JP7376041B2 - 形質転換体及びそれを用いる1,3-ブタンジオールの製造方法 - Google Patents

形質転換体及びそれを用いる1,3-ブタンジオールの製造方法 Download PDF

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Description

NITE NITE BP-03015
本開示は、1,3-ブタンジオール生産技術に関する。
本開示は、一態様において、特定の遺伝子操作が施された形質転換体、及びこの形質転換体を用いた1,3-ブタンジオールの製造技術に関する。
近年、化石資源の枯渇ならびに地球温暖化などの背景から、再生可能資源を原料とした化学品製造技術の重要性が広く認識され、注目を集めている。
1,3-ブタンジオールは化粧品基材、食品香料の溶媒、医薬・農薬等の合成原料として使用される。また、ポリウレタンやポリスチレン樹脂の原料としても使用される。工業的には、1,3-ブタンジオールはアセトアルデヒドのアルドール縮合により製造されるが、持続可能な社会の実現に向け、生物学的プロセスによる製造技術の開発が期待されている。
特許文献1は、大腸菌、酵母、コリネバクテリウム、及びクロストリジウムを宿主として、アセチルCoAカルボキシラーゼ、アセトアセチルCoA合成酵素、アセトアセチルCoA還元酵素、及び3-ヒドロキシブチリルCoA還元酵素を導入した形質転換菌を用いてグルコースから1,3-ブタンジオールを製造する技術を開示する。実施例では、宿主として大腸菌を用いている。
特許文献2は、微生物を宿主とし、アセトアセチルCoA還元酵素、3-ヒドロキシブチリルCoA還元酵素、及び3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素を導入することで1,3-ブタンジオール生成能を有する形質転換菌を構築する技術を開示する。
アセトアセチルCoA還元酵素をコードする遺伝子としては、thrA,akthr2,hom6,hom1,hom2,fadB,fadJ,Hbd2,Hbd1,hbd,HSD17B10,phbB,phaB,Msed_1423,Msed_0399,Msed_0389,Msed_1992,adh,adhA,adh-A,mdh,ldhA,ldh,bdhなどが開示される。
3-ヒドロキシブチリルCoA還元酵素をコードする遺伝子としては、acr1,sucD,bphG,bld,adhE,Msed_0709,mcr,asd-2,Saci_2370,Ald,eutEなどが開示される。
3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素をコードする遺伝子としては、alrA,ADH2,yqhD,bdhI,bdhII,adhA,4hbd,adhI,P84067,mmsb,dhat,3hidhなどが開示される。
非特許文献1は、大腸菌にRalstonia eutrophaのアセチル基転移酵素ならびにアセトアセチルCoA還元酵素、Clostoridium saccharoperbutylacetonicumの3-ヒドロキシブチリルCoA還元酵素を導入した形質転換菌を用いて、グルコースから1,3-ブタンジオールを生産する技術を開示する。
微生物が産生するアルコールの脱水素的酸化を触媒する酵素のうち、NAD(P)+を補酵素とする酵素は数多く知られる。このうち、1,3-ブタンジオールを基質として3-ヒドロキシブタナールを生成する酵素としては、非特許文献2に記載のシュードモナス エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)及びサルモネラ ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)のアルド-ケト還元酵素が知られている。
非特許文献3は、大腸菌に非特許文献2のアルド-ケト還元酵素を導入した形質転換菌を用いて、グルコースから3-ヒドロキシブタナールを介して1,3-ブタンジオールを生産する技術を開示する。
中鎖アルコール脱水素酵素は、アルド‐ケト還元酵素と同様にアルコールの脱水素的酸化を触媒するが、アルド-ケト還元酵素とは異なるスーパーファミリーに属する。非特許文献4は、植物由来のシナミルアルコールデヒドロゲナーゼファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素と、大腸菌由来のYjgB及びマイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)のAdhCとの近縁性に関する情報を開示する。
WO2014/045781 特表2012-525158号公報
J. Biosci. Bioeng. (2013) 115:475-480 Appl. Environ. Microbiol. (2017) 83:e03172-16 Metab. Eng. (2018) 48:13-24 Cell. Mol. Life Sci. (2008) 65:3879-3894
本開示は、糖類を原料として1,3-ブタンジオールを生物学的に生産できる形質転換体、及び、この形質転換体を用いる1,3-ブタンジオールの製造方法を提供する。
本開示は、一態様において、シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素をコードする遺伝子が宿主細菌に導入され、かつ、前記宿主細菌は、下記(A)~(D)の酵素の少なくとも1つが発現可能なように又は発現誘導可能なように変異又は遺伝子が導入されている、形質転換体に関する。
(A)アセチルCoAカルボキシラーゼ
(B)アセトアセチルCoA合成酵素
(C)アセトアセチルCoA還元酵素
(D)3-ヒドロキシブチリルCoA還元酵素
本開示は、その他の一態様において、形質転換体を、糖類、又は前記形質転換体が代謝によりアセチルCoAを生成し得る化合物を含む反応液中で培養する反応工程と、
反応培地中の1,3-ブタンジオールを回収する回収工程とを含み、
前記形質転換体は、シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素をコードする遺伝子が宿主細菌に導入されている形質転換体である、1,3-ブタンジオールの製造方法に関する。
本開示によれば、一態様において、糖類を原料として1,3-ブタンジオールを生産できる形質転換体を提供できる。本開示によれば、その他の一態様において、この形質転換体を用いて1,3-ブタンジオールを生物学的に製造(生産)できる。
図1は、YjgB及びAdhCが植物由来のシナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(Plamt CAD)と同じファミリーに属することを示す系統解析の結果である。 図2は、図1の系統樹の酵素のタンパク質及び由来のリストである。 図3は、YjgB及びAdhCの1,3-ブタンジオール酸化活性を示す酵素活性測定の結果である。 図4は、13BD78株の1,3-ブタンジオール生産の様子の一例を示すグラフである。 図5は、検索エンジンNCBI Conserved domain (CD) searchでMycobacterium smegmatisのadhC遺伝子がコードするタンパク質をqueryとしたときの結果である。 図6は、本開示に係る形質転換体における1,3-ブタンジオールの生成経路の概略図である。
本開示は、シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素が、1,3-ブタンジオール酸化活性を有し、1,3-ブタンジオールの生産に利用できる、という知見に基づく。
[シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリー]
本開示において、CADファミリーは、中鎖デヒドロゲナーゼ/リダクターゼ(MDR)スーパーファミリーに属する一群の中鎖アルコール脱水素酵素をいう(非特許文献4のpp.3884-3885参照)。
CADファミリーの代表的なメンバーであるシナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(シナミルADH)は、植物の細胞壁におけるリグニンの生合成に重要な役割を果たす酵素である。
CADファミリーに属する酵素は、植物だけではなく、酵母や原核生物(バクテリア)にも存在することが知られている。
本開示において、「CADファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素」とは、一又は複数の実施形態において、CADドメインを有する酵素をいう。
CADドメインの有無は、一又は複数の実施形態において、検索エンジンNCBI Conserved domain (CD) search(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/wrpsb.cgi)で調べたい配列をqueryとして検査したときに「CAD1」の構造がヒットするか否かで判断できる(図5参照)。図5は、Mycobacterium smegmatisのadhC遺伝子がコードするタンパク質をqueryとしたときの結果である。
本開示における「CADファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素」は、一又は複数の実施形態において、NADP+を補酵素として1,3-ブタンジオールを酸化する活性を有する。
本開示において、「NADP+を補酵素とする1,3-ブタンジオール酸化活性」は、実施例の記載の方法で測定できる。
本開示における「CADファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素」のアミノ酸長は、一又は複数の実施形態において、250超450未満、260以上440以下、270以上430以下、280以上420以下、290以上410以下、又は300以上400以下である。
本開示における「CADファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素」は、一又は複数の実施形態において、植物や微生物の酵素又はそれらに由来する酵素が挙げられ、1,3-ブタンジオールの生産性向上の観点から、原核生物又は原核生物由来の酵素が好ましく、バクテリア(細菌)又はバクテリア由来の酵素がより好ましい。
「CADファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素」としては、同様の観点から、クロノバクター(Cronobacter)属、エシェリキア(Escherichia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、バチルス(Bacillus)属、又はロドコッカス(Rhodococcus)属の当該酵素、若しくはこれらのオーソログ、又はこれらに由来する酵素が好ましい。
「CADファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素」としては、同様の観点から、クロノバクター サカザキ(Cronobacter sakazakii)、エシェリキア コリ(Escherichia coli)、コリネバクテリウム エフィシェンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム テルペノタビドゥム(Corynebacterium terpenotabidum)、マイコバクテリウム スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、又はロドコッカス ジョスティ(Rhodococcus jostii)の当該酵素、若しくはこれらのオーソログ、又はこれらに由来する酵素が好ましい。
「CADファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素」としては、同様の観点から、実施例の表1に記載の酵素、若しくはこれらのオーソログ、又はこれらに由来する酵素が好ましい。
これらの中でも、同様の観点から、クロノバクター サカザキ(Cronobacter sakazakii)のYjgB、エシェリキア コリ(Escherichia coli)のYjgB、コリネバクテリウム テルペノタビドゥム(Corynebacterium terpenotabidum)のAdhC、マイコバクテリウム スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)のAdhC、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)のAdhC、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)のAdhC、若しくはこれらのオーソログ、又はこれらに由来する酵素が好ましい。
「CADファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素」としては、一又は複数の実施形態において、
(1)クロノバクター サカザキ(Cronobacter sakazakii)のシナミルアルコールデヒドロゲナーゼファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素YjgB、
(2)クロノバクター(Cronobacter)属、及びエシェリキア(Escherichia)属における前記(1)のオーソログ、
(3)マイコバクテリウム スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)のシナミルアルコールデヒドロゲナーゼファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素遺伝子AdhC、及び
(4)マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、バチルス(Bacillus)属、及びロドコッカス(Rhodococcus)属における前記(3)のオーソログ、
が挙げられる。
本開示において「オーソログ」とは、異なる生物に存在する相同な機能を有する類縁タンパクを意味する。
本開示において「由来する酵素」とは、一又は複数の実施形態において、元の酵素のアミノ酸配列、例えば、実施例の表1に記載の配列番号1から12のいずれかのアミノ酸配列、に対して同一性が70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、又は97%以上のアミノ酸配列である酵素をいう。
本開示において「由来する酵素」とは、一又は複数の実施形態において、元の酵素、例えば、実施例の表1に記載の酵素と同程度の「NADP+を補酵素とする1,3-ブタンジオール酸化活性」を有する酵素をいう。同程度とは、一又は複数の実施形態において、活性の差が±25%、±20%、±15%、±10%、又は±5%以内のことをいう。
本開示に係る形質転換体は、本開示における「CADファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素」をコードする遺伝子が宿主細菌に導入された形質転換体である。
本開示に係る形質転換体は、一又は複数の実施形態において、「CADファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素」が発現可能に、又は、発現誘導可能に、該遺伝子が導入された形質転換体である。
該遺伝子の導入は、プラスミドにより導入してもよく、染色体上に導入してもよい。
該遺伝子の導入は、一又は複数の実施形態において、1,3-ブタンジオールの生産が向上する範囲で、遺伝子発現調節の配列(適切なプロモーターなど)とともに導入することが好ましい。
[宿主細菌]
宿主細菌としては、コリネバクテリウム属細菌、エシェリヒア属細菌(特に、エシェリヒア コリ)、バチルス属細菌(特にバチルス サブチリス)、シュードモナス属細菌(特に、シュードモナス プチダ)、ブレビバクテリウム属細菌、ストレプトコッカス属細菌、ラクトバチルス属細菌、ロドコッカス属細菌(特にロドコッカス エリスロポリス、ロドコッカス オパカス)、ストレプトマイセス属細菌、サッカロマイセス属酵母(特に、サッカロマイセス セレビシアエ)、クライベロマイセス属酵母、シゾサッカロマイセス属酵母、ヤロウィア属酵母、トリコスポロン属酵母、ロドスポリジウム酵母、ピキア属酵母、キャンディダ属酵母、ノイロスポラ属カビ、アスペルギルス属カビ、トリコデルマ属カビなどが挙げられる。
宿主細菌としては、1,3-ブタンジオールの生産性向上の観点から、コリネ型細菌を用いることが好ましい。
コリネ型細菌とは、バージーズ・マニュアル・デターミネイティブ・バクテリオロジー〔Bergey's Manual of Determinative Bacteriology、Vol. 8、599(1974)〕に定義されている一群の微生物であり、通常の好気的条件で増殖するものならば特に限定されるものではない。一又は複数の実施形態において、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウム属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリウム属菌、マイクロコッカス属菌等が挙げられる。コリネ型細菌の中ではコリネバクテリウム属菌が挙げられる。
コリネバクテリウム属菌としては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム エフィシェンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム ハロトレランス(Corynebacterium halotolerance)、コリネバクテリウム アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)等が挙げられる。
1,3-ブタンジオールの生産性向上の観点から、コリネバクテリウム グルタミカムが好ましい。より具体的には、一又は複数の実施形態において、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株(FERM BP-18976)、ATCC13032株、ATCC13869株、ATCC13058株、ATCC13059株、ATCC13060株、ATCC13232株、ATCC13286株、ATCC13287株、ATCC13655株、ATCC13745株、ATCC13746株、ATCC13761株、ATCC14020株、ATCC31831株、MJ-233(FERM BP-1497)、MJ-233AB-41(FERM BP-1498)等が挙げられる。これらのコリネバクテリウム グルタミカム株は、ブダペスト条約の下で国際寄託されており、公に利用可能である。
同様の観点から、宿主細菌としては、R株(FERM BP-18976)、ATCC13032株、ATCC13869株が好ましい。
なお、分子生物学的分類により、ブレビバクテリウム フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム ディバリカタム(Brevibacterium divaricatum)、コリネバクテリウム リリウム(Corynebacterium lilium)等のコリネ型細菌もコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に菌名が統一されている〔Liebl, W. et al., Transfer of Brevibacterium divaricatum DSM 20297T, "Brevibacterium flavum" DSM 20411, "Brevibacterium lactofermentum" DSM 20412 and DSM 1412, and Corynebacterium glutamicum and their distinction by rRNA gene restriction patterns. Int J Syst Bacteriol. 41:255-260. (1991)、駒形和男ら, コリネフォルム細菌の分類, 発酵と工業, 45:944-963 (1987)〕。
ブレビバクテリウム属菌としては、ブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)(例えばATCC6872株)等が挙げられる。
アースロバクター属菌としては、アースロバクター グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)(例えばATCC8010株、ATCC4336株、ATCC21056株、ATCC31250株、ATCC31738株、ATCC35698株)等が挙げられる。
マイコバクテリウム属菌としては、マイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)(例えばATCC19210株、ATCC27289株)等が挙げられる。
マイクロコッカス属菌としては、マイクロコッカス フロイデンライヒ(Micrococcus freudenreichii)(例えばNo.239株(FERM P-13221))、マイクロコッカス ルテウス(Micrococcus leuteus)(例えばNo.240株(FERM P-13222))、マイクロコッカス ウレアエ(Micrococcus ureae)(例えばIAM1010株)、マイクロコッカス ロゼウス(Micrococcus roseus)(例えばIFO3764株)等が挙げられる。
これらのブレビバクテリウム属、アースロバクター属、マイコバクテリウム属、及びマイクロコッカス属の菌株は、ブダペスト条約の下で国際寄託されており、公に利用可能である。
[宿主への変異又は遺伝子の導入]
本開示に係る形質転換体における1,3-ブタンジオールの生成経路としては、一又は複数の実施形態において、図6のように概略できる。
グルコールからホスホエノールピルビン酸、ピルビン酸、アセチルCoAと代謝され、さらに、3-ヒドロキシブチリルCoA、3-ヒドロキシブタナール(3-ヒドロキシブチルアルデヒド)となる。そして、3-ヒドロキシブタナールが、CADファミリーに属するアルコール脱水素酵素により触媒され、1.3-ブタンジオールが生成される。
したがって、本開示に係る形質転換体は、一又は複数の実施形態において、1,3-ブタンジオールの生産性向上の観点から、さらに、下記(A)~(D)の酵素の少なくとも1つが発現可能なように又は発現誘導可能なように変異又は遺伝子が導入されていることが好ましく、発現亢進可能なように又は発現亢進の誘導が可能なように変異又は遺伝子が導入されていることがより好ましい。
(A)アセチルCoAを基質としてマロニルCoAを生成する反応を触媒するアセチルCoAカルボキシラーゼ
(B)アセチルCoAとマロニルCoAから不可逆的にアセトアセチルCoAを生成する反応を触媒するアセトアセチルCoA合成酵素
(C)アセトアセチルCoAから3-ヒドロキシブチリルCoAを生成する反応を触媒するアセトアセチルCoA還元酵素
(D)3-ヒドロキシブチリルCoAから3-ヒドロキシブタナールを生成する反応を触媒する3-ヒドロキシブチリルCoA還元酵素
上記(A)~(D)の酵素は、一又は複数の実施形態において、1,3-ブタンジオールの生産性向上の観点から、これらの2つ、3つ、又は全部が発現可能なように又は発現誘導可能なように変異又は遺伝子が導入されていることが好ましい。
ある酵素が発現(若しくは発現亢進)可能なように又は発現(若しくは発現亢進)誘導可能なように変異又は遺伝子を導入することの、一又は複数の実施形態としては、該酵素をコードする遺伝子をプラスミドにより又は染色体上に導入することが挙げられ、あるいは、宿主細菌の染色体上に存在する該酵素遺伝子の制御配列、遺伝子コード領域、又はその両者への変異導入、又は塩基配列置換によってもたらすことが挙げられる。
また、本開示に係る形質転換体は、一又は複数の実施形態において、ホスホエノールピルビン酸、ピルビン酸、又はアセチルCoAが他の経路に消費されることを抑制して1,3-ブタンジオールの生産性を向上させる観点から、下記(A’)~(D’)の酵素の少なくとも1つが機能低下又は機能欠損していることが好ましい。酵素の機能低下又は機能欠損は、一又は複数の実施形態において、該酵素をコードする遺伝子の破壊、欠損、又は変異により行うことができる。
(A’)ホスホエノールピルビン酸を基質としてオキサロ酢酸を生成する反応を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PPC)
(B’)ホスホトランスアセチラーゼ(PTA)
(C’)アセテートキナーゼ(ACK)
(D’)乳酸脱水素酵素(LDH)
なお、PTA及びACKは、アセチルCoAを消費して酢酸を生合成する経路の酵素である。
[1,3-ブタンジオールの製造]
本開示に係る形質転換体を、炭素源を含む反応液中で反応させることにより1,3-ブタンジオールを製造することができる。
菌体の増殖
反応に先立ち、形質転換体を好気条件下、温度約25~38℃で、約12~48時間培養して増殖させることが好ましい。
培養用培地
反応に先立つ形質転換体の好気的培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機塩類及びその他の栄養物質等を含有する天然培地又は合成培地を用いることができる。
炭素源として、糖類(グルコース、フルク卜ース、マンノース、キシロース、アラビノース、ガラク卜ース等の単糖;スクロース、マル卜ース、ラク卜ース、セロビオース、キシロビオース、卜レハロース等の二糖;澱粉等の多糖;糖蜜等)、マンニ卜ール、ソルビ卜ール、キシリ卜ールグリセリン等の糖アルコール;酢酸、クエン酵、乳酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸等の有機酸;エタノール、プロパノール等のアルコール;ノルマルパラフィン等の炭化水素等も用いることができる。
炭素源は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用できる。
窒素源としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウムのような無機又は有機アンモニウム化合物、尿素、アンモニア水、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等を使用できる。また、コーンスティープリカー、肉エキス、ペプトン、NZアミン、蛋白質加水分解物、アミノ酸等の含窒素有機化合物等も使用できる。窒素源は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。窒素源の培地中の濃度は、使用する窒素化合物によっても異なるが、通常約0.1~10(w/v%)とすればよい。
無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、炭酸カルシウム等が挙げられる。無機塩は、1種を単独で、2種以上を混合して使用できる。無機塩類の培地中の濃度は、使用する無機塩によっても異なるが、通常約0.01~1(w/v%)とすればよい。
栄養物質としては、肉エキスペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、コーンスティープリカー、脱脂粉乳、脱脂大豆塩酸加水分解物、動植物又は微生物菌体のエキスやそれらの分解物等が挙げられる。栄養物質の培地中の濃度は、使用する栄養物質によっても異なるが、通常約0.1~10(w/v)%とすればよい。
さらに、必要に応じて、ビタミン類を添加することもできる。ビタミン類としては、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、イノシ卜ール、ニコチン酸等が挙げられる。培地のpHは約6~8が好ましい。
具体的な好ましいコリネバクテリウム グルタミ力ム用培地としては、A培地〔Inui, M. et al.,Metabolic analysis of Corynebacterium glutamicum during lactate and succinate productions under oxygen deprivation conditions. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 7:182-196 (2004)〕、BT培地〔Omumasaba, C.A. et al., Corynebacterium glutamicum glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase isoforms with opposite, ATP-dependent regulation. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 8:91-103 (2004)〕等が挙げられる。これらの培地において、糖類濃度を上記範囲にして用いればよい。
反応液は、糖類又は本開示に係る形質転換体が代謝によりアセチルCoAを生成し得る化合物を含有する水、緩衝液、無機塩培地等を用いることができる。
糖類としては、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロビオース、トレハロース、又はマンニトールが好ましい。
緩衝液としては、リン酸バッフアー、卜リスバッファー、炭酸バッファーなどが挙げられる。緩衝液の濃度は約10~150mMが好ましい。
無機塩培地としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、炭酸カルシウム等の無機塩の1種又は2種以上を含む培地が挙げられる。中でも、硫酸マグネシウムを含む培地が好ましい。無機塩培地として、具体的にはBT培地等が挙げられる。無機塩類の培地中の濃度は、使用する無機塩によっても異なるが、通常、約0.01~1(w/v%)とすればよい。
反応液のpHは約6~8が好ましい。反応中は、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などを用いて、pHコントローラー(例えば、エイブル株式会社製、型式:DT-1023)で、反応液のpHを中性付近、特に約7にコントロールしながら反応させることが好ましい。
反応条件
反応温度、即ち反応中の形質転換体の生存温度は、約20~50℃が好ましく、約25~47℃がより好ましい。上記温度範囲であれば効率良く1,3-ブタンジオールを製造できる。
また、反応時聞は約1~7日聞が好ましく、約1~3日聞がより好ましい。培養は、バッチ式、流加式、連続式の何れでもよい。中でもバッチ式が好ましい。
通気条件
反応は、還元条件、あるいは微好気的条件で行ってもよい。いずれの条件においてもコリネバクテリウム グルタミ力ムは実質的に増殖しない反応で行われるため、一層効率的に1,3-ブタンジオールを生産させることができる。
還元条件は、反応液の酸化還元電位で規定される。反応液の酸化還元電位は、約-200mV~-500mVが好ましく、-250mV~-500mVがより好ましい。
反応液の還元状態は簡便にはレサズリン指示薬(還元状態であれば、青色から無色への脱色)で推定できるが、正確には酸化還元電位差計(例えば、BROADLEY JAMES社製、ORP Electrodes)を用いて測定できる。
還元条件にある反応液の調整方法は、公知の方法を制限なく使用できる。
例えば、反応液調製用の液体媒体として、蒸留水などの代わりに反応液用水溶液を使用してもよく反応液用水溶液の調整方法は、例えば硫酸還元微生物などの絶対嫌気性微生物用の培養液調整方法(Pfennig, N. et al,(1981 ) : The dissimilatory sulfate-reducing bacteria, In The Prokaryotes, A Handbook on Habitats, Isolation and Identification of Bacteria Ed. By Starr, M. P. et al.,p.926-940, Berlin, Springer Verlag.)や「農芸化学実験書 第三巻、京都大学農学部 農芸化学教室編、1990年第26刷、産業図書株式会社出版」などが参考となり、所望する還元条件下の水溶液を得ることができる。
具体的には、蒸留水などを加熱処理や減圧処理して溶解ガスを除去することにより、還元条件の反応液用水溶液を得ることができる。この場合、約10mmHg以下、好ましくは約5mmHg以下、より好ましくは約3mmHg以下の減圧下で、約1~60分程度、好ましくは約5~40分程度、蒸留水などを処理することにより、溶解ガス、特に溶解酸素を除去して還元条件下の反応液用水溶液を作成することができる。
また、適当な還元剤(例えば、チオグリコール酸、アスコルビン酸、システィン塩酸塩、メル力プ卜酢酸、チオール酢酸、グルタチオン、硫化ソーダ等)を添加して還元条件の反応液用水溶液を調整することもできる。
これらの方法を適宜組み合わせることも有効な還元条件の反応液用水溶液の調製方法である。
反応途中での還元条件を維持する場合は、反応系外からの酸素の混入を可能な限り防止することが望ましく、具体的には、反応系を窒素ガス等の不活性ガスや炭酸ガス等で封入する方法が挙げられる。酸素混入をより効果的に防止する方法としては、反応途中において本発明の好気性細菌の菌体内の代謝機能を効率よく機能させるために、反応系のpH維持調整液の添加や各種栄養素溶解液を適宜添加する必要が生じる場合もあるが、このような場合には添加溶液から酸素を予め除去しておくことが有効である。
反応途中で微好気条件を維持する場合は、通気量を0.5vvm(volume per volume per minute)などの低値あるいはそれ以下とし、攪拌速度を500 rpmなどの低値あるいはそれ以下の条件で反応させることができる。場合によっては、反応開始後、適当な時間で通気を遮断し、撹拌速度を100rpmあるいはそれ以下の条件で嫌気度を向上させた状態と組み合わせて反応することもできる。
1,3-ブタンジオールの回収
上記のようにして培養することにより、反応液中に1,3-ブタンジオールが生産される。反応液を回収することにより1,3-ブタンジオールを回収できるが、さらに、公知の方法で1,3-ブタンジオールを反応液から分離することもできる。そのような公知の方法として、蒸留法、膜透過法、有機溶媒抽出法等が挙げられる。
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
〔1〕 シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素をコードする遺伝子が宿主細菌に導入され、かつ、
前記宿主細菌は、下記(A)~(D)の酵素の少なくとも1つが発現可能なように又は発現誘導可能なように変異又は遺伝子が導入されている、形質転換体。
(A)アセチルCoAカルボキシラーゼ
(B)アセトアセチルCoA合成酵素
(C)アセトアセチルCoA還元酵素
(D)3-ヒドロキシブチリルCoA還元酵素
〔2〕 さらに、前記宿主細菌は、下記(A’)~(D’)の酵素の少なくとも1つが機能低下又は機能欠損している、〔1〕に記載の形質転換体。
(A’)ホスホエノールピルビン酸を基質としてオキサロ酢酸を生成する反応を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PPC)
(B’)ホスホトランスアセチラーゼ(PTA)
(C’)アセテートキナーゼ(ACK)
(D’)乳酸脱水素酵素(LDH)
〔3〕 宿主細菌が、コリネ型細菌である、〔1〕又は〔2〕に記載の形質転換体。
〔4〕 宿主細菌が、コリネバクテリウム属細菌である、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の形質転換体。
〔5〕 1,3-ブタンジオールの生産能を有する、又は、1,3-ブタンジオールの生産に使用するための、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の形質転換体。
〔6〕 シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素が、クロノバクター(Cronobacter)属、エシェリキア(Escherichia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、バチルス(Bacillus)属、又はロドコッカス(Rhodococcus)属由来のものである、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の形質転換体。
〔7〕 シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素が、クロノバクター サカザキ(Cronobacter sakazakii)、エシェリキア コリ(Escherichia coli)、コリネバクテリウム エフィシェンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム テルペノタビドゥム(Corynebacterium terpenotabidum)、マイコバクテリウム スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、又はロドコッカス ジョスティ(Rhodococcus jostii)由来のものである、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の形質転換体。
〔8〕 コリネバクテリウム グルタミカム R-BD1株(Corynebacterium glutamicum R-BD1)(受託番号:NITE BP-03015)コリネ型細菌形質転換体。
〔8〕 形質転換体を、糖類、又は前記形質転換体が代謝によりアセチルCoAを生成し得る化合物を含む反応液中で培養する反応工程と、
反応培地中の1,3-ブタンジオールを回収する回収工程とを含み、
前記形質転換体は、シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素をコードする遺伝子が宿主細菌に導入されている形質転換体である、1,3-ブタンジオールの製造方法。
〔10〕 形質転換体が、〔1〕から〔8〕のいずれかに記載の形質転換体である、〔9〕に記載の1,3-ブタンジオールの製造方法。
〔11〕 反応工程が、好気的、かつ形質転換体が増殖しない条件下で形質転換体を培養することを含む、〔9〕又は〔10〕に記載の1,3-ブタンジオールの製造方法。
以下、実施例を用いて本開示をさらに説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
[実施例1]
1.原核生物のシナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属する中鎖アルコール脱水素酵素のデータベースからの抽出
(1)大腸菌由来YjgB及びマイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)由来AdhC相同タンパク質の探索
BLASTPプログラムを用い、配列番号2及び19のアミノ酸配列をクエリー配列とし、GenBankデータベースから大腸菌由来YjgBあるいはマイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)由来AdhCと相同性を有するアミノ酸配列を抽出した。抽出されたアミノ酸配列に関する情報を表1に示す。
(2)大腸菌YjgB及びマイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)AdhC相同タンパク質の系統解析
表1に示すタンパク質のアミノ酸配列と、ヒト、植物、ならびに原核生物のアルコール脱水素酵素のアミノ酸配列を用い、配列比較解析を行い、系統樹を構築した。結果を図1に示す。図1において四角枠で囲まれたタンパク質がシナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーである。この結果から表1の中鎖アルコール脱水素酵素がCADファミリーに属することが確認された。なお、図1の系統樹の酵素のタンパク質及び起源を図2に示す。
2.中鎖アルコール脱水素酵素の単離及び発現
(1)染色体DNAの調整・入手
Escherichia coli K-12 MG1655、Cronobacter sakazakii JCM 1233、Corynebacterium efficiens NBRC100395、Corynebacterium terpenotabidum JCM10555、Mycobacterium smegmatis ATCC700084、Bacillus subtilis NBRC14144、Bacillus megaterium JCM2506、Rhodococcus erythropolis ATCC27854、及びRhodococcus jostii JCM11615の染色体DNAは、菌株入手機関の情報に従って培養した後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて調製した。
(2)中鎖アルコール脱水素酵素遺伝子の単離
目的の酵素遺伝子の単離に用いたプライマー配列を表2に示す。PCRは、GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTks Gflex DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いた。
PCR増幅したDNA断片をPldhAプロモーターを有するクローニングベクターLldh4に導入した。
得られたプラスミド名を表3に示す。
(3)中鎖アルコール脱水素酵素発現株の構築
表3のプラスミドを用いて、コリネバクテリウム グルタミカムR株の形質転換を行った。
得られた中鎖アルコール脱水素酵素発現株を表4に示す。
3.中鎖アルコール脱水素酵素発現株の1,3-ブタンジオール酸化活性の測定
実施例1において作成したコリネバクテリウム グルタミカム R_CsYjgB、R_EcYjgB、R_CtAdhC、R_MsAdhC、R_BmAdhC、及びR_ReAdhC株を、カナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地[(NH22CO 2g、(NH42SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)ビオチン水溶液 1ml、0.01%(w/v)チアミン水溶液 2ml、酵母エクストラクト 2g、vitamin assayカザミノ酸 7g、グルコース 40g、寒天 15gを蒸留水1Lに懸濁]に塗布し、30℃、24時間暗所に静置した。対照区としてベクター導入株を同様に培養した。
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカムR_CsYjgB、R_EcYjgB、R_CtAdhC、R_MsAdhC、R_BmAdhC、R_ReAdhC株、及びベクター導入株(EV)を、カナマイシン50μg/mlを含有したA液体培地2.5mlの入った試験管に一白金耳植菌し、30℃にて20時間、好気的に振盪培養を行った。このようにして培養増殖されたそれぞれの菌体は、遠心分離(4℃、4,000×g、7分)により菌体を回収した。
得られた菌体を1mlの菌体抽出用緩衝液[20mM トリス塩酸緩衝液(pH7.2)、5mM ジチオスレイトール、15% グリセロール]に懸濁し、安井器械株式会社製マルチビーズショッカーを用いて菌体を破砕した。遠心分離(4℃、20,000×g、10分)により不純物を除いた上清を無細胞抽出液とした。
酵素活性(酸化活性)の測定は、50mMの1,3-ブタンジオール、0.2mMのNADP+、及び無細胞抽出液を含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.2)1mlの反応液を30℃で30分間反応させ、その間の340nmの吸光度の増加を測定することにより行い、1分間に1μmolのNADP+をNADPHに還元する酵素活性を1unitと定義した。図3に示すとおり、解析した全てのYjgB及びAdhC相同タンパク質発現株において、1,3-ブタンジオール酸化活性が検出された。対照区として用いたベクター導入株(EV)由来のサンプルでは、1,3-ブタンジオール酸化活性は検出されなかった。これらの結果からYjgB及びAdhC相同タンパク質が1,3-ブタンジオール酸化活性を有することが確認された。
なお、図1の系統樹でCADファミリーに属さないタンパク質(EcyqhD、MmyqhD、LpPDDH、及びPoPDDH)を同様に形質転換した株では、ベクター導入株(EV)程度の1,3-ブタンジオール酸化活性しか確認できなかった。
[実施例2]
1.1,3-ブタンジオール生産株の構築
(1)染色体DNAの調整・入手
上記[実施例1]2.(1)で調製した染色体DNAに加え、Corynebacterium glutamicum R (FERM P-18976)、Clostridium beijerinckii DSM 6422の染色体DNAを、菌株入手機関の情報に従って培養した後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて調製した。
(2)1,3-ブタンジオール生産関連遺伝子の単離
目的の酵素遺伝子の単離に用いたプライマー配列を表5に示す。PCRは、GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTks Gflex DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いた。ストレプトマイセス テンダエ(Streptomyces tendae)由来のアセトアセチルCoA合成酵素遺伝子aacs、及びラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)由来のアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子eutEは、コリネバクテリウム グルタミカムにおける発現のためコドン最適化した遺伝子を人工合成により作成した(配列番号55及び56)。
なお、1,3-ブタンジオール生産関連遺伝子がコードする酵素は以下の通り。
acc:アセチルCoAカルボキシラーゼ
aacs:アセトアセチルCoA合成酵素
hbd:β―ヒドロキシブチリルCoAデヒドロゲナーゼ
eutE:アルデヒドデヒドロゲナーゼ
aacs遺伝子、accBC遺伝子、accD1遺伝子、及びaccE遺伝子はPtacプロモーターを含有するクローニングベクターLtac5に導入した。hbd遺伝子ならびにeutE遺伝子はPgapAプロモーターを有するクローニングベクターLgap10に導入した。得られたプラスミドを表6に示す。
yjgB遺伝子及びadhC遺伝子はPldhAプロモーターを有するクローニングベクターLldh4に導入した(上記表3)。
(3)1,3-ブタンジオール生産関連遺伝子発現プラスミドの構築
Ltac5Staacs、Lgap10LbeutE、Lldh4CsyjgB、Lldh4EcyjgB、Lldh4CtadhC、Lldh4MsadhC、Lldh4BmadhC、及びLldh4ReadhCからプロモーター及びターミネーターを含む各遺伝子配列を、クローニングベクターpCRB22に導入した。
Ltac5CgaccBC、Ltac5CgaccD1、及びLtac5CgaccEからプロモーター及びターミネーターを含む各遺伝子配列を、クローニングベクターpCRB55に導入した。
得られたプラスミドを表7に示す。
(4)1,3-ブタンジオール生産関連遺伝子染色体導入用プラスミドの構築
Lgap10Cbhbdからプロモーター及びターミネーターを含む遺伝子配列を、マーカーレス染色体遺伝子導入用ベクターLKSind1-4に導入した。
得られたプラスミドを表8に示す。
(5)染色体遺伝子組換えによる1,3-ブタンジオール生産株の構築
マーカーレス染色体遺伝子導入用ベクターLKSind1-4は、コリネバクテリウム グルタミカムR内で複製できない。LKSind1-4に導入した染色体上の相同領域と当該ベクター由来のプラスミド間の一重交叉により生じる組換え株は、LKSind1-4上のカナマイシン耐性遺伝子及びバチルス サブチリス(Bacillus subtilis)由来のsacR-sacB遺伝子の発現により、カナマイシン耐性及びスクロース感受性を示す。当該組換え株より派生する二重交叉株は、LKSind1-4由来のカナマイシン耐性遺伝子及びsacR-sacB遺伝子の脱落により、カナマイシン感受性及びスクロース耐性を示す。従って、目的遺伝子導入株は、カナマイシン感受性及びスクロース耐性を示す。
LKSind1-4Cbhbdを用い、上記の手法により、hbd染色体導入株を構築した。さらに、同様の原理に基づき、マーカーレス遺伝子破壊用ベクターpCRA725を用いて、ldhA、pta、ack、及びppc遺伝子のマーカーレス破壊を行った。
これらの遺伝子がコードする酵素は以下の通り。
ldhA:乳酸脱水素酵素
pta:ホスホトランスアセチラーゼ
ack:アセテートキナーゼ
ppc:ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ
得られた菌株を表9に示す。
(6)1,3-ブタンジオール生産関連遺伝子発現プラスミド導入株の構築
表x5に示す染色体遺伝子組換え株に表3に示す2つの1,3-ブタンジオール生産関連遺伝子発現プラスミドを導入することにより、1,3-ブタンジオール生産株を構築した。また、対照実験用としてyjgB及びadhCを欠く13BD0株を構築した。
構築した株について表10に示す。
コリネバクテリウム グルタミカム13BD78株は、Corynebacterium glutamicum R-BD1株として、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに寄託した(受託日:2019年8月13日、受託番号:NITE BP-03015)。
2.1,3-ブタンジオール生産試験(10mlスケール)
yjgB、adhC導入効果の検証
コニカルチューブを用いた好気フェドバッチ反応における1,3-ブタンジオール生産試験を以下に述べる方法により行った。実験には、上記1.において作成したコリネバクテリウム グルタミカム 1,3-ブタンジオール生産株13BD0、13BD78、13BD114、13BD116、13BD117、13BD118、13BD119、及び13BD120を用いた。
各菌株をカナマイシン50μg/ml、及びゼオシン25μg/mlを含むA寒天培地[(NH22CO 2g、(NH42SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)ビオチン水溶液 1ml、0.01%(w/v)チアミン水溶液 2ml、酵母エクストラクト 2g、vitamin assayカザミノ酸 7g、グルコース 40g、寒天 20gを蒸留水1Lに懸濁]に塗布し、30℃、72時間暗所に静置した。
上記のプレートで生育した株を、カナマイシン50μg/ml、及びゼオシン25μg/mを含有したA液体培地2.5mlの入った試験管に一白金耳植菌し、30℃にて24時間、好気的に振盪培養を行った。
上記条件で培養した菌体を、カナマイシン50μg/ml、及びゼオシン25μg/mlを含有したA液体培地100mlの入ったフラスコにOD610=0.1になるように植菌し、30℃にて17時間、好気的に振盪培養を行った。
培養後の菌体を遠心分離(4℃、4000xg、7分)により回収し、BT-U培地[(NH42SO47g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v) Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v) MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)ビオチン水溶液 1ml、0.01%(w/v) チアミン水溶液 2mlを蒸留水1Lに懸濁]を用いて洗菌した。洗菌後の菌体を、250mgのCaCO3及び5%グルコースを含有するBT-U培地10mlの入ったコニカルチューブに、OD610=50になるように植菌し、33℃にて24時間、好気的に振盪培養を行った。必要に応じ、培養途中で培養液にグルコースを添加した。培養液を遠心分離(4℃、16000xg、10分)して得た培養上清液中の1,3-ブタンジオール濃度を、高速液体クロマトグラフィーシステム[ACQUITY UPLC H-Class(Waters)、Unison UK-C18(Imtakt)、移動相に20mMリン酸を用いて分離]を用いて分析した結果を表11に示す。
本実験の結果から、YjgBならびにAdhCの導入が1,3-ブタンジオール生産に有効であることが示された。
3.1,3-ブタンジオール生産試験(10mlスケール)
ppc破壊効果の検証
上記2.と同様の手法を用い、コニカルチューブを用いた好気フェドバッチ反応における1,3-ブタンジオール生産試験を行った。実験には、上記1.において作成したコリネバクテリウム グルタミカム 1,3-ブタンジオール生産株13BD114及び13BD78を用いた。
各菌株をカナマイシン50μg/ml、及びゼオシン25μg/mlを含むA寒天培地に塗布し、30℃、72時間暗所に静置した。
上記のプレートで生育した株を、カナマイシン50μg/ml、及びゼオシン25μg/mlを含有したA液体培地2.5mlの入った試験管に一白金耳植菌し、30℃にて24時間、好気的に振盪培養を行った。
上記条件で生育した株を、カナマイシン50μg/ml、及びゼオシン25μg/mlを含有したA液体培地100mlの入ったフラスコにOD610=0.1になるように植菌し、30℃にて17時間、好気的に振盪培養を行った。
培養後の菌体を遠心分離(4℃、4000xg、7分)により回収し、BT-U培地を用いて洗菌した。洗菌後の菌体を、250mgのCaCO3及び5%グルコースを含有するBT-U培地10mlの入ったコニカルチューブに、OD610=50になるように植菌し、33℃にて24時間、好気的に振盪培養を行った。必要に応じ、培養途中で培養液にグルコースを添加した。培養液を遠心分離(4℃、16000xg、10分)して得た培養上清液中の1,3-ブタンジオール濃度を高速液体クロマトグラフィーシステム[ACQUITY UPLC H-Class(Waters)、Unison UK-C18(Imtakt)、移動相に20mMリン酸を用いて分離]を用いて分析した。
また、培養上清液中のグルコース濃度を多機能バイオセンサBF-5(王子計測機器株式会社)を用いて分析し、得られたデータをもとに1,3-ブタンジオール対糖収率を算出した。生産実験終了時の1,3-ブタンジオール濃度ならびに対糖収率を表12に示す。
本実験の結果から、ppc破壊により1,3-ブタンジオールの生成量ならびに対糖収率が向上することが示された。
4.1,3-ブタンジオール生産試験(ジャーファーメンター、80mlスケール)
ジャーファーメンターを用いた好気フェドバッチ反応における1,3-ブタンジオール生産試験を以下に述べる方法により行った。実験には、上記1.において作成したコリネバクテリウム グルタミカム 1,3-ブタンジオール生産株13BD78を用いた。
13BD78をカナマイシン50μg/ml、及びゼオシン25μg/mlを含むA寒天培地に塗布し、30℃、72時間暗所に静置した。
上記のプレートで生育した株を、カナマイシン50μg/ml、及びゼオシン25μg/mlを含有したA液体培地2.5mlの入った試験管に一白金耳植菌し、30℃にて24時間、好気的に振盪培養を行った。
上記条件で培養した菌体を、100ml容量のジャーファーメンター培養槽内の、カナマイシン50μg/ml、ゼオシン25μg/ml、5%グルコース、及び消泡剤アデカノールL126 3g/lを含有したA-U培地[(NH42SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)ビオチン水溶液1ml、0.01%(w/v)チアミン水溶液2ml、酵母エクストラクト2g、vitamin assayカザミノ酸7gを蒸留水1Lに懸濁]80mlにOD610=0.1となるように植菌し、ジャーファーメンターを用いて、培養温度30℃、pH7、攪拌速度400rpm、培養液量に対する1分間あたりの通気容量を0.4vvmに制御し、培養を行った。
上記条件で18時間培養した後、培養条件を、培養温度33℃、pH7、攪拌速度300rpm、培養液量に対する1分間あたりの通気容量を0.4vvmに変更し、1,3-ブタンジオール生産実験を開始した。必要に応じ、培養途中で培養液にグルコースを添加した。培養液を遠心分離(4℃、16000xg、10分)して得た培養上清液中の1,3-ブタンジオール濃度を高速液体クロマトグラフィーシステム[ACQUITY UPLC H-Class(Waters)、Unison UK-C18(Imtakt)、移動相に20mMリン酸を用いて分離]を用いて分析した。生産実験開始から24時間までの1,3-ブタンジオール濃度の経時変化を図4に示す。
図4に示すように、本試験の結果から、ジャーファーメンターを用いた好気フェドバッチ反応において、1,3-ブタンジオールの効率的な生産が可能であることが示された。
本開示によれば、微生物を用いて糖原料から1,3-ブタンジオールを製造することができる。

Claims (15)

  1. シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素をコードする遺伝子が宿主細菌に導入され、かつ、
    前記宿主細菌は、下記(A)~(D)の酵素の少なくとも1つが発現可能なように又は発現誘導可能なように変異又は遺伝子が導入されている
    1,3-ブタンジオールの生産能を有する、又は、1,3-ブタンジオールの生産に使用するための、形質転換体であって、
    前記シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素が、クロノバクター(Cronobacter)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、バチルス(Bacillus)属、又はロドコッカス(Rhodococcus)属由来のものである、形質転換体
    (A)アセチルCoAカルボキシラーゼ
    (B)アセトアセチルCoA合成酵素
    (C)アセトアセチルCoA還元酵素
    (D)3-ヒドロキシブチリルCoA還元酵素
  2. 前記シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素が、クロノバクター サカザキ(Cronobacter sakazakii)、コリネバクテリウム テルペノタビドゥム(Corynebacterium terpenotabidum)、マイコバクテリウム スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)、又はロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)由来のものである、請求項1に記載の形質転換体。
  3. 前記シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素が、クロノバクター サカザキ(Cronobacter sakazakii)のYjgB、コリネバクテリウム テルペノタビドゥム(Corynebacterium terpenotabidum)のAdhC、マイコバクテリウム スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)のAdhC、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)のAdhC、及びロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)のAdhCからなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1又は2に記載の形質転換体。
  4. 前記シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素が、下記(1)から(5)からなる群から選択される少なくとも一つの酵素である、請求項1から3のいずれかに記載の形質転換体。
    (1)配列番号1で示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する酵素。
    (2)配列番号4で示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する酵素。
    (3)配列番号5で示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する酵素。
    (4)配列番号7で示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する酵素。
    (5)配列番号8で示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する酵素。
  5. 前記シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素をコードする遺伝子が、下記(1)から(5)からなる群から選択される少なくとも一つの遺伝子である、請求項1から3のいずれかに記載の形質転換体。
    (1)配列番号13で示される塩基配列、又は当該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を有する遺伝子。
    (2)配列番号16で示される塩基配列、又は当該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を有する遺伝子。
    (3)配列番号17で示される塩基配列、又は当該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を有する遺伝子。
    (4)配列番号19で示される塩基配列、又は当該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を有する遺伝子。
    (5)配列番号20で示される塩基配列、又は当該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を有する遺伝子。
  6. シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素をコードする遺伝子が宿主細菌に導入され、かつ、
    前記宿主細菌は、下記(A)~(D)の酵素のすべてが発現可能なように又は発現誘導可能なように変異又は遺伝子が導入されている、形質転換体であって、
    前記シナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)ファミリーに属するアルコール脱水素酵素が、エシェリキア コリ(Escherichia coli)のYjgBである、形質転換体
    (A)アセチルCoAカルボキシラーゼ
    (B)アセトアセチルCoA合成酵素
    (C)アセトアセチルCoA還元酵素
    (D)3-ヒドロキシブチリルCoA還元酵素
  7. 前記エシェリキア コリ(Escherichia coli)のYjgBが、配列番号2で示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する酵素である、請求項6に記載の形質転換体。
  8. 前記エシェリキア コリ(Escherichia coli)のYjgBが、配列番号14で示される塩基配列、又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を有する酵素である、請求項6に記載の形質転換体。
  9. さらに、前記宿主細菌は、下記(A')~(D')の酵素の少なくとも1つが機能低下又は機能欠損している、請求項1から8のいずれかに記載の形質転換体。
    (A')ホスホエノールピルビン酸を基質としてオキサロ酢酸を生成する反応を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PPC)
    (B')ホスホトランスアセチラーゼ(PTA)
    (C')アセテートキナーゼ(ACK)
    (D')乳酸脱水素酵素(LDH)
  10. 宿主細菌が、コリネ型細菌である、請求項1から9いずれかに記載の形質転換体。
  11. 宿主細菌が、コリネバクテリウム属細菌である、請求項1から10のいずれかに記載の形質転換体。
  12. 1,3-ブタンジオールの生産能を有する、又は、1,3-ブタンジオールの生産に使用するための、請求項6から8のいずれかに記載の形質転換体。
  13. コリネバクテリウム グルタミカム R-BD1株(受託番号:NITE BP-03015
  14. 請求項1から12のいずれかに記載の形質転換体又は請求項13に記載のR-BD1株を、糖類、又は前記形質転換体が代謝によりアセチルCoAを生成し得る化合物を含む反応液中で培養する反応工程と、
    反応培地中の1,3-ブタンジオールを回収する回収工程とを含、1,3-ブタンジオールの製造方法。
  15. 反応工程が、好気的、かつ形質転換体が増殖しない条件下で形質転換体を培養することを含む、請求項14に記載の1,3-ブタンジオールの製造方法。
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