することを可能にさせることを発見した。
Ptb−Bukに基づく新たな経路は、古典的なクロストリジウムのアセトン−ブタノール−エタノール(ABE)発酵経路において見られるような、CoAトランスフェラーゼ、またはチオエステラーゼに基づく産物の産生のための既知及び既存の経路ルートに対するいくつかの大きな利点を提供する(Jones、Microbiol Rev、50:484−524、1986、Matsumoto、Appl Microbiol Biotechnol、97:205−210、2013、May、Metabol Eng、15:218−225、2013)(図3)。特に、これらの新たな経路は(1)CoAトランスフェラーゼ反応に必要な、有機酸、例えば、ブチレートまたはアセテートのような、特定の分子の存在または産生に依存しておらず、(2)チオエステラーゼまたはCoAトランスフェラーゼ反応において保存されない基質レベルのリン酸化を通したATPの発生を可能にする。3−ヒドロキシブチリル−CoAの3−ヒドロキシブチレートへの変換のような、他の反応にPtb−Buk系を使用する場合も、同じ利点が当てはまる。よって、これらの新たな経路は、追加のエネルギーを発生させ、アセテートのような、望ましくない副産物の共産生なしに標的産物を産生することにより、はるかに高い産生力価及び速度をもたらす可能性を有する。
特に商業規模で、アセテートは炭素を標的産物からそらし、よって標的産物の効率及び収率に影響を及ぼすので、微生物が副産物としてアセテート(またはCoAトランスフェラーゼ反応に必要な他の有機酸)を産生することは望ましくない。また、アセテートは、微生物に対して毒性であり得、及び/または汚染微生物の増殖のための基質として作用し得る。さらに、アセテートの存在は、標的産物を回収及び分離すること、ならびに標的産物の産生に有利となるように発酵条件を制御することをより困難にする。
基質レベルのリン酸化を通したATP発生は、特にATP制限システムにおいて、産物合成のための駆動力として使用することができる。特に、酢酸産生細菌は、生物の熱力学的限界で生存することが知られている(Schuchmann、Nat Rev Microbiol、12:809−821、2014)。このようなものとして、アセテートの産生は微生物に、Pta(ホスホトランスアセチラーゼ)(EC2.3.1.8)及びAck(アセテートキナーゼ)(EC2.7.2.1)を通した基質レベルのリン酸化からATPを直接産生する選択肢を提供するので、これまで単離された酢酸産生微生物はすべてアセテートを産生することが記載されている(Drake、Acetogenic Prokaryotes、In:The Prokaryotes、3rd edition、pages 354−420、New York、NY、Springer、2006)。イオンまたはプロトン輸送系と共役している膜勾配及び電気分岐酵素、例えば、Rnf複合体(Schuchmann、Nat Rev Microbiol、12:809−821、2014)のようなメカニズムはこれらの微生物におけるATPを保存するが、直接的ATP発生は依然としてそれらの生存にとって極めて重要である。結果として、ATP発生を可能にしない非相同経路を導入する場合、アセテートが副産物として産生される(Schiel−Bengelsdorf、FEBS Lett、586:2191−2198、2012)。本明細書において記載されているPtb−Buk経路は、しかしながら、微生物が基質レベルのリン酸化を通してATPを発生させ、したがって、アセテート産生を回避するための代替メカニズムを提供する。特に、そうでなければ必須であるだろう(Nagarajan、Microb Cell Factories、12:118、2013)、Pta−Ackのような、アセテート形成酵素は、ATP発生の代替手段としてPtb−Bukで置換することができる。微生物はそこでPtb−Bukを通したATP発生に基づき得るので、このシステムは、Ptb−Bukを使用する新たな経路を通る最大流束を確保する駆動力を提供する。ATPの発生は、ATPを必要とする下流経路にとっても重要となり得る。例えば、アセトンからのイソブチレンの発酵産生はATPを必要とする。アセチル−CoAからイソブチレンまでの完全経路はCoAトランスフェラーゼまたはチオエステラーゼを使用する場合ATP多消費であるが、経路はPtb−Bukを使用する場合エネルギーニュートラルである。
Ptb及びBukの例となる供給源を提供する。しかしながら、Ptb及びBukの他の適切な供給源が利用可能であり得ることは理解されるべきである。また、Ptb及びBukは、活性を向上させるように操作してもよく、及び/またはPtb−Bukをコード化する遺伝子は、特に宿主微生物における発現についてコドン最適化してもよい。
ホスフェートブチリルトランスフェラーゼは、例えば、その配列が公表されている、下記の供給源のいずれかであってもよく、またはこれに由来してもよい。
好ましい実施形態では、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼは、クロストリジウム・アセトブチリカム(WP_010966357、配列番号87)またはクロストリジウム・ベイジェリンキイ(WP_026886639、配列番号88)(WP_041893500、配列番号89)からのPtbである。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、ホスフェートブチリルトランスフェラーゼを天然に含有しない。
ブチレートキナーゼは、例えば、その配列が公表されている、下記の供給源のいずれかであってもよく、またはこれに由来してもよい。
好ましい実施形態では、ブチレートキナーゼは、クロストリジウム・アセトブチリカム(WP_010966356、配列番号90)またはクロストリジウム・ベイジェリンキイ(WP_011967556、配列番号91)(WP_017209677、配列番号92)(WP_026886638、配列番号93)(WP_041893502、配列番号94)からのBukである。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、ブチレートキナーゼを天然に含有しない。
Ptb−Bukは広範囲の基質に作用することが示されているので、Ptb−Bukがいかなる活性及び望ましい基質も示さない場合、対象の基質に対する活性を達成するように操作することができると考えることは合理的である。戦略は(これに限定されないが)、結合ポケットが新たな基質を収容するようにまたは飽和変異導入を通して変化される結合基質を有する及び有しないPtb及びBukの利用可能な結晶構造に基づく合理的設計であり得る。活性が得られる場合、これは酵素工学の反復サイクルを通してさらに向上させることができる。これらの技術的努力は、酵素活性を試験するアッセイと組み合わされるだろう。これらのタイプの戦略は以前に効果的であると証明されている(例えば、Huang、Nature、537:320−327、2016、Khoury、Trends Biotechnol、32:99−109、2014、Packer、Nature Rev Genetics、16:379−394、2015、Privett、PNAS USA、109:3790−3795、2012参照)。
Ptb−Bukの特定のアシル−CoA基質への基質特異性を向上させるために、公開データベースまたは(例えば、指向性進化から)発生したPtb−Buk変異体からのPtb−Buk多様体を、ハイスループットアッセイを使用してスクリーニングする、すなわちE・コリにおいてPtb−Buk酵素ペアを過剰発現させ、試験基質を添加し、生物発光アッセイでATP産生についてスクリーニングすることができる。アッセイは、ATP濃度をホタルルシフェラーゼ酵素生物発光と相関させる十分に確立された技法を使用することができる。このアッセイのマルチウェルプレート形式への従順性は、新たなPtb−Bukの組み合わせにわたる基質選好性の効率的なスクリーニングを促進するだろう(図33)。
基質の消耗または産物の蓄積ではなくATP産生についてスクリーニングすることにより、アッセイはCoAグループの自発的加水分解を測定することを回避する。しかしながら、文献において記載されている代替アプローチは、Ptb−Buk反応のカップリング効率を推定するためにエルマン試薬(5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)またはDTNB)を使用する確立されたアッセイ(Thompson、Appl Environ Microbiol、56:607−613、1990)を使用して測定することができる遊離CoAを使用することである(図33)。アシル−CoAならびに対応する遊離酸及びホスホ中間体も、LC−MS/MSを使用してバリデーション段階中に測定することができる。
ハイスループットスクリーニングアプローチでは、タンパク質定量化に伴う労力によって反応速度データを収集するのは困難である。代わりに、Ptb−Buk酵素を含有するE・コリ溶解物の各調製について、(単位時間当たりの発光として測定される)対象の各基質に対する活性を、陽性対照基質(ブチリル−CoA)に対する及びアセチル−CoA(標的アシル−CoAに対する酵素活性部位について最大の競合をもたらす可能性が高い生理的基質)に対する活性と比較することができる。
アッセイに天然ホスホトランスアセチラーゼ(Pta)及び/またはアセテートキナーゼ(Ack)活性によるバイアスがかかっていないことを確認するために、アッセイをptb及び/またはack遺伝子がノックアウトされたE・コリ株において評価することもできる。
アセトン及びイソプロパノールの産生
アセトン及びイソプロパノールは、800万トンの合計市場規模及び85〜110億ドルの世界市場価値を有する、重要な工業用溶媒である。加えて、アセトン及びイソプロパノールは、70億ドルの世界市場価値を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)、250〜290億ドルの世界市場価値を有するイソブチレン、及び1250億ドルの世界市場価値を有するプロピレンを含む、貴重な下流産物の前駆体である。また、アセトンからジェット燃料までのルートが近年報告されている。現在、工業用アセトン産生は、クメン法の副産物であるので、石油化学的フェノール産生に直結している。アセトン産生の約92体積%は、クメンからのフェノール産生の共産物である。これは環境及び市場の両方に対して顕著な影響を及ぼす。クメン法では、フェノール産生1モル当たり1モルの亜硫酸ナトリウムが蓄積し、深刻な廃棄物管理問題ならびに自然環境及び人の健康への課題を課している。フェノールに対する世界市場の需要は停滞または低下すると予想されるが、アセトンに対する需要は上昇すると予想される。ベンゼンの直接酸化からの代替フェノール産生ルートは開発中であり、もうすぐ商業化することが期待されており、これはアセトン産生の完全な排除をもたらし得る。
アセトンは、ほぼ100年間、ABE発酵におけるブタノールの副産物として、工業規模で産生されてきた。工業的ABE発酵は20世紀後半には低い原油価格及び高い糖コストによって衰退したが、近年復興し、ここ数年の間にいくつかの商業プラントが建設されている。複数のグループが、いくつかの学術グループによる代謝工学及び合成生物学アプローチを通した、ABE発酵生物、特にE・コリ及び酵母からの対応する酵素を発現させる非相同宿主における糖からのアセトン産生についても実証している。しかしながら、バイオマスの多糖成分を放出するのに必要な予備処理に関連した低収率及び高コストは、現在の生化学的変換技術が、この物質の最大40%を構成し得る、バイオマスのリグニン成分を利用しないので、標準的な発酵を通したアセトンの産生を非経済的にする。
本発明は、基質からアセトンまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、アセトンまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。アセトンの産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
ステップ1、2、及び3を通したアセトン:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、2、及び3のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質からアセトンまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ2はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、2、及び3のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。微生物が、アセトンをイソプロパノールに変換する(ステップ4)ことができる第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼを天然に含有する親微生物(例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイ)に由来する場合、微生物は、微生物がイソプロパノールに変換することなくアセトンを産生するように、(例えば、第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼをコード化する遺伝子を破壊することにより)第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼの発現をノックダウンまたはノックアウトするように修飾してもよい(WO2015/085015)。
ステップ1、13、14、15、及び3を通したアセトン:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、13、14、15、及び3のための外因性酵素を含み、これによりガス状基質のような基質からアセトンまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ14はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、13、14、15、及び3のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。微生物が、アセトンをイソプロパノールに変換する(ステップ4)ことができる第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼを天然に含有する親微生物(例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイ)に由来する場合、微生物は、微生物がイソプロパノールに変換することなくアセトンを産生するように、(例えば、第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼをコード化する遺伝子を破壊することにより)第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼの発現をノックダウンまたはノックアウトするように修飾してもよい(WO2015/085015)。
1つの実施形態では、微生物は、アセトンの産生のための2つ以上の経路を含んでもよい。
本発明は、基質からイソプロパノールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、イソプロパノールまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。イソプロパノールの産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
ステップ1、2、3、及び4を通したイソプロパノール:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、2、3、及び4のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質からイソプロパノールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ2はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、2、3、及び4のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。微生物が、アセトンをイソプロパノールに変換する(ステップ4)ことができる第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼを天然に含有する親微生物(例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイ)に由来する場合、イソプロパノールを産生するのにステップ4のための外因性酵素の導入は必要ない。しかしながら、例えば、天然第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼを過剰発現させるための、微生物の修飾は、イソプロパノールの向上した産生をもたらし得る。
ステップ1、13、14、15、3、及び4を通したイソプロパノール:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、13、14、15、3、及び4のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質からイソプロパノールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ14はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、13、14、15、3、及び4のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。微生物が、アセトンをイソプロパノールに変換する(ステップ4)ことができる第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼを天然に含有する親微生物(例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイ)に由来する場合、イソプロパノールを産生するのにステップ4のための外因性酵素の導入は必要ない。しかしながら、例えば、天然第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼを過剰発現させるための、微生物の修飾は、イソプロパノールの向上した産生をもたらし得る。
1つの実施形態では、微生物は、イソプロパノールの産生のための2つ以上の経路を含んでもよい。
イソブチレンの産生
イソブチレンは、1500万トンを超える市場規模及び250〜290億ドルの世界市場価値を有する主要な化学ビルディングブロックである。化学における及び燃料添加剤としてのその使用(15Mt/年)を越えて、イソブチレンは、イソオクタン、ガソリン車の高性能ドロップイン燃料に変換してもよい。Global Bioenergiesは、アセトンからのイソブテン(すなわち、イソブチレン)の発酵産生についての特許を出願したが、開示されたルートのいずれもPtb−Bukを伴わない(WO2010/001078、EP2295593、WO2011/076691、van Leeuwen、Appl Microbiol Biotechnol、93:1377−1387、2012)。
本発明は、基質からイソブチレンまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、イソブチレンまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。イソブチレンの産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
図1は、イソブチレンへの2つの代替ルートを示す。第1は、ステップ1、2、3、5、及び6を通したイソブチレンの産生を伴う。第2は、ステップ1、2、3、7、8、及び6を通したイソブチレンの産生を伴う。ステップ2及び8は、Ptb−Bukにより触媒してもよい。したがって、各ルートはPtb−Bukを伴ってもよい。
ステップ1、2、3、5、及び6を通したイソブチレン:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、2、3、5、及び6のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質からイソブチレンまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ2はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、2、3、5、及び6のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。微生物が、アセトンをイソプロパノールに変換する(ステップ4)ことができる第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼを天然に含有する親微生物(例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイ)に由来する場合、微生物は、アセトンのイソプロパノールへの変換を防止し、アセトンのイソブチレンへの変換を最大化するために、(例えば、第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼをコード化する遺伝子を破壊することにより)第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼの発現をノックダウンまたはノックアウトするように修飾してもよい。
ステップ1、2、3、7、8、及び6を通したイソブチレン:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、2、3、7、8、及び6のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質からイソブチレンまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ2及び/またはステップ8はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、2、3、7、8、及び6のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。微生物が、アセトンをイソプロパノールに変換する(ステップ4)ことができる第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼを天然に含有する親微生物(例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイ)に由来する場合、微生物は、アセトンのイソプロパノールへの変換を防止し、アセトンのイソブチレンへの変換を最大化するために、(例えば、第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼをコード化する遺伝子を破壊することにより)第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼの発現をノックダウンまたはノックアウトするように修飾してもよい。
3−ヒドロキシブチレートの産生
3−ヒドロキシブチレート(3−HB)は、βヒドロキシ酸のファミリーにおける4炭素カルボン酸である。3−ヒドロキシブチレートは、脂性肌浄化のための化粧品成分、アンチエイジングクリーム製剤のための中間体、ポリヒドロキシブチレート(PHB)のための中間体、生分解性ポリマー樹脂、及び新規バイオプラスチックのための他のポリヒドロキシ酸とのコモノマーである。また、3−ヒドロキシブチレートは、特に医療移植片のための、生体適合性及び生分解性ナノ複合体において専門用途を有する、C3/C4ケミカル、キラルビルディングブロック、及びファインケミカルのための中間体である。グルコース上で増殖させた組換えE・コリによる(R)−及び(S)−3−ヒドロキシブチレートの産生にもかかわらず、3−ヒドロキシブチレートの産生はガス状基質上で増殖させた微生物からは実証されていない(Tseng、Appl Environ Microbiol、75:3137−3145、2009)。とりわけ、E・コリにおいて以前実証されたシステムは、C・オートエタノゲナムを含むアセトゲンには、アセトゲン中の天然チオエステラーゼの存在によって、そのまま転用可能ではなかった。E・コリも3−HB−CoAに作用することができるチオエステラーゼTesBを有するが、Tsengはバックグラウンド活性が最小限(<0.1g/L)であることを示した。E・コリでは立体的に純粋な異性体の産生が報告されたが、本発明者らは驚くべきことに、異性体の混合物がC・オートエタノゲナムにおいて産生されたことを見出した。この理論に縛られることなく、これは天然イソメラーゼ活性の結果である可能性が高い。これは、最適化された産生のために(S)特異的3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(Hbd)の組み合わせを(R)特異的Ptb−Bukと組み合わせることを可能にする。立体的に純粋な異性体を産生するために、この活性をノックアウトすることができる。まとめると、これは本発明は、E・コリにおける、ならびにPtb−Buk、(R)または(S)特異的3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼのいずれかの組み合わせ、及び天然クロストリジウム・オートエタノゲナムチオエステラーゼを使用する低産生と比較して、数g/Lの3−HBを産生することを可能にする。
本発明は、基質から3−ヒドロキシブチレートまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、3−ヒドロキシブチレートまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。3−ヒドロキシブチレートの産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
図1は、3−ヒドロキシブチレートへの2つの代替ルートを示す。第1は、ステップ1、2、及び15を通した3−ヒドロキシブチレートの産生を伴う。第2は、ステップ1、13、及び14を通した3−ヒドロキシブチレートの産生を伴う。ステップ2及び14は、Ptb−Bukにより触媒してもよい。したがって、各ルートはPtb−Bukを伴ってもよい。1つの実施形態では、微生物は、Ptb−Bukが2つ以上のステップ(例えば、ステップ2及び14)を触媒し得る、3−ヒドロキシブチレートの産生のための2つ以上の経路を含んでもよい。
ステップ1、2、及び15を通した3−ヒドロキシブチレート:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、2、及び15のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質から3−ヒドロキシブチレートまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ2はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、2、及び15のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
ステップ1、13、及び14を通した3−ヒドロキシブチレート:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、13、及び14のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質から3−ヒドロキシブチレートまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ14はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、13、及び14のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
1,3−ブタンジオールの産生
1,3−ブタンジオール(1,3−BDO)は、一般的には食品香料のための溶媒として使用されており、特定のポリウレタン及びポリエステル樹脂において使用されるコモノマーである。より重要なことには、1,3−ブタンジオールは、1,3−ブタジエンに触媒的に変換され得る(Makshina、Chem Soc Rev、43:7917−7953、2014)。ブタジエンは、ゴム、プラスチック、潤滑剤、ラテックス、及び他の製品を製造するのに使用される。今日産生されるブタジエンの多くは、自動車タイヤにおけるゴムに使用されており、ナイロン6,6の製造において使用することができる、アジポニトリルを産生するのに使用することもできる。ブタジエンに対する世界的需要は上昇中である。2011年には、400億ドルと算定される推定1050万トンの需要があった。
本発明は、基質から1,3−ブタンジオールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、1,3−ブタンジオールまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。1,3−ブタンジオールの産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
特定の実施形態では、微生物は、エタノールの共産生なしに(または少量のみのエタノール、例えば、0.1〜1.0g/L未満のエタノールもしくは1〜10g/L未満のエタノールの産生と共に)1,3−ブタンジオールを産生してもよい。
図1は、1,3−ブタンジオールへの3つの代替ルートを示す。第1は、ステップ1、2、15、16、及び17を通した1,3−ブタンジオールの産生を伴う。第2は、ステップ1、13、14、16、及び17を通した1,3−ブタンジオールの産生を伴う。第3は、ステップ1、13、18、及び17を通した1,3−ブタンジオールの産生を伴う。ステップ2及び14は、Ptb−Bukにより触媒してもよい。したがって、少なくとも第1及び第2のルートはPtb−Bukを伴ってもよい。1つの実施形態では、微生物は、1,3−ブタンジオールの産生のための2つ以上の経路を含んでもよい。関連する実施形態では、Ptb−Bukは、2つ以上のステップ(例えば、ステップ2及び14)を触媒してもよい。
ステップ1、2、15、16、及び17を通した1,3−ブタンジオール:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、2、15、16、及び17のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質から1,3−ブタンジオールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ2はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、2、15、16、及び17のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
ステップ1、13、14、16、及び17を通した1,3−ブタンジオール:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、13、14、16、及び17のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質から1,3−ブタンジオールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ14はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、13、14、16、及び17のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
ステップ1、13、18、及び17を通した1,3−ブタンジオール:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、13、18、及び17のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質から1,3−ブタンジオールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する(図11)。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。ステップ1、13、18、及び17のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。同様のルートは、E・コリでは実証されているが、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイのようなアセトゲンでは実証されていない(Kataoka、J Biosci Bioeng、115:475−480、2013)。Ptb−Bukの使用は(R)−1,3−ブタンジオールの産生をもたらすが、Ptb−Bukの使用を必要としないこのルートは、(S)−1,3−ブタンジオールの産生をもたらし得る。
2−ヒドロキシイソブチレートの産生
2−ヒドロキシイソブチレート(2−HIB)は、多くのタイプのポリマーのためのビルディングブロックとして機能し得る4炭素カルボン酸である。2−ヒドロキシイソブチレートの脱水により、または対応するアミドを通して合成することができるメタクリル酸のメチルエステルは、アクリルガラス、耐久性コーティング、及びインクの製造のためのポリメチルメタクリレート(PMMA)に重合される。この化合物単独で、世界市場は300万トンを超える。他の分岐C4カルボン酸、例えば、2−ヒドロキシイソブチレートのクロロ及びアミノ誘導体、ならびにイソブチレングリコール及びその酸化物も、ポリマーにおいて及び多くの他の用途に使用される。
Ptb−Buk系の立体特異性は、2−ヒドロキシイソブチレートの産生に関する現在の最新技術の制限を克服することにおいて特に有用である。Ptb−Buk及びチオエステラーゼの両方は無差別的であり、3−ヒドロキシブチリル−CoAとの副活性は、2−ヒドロキシイソブチリル−CoAの産生のための標的経路から資源をそらし得る(例えば、図1及び図8参照)。しかしながら、Ptb−Bukは立体異性体間を区別することができ、(S)−3−ヒドロキシブチリル−CoAではなく(R)−3−ヒドロキシブチリル−CoAに作用するだろう。対照的に、チオエステラーゼは、3−ヒドロキシブチリル−CoA立体異性体間を区別することができない。好ましい実施形態では、3−ヒドロキシブチレートへの損失を回避し、2−ヒドロキシイソブチレート収率を最大化するために、Ptb−Bukとの組み合わせ(ステップ20)において(S)特異的アセトアセチル−CoAヒドラターゼ(EC4.2.1.119)(ステップ13)が選択される(図8)。3−ヒドロキシブチリル−CoAの(S)特異的形態は、2−ヒドロキシイソブチリル−CoAムターゼ(EC5.4.99.−)(ステップ19)にとっても好ましい基質である(Yaneva、J Biol Chem、287:15502−15511、2012)。
本発明は、基質から2−ヒドロキシイソブチレートまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、2−ヒドロキシイソブチレートまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。2−ヒドロキシイソブチレートの産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
ステップ1、13、19、及び20を通した2−ヒドロキシイソブチレート:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、13、19、及び20のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質から2−ヒドロキシイソブチレートまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ20はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、13、19、及び20のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
特定の実施形態では、本発明はまた、基質から2−ヒドロキシブチレート(2−HB)またはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、2−ヒドロキシブチレートまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明者らは、観察された2−ヒドロキシブチレートの産生は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイのような微生物における非特異的ムターゼ活性に起因すると考える。
アジピン酸の産生
アジピン酸は最も重要なジカルボン酸であり、推定45億USドルを超える市場を有し、年に約25億kgが産生されている。産生されたアジピン酸の60%超はナイロンの製造のためのモノマー前駆体として使用されており、アジピン酸についての世界市場は2019年までに75億USドルに達すると予想される。現在、アジピン酸は、ほぼ排他的に石油化学的に、例えば、ブタジエンのカルボニル化により産生されている。
本発明は、基質からアジピン酸またはその前駆体を産生することができる微生物を提供する(図34)。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、アジピン酸またはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。アジピン酸の産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
ステップ22、23、24、25、及び26を通したアジピン酸:1つの実施形態では、本発明は、ステップ22、23、24、25、及び26のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質からアジピン酸またはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ26はPtb−Bukにより触媒される。ステップ22、23、24、25、及び26のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
ステップ21、22、23、24、25、及び26を通したアジピン酸:1つの実施形態では、本発明は、ステップ21、22、23、24、25、及び26のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質からアジピン酸またはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ26はPtb−Bukにより触媒される。ステップ21、22、23、24、25、及び26のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
1つの実施形態では、微生物は、アジピン酸の産生のための2つ以上の経路を含んでもよい。
1,3−ヘキサンジオールの産生
本発明は、基質から1,3−ヘキサンジオールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する(図35)。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、1,3−ヘキサンジオールまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。1,3−ヘキサンジオールの産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
図35において示されている経路は、図1において示されているように、ステップ1及び13を通して産生され得る、3−ヒドロキシブチリル−CoAで開始する。
ステップ1、13、27、31、32、36、37、38、及び39を通した1,3−ヘキサンジオール:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、13、27、31、32、36、37、38、及び39のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質から1,3−ヘキサンジオールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ37はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、13、27、31、32、36、37、38、及び39のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
3−メチル−2−ブタノールの産生
本発明は、基質から3−メチル−2−ブタノールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する(図35)。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、3−メチル−2−ブタノールまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。3−メチル−2−ブタノールの産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
図35において示されている経路は、図1において示されているように、ステップ1及び13を通して産生され得る、3−ヒドロキシブチリル−CoAで開始する。
ステップ1、13、27、31、32、33、34、及び35を通した3−メチル−2−ブタノール:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、13、27、31、32、33、34、及び35のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質から3−メチル−2−ブタノールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ33はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、13、27、31、32、33、34、及び35のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
2−ブテン−1−オールの産生
本発明は、基質から2−ブテン−1−オールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する(図35)。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、2−ブテン−1−オールまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。2−ブテン−1−オールの産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
図35において示されている経路は、図1において示されているように、ステップ1及び13を通して産生され得る、3−ヒドロキシブチリル−CoAで開始する。
ステップ1、13、27、28、29、及び30を通した2−ブテン−1−オール:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、13、27、28、29、及び30のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質から2−ブテン−1−オールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ28はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、13、27、28、29、及び30のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
イソバレレートの産生
本発明は、基質からイソバレレートまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する(図36)。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、イソバレレートまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。イソバレレートの産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
ステップ1、40、41、42、43、及び44を通したイソバレレート:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、40、41、42、43、及び44のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質からイソバレレートまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ44はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、40、41、42、43、及び44のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
イソアミルアルコールの産生
本発明は、基質からイソアミルアルコールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する(図36)。本発明は、こうした微生物を基質の存在下で培養することにより、イソアミルアルコールまたはその前駆体を産生する方法をさらに提供する。好ましい実施形態では、微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイからなる群から選択される親微生物に由来する。しかしながら、微生物はまた、全く異なる微生物、例えば、エシェリキア・コリに由来してもよい。イソアミルアルコールの産生のための記載されている酵素経路は、内因性酵素及び、内因性酵素活性が存在しない、または低い場合、外因性酵素を含んでもよい。
ステップ1、40、41、42、43、44、45、及び46を通したイソアミルアルコール:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、40、41、42、43、44、45、及び46のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質からイソアミルアルコールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。好ましい実施形態では、ステップ44はPtb−Bukにより触媒される。ステップ1、40、41、42、43、44、45、及び46のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
ステップ1、40、41、42、43、47、及び46を通したイソアミルアルコール:1つの実施形態では、本発明は、ステップ1、40、41、42、43、47、及び46のための酵素を含み、これによりガス状基質のような基質からイソアミルアルコールまたはその前駆体を産生することができる微生物を提供する。典型的には、この経路における酵素のうちの少なくとも1つは、微生物に対して外因性である。ステップ1、40、41、42、43、47、及び46のための酵素の例となるタイプ及び供給源は、本出願において他で記載されている。
1つの実施形態では、微生物は、イソアミルアルコールの産生のための2つ以上の経路を含んでもよい。
追加産物の産生
本発明は、外因性Ptb−Buk及び外因性または内因性アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(AOR)を含む微生物を提供する。こうした微生物は、例えば、ガス状基質から発生したアセチル−CoAから、例えば、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、及び1−オクタノールまたはこれらの前駆体を産生し得る(図32)。本発明は、こうした微生物をガス状基質の存在下で培養することにより、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、及び1−オクタノールまたはこれらの前駆体を産生する方法をさらに提供する。クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイは、天然にAORを含む。しかしながら、AORは、こうした微生物において、外因性Ptb−Bukの発現と組み合わせて過剰発現させてもよい。あるいは、外因性AOR及び外因性Ptb−Bukを、エシェリキア・コリのような、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ以外の微生物において発現させてもよい。
前駆体及び中間体の産生
図1、34、35、及び36において示されている経路は、前述の産物の前駆体または中間体を産生するように修飾してもよい。特に、前駆体または中間体の産生を得るために、本明細書において記載されている経路のいずれかの部分酵素経路を宿主微生物に挿入してもよい。
定義及び背景
「遺伝子修飾」または「遺伝子工学」という用語は、広く微生物のゲノムまたは核酸の操作を指す。同様に、「遺伝子操作」という用語は、操作されたゲノムまたは核酸を含む微生物を指す。遺伝子修飾の方法としては、例えば、非相同遺伝子発現、遺伝子またはプロモーター挿入または欠失、核酸変異、遺伝子発現変化または不活性化、酵素工学、指向性進化、知識ベース設計、ランダム変異導入法、遺伝子シャフリング、及びコドン最適化が挙げられる。
「組換え」とは、核酸、タンパク質、または微生物が、遺伝子修飾、操作、または組換えの産物であることを示す。一般的には、「組換え」という用語は、微生物の2つ以上の異なる株または種ような、複数の供給源に由来する遺伝物質を含有する、またはこれによりコード化される核酸、タンパク質、または微生物を指す。本明細書において使用されている「組換え」という用語はまた、内因性核酸またはタンパク質の変異形態を含む、変異核酸またはタンパク質を含む微生物を表すのに使用され得る。
「内因性」とは、本発明の微生物が由来する野生型または親微生物中に存在または発現する核酸またはタンパク質を指す。例えば、内因性遺伝子とは、本発明の微生物が由来する野生型または親微生物中に天然に存在する遺伝子である。1つの実施形態では、内因性遺伝子の発現は、外因性プロモーターのような、外因性制御エレメントにより制御してもよい。
「外因性」とは、本発明の微生物が由来する野生型または親微生物中に存在しない核酸またはタンパク質を指す。1つの実施形態では、外因性遺伝子または酵素は、非相同(すなわち、異なる)株または種に由来し、本発明の微生物中に導入または発現してもよい。別の実施形態では、外因性遺伝子または酵素は、人工的にまたは組換えで作製し、本発明の微生物中に導入または発現してもよい。外因性核酸は、本発明の微生物のゲノムに組み込まれる、または本発明の微生物における染色体外状態、例えば、プラスミド中にとどまるように改変してもよい。
「酵素活性」または簡単に「活性」とは、広く、これらに限定されないが、酵素の活性、酵素の量、または反応を触媒するための酵素の利用可能性を含む、酵素活性を指す。したがって、酵素活性を「増加させること」としては、酵素の活性を増加させること、酵素の量を増加させること、または反応を触媒するための酵素の利用可能性を増加させることが挙げられる。同様に、酵素活性を「減少させること」としては、酵素の活性を減少させること、酵素の量を減少させること、または反応を触媒するための酵素の利用可能性を減少させることが挙げられる。
酵素活性に関して、「基質」とは、酵素が作用する分子であり、「産物」とは、酵素の作用により産生される分子である。「天然基質」とは、したがって、野生型微生物において酵素が天然に作用する分子であり、「天然産物」とは、野生型微生物において酵素の作用により天然に産生される分子である。例えば、ブタノイル−CoAは、Ptb及びブタノイルホスフェートの天然基質であり、Bukの天然基質である。また、ブタノイルホスフェートはPtbの天然産物であり、ブチレート(ブタノエート)はBukの天然産物である。同様に、「非天然基質」とは、野生型微生物において酵素が天然に作用しない分子であり、「非天然産物」とは、野生型微生物において酵素の作用により天然に産生されない分子である。複数の異なる基質に対して作用することができる酵素は、天然でも非天然でも、典型的には「無差別的な」酵素と称される。本発明者らは、Ptbが無差別的であり、様々なアシル−CoA及びエノイル−CoAを基質として受け入れることができ、Ptb−Bukが、同時にATPを発生させながら、多数のアシル−CoA及びエノイル−CoAを、それぞれ、それらの対応する酸またはアルケネートに変換するのに使用され得ることを発見した。よって、好ましい実施形態では、本発明のPtb−Bukは、非天然基質(すなわち、ブタノイル−CoA及び/またはブタノイルホスフェート以外の基質)に対して作用し、非天然産物(すなわち、ブタノイルホスフェート及び/またはブチレート(ブタノエート)以外の産物)を産生する。
「ブチリル−CoA」という用語は、本明細書において「ブタノイル−CoA」と相互互換的に使用され得る。
「エネルギー発生」等の用語は、本明細書において「エネルギー保存」等と相互互換的に使用され得る。これらの用語の両方は、文献において一般的に使用されている。
「変異」とは、本発明の微生物が由来する野生型または親微生物と比較して、本発明の微生物において修飾された核酸またはタンパク質を指す。1つの実施形態では、変異は、酵素をコード化する遺伝子における欠失、挿入、または置換であってもよい。別の実施形態では、変異は、酵素における1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、または置換であってもよい。
特に、「破壊的変異」とは、遺伝子または酵素の発現または活性を低減または排除(すなわち、「破壊」)する変異である。破壊的変異は、遺伝子または酵素を部分的に不活性化、完全に不活性化、または欠失し得る。破壊的変異は、ノックアウト(KO)変異であってもよい。破壊的変異は、酵素により産生される産物の生合成を低減、防止、または阻害するいずれかの変異であってもよい。破壊的変異としては、例えば、酵素をコード化する遺伝子における変異、酵素をコード化する遺伝子の発現に関与する遺伝子制御エレメントにおける変異、酵素の活性を低減もしくは阻害するタンパク質を産生する核酸の導入、または酵素の発現を阻害する核酸(例えば、アンチセンスRNA、siRNA、CRISPR)もしくはタンパク質の導入が挙げられる。破壊的変異は、当該技術分野において知られているいずれかの方法を使用して導入してもよい。
破壊的変異の導入は、標的産物を全くまたは実質的に産生しないか、本発明の微生物が由来する親微生物と比較して低減した量の標的産物を産生する本発明の微生物をもたらす。例えば、本発明の微生物は、標的産物を産生しないか、親微生物より少なくとも約1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%少ない標的産物を産生する場合がある。例えば、本発明の微生物は、約0.001、0.01、0.10、0.30、0.50、または1.0g/L未満の標的産物を産生し得る。
「コドン最適化」とは、特定の株または種における核酸の最適化または向上した翻訳のための、遺伝子のような、核酸の変異を指す。コドン最適化は、より速い翻訳速度またはより高い翻訳精度をもたらし得る。好ましい実施形態では、本発明の遺伝子は、クロストリジウム、特にクロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイにおける発現についてコドン最適化される。さらに好ましい実施形態では、本発明の遺伝子は、DSMZアクセッション番号DSM23693で寄託されている、クロストリジウム・オートエタノゲナムLZ1561における発現についてコドン最適化される。
「過剰発現」とは、本発明の微生物が由来する野生型または親微生物と比較した、本発明の微生物における核酸またはタンパク質の発現の増加を指す。過剰発現は、遺伝子コピー数、遺伝子転写速度、遺伝子翻訳速度、または酵素分解速度を変更することを含む、当該技術分野において知られているいずれかの手段により達成してもよい。
「多様体」という用語は、その配列が、従来技術において開示または本明細書において例示されている参照核酸及びタンパク質の配列のような、参照核酸及びタンパク質の配列とは異なる核酸及びタンパク質を含む。本発明は、参照核酸またはタンパク質と実質的に同じ機能を行う多様性核酸またはタンパク質を使用して実施してもよい。例えば、多様性タンパク質は、参照タンパク質と実質的に同じ機能を行い、または実質的に同じ反応を触媒し得る。多様性遺伝子は、参照遺伝子と同じまたは実質的に同じタンパク質をコード化し得る。多様性プロモーターは、参照プロモーターと実質的に同じ、1つ以上の遺伝子の発現を促進する能力を有し得る。
こうした核酸またはタンパク質は、本明細書において「機能的に同等の多様体」と称され得る。例として、核酸の機能的に同等の多様体としては、対立遺伝子多様体、遺伝子のフラグメント、変異遺伝子、遺伝子多型、等が挙げられ得る。他の微生物からの相同遺伝子も、機能的に同等の多様体の例である。これらとしては、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキイ、またはクロストリジウム・ユングダリイのような種における相同遺伝子が挙げられ、その詳細はGenbankまたはNCBIのようなウェブサイト上で公開されている。機能的に同等の多様体としては、その配列が特定の微生物についてのコドン最適化の結果として異なる核酸も挙げられる。核酸の機能的に同等の多様体は、好ましくは、参照核酸との少なくとも約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、またはこれより大きい核酸配列同一性(相同性パーセント)を有するだろう。タンパク質の機能的に同等の多様体は、好ましくは、参照タンパク質との少なくとも約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、またはこれより大きいアミノ酸同一性(相同性パーセント)を有するだろう。多様性核酸またはタンパク質の機能的同等性は、当該技術分野において知られているいずれかの方法を使用して評価してもよい。
核酸は、本発明の微生物に、当該技術分野において知られているいずれかの方法を使用して送達してもよい。例えば、核酸は、ネイキッド核酸として送達してもよく、またはリポソームのような1つ以上の物質と製剤してもよい。核酸は、必要に応じて、DNA、RNA、cDNA、またはこれらの組み合わせであってもよい。制限インヒビターは、特定の実施形態において使用してもよい。追加のベクターとしては、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、及び人工染色体が挙げられ得る。好ましい実施形態では、核酸は本発明の微生物に、プラスミドを使用して送達される。例として、(形質導入または形質移入を含む)形質転換は、電気穿孔、超音波処理、ポリエチレングリコール媒介性形質転換、化学もしくは天然能力、プロトプラスト形質転換、プロファージ誘発、または接合により達成してもよい。活性制限酵素系を有する特定の実施形態では、微生物への核酸の導入前に、核酸をメチル化する必要があり得る。
さらに、核酸は、特定の核酸の発現を増加またはそうでなければ制御するために、プロモーターのような制御エレメントを含むように設計してもよい。プロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターであってもよい。理想的には、プロモーターは、ウッド−ユングダール経路プロモーター、フェレドキシンプロモーター、ピルベート:フェレドキシンオキシドレダクターゼプロモーター、Rnf複合体オペロンプロモーター、ATPシンターゼオペロンプロモーター、またはホスホトランスアセチラーゼ/アセテートキナーゼオペロンプロモーターである。
「微生物」とは、微小な生物、特に細菌、古細菌、ウイルス、または真菌である。本発明の微生物は、典型的には細菌である。本明細書において使用されている「微生物」とは、「細菌」を包含するものと理解されるべきである。
「親微生物」とは、本発明の微生物を発生させるのに使用される微生物である。親微生物は、天然に存在する微生物(すなわち、野生型微生物)または予め修飾された微生物(すなわち、変異または組換え微生物)であってもよい。本発明の微生物は、親微生物において発現または過剰発現しなかった1つ以上の酵素を発現または過剰発現させるように修飾してもよい。同様に、本発明の微生物は、親微生物により含有されなかった1つ以上の遺伝子を含有するように修飾してもよい。本発明の微生物はまた、親微生物において発現した1つ以上の酵素を発現させない、またはより少量で発現させるように修飾してもよい。1つの実施形態では、親微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイである。好ましい実施形態では、親微生物は、DSMZアクセッション番号DSM23693で寄託されている、クロストリジウム・オートエタノゲナムLZ1561である。
「〜に由来する」という用語は、核酸、タンパク質、または微生物が、新たな核酸、タンパク質、または微生物を産生するように、異なる(例えば、親または野生型)核酸、タンパク質、または微生物から修飾または改変されていることを示す。こうした修飾または改変としては、典型的には核酸または遺伝子の挿入、欠失、変異、または置換が挙げられる。一般的には、本発明の微生物は、親微生物に由来する。1つの実施形態では、本発明の微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイに由来する。好ましい実施形態では、本発明の微生物は、DSMZアクセッション番号DSM23693で寄託されている、クロストリジウム・オートエタノゲナムLZ1561に由来する。
本発明の微生物は、機能的特徴に基づきさらに分類され得る。例えば、本発明の微生物は、C1固定性微生物、嫌気性生物、アセトゲン、エタノロゲン、カルボキシドトロフ、及び/もしくはメタノトロフであってもよく、またはこれに由来してもよい。表1は、微生物の代表一覧を提供し、それらの機能的特徴を同定する。
「C1」とは、1炭素分子、例えば、CO、CO2、CH4、またはCH3OHを指す。「C1オキシゲネート」とは、少なくとも1つの酸素原子も含む1炭素分子、例えば、CO、CO2、またはCH3OHを指す。「C1炭素源」とは、本発明の微生物のための部分または単独炭素源として機能する1炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO2、CH4、CH3OH、またはCH2O2の1つ以上を含んでもよい。好ましくは、C1炭素源は、CO及びCO2の一方または両方を含む。「C1固定性微生物」とは、C1炭素源から1つ以上の産物を産生する能力を有する微生物である。典型的には、本発明の微生物はC1固定性細菌である。好ましい実施形態では、本発明の微生物は、表1において同定されているC1固定性微生物に由来する。
「嫌気性生物」とは、増殖に酸素を必要としない微生物である。嫌気性生物は、酸素が特定の閾値を超えて存在する場合、ネガティブな反応を示すか、死滅することすらあり得る。典型的には、本発明の微生物は嫌気性生物である。好ましい実施形態では、本発明の微生物は、表1において同定されている嫌気性生物に由来する。
「アセトゲン」とは、嫌気呼吸の産物としてアセテート(または酢酸)を産生する、または産生することができる微生物である。典型的には、アセトゲンとは、エネルギー保存のため、ならびにアセチル−CoA及びアセチル−CoA由来産物、例えば、アセテートの合成のためのそれらの主要なメカニズムとしてウッド−ユングダール経路を使用する偏性嫌気性細菌である(Ragsdale、Biochim Biophys Acta、1784:1873−1898、2008)。アセトゲンは、アセチル−CoA経路を(1)CO2からのアセチル−CoAの還元的合成のためのメカニズム、(2)最終電子受容エネルギー保存プロセス、(3)セルカーボンの合成におけるCO2の固定(同化)のためのメカニズムとして使用する(Drake、Acetogenic Prokaryotes、In:The Prokaryotes、3rd edition、p.354、New York、NY、2006)。すべての天然に存在するアセトゲンは、C1固定性、嫌気性、独立栄養性、及び非メタノトロフィックである。典型的には、本発明の微生物はアセトゲンである。好ましい実施形態では、本発明の微生物は、表1において同定されているアセトゲンに由来する。
「エタノロゲン」とは、エタノールを産生する、または産生することができる微生物である。典型的には、本発明の微生物はエタノロゲンである。好ましい実施形態では、本発明の微生物は、表1において同定されているエタノロゲンに由来する。
「独立栄養生物」とは、有機炭素の非存在下で増殖することができる微生物である。代わりに、独立栄養生物は、CO及び/またはCO2のような、無機炭素源を使用する。典型的には、本発明の微生物は独立栄養生物である。好ましい実施形態では、本発明の微生物は、表1において同定されている独立栄養生物に由来する。
「カルボキシドトロフ」とは、炭素の単独供給源としてCOを利用することができる微生物である。典型的には、本発明の微生物はカルボキシドトロフである。好ましい実施形態では、本発明の微生物は、表1において同定されているカルボキシドトロフに由来する。
「メタノトロフ」とは、炭素及びエネルギーの単独供給源としてメタンを利用することができる微生物である。特定の実施形態では、本発明の微生物はメタノトロフに由来する。
さらに広く、本発明の微生物は、表1において同定されているいずれかの属または種に由来してもよい。
好ましい実施形態では、本発明の微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイ種を含むクロストリジウムのクラスターに由来する。これらの種は、Abrini、Arch Microbiol、161:345−351、1994(クロストリジウム・オートエタノゲナム)、Tanner、Int J System Bacteriol、43:232−236、1993(クロストリジウム・ユングダリイ)、及びHuhnke、WO2008/028055(クロストリジウム・ラグスダレイ)により最初に報告され、特徴分析された。
これらの3つの種は多くの類似点を有する。特に、これらの種はすべて、クロストリジウム属のC1固定性、嫌気性、酢酸産生、エタノール産生、及びカルボキシドトロフィックなメンバーである。これらの種は、類似する遺伝子型及び表現型ならびにエネルギー保存及び発酵代謝の態様を有する。さらに、これらの種は、99%を超えて同一であり、約22〜30mol%のDNA G+C含有量を有し、グラム陽性であり、類似する形態及びサイズ(0.5〜0.7×3〜5μmの対数増殖細胞)を有し、中温性であり(30〜37℃で最適に増殖し)、約4〜7.5の類似するpH範囲(最適pH約5.5〜6)を有し、シトクロムを欠き、Rnf複合体を通してエネルギーを保存する、16S rRNA DNAを有するクロストリジウムrRNA相同性グループIにおいてクラスター化される。また、カルボン酸のそれらの対応するアルコールへの還元が、これらの種において示されている(Perez、Biotechnol Bioeng、110:1066−1077、2012)。重要なことに、これらの種はまた、すべてCO含有ガス上で強い独立栄養的な増殖を示し、主要発酵産物としてエタノール及びアセテート(または酢酸)を産生し、特定の条件下で少量の2,3−ブタンジオール及び乳酸を産生する。
しかしながら、これらの3つの種は、多数の相違点も有する。これらの種は異なる供給源、クロストリジウム・オートエタノゲナムはウサギ腸、クロストリジウム・ユングダリイは養鶏場廃棄物、クロストリジウム・ラグスダレイは淡水底質から単離された。これらの種は、様々な糖(例えば、ラムノース、アラビノース)、酸(例えば、グルコネート、シトレート)、アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン)、及び他の基質(例えば、ベタイン、ブタノール)の利用において異なる。さらに、これらの種は、特定のビタミン(例えば、チアミン、ビオチン)への栄養要求性において異なる。これらの種は、ウッド−ユングダール経路遺伝子及びタンパク質の核酸及びアミノ酸配列において相違点を有するが、これらの遺伝子及びタンパク質の一般的な構成及び数はすべての種において同じであることが見出されている(Kopke、Curr Opin Biotechnol、22:320−325、2011)。
よって、要約すると、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイの特徴の多くは、その種に特異的ではなく、むしろクロストリジウム属のC1固定性、嫌気性、酢酸産生、エタノール産生、及びカルボキシドトロフィックなメンバーのこのクラスターについての一般的な特徴である。しかしながら、これらの種は実際には異なるので、これらの種のうちの1つの遺伝子修飾または操作は、これらの種のうちのもう1つにおいて同一の効果を有しない場合があり得る。例えば、増殖、性能、または産物産生における相違が観察され得る。
本発明の微生物はまた、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイの単離物または変異体に由来してもよい。クロストリジウム・オートエタノゲナムの単離物及び変異体としては、JA1−1(DSM10061)(Abrini、Arch Microbiol、161:345−351、1994)、LBS1560(DSM19630)(WO2009/064200)、及びLZ1561(DSM23693)が挙げられる。クロストリジウム・ユングダリイの単離物及び変異体としては、ATCC49587(Tanner、Int J Syst Bacteriol、43:232−236、1993)、PETCT(DSM13528、ATCC55383)、ERI−2(ATCC55380)(US5,593,886)、C−01(ATCC55988)(US6,368,819)、O−52(ATCC55989)(US6,368,819)、及びOTA−1(Tirado−Acevedo、Production of bioethanol from synthesis gas using Clostridium ljungdahlii、PhD thesis、North Carolina State University、2010)が挙げられる。クロストリジウム・ラグスダレイの単離物及び変異体としては、PI1(ATCC BAA−622、ATCC PTA−7826)(WO2008/028055)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、しかしながら、本発明の微生物は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、またはクロストリジウム・ラグスダレイ以外の微生物である。例えば、微生物は、エシェリキア・コリ、サッカロマイセス・セレビシエ、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンクキイ、クロストリジウム・サッカロブチリカム(Clostridium saccharbutyricum)、クロストリジウム・サッカロペルブチルアセトニカム、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)、クロストリジウム・ジオリス(Clostridium diolis)、クロストリジウム・クルイベリ、クロストリジウム・パステリアニウム(Clostridium pasterianium)、クロストリジウム・ノビイ(Clostridium novyi)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・テルモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・セルロリチカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・セルロボランス(Clostridium cellulovorans)、クロストリジウム・フィトフェルメンタンス(Clostridium phytofermentans)、ラクトコッカス・ラクチス、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、クレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumonia)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、カプリアビダス・ネカトール、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、及びメチロバクテリウム・エクストルクエンス(Methylobacterium extorquens)からなる群から選択してもよい。
「基質」とは、本発明の微生物のための炭素及び/またはエネルギー源を指す。典型的には、基質はガス状であり、C1炭素源、例えば、CO、CO2、及び/またはCH4を含む。好ましくは、基質はCOまたはCO+CO2のC1炭素源を含む。基質は、H2、N2、または電子のような、他の非炭素成分をさらに含んでもよい。
基質は、一般的には、約1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100mol%のCOのような、少なくともいくらかの量のCOを含む。基質は、約20〜80、30〜70、または40〜60mol%のCOのような、ある範囲のCOを含んでもよい。好ましくは、基質は、約40〜70mol%のCO(例えば、製鋼工場または高炉ガス)、約20〜30mol%のCO(例えば、塩基性酸素転炉ガス)、または約15〜45mol%のCO(例えば、合成ガス)を含む。いくつかの実施形態では、基質は、約1〜10または1〜20mol%のCOのような、比較的少量のCOを含んでもよい。本発明の微生物は、典型的には基質中のCOの少なくとも一部分を産物に変換する。いくつかの実施形態では、基質はCOを全くまたは実質的に含まない。
基質は、いくらかの量のH2を含んでもよい。例えば、基質は、約1、2、5、10、15、20、または30mol%のH2を含んでもよい。いくつかの実施形態では、基質は、約60、70、80、または90mol%のH2のような、比較的多量のH2を含んでもよい。さらなる実施形態では、基質はH2を全くまたは実質的に含まない。
基質は、いくらかの量のCO2を含んでもよい。例えば、基質は、約1〜80または1〜30mol%のCO2を含んでもよい。いくつかの実施形態では、基質は、約20、15、10、または5mol%未満のCO2を含んでもよい。別の実施形態では、基質はCO2を全くまたは実質的に含まない。
基質は典型的にはガス状であるが、基質はまた代替形態で提供してもよい。例えば、基質は、マイクロバブル分散発生装置を使用してCO含有ガスで飽和させた液体に溶解してもよい。さらなる例として、基質は固体支持体上に吸着させてもよい。
基質及び/またはC1炭素源は、産業プロセスの副産物として、またはいくつかの他の供給源から、例えば自動車の排気ガスもしくはバイオマスのガス化から得られる廃ガスであってもよい。特定の実施形態では、産業プロセスは、鉄金属製品製造、例えば、製鋼工場製造、非鉄製品製造、石油精製プロセス、石炭ガス化、電力生産、カーボンブラック製造、アンモニア産生、メタノール産生、及びコークス製造からなる群から選択される。これらの実施形態では、基質及び/またはC1炭素源は、大気中に放出される前に、いずれかの便利な方法を使用して産業プロセスから捕捉してもよい。
基質及び/またはC1炭素源は、石炭もしくは精製所残渣のガス化、バイオマスもしくはリグノセルロース材料のガス化、または天然ガスの再形成により得られる合成ガスのような、合成ガスであってもよい。別の実施形態では、合成ガスは、都市固体廃棄物または産業固体廃棄物のガス化から得てもよい。
基質の組成は、反応の効率及び/またはコストに対して顕著な影響を有し得る。例えば、酸素(O2)の存在は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減し得る。基質の組成に応じて、いかなる望ましくない不純物、例えば、毒素、望ましくない成分、もしくはダスト粒子も除去するように基質を処理、洗浄、もしくは濾過し、及び/または望ましい成分の濃度を増加させることが望ましい場合がある。
本発明の微生物は、1つ以上の産物を産生するために培養してもよい。例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムは、エタノール(WO2007/117157)、アセテート(WO2007/117157)、ブタノール(WO2008/115080及びWO2012/053905)、ブチレート(WO2008/115080)、2,3−ブタンジオール(WO2009/151342)、ラクテート(WO2011/112103)、ブテン(WO2012/024522)、ブタジエン(WO2012/024522)、メチルエチルケトン(2−ブタノン)(WO2012/024522及びWO2013/185123)、エチレン(WO2012/026833)、アセトン(WO2012/115527)、イソプロパノール(WO2012/115527)、脂質(WO2013/036147)、3−ヒドロキシプロピオネート(3−HP)(WO2013/180581)、イソプレン(WO2013/180584)、脂肪酸(WO2013/191567)、2−ブタノール(WO2013/185123)、1,2−プロパンジオール(WO2014/0369152)、及び1−プロパノール(WO2014/0369152)を産生する、または産生するように操作することができる。1つ以上の標的産物に加えて、本発明の微生物は、エタノール、アセテート、及び/または2,3−ブタンジオールも産生し得る。特定の実施形態では、微生物バイオマス自体が産物とみなされ得る。
「天然産物」とは、遺伝子修飾されていない微生物により産生される産物である。例えば、エタノール、アセテート、及び2,3−ブタンジオールは、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ユングダリイ、及びクロストリジウム・ラグスダレイの天然産物である。「非天然産物」とは、遺伝子修飾された微生物が由来する遺伝子修飾されていない微生物ではなく、遺伝子修飾された微生物により産生される産物である。
本明細書において相互互換的に言及され得る、「中間体」及び「前駆体」という用語は、観察されたまたは標的産物の酵素経路上流における分子実体を指す。
「選択性」とは、微生物により産生されるすべての発酵産物の産生に対する標的産物の産生の比を指す。本発明の微生物は、産物を特定の選択性または最小の選択性で産生するように操作してもよい。1つの実施形態では、標的産物は、本発明の微生物により産生されるすべての発酵産物の少なくとも約5%、10%、15%、20%、30%、50%、または75%を占める。1つの実施形態では、標的産物は、本発明の微生物により産生されるすべての発酵産物の少なくとも10%を占め、本発明の微生物は、少なくとも10%の標的産物についての選択性を有する。別の実施形態では、標的産物は、本発明の微生物により産生されるすべての発酵産物の少なくとも30%を占め、本発明の微生物は、少なくとも30%の標的産物についての選択性を有する。
「効率を増加させること」、「増加した効率」、等としては、これらに限定されないが、増殖速度、産物産生速度もしくは体積、基質消費体積当たりの産物体積、または産物選択性を増加させることが挙げられる。効率は、本発明の微生物が由来する親微生物の性能に対して測定され得る。
典型的には、培養はバイオリアクターにおいて行われる。「バイオリアクター」という用語は、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、固定化細胞反応器(ICR)、トリクルベッド反応器(TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、スタティックミキサー、または気液接触に適した他の容器もしくは他の装置のような、1つ以上の容器、塔、または配管からなる培養/発酵装置を含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、第1の増殖反応器及び第2の培養/発酵反応器を含んでもよい。基質は、これらの反応器の一方または両方に提供してもよい。本明細書において使用されている「培養」及び「発酵」という用語は、相互互換的に使用される。これらの用語は、培養/発酵プロセスの増殖段階及び産物生合成段階の両方を包含する。
培養は一般的には、微生物の増殖を可能にするのに十分な栄養素、ビタミン、及び/またはミネラルを含有する水性培地において維持される。好ましくは、水性培地は、最小嫌気性微生物増殖培地のような、嫌気性微生物増殖培地である。適切な培地は、当該技術分野において周知である。
培養/発酵は、望ましくは標的産物の産生に適した条件下で実施されるべきである。典型的には、培養/発酵は嫌気性条件下で行われる。考慮すべき反応条件としては、圧力(または分圧)、温度、ガス流量、液体流量、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽型反応器を使用する場合)、接種源レベル、液相中のガスが制限的にならないことを保証する最大ガス基質濃度、及び産物阻害を回避する最大産物濃度が挙げられる。特に、産物はガス制限条件下での培養により消費され得るので、基質の導入速度は、液相中のガスの濃度が制限的にならないことを保証するように制御してもよい。
バイオリアクターを高圧で稼働させることは、気相から液相へのガス物質移動速度の増加を可能にする。したがって、一般的には培養/発酵を大気圧より高い圧力で行うことが好ましい。また、所定のガス変換速度は、一部分において、基質保持時間の関数であり、保持時間は必要なバイオリアクターの体積を決定するので、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの体積及び、結果として、培養/発酵設備の資本コストを大幅に低減することができる。これは、ひいては、入力ガス流量で割ったバイオリアクター中の液体体積として定義される保持時間を、バイオリアクターが大気圧よりもむしろ高圧で維持される場合、低減することができることを意味する。最適な反応条件は、使用される特定の微生物に部分的に依存するだろう。しかしながら、一般的には、発酵を大気圧より高い圧力で行うことが好ましい。また、所定のガス変換速度は一部分において基質保持時間の関数であり、所望の保持時間を達成することは、ひいては必要なバイオリアクターの体積を決定するので、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの体積、及び結果として発酵設備の資本コストを大幅に低減することができる。
標的産物は、例えば、分別蒸留、蒸発、浸透蒸発、ガスストリッピング、相分離、及び、例えば、液液抽出を含む、抽出発酵を含む、当該技術分野において知られているいずれかの方法または方法の組み合わせを使用して、発酵ブロスから分離または精製してもよい。特定の実施形態では、標的産物は、ブロスの一部分をバイオリアクターから連続的に取り出し、微生物細胞をブロスから(便利には濾過により)分離し、1つ以上の標的産物をブロスから回収することにより、発酵ブロスから回収される。アルコール及び/またはアセトンは、例えば、蒸留により回収してもよい。酸は、例えば、活性炭上での吸着により回収してもよい。分離された微生物細胞は、好ましくはバイオリアクターに戻される。標的産物が取り出された後に残った無細胞透過物も、好ましくはバイオリアクターに戻される。バイオリアクターに戻される前に培地を補充するため、追加の栄養素(例えば、Bビタミン)を無細胞透過物に添加してもよい。
下記の実施例は、本発明についてさらに例示するが、もちろん、いかなる方法でもその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
実施例1
この実施例は、インビボでE・コリにおいてアセトアセチル−CoAをアセトアセテートに変換するPtb−Bukの能力ならびにアセトン、イソプロパノール、3−ヒドロキシブチレート、及びイソブチレンの産生におけるその使用について実証する。
アセトアセチル−CoAからのアセトアセテート産生のためのPtb−Buk系に基づく経路を、設計及び構築した。これは、pDUETベクターシステム(Novagen)を使用して、モジュール方式で行った。1つのモジュールは、プラスミドpACYC上にC・ベイジェリンキイNCIMB8052からのptb−buk遺伝子(GenBank NC_009617、位置232027..234147、Cbei_0203−204、NCBI−GeneID 5291437−38)を含有した。別のモジュールは、プラスミドpCOLA上にC・アセトブチリカムのチオラーゼ遺伝子thlA(Genbank NC_001988、位置82040..83218、CA_P0078、NCBI−GeneID 1116083)及びC・ベイジェリンキイNCIMB8052のアセトアセテートデカルボキシラーゼ遺伝子adc(Genbank NC_009617、位置4401916..4402656、Cbei_3835、NCBI−GeneID 5294996)を含有した。Ptb及びbuk遺伝子を、C・ベイジェリンキイNCIMB8052のゲノムDNAならびに既存のアセトンプラスミドpMTL85147−thlA−ctfAB−adc(WO2012/115527)からのthlA及びadc遺伝子から増幅させ、環状ポリメラーゼ伸長クローニング(CPEC)法(Quan、PloS One、4:e6441、2009)での制限独立クローニングを通してpDUETベクター中に存在するT7プロモーターの制御下でクローニングした。
ptb及びbuk遺伝子の増幅に使用されるオリゴヌクレオチド:
thlA及びadc遺伝子の増幅に使用されるオリゴヌクレオチド:
プラスミドpACYC−ptb−buk(配列番号105)及びpCOLA−thlA−adc(配列番号106)を構築した後、それらを個別に及び共にE・コリBL21(DE3)(Novagen)に形質転換し、増殖実験を、12ウェルプレート中の1.5mLの培養物において、28℃で、160rpmで環状に振盪しながら、グルコースを含むM9最小培地(Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Vol 3、Cold Spring Harbour Press、1989)を使用して、4通り実施した(図4)。培養物を、0.1のOD600nmで接種し、増殖の2時間後、異なる濃度のIPTG(0、50、100μM)で誘発した(図5)。プレートテープストリップを使用してプレートを封止し、先端が緑の針で各ウェルに穴をあけ、微好気性条件をもたらした。誘発のさらに64時間増殖を実施した。実験を3通り繰り返した。
アセトン濃度、及びイソブチレンのような他の代謝産物の濃度を、Supelcoポリエチレングリコール(PEG)60μm固相マイクロ抽出ファイバー、Restek Rtx−1(30m×0.32μm×5μm)カラム、及び水素炎イオン化型検出器(FID)を備えたAgilent 6890NヘッドスペースGCを使用する、ガスクロマトグラフィー(GC)分析を使用して測定した。試料(4ml)を20mlヘッドスペースバイアルに移し、そこでファイバーを10分間50℃でインキュベート(曝露)した。試料を、インジェクターにおいて250℃で9分間脱着した。クロマトグラフィーは、40℃(5分保持)及び10℃/分で200℃まで、続いて220℃で5分保持のオーブンプログラムで行った。カラム流量は1ml/分とし、水素をキャリアガスとした。FIDを250℃で保持し、メイクアップガスとして水素を40ml/分、空気を450ml/分、及び窒素を15ml/分とした。
アセトンが(チオラーゼ、Ptb−Buk、及びアセトアセテートデカルボキシラーゼを発現させる)pACYC−ptb−buk及びpCOLA−thlA−adcプラスミドの両方を有する株において産生されたことは、直ちに明らかとなった。0.19g/Lの平均最終アセトン産生が測定されたが、プラスミドなしの対照、培地対照、(Ptb−Bukを発現させる)単一プラスミド対照pACYC−ptb−buk、または(チオラーゼ及びアセトアセテートデカルボキシラーゼを発現させる)pCOLA−thlA−adcプラスミドではアセトンは産生されなかった(信頼性検出限界未満)。(チオラーゼ、Ptb−Buk、及びアセトアセテートデカルボキシラーゼを発現させる)pACYC−ptb−buk及びpCOLA−thlA−adcプラスミドの両方を有する株の誘発されていない培養物は、感知できる量のアセトンを産生しなかった。
E・コリBL21(DE3)における平均アセトン産生:
この実験は、Ptb−Bukが、アセトアセチル−CoAのアセトアセテートへの変換を行うことができ、図1のステップ1、2、及び3を含むルートを使用して例示されている、アセトンの産生のためのCoAトランスフェラーゼまたはチオエステラーゼの代わりに使用され得ることを明確に実証する。
イソプロパノールを第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼの添加によりアセトンから産生することができること(Kopke、Appl Environ Microbiol、80:3394−3403、2014)(図1におけるステップ4)、ならびにイソブチレンをヒドロキシイソバレレートシンターゼ(図1におけるステップ5)及びデカルボキシラーゼ(図1におけるステップ6)の添加を通してアセトンから産生することができること(van Leeuwen、Appl Microbiol Biotechnol、93:1377−1387、2012)は周知である。Ptb−Bukを通した上で実証されたアセトンルートを含む経路を、遺伝子thlA、ptb−buk、及びadc、ならびに図1のステップ1、2、3、及び4を含むE・コリにおけるPtb−Buk系を通したイソプロパノール産生を可能にするだろう第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(例えば、GenBankアクセッション番号NC_022592、pos.609711..610766、CAETHG_0553、NCBI−GeneID:17333984)で構築することができる。同様に、アセトアセチル−CoAのアセトアセテートへのPtb−Buk変換を通した上で実証されたアセトンルートを含む経路を、遺伝子thlA、ptb−buk、及びadc、ならびに図1のステップ1、2、3、5、及び6を含むE・コリにおけるPtb−Buk系を通したイソブチレン産生を可能にするだろうヒドロキシイソバレレートシンターゼ及びデカルボキシラーゼについての遺伝子で構築することができる。アセトアセテートは、3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼBdhを通して3−ヒドロキシブチレートに変換することもできる。これは、図1のステップ1、2、及び15を含む経路をもたらす遺伝子thlA、ptb−buk、及びbdhを発現させる株における3−ヒドロキシブチレート産生のためのアセトアセチル−CoAのアセトアセテートへのPtb−Buk変換と組み合わせることができる。
実施例2
この実施例は、インビボでC・オートエタノゲナムにおいてアセトアセチル−CoAをアセトアセテートに変換するPtb−Bukの能力ならびにガス状基質からのアセトン、イソプロパノール、3−ヒドロキシブチレート、及びイソブチレンの産生におけるPtb−Bukの使用について実証する。
Ptb−Buk系がガス状基質からのアセトン、イソプロパノール、またはイソブチレン合成も可能にすることを実証するために、C・オートエタノゲナム、C・ユングダリイ、またはC・ラグスダレイのようなアセトゲンにおける発現を可能にするシャトルベクター上のクロストリジウムのプロモーターの制御下で実施例1と同じ遺伝子、thl+ptb−buk+adcを含有するプラスミドを構築した。
pMTLプラスミドは、E・コリ接合を通して環状DNAをクロストリジウムに導入するためのシャトルプラスミド系である(Heap、J Microbiol Methods、78:79−85、2009)。対象の遺伝子(すなわち、hbd、phaB、thlA、ptb、buk、及びaor1)を、DNA制限消化後のライゲーション、及び2片以上のDNAフラグメントをプラスミドに同時にクローニングする場合のゴールデンゲートDNAアセンブリ技術を含む、分子生物学における一般的な技術を使用して、プラスミドのlacZ領域にクローニングした。構築されたプラスミドは、DNA配列決定により検証される。
アセトン及びイソプロパノールの産生は、ウッド−ユングダール遺伝子クラスターからのクロストリジウムのプロモーターの制御下でthl+ctfAB+adcをコード化するプラスミドpMTL85147−thlA−ctfAB−adc(WO2012/115527)を使用して、C・オートエタノゲナムにおいて以前実証された。このプラスミドでは、CoAトランスフェラーゼをコード化するctfAB遺伝子を、Ptb−Buk系をコード化するptb−buk遺伝子で直接置換した。これは、CPEC法を使用して実施例1において記載されているように行った。得られたプラスミドは、pMTL85147−thlA−ptb−buk−adcである。
ptb−bukの増幅及びpMTL8317−thl−ptb−buk−adcへのクローニングに使用されるオリゴヌクレオチドを下に記載する。
C・オートエタノゲナムDSM10061及びDSM23693(DSM10061の誘導体)を、DSMZ(The German Collection of Microorganisms and Cell Cultures、Inhoffenstrabe 7B、38124 ブラウンシュヴァイク、ドイツ)から供給した。
株を、37℃で、pH5.6のPETC培地において、標準的な嫌気性技術(Hungate、Meth Microbiol、3B:117−132、1969、Wolfe、Adv Microb Physiol、6:107−146、1971)を使用して増殖させた。(グレンブルック、ニュージーランドにあるNew Zealand Steel敷地から回収された)30psiCO含有製鋼工場ガスまたは44%CO、32%N2、22%CO2、2%H2の同じ組成を有する合成ガスブレンドを、独立栄養的な増殖のための基質として使用した。固体培地には、1.2%バクトアガー(BD、フランクリンレイクス、NJ 07417、米国)を添加した。
構築物を合成した後、接合を通してC・オートエタノゲナムに形質転換した。このために、発現ベクターをまず、標準的なヒートショック形質転換を使用して、接合ドナー株E・コリHB101+R702(CA434)(Williams、J Gen Microbiol、1136:819−826、1990)(ドナー)に導入した。ドナー細胞をSOC培地(Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Vol 3、Cold Spring Harbour Press、1989)において、37℃で1時間回収した後、100μg/mlのスぺクチノマイシン及び25μg/mlのクロラムフェニコールを含有するLB培地(Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Vol 3、Cold Spring Harbour Press、1989)プレートに播種した。LBプレートを37℃で一晩インキュベートした。翌日、100μg/mlのスぺクチノマイシン及び25μg/mlのクロラムフェニコールを含有する5mlのLBアリコートに、いくつかのドナーコロニーを接種し、37℃で、振盪しながら約4時間、または培養物が目に見えて高密度だがまだ静止期には入っていない状態までインキュベートした。1.5mlのドナー培養物を、微量遠心分離チューブにおいて、室温で、4000rpmで2分間の遠心分離により採取し、浮遊物を廃棄した。ドナー細胞を500μlの無菌PBSバッファ(Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Vol 3、Cold Spring Harbour Press、1989)に穏やかに再懸濁させ、4000rpmで2分間遠心分離し、PBS浮遊物を廃棄した。ペレットを嫌気性チャンバーに導入し、200μlの対数期後半のC・オートエタノゲナム培養物(レシピエント)に穏やかに再懸濁させた。接合混合物(ドナー及びレシピエント細胞の混合物)を、PETC−MES+フルクトースアガープレート上に播種し、乾燥させた。スポットが目に見えて湿潤でなくなったら、プレートを圧力ジャーに導入し、合成ガスで25〜30psiまで加圧し、37℃で約24時間インキュベートした。24時間のインキュベーション後、接合混合物を、10μl白金耳を使用して穏やかにこすり落とすことにより、プレートから取り出した。取り出した混合物を、200〜300μlのPETC培地に懸濁させた。接合混合物の100μlアリコートを、15μg/mlのチアンフェニコールが補充されたPETC培地アガープレート上に播種し、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼの発現を通してチアンフェニコールに対する耐性を与えるプラスミドを有する形質転換体を選択した。
pMTL85147−thlA−ptb−buk−adcプラスミドを有するC・オートエタノゲナムの3つの異なるコロニーを、15μg/mlのチアンフェニコールを含む2mLのPETC−MES培地に接種し、37℃で、100rpmで環状に振盪しながら、3日間独立栄養的に増殖させた。培養物を、血清ボトル中の15μg/mlのチアンフェニコールを含む10mLのPETC−MES培地においてOD600nm=0.05まで希釈し、37℃で、100rpmで環状に振盪しながら、5日間独立栄養的に増殖させ、バイオマス及び代謝産物を測定するために毎日サンプリングした。並行して、発現プラスミドが、アセトアセチル−CoAからのアセトアセテートの形成を触媒するctfABまたはptb−buk遺伝子を含まず、ウッド−ユングダールクラスタープロモーターの制御下でthl及びadcのみをコード化した対照株(pMTL85147−thlA−adc)を調査した。代謝産物及びバイオマス蓄積をモニタリングするために、培養物を5日間サンプリングした。
イソプロパノール濃度ならびにエタノール、酢酸、2,3−ブタンジオール、及び乳酸の濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、Agilent LC上で、35℃での屈折率(RI)検出で測定した。400μLを100μLの5−スルホサリチル酸溶液(1M硫酸中1%重量/体積)で希釈後、14,000rpmで3分の遠心分離により、試料を調製し、浮遊物を分析のためにガラスバイアルに移した。0.7mL/分及び65℃で、均一濃度条件下、5mMの硫酸移動相を使用する、Alltech IOA−2000カラム(150mm×6.5mm×8μm)への10μL注入によって、分離を実施した。
いくつかの例では、ピーク分離を向上させるために、より長いHPLC法を使用した。この方法では、イソプロパノール、エタノール、アセテート、2,3−ブタンジオール、及びまた(短い方法を使用して分離されない)3−ヒドロキシブチレート濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、Agilent 1260 Infinity LC上で、35℃での屈折率(RI)検出で測定した。400μLを100μLの5−スルホサリチル酸溶液(1M硫酸中1%重量/体積)で希釈後、14,000rpmで3分の遠心分離により、試料を調製し、浮遊物を分析のためにガラスバイアルに移した。0.6mL/分及び35℃で、均一濃度条件下、5mMの硫酸移動相を使用する、Aminex HPX−87Hカラム(300mm×7.8mm×9μm)への10μL注入によって、分離を実施した。
pMTL85147−thlA−ptb−buk−adcを有するC・オートエタノゲナムは、最大0.804gIPA/バイオマスgを産生したが、Ptb−Bukを含有しないpMTL85147−thlA−adcを有する対照株C・オートエタノゲナムは、IPAを産生しなかった(図12)。
この実験は、Ptb−Bukが、ガス状基質を使用する場合、イソプロパノール経路においてアセトアセチル−CoAのアセトアセテートへの変換を行うことができることを明確に実証する。Ptb−Bukは、図1のステップ1、2、3、及び4を含むルートを使用して例示されている、C・オートエタノゲナムのようなガス発酵アセトゲンにおいて、CoAトランスフェラーゼまたはチオエステラーゼの代わりに使用することができる。
C・オートエタノゲナムは、アセトンをイソプロパノールに変換する天然第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼを含有する(Kopke、Appl Environ Microbiol、80:3394−3403、2014)。この遺伝子のノックアウトは、C・オートエタノゲナムにおけるアセトンのイソプロパノールへの変換を削除することが実証されている(WO2015/085015)。このノックアウトの背景では、図1のステップ1、2、及び3を含む同じ遺伝子を使用して、ガス状供給原料からPtb−Buk系を通して(イソプロパノールではなく)アセトンを産生することが可能となる。この株へのヒドロキシイソバレレートシンターゼ及びデカルボキシラーゼ遺伝子の付加(van Leeuwen、Appl Microbiol Biotechnol、93:1377−1387、2012)は、C・オートエタノゲナムまたは図1のステップ1、2、3、5、及び6を含む同様の細菌におけるガスからのイソブチレン産生を可能にするだろう。
アセトアセテートは、3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼBdhを通して3−ヒドロキシブチレートに変換することもできる。3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼを、C・オートエタノゲナム(AGY75962)及びC・ユングダリイ(ADK16920.1)のような他のアセトゲンのゲノム中で同定した。この活性は、図1のステップ1、2、及び15を含む経路をもたらす遺伝子thlA、ptb−buk(またはctfAB)、及びbdhを発現させる株における3−ヒドロキシブチレート産生のためのアセトアセチル−CoAのアセトアセテートへのPtb−Buk(またはCoAトランスフェラーゼ)変換と組み合わせることができる。このルートを通した低レベルの3−ヒドロキシブチレート形成(最大2g/L)は、C・オートエタノゲナムにおいて実証されている。これらのレベルは、天然には低レベルでのみ発現するBdh遺伝子を過剰発現させることにより、向上させることができる。
1つの実験では、C・オートエタノゲナムを、実施例2において記載されているようなプラスミドpMTL82256−thlA−ctfABで形質転換した。産生は、10日間、6つのバイオロジカルレプリケートから、実施例2において記載されているような独立栄養的な条件下でモニタリングした。10日後の3−HBの平均は1.86±0.14g/Lであった。10日目、1,3−ブタンジオールは(3−HBから)0.38±0.05g/Lの平均力価で産生された(図37)。アセトンまたはイソプロパノールは形成されなかった。これは、3−HBが天然酵素によってアセトアセテートを通して効率的に産生され得ることを実証する。
特定の実施形態では、3−HBへの炭素流出を防止し、したがってアセトン、イソプロパノール、及びイソブチレンのような産物の産生を増加させるために、Bdhのような、3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼの発現をノックアウトまたはノックダウンすることが望ましい場合がある。
実施例3
この実施例は、(R)−ヒドロキシブチレート、アセトン、イソプロパノール、またはイソブチレンの産生のためのインビボでE・コリにおいて(R)−3−ヒドロキシブチリル−CoAを(R)−3−ヒドロキシブチレートに変換するPtb−Bukの能力ついて実証する。
(R)−3−ヒドロキシブチリル−CoAからの(R)−3−ヒドロキシブチレート産生のためのPtb−Buk系に基づく経路を、設計及び構築した。また、3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ(Bdh)を、(R)−3−HBのアセトアセテートへの変換に利用した。ラルストニア・ピケッティイは、インビトロで3−ヒドロキシブチレートをアセトアセテートに変換することができる2つの3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼBdh1及びBdh2を有することが報告されている(Takanashi、J Biosci Bioeng、101:501−507、2006)。1つの経路を、Ptb−Bukによる(R)−3−ヒドロキシブチリル−CoAの産生及びATPの発生において産生された還元当量を再生利用しながら、アセトン産生(図1のステップ1、13、14、15、3)のためにこの酵素を活用するように設計した(図6)。
経路は、pDUETベクターシステム(Novagen)を使用して、モジュール形式で構築した。上の実施例において記載されている2つのモジュール(Ptb−Bukの発現のためのpACYC−ptb−bukならびにチオラーゼ及びアセトアセテートデカルボキシラーゼの発現のためのpCOLA−thlA−adc)を、ベクターpCDFにおいて、カプリアビダス・ネカトールの(R)特異的3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼphaB(WP_010810131.1)単独(pCDF−phaB)及びラスルトニア・ピケツティイの3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼbdh1遺伝子(BAE72684.1)を有するもの(pCDF−phaB−bdh1)のいずれかを含有する2つの追加のモジュールと共に使用した。phaB及びbdh1遺伝子の両方をGeneArtから合成し、環状ポリメラーゼ伸長クローニング(CPEC)法(Quan、PloS One、4:e6441、2009)での制御独立クローニングを通して中に存在するT7プロモーターの制御下でクローニングした。
bdh1遺伝子の増幅に使用されるオリゴヌクレオチド:
phaB遺伝子の増幅に使用されるオリゴヌクレオチド:
プラスミドpACYC−ptb−buk(配列番号105)、pCOLA−thlA−adc(配列番号106)、pCDF−phaB(配列番号119)、及びpCDF−phaB−bdh1(配列番号120)を構築し、それらを個別に及び組み合わせてE・コリBL21(DE3)(Novagen)に形質転換し、増殖実験を、12ウェルプレート中の1.5mLの培養物において、28℃で、160rpmで環状に振盪しながら、グルコースを含むM9最小培地を使用して、4通り実施した。培養物を、0.1のOD600nmで接種し、増殖の2時間後、異なる濃度のIPTG(0、50、100μM)で誘発した。BioRadプレートテープストリップを使用してプレートを封止し、先端が緑の針で各ウェルに穴をあけ、微好気性条件をもたらした。誘発のさらに64時間増殖を実施した。実験を3回繰り返した。代謝産物を前の実施例において記載されているように測定した。
プラスミドpACYC−ptb−buk、pCOLA−thlA−adc、及びpCDF−phaBの組み合わせを含有する培養物は、非常に少量のみの副産物と共に、(インデューサーのレベルに応じて)1.65〜2.4g/Lの(R)−3−ヒドロキシブチレートを産生し(図13A〜F)、(R)−3−ヒドロキシブチリル−CoAを(R)−3−ヒドロキシブチリレートに変換し、増殖を支えるPtb−Buk系の効率について実証した(図13A〜F)。(プラスミドpACYC−ptb−buk、pCOLA−thlA−adc、及びpCDF−phaB−bdh1の組み合わせを含有する)bdh1も発現させた培養物では、少量のみの(R)−3−ヒドロキシブチリレートが培地中に見られ、(インデューサーのレベルに応じて)0.89〜1.16g/Lのアセトンが見られ、bdh1遺伝子が、(R)−3−ヒドロキシブチレートをアセトアセテートに及びさらにアセトンに変換することにおいて効率的であることを示した。Ptb−Bukを含まないすべてのプラスミドの組み合わせでは、3−ヒドロキシブチレートまたはアセトンは見られなかった(図13A〜F)。これらの培養物では、アセテートレベルは顕著に高かった。
この実験は、Ptb−Bukが(R)−3−ヒドロキシブチレート−CoAの3−ヒドロキシブチレートへの変換を行うことができること、及びまた(R)−3−ヒドロキシブチリル−CoAの産生において産生された還元当量を再生利用することにより、Bdh1がインビボで3−ヒドロキシブチレートをさらにアセトアセテートに変換することができることを明確に実証する。実験は、Ptb−Bukが増殖を支えることができ、したがってアセテート産生が不要となることも強調する。(R)−3−ヒドロキシブチレート形成の産生を、図1のステップ1、13、及び14を含む株において例示した。アセトンの産生を、図1のステップ1、13、14、15、及び3を含むルートを通して例示した。
イソプロパノールを第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼの添加によりアセトンから産生することができること(図1におけるステップ4)(Kopke、Appl Environ Microbiol、80:3394−3403、2014)、ならびにイソブチレンをヒドロキシイソバレレートシンターゼ(図1におけるステップ5)及びデカルボキシラーゼ(図1におけるステップ6)の添加を通してアセトンから産生することができること(van Leeuwen、Appl Microbiol Biotechnol、93:1377−1387、2012)は周知である。Ptb−Bukを通した上で実証されたアセトンルートを含む経路は、遺伝子thlA、ptb−buk、及びadc、ならびにE・コリにおけるPtb−Buk系を通したイソプロパノール産生(図1のステップ1、13、14、15、3、及び4)を可能にするだろう第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(例えば、GenBank NC_022592、pos.609711..610766、CAETHG_0553、NCBI−GeneID:17333984)で構築することができる。同様に、Ptb−Bukを通した上で実証されたアセトンルートを含む経路は、遺伝子thlA、ptb−buk、及びadc、ならびにE・コリにおけるPtb−Buk系を通したイソブチレン産生(図1のステップ1、13、14、15、3、5、及び6)を可能にするだろうヒドロキシイソバレレートシンターゼ及びデカルボキシラーゼについての遺伝子で構築することができる。
実施例4
この実施例は、C・オートエタノゲナムにおける(R)−3−ヒドロキシブチレート及び1,3−ブタンジオールの産生について実証する。これは、2,3−ブタンジオールの非存在下での1,3−ブタンジオールの産生についても実証する。
2,3−ブタンジオール産生のための天然経路が不活性化され、(R)−3−ヒドロキシブチリル−CoA形成のための遺伝子で置換された、C・オートエタノゲナムの株を構築した。これは、C・オートエタノゲナムのゲノム上のアセトラクテートデカルボキシラーゼ遺伝子(budA)をチオエステラーゼ(C・アセトブチリカムのthlA、GenBank NC_001988、位置82040..83218、CA_P0078、NCBI−GeneID 1116083)及び(R)特異的3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ(カプリアビダス・ネカトールのphaB、GenBank WP_010810131.1)についての遺伝子で置換し、C・オートエタノゲナムbudA::thlAphaB株をもたらすことにより達成した。
budA遺伝子をthlA及びphaBで置換するために、プラスミド、pMTL8225−budA::thlA−phaB(図14)と、tet3n0テトラサイクリン誘導性プロモーター下のE・コリ毒素遺伝子mazF(対抗選択のため)、budA遺伝子の約1kb上流相同性アーム、thlA、phaB、loxP部位に隣接するermBカセット、及びbudA遺伝子の約1kb下流相同性アームとを、プラスミドpMTL−tet3no上でアセンブリした。
budAの約1kb上流及び下流相同性アームを、プライマーSN01/SN02及びSN07/SN08でC・オートエタノゲナムからPCR増幅させた。thlA及びphaB遺伝子を、プライマーSN03/SN04modを使用して、カプリアビダス・ネカトールのゲノムDNAからPCR増幅させた。loxP部位に隣接するermBカセットを、プライマーSN05mod/SN06を使用してPCR増幅させた。Fsel及びPmelに隣接するtet3noプロモーターを、制限酵素Fsel及びPmelで合成及び処理し、洗浄した。PCR産物及び消化ベクターを、Life TechnologiesからのGeneArt Seamlessクローニングキットを使用してアセンブリし、挿入フラグメント中に変異を含まないプラスミドpMTL8225−budA::thlA−phaB(配列番号121)を使用し、前の実施例において記載されているように接合によりC・オートエタノゲナムを形質転換した。
トリメトプリム及びクラリスロマイシンでの接合及び選択後、9つのコロニーを、PETC−MESアガープレート上、クラリスロマイシン及びアンヒドロテトラサイクリンで2回ストリークし、mazF遺伝子の発現を誘導した。クラリスロマイシン及びアンヒドロテトラサイクリンからのコロニーは、budA遺伝子がthlA及びphaB遺伝子ならびにermBカセットで置換されているべきある。これは、相同性アーム及びKAPAポリメラーゼに隣接するプライマーOg31f/Og32rを使用して、PCRにより検証した(図15)。
約3.3kbのバンドは野生型株から増幅されるが、約5.7kbのバンドはコロニー1、4、7、及び9から増幅され、budA遺伝子のthlA、phaB、及びermBカセットでの置換を示した。上の事象は、すべての4つのクローンのPCR産物を配列決定することにより、さらに確認された。得られた修飾によって、thlA及びphaB遺伝子の発現は、budA遺伝子のプロモーター上流により駆動される。
C・オートエタノゲナムbudA::thlA−phaB株での発酵を実施した。培養物を、37℃で、連続的にバイオリアクターに供給される合成ガス(50%CO、18%CO2、2%H2、及び30%N2)下で増殖させた。ガス流は、初期は50ml/分に設定し、撹拌を200rpmから500rpmまで増加させながら、実験経過にわたって400ml/分まで増加させた。発酵を5日間近く実施した。代謝産物を上の実施例において記載されているように測定した。
1,3−ブタンジオール及び、2−ヒドロキシイソ酪酸のような、他の代謝産物の濃度を、Agilent CP−SIL 5CB−MS(50m×0.25μm×0.25μm)カラム、オートサンプラー、及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたAgilent 6890N GCを使用する、ガスクロマトグラフィー(GC)分析を使用して測定した。400μLの試料を400μLのアセトニトリルで希釈後、14,000rpmで3分の遠心分離により試料を調製し、浮遊物をガラスバイアルに移し、試料をThermo SpeedVacにおいて乾燥させた。乾燥後、試料を次に400μLのN,O−ビストリフルオロアセトアミド(BSTFA)及びピリジン(3:1比)の溶液に懸濁させ、封止されたガラスバイアルにおいて60分間60℃で加熱した。試料を、1μL注入、30対1の分割比、及び250℃の入口温度を使用して、分析のためにオートサンプラーに移した。クロマトグラフィーは、70℃(保持なし)、110℃まで3℃/分の勾配、230℃まで15℃/分の勾配後、310℃まで40℃/分の最終勾配、及び3分保持のオーブンプログラムで行った。カラム流量は1.8ml/分とし、ヘリウムをキャリアガスとした。FIDを320℃で保持し、メイクアップガスとして水素を40ml/分、空気を400ml/分、及びヘリウムを20ml/分とした。
驚くべきことに、最大1.55g/Lの3−ヒドロキシブチレートが、thlA及びphaBを発現させるC・オートエタノゲナムbudA::thlA−phaB株においてガスから産生された(図16)。天然チオエステラーゼは、形成された3−ヒドロキシブチリル−CoAを3−ヒドロキシブチレートに変換し得る。ゲノム配列中、3つの推定チオエステラーゼが同定された。
さらにより驚くべきことに、3−ヒドロキシブチレート形成と共に、最大150mg/Lの1,3−ブタンジオール形成もあったことも見出された(図16)。これは天然アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(AOR)及びアルコールデヒドロゲナーゼ活性によるものであり得る。2つのAOR遺伝子及びいくつかのアルコールデヒドロゲナーゼが、C・オートエタノゲナムのゲノム中に存在する(Mock、J Bacteriol、197:2965−2980、2015)。3−ヒドロキシブチレートのこの還元は、還元フェレドキシンにより駆動され、よって、還元フェレドキシンをもたらすCO酸化と直接共役させることができる(CO+Fdox→CO2+Fdred)(図7)。
1,3−BDO産生は、クロストリジウム・サッカロペルブチルアセトニカムからのブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼBld(AAP42563.1)(配列番号80)を使用する代替ルートを通してガスからも実証された。bld遺伝子を合成し、同じチオラーゼ(C・アセトブチリカムのthlA)及び(R)特異的3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ(カプリアビダス・ネカトールのphaB)と共にプラスミドpMTL8315−Pfdx−thlA−phaB−bld(配列番号132)にクローニングした。Bld及びphaB遺伝子を、下の表中のプライマーを通して上のプラスミドから増幅し、既存のプラスミドpMTL85147−thlA(WO2012/115527)にクローニングした。
得られた構築物を、上述のとおりC・オートエタノゲナムに形質転換し、増殖実験を、50mLのPETC培地を含み、(グレンブルック、ニュージーランドにあるNew Zealand Steel敷地から回収された)CO含有製鋼工場ガスまたは44%CO、32%N2、22%CO2、2%H2の同じ組成を有する合成ガスブレンドで30psiに加圧された血清ボトルにおいて行った。
1,3−BDO産生は、このルートを通してガスから実証された(図17A)が、産生は、AORルートを通るより少なく(最大67mg/Lの1,3−BDO)、AORルートとは対照的に、増殖は、C・オートエタノゲナム野生型と比較してbld遺伝子を発現させる場合に影響を受けた(図17B)。
別の実験では、実施例2において記載されているようなプラスミドpMTL83159−phaB−thlAで形質転換されたC・オートエタノゲナムは、実施例2において記載されているような独立栄養的な条件下でのボトル実験において、それぞれ、0.33及び0.46g/Lの3−HB及び1,3−BDOを産生した(図40)。
実施例5
この実施例は、C・オートエタノゲナムにおける(S)−3−ヒドロキシブチレート及び1,3−ブタンジオールの産生について実証する。
フェレドキシンプロモーター(C・オートエタノゲナムから単離されたPfdx、配列番号138)またはピルベート−フェレドキシンオキシドレダクターゼプロモーター(C・オートエタノゲナムから単離されたPpfor、配列番号139)のいずれかの下でチオラーゼ(C・アセトブチリカムからのthlA、配列番号136)及び(S)特異的3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ(C・クルイベリからのhbd1、配列番号137)を発現させるプラスミドを構築した。プラスミドを次のとおり構築した。P−hbd1−rbs2−thlAを組み立て、制御酵素消化後のライゲーション、重複伸長ポリメラーゼ連鎖反応、シームレスクローニング(Thermo Fisher Scientific)、及びGeneArt Type IIs(Thermo Fisher Scientific)を含む、分子クローニングにおける通常の方法により、pMTL83151ベクター(Heap、J Microbiol、Meth、78:79−85、2009)にクローニングした。オペロンP−hbd1−rbs2−thlAを、プラスミドの多重クローニング領域において見られる制御部位NotIとXhoIとの間にクローニングした。Pは、インタクトなリボソーム結合部位(rbs)を含有する構成的プロモーターである。rbs2(配列番号140)は、thlAを発現させるためのリボソーム結合部位である。ステップワイズ法は、下に挙げられているプライマーでの既存のテンプレートからのP、hbd1、及びthlAの増幅であった。
ポリメラーゼ連鎖反応を、Kapa Taq PCR Kit(Kapa Biosystems)を使用して次のとおり行った。アニール温度を56℃、伸長を1分間に設定する。PCR反応を30サイクル繰り返す。その後、PCR産物を、DNA Clean&Concentrator Kit(Zymo Research Corporation)を使用して脱塩した。
FastDigest NotI及びFastDigest XhoI(Thermo Fisher Scientific)を使用して、提供されているプロトコルに従ってNotI/XhoI二重消化、続いてFastAP Alkaline Phosphatase(Thermo Fisher Scientific)及び提供されているプロトコルを使用して、アルカリホスファターゼでの処理を実施することにより、pMTL83151プラスミド骨格を調製した。消化された骨格を次に、DNA Clean&Concentrator Kit(Zymo Research Corporation)で脱塩した。
PCR産物及びプラスミド骨格のアセンブリを、GeneArt Type IIs Kit(Thermo Fisher Scientific)を使用して実施した。得られたプラスミドを次に、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen)を使用して、E・コリプラスミド発現宿主から単離した。
オペロンからなるアセンブリされたプラスミドpMTL8315−Pfdx−hbd1−thlA及びpMTL8315−Ppfor−hbd1−thlAを導入するには、プラスミドをまず、化学的形質転換によりE・コリCA434株に導入した。その後、形質転換CA434株を、固体LBアガー培地上で、C・オートエタノゲナム産生宿主と混合すること、ならびに嫌気性環境中、実施例2において記載されているような一酸化炭素及び水素からなる混合物での圧力下でのインキュベーションにより、接合を行った。C・オートエタノゲナムを、接合後、嫌気性条件下、適切な抗生物質及びトリメスロプリムを含有する固体培地上での継続的な増殖により選択し、残ったE・コリCA434株を除去した。
オペロンP−hbd1−rbs2−thlAからなる導入されたpMTL8315−Pfdx−hbd1−thlAまたはpMTL8315−Ppfor−hbd1−thlAプラスミドを有するC・オートエタノゲナム株を、ゴムセプタム及びキャップで密封され、(グレンブルック、ニュージーランドにあるNew Zealand Steel敷地から回収された)CO含有製鋼工場ガスまたは44%CO、32%N2、22%CO2、2%H2の同じ組成を有する合成ガスブレンドで30psiに加圧された250mLショットボトル中の10mLのPETC培地において増殖させた。代謝産物を前の実施例において記載されているように測定した。
驚くべきことに、thlA及びhbd1を発現させるC・オートエタノゲナム培養物においてガスから産生された3−ヒドロキシブチレートがあった(図18A)。天然チオエステラーゼは、形成された3−ヒドロキシブチリル−CoAを3−ヒドロキシブチレートに変換し得る。ゲノム配列中、3つの推定チオエステラーゼが同定された。pMTL8315−Pfdx−hbd1−thlAを有する株において、最大2.55g/Lの3−ヒドロキシブチレートが見られた(図18A)。
さらにより驚くべきことに、3−ヒドロキシブチレートが時間と共に1,3−ブタンジオールに変換され、増殖の終わりに、プラスミドpMTL8315−Pfdx−hbd1−thlAを有する株において最大1.1g/Lの1,3−ブタンジオールが産生されたことも見出された(図18A)。これは天然アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(AOR)及びアルコールデヒドロゲナーゼ活性によるものであり得る。2つのAOR遺伝子及びいくつかのアルコールデヒドロゲナーゼが、C・オートエタノゲナムのゲノム中に存在する(Mock、J Bacteriol、197:2965−2980、2015)。3−ヒドロキシブチレートのこの還元(及びアセテートのエタノールへの還元、図18B)は、還元フェレドキシンにより駆動され、よって、還元フェレドキシンをもたらすCO酸化と直接共役させることができる(CO+Fdox→CO2+Fdred)(図7)。
プラスミドpMTL8315−Pfdx−hbd1−thlAを有するC・オートエタノゲナムの同じ株も、連続発酵において試験した。発酵は前の実施例において記載されているように実施したが、培養は、新鮮な培地との希釈率を2日目に約0.05及び次に3日目に1.0まで増加させながら、連続的に行った。最大7g/Lの高い3−ヒドロキシブチレート産生が、0.5g/Lの1,3−BDO産生と共に観察された。
(S)−3−ヒドロキシブチレート及び1,3−ブタンジオールの産生を向上させ、別の形態のブタンジオール(2,3−ブタンジオール)の合成を回避するために、プラスミドpMTL−HBD−ThlAを、アセトラクテートデカルボキシラーゼ遺伝子BudAが欠失した不活性化2,3−ブタンジオール経路を有する株に導入した(U.S.9,297,026)。このbudAノックアウトは、2,3−BDOへの主要経路を削除し、3−HB及び1,3−BDO産生についての特異性を増加させた。pMTL−HBD−ThlAをbudA欠失株において発現させた場合、3−HB及び1,3−BDOの両方について合計15%のC−molが達成された(図41)。
比較として、同じプラスミド、budAノックアウトを含まないpMTL83159−hbd−thlAを発現させる株では、定常状態での3−HB及び1,3−BDOの産生についての合計特異性はわずか6.9%であった。
実施例6
この実施例は、Ptb−Buk系がC・オートエタノゲナムにおいて、アセトアセチル−CoA、3−ヒドロキシブチリル−CoA、及び2−ヒドロキシイソブチリル−CoAを含む多様なアシル−CoAに対して効率的であることを実証する。
Ptb−Buk系を、C・オートエタノゲナムにおいてプラスミドから発現させ、その活性をCoA加水分解アッセイを使用して測定した。このために、C・ベイジェリンキイNCIMB8052からのptb−buk遺伝子(GenBank NC_009617、位置232027..234147、Cbei_0203−204、NCBI−GeneID 5291437−38)を、C・ベイジェリンキイNCIMB8052のゲノムDNAから増幅させ、ピルベート−フェレドキシンオキシドレダクターゼプロモーター(C・オートエタノゲナムから単離されたPpfor、配列番号139)の制御下、実施例5において記載されているように、制限酵素消化後のライゲーション、重複伸長ポリメラーゼ連鎖反応、シームレスクローニング(Thermo Fisher Scientific)、及びGeneArt Type IIs(Thermo Fisher Scientific)を含む、分子クローニングにおける通常の方法により、pMTL82251ベクター(Heap、J Microbiol Meth、78:79−85、2009)にクローニングした。オリゴヌクレオチドを下に記載する。
得られたプラスミドpMTL82256−ptb−buk(配列番号153)を、前の実施例において記載されているように、C・オートエタノゲナムに導入した。
アシル−CoA加水分解アッセイを次のとおり行った。C・オートエタノゲナム細胞を、OD2(対数期後半)で、遠心分離(14,000rpm、1分間、4℃)により採取した。細胞を500μlの溶解バッファ(リン酸カリウムバッファ、pH8)に再懸濁させた。細胞を、凍結解凍サイクル(任意)、振幅20、氷上での音波処理6×30秒を使用して、溶解した。試料を、10分間、14,000rpm、4℃で遠心分離し、可溶性タンパク質を含む浮遊物を除去した。タンパク質濃度を、例えば、ブラッドフォードアッセイで測定した。
アッセイ混合物は、484μlのリン酸カリウムバッファpH8.0、1μlのDTNB(0.1mMの最終濃度)、10μlの細胞溶解物、及び5μlのCoA(500μMの最終濃度)を含有した。タンパク質を除くすべての成分を、石英キュベット(1cmの読取長を有する1mlキュベット)において混合した。細胞溶解物を添加し、分光光度計において405nm、30℃で3分間、反応を観測することにより、アッセイを開始した。溶解物を含まない対照については、アシル−CoAの自己分解を測定した。
活性を決定するために、曲線の線形部分(通常は最初の30秒)の勾配を計算した。タンパク質量を正規化し、勾配をタンパク質量で割った。減衰係数(14,150M−1cm−1)を使用し、特異的活性M/s/mgを計算した。陰性対照の活性を引いた。
アッセイを、アセトアセチル−CoA、3−ヒドロキシブチリル−CoA(3−HB−CoA)及び2−ヒドロキシイソブチリル−CoA(2−HIB−CoA)のラセミ混合物で行った。潜在的な基質制限による3−HB−CoA及び2−HIB−CoAの人工的に低い加水分解速度の可能性を、アシル−CoAの異なる濃度、500μM及び200μMを使用してC・オートエタノゲナム溶解物についての加水分解アッセイを繰り返すことにより示した。
アッセイの結果は、アセトアセチル−CoA、3−ヒドロキシブチリル−CoA、及び2−ヒドロキシイソブチリル−CoAを含む多様なアシル−CoA上でPtb−Buk系を発現させるプラスミドpMTL82256−ptb−bukを有するC・オートエタノゲナムの溶解物における顕著に増加したCoA加水分解を示す(図20A〜B)。とりわけ、C・オートエタノゲナム野生型により加水分解されない2−ヒドロキシイソブチリル−CoAのようなアシル−CoAについてのCoA加水分解もある。アセトアセチル−CoA及び3−ヒドロキシブチリル−CoAでは、いくらかの天然CoA加水分解活性が観察された。
実施例7
この実施例は、同定された天然チオエステラーゼ遺伝子の破壊が、アセトアセチル−CoA、3−ヒドロキシブチリル−CoA、または2−ヒドロキシイソブチリル−CoAのような利用可能なアシル−CoAのプールを増加させることにより、Ptb−Buk及びCoAトランスフェラーゼ系の効率を向上させることを実証する。
アシル−CoAのそれらの各々の酸への変換中にエネルギーがATPの形態で保存されるPtb−Buk系とは対照的に、CoAが単純に加水分解される場合エネルギーは保存されない。
ヒドロラーゼアッセイでは、C・オートエタノゲナムにおいてアセトアセチル−CoA及び3−ヒドロキシブチリル−CoAについて天然加水分解活性があることが見出された。
アセトアセチル−CoA、3−ヒドロキシブチリル−CoA(3−HIB−CoA)及び2−ヒドロキシイソブチリル−CoA(2−HIB−CoA)のラセミ混合物でのアシル−CoA加水分解アッセイを、前の実施例において記載されているように行った。アッセイの結果は、2−HIB−CoAではなく、アセトアセチル−CoA及び3−HB−CoAの開裂を示し、C・オートエタノゲナムにおいて天然活性が存在することを確認する(図11)。
C・オートエタノゲナムのゲノムの分析は、アセトアセチル−CoAまたは3−ヒドロキシブチリル−CoAチオエステル結合の開裂の原因となり得る3つの推定CoAチオエステラーゼ(チオエステル−ヒドロラーゼ)の同定をもたらした。これらは、C・ユングダリイのような他のアセトゲン中にも存在する。
これらの3つの推定CoAチオエステラーゼの不活性化は、より高い産物力価をもたらし、Ptb−Buk系の効率を向上させる。3つの推定チオエステラーゼを、ClosTron技術を使用して不活性化した。簡潔に、II型Ltrの標的化ドメインを、ClosTronウェブサイトを使用してリプログラミングし、再標的化ClosTronプラスミドをDNA2.0から配列した。ClosTronノックアウトベクター、チオエステラーゼ1(CAETHG_0718)を標的化するpMTL007C−E2−Cau−2640−571s、チオエステラーゼ2(CAETHG_1524)を標的化するpMTL007C−E2−PBor3782−166s、及びチオエステラーゼ3(CAETHG_1780)を標的化するpMTL007C−E2−PBor4039−199sを、接合を使用してC・オートエタノゲナムに導入した。
組み込みのための選択は、5μg/mlのクラリスロマイシンで補充されたPETCを選択することにより行い、II型イントロンの組み込みによる不活性化の成功は、挿入部位にわたるPCRにより確認した。
野生型C・オートエタノゲナム及び不活性化された推定遺伝子の1つを有するC・オートエタノゲナムの各々の両方のアセトアセチル−CoAに対するCoAヒドロラーゼ活性を、上述のアッセイを使用して測定した。不活性化推定チオエステラーゼを有するすべての3つの株は、アセトアセチル−CoA及び3−ヒドロキシブチリル−CoAに対してより低い加水分解活性を示したことが示された(図21A〜B)。
減少したCoAヒドロラーゼ活性、及びよってアセトアセチル−CoAの増加したプールが、アセトアセチル−CoA由来産物の産生にとって有益であることを実証するために、thl+ctfAB+adcをコード化するイソプロパノールプラスミドpMTL85147−thlA−ctfAB−adc(WO2012/115527)を、C・オートエタノゲナム野生型株及び不活性化チオエステラーゼ1を有する株に導入した。増殖実験を、1Lショットボトル中の40mlのPETC培地において、テクニカルレプリケートで、Coガスで、37℃で、110rpmで振盪しながら実施した。合成ガス(50%CO、18%CO2、2%H2、及び30%N2)を、単独のエネルギー及び炭素源として使用した。ヘッドスペースを1回交換し、21psi(1.5バール)に、37℃で、合成ガス(50%CO、18%CO2、2%H2、及び30%N2)下でガス化した。OD及び分析のための試料を1日2回採取した。
不活性化チオエステラーゼ3CAETHG_1780を有する株は、野生型より顕著に高いレベルのイソプロパノールを産生した(図22及び図23A〜D)。
同様に、C・オートエタノゲナムにおけるチオエステラーゼのノックアウトは、3−ヒドロキシブチリル−CoAのプールを増加させ、Ptb−Bukによる3−ヒドロキシブチリル−CoAのより効率的な利用を可能にし、アセトン、イソプロパノール、イソブチレン、(R)−3−ヒドロキシブチレート、1,3−ブタンジオール、及び/または2−ヒドロキシイソ酪酸のより高い産生をもたらすだろう。実施例5のプラスミドpMTL8315−Pfdx−hbd1−thlAを、阻害されたチオエステラーゼ2、CAETHG_1524を有するC・オートエタノゲナム株に導入した場合、3−ヒドロキシブチレート合成は(このプラスミドをC・オートエタノゲナム野生型株において発現させる場合に見られた最大2.55g/Lの3−ヒドロキシブチレートと比較して)無効化された。この株において3−ヒドロキシブチリル−CoAについての競合活性は存在しない。
これらの結果は、チオエステラーゼ活性を低減することにより、Ptb−Buk系及び産物合成により多くのCoAプールが利用可能となることを実証する。
また、3−HB及び1,3−BDOの産生は、ptb−bukの過剰発現により増加させることができる。対照実験では、実施例2において記載されているようなC・オートエタノゲナムが、実施例4からのプラスミドpMTL83159−phaB−thlA及びpMTL82256(Heap、J Microbiol Methods、78:79−85、2009)で形質転換されたが、後者はバックグラウンド対照として使用される空のプラスミドであり、こうした株の発酵は10日目に1.68g/Lで最も高い力価での3−HBの産生をもたらした(図42A)。空のプラスミドpMTL82256の代わりに、pMTL82256−buk−ptbを、C・オートエタノゲナムにおいてpMTL83159−phaB−thlAと共発現させた場合、発酵は、早期4日目に4.76g/Lで3−HBのより高い力価をもたらした(図42B)。
天然チオエステラーゼの欠失は、(R)−3−HB−CoAについての選好性を有する、ptb−buk系の効率を向上させる。ゲノム中のチオエステラーゼ遺伝子の遺伝子座を欠失させ、相同組換えとして知られている一般的な分子生物学技術を通してbuk−ptbDNAフラグメントで置換した。buk−ptbによるチオエステラーゼ遺伝子の置換は、PCR、その後のアガロースゲル電気泳動及びDNA配列決定により確認した。
ボトル実験では、pMTL83156−phaB−thlAを、上述されているチオエステラーゼ欠失変異体においてptb−bukなしで発現させた場合、産生された3−HBの平均最大力価は、修飾されていないC・オートエタノゲナム株を使用して得られた力価と同様に、0.50±0.05g/Lであった。pMTL82256−buk−ptbを、チオエステラーゼノックアウト株においてpMTL83156−phaB−thlAプラスミドと共発現させた場合、3−HBの産生は1.29±0.10g/Lまで増加した(図43)。
実施例8
この実施例は、Ptb−buk系を有するアセトゲンC・オートエタノゲナムにおいてアセテート産生系を削除することが可能であることを実証する。
アセテートの産生が、Pta(ホスホトランスアセチラーゼ)及びAck(ホスホトランスアセチラーゼ−アセテートキナーゼ)を通して基質レベルのリン酸化からATPを直接発生させる選択肢を有する微生物を提供するので、すべての酢酸産生微生物はアセテートを産生することが記載されている(Drake、Acetogenic Prokaryotes、In:The Prokaryotes、3rd edition、pages 354−420、New York、NY、Springer、2006)。Pta−Ackのような天然アセテート形成酵素は、したがって、アセトゲンにおいて必須であると考えられる(Nagarajan、Microb Cell Factories、12:118、2013)。Ptb−Bukはエネルギー発生のための代替手段を提供するので、天然Pta−Ack系をPtb−Bukで置換することが可能となる。
C・オートエタノゲナムにおけるpta及びack遺伝子は、1つのオペロン中にある。pta及びack遺伝子をptb及びbuk遺伝子で置換するために、プラスミド、pMTL8225−pta−ack::ptb−buk(図24)を、テトラサイクリン誘発性プロモーター下にあるmazF対抗選択マーカー、約1kb上流相同性アーム、ptb、buk、loxP部位に隣接するermBカセット、及び約1kb下流相同性アームとアセンブリした(配列番号160)。
budAの約1kb上流及び下流相同性アームを、プライマーSN22f/SN23r及びSN28f/SN29rでC・オートエタノゲナムからPCR増幅させた。Ptb及びbuk遺伝子を、プライマーSN24f/SN25rを使用してpIPA_16プラスミドからPCR増幅させた。loxP部位を有するermBカセットを、プライマーSN26f/SN27rを使用してPCR増幅させた。プラスミド骨格を、プライマーSN30f/SN31rでPCR増幅させた。KAPAポリメラーゼをすべてのPCR増幅に使用した。PCR産物を、Life TechnologiesからのGeneArt Seamlessクローニングキットを使用してアセンブリし、挿入フラグメント中に変異を含まないプラスミドを、前述のとおり接合によりC・オートエタノゲナムを形質転換するのに使用した。
トリメトプリム及びクラリスロマイシンでの接合及び選択後、7つのコロニーを、PETC−MESアガープレート上、クラリスロマイシン及びアンヒドロテトラサイクリンで2回ストリークし、mazF遺伝子の発現を誘導した。クラリスロマイシン及びアンヒドロテトラサイクリンからのコロニーは、pta及びack遺伝子がptb及びbuk遺伝子ならびにermBカセットで置換されているべきである。これは、相同性アーム及びKAPAポリメラーゼに隣接するプライマーOg29f/Og30rを使用して、PCRにより検証した(図25)。約4.6kbのバンドは野生型株から増幅されるが、約5.7kbのバンドはコロニー1及び4〜7から増幅され、pta及びack遺伝子のptb及びbuk遺伝子ならびにermBカセットでの置換を示した。上の事象は、クローン4〜7からのPCR産物を配列決定することにより、さらに確認された。
得られた修飾によって、ptb及びbuk遺伝子の発現は、pta遺伝子のプロモーター上流により駆動される。
pta−ackオペロンがptb−bukオペロンにより置換された、得られたC・オートエタノゲナム株pta−ack::ptb−bukを、実施例2からのイソプロパノール産生プラスミドpMTL85147−thlA−adcで上述のとおり形質転換した。増殖実験を独立栄養的な条件下で実施し、最終代謝産物について分析した。アセテート産生は観察されなかったが、イソプロパノール(最大0.355g/L)及び3−HB(最大0.29g/L)はエタノール及び2,3−ブタンジオールと共に依然として産生された(図39A及び39B)。これは、Ptb−Buk系を使用して、ガス状基質CO及び/またはCO2ならびにH2から、アセテート産生なしにイソプロパノール及び3−HBを産生することが可能であることを実証する。
イソプロパノールではなくアセトンが標的産物である場合、第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(配列番号17)は、上で及び詳しくはWO2015/085015において記載されている方法を使用して、このC・オートエタノゲナム株pta−ack::ptb−bukでさらにノックアウトすることができる。プラスミドpMTL85147−thlA−adcをこの株に導入することは、アセテートの共産生なしでのイソプロパノールについて上で記載されているものと同様のレベルでのアセトンの産生をもたらす。エタノール、2,3−ブタンジオール、及び3−HBは、さらなる産物であり得る。
さらなるノックアウトにより、これらの産物を排除することも可能であり、例えば、アセトラクテートデカルボキシラーゼ遺伝子BudAのノックアウトは、2,3−ブタンジオールを産生することができない株をもたらす(U.S.9,297,026)。3−HB産生は、3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ遺伝子Bdh(配列番号62)の欠失により、低減または削除され得る。
実施例9
この実施例は、アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ遺伝子aor1の過剰発現による3−ヒドロキシブチレートの1,3−BDOへの変換の向上について実証する。
pMTL82251プラスミド骨格をC・オートエタノゲナムaor1遺伝子の過剰発現に使用した。異なる複製起点及び抗生物質マーカーを有するが、hbd1及びthlAを含有した実施例5において使用されたプラスミドと共発現することができたので、pMTL82251プラスミドが選択された。プラスミド骨格の調製及びアセンブリ反応を、上に挙げられている手順に従って実施し、まずC・オートエタノゲナムフェレドキシンプロモーターをプラスミドpMTL82251に導入することによりプラスミドpMTL82256を発生させた後、aor1遺伝子を付加してプラスミドpMTL82256−aor1を形成した。次のプライマーを使用した。
得られたプラスミドpMTL82256−aor1をE・コリCA434株に形質転換した後、以前のC・オートエタノゲナム1,3−BDO産生宿主上で接合を行った。よって、得られたC・オートエタノゲナム株は、2つのプラスミドを有し、異なる複製起点及び選択マーカー下で、1つはhbd1及びthlAを、もう1つはaor1を過剰発現させるものであった。1,3−BDOの産生を、上の手順に従って特徴分析及び定量化した。
結果は、1,3−BDO産生がaor1を過剰発現させることにより向上され得ることを明確に示す。同様に、他のアルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ遺伝子は、C・オートエタノゲナムにおいて発現し、3−ヒドロキシブチレートの1,3−ブタンジオールへの変換を促進することができた。
1,3−BDO産生を向上させるために、AORを過剰発現させ、3−HBの3−HB−アルデヒドへの変換を向上させた。これを行うために、pMTL82256−hbd−thlA及びpMTL83159−aor1をC・オートエタノゲナムにおいて共発現させた。pMTL82256−hbd−thlAを単独で有した株と比較して、aor1共発現株は、より多くのエタノール及び1,3−BDOを産生した(図44)。
実施例10
この実施例は、望ましくない副産物の産生なしでの2−ヒドロキシイソ酪酸の産生を可能にするPtb−Bukの立体特異性について実証する。
2−ヒドロキシイソ酪酸は、E・コリ及びC・オートエタノゲナムにおいて、アセチル−CoAを3−ヒドロキシブチリル−CoAに変換するチオラーゼ及び3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ、3−ヒドロキシブチリル−CoAの2−ヒドロキシイソブチリル−CoAへの変換のための2−ヒドロキシイソブチリル−CoAムターゼ酵素、ならびにCoAを加水分解し、2−ヒドロキシイソ酪酸を形成することができる酵素の導入により、産生することができる。3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼは、(R)または(S)特異的のいずれか、ならびに図1のステップ1、13、19、及び20に従って2−ヒドロキシイソブチリル−CoAを2−ヒドロキシブチレートに変換する酵素であり得る。この最後のステップは、チオエステラーゼまたはPtb−Buk系のいずれかを通して行うことができる。
3つの潜在的な候補遺伝子、E・コリのチオエステラーゼII型TesB、C・オートエタノゲナムのホスフェートアセチルトランスフェラーゼ/アセテートキナーゼペア、及びC・ベイジェリンキイのブチリルトランスフェラーゼ/ブチレートキナーゼペアを、上述の方法及び下のプライマーを通してE・コリpDUET T7発現ベクターにクローニングした。
得られたプラスミド、pDUET−pta−ack(配列番号185)、pDUET−ptb−buk(配列番号186)、pDUET−tesB(配列番号187)を、発現のためにE・コリBL21(DE3)に導入した後、アセトアセチル−CoA、3−ヒドロキシブチリル−CoA、及び2−ヒドロキシイソブチリル−CoAに対するそれらの活性についてアッセイした。結果を図27に示す。E・コリBL21は、すべての3つの基質に対して少ないが測定可能な量の活性を有する。Pta−Ackは、バックグラウンドを上回る活性をもたらさなかったが、チオエステラーゼTesB及びPtb−Bukの両方は、2−ヒドロキシイソブチリル−CoAを含む、すべての3つの基質に対して高い活性を示した。
チオエステラーゼTesB及びPtb−Bukの両方の活性は、分岐2−ヒドロキシイソブチリル−CoAよりも、線状アセトアセチル−CoA、3−ヒドロキシブチリル−CoAについて高かった。これは、3−ヒドロキシブチリル−CoAでの経路の早期終了をもたらし、特に活性が2−ヒドロキシイソブチリル−CoAムターゼ酵素に対する活性より高いので、経路において問題を引き起こす。
しかしながら、チオエステラーゼとは対照的にPtb−Bukは、立体異性体間を区別することができ、(S)−3−ヒドロキシブチリル−CoAではなく(R)−3−ヒドロキシブチリル−CoAのみに(選好的に)作用するだろう。これは、Ptb−Buk系をE・コリにおいてpDuet系中のThlA及び(S)特異的Hbd(図28A)または(R)特異的phaB(図28B)のいずれかと発現させることにより、実証された。構築物は、実施例1及び3において記載されているように構築した。増殖実験は、感知できる量の3−ヒドロキシブチレートが、Ptb−Bukを(R)特異的phaBではなく(S)特異的Hbdとの組み合わせで発現させた場合のみ形成されたことを確認した。
したがって、(S)特異的3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ及びPtb−Bukを通したルートは、Ptb−Buk系が(チオエステラーゼとは異なり)(S)−3−ヒドロキシブチリル−CoAに対して活性ではないが、(S)−3−ヒドロキシブチリル−CoAが2−ヒドロキシイソブチリル−CoAムターゼの好ましい異性体でもあるので、顕著な利点を提供する(Yaneva、J Biol Chem、287:15502−15511、2012)。産生された2−ヒドロキシイソブチリル−CoAは次にPtb−Bukを通して使用し、2−ヒドロキシイソ酪酸を産生することができ、(チオエステラーゼとは異なり)2−ヒドロキシイソブチリル−CoA加水分解は追加のエネルギーを提供する(図8)。
モジュラー構築物を、経路の性能を比較するために設計した。遺伝子meaB、hcmA、及びhcmBの前にウッド−ユングダールプロモーターを含有する遺伝子カセットを、コドン最適化及び合成した(配列番号188)。hcmA及びhcmBは、2−ヒドロキシイソブチリル−CoAムターゼ及びmeaB、アクインコラ・テルチアリカルボニスからのシャペロンをコード化し、構築物において、hcmA及びmeaB遺伝子を、記載のとおり1つのタンパク質として共に融合させた(Yaneva、J Biol Chem、287:15502−15511、2012)(配列番号189)。遺伝子カセットを、それぞれ、プラスミドpMTL83155−thlA−hbd−Pwl−meaBhcmA−hcmB(配列番号191)及びpMTL83155−thlA−phaB−Pwl−meaBhcmA−hcmB(配列番号192)を形成するための制限酵素KpnI及びNcoIを使用して、チオラーゼ(C・アセトブチリカムからのthlA、配列番号136)及び(S)特異的3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ(C・アセトブチリカムからのhbd、配列番号190)(pMTL83155−thlA−hbd)または(R)特異的3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ(R・ユートロファからのphaB)(pMTL83155−thlA−phaB)を含有するプラスミドのいずれかにクローニングした。E・コリTop−10におけるコドン最適化2−ヒドロキシイソブチリル−CoAムターゼカセットのサブクローニングは、クローニング初期のいくらかの混乱後にのみ成功し、2−ヒドロキシイソブチリル−CoAムターゼカセットは低温(28℃)でのみプラスミドにクローニングすることができたことが見出された。
ベクターpMTL83155−thlA−hbd及びpMTL83155−thlA−phaBは、まずC・オートエタノゲナムのホスフェートアセチルトランスフェラーゼのプロモーター領域(配列番号193)を増幅させ、NotI及びNdeI制限部位を使用してベクターpMTL83151(FJ797647.1、Heap、J Microbiol Meth、78:79−85、2009)にクローニングした後、二重ライゲーション反応において遺伝子thlA及びhbdまたはそれぞれNdeI及びKpnIを通してphaBを導入することにより作製した。
また、ptb−bukまたはtesBを発現させるための適合性プラスミドモジュールを構築した。このためには、各々の遺伝子をゲノムDNAから増幅し、実施例9において記載されているプラスミドpMTL82256に導入した後、ptb−bukまたはphaBのいずれかを、NdeI及びNcoIならびにSeamless Cloningキット(Life Technologies)を使用して導入し、プラスミドpMTL82256−ptb−buk(配列番号194)及びpMTL82256−tesB(配列番号195)を形成した。
プラスミドpMTL83155−thlA−hbd−Pwl−meaBhcmA−hcmB、pMTL83155−thlA−phaB−Pwl−meaBhcmA−hcmB、pMTL82256−ptb−buk、及びpMTL82256−tesBを、(すべてのステップについて28℃で)E・コリTop−10、及びC・オートエタノゲナムに、前の実施例において記載されているような形質転換により、次のような組み合わせ、pMTL83155−thlA−hbd−Pwl−meaBhcmA−hcmB+pMTL82256−ptb−buk、pMTL83155−thlA−hbd−Pwl−meaBhcmA−hcmB+pMTL82256−tesB、pMTL83155−thlA−phaB−Pwl−meaBhcmA−hcmB+pMTL82256−ptb−buk、及びpMTL83155−thlA−phaB−Pwl−meaBhcmA−hcmB+pMTL82256−tesBで導入した。
増殖実験を、E・コリで、LB培地において、30℃で4日間、ならびにC・オートエタノゲナムで、PETC培地において、(グレンブルック、ニュージーランドにあるNew Zealand Steel敷地から回収された)30psiCO含有製鋼工場ガスで、30℃及び37℃で6日間実施した。代謝産物を上述のとおり測定した。GC−MSによる測定に加えて、2−ヒドロキシイソ酪酸産生は、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC−MS/MS)及び1H核磁気共鳴(NMR)分光法も使用して確認した。
液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS/MS)データを、ABSciex 4000 QTRAP質量分析計(ABSciex、コンコード、カナダ)と共役させたDionex UltiMate 3000液体クロマトグラフィーシステム(Dionex、カリフォルニア、米国)上で取得した。液体クロマトグラフィーシステムをChromeleonソフトウェア(Dionex)により制御し、クロマトグラフ分離を、プレカラムSecurity Guard Gemini−NX C18 4mm×2mmI.D.カートリッジを備えたGemini−NX C18 150mm×2mm I.D.、3μm110Å粒子カラム(Phenomenex、アシャッフェンブルク、ドイツ)上に10μLを注入することにより達成した。カラムオーブン温度は、取得中は常に55℃で制御及び維持し、移動相は次のとおり、氷酢酸(溶離液A)及びアセトニトリル(溶離液B)でpH4.95(±0.05)に調節された7.5mM水性トリブチルアミンとした。移動相流量は、勾配プロファイル全体を通して300μL/分で維持し、分割なしで質量分析計に直接導入した。質量分析計は、Analyst1.5.2ソフトウェア(ABSciex)により制御し、負イオン化モードで作動させるTurboVエレクトロスプレー源を備えた。下記の予め最適化された(及びしたがって一般的な)パラメータを使用し、指定の多重反応モニタリング(MRM)データ取得した。イオンスプレー電圧は−4500Vであり、ネブライザー(GS1)、補助(GS2)、カーテン(CUR)、及び衝突(CAD)ガスは、それぞれ、60、60、20、及び中(任意単位)であり、N3000DR窒素発生装置(Peak Scientific、マサチューセッツ、米国)を通して発生させた。補助ガス温度は350℃に維持した。入口電位(EP)は−10ボルトとした。この方法は、2−ヒドロキシイソ酪酸を検出及び分離することもできる。
400MHzの場の強さでの1H核磁気共鳴(NMR)分光法。400μLの試料を、内部標準(pH7)としてD2Oで調製され、トリメチルシリルプロピオン酸(TMSP)を含有する400μLの20mMリン酸バッファで希釈することにより、試料を調製した。試料を次にガラスNMRチューブ(5mm×8インチ)に移し、30°励起パルス、15秒緩和遅延、及び27℃の温度での64走査での水抑制のための予備飽和を使用して1H NMRにより分析した。取得後、スペクトルは、Agilent VnmrJソフトウェアを使用して変換、平坦化、及び統合した。TMSPの既知の濃度を、1.36ppm(一重項)での共鳴を使用する2−ヒドロキシイソ酪酸の定量化に使用した。
従属栄養的に増殖するE・コリ及び独立栄養的に増殖するC・オートエタノゲナムの両方において、2−ヒドロキシイソ酪酸は、構築物pMTL83155−thlA−hbd−Pwl−meaBhcmA−hcmB+pMTL82256−tesB(C・オートエタノゲナムにおいてLC−MS/MS法で1.5mg/L及びGC−MSで8mg/L、E・コリにおいてLC−MS/MS法で0.5mg/L及びGC−MSで2mg/L)ならびにpMTL83155−thlA−phaB−Pwl−meaBhcmA−hcmB+pMTL82256−ptb−buk(C・オートエタノゲナムにおいてLC−MS/MS法で15mg/L及びGC−MSで75mg/L、E・コリにおいてLC−MS/MS法で1.1mg/L及びGC−MSで8.5mg/L)中では検出できたが、対照を含むすべての他の構築物中では検出できなかった。これまで最も高い産生は、チオラーゼ、(S)特異的(S)特異的3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ、2−ヒドロキシイソブチリル−CoAムターゼ、及びPtb−Buk系での最適経路を有する、プラスミドpMTL83155−thlA−hbd−Pwl−meaBhcmA−hcmB+pMTL82256−ptb−buk(すべての他のルートより10倍高い)を有する株において起こった(図29A〜D)。驚くべきことに、2−ヒドロキシブチレート(2−HB)の産生(C・オートエタノゲナムにおいてLC−MS/MSにより最大64mg/L及びGC−MSにより50mg/L、E・コリにおいてLC−MS/MSにより12mg/L及びGC−MSにより9.5mg/L)も、この株において見られ、非特異的ムターゼ活性を示した(図30)。これは、tesB株においても見れらたが、やはり著しく低いレベルであった(C・オートエタノゲナムにおいてLC−MS−MSで18mg/L及びGC−MSで9mg/L)。2−ヒドロキシイソ酪酸の産生もNMRにより確認した。
また、qRT−PCRも実施し、遺伝子thlA、hbd、meaBhcmA、及びhcmBの発現を確認した(図31)。
RT−PCRグラフは、thlA遺伝子産物が、Ppta−ackプロモーターで、(オペロンにおける第2の遺伝子で予想されるような)hbdよりわずかに高いレベルまで発現すること、及びhmcBがmeaBhcmAよりわずかに低い発現レベルを示すことを示す。また30℃のC・オートエタノゲナムでは、37℃より、及び30℃のE・コリより低い発現が見られる。具体的なサイクル数については下を参照されたい。
(S)−3−ヒドロキシ酪酸の(R)−3−ヒドロキシ酪酸に対する比を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、Agilent 1260 Infinity LC上、210nmでのUV検出で測定した。試料を、14,000rpmで3分間の遠心分離、続いて200μLの浮遊物を乾燥までの蒸発により、調製した。ペレットを次に、100%イソプロパノールに再懸濁させ、加熱下で1時間音波処理した。遠心分離を繰り返し、浮遊物を分析のためにHPLCバイアルに移した。1.5mL/分及び40℃で、均一濃度条件下、0.1%トリフルオロ酢酸を含有する95−5ヘキサン−イソプロパノール移動相を使用する、TCI Chiral MB−Sカラム(250mm×4.6mm×3μm)への5μL注入によって、分離を達成した。
3−HB産生の立体特異的分析が行われた。驚くべきことに、C・オートエタノゲナムにおいて、異性体の混合物が産生されたことが見出された。酵素Hbd及びPhaBは、立体特異的であることが記載されており、PhaBはR特異的であり、HbdはS特異的であり、E・コリにおいてこれらの酵素が発現する場合、立体的に純粋な産生物が観察された(Tseng、Appl Environ Microbiol、75:3137−3145、2009)。
下記の表は、C・オートエタノゲナムにおいて3つの異なるルートを通して産生される平衡での3−HBの(R)及び(S)形態の分布を示す。これらのデータは、C・オートエタノゲナムにおけるイソメラーゼの存在を示す。
天然イソメラーゼのノックアウトは、3−HBの(R)及び(S)形態の相互変換を防止し得る。あるいは、イソメラーゼの発現または過剰発現は、新たなptb−bukルートを有効化し得る。例えば、Hbdを使用して(S)−3−HBを発生させることができ、イソメラーゼは(S)−3−HBを(R)−3−HBに変換することができ、ptb−bukは(R)−3−HBに作用して対象の産物を産生することができる。
実施例11
この実施例は、3−ヒドロキシイソバレリル−CoA及び3−ヒドロキシイソバレレートのPtb−Buk変換を通したイソブチレンの産生について実証する。
イソブチレンの産生のための異なるルート、例えば、ヒドロキシイソバレレートシンターゼ及びデカルボキシラーゼを通したアセトンのイソブチレンへの変換が記載されている(van Leeuwen、Appl Microbiol Biotechnol、93:1377−1387、2012)。しかしながら、ヒドロキシイソバレレートデカルボキシラーゼステップは、ATPを必要とするステップであり、この酵素の反応速度は理想的でない場合がある。Ptb−Buk系を使用するイソブチレンへの2つの代替ルートが、インビトロでPtb−Buk系にとって実用的な基質であることが示されている3−ヒドロキシイソバレリル−CoAによって同定されている(Liu、Appl Microbiol Biotechnol、53:545−552、2000)。
代替経路1は、アセトンを3−ヒドロキシイソバレリル−CoAに変換するシンターゼからなる(図9)。
代替経路2は、E・コリまたはC・オートエタノゲナムのような細菌に共通するイソロイシン生合成の既知の中間体3−メチル−2−オキソペンタノエートを通って進行する(図10)。
実施例12
この実施例は、Ptb−Buk多様体の特徴分析方法について説明する。
Ptb−Bukの基質無差別性を前提として、変化するアミノ酸配列のPtb−Buk系は所定の基質について変化する選好性を有する可能性が高い。望ましい基質(例えば、アセトアセチル−CoA、3−ヒドロキシブチリル−CoA、2−ヒドロキシイソブチリル−CoA、アセチル−CoA、及び/またはブチリル−CoA)を好むPtb−Buk系を同定するには、ハイスループットスクリーニングが望ましい。こうしたスクリーニングは、ホタルルシフェラーゼ(Luc)をPtb−Buk系と共役させることにより、達成することができる(図33)。LucはD−ルシフェリンと反応し、オキシルシフェリン、二酸化炭素、及び光を発生させる。マグネシウム及び分子酸素に加えて、Lucは反応を進めるのにATPを必要とする。ATPは、適切なアシル−CoAまたはエノイル−CoA基質が提供される場合、Ptb−Bukにより発生する産物である。したがって、Ptb−Buk反応速度及び選好性は、Ptb−Buk、Luc、d−ルシフェリン、マグネシウム、分子酸素、ホスフェート、ADP、及びアシル−CoAまたはエノイル−CoAを含有する反応により発生した光の量を定量化することにより、変化する基質について比較することができる。
実施例13
この実施例は、ゲノムスケールモデリングを使用し、Ptb−Bukを使用して高い非天然産物選択性を達成することができることを実証する。さらに、これはPtb−Bukの使用が、細胞増殖の産物産生との共役を可能にし、安定かつ高収率の発酵株の構築を可能し得ることを示す。
Marcellin、Green Chem、18:3020−3028、2006により記載されているものと同様のC・オートエタノゲナムのゲノムスケール代謝モデルを利用した。追加の代謝反応を組み込み、各々が非天然産物形成についての異なる遺伝子修飾微生物を表す、このモデルの多様体を作製した。各非天然産物経路について、チオエステラーゼ、アセテート−CoAトランスフェラーゼ、またはPtb−Buk反応のいずれかを組み込む、3つのモデルバージョンを作製した。
Gurobiバージョン6.0.4(Gurobi Optimization,Inc.)をソルバーとして、MATLAB R2014a(The Mathworks,Inc.)中のCOBRA Toolbox v2.0からのスクリプトを使用する、流束均衡分析(FBA)を使用して、最大選択性を計算した。交換反応は、炭素及びエネルギーの供給源としてCOを含む化学的に定義された最小増殖培地を表すことに制限された。進化的アルゴリズムを使用して、標的非天然化学物質産生を増殖と共役させる最大10の遺伝子ノックアウトを組み込む株設計の存在を検索した。
FBAは、Ptb−BukまたはCoAトランスフェラーゼを使用する経路が、基質レベルのリン酸化を通したATP利得によって最も高い産物選択性を提供することを予測する。結果を表2に示す。しかしながら、ゲノムスケールモデル及びFBA分析の1つの制限は、酵素反応速度が捕捉されないことであることに留意すべきである。CoAトランスフェラーゼ反応は、機能性のために一定のベースレベルのアセテートを必要とし、したがって実際には、CoAトランスフェラーゼを使用する最大選択性は、存在する必要があるベースレベルのアセテートによって100%未満となるだろう。
表3.産物及び候補酵素のセットについてのC・オートエタノゲナムにおける最大限可能な非天然産物選択性を示す流束均衡分析(FBA)。
細胞増殖のために標的非天然化学物質が産生されなければならない株を構築することが望ましい。FBAは、ほとんどの例において、チオエステラーゼまたはCoAトランスフェラーゼを使用する場合、標的化学物質産生を増殖と共役させることが困難であり、代わりに、天然産物アセテート及びエタノールが好まれるだろうと予測する。しかしながら、Ptb−Bukを使用する場合、しばしばホスホトランスアセチラーゼ−アセテートキナーゼ反応の破壊を組み込む、多くの増殖共役化学物質産生株設計が存在する。表3は、各株の増殖共役能力をまとめる。
表3.代謝ネットワークを最大10の遺伝子ノックアウトで再構成する場合、CO上での増殖中、非天然化学物質産生をC・オートエタノゲナムにおける増殖と共役させる可能性。
Ptb−Buk及びCoAトランスフェラーゼの両方が高い選択性を支えることができるが、流束均衡分析は、ほとんどの例において、Ptb−Bukのみが、非天然化学物質産生を増殖と共役させる安定で高収率の発酵株の構築を可能にするだろうと予測する。
実施例14
この実施例は、ガス状供給原料からのPtb−Bukを通したアジピン酸の産生について実証する。
Ptb−Bukを利用する経路によるE・コリにおける糖からのアジピン酸の産生が記載されている(Yu、Biotechnol Bioeng、111:2580−2586、2014)。しかしながら産生は、μg/L範囲で、低かった。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明者らは、これは還元力及び余剰ATPの形態での駆動力不足の関数である可能性が高いと考える。CO及びH2のような還元ガス状基質ならびにC・オートエタノゲナムのような酢酸産生細菌を使用して、この現在の制限を克服することができる。CO及びH2酸化は、より多くの酸化糖上で従属栄養的に増殖するE・コリとは対照的に、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼまたはアセトアセチル−CoAヒドラターゼによる3−オキソ−アジピル−CoAの3−ヒドロキシアジピル−CoAへの、及びエノイル−CoAヒドロラーゼまたはエノイル−CoAレダクターゼによる2,3−デヒドロアジピル−CoAのアジピル−CoAへの還元のための十分な駆動力を提供する(図34、ステップ23及び25)。酢酸産生細菌は、生物のエネルギー限界で生存し、したがってATP発生反応は、Ptb−Buk系のように強い駆動力を有し、解糖から余剰ATPを発生させる糖上で従属栄養的に増殖するE・コリとは対照的に、アジピル−CoAのアジピン酸への十分な変換を確保する(図34、ステップ26)。
C・オートエタノゲナムにおいてガスからアジピン酸を産生するには、E・コリからのスクシニル−CoAシンセターゼ(NP_415256、NP_415257)、E・コリからのケトイソイソバレレートオキシドレダクターゼPaaJ(WP_001206190.1)、クロストリジウム・ベイジェリンキイからの3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼHbd(WP_011967675.1)、C・アセトブチリカムからのトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼCrt(NP_349318.1)、C・アセトブチリカムからのトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼBcd(NP_349317.1)、及び電子フラボタンパク質EtfAB(NP_349315、NP_349316)をコード化する遺伝子を、発現プラスミド上でクローニングした後、前の実施例からのC・オートエタノゲナム株pta−ack::ptb−bukまたはCAETHG_1524::ptb−bukにおいて上述のとおり形質転換する。アジピン酸は、図34において示されているステップに従って産生される。
実施例15
この実施例は、Ptb−Buk及びAORを通した2−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブタノール、1,3−ヘキサンジオール(HDO)を含む様々な産物の産生について実証する。
実施例6において実証されているように、Ptb−Bukは非常に無差別的であり、基質として広範囲のCoAに作用し、または基質として様々な非天然CoAを使用するように操作することができる。同様に、AOR酵素は、広範囲の基質に作用することが示されている。共にこれらの2つの酵素は、広範囲のCoAを、それらの酸を通してアルデヒドに変換することができ、これはその後、多種多様なものが天然に存在する、アルコールデヒドロゲナーゼを通してアルコール、ケトン、またはエノールにさらに変換することができる。標準的な条件下、AORを通した酸のフェレドキシンでのアルデヒドへの還元は、エネルギー吸収性であり(Thauer、Bacteriol Rev、41:100−180、1977)、そのようなものとして実現可能ではないが、驚くべきことに、低pHで、COまたはH2を基質として働くC・オートエタノゲナムのようなカルボキシドトロフィックなアセトゲン中に存在する(Mock、J Bacteriol、197:2965−2980、2015)。アセトゲンと連携する1つの一般的な制限は、それらがATP制限的であり、生物の熱力学的限界で生存することであり(Schuchmann、Nat Rev Microbiol、12:809−821、2014)、これはこの酸還元をCoAからのPtb−Buk系を通した酸のATP関連形成と共役させることにより克服することができる。
Ptb−Buk系及びAOR系は、いくつかの異なる産物について上の例において実証されているが、さらなる産物、例えば、2−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブタノール、1,3−ヘキサンジオール(HDO)の産生まで伸長することができる。2−ブテン−1−オールは、クロトニル−CoAから、Ptb−Buk、AOR、及びアルコールデヒドロゲナーゼを通して産生することができる(図35)。1,3−ヘキサンジオールは、3−ヒドロキシ−ヘキサノイル−CoAから、Ptb−Buk、AOR、及びアルコールデヒドロゲナーゼを通して産生することができる(図35)。Ptb−Buk、Adc、及びアルコールデヒドロゲナーゼ(例えば、天然第一級:第二級アルコールデヒドロゲナーゼ)を組み合わせることにより、3−メチル−2−ブタノールをアセトブチリル−CoAから形成することができる。
これらの前駆体、クトロニル−CoA、3−ヒドロキシ−ヘキサノイル−CoA、またはアセトブチリル−CoAのすべては、例えば、クロストリジウム・クルイベリ(Barker、PNAS USA、31:373−381、1945、Seedorf、PNAS USA、105:2128−2133、2008)及び他のクロストリジウムの、既知の発酵経路を通した前の実施例において記載されているアセチル−CoA、アセトアセチル−CoA、及び3−HB−CoAの還元及び伸長により形成することができる。関与酵素としては、クロトニル−CoAヒドラターゼ(クロトナーゼ)またはクロトニル−CoAレダクターゼ、ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼまたはトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ、チオラーゼまたはアシル−CoAアセチルトランスフェラーゼ、及び3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼまたはアセトアセチル−CoAヒドラターゼが挙げられる(図35)。C・クルイベリまたは他のクロストリジウムからの各遺伝子を、発現プラスミド(U.S.2011/0236941)上でクローニングした後、2−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブタノール、1,3−ヘキサンジオール(HDO)の産生のための前の実施例からのC・オートエタノゲナム株pta−ack::ptb−bukまたはCAETHG_1524::ptb−bukにおいて上述のとおり形質転換する。2−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブタノール、及び1,3−ヘキサンジオール(HDO)は、さらなる下流産物のための前駆体であり得る。
これらは単なるいくつかの例であり、この経路を、同じ酵素または、より長い鎖長について特異性を有するその操作多様体を使用してさらに伸長し、様々なC4、C6、C8、C10、C12、C14アルコール、ケトン、エノール、またはジオールを産生することができることが明白であるべきである(図39)。他で記載されているように、チオラーゼステップにおけるアセチル−CoAとは異なるプライマーまたはエクステンダーユニットを使用することにより、異なるタイプの分子も得ることができる(Cheong、Nature Biotechnol、34:556−561、2016)。
本明細書において引用されている、刊行物、特許出願、及び特許を含む、すべての参考文献は、各参考文献が、参照により組み込まれていると個別かつ具体的に示され、その全体が本明細書において記載されているのと同程度に、ここで参照により組み込まれる。本明細書における従来技術の参照は、従来技術がいかなる国においても本発明分野における共通の一般知識の一部を形成するという認識としては解釈されず、されるべきではない。
本発明について記載する文脈における(特に下記特許請求の範囲の文脈における)「a」及び「an」ならびに「the」という用語、ならびに同様の指示物の使用は、本明細書において特に指示または文脈による明らかな矛盾がない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるものである。「〜を含む(comprising)」、「〜を有する(having)」、「〜を含む(including)」、及び「〜を含有する(containing)」という用語は、特に指示がない限り、非限定的な用語(すなわち、「これらに限定されないが、〜を含む」を意味するもの)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、本明細書おいて特に指示がない限り、範囲内に該当する各々別々の値を個別に指す簡単な方法として機能することを意図し、各々別々の値は、本明細書において個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書において記載されているすべての方法は、本明細書において特に指示または文脈による明らかな矛盾がない限り、いずれかの適切な順序で行うことができる。本明細書において提供されているいずれか及びすべての例、または例示的な言葉(例えば、「〜のような」)の使用は、単に、本発明をより良く例示することを意図し、特に主張がない限り、本発明の範囲に制限を課さない。本明細書における言葉は、特許請求の範囲に含まれない要素も本発明の実施には必須であること示すものとは解釈されるべきではない。
本発明の好ましい実施形態は、本明細書において記載されている。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかとなり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてこうした変形を使用することを予想しており、本発明者らは、本発明が本明細書において具体的に記載されているものとは別の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法により認められているように、添付の特許請求の範囲において挙げられている本題のすべての変更及び同等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上述の要素のいずれの組み合わせも、本明細書において特に指示または文脈による明らかな矛盾がない限り、本発明により包含される。